(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】包装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20240702BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240702BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240702BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240702BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240702BHJP
C09D 11/08 20060101ALI20240702BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20240702BHJP
C09D 101/02 20060101ALI20240702BHJP
C09D 123/04 20060101ALI20240702BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240702BHJP
C09D 193/04 20060101ALI20240702BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B7/023
B32B27/00 H
B32B27/28 101
B32B27/32 Z
B32B29/00
C09D11/08
C09D11/102
C09D101/02
C09D123/04
C09D133/04
C09D193/04
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023123079
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市口 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】成廣 治憲
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-165023(JP,A)
【文献】特開2023-081594(JP,A)
【文献】特許第3367089(JP,B2)
【文献】特開2023-005160(JP,A)
【文献】特開平06-019399(JP,A)
【文献】特開平11-12989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00-201/10
B65D 1/00- 90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、紙基材、印刷層、及び表面保護層をこの順に有
し、更に、バリア層を含む包装材であって、
前記表面保護層が、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含
み、
JISZ8741:1997に記載された方法で測定した、前記表面保護層の60度光沢値が、60以下である、包装材。
【請求項2】
アクリル樹脂及びセルロース系樹脂と、ロジン樹脂との質量比が、90:10~30:70である、請求項
1に記載の包装材。
【請求項3】
ヒートシール層が、ポリエチレン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
ポリエチレン系樹脂が、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂及びエチレンアクリル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項
3に記載の包装材。
【請求項5】
印刷層が、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、及びスチレン-マレイン酸共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項6】
印刷層が、糖由来樹脂及び/又はロジン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された包装材から形成された包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装材(パッケージ)には印刷層や表面保護が施されているのが一般的である。印刷層は意匠性、美粧性、高級感等を付与し、表面保護層は包装材を物理的接触から保護するため、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムを用いたラミネート包装材が多い。近年では環境対応として包材バイオマス化がなされ、例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、そもそもラミネート包装材は、プラスチックフィルムの使用量が多いため、バイオマスとしての効果は低く、環境対応、プラスチックの使用量の削減を目的として紙基材でバイオマス化された紙化包材が望まれており、近年、技術開発がなされている。さらに使用する印刷インキ等においても、バイオマスインキを使用することが、要求されている。
【0004】
例えば、包装材の一部に紙基材を使用した例として、特許文献2には、ヒートシール層に水分散性バインダーを含む再乖離後のパルプ回収率が85%以上であるヒートシール紙が記載されている。しかし、当該ヒートシール紙を用いて印刷等をされた例に関しての言及はない。また、例えば、特許文献3には、ロジン樹脂エマルジョンを使用した水性フレキソインキ組成物の記載はされているが、紙化包材としての実施形態の記載はない。従って、紙化包材として想定される耐水摩擦性及び耐熱性その他の課題を満足できるものは未だ見出されていない。また、紙基材やバイオマスインキを用いた包装材の実用性向上のためには、紙化包材に求められるリリース性、水蒸気バリア性、及びヒートシール性を向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-051796号公報
【文献】特開2022-168003号公報
【文献】特開2019-108529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、耐水摩擦性、耐熱性、リリース性、水蒸気バリア性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
ヒートシール層、紙基材、印刷層、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、
前記表面保護層が、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含む、包装材に関する。
【0009】
本発明は、JISZ8741:1997に記載された方法で測定した、表面保護層の60度光沢値が、60以下である、前記包装材に関する。
【0010】
本発明は、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂と、ロジン樹脂との質量比が、90:10~30:70である、前記包装材に関する。
【0011】
本発明は、ヒートシール層が、ポリエチレン系樹脂を含む、前記包装材に関する。
【0012】
本発明は、ポリエチレン系樹脂が、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂及びエチレンアクリル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記包装材に関する。
【0013】
