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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】放射ループを有するアンテナデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/45 20150101AFI20240701BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20240701BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01Q5/45
H01Q7/00
H01Q19/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023520507
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2020077793
(87)【国際公開番号】W WO2022073577
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ・ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・ビスコンティニ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・セミロフスキー
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-217204(JP,A)
【文献】特開2009-147560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/45
H01Q 7/00
H01Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域で動作するように構成された第1の放射構造体(102)と、
第2の周波数帯域で動作するように構成された第2の放射構造体(104)であって、前記第2の放射構造体(104)は、閉じられた線に沿って形成された放射ループ(106、200)を備え、前記放射ループ(106、200)は、前記閉じられた線に沿って延在し、前記第1の周波数帯域では電気的に不可視であるコイルとして形成される、第2の放射構造体(104)と
を備える、アンテナデバイス(100)。
【請求項2】
前記放射ループ(106、200)は、前記第2の放射構造体(104)の円周上に配置される、請求項1に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項3】
前記放射ループ(106、200)は、上面視で本質的に正方形の形状を有する、請求項1または2に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項4】
前記第2の周波数帯域は前記第1の周波数帯域よりも低い、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項5】
前記第2の放射構造体(104)は、上面視で前記第1の放射構造体(102)と重なる、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項6】
前記コイル(106、200)は、プリント回路基板の異なる層に印刷され、ビアによって互いに接続された導電性トラックを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項7】
前記コイル(106、200)は、プラスチック製ベアリング要素(204)上に印刷された金属ストリップ(202)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項8】
前記第1の放射構造体(102)は、反射器(112)まで第1の距離を置いて支持構造体(114)の下面に配置されるように構成され、前記第2の放射構造体(104)は、前記下面から第2の距離を置いて前記支持構造体(114)の上面に配置されるように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナデバイス(100)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナデバイスを備える、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気通信デバイスの分野に関し、より具体的には、放射ループを有するアンテナデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代(5G)または今後の6G通信技術などの新しい無線通信技術の開発に伴い、信頼性の高い通信のためのアンテナデバイスを開発する需要が高まっている。新世代のモバイル通信を可能にするための重要な技術の1つは、例えば6ギガヘルツ(GHz)未満の大規模な多入力多出力(mMIMO)である。通常、電気通信インフラストラクチャにおけるアンテナデバイスの新たな展開は、地域の規制を含む多くの課題に直面し続けている。例えば、展開可能な所与のアンテナのサイズに関連する制限がある。現場での現在の機械的支持構造体の現場獲得および/または再利用など、電気通信サービスに関連する特定の活動を容易にするために、展開されることになる任意の新しいアンテナのフォームファクタおよび風荷重は、レガシー製品と同様かつ同等であるべきだと予想される。そのような課題は、同じレドームの下に統合され、同じ領域を共有するために、より多くの数の放射構造体またはアンテナアレイを有することを必要とする。多くの技術的戦略の中で、これらの要件を満たすための重要な点の1つは、2つ以上の周波数帯域、例えば、低帯域(LB)および高帯域(HB)用に設計された放射構造体が、アンテナデバイス(またはアレイ)内で動作するとき、互いに電気的に不可視または相互に透明であるべきことである。しかしながら、従来のアンテナデバイスは、1つの周波数帯域の放射要素を他の周波数帯域の放射要素の近傍に配置すると、少なくとも1つの放射要素の性能に悪い影響を及ぼすという電気的視認性の技術的課題を有していた。例えば、より低い周波数のアンテナアレイがより高い周波数のアンテナアレイに重ねられると、より高い周波数のアンテナアレイによって生成された放射が歪む傾向がある。さらに、電磁界は、より低い周波数のアンテナアレイによって望ましくない方法で反射または再放射され、これにより、より高い周波数のアンテナアレイの指向性が低下し、サイドローブ値が増加し、前後比が低下し、交差極性識別値が悪化するなど、望ましくない。
