(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】超薄金属リチウム箔の調製方法および調製装置
(51)【国際特許分類】
C22B 26/12 20060101AFI20240701BHJP
C22B 5/16 20060101ALI20240701BHJP
C01D 15/00 20060101ALI20240701BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C22B26/12
C22B5/16
C01D15/00
C23C14/00 A
(21)【出願番号】P 2023523571
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2021127947
(87)【国際公開番号】W WO2022111228
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】202011376686.6
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523024990
【氏名又は名称】深▲セン▼市研一新材料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】楊凱
(72)【発明者】
【氏名】張世奇
(72)【発明者】
【氏名】馮▲イ▼晶
(72)【発明者】
【氏名】張小飛
(72)【発明者】
【氏名】銭超
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
(72)【発明者】
【氏名】劉博
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1299884(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1377425(CN,A)
【文献】特開昭63-203729(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109182758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)リチウム原料を加熱した後に冷却させ、ボールミリングして化学式xLiOH・yLi
2CO
3・zLi
2Oの複合リチウム塩を得る(ただし、x、y、zは、質量分率であり、0<x<0.5、0<y<0.5、0.5≦z<1、x+y+z=1を満たす。)複合リチウム塩調製工程と、
(2)前記複合リチウム塩と還元剤を均一に混合及びプレスし、真空還元炉中で真空熱還元して、金属蒸気を生成する、真空熱還元工程と、
(3)前記金属蒸気を熱交換管に通過させて蒸留タンクに導入し、真空蒸留して、前記金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、前記液体金属リチウムを連結管を介してリチウム貯蔵タンクに貯蔵する、真空蒸留工程と、
(4)前記リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入し、加熱して液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させ、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成する、真空蒸着工程と、を含む、
ことを特徴とする超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項2】
工程(1)において、常温下で、リチウム原料を真空度1~20Pa、昇温速度1~10℃/minで600~800℃に昇温させ、60~300min保温させ、自然冷却した後、ボールミリングして複合リチウム塩xLiOH・yLi
2CO
3・zLi
2Oを得(ただし、x、y、zは、質量分率であり、0<x<0.5、0<y<0.5、0.5≦z<1、x+y+z=1を満たす。)、
前記リチウム原料は、水酸化リチウム-炭酸リチウム、水酸化リチウム-炭酸リチウム-シュウ酸リチウムおよび水酸化リチウム-シュウ酸リチウムのうちの1種または2種以上であり、ボールミリングされた複合リチウム塩の粒径は、20μm≦D50≦70μmであり、ボールと原料との質量比は、(10~15):1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項3】
工程(2)において、前記複合リチウム塩と還元剤を、質量比1:(0.5~1.0)で均一に混合し、10~60MPaでペレット状にプレスし、真空度1~20Pa、熱還元温度800~1000℃の真空還元炉中で真空熱還元して、金属蒸気を生成し、
前記還元剤は、シリコン粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末および炭素粉末から選ばれる1種または2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項4】
工程(3)において、前記金属蒸気を熱交換管に通過させて蒸留タンクに導入し、蒸留し、蒸留タンク内の温度を300~400℃、真空度を10
-2~10
-4Paに制御し、前記金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、前記液体金属リチウムを連結管によってリチウム貯蔵タンクに貯蔵し、
前記熱交換管を通過した金属蒸気の温度が800~1000℃から400~500℃に低下しながら、熱交換管における熱交換液が加熱され、熱交換管が蒸留タンク周りの熱交換ジャケットに連通され、前記熱交換液および加熱装置により蒸留タンクを300~400℃に加熱させ、前記熱交換管に孔径が1~10μmであるセラミックフィルターが設けられ、