本発明は、更に、バリア層を含む、前記包装材に関する。
【0014】
本発明は、印刷層が、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、及びスチレン-マレイン酸共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記包装材に関する。
【0015】
本発明は、印刷層が、糖由来樹脂及び/又はロジン樹脂を含む、前記包装材に関する。
【0016】
本発明は、前記包装材から形成された包装袋に関する。
【0017】
本発明は、ヒートシール層、紙基材、印刷層及び表面保護層をこの順に有する包装材の製造方法であって、
紙基材の一方の面に、印刷インキを印刷して印刷層を形成する工程、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水性ロジン樹脂とを含むオーバーコート剤を、印刷層上に印刷して表面保護層を形成する工程、及び、紙基材の他方の面にヒートシール剤を塗工してヒートシール層を形成する工程を含む、包装材の製造方法に関する。
【0018】
本発明は、水性ロジン樹脂が、塩基性化合物により中和されており、前記塩基性化合物が、アンモニア、アミン系化合物、及び水酸化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記包装材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、耐水摩擦性、耐熱性、リリース性、水蒸気バリア性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を単に「積層体」と略記する場合があるが同義である。
なお、以下、本発明の説明において、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいい、オーバーコート剤とは表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0022】
[包装材]
ヒートシール層、紙基材、印刷層、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、
前記表面保護層が、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含む、包装材に関する。当該構成によってヒートシール性、耐水摩擦性が向上し、表面保護層にアクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含むことでリリース性、耐熱性が向上する。包装材は、紙基材上に、さらにバリア層を含んでよく、バリア層と紙基材を接着させるための、接着剤樹脂層を含んでよい。
【0023】
上記包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができる。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/紙基材/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/バリア層/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/印刷層/バリア層/表面保護層
【0024】
[表面保護層]
表面保護層は、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含む。表面保護層において、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂との合計含有量は、表面保護層の全質量中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。当該合計含有量が上記範囲である場合、表面保護層の強靭性が高くなり、包装材のリリース性、耐熱性が良好となる。表面保護層においてアクリル樹脂及びセルロース系樹脂と、ロジン樹脂との質量比率は90:10~30:70であることが好ましく、90:10~50:50であることがより好ましい。また、表面保護層の膜厚は0.3~10μmであることが好ましく、は1~7μmであることがより好ましく、3~5μmであることが更に好ましい。
なお上記包装材のリリース性とは印刷において巻き取った包装材から当該包装材を取り出すとき、紙基材の裏面(ヒートシール層)への印刷層及び/又は表面保護層の転移がないことをいう。
【0025】
表面保護層の光沢値は、60以下であることが好適であり、より好ましくは40以下、更に好ましくは20以下である。表面保護層の光沢値が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。光沢値は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定した60度光沢値(Gs(60))である。
なお、上記光沢値とは、包装材内側のアルミニウム蒸着層等の金属層に関する光沢度(鏡面の反射)とは異なる。
表面保護層がアクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含有することにより、表面保護層の光沢値を上記範囲とすることが容易となる。
【0026】
<表面保護層に含まれるアクリル樹脂>
アクリル樹脂は、水性樹脂であることが好ましく、当該水性樹脂は水溶性樹脂であっても水性エマルジョン樹脂であってもよいが、水性エマルジョン樹脂であることが好ましい。アクリル樹脂としてはスチレンアクリル共重合樹脂であることが好ましい。なお、水溶性スチレンアクリル共重合樹脂とは、アクリル樹脂自体が単独で水に溶解する樹脂のことを指す。
【0027】
アクリル樹脂は、酸基を有することが好ましく、その場合の酸価は、20~200mgKOH/gであることが好ましく、30~150mgKOH/gであることがなお好ましく、80~120mgKOH/gであることが更に好ましい。アクリル樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、包装材のリリース性及び耐熱性が良好となる。
【0028】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、2000~600000であることが好ましく、50000~600000であることがより好ましく、70000~600000であることが特に好ましい。
【0029】
アクリル樹脂のガラス転移温度は、-20~80℃であることが好ましく、-10~60℃であることがなお好ましく、0~40℃であることが更に好ましい。
【0030】
アクリル樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、印刷層の強靭性及び柔軟性の両立が可能となるため、リリース性及び耐熱性が良好となる。
【0031】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製、X-310、VS-1057、GL-2439、TS-1316、BASF社製、ジョンクリル74J、ジョンクリル537Eを使用することができる。
【0032】
<表面保護層に含まれるセルロース系樹脂>
セルロース系樹脂とは、セルロース由来樹脂をいう。以下にその好ましい態様を示す。 セルロース樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、10,000~70,000であることがより好ましい。また、ガラス転移温度は100℃~160℃で あることが好ましい。当該セルロース樹脂としては、例えばニトロセルロース、またはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアセテートアルキレート類、またはヒドロキシアルキルセルロースもしくはカルボキシアルキルセルロース等のアルキルセルロース類が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースであることが好ましい。特にニトロセルロースであることが好ましい。なお、ニトロセルロースで窒素含有量は10~13質量%であることが好ましい。