【0003】
したがって、前述の説明に照らして、デュアルバンドまたはマルチバンドアンテナデバイスなどの従来のアンテナデバイスに関連する前述の欠点を克服する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、放射ループを有するアンテナデバイスを提供しようとするものである。本開示は、性能を低下させることなく、従来のアンテナデバイスにおいて異なる周波数帯域で動作する放射構造体のための相互の電気的不可視性または透明性をどのようにして達成するかという既存の問題に対する解決策を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供し、従来のアンテナデバイスと比較して、少なくとも2つの異なる周波数帯域で動作する2つの放射構造体間の改善された電気的不可視性または相互透明性を有する改善されたアンテナデバイスを提供することである。
【0005】
本開示の目的は、添付の独立請求項において提供される解決策によって達成される。本開示の有利な実装形態は、従属請求項でさらに定義される。
【0006】
一態様では、本開示は、アンテナデバイスを提供する。アンテナデバイスは、第1の周波数帯域で動作するように構成された第1の放射構造体を備える。第2の周波数帯域で動作するように構成された第2の放射構造体であって、第2の放射構造体は、閉じられた線に沿って形成された放射ループを備え、放射ループは、閉じられた線に沿って延在し、第1の周波数帯域では電気的に不可視であるコイルとして形成される、第2の放射構造体。
【0007】
本開示のアンテナデバイスは、第2の周波数帯域で動作する第2の放射構造体が、第1の周波数帯域で動作する第1の放射構造体の性能に、両方の放射構造体が互いに近傍に配置されていても影響を及ぼさない、相互不可視性(または透明性)の改善を示す。2つの放射構造体間の改善された電気的不可視性は、放射ループに起因して達成される。放射ループは、放射ループ全体に分布するインダクタンスが導入されるようにコイルとして作られる。そのようなインダクタンスは、放射ループのインピーダンスを変化させ、それによって散乱場(例えば、散乱場-50dB未満である)の量を減少させる。言い換えれば、放射ループは、所望の周波数(すなわち、第2のより低い周波数帯域において)でその特性を維持する一方で、他の周波数帯域(例えば、第1のより高い周波数帯域)については透明的(すなわち、放射線またはエネルギーを反射しない)である。
【0008】
実装形態では、放射ループは、第2の放射構造体の円周に配置される。
【0009】
放射ループが第2の放射構造体の円周に配置されているので、放射ループは第2の放射構造体上のより大きな面積を占有し、それが円周で放射ループに沿って全体に分布するインダクタンスを改善し、第2の放射構造体の帯域幅が改善されるという効果を提供する。
【0010】
さらなる実装形態では、放射ループは、上面視で本質的に正方形の形状を有する。
【0011】
放射ループの形状は、導入されるインダクタンスの量を決定し、その応答は周波数と共に変化し、それによって散乱場の量を減少させて放射構造体間の電気的不可視性を改善するのに寄与する。典型的には、電流が従来のコイルを通過するとき、磁場は、コイルの中心を通過して加わり(すなわち、重ね合わせ)強い場を生成する別個の巻線によって生成され得る。しかしながら、本開示のアンテナデバイスでは、コイルが正方形状に形成されているため、重畳によりいずれの電位磁界も無効化される。
【0012】
さらなる実装形態では、第2の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも低い。
【0013】
典型的には、異なる周波数帯域の使用は、放射構造体のサイズ、放射構造体の配置、したがって従来のアンテナデバイスの全体的なサイズおよび複雑さに直接影響を及ぼす可能性がある。有利には、本開示のアンテナデバイスは、より低い周波数帯域で動作する第2の放射構造体が、両方の放射構造体が互いに近傍に配置された場合であっても、比較的高い周波数帯域で動作する第1の放射構造体の性能に影響を及ぼさない、改善された相互不可視性を示す。
【0014】
さらなる実装形態では、第2の放射構造体は、上面視で第1の放射構造体と重なる。
【0015】
第1の放射構造体が第2の放射構造体と重なると、アンテナデバイスの非常にコンパクトなアーキテクチャが達成される。
【0016】
さらなる実装形態では、コイルは、プリント回路基板の異なる層にプリントされ、ビアによって互いに接続された導電性トラックを含む。
【0017】
プリント回路基板(PCB)の異なる層に印刷された導電性トラックを使用することにより、放射ループを規定するコイルの幅、ピッチ、および長さをエッチングして規定することが容易になる。
【0018】
さらなる実装形態では、コイルは、プラスチック製ベアリング要素の上に印刷された金属ストリップを含む。
【0019】
プラスチック製ベアリング要素上に印刷された金属ストリップの使用により、アンテナデバイスの製造の複雑さ、保守のコスト、および全体的なコストが低減される。
【0020】
さらなる実装形態では、第1の放射構造体は、反射器までの第1の距離において支持構造体の下面に配置されるように構成され、第2の放射構造体は、下面からの第2の距離において支持構造体の上面に配置されるように構成される。
【0021】
下部平面から第1の距離および第2の距離に第1の放射構造体および第2の放射構造体を配置することにより、アンテナデバイスは、干渉が低減されたマルチバンドにおいて電磁信号を放射することが可能になり、放射ループの使用は、干渉をほとんど無視できるものにする。
【0022】