前記金属蒸気のうちのナトリウム蒸気およびカリウム蒸気が蒸留タンクに連通された蒸留管路により二次蒸留されて、前記ナトリウム蒸気およびカリウム蒸気をナトリウム・カリウム凝縮タンクにおいて凝縮させ、前記蒸留管路の外部に保温ジャケットおよび加熱装置が設けられ、内部の温度が320~420℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項5】
工程(4)において、前記リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入し、坩堝を加熱して、液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させ、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成し、ベースシート巻取収集装置を利用してリチウム箔を収集し、収集されたリチウム箔を不活性雰囲気で取り出し、
前記真空蒸着装置内の真空度が10
-2~10
-4Paであり、坩堝の加熱温度が500~700℃であり、坩堝とベースシートとの距離が20~50mmであり、前記巻取収集装置の巻取速度が1~5m/minであり、前記ベースシートがアルミニウム箔または銅箔であり、前記不活性雰囲気が窒素ガス雰囲気またはアルゴンガス雰囲気である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項6】
工程(4)において、調製されたリチウム箔の厚さが1~20μmであり、リチウム箔におけるリチウムの純度が99.96wt%~99.99wt%であり、金属リチウムの回収率が81.7%~85.0%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【請求項7】
請求項1~6に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法を実施するための超薄金属リチウム箔の調製装置であって、
真空還元炉(2)、熱交換管(5)、蒸留タンク(8)、蒸留管路(10)、ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)、リチウム貯蔵タンク(14)、および蒸着室(16)を備え、
前記真空還元炉(2)は、熱交換管(5)を介して蒸留タンク(8)に連通され、
前記蒸留タンク(8)は、蒸留管路(10)を介してナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)に連通され、
前記蒸留タンク(8)は、リチウム貯蔵タンク(14)を介して蒸着室(16)に連通されている、
ことを特徴とする超薄金属リチウム箔の調製装置。
【請求項8】
前記真空還元炉(2)、熱交換管(5)、蒸留タンク(8)、蒸留管路(10)に、いずれも温度をリアルタイムで表示する温度センサが設けられ、
前記真空還元炉(2)の上端に第1の真空ポンプ(21)が設けられ、真空還元炉(2)の下端にフィード口(1)が設けられ、真空還元炉(2)の下方にスラグ貯蔵タンク(3)が設けられ、
前記蒸留タンク(8)の上端に蒸留管路(10)が連通され、前記蒸留タンク(8)の下端に連結管(9)が連通され、前記蒸留タンク(8)が連結管(9)を介してリチウム貯蔵タンク(14)に連通され、前記リチウム貯蔵タンク(14)が連結管(9)を介して真空蒸着室(16)に連通され、
前記ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)の下方にナトリウム・カリウム収集タンク(13)が設けられ、ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)の上端に第2の真空ポンプ(22)が設けられ、
真空蒸着室(16)の下端に第3の真空ポンプ(23)が設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【請求項9】
真空還元炉(2)内にペレット製造圧力機(4)が設けられ、
前記蒸留タンク(8)の外部に熱交換ジャケットおよび加熱ユニットが設けられ、
前記ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)周りに冷却ジャケットが設けられている、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【請求項10】
真空蒸着室(16)において巻取収集装置(17)、坩堝(18)および蒸気フード(19)が設けられ、
前記坩堝(18)と前記蒸気フード(19)が一体化に設けられ、前記坩堝(18)が前記蒸気フード(19)の下方に位置する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リチウム箔の調製方法および調製装置に関し、具体的に、超薄金属リチウム箔の連続的な調製方法および連続的な調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、メモリー効果がなく、作動電圧が高く、およびサイクル安定性に優れたという利点を有し、小型移動装置、エネルギー貯蔵発電所などの分野に広く適用されている。電気自動車(EV)、ハイブリッド式電気自動車(HEV)、無人航空機の出現および発展、ならびに他の大型エネルギー貯蔵装置の普及および適用に伴い、エネルギー貯蔵装置に対するニーズも日増しに多様化になってきた。EVまたはHEVの発展および適用は、その動力エネルギー貯蔵システムの改良に大きく依存するので、エネルギー貯蔵装置が高い比エネルギーおよび高い比出力を有するべきであることを求めている。従来のリチウムイオン電池は、比エネルギーが100~200Whkg-1であるため、これらの装置のニーズを満たすことができない。
【0003】
金属リチウムは、3860mAhg-1に近い高い理論比容量を有するとともに、極めて低い酸化還元電位(-3.04V vs.SHE)を有し、電池負極材料としての最適な選択の一つであり、酸素または硫黄と組み合わせてリチウム-酸素(Li-O2)電池およびリチウム-硫黄(Li-S)電池を形成することができる。Li-O2電池又はLi~S電池にもかかわらず、いずれも極めて高い理論比エネルギーを有し、Li-S電池は、2600Whkg-1と高く、Li-O2電池は、11140Whkg-1と高い。これらの電池は、いずれも金属リチウムを電池負極として用いるので、リチウム金属電池と総称される。