【0033】
<表面保護層に含まれるロジン樹脂>
ロジン樹脂は、水性樹脂からなることが好ましく、エマルジョン及び水溶性の何れでもよい。ロジン樹脂エマルジョンの酸価は、80~350mgKOH/gであることが好ましく、90~250mgKOH/gであることが好ましく、100~200mgKOH/gであることが更に好ましい。ロジン樹脂エマルジョンは、ロジンエステル等のロジン誘導体を、界面活性剤の存在下で、水に微分散させてなるものが好適である。ロジン樹脂エマルジョンは、具体的には、ハリマ化成社製、ハリエスターSK370N等が例示できる。
水溶性ロジン樹脂の酸価は80~350mgKOH/gであることが好ましく、100~300mgKOH/gであることがより好ましく、20~270mgKOH/gであることが更に好ましく、150~250mgKOH/gであることが特に好ましい。水溶性ロジン樹脂としては、具体的には、ハリマ化成社製、ハリマックT-80、AS-5、ハリエスターMSR-4、テスポール1150、1154、1158、荒川化学工業社製、マルキード31、32、33等を例示できる。但しこの水溶性ロジン樹脂は、塩基性化合物で中和されていることが好ましく、当該塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン等を挙げられる。具体的には、上記有機アミンとしては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。尚、ここで揮発性が高いアミンの沸点は、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが更に好ましい。ロジン樹脂の含有量は、水性印刷インキの固形分中に10質量%以上となるように含有させることが好ましい。
【0034】
上記酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0035】
上記重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
水性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としてはGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-40 1などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex OHpak LB-8 05などが挙げられる。検出器としては例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、測 定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定 のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
油性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としては、GPC装置:昭和電工社製ShodexGPC-104等が挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex LF-404等が挙げられる。検出器としては、RI(示差屈折計)等が挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としてはテトラヒロドフラン等が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
【0036】
上記ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(DSC測定装置、島津製作所製「DSC-60A」)を用いて測定することができ、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度として用いることができる。測定は、窒素雰囲気下で行うことが好ましく、測定温度範囲は-100~200℃、昇温速度は1~5℃/分が好ましい。
【0037】
<表面保護層に含まれるその他樹脂>
表面保護層は、さらにその他樹脂を含んでよい。その他樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、ひまし油系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
<表面保護層に含まれる添加剤>
本発明の表面保護層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤、撥水剤、剥離剤(シリコン)である。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、シリカ、硫酸バリウム、樹脂ビーズ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0039】
<オーバーコート剤>
表面保護層は、オーバーコート剤により形成される。当該オーバーコート剤はアクリル樹脂及び/又はセルロース系樹脂、並びに、ロジン樹脂を含み、更に液状媒体(有機溶剤、水等)、添加剤等を含んでもよい。
【0040】
オーバーコート剤におけるアクリル樹脂、セルロース系樹脂、及びロジン樹脂の固形分の含有量は、オーバーコート剤の全質量中、25~100質量%であることが好ましく、25~75質量%であることがより好ましく、25~45質量%であることが特に好ましい。
【0041】
(水性媒体)
オーバーコート剤は、水性媒体を含むことが好ましい。水性媒体とは、全質量中、水の含有量が50質量%以上である液状媒体をいう。水性媒体の主成分(50質量%以上)が水であることが好ましく、更に水溶性有機溶剤を含むこともできる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、水溶性有機溶剤としてアルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含有させることができる。水性媒体の含有量は、オーバーコート剤全量に対して30質量%以下、好ましくは20質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水と1:1で混合し、相分離しないものを指す。水溶性有機溶剤は、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、など挙げることができる。
【0042】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
【0043】
上記グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(有機溶剤)
オーバーコート剤は、液状媒体の主成分(50質量%以上)として有機溶剤を含む場合も好ましい。使用される有機溶剤としては、二種以上の有機溶剤からなる混合溶剤が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましく、芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤が更に好ましい。また、印刷適性が向上するため、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の好ましい質量比率(エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤)は50/50~90/10である。