本出願に記載されているすべてのデバイス、要素、回路、ユニットおよび手段は、ソフトウェア要素またはハードウェア要素またはこれらの任意の種類の組み合わせで実装されることができることに留意されたい。本出願に記載されている様々なエンティティによって行われるすべてのステップ、および様々なエンティティによって行われると記載されている機能は、それぞれのエンティティがそれぞれのステップおよび機能を行うように適応または構成されていることを意味することを意図されている。たとえ、特定の実施形態の以下の説明において、外部エンティティによって行われるべき特定の機能またはステップが、その特定のステップまたは機能を行うそのエンティティの特定の詳細な要素の説明に反映されていない場合であっても、これらの方法および機能が、それぞれのソフトウェア要素またはハードウェア要素またはこれらの任意の種類の組み合わせで実装されることができることは、当業者には明らかなはずである。本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されよう。
【0023】
本開示のさらなる態様、利点、特徴および目的は、添付の特許請求の範囲と併せて解釈される例示的な実施態様の図面および詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
上記の概要、ならびに例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解される。本開示を例示する目的で、本開示の例示的な構成が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法および手段に限定されない。さらに、当業者は、図面が原寸に比例しないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は同じ番号で示されている。
以下の図を参照して、本開示の実施形態を単なる例としてこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスにおける第2の放射構造体に対する第1の放射構造体の例示的な配置の側面図である。
図1B】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスにおける第2の放射構造体に対する第1の放射構造体の例示的な配置の上面図である。
図1C】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの一部の図である。
図1D】本開示の一実施形態による、図1Cのアンテナデバイスの正方形の放射ループの図である。
図1E】本開示の別の実施形態による、放射ループの拡大図を有するアンテナデバイスの一部の図である。
図1F】本開示の別の実施形態による、導電性トラックおよびビアを有するコイルとして形成された放射ループの図である。
図2A】本開示の一実施形態による、プラスチック製ベアリング要素上に印刷された金属ストリップを有する放射ループの図である。
図2B】本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの上面図である。
図2C】本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの底面図である。
図2D】本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの側面図である。
図3】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの散乱分析を示すグラフ表示である。
図4】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの放射パターンを示すグラフ表示である。
図5】本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの動作周波数に対する散乱場の値の変動を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
なお、添付図面において、下線が引かれた数字は、下線が引かれた数字が上に位置する項目、または、下線が引かれた数字が隣接する項目を表すために用いられる。下線が引かれていない番号は、下線が引かれていない番号を項目に連結する線によって識別される項目に関する。番号に下線が引かれておらず、関連する矢印を伴う場合、下線が引かれていない番号は、矢印が指し示している一般的な項目を識別するために使用される。
【0027】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態およびそれらを実施することができる方法を示す。本開示を実施するいくつかの態様が開示されてきたが、当業者であれば、本開示を実施または実施するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0028】
図1Aは、アンテナデバイス100における第1の放射構造体102および第2の放射構造体104の配置例の側面図である。図1Aを参照すると、第1の基板108上の第1の放射構造体102および第2の基板110上の放射ループ106を有する第2の放射構造体104の側面図が示されている。図示の例では、反射器112が、2つの放射構造体102、104の下に配置されている。図1Aは、第1の放射構造体102上の第2の放射構造体104の例示的な相互配置を示すために使用される。放射ループ106を含む第2の放射構造体104は、例えば図1C図1Fに詳細に示され説明される。
【0029】
アンテナデバイス100は、2つの周波数帯域の電磁信号を同時に放射するように構成されている。例では、アンテナデバイス100は、デュアルバンドアンテナデバイスまたはマルチバンドアンテナデバイスと呼ばれる場合がある。アンテナデバイス100は、無線通信システムに用いることができる。そのような無線通信システムの例には、基地局(例えば、エボルブドノードB(eNB)、または次世代ノードB(gNB))、リピータ装置、または他のカスタマイズされた電気通信ハードウェアが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
