IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コアの製造方法及び装置並びに積層鉄心 図1
  • 特許-コアの製造方法及び装置並びに積層鉄心 図2
  • 特許-コアの製造方法及び装置並びに積層鉄心 図3
  • 特許-コアの製造方法及び装置並びに積層鉄心 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】コアの製造方法及び装置並びに積層鉄心
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20240701BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240701BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240701BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B21D28/02 C
B21D28/02 Z
H02K15/02 E
H02K15/02 F
H01F41/02 B
H01F27/245 150
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023549974
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2022044636
(87)【国際公開番号】W WO2023106246
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2021198146
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田丸 弘助
(72)【発明者】
【氏名】萩原 赳
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205836(JP,A)
【文献】特開2013-118732(JP,A)
【文献】特開2011-125884(JP,A)
【文献】特開昭60-092023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
H02K 15/02
H01F 41/02
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記ダイの回転を一枚の鉄心片の打ち抜きの度に行い、
前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から前記下部の積層鉄心が抜ける前で前記ダイの回転を停止させながら前記鉄心片の打ち抜き及び保持を継続し、
前記ダイの回転の停止中に前記下部の積層鉄心が前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から抜けた状態で前記受け台が下降する、
コアの製造方法。
【請求項2】
請求項1のコアの製造方法であって、
前記ダイの回転の停止は、前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜ける前後にわたって行われる、
コアの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のコアの製造方法であって、
前記ダイの回転の停止は、前記受け台が下降する前後にわたって行われる、
コアの製造方法。
【請求項4】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けた状態で前記受け台が下降するときに前記ダイの回転を停止し、
前記ダイの回転の停止は、前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けるときから前記受け台が下降するときにわたって行われる、
コアの製造方法。
【請求項5】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けた状態で前記受け台が下降するときに前記ダイの回転を停止し、
前記ダイの回転の停止は、前記受け台が下降してから前記下部の積層鉄心を排出させた後に前記上部の積層鉄心に対する支持位置に上昇するまで行われる、
コアの製造方法。
【請求項6】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けた状態で前記受け台が下降するときに前記ダイの回転を停止し、
前記ダイの回転の停止中に積層される鉄心片は、前記所定高さの積層鉄心の5~20%である、
コアの製造方法。
【請求項7】
打ち抜き用のパンチ及び回転自在なダイと、
昇降可能な受け台と、
前記パンチ、前記ダイ、及び前記受け台を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記パンチにより磁性鋼板から打ち抜かれた鉄心片を前記ダイ内に保持させ、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことにより前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成させ、