【0004】
現在、金属リチウムの調製方法には、主に、溶融塩電解法、金属熱還元法および真空蒸留法がある。溶融塩電解法は、リチウム塩から金属リチウムに変化する方法であり、電流効率が高く、連続製造可能であるという利点を有する。しかしこの方法は、エネルギー消費が高く、環境を汚染し、取得した金属リチウムの純度が低い。金属熱還元法は、金属共加熱により酸化リチウムから金属リチウムに変化する方法であり、操作しやすく、汚染がなく、プロセスが短いという利点を有するが、取得した金属リチウム錠の純度が高くない。その次、単独の酸化リチウムの流動性が悪く、還元剤との反応が十分ではないことに起因して、リチウムの回収率が低くなる。真空蒸留法は、金属リチウムにおける不純物元素の含有量を効果的に低下させることができ、純度が高い金属リチウムを取得するためによく用いられる方法である。金属リチウム箔の調製方法は、主に機械的ロールプレス法である。この方法は、主に金属リチウム錠に対して機械的ロールプレスを行うものであるので、金属リチウムとロールプレス機の接着を極めて容易に引き起こすとともに、厚さが20ミクロン以下の超薄金属リチウム箔の調製がロールプレス装置に対して難題であり、機械損失が大きく、エネルギー消費が高い。
【0005】
中国特許公開番号CN1299884Aでは、Li2CO3を原料、Al2O3を助剤としてペレットプレス・焼成を行って、クリンカーを得る工程S1と、クリンカーと還元剤を混合し、ペレット状にプレスして真空熱還元を行う工程S2と、リチウム蒸気を還元炉中で一次蒸留を行う工程S3と、一次蒸留した後のリチウム蒸気を二次蒸留して金属リチウム錠を得る工程S4と、を含む、金属リチウムの熱還元調製、精製プロセスおよび装置が開示されている。該プロセスには、Li2CO3を原料として用いてLi2Oを調製する収率が低いとともに、Li2CO3の分解条件がより過酷であり、一次蒸留後に蒸気濾過処理過程がないことに起因して、形成した金属リチウム錠に多くの粉塵不純物が含有するという欠陥が存在する。
【0006】
中国特許公開番号CN1213158Cでは、炭酸リチウム、生石灰、酸化アルミニウムを混合して造粒した後、焼成することと、焼成した後の粒子を粉砕して粉末を得ることと、粉末とシリコン鉄を均一に混合して造粒し、真空熱還元し、得られたリチウム蒸気を凝縮した後、固体リチウムを得ることと、を含む、炭酸リチウムを用いてリチウムを調製する方法が開示されている。該プロセスには、炭酸リチウムの分解率が高くなく、その次二次蒸留過程がなく、得られた製品の純度が高くないという欠陥が存在する。
【0007】
中国特許公開番号CN109182758Aでは、真空環境中で低品位のリチウム源、たとえば金属リチウム含有量20%~99%の金属リチウムスラグにおける沸点が低い不純物を蒸発除去し、液体金属リチウムを得た後、真空蒸着法で得られた液体金属リチウムを基材に蒸着させて超薄金属リチウムストリップを形成する、低品位リチウム源を用いて超薄金属リチウムストリップを調製する方法およびシステムが開示されている。該プロセスは、固体の低品位の金属リチウム源で加熱蒸発して不純物を除去するとし、達成した蒸留効果が一般的であり、蒸発ボートに残された不純物は炭酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウなどであり、これらのリチウム不純物が利用されていないことに起因して、原料のコストが比較的に高く、調製された金属リチウム箔の純度が高いとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術における、リチウム調製プロセスにおいてリチウム調製の反応温度が高く、リチウムの回収率が低く、収集されたリチウム箔の純度が低く、およびプロセス操作が煩雑であるなどの問題に対して、本発明は、超薄金属リチウム箔の調製方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような技術案を採用した。
【0010】
[1](1)リチウム原料を加熱した後に冷却させ、ボールミリングして化学式xLiOH・yLi2CO3・zLi2Oの複合リチウム塩を得る(ただし、x、y、zは、質量分率であり、0<x<0.5、0<y<0.5、0.5≦z<1、x+y+z=1を満たす。)複合リチウム塩調製工程と、
(2)前記複合リチウム塩と還元剤を均一に混合及びプレスし、真空還元炉中で真空熱還元して、金属蒸気を生成する、真空熱還元工程と、
(3)前記金属蒸気を熱交換管に通過させて蒸留タンクに導入し、真空蒸留して、前記金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、前記液体金属リチウムを連結管を介してリチウム貯蔵タンクに貯蔵する、真空蒸留工程と、
(4)前記リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入し、加熱して液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させ、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成する、真空蒸着工程と、を含む、
ことを特徴とする超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0011】
[2]工程(1)において、常温下で、リチウム原料を真空度1~20Pa、昇温速度1~10℃/minで600~800℃に昇温させ、60~300min保温させ、自然冷却した後、ボールミリングして複合リチウム塩xLiOH・yLi2CO3・zLi2Oを得(ただし、x、y、zは、質量分率であり、0<x<0.5、0<y<0.5、0.5≦z<1、x+y+z=1を満たす。)、