第1の放射構造体102は、アンテナデバイス100の放射要素または放射器を指す。第1の放射構造体102は、第1の周波数帯域で動作するように構成されている。実装では、第1の放射構造体102は、第1の周波数帯域で動作する複数の放射要素を含む。第1の放射構造体102は、第1の基板108に印刷されている。
【0031】
第2の放射構造体104は、複数の放射要素と、放射ループ106とを含む。第2の放射構造体104は、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域で動作するように構成されている。例えば、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域より低くてもよい。第2の放射構造体104は、第2の基板110に印刷されている。
【0032】
放射ループ106は、アンテナデバイス100の第2の放射構造体104に含まれる導電性要素である。放射ループ106は、第2の放射構造体104の帯域幅を増加させ、そのビーム幅を減少させ、第2の放射構造体104と第1の放射構造体102などの隣接する放射要素との分離を改善し、同時に、放射ループ106は、第1の放射構造体102によって放射される第1の周波数帯域に対して電気的に不可視である。
【0033】
第1の基板108は第1の放射構造体102のベースとして作用し、第2の基板110は第2の放射構造体104のベースとして作用する。実装では、第1の基板108および第2の基板110のそれぞれはプリント回路基板(PCB)である。第1の基板108または第2の基板110は、単層または2層のプリント回路基板である。実装では、第2の基板110は2重層プリント回路基板であり、PCBの上層および下層は、放射ループ106を規定するコイルの幅、ピッチ、および長さをエッチングして規定するために使用される。この例では、第1の基板108および第2の基板110は、FR4基板であってもよい。
【0034】
反射器112は、RFエネルギーを反射して所望の方向に向け直すためにアンテナデバイス100に提供される。反射器112は、第1の放射構造体102から第1の距離(すなわち、より近い)に配置され、第2の放射構造体104は、第1の放射構造体102から第2の距離に配置されている。
【0035】
図1Bは、本開示の一実施形態による、アンテナデバイス100における第2の放射構造体104に対する第1の放射構造体102の例示的な配置の上面図である。図1Bを参照すると、第1の放射構造体102と上面視で重なる第2の放射構造体104が示されている。第2の放射構造体104は、第1の放射要素104A、第2の放射要素104B、第3の放射要素104C、第4の放射要素104Dなどの複数の放射要素を含む。この実施形態では、第2の放射構造体104は4つの放射要素を含み、4つの放射要素は2つの電気双極子を形成する。あるいは、いくつかの実施態様では、第2の放射構造体104は、複数の要素の代わりに1つの放射要素を含んでもよい。本開示の範囲を限定することなく、第2の放射構造体104内の放射要素の数を増減できることを当業者は理解すべきである。第1の放射要素104A、第2の放射要素104B、第3の放射要素104C、および第4の放射要素104Dなどの複数の放射要素を取り囲む第2の放射構造体104に含まれる放射ループ106がさらに示されている。
【0036】
動作中、第1の放射構造体102は第1の周波数帯域で動作するように構成され、第2の放射構造体104は第2の周波数帯域で動作するように構成される。第2の放射構造体104は、閉じられた線に沿って形成された放射ループ106を含み、放射ループ106は、閉じられた線に沿って延び、第1の周波数帯域では電気的に不可視であるコイルとして形成される。言い換えると、第1の放射構造体102は、第2の放射構造体104がRF信号を放射する第2の周波数帯域とは異なる第1の周波数帯域で無線周波数(RF)信号を放射する。図示されているように、第1の放射構造体102および第2の放射構造体104は、互いの近傍に配置され、潜在的に、それらのそれぞれの周波数帯域のRF信号を同時に通信する。第2の放射構造体104の放射ループ106は、両方の放射構造体が互いの近傍に配置されていても、より高い周波数帯域で動作する第1の放射構造体102の性能に影響を与えない。連続した閉じられた線として形成された放射ループ106の一例が示され、図1Dでさらに説明される。放射ループ106がコイルの形態であるので、動作時にコイル全体に分布するインダクタンスが導入される。そのようなインダクタンスは、放射ループ106のインピーダンスを潜在的に変化させ、それによって散乱場の量を減少させる。言い換えれば、放射ループ106は、所望の周波数(すなわち、第2のより低い周波数帯域において)でその特性を維持する一方で、第1の周波数帯域(例えば、より高い周波数帯域)については透明的(すなわち、放射線またはエネルギーを反射しない)である。
【0037】
一実施形態によれば、第2の放射構造体104は、上面視で第1の放射構造体102と重なる。第2の放射構造体104は、第1の放射構造体102の上に配置され(一例で、図1Bに示すように)、これにより、アンテナデバイス100に対するコンパクトなアーキテクチャが保証される。実装では、第2の放射構造体104は、第2の基板上に印刷されたほぼ平面の構造に似ている。
【0038】
典型的には、従来のデュアルバンドアンテナデバイスでは、より低い周波数の放射要素(またはより低い周波数アレイ)がより高い周波数の放射要素(またはより高い周波数アレイ)に重ね合わされると、より高い周波数の放射要素(またはより高い周波数アレイ)によって生成された放射は、より低い周波数の放射要素(またはより低い周波数アレイ)によって歪められる傾向がある。さらに、電磁界は、より高い周波数の放射要素(またはより高い周波数アレイの)の指向性を低減し、サイドローブを増加させ、前面から背面に向かって減少させ、交差極性識別を悪化させるなど、より低い周波数の放射要素(またはより低い周波数アレイ)によって望ましくない方法で反射または再放射される。従来のデュアルバンドアンテナデバイスとは対照的に、第2の放射構造体104のすべての放射要素を取り囲む第2の放射構造体104の放射ループ106は、第1の放射構造体102によって生成される放射のいずれかの歪みを回避するか、または少なくとも大幅に低減する。したがって、ある方法では、放射ループ106は、相互の不可視性または透明性を可能にし、異なる周波数帯域(より高い周波数)の第1の放射構造体102の近傍の一方の周波数帯域(例えば、より低い周波数帯域)の第2の放射構造体104は、互いの性能に影響を及ぼさない。あるいは、第2の放射構造体104の残りの要素が第1の周波数帯域で電気的に不可視であるように設計されていれば、放射ループ106を含む第2の放射構造体104全体は第1の周波数帯域に対して電気的に透明性である。