前記ダイから抜けて前記受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させる、コアの製造装置であって、
前記制御部は、
前記ダイの回転を一枚の鉄心片の打ち抜きの度に行い、
前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から前記下部の積層鉄心が抜ける前で前記ダイの回転を停止させながら前記鉄心片の打ち抜き及び保持を継続し、
前記ダイの回転の停止中に前記下部の積層鉄心が前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から抜けた状態で前記受け台が下降する、
コアの製造装置。
【請求項8】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けた状態で前記受け台が下降するときに前記ダイの回転を停止
前記ダイの回転が停止されている間に打ち抜かれた前記鉄心片が積層方向の両側に位置する、
コアの製造方法
【請求項9】
パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、
前記ダイを所定角度回転させ、
前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、
前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、
前記下部の積層鉄心が前記ダイから抜けた状態で前記受け台が下降するときに前記ダイの回転を停止
前記ダイの回転が停止されている間に打ち抜かれた前記鉄心片が積層方向の中間部に位置する、
コアの製造方法
【請求項10】
相互に積層された複数の磁性鋼板製の鉄心片を備え、
前記積層された複数の鉄心片は、積層方向で下方に隣接する鉄心片に対して周方向に所定角度回転した状態で積層されている鉄心片と、前記積層方向の両側に位置し前記積層方向で下方に隣接する鉄心片に対して前記周方向に回転していない状態で積層されている非回転鉄心片とを備えた、
積層鉄心。
【請求項11】
相互に積層された複数の磁性鋼板製の鉄心片を備え、
前記積層された複数の鉄心片は、積層方向で下方に隣接する鉄心片に対して周方向に所定角度回転した状態で積層されている鉄心片と、前記積層方向の中間部に位置し前記積層方向で下方に隣接する鉄心片に対して前記周方向に回転していない状態で積層されている非回転鉄心片とを備えた、
積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モーターや発電機のコアの製造方法及び装置並びに積層鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコアの製造方法としては、例えば特許文献1に記載された積層鉄心の製造方法がある。
【0003】
この製造方法では、パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、ダイを所定角度回転させる。そして、これら鉄心片の打ち抜きによる保持とダイの回転を繰り返すことで、複数の鉄心片を位相をずらしつつ積層した、つまり複数の鉄心片を転積した積層鉄心を形成する。
【0004】
形成された積層鉄心は、受け台上で受けられ、ダイから抜けた際に受け台を下降させることで取り出される。
【0005】
このような製造方法では、鉄心片の打ち抜き速度及びダイの回転速度を上げることで製造効率を向上することができる。しかし、鉄心片の打ち抜き速度及びダイの回転速度を上げると、ダイから抜けた積層鉄心がダイ内に保持されている上部の積層鉄心から離れるよりも早くダイの回転が開始されることがある。
【0006】
その結果、下部及び上部の積層鉄心の端面相互が摺動し、積層鉄心に疵が付くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-92023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、積層鉄心が端面相互の摺動により疵付くおそれがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パンチにより磁性鋼板から鉄心片をダイ内に打ち抜いて保持し、前記ダイを所定角度回転させ、前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことによって前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成し、前記ダイから抜けて受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させるコアの製造方法であって、前記ダイの回転を一枚の鉄心片の打ち抜きの度に行い、前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から前記下部の積層鉄心が抜ける前で前記ダイの回転を停止させながら前記鉄心片の打ち抜き及び保持を継続し、前記ダイの回転の停止中に前記下部の積層鉄心が前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から抜けた状態で前記受け台が下降するコアの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、打ち抜き用のパンチ及び回転自在なダイと、昇降可能な受け台と、前記パンチ、前記ダイ、及び前記受け台を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記パンチにより磁性鋼板から打ち抜かれた鉄心片を前記ダイ内に保持させ、前記ダイを所定角度回転させ、前記鉄心片の打ち抜きによる保持と前記ダイの回転を繰り返すことにより前記鉄心片を積層した積層鉄心を形成させ、前記ダイから抜けて前記受け台上に支持された所定高さの下部の積層鉄心を前記受け台の下降により上部の積層鉄心から分離させコアの製造装置であって、前記制御部は、前記ダイの回転を一枚の鉄心片の打ち抜きの度に行い、前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から前記下部の積層鉄心が抜ける前で前記ダイの回転を停止させながら前記鉄心片の打ち抜き及び保持を継続し、前記ダイの回転の停止中に前記下部の積層鉄心が前記ダイの前記鉄心片を保持する部分から抜けた状態で前記受け台が下降するコアの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下部及び上部の積層鉄心の端面相互が摺動せず、下部及び上部の積層鉄心の疵付きが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例に係るコアの製造装置を示す概略断面図である。
図2図2は、図1の要部を拡大して示す概略断面図である。
図3図3(A)~図3(D)は、実施例に係るコアの製造方法を示す概略断面図である。
図4図4(A)及び(B)は、実施例に係る積層鉄心を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
積層鉄心の端面相互の摺動による疵付きを抑制するという目的を、ダイの回転を一時的に停止することによって実現した。
【0014】
すなわち、本発明のコアの製造方法は、パンチ3により磁性鋼板Wから鉄心片Pをダイ5内に打ち抜いて保持し、ダイ5を所定角度回転させる。これら鉄心片Pの打ち抜きによる保持とダイ5の回転を繰り返すことによって、鉄心片Pを積層した積層鉄心Sを形成する。そして、ダイ5から抜けて受け台7上に支持された所定高さの下部の積層鉄心Sを、受け台7の下降により上部の積層鉄心Sから分離させる。この下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けた状態で受け台7が下降するときに、ダイ5の回転が停止される。
【0015】
ダイ5の回転の停止は、少なくとも下部の積層鉄心Sが上部の積層鉄心Sから分離するときに行われればよいが、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前後にわたって行ってもよい。
【0016】
また、ダイ5の回転の停止は、受け台7が下降する前後にわたって、或いは下部の積層鉄心がダイ5から抜けるときから受け台7が下降するときにわたって行われてもよい。
【0017】
また、ダイ5の回転の停止は、受け台7が下降して下部の積層鉄心Sを受け台7上から排出させた後に、上部の積層鉄心Sに対する支持位置に上昇するまで行ってもよい。
【0018】
ダイ5の回転の停止中に積層される鉄心片Pは、ダイ5の停止や積層鉄心Sの積層高さに応じて積層鉄心Sに対する割合が変動するが、所定高さの積層鉄心Sの5~20%とすることができる。
【0019】
コアの製造装置1は、打ち抜き用のパンチ3及び回転自在なダイ5と、昇降可能な受け台7と、パンチ3、ダイ5、及び受け台7を制御する制御部9とを備える。
【0020】
制御部9は、パンチ3により磁性鋼板Wから打ち抜かれた鉄心片Pをダイ5内に保持させ、ダイ5を所定角度回転させ、鉄心片Pの打ち抜きによる保持とダイ5の回転を繰り返すことにより鉄心片を積層した積層鉄心Sを形成させる。また、制御部9は、ダイ5から抜けて受け台7上に支持された所定高さの下部の積層鉄心Sを受け台7の下降により上部の積層鉄心Sから分離させる。この下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けた状態で受け台7が下降するときに、制御部9は、ダイ5の回転を停止する。
【0021】
コアの製造方法によって製造された積層鉄心Sは、ダイ5の回転が停止されている間に打ち抜かれた鉄心片Pを積層方向の両側又は中間部に位置させる。
【実施例1】
【0022】
[積層環状鉄心の押出装置]
図1は、本発明の実施例1に係るコアの製造装置を示す概略断面図である。図2は、図1の要部を拡大して示す概略断面図である。
【0023】
コアの製造装置1は、電動モーターや発電機のローターコア又はステーターコアであるコアの製造方法に用いられ、例えば製造ラインに組み込まれている。この製造装置1は、間欠的に供給される磁性鋼板Wから複数の鉄心片Pを順次打ち抜いて位相をずらしつつ積層した、つまり複数の鉄心片Pを転積したコア用の積層鉄心Sを形成する。なお、各鉄心片Pは、単一の環状鉄心片である。
【0024】
かかる製造装置1は、パンチ3及びダイ5と、受け台7と、制御部9とを備える。
【0025】