前記リチウム原料は、水酸化リチウム-炭酸リチウム、水酸化リチウム-炭酸リチウム-シュウ酸リチウムおよび水酸化リチウム-シュウ酸リチウムのうちの1種または2種以上であり、ボールミリングされた複合リチウム塩の粒径は、20μm≦D50≦70μmであり、ボールと原料との質量比は、(10~15):1である、
ことを特徴とする[1]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0012】
[3]工程(2)において、前記複合リチウム塩と還元剤を、質量比1:(0.5~1.0)で均一に混合し、10~60MPaでペレット状にプレスし、真空度1~20Pa、熱還元温度800~1000℃の真空還元炉中で真空熱還元して、金属蒸気を生成し、
前記還元剤は、シリコン粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末および炭素粉末から選ばれる1種または2種以上である、
ことを特徴とする[1]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0013】
[4]工程(3)において、前記金属蒸気を熱交換管に通過させて蒸留タンクに導入し、蒸留し、蒸留タンク内の温度を300~400℃、真空度を10-2~10-4Paに制御し、前記金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、前記液体金属リチウムを連結管を介してリチウム貯蔵タンクに貯蔵し、ただし、前記熱交換管を通過した金属蒸気の温度が800~1000℃から400~500℃に低下しながら、熱交換管における熱交換液が加熱され、熱交換管が蒸留タンク周りの熱交換ジャケットに連通され、前記熱交換液および加熱装置により蒸留タンクを300~400℃に加熱させ、前記熱交換管に孔径が1~10μmであるセラミックフィルターが設けられ、
前記金属蒸気のうちのナトリウム蒸気およびカリウム蒸気が蒸留タンクに連通された蒸留管路により二次蒸留されて、前記ナトリウム蒸気およびカリウム蒸気をナトリウム・カリウム凝縮タンクにおいて凝縮させ、前記蒸留管路の外部に保温ジャケットおよび加熱装置が設けられ、内部の温度が320~420℃である、
ことを特徴とする[1]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0014】
[5]工程(4)において、前記リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入し、坩堝を加熱して、液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させ、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成し、ベースシート巻取収集装置を利用してリチウム箔を収集し、収集されたリチウム箔を不活性雰囲気で取り出し、
前記真空蒸着装置内の真空度が10-2~10-4Paであり、坩堝の加熱温度が500~700℃であり、坩堝とベースシートとの距離が20~50mmであり、前記巻取収集装置の巻取速度が1~5m/minであり、前記ベースシートがアルミニウム箔または銅箔であり、前記不活性雰囲気が窒素ガス雰囲気またはアルゴンガス雰囲気である、
ことを特徴とする[1]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0015】
[6]工程(4)において、調製されたリチウム箔の厚さが1~20μmであり、リチウム箔におけるリチウムの純度が99.96wt%~99.99wt%であり、金属リチウムの回収率が81.7%~85.0%である、
ことを特徴とする[1]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法。
【0016】
[7][1]~[6]に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法を実施するための超薄金属リチウム箔の調製装置であって、
真空還元炉(2)、熱交換管(5)、蒸留タンク(8)、蒸留管路(10)、ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)、リチウム貯蔵タンク(14)、および蒸着室(16)を備え、
前記真空還元炉(2)は、熱交換管(5)を介して蒸留タンク(8)に連通され、
前記蒸留タンク(8)は、蒸留管路(10)を介してナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)に連通され、
前記蒸留タンク(8)は、リチウム貯蔵タンク(14)を介して蒸着室(16)に連通されている、
ことを特徴とする超薄金属リチウム箔の調製装置。
【0017】
[8]前記真空還元炉(2)、熱交換管(5)、蒸留タンク(8)、蒸留管路(10)に、いずれも温度をリアルタイムで表示する温度センサが設けられ、
前記真空還元炉(2)の上端に第1の真空ポンプ(21)が設けられ、真空還元炉(2)の下端にフィード口(1)が設けられ、真空還元炉(2)の下方にスラグ貯蔵タンク(3)が設けられ、
前記蒸留タンク(8)の上端に蒸留管路(10)が連通され、前記蒸留タンク(8)の下端に連結管(9)が連通され、前記蒸留タンク(8)が連結管(9)を介してリチウム貯蔵タンク(14)に連通され、前記リチウム貯蔵タンク(14)が連結管(9)を介して真空蒸着室(16)に連通され、
前記ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)の下方にナトリウム・カリウム収集タンク(13)が設けられ、ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)の上端に第2の真空ポンプ(22)が設けられ、
真空蒸着室(16)の下端に第3の真空ポンプ(23)が設けられている、
ことを特徴とする[7]に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【0018】
[9]真空還元炉(2)内にペレット製造圧力機(4)が設けられ、
前記蒸留タンク(8)の外部に熱交換ジャケットおよび加熱ユニットが設けられ、