【0039】
図1Cは、本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの一部の図である。図1Cは、図1Aおよび図1Bからの要素に関連して説明される。図1Cを参照すると、アンテナデバイス100の第2の放射構造体104が示されている。第2の放射構造体104は、放射ループ106と、放射ループ106に囲まれた第1の放射要素104A、第2の放射要素104Bおよび第3の放射要素104Cなどの複数の放射要素とを含む。第2の放射構造体104は、支持構造体114上に配置された第2の基板110上に印刷されている。
【0040】
この実施形態では、第2の放射構造体104は4つの放射要素(アンテナデバイス100の一部のみとして見えない第4のものが図1Cに示されている)を含み、4つの放射要素は2つの電気双極子を形成する。第2の放射構造体104は、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域で動作するように構成されている。例えば、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域より低くてもよい。
【0041】
支持構造体114は、第1の基板(例えば、図1Aの第1の基板108)および第2の基板110に支持および機械的強度を提供する。一例では、支持構造体114はプラスチック製であってもよい。
【0042】
一実施形態によれば、放射ループ106は、第2の放射構造体104の円周上に配置される。放射ループ106は、第2の放射構造体104の円周上(すなわち、縁の付近)に配置された放射ループ106全体に分布するインダクタンスを付加する。さらに、放射ループ106の形状(密度、半径、定義された長さあたりの巻き数などを含む)は、導入されるインダクタンスの量を決定し、周波数応答は、第1の放射構造体(例えば、図1Aおよび図1Bの第1の放射構造体102)および第2の放射構造体104の動作周波数と共に変化する。放射ループ106によって加えられるインダクタンスの量は、それに応じて放射ループ106のインピーダンスを変化させ、第1の周波数帯域に対して電気的に透明にする。いくつかの実装では、散乱場の値が-50デシベル(dB)未満であるときはいつでも透明性が達成される。散乱場は、潜在的に、第1の周波数帯域(例えば、より高い周波数帯域)における表面電流の尺度である。
【0043】
別の実施形態によれば、放射ループ106は、上面視で本質的に正方形の形状を有する。放射ループ106は、閉じられた線に沿って第2の放射構造体104上に配置され、閉じられた線は正方形の形状を描く。上面視における放射ループ106は、一例では、図1Dに示すように、正方形の形状を表している。典型的には、電流が従来のコイルを通過するとき、磁場は、コイルの中心を通過して加算し(すなわち、重ね合わせ)て強い磁場を生成する別個の巻線によって生成され得る。しかし、アンテナデバイス100では、放射ループ106を構成するコイルが正方形状であるため、重畳によりいずれの電位磁界もが無効化される。放射ループ106の形状および構造は、例えば、図1D図1E、および図1Fでさらに詳細に説明される。
【0044】
一実施形態によれば、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域よりも低い。第2の周波数帯域は、第2の放射構造体104が動作する周波数帯域であり、第1の放射構造体(例えば、図1Aおよび図1Bの第1の放射構造体102)は、第1の周波数帯域で動作する。換言すれば、第1の放射構造体は、第2の周波数帯域よりも高い周波数で動作するように構成される。例えば、第1の周波数帯域は中帯域(例えば、1.427から2.2GHz)または高帯域(例えば、1.71から2.69GHz)に対応し、第2の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも低い(例えば、690MHz~960MHzなどの低帯域)。別の例では、第1の周波数帯域は、5GのNR周波数帯域のmmWave周波数である「F1」帯域に対応し、第2の周波数帯域は「F2」周波数帯域に対応する(すなわち、6GHz未満の周波数)。
【0045】
一実施形態によれば、第1の放射構造体(例えば、図1Aおよび図1Bの第1の放射構造体102)は、反射器(例えば、図1Aの反射器112)まで第1の距離を置いて支持構造体114の下面に配置されるように構成され、第2の放射構造体104は、下面から第2の距離を置いて支持構造体114の上面に配置されるように構成される。支持構造体114は、第1の基板(例えば、図1Aの第1の基板108)および第2の基板110に支持および機械的強度を提供する。支持構造体114は、下面と上面とを有する。第1の基板(例えば、図1Aの第1の基板108)は支持構造体114の下面に配置され、第1の基板は第1の放射構造体のベースとして作用する。第2の基板110は支持構造体114の上面に配置されており、第2の基板110は第2の放射構造体104のベースとして作用する。第1の放射構造体および第2の放射構造体104を反射器平面から異なる距離に配置することにより、アンテナデバイス100は干渉を低減して異なる周波数帯域で電磁信号を放射することができ、第2の放射構造体104における放射ループ106の使用はさらに信号干渉をほとんど無視できるものにする。さらに、反射器は、RFエネルギーを反射して所望の方向に向け直すためにアンテナデバイス100に統合される。反射器(例えば、図1Aの反射器112)は、支持構造体114の上面よりも支持構造体114の下面の近くに配置される。言い換えれば、支持構造体114の下面に配置された第1の放射構造体は、反射器から第1の距離(すなわち、反射器に比較的近い)にあるのに対して、第2の放射構造体104は、支持構造体114の上面に配置されたとき、下面から第2の距離(すなわち、より大きな距離で)にあり、比較的には反射器にそれほど近くない。反射器は、RFエネルギーを反射することによって、所与の方向の利得を増加させる。