パンチ3は、上型(図示せず)に設けられ、昇降自在に構成されている。ダイ5は、下型(図示せず)に設けられ、パンチ3に対応して配置されている。パンチ3及びダイ5は、上型と下型との間に間欠的に供給された磁性鋼板Wから複数の鉄心片Pをダイ5内に連続的に打ち抜いて保持する。
【0026】
ダイ5は 回転自在に構成され、所定角度毎に一方向に間欠回転される。ダイ5の一回転の角度(所定角度)は、任意であり、30度、60度、90度、120度、180度等に設定することが可能である。ダイ5の回転は、サーボモーター等の適宜の駆動装置によって実現され、一枚の鉄心片Pの打ち抜きの度に行われる。
【0027】
本実施例のダイ5は、ダイホルダー11と、ダイ本体部13と、スクイーズリング15とを備えている。ダイホルダー11は、筒状に構成され、下型に対してベアリング(図示せず)によって回転自在に支持される。
【0028】
このダイホルダー11には、ダイ本体部13及びスクイーズリング15が支持されている。ダイ本体部13は、リング状に形成されており、ダイホルダー11の支持孔11aの内周に固定されている。なお、ダイ本体部13は、ダイホルダー11を省略し、スクイーズリング15と共に下型に直接回転自在に支持してもよい。
【0029】
スクイーズリング15は、鉄心片Pの打ち抜き方向でダイ本体部13に隣接して配置され、支持孔11aの内周に支持されている。スクイーズリング15は、ダイ本体部13よりも打ち抜き方向に長いリング状に形成されている。なお、打ち抜き方向は、鉄心片Pの積層方向と一致する。
【0030】
このスクイーズリング15は、打ち抜かれた鉄心片Pを外周から押圧することで側圧を与えて保持する。スクイーズリング15内に保持した複数の鉄心片Pが相互に積層されることによって積層鉄心Sが形成される。なお、本実施例において、スクイーズリング15内に単一の積層鉄心Sのみが位置するが、スクイーズリング15内に複数の積層鉄心Sが位置してもよい。
【0031】
なお、ダイ5は、スクイーズリング15を省略することも可能である。この場合、ダイ本体部13を打ち抜き方向に延長するか、ダイホルダー11の支持孔11aを縮径して、打ち抜かれた鉄心片Pを保持すればよい。
【0032】
受け台7は、ダイ5に対して昇降可能に構成され、積層鉄心Sを載置させて支持する。この受け台7は、載置した積層鉄心Sと共に回転する回転板12を備える。なお、回転板12は省略することも可能である。
【0033】
受け台7の昇降は、油圧シリンダー装置等の適宜の昇降装置によって行われる。受け台7は、鉄心片Pの積層に応じてスクイーズリング15内を下降する積層鉄心Sの端面Fを当接して受けながら、積層鉄心Sを載置した状態で共に下降する。この下降は、鉄心片Pの積層のための下降であり、積層した鉄心片Pの厚み分だけ受け台7が下降する。
【0034】
この受け台7は、ダイ5から抜けて所定高さとなった積層鉄心Sを下降により上部の積層鉄心Sから分離させることを可能とする。この下降は、積層鉄心Sを分離させるための下降であるため、鉄心片Pの積層のための下降よりも下降量が大きい。積層鉄心Sがダイ5から抜けるとは、積層鉄心Sがダイ5による保持状態から解放されることであり、本実施例においてスクイーズリング15から抜けて側圧から解放されることをいう。
【0035】
下降した受け台7は、所定の排出位置で載置した積層鉄心Sを排出させる。この排出は、プッシャー等の適宜の排出装置により行わせることができる。排出後の受け台7は、上部の積層鉄心Sに対する支持位置にまで上昇する。
【0036】
支持位置は、受け台7が上部の積層鉄心Sの端面Fに当接する位置である。なお、支持位置は、上部の積層鉄心Sの端面Fの位置に拘わらず、予め定められた位置としてもよい。
【0037】
制御部9は、プロセッサー及びメモリーを有する情報処理装置からなり、パンチ3、ダイ5、及び受け台7を制御する。この制御部9は、パンチ3及びダイ5の駆動部並びに受け台7の昇降装置8に適宜のデータライン10を介して接続されている。
【0038】
ただし、図1において、データライン10は、パンチ3及びダイ5に対して直接接続されたものとして表現している。なお、制御部9は、単一の情報処理装置だけでなく、複数の情報処理装置の組み合わせであってもよい。
【0039】
制御部9は、パンチ3及びダイ5の制御により、磁性鋼板Wから打ち抜かれた鉄心片Pをダイ5内に保持させ、ダイ5を所定角度回転させる。そして、制御部9は、これら鉄心片Pの打ち抜きによる保持とダイ5の回転を繰り返させることにより、複数の鉄心片Pを位相をずらしつつ積層した積層鉄心Sを形成させる。
【0040】
また、制御部9は、受け台7の制御により、ダイ5から抜けて受け台7上に支持された所定高さの下部の積層鉄心Sを受け台7の下降により上部の積層鉄心Sから分離させる。下降のタイミングは、鉄心片Sの打ち抜き数が所定枚数に達したときに行われる。この所定枚数は、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けたとき又は抜けた後に対応する。
【0041】
さらに、本実施例の制御部9は、パンチ3及びダイ5の制御により、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けて受け台7が下降するときに、ダイ5の回転を停止する。この停止中も、パンチ3による鉄心片Pの打ち抜きによるダイ5への保持を継続する。