【0045】
<オーバーコート剤の製造方法>
オーバーコート剤は、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた樹脂溶液、溶剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。オーバーコート剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに溶剤を適宜追加することもできる。
オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、50~300mPa・sであることが好ましい。
【0046】
<表面保護層の形成>
表面保護層は、例えば、基材上に印刷層が設けられた積層体の印刷層上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式が挙げられ、例えば、オーバーコート剤が各印刷方式に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで表面保護層を得ることができる。
【0047】
[印刷層]
印刷層は、ヒートシール層を具備した面とは反対の紙基材面上に位置する。印刷層は、水性樹脂又は油性樹脂及び着色剤を含む印刷インキからなることが好ましい。水性樹脂とは水に溶解又は分散可能な樹脂をいい、水溶性樹脂及び水性エマルジョン樹脂が挙げられる。ここで、水性エマルジョン樹脂は、水に不溶又は難溶であるが、界面活性剤等を用いて水中で分散安定化されている樹脂を指す。
【0048】
印刷インキが水性エマルジョン樹脂を含む場合、当該水性エマルジョン樹脂の平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、30~200nmであることがより好ましい。上記平均粒子径は、当該印刷インキ中における平均粒子径である。
【0049】
印刷層の膜厚は0.1~10μmであることが好ましく、0.3~6μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることが特に好ましい。本発明では、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が重なった層も印刷層とし、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0050】
<印刷層に含まれるバインダー樹脂>
印刷層中のバインダー樹脂(水性バインダー樹脂及び/又は油性バインダー樹脂)の固形分含有量は、印刷層の全質量中、10~70質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。使用されるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、セルロース系樹脂及びこれらの変性樹脂が挙げられる。
中でも、印刷層が、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、及びスチレン-マレイン酸共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー樹脂を含むことが好ましく、糖質由来及び/又はロジン樹脂を含むことがなお好ましい。糖質由来樹脂及び/又はロジン樹脂は例えば、特開2021-46522、特開2019-108529に記載された樹脂を用いることができる。
【0051】
なお、水性バインダー樹脂は酸基を有することが好ましく、当該酸価を与える酸性基が、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。酸性基とはヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基など等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。当該塩基性化合物として、例えば、アミン化合物、アルカリ金属が好適に挙げられる。
【0052】
上記アミン化合物としては、例えば、アンモニア;ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。上記アルカリ金属としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、10,000~70,000であることがより好ましい。また、ガラス転移温度は100℃~160℃であることが好ましい。
【0054】
セルロース系樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、印刷層の強靭性及び柔軟性の両立が可能となるため、耐熱性及び耐水摩擦性が良好となる。
【0055】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としてはスチレンアクリル共重合樹脂であることが好ましい。アクリル樹脂の酸価は、20~100mgKOH/gであることが好ましく、40~80mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0056】
アクリル樹脂の重量平均分子量は1500~10000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。
【0057】
アクリル樹脂のガラス転移温度は、10~90℃が好ましく、30~70℃がより好ましい。
【0058】
アクリル樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、印刷層の強靭性及び柔軟性の両立が可能となるため、耐熱性及びリリース性が良好となる。
【0059】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 X-310、VS-1057、GL-2439、TS-1316を使用することができる。
【0060】
(スチレン-マレイン酸共重合樹脂)
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、100~180mgKOH/gであることが好ましく、120~160mgKOH/gであることがより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0061】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。
【0062】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂のガラス転移温度は、40~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。
【0063】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、印刷層の強靭性及び柔軟性の両立が可能となるため、耐熱性及びリリース性が良好となる。
【0064】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 M-30、荒川化学社製 アラスターシリーズを使用することができる。
【0065】
<印刷層に含まれる着色剤>
印刷層は、着色剤を含むことが好ましい。前記着色剤の含有量は、印刷層全質量中、1~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
【0066】
着色剤としては顔料が好ましく、当該顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。有機顔料としては、有機化合物、及び/又は有機金属錯体からなる顔料の使用が好ましい。無機顔料としては、酸化チタンを含むものが好ましい。