【0046】
図1Dは、本開示の一実施形態による、図1Cのアンテナデバイスの放射ループの図である。図1Dは、図1Cの要素に関連して説明される。図1Dを参照すると、図1Cのアンテナデバイス100の放射ループ106などの放射ループの構成が示されている。
【0047】
放射ループ106は、コイルとして構成され、第2の放射構造体104の円周に配置されている。放射ループ106は、第2の放射構造体104の円周上(すなわち、縁の付近)に配置された放射ループ106全体に分布するインダクタンスを付加する。一般に、放射ループ106(またはコイル)のインダクタンス(Lで表される)の値は、以下の式(式1)に従って放射ループ106(またはコイル)の形状(例えば、密度、半径など)に依存する。
【数1】
式中、Aは放射ループ106(またはコイル)の断面積であり、lは放射ループ106(またはコイル)の長さであり、Nは放射ループ106(またはコイル)の巻数である。放射ループ106(またはコイル)のインダクタンス(すなわち、L)の所与の値について、放射ループ106の周波数応答は動作周波数に応じて変化する。これは、放射ループ106のインピーダンス(Zlで表される)が、以下の式(すなわち、式2)に従って、放射ループ106の動作周波数およびインダクタンス(すなわち、L)に依存するためである。
Zl=jωL (2)
式中、Zlは、放射ループ106によってアンテナデバイス100の第1の放射構造体102に提供されるインピーダンスである。
【0048】
インダクタンスの所与の値(すなわち、L)について、インピーダンス(すなわち、Zl)は動作周波数のみに依存する。したがって、低周波数では、インピーダンス(すなわち、Zl)が低く、放射ループ106(またはコイル)は短絡として作用し、典型的なコイルのように挙動する。しかしながら、高周波では、インピーダンス(すなわち、Zl)が高くなり、放射ループ106(またはコイル)は開回路(または透明)として作用する。したがって、高インピーダンス(すなわち、Zl)によって、放射ループ106を規定するコイルは、第1の放射構造体102によって放射される第1の周波数帯域(すなわち、より高い周波数帯域)に対して透明的(すなわち、開回路)になる。さらに、放射ループ106(またはコイル)は、一連の非接続ストリップのように挙動する。
【0049】
周波数の所与の値について、インピーダンス(すなわち、Zl)は、インダクタンス(すなわち、L)のみに依存し、インダクタンスは、巻数(すなわち、N)および放射ループ106(またはコイル)の断面積に正比例して変化する。巻数が多い(または密度が高い)ほどインダクタンスの値が高くなり、得られるインピーダンス(すなわち、Zl)が高くなる。したがって、高密度では、放射ループ106(またはコイル)は開回路のように作用する。このようにして、密度を制御することによって、または放射ループ106を規定するコイルの巻数を制御することによって、放射ループ106を第1の周波数帯域で透明(すなわち、開回路)にすることができる。したがって、第2の放射構造体104における放射ループ106の使用により、第1の放射構造体102の放射パターン(図1Aおよび図1Bの)は影響を受けない。
【0050】
放射ループ106は、閉じられた線に沿って配置され、閉じられた線は正方形の形状を描く。典型的には、電流が従来のコイルを通過するとき、磁場は、コイルの中心を通過して加算し(すなわち、重ね合わせ)て強い磁場を生成する別個の巻線によって生成され得る。しかし、アンテナデバイス100では、放射ループ106を構成するコイルが正方形状であるため、重畳によりいずれの電位磁界もが無効化される。
【0051】
図1Eは、本開示の別の実施形態による、放射ループの拡大図を有するアンテナデバイスの一部の図である。図1Eは、図1Cおよび図1Dからの要素に関連して説明される。図1Eを参照すると、放射ループ(放射ループ106など)の拡大図を有するアンテナデバイス(アンテナデバイス100など)の一部が示されている。放射ループ106は、上側導電性トラック116および下側導電性トラック118を含む。上側導電性トラック116および下側導電性トラック118は、複数のビア120を使用して互いに接続される。
【0052】
放射ループ106(またはコイル)は、プリント回路基板(PCB)の異なる層に印刷された上側導電性トラック116および下側導電性トラック118などの導電性トラックを含む。PCBの異なる層は、放射ループ106(またはコイル)の幅、ピッチ、および長さをエッチングして規定するために使用される上層および下層を含む。複数のビア120は、PCBの上層と下層とを接続するために使用される。必要とされる複数のビア120は、上側導電性トラック116および下側導電性トラック118の幅に依存する。典型的には、複数のビア120のうちの1つまたは2つのビアは、上側導電性トラック116と下側導電性トラック118とを接続するのに十分である。しかしながら、複数のビア120内のビアの数は、本開示の範囲を限定することなく要件に基づいて異なり得ることが当業者によって理解されるべきである。
【0053】
上側導電性トラック116および下側導電性トラック118は、2次(すなわち、4つの縁部または辺を有する多角形)形状を有し、複数のビア120を介して互いに接続される。複数のビア120は、上側導電性トラック116および下側導電性トラック118の縁上に配置される。複数のビア120は、上側導電性トラック116および下側導電性トラック118を支持するように構成される。
【0054】
図1Fは、本開示の別の実施形態による、導電性トラックおよびビアを有するコイルとして形成された放射ループの図である。図1Fは、図1B図1C図1D、および図1Eからの要素に関連して説明される。図1Fを参照すると、導電性トラックおよびビアを有するコイルとして作られた放射ループ106(例えば、図1A図1Dの放射ループ106)が示されている。