【0042】
ダイ5の回転の停止は、少なくとも下部の積層鉄心Sが上部の積層鉄心Sから分離するときに行われればよい。本実施例においては、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前後にわたってダイ5の回転が停止される。
【0043】
下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前は、積層鉄心Sの上端部がダイ5側に保持されていると予測される状態をいい、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けた後は、積層鉄心Sの上端部がダイ5側で保持されていないと予測される状態をいう。
【0044】
この予測では、設計通りの高さ(設計高さ)を有する積層鉄心Sを基準とする。ただし、下部の積層鉄心Sの設計高さに製造時のばらつきを考慮した予測高さを基準としてもよい。この場合、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前は、最も低い予測高さの下部の積層鉄心Sの上端部がダイ5側から抜けるとき又はそれより前であってもよい。
【0045】
同様に、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けた後は、下部の積層鉄心Sの予測高さを用いる場合、最も高い予測高さの積層鉄心Sの上端部がダイ5側から抜けるとき又はそれより後であってもよい。
【0046】
具体的には、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前後は、抜ける前後の積層鉄心Sの上端の端面Fの位置の積層方向での間隔(停止時下降量)が、積層鉄心Sの5%~20%となる範囲である。
【0047】
下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けた後におけるダイ5の回転の停止は、受け台7が下降して下部の積層鉄心Sを受け台7上から排出させた後に上部の積層鉄心Sに対する支持位置に上昇するまで行われる。
【0048】
従って、ダイ5の回転の停止は、受け台7が下降する前後にわたって行われている。なお、ダイ5の回転の停止は、受け台7が下降する前後にわたってのみ行ってもよい。この場合において、受け台7が下降する前は、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前、時、或いは後等とすることができるが、そのさらに前又は後であってもよい。
【0049】
本実施例において、受け台7の下降から支持位置に戻るまでは約2秒である。この場合、排出位置をよりダイ5に近接させる等、排出動作に要する時間を短縮すれば、ダイ5の回転の停止時間は短縮可能である。また、ダイ5の停止は、少なくとも下部の積層鉄心Sが上部の積層鉄心Sから分離する瞬間だけ行えばよいため、より短い時間とすることも可能である。
【0050】
このダイ5の回転停止中に積層される鉄心片P(非回転鉄心片Pと称することがある)は、所定高さの積層鉄心Sの5~20%、好ましくは5~10%となるようにする。
【0051】
このように、本実施例のダイ5の回転の停止は、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けるときから受け台7が下降するときまでを含む下部の積層鉄心Sが抜ける前後にわたって行われている。なお、ダイ5の回転の停止を、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けるときから受け台7が下降するときまでのみ行ってもよい。
【0052】
[コアの製造方法]
図3(A)~図3(D)は、実施例1に係るコアの製造方法を示す概略断面図である。なお、図3(A)~図3(D)では、理解容易のために、上部の積層鉄心Sのハッチングを省略している。また、図3(A)~図3(D)に基づく以下の説明では、設計高さを有する鉄心片Sの例について説明する。
【0053】
本実施例のコアの製造方法では、まず図1及び図3のように、上型及び下型間に磁性鋼板Wを間欠的に供給し、つまり供給と停止を繰り返し、停止する度に磁性鋼板Wからパンチ3により鉄心片Pをダイ5内に打ち抜いて保持させる。
【0054】
打ち抜かれた鉄心片Pは、ダイ本体部13を経た後、スクイーズリング15によって側圧を付与されながら受け台7上に順に積層される。受け台7は、鉄心片Pの積層に応じて下降し、連続的な鉄心片Pの積層を可能とする。
【0055】
各鉄心片Pの打ち抜きの際は、打ち抜きの前又は後においてダイ5を鉄心片Pの周方向に所定角度回転させる。これにより、ダイ5内に保持された鉄心片Pは、直前に打ち抜かれた鉄心片Pに対して位相をずらして積層されることになる。
【0056】
積層された複数の鉄心片Pは、相互間がカシメによって結合された状態で積層鉄心Sを構成する。カシメは、パンチ3によって打ち抜かれた鉄心片Pを積層する際に行われる。
【0057】
積層鉄心Sは、所定高さとなったときに積層が完了する。この所定高さの積層鉄心Sを下部とし、その上に続けて上部の積層鉄心Sの積層が開始される。下部及び上部の積層鉄心S間は、カシメによる結合はなく、突き当たっているのみである。