【0067】
有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(無機顔料)
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0069】
《酸化チタン》
酸化チタンは、結晶構造がアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれのものを使用してもよい。中でも顔料分散性が良好であるため、ルチル型酸化チタンの使用が好ましい。酸化チタンの工業的生産では原料にルチル鉱石又はイルメナイト鉱石(FeTiO3)が用いられている。主な製造法には塩素法と硫酸法の二種類があり、いずれの製法のものを用いてもよい。
また、フレキソ印刷又はグラビア印刷における印刷適性が向上するため、酸化チタンは表面処理されているものが好ましい。特にSi、Al、Zn、Zr及びそれらの酸化物から選ばれる少なくとも一種の金属により表面処理されているものが好ましい。
【0070】
また、酸化チタンは、JIS K5101に規定されている測定法による吸油量が14~35ml/100gであることが好ましく、17~32ml/100gであることがより好ましい。また、酸化チタンは、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.2~0.3μmであることが好ましい。また、酸化チタンの合計含有量は、印刷インキ100質量%中、1~60質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。なお、複数種の酸化チタンを併用してもよい。
【0071】
<印刷層に含まれる添加剤>
本発明の印刷層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤である。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0072】
<印刷インキ>
印刷層は、上記着色剤及び上記バインダー樹脂を含む印刷インキにより形成されることが好ましい。
【0073】
<印刷インキの製造方法>
印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料を樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散させ、得られた顔料分散体に樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から50mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。印刷インキの製造方法は、例えば、特開2018-158986号公報に記載された方法を用いることができる。
【0074】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷又はグラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0075】
[ヒートシール層]
本発明におけるヒートシール層は、印刷層を具備した面とは反対の紙基材上に位置する。ヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂を含み、ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂及びエチレンアクリル共重合樹脂を用いることができる。
【0076】
<ヒートシール層の形成>
ヒートシール層は、例えば、印刷層と反対側の紙基材面上に、ヒートシール剤を塗工することによって形成することができる。ポリエチレン系樹脂を含むヒートシール層は、例えば、300~400℃において熱溶融させたポリエチレン樹脂を、Tダイと呼ばれるスリット状の装置により、溶融したポリエチレン樹脂をフィルム状に押し出したものを、紙基材上に積層・コートすることで形成することができる。また、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂及びエチレンアクリル共重合樹脂をフレキソ印刷又はグラビア印刷で塗工して形成することも可能である。
ヒートシール層は主成分がポリエチレン系樹脂であればよく、ポリエチレン系樹脂以外の成分を含んでいてもよい。ここで、主成分がポリエチレン系樹脂であるとは、ヒートシール層中、ポリエチレン樹脂の含有量が最も多いことをいう。
ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがなお好ましく、95質量%以上含むことが更に好ましい。ヒートシール層の膜厚は10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがなお好ましい。
【0077】
[紙基材]
紙基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、不織布、中質紙、上質紙、新聞用紙、ユポ紙、各種コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙やアート紙、キャスト紙、片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、未晒しクラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙、キャスト紙、遮光紙、及びこれらの表面処理された紙基材が挙げられる。また、紙基材上に、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物を蒸着した蒸着紙基材も用いることができ、蒸着層を紙基材に均一に形成させるためにアンカー層を用いてもよく、蒸着層が更にポリビニルアルコール等によるコート処理を施されていても良い。さらに、前記蒸着層上にポリエチレン等のヒートシール性樹脂を形成した紙基材を使用してもよい。また、上記紙基材にメラミン樹脂を含侵させた各種メラミン紙を用いることができる。上記の中でも、片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、未晒しクラフト紙や、蒸着層等のコート層を有さないノンコート紙等が好ましい。なお、紙基材としては、50~150g/m2であることが好ましく、60~120g/m2であることがなお好ましく、60~90g/m2であることが更に好ましい。
【0078】
[バリア層]
本発明の包装材は、バリア層を有することが好ましい。包装材がバリア層を有する場合、バリア層は、紙基材とヒートシール層の間に位置することが好ましく、真空蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法によって、紙基材上に無機化合物層を形成することができる。また、ドライラミネート法や押出ラミネート法により、アルミニウム箔を紙基材上に積層することで、バリア層としてアルミニウム層を形成することもできる。
【0079】
バリア層は無機化合物を含むことが好ましく、無機化合物としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミナ、シリカ等が挙げられる。前記無機化合物の純度は、99%以上が好ましく、99.9%以上がより好ましい。
【0080】
<真空蒸着法>
真空蒸着法は、アルミニウム等の金属を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、又はエレクトロンビーム加熱等により、1200~1500℃、10-1~10-2Pa程度の条件下で蒸着させる方法である。被蒸着物は、真空蒸着前に、表面へのコロナ放電処理等による密着性向上処理を行うことができる。真空蒸着により形成される金属膜の厚さは、バリア性