【0055】
実装では、放射ループ106の上側導電性トラック116は、第1の上側導電性トラック116A、第2の上側導電性トラック116B、および第3の上側導電性トラック116Cなどの複数の上側導電性トラックを含む。同様に、放射ループ106の下側導電性トラック118は、第1の下側導電性トラック118A、第2の下側導電性トラック118B、および第3の下側導電性トラック118Cなどの複数の下側導電性トラックを含む。上側導電性トラック116および下側導電性トラック118は、互いに対して斜めであるが反対方向に配置される。例えば、第1の上側導電性トラック116Aは、第1のビア120A、第2のビア120B、第3のビア120C、および第4のビア120Dなどの複数のビア120を使用して、先行する下側導電性トラック(ここでは図示せず)および第1の下側導電性トラック118Aに接続される。第2の上側導電性トラック116Bは、第5のビア120E、第6のビア120F、第7のビア120G、および第8のビア120Hなどの複数のビア120を使用して、第1の下側導電性トラック118Aおよび第2の下側導電性トラック118Bに接続される。同様に、第3の上側導電性トラック116Cは、第9のビア120I、第10のビア120J、第11のビア120K、および第12のビア120Lなどの複数のビア120を使用して、第2の下側導電性トラック118Bおよび第3の下側導電性トラック118Cに接続される。
【0056】
図2Aは、本開示の一実施形態による、プラスチック製ベアリング要素上に印刷された金属ストリップを有する放射ループの図である。図2Aは、図1A図1Fからの要素に関連して説明される。図2Aを参照すると、放射ループ200が示されている。放射ループ200は、プラスチック製ベアリング要素204上に印刷された複数の金属ストリップ202を含む。
【0057】
放射ループ200は、図1Cの放射ループ106に対応する。実装では、放射ループ200を生成するために、ポリエチレンプラスチック(PEP)または同様の技術を使用して、プラスチック製ベアリング要素204上に複数の金属ストリップ202を印刷(すなわち、エッチングまたは堆積)する。複数の金属ストリップ202およびプラスチック製ベアリング要素204は、第2の放射構造体104の円周全体にわたって同じ寸法である。複数の金属ストリップ202は、プラスチック製ベアリング要素204の周りに連続的に配置される。しかしながら、本開示の範囲を限定することなく、プラスチック製ベアリング要素204上に複数の金属ストリップ202を印刷するために別の同様の技術を使用することができることが当業者によって理解されるべきである。
【0058】
図2Bは、本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの上面図である。図2Bは、図2Aの要素に関連して説明される。図2Bを参照すると、図2Aの放射ループ200の上面図が示されている。上面図では、放射ループ200の複数の金属ストリップ202は、2次形状を有し、プラスチック製ベアリング要素204の上面上に斜めに配置されているように見える。
【0059】
図2Cは、本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの底面図である。図2Cは、図2Aの要素に関連して説明される。図2Cを参照すると、図2Aの放射ループ200の底面図が示されている。底面図では、放射ループ200の複数の金属ストリップ202は、2次形状を有し、プラスチック製ベアリング要素204の底面に配置されているように見える。
【0060】
図2Dは、本開示の別の実施形態による、図2Aの放射ループの側面図である。図2Dは、図2Aの要素に関連して説明される。図2Dを参照すると、図2Aの放射ループ200の側面図が示されている。側面図では、放射ループ200の複数の金属ストリップ202は、長方形の形状を有し、プラスチック製ベアリング要素204の側面に配置されているように見える。
【0061】
図3は、本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの散乱分析を示すグラフ表示である。図3は、図1A図1F図2A図2Dからの要素に関連して説明される。図3を参照すると、図1Cのアンテナデバイス100などのアンテナデバイスのグラフ表示300が示されている。グラフ表示300は、ギガヘルツ(GHz)で周波数を表すX軸302と、デシベル(dB)で散乱された力を表すY軸304とを含む。
【0062】
アンテナデバイス100の散乱解析は、高周波構造シミュレータ(HFSS)ツールを用いて行われる。グラフ表示において、第1の線306は、従来のアンテナデバイスの散乱挙動を表す。第2の線308は、アンテナデバイス100の散乱挙動を表す。グラフ表示300は、高周波数範囲(約1.90GHz~2.20GHz)における従来のアンテナデバイスとアンテナデバイス100との散乱挙動の違いを強調する楕円領域310をさらに含む。楕円領域310では、アンテナデバイス100は、従来のアンテナデバイスと比較して、散乱場の値(すなわち、-50dB未満)が低い。その理由は、従来のアンテナデバイスでは、高周波領域では透明ではなく、典型的なリングの下に配置される任意の放射構造体(またはアンテナアレイ)の放射パターンを劣化させる典型的なリングが使用されるからである。しかしながら、アンテナデバイス100では、放射ループ106(図1C)の形態のリングは、放射ループ106の下方に配置された第1の放射構造体102に対して透明になるため、放射ループ106は第1の放射構造体102の放射パターンに影響を及ぼさない。したがって、アンテナデバイス100は、放射ループ106のために、より低い値の散乱場(すなわち、-50dB未満)を呈する。
【0063】
図4は、本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの放射パターンを示すグラフ表示である。図4は、図1C図1F図2A図2D、3からの要素に関連して説明される。図4を参照すると、図1Cのアンテナデバイス100などのアンテナデバイスの放射パターンを表すグラフ表示400が示されている。グラフ表示400は、シータ値を度(deg)で表すX軸402と、放射場の正規化された値をデシベル(dB)で表すY軸404とを含む。