【0058】
上部の積層鉄心Sの積層が進むと、この上部の積層鉄心Sに押し出されるようにして、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けることになる。ダイ5から抜けた下部の積層鉄心Sは、ダイ5に保持されている上部の積層鉄心Sに対して相対回転が可能な状態となる。
【0059】
本実施例では、図3のように、この下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前後にわたってダイ5の回転が停止され、上部の積層鉄心Sの鉄心片Pの積層が継続される。なお、図3において、ダイ5の回転の停止中に積層された鉄心片Pは太枠で囲んで示す。
【0060】
かかるダイ5の回転の停止中に、ダイ5から抜けた下部の積層鉄心Sを受け台7の下降により上部の積層鉄心Sから分離させる。つまり、ダイ5から抜けた下部の積層鉄心Sは、ダイ5の回転の停止により上部の積層鉄心Sの相対回転が抑制されながら、上部の積層鉄心Sから分離させることができる。
【0061】
具体的には、図3(A)のように、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前において、ダイ5の回転の停止が開始される。このとき、下部の積層鉄心Sは、重量に対するダイ5による保持力が小さくなる。このため、下部の積層鉄心Sは、ダイ5が回転すると、これに伴って回転しないおそれがあり、上部の積層鉄心Sに対して相対回転するおそれがある。
【0062】
これに対し、本実施例では、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前において、ダイ5の回転を停止することで、下部の積層鉄心S及び上部の積層鉄心S間の相対回転を抑制して疵を抑制できる。
【0063】
かかるダイ5の回転の停止状態において、鉄心片Pの打ち抜き及び保持を継続することで、上部の積層鉄心Sの積層高さが高くなり、これに伴い下部の積層鉄心Sが下降する。
【0064】
そして、図3(B)のように、下部の積層鉄心Sの上端の端面Fがスクイーズリング15の開口から下方に位置する際に、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けることになる。なお、この下部の積層鉄心Sがダイ5から抜けることは検出していない。
【0065】
次いで、図3(C)及び図3(D)のように、下部の積層鉄心Sがさらに下降し、鉄心片Sの打ち抜き数が直前の下降から数えて所定枚数に達したときに、受け台7が下降する。この下降により、下部の積層鉄心Sを上部の積層鉄心Sから分離させることができる。
【0066】
このとき、本実施例では、上部の積層鉄心Sのさらに上部の積層鉄心Sの鉄心片Sの積層が開始されている。なお、図3(C)及び図3(D)では、さらに上部の積層鉄心Sの鉄心片Sにハッチングを入れて示す。
【0067】
このように、本実施例では、ダイ5から抜けた下部の積層鉄心Sを、ダイ5の回転の停止により上部の積層鉄心Sとの相対回転が抑制されながら、上部の積層鉄心Sから分離させることができる。
【0068】
従って、鉄心片Pの打ち抜き速度及びダイ5の回転速度を上げて製造効率を向上させても、下部及び上部の積層鉄心Sの端面F相互が摺動せず、それら積層鉄心Sに疵が付くことを抑制できる。
【0069】
また、本実施例では、下部の積層鉄心Sがダイ5から抜ける前後にわたってダイ5の回転が停止されるため、下部の積層鉄心Sのダイ5からの抜けを検出しなくても、下部の積層鉄心Sに高さのばらつきに対応することができる。
【0070】
特に、非回転鉄心片Pを5%~20%の間で設定することで、非回転鉄心片Pの積層鉄心Sへの影響を抑制しながら積層鉄心Sに高さのばらつきに確実に対応することができる。
【0071】
受け台7が下降した後は、受け台7を排出位置に位置させ、下部の積層鉄心Sを受け台7上から排出させる。その後、受け台7は、上部の積層鉄心Sに対する支持位置に上昇して上部の積層鉄心Sの端面Fに当接する。この受け台7が支持位置に至るまでダイ5の回転の停止は継続される。従って、受け台7と積層鉄心Sとの間の相対回転を抑制して、積層鉄心Sに疵が付くことを抑制できる。
【0072】
[積層鉄心]
図4(A)及び(B)は、積層鉄心Sを示す概念図である。
【0073】
図4(A)及び(B)のように、積層鉄心Sでは、非回転鉄心片Pの位置がダイ5の回転の停止と積層鉄心Sの完成のタイミング等に応じて変動する。
【0074】
ダイ5の回転を停止している間に積層鉄心Sが完成する場合、積層鉄心Sの積層方向の両側に非回転鉄心片Pが位置する。この場合、非回転鉄心片Pが積層方向の両側に分散して配置されるため、非回転鉄心片Pを含みながら積層鉄心Sの精度を向上することができる。
【0075】
ダイ5の回転を停止している間に積層鉄心Sが完成しない場合、積層鉄心Sの積層方向の中間部に非回転鉄心片Pが位置する。この場合、非回転鉄心片Pが積層方向の中間部に位置することで、非回転鉄心片Pを含みながらバランスがよい。
【符号の説明】
【0076】
1 製造装置
3 パンチ
5 ダイ
7 受け台
9 制御部
W 磁性鋼板
P 鉄心片
S 積層鉄心

図1
図2
図3
図4