前記ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)周りに冷却ジャケットが設けられている、
ことを特徴とする[7]または[8]に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【0019】
[10]前記真空蒸着室(16)において巻取収集装置(17)、坩堝(18)および蒸気フード(19)が設けられ、
前記坩堝(18)と前記蒸気フード(19)が一体化に設けられ、前記坩堝(18)が前記蒸気フード(19)の下方に位置する、
ことを特徴とする[7]または[8]に記載の超薄金属リチウム箔の調製装置。
【発明の効果】
【0020】
従来技術に比較すると、本発明は、リチウム原料を特定の成分割合の複合リチウム塩に加工することで、リチウム原料の供給源が広く、原料の利用率が高く、熱還元反応の効果が良く、真空熱還元-真空蒸留-真空蒸着という連続的な一体化プロセスを用いて金属リチウム箔を製造することにより、金属リチウムの純度を向上させることができるとともに、製造効率を大幅に向上させることができ、産業化製造に有利であり、蒸着過程中のリチウムが蒸留タンクにおける液体リチウムに由来するので、固体リチウムの前処理過程を省き、金属リチウム錠の貯蔵コストを節約することができる。本発明に係る複合リチウム塩の独特な処方は、熱還元反応を促進して、金属リチウムの回収率をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1における複合リチウム塩のXRD図である。
【
図2】本発明の実施例2における複合リチウム塩のXRD図である。
【
図3】本発明の実施例3における複合リチウム塩のXRD図である。
【
図4】本発明の実施例4における複合リチウム塩のXRD図である。
【
図5】本発明の実施例5における複合リチウム塩のXRD図である。
【
図6】本発明の実施例6における複合リチウム塩のXRD図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、「~」を用いて数値範囲を示す場合、両方の端点が含まれ、単位が共通である。たとえば、1~20Paは、真空度が1Pa以上20Pa以下であることを示す。
【0023】
実施例に用いられる原料、装置、試験条件および検出方法などは、以下の通りである。
【0024】
真空還元炉、蒸留タンク、真空ポンプ、およびボールミルは、上海SIOMM社から購入され、真空蒸着装置、および膜厚検出器は、広東HCVAC社から購入されている。
【0025】
XRD装置は、メーカーがドイツのブルック(BRUKER)であり、型番がBruker D8である。XRD試験条件は以下の通りである。電圧40KV、電流40Ma、Cuターゲット、走査範囲10~90°、ステップ0.02、走査速度10°/min。
【0026】
レーザー粒度分析装置は、Linkoptik社から購入され、型番がLT3600である。
【0027】
ICP検出装置は、Skyray Instrument社から購入され、慣用方法に応じて、蒸着された金属リチウム箔に対して化学成分検出、すなわちICP試験を行い、リチウム箔におけるリチウムの純度を測定する。
【0028】
膜厚検出器は、蒸着過程中で膜厚検出を行うことができる。
【0029】
金属リチウムの回収率の計算ステップは、以下の通りである。
【0030】
複合リチウム塩は、xLiOH・yLi2CO3・zLi2Oであり、金属リチウムの質量分率が、以下の式の通りである。
【0031】
(数1)
W=[6.94×(x/23.95+y/36.94+z/14.94)]×100%
【0032】
質量Mの複合リチウム塩を秤量し、ここで、金属リチウムの質量(N)はN=MWであり、蒸着前のベースシートの質量をn、蒸着後のベースシートの質量をmとすると、金属リチウムの回収率は、R=(m-n)/Nである。
【0033】
以下、図面および実施例を結び付けて本発明についてさらに詳細に説明する。
【0034】
本発明は、以下の工程を含む超薄金属リチウム箔の調製方法を提供する。
【0035】
工程1:複合リチウム塩の調製
【0036】
リチウム原料は、水酸化リチウム-炭酸リチウム複合体、水酸化リチウム-炭酸リチウム-シュウ酸リチウム複合体、水酸化リチウム-シュウ酸リチウム複合体のうちの1種以上であり、質量純度>99%である。
【0037】
本発明の実施例におけるリチウム原料は、Ganfeng Lithium社からのバッテリーレベルのリチウム原料を用いる。
【0038】
常温下で、リチウム原料(水酸化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム)を、一定の割合で、真空度1~20Pa下、昇温速度1~10℃/minで600~800℃に昇温させ、60~300min保温させ、自然冷却した後取り出す。取り出したサンプルは塊状固体であり、直径5mmのジルコニウムボールで粉砕する。ボールと原料との質量比(10~15):1、回転速度500~700rpm、ボールミリング時間1~3hの条件下で、ボールミリングして複合リチウム塩xLiOH・yLi2CO3・zLi2O粒子を得る。ただし、x、y、zは、質量分率である。レーザー粒度分析装置を用いて該複合リチウム塩xLiOH・yLi2CO3・zLi2Oの粒径D50を測定し、XRD試験およびGSASソフトウェアで複合リチウム塩に対して物相の定量分析を行うことで、x、y、zの数値を確定した。以上のようにリチウム原料の配合割合、昇温速度、保温時間およびボールミリング条件を調節することにより、x、y、zの数値は変更される可能性があるが、x、y、zが0<x<0.5、0<y<0.5、0.5≦z<1、x+y+z=1を満たしている限り、本発明に係る複合リチウム塩の熱還元反応の効果を達成することができる。x、y、zは、好ましくは0<x<0.11、0<y<0.11、0.8<z<1、x+y+z=1を満たし、より好ましくは0.058≦x<0.102、0.024≦y≦0.102、0.815≦z≦0.912、x+y+z=1を満たしている。
【0039】
市販されているリチウム塩は、リチウム含有鉱石、リチウム含有塩湖かん水を加工し精製することにより得られるので、リチウム原料に微量のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などが不可避に含まれる。
【0040】
工程2:真空熱還元
【0041】
複合リチウム塩粒子と還元剤を、質量比1:(0.5~1.0)で均一に混合し、好ましくは質量比1:(0.6~0.72)で均一に混合し、10~60MPaでペレット状にプレスし、真空度1~20Paの真空還元炉中で真空熱還元を行い(熱還元温度800~1000℃、熱還元時間4~10h)、金属蒸気を生成する。前記還元剤は、シリコン粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末および炭素粉末から選ばれる1種または2種以上である。
【0042】
工程1中、保温温度および時間を調節して、リチウム原料を分解し、本発明にかかる特定の割合の酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムを含む複合リチウム塩(リチウム源)に変化させることで、還元剤との金属熱還元反応をより容易に実現する。温度が450℃を超える場合、水酸化リチウムは、液体に溶解し、複合リチウム塩と還元剤との間で一定の流動性をもたらし、複合リチウム塩の拡散を促進し、複合リチウム塩と還元剤との接触を増加して、熱還元反応がより十分に行われ、少量存在する炭酸リチウムは、水酸化リチウムおよび酸化リチウムの相乗拡散に寄与する。
【0043】
工程3:真空蒸留
【0044】
工程2で得られた金属蒸気をまず孔径1~10μmのセラミックフィルターに通過させて粉塵を除去した後、金属蒸気を熱交換管に導入し、金属蒸気と熱交換液との熱伝達が発生することで、金属蒸気を冷却させるだけでなく、熱交換液を加熱してさらに蒸留タンクを加熱する機能を発揮する。金属蒸気を熱交換管に通過させて蒸留タンクに導入し、蒸留する。蒸留タンク内の温度を300~400℃に制御し、真空度を10-2~10-4Paに制御し、金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、液体金属リチウムを連結管を介してリチウム貯蔵タンクに貯蔵する。リチウム貯蔵タンク周りに保温ジャケットが設けられている。金属蒸気のうちのナトリウム蒸気およびカリウム蒸気を蒸留管路に導入してナトリウム・カリウム凝縮タンク中で凝縮させ、完全に凝縮させた後、ケロシンを凝縮タンクに添加し、ナトリウム・カリウム収集タンクに収集する。ケロシンは、ナトリウムおよびカリウムと空気および水とを隔絶する役割を果たす。そのうち、蒸留管路は、ナトリウム蒸気およびカリウム蒸気中に「逃げた」リチウム蒸気を凝縮させてもう一度回収するという役割を果たす。蒸留管路の温度が320~420℃に維持し、蒸留管路の材質がニッケルクロム合金である。保温ジャケットの材質がフェノール樹脂である。熱交換管を通過した金属蒸気の温度が800~1000℃から400~500℃に低下しながら、熱交換管における熱交換液が加熱される。熱交換管は、蒸留タンク周りの熱交換ジャケットに連通され、蒸留タンクを300~400℃に加熱する。また、蒸留管路に加熱装置が設けられている。ナトリウム・カリウム凝縮タンク周りに凝縮ジャケットが設けられている。冷却温度は、-10℃である。
【0045】
リチウム原料に少量のリチウム以外の金属化合物の不純物が不可避に含まれるため、得られた金属リチウムに対応する金属不純物も若干含まれる。同じ温度下で異なる金属の蒸気圧が異なるため、これらの凝縮時の挙動も異なる。そのため、真空蒸留工程では、金属蒸気圧と温度の関係に応じて、温度を精確に調節することで、金属リチウムと不純物である金属ナトリウム及び金属カリウムとを容易に分離することができる。
【0046】
工程4:真空蒸着
【0047】
リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入し、坩堝を加熱して、液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させた後、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成し、巻取収集装置によってリチウム箔を収集し、収集されたリチウム箔を不活性雰囲気下で取り出す。そのうち、巻取収集されたベースシートの温度が50~80℃に維持し、真空蒸着装置の真空度が10-2~10-4Paであり、坩堝の加熱温度が500~700℃であり、坩堝とベースシートとの距離が20~50mmであり、巻取収集装置の巻取速度が1~5m/minであり、ベースシートがアルミニウム箔または銅箔であり、不活性雰囲気が窒素ガス雰囲気またはアルゴンガス雰囲気である。調製されたリチウム箔の厚さが1~20μmであり、1~15μmであることが好ましく、5~13μmであることがより好ましい。リチウム箔におけるリチウムの純度が99.96wt%~99.99wt%であり、金属リチウムの回収率が80.0%~90.0%であり、81.7%~85.0%であることが好ましい。
【0048】
送液パドルを用いて前記リチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入することができる。前記送液パドルは、電力で等速で回転すことにより、液体金属リチウムを等速で坩堝に移送する。
【0049】
真空蒸着は、ナノメータスケールおよび十数ミクロンスケールの超薄金属リチウム箔を調製する有効な方法であり、かつ坩堝の加熱温度、巻取収集装置の巻取速度、ベースシートと坩堝との距離を制御することにより、金属リチウム箔の厚さを、1~20μm、好ましくは1~15μm、より好ましくは5~13μmに制御することができる。これは、現在の圧延法によって達成しにくい厚さであり、圧延装置に対しても極めて大きなチャレンジである。真空蒸着装置の構造模式図は、
図7に示される蒸着室(16)を参照する。
【0050】
また、本発明は、請求項1に記載の超薄金属リチウム箔の調製方法を実施するための超薄金属リチウム箔の調製装置であって、以下の部材を備えることを特徴とする超薄金属リチウム箔の調製装置を提供する。
【0051】
フィード口(1)、真空還元炉(2)、スラグ貯蔵タンク(3)、ペレット製造圧力機(4)、熱交換管(5)、セラミックフィルター(6)、バルブ(7)、蒸留タンク(8)、連結管(9)、蒸留管路(10)、ケロシンフィード口(11)、ナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)、ナトリウム・カリウム収集タンク(13)、リチウム貯蔵タンク(14)、送液パドル(15)、蒸着室(16)、巻取収集装置(17)、坩堝(18)、蒸気フード(19)、ドア(20)、第1の真空ポンプ(21)、第2の真空ポンプ(22)、第3の真空ポンプ(23)など。
【0052】
前記真空還元炉(2)は、熱交換管(5)を介して蒸留タンク(8)に連通され、前記蒸留タンク(8)は、蒸留管路(10)を介してナトリウム・カリウム凝縮タンク(12)に連通され、前記蒸留タンク(8)は、リチウム貯蔵タンク(14)を介して蒸着室(16)に連通されている。
【0053】
本発明は、さらに、金属マグネシウム箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、スズ箔、銅箔、亜鉛箔の調製に適用される。
【0054】
実施例1
【0055】
工程:複合リチウム塩の調製
【0056】
リチウム原料0.85LiOH~0.15Li
2CO
3を(質量分率で)均一に混合し、真空度1Pa、昇温速度5℃/minで600℃に昇温し、150min保温させ、自然冷却した後取り出した。取り出したサンプル(塊状固体)を直径5mmのジルコニウムボールを含むボールミルで粉砕した。ボールと原料との質量比10:1、回転速度500rpm、ボールミリング時間1hの条件下で、ボールミリングして複合リチウム塩を得た。レーザー粒度分析装置を用いて複合リチウム塩の粒径を測定した。複合リチウム塩の粒径D50が30μmである。XRD試験およびGSASソフトウェアで複合リチウム塩に対して物相の定性・定量分析を行った。
図1に示すように、XRD試験により、LiOH、Li
2OおよびLi
2CO
3の複合リチウム塩の回折パターンが現れ、回折角(ピーク位置)を測定することにより、化学成分の定性分析を行い、スペクトルの積分強度(ピーク強度)を測定することにより、定量分析を行った。複合リチウム塩の化学式が0.092LiOH・0.048Li
2CO
3・0.86Li
2Oであることを測定した。
【0057】
工程2:真空熱還元して金属蒸気を生成する。
【0058】
複合リチウム塩と還元剤であるアルミニウム粉末を質量比1:0.7で、3.214kgの複合リチウム塩(102.19molの0.092LiOH・0.048Li2CO3・0.86Li2Oに相当)および2.25kgのアルミニウム粉末(83.40molのAl原子に相当)秤量し、均一に混合させ、30MPaでペレット状にプレスし、真空度1Paの真空還元炉中で真空熱還元を行い、熱還元温度800℃、熱還元時間6hの条件下で、金属蒸気を生成した。
【0059】
工程3:金属蒸気を真空蒸留する。
【0060】
工程2で得られた金属蒸気をまず孔径1μmのセラミックフィルターに通過させて粉塵を除去した。金属蒸気を熱交換管に通過させ、温度を800℃から400℃に低下させた後、蒸留タンクに導入して蒸留し、蒸留タンク内の温度を400℃に制御し、真空度を5×10-3Paに制御した。金属蒸気のうちのリチウム蒸気を液体金属リチウムに凝縮させ、連結管を介してリチウム貯蔵タンクに貯蔵した。金属蒸気のうちのナトリウム蒸気およびカリウム蒸気を蒸留管路に導入してナトリウム・カリウム凝縮タンクに凝縮させ、蒸留管路の温度を320℃に維持した。そのうち、蒸留管路は、ナトリウム蒸気およびカリウム蒸気中に「逃げた」リチウム蒸気を凝縮させてもう一度回収するという役割を果たす。熱交換管路を通過した金属蒸気の温度を800℃から400℃に低下させ、熱交換管路における熱交換液が加熱された。熱交換管は、蒸留タンク周りの熱交換ジャケットに連通され、交換熱を蒸留タンクに伝達した。そして、加熱ユニットによって蒸留タンクを400℃に加熱した。ナトリウム・カリウム凝縮タンク周りに凝縮ジャケットが設けられており、冷却温度が-10℃であり、ナトリウム蒸気およびカリウム蒸気を凝縮させた。
【0061】
工程4:真空蒸着で超薄金属リチウム箔を調製する。
【0062】
送液パドルによってリチウム貯蔵タンクにおける液体金属リチウムを真空蒸着装置の坩堝に導入した。そのうち、送液パドルは、3つの羽根を有し、電力で等速回転することにより、液体金属リチウムを等速で坩堝に移送した。坩堝を加熱し、坩堝の温度を600℃に昇温させ、液体金属リチウムをリチウム蒸気に変化させた後、ベースシートに蒸着させて均一なリチウム箔を形成した。巻取収集装置によってベースシートを巻取りながら、リチウム箔を収集した。蒸着終了後、アルゴンガスを導入して、リチウム箔を取り出した。そのうち、真空蒸着装置の真空度が5×10-3Pa、坩堝とベースシートとの距離が20mm、巻取収集装置の巻取速度が1m/min、巻取基板の温度が70℃、ベースシートが銅箔である。
【0063】
実施例に用いられた装置模式図は、
図7に示され、例示的なものに過ぎず、実際的なサイズおよび比例で本願の装置を示すためのものではない。
【0064】
膜厚検出器を用いて得られたリチウム箔の厚さを測定した。ICP検出装置を用いて蒸着した後に得られた金属リチウム箔に対して化学成分の検出を行い、リチウム箔におけるリチウムの純度を測定した。以上の金属リチウムの回収率の計算ステップによって、金属リチウムの回収率を算出した。
【0065】
実施例1で調製したリチウム箔の厚さが13μm、リチウム箔におけるリチウムの純度が99.99wt%、金属リチウムの回収率が85.0%である。
【0066】
実施例2~6
【0067】
調製方法の工程は、関連した成分およびパラメータなどが異なる以外、大体実施例1と同様である。具体的には、表1~5に示される。
【0068】
比較例1~4
【0069】
調製方法の工程は、関連した成分およびパラメータなどが異なる以外、大体実施例1と同様である。具体的には、表1~5に示される。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表5に示すように、実施例1~6および比較例1~4の試験結果に対する分析から分かるように、実施例1~6における複合リチウム塩xLiOH・yLi2CO3・zLi2Oに比べて、比較例1~4は、リチウム原料が、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムであり、熱分解された後に得られた複合リチウム塩が、それぞれ炭酸リチウムと酸化リチウムの複合体または水酸化リチウムと酸化リチウムの複合体であり、得られた金属リチウムの回収率が、それぞれ65.4%、74.8%、73.4%、77.3%であり、明らかに実施例1~6よりも低い。その原理は、以下の通りである可能性がある。実施例1~6における複合リチウム塩に特定の割合範囲で水酸化リチウム、炭酸リチウムおよび酸化リチウムが含まれる。温度が450℃を超える場合、水酸化リチウムは、液体に溶解し、複合リチウム塩と還元剤との間で一定の流動性をもたらし、複合リチウム塩の拡散を促進し、複合リチウム塩と還元剤との接触を増加して、熱還元反応がより十分になる。それと同時に、少量存在する炭酸リチウムは、水酸化リチウムおよび酸化リチウムの相乗拡散に寄与して、金属リチウムの回収率をより高くする。
【0076】
表5に示すように、比較例1、3および比較例2、4の試験結果に対する分析から分かるように、比較例1、3は熱分解温度が600℃であり、比較例2、4は熱分解温度が800℃と高く、原料成分の分解率が顕著に向上した。比較例1、3に比べて、リチウムの回収率は、明らかに向上したが、依然として実施例1~6よりも低い。これは、複合リチウム塩における水酸化リチウムと炭酸リチウムの相乗作用が真空熱還元の効率を向上させることが再度説明されている。
【0077】
表5に示すように、実施例1~6および比較例1~4における試験結果に対する分析から分かるように、実施例1~6におけるリチウムの純度が99.96%以上であり、金属の回収率が81.7%以上であり、いずれも比較例1~4よりも高い。その原理は、以下の通りである可能性がある。リチウム原料は、複合リチウム塩を用いるので、熱還元温度が低く、原料の利用率がより高い。また、真空還元-真空蒸留-真空蒸着の連続的な一体化プロセスを用い、蒸着過程におけるリチウムが蒸留タンクにおける液体リチウムに由来することにより、固体リチウムの前処理を省き、金属リチウム錠の貯蔵コストを節約し、生産効率を大幅に向上させることができるため、金属リチウムの純度を向上させ、金属リチウムの回収率の向上に寄与する。本発明は、金属リチウムの回収率が熱還元反応の原料、反応過程および産業化反応装置により影響される。従来技術に比較すると、実質的な進歩を取得する。
【0078】
本発明の有益な効果をまとめて、以下のように示す。
【0079】
1、本発明は、複合リチウム塩の処方、熱還元反応の温度、蒸留装置の温度、真空度、物質および還元剤などの条件を精確に調節して、真空還元、真空蒸留および真空蒸着を連続的に行うことにより、リチウムの調製、蒸留精製および蒸着を連続的に行うことができ、超薄金属リチウム箔の調製効率を向上させ、調製コストを節約し、厚さ5~13μm、純度99.96wt%以上の金属リチウム箔を得ることに成功する。
【0080】
2、本発明は、真空還元炉、蒸留タンクおよび蒸着装置を一体化にすることにより、リチウムの調製およびリチウムの蒸着を連続的に行うことができるとともに、熱交換管を連結管路として用い、複数の装置部材の周りに熱交換装置を設けることにより、「廃熱」を再利用する。一体化された装置は、調製プロセスを簡素化にして、超薄金属リチウム箔の製造効率を向上させ、金属リチウムの純度を向上させ、外界からの不純物の混入を減少し、非連続的な装置間の物質の転移による物質の損失を取り除き、エネルギー消費及び貯蔵コストを減少することができる。
【0081】
3、本発明に用いられる複合リチウム塩は、熱還元反応が十分に行うことを促進する。温度が450℃を超えると、水酸化リチウムは、液体に溶解し、複合リチウム塩と還元剤との間で一定の流動性をもたらすことで、複合リチウム塩をより均一に拡散させ、複合リチウム塩と還元剤との接触程度を向上させて、熱還元反応をより十分に行わせる。少量存在する炭酸リチウムは、水酸化リチウムおよび酸化リチウムの相乗拡散に寄与して、金属リチウムの回収率をより高くする。
【0082】
4、蒸着に必要とするリチウム源は、高温液体としてそのまま坩堝に流入し、従来の蒸着プロセスに用いられた固体リチウム錠に対して、リチウム源に対して表面酸化物の処理及び包装を行う必要ないため、リチウム錠の貯蔵コストを節約し、エネルギー消費を低下させ、煩雑なプロセス工程を簡素化にした。
【0083】
あらゆる開示される実施例に対する上記説明は、本発明の最適な実施例、および使用される技術原理に過ぎず、本発明を制限するためのものではない。当業者は理解でき、そして当業者にとっては、これらの実施例に対する複数種の修正が自明であることを理解すべきである。明らかには、当業者が実施例に対して行われる各種の変更及び改良は、本発明の構想及び範囲から逸脱せず、これらの変更及び改良は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0084】
1、フィード口
2、真空還元炉
3、スラグ貯蔵タンク
4、ペレット製造圧力機
5、熱交換管
6、ミクロンセラミックフィルター
7、バルブ
8、蒸留タンク
9、連結管
10、蒸留管路
11、ケロシンフィード口
12、ナトリウム・カリウム凝縮タンク
13、ナトリウム・カリウム収集タンク
14、リチウム貯蔵タンク
15、送液パドル
16、真空蒸着室
17、巻取収集装置
18、坩堝
19、蒸気フード
20、ドア
21、第1の真空ポンプ
22、第2の真空ポンプ
23、第3の真空ポンプ