【0064】
グラフ表示400において、複数の線406は、アンテナデバイス100の様々な放射パターンを表す。複数の線406によって表される放射パターンは、第2の放射構造体104(または低周波アレイ)の放射ループ106が高周波数で第1の放射構造体102(または高周波アレイ)に対して透明(すなわち、開回路)であるときに得られる。したがって、放射ループ106は、第1の放射構造体102の放射パターンに影響を与えない。したがって、アンテナデバイス100は、比較的高い散乱場の値を示す従来のアンテナデバイスと比較して、より低い散乱場の値を示す。従来のアンテナデバイスでは、より低い周波数で動作し、典型的なリング(またはプローブと共にリング)を含む従来のアンテナアレイは、より高い周波数で動作する別のアンテナアレイに対して透明性ではなく、したがって、より高い周波数で動作するアンテナアレイの放射パターンを劣化させる。そのため、従来のアンテナデバイスでは、より高い散乱場の値が示され、好ましくない。
【0065】
図5は、本開示の一実施形態による、アンテナデバイスの動作周波数に対する散乱場数値の変動を示すグラフ表示である。図5は、図1C図1Fからの要素に関連して説明される。図5を参照すると、図1Cのアンテナデバイス100などのアンテナデバイスの動作周波数に対する散乱場値の変動を表すグラフ表示500が示されている。グラフ表示500は、GHzでの周波数を表すX軸502と、デシベル(dB)単位での散乱場の値を表すY軸504とを含む。
【0066】
グラフ表示500において、第1の線506は、アンテナデバイス100の動作周波数に対する散乱場の値の変動を表す。第1の線506は、アンテナデバイス100の動作周波数の増加に伴って減少する散乱場の値を示している。第1の線506は、第1の点506A(m1としても表される)および第2の点506B(m2としても表される)を含む。第1の点506A(すなわち、m1)は、1.7GHzの周波数で-49.70dBの散乱場の値を有する。第2の点506B(すなわち、m2)は、2.2GHzの周波数で-50.91dBの散乱場の値を有する。第2の点506B(すなわち、m2)は、高い動作周波数のために、散乱値の比較的低い値を有する。これは、放射ループ106の密度を大きくすることで、放射ループ106のインダクタンス(すなわち、L)が大きくなり、さらに、式2より、放射ループ106のインピーダンス(すなわち、Zl)が大きくなるためである。インダクタンス(すなわち、L)の増加に加えて、各ステップでの動作周波数の増加もあり、したがってインピーダンス(すなわち、Zl)がさらに増加する。インピーダンスのさらなる増加(すなわち、Zl)は、散乱場のより低い値をもたらす。放射ループ106(またはコイル)の密度は、コイルの巻数(すなわち、N)を増やすことによって増加する。
【0067】
添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、上記で説明された本開示の実施形態に対する変更が可能である。本開示を記載および特許請求するために使用される「including(含む)」、「comprising(含む、備える)」、「incorporating(内蔵する)」、「have(有する)」、「is(である)」などの表現は、非排他的な方法で解釈されること、すなわち、明示的に記載されていない項目、構成要素または要素も存在することを可能にすることを意図している。単数形への言及はまた、複数形に関連すると解釈されるべきである。「例示的(exemplary)」という用語は、本明細書では「例、事例または例示としての役割を果たす」を意味するために使用される。「例示的(exemplary)」と記載された任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいかまたは有利であると解釈されるべきではなく、または他の実施形態からの特徴の組込みを除外するべきではない。「任意選択(optionally)」という用語は、本明細書では「いくつかの実施形態で提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。明確にするために別個の実施形態に関して説明されている本開示の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さを目的として単一の実施形態に関連して説明されている、本発明の様々な特徴はまた、個々に設けられてもよく、または任意の適切な組み合わせで提供されてもよく、または本開示の任意の他の説明されている実施形態において適切に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 アンテナデバイス
102 第1の放射構造体
104 第2の放射構造体
104A 第1の放射要素
104B 第2の放射要素
104C 第3の放射要素
104D 第4の放射要素
106 放射ループ
108 第1の基板
110 第2の基板
112 反射器
114 支持構造体
116 上側導電性トラック
116A 第1の上側導電性トラック
116B 第2の上側導電性トラック
116C 第3の上側導電性トラック
118 下側導電性トラック
118A 第1の下側導電性トラック
118B 第2の下側導電性トラック
118C 第3の下側導電性トラック
120 ビア
120A 第1のビア
120B 第2のビア
120C 第3のビア
120D 第4のビア
120E 第5のビア
120F 第6のビア
120G 第7のビア
120H 第8のビア
120I 第9のビア
120J 第10のビア
120K 第11のビア
120L 第12のビア
200 放射ループ
202 金属ストリップ
204 プラスチック製ベアリング要素
300 グラフ表示
302 X軸
304 Y軸
306 第1の線
308 第2の線
310 楕円領域
400 グラフ表示
402 X軸
404 Y軸
406 線
500 グラフ表示
502 X軸
504 Y軸
506 第1の線
506A 第1の点
506B 第2の点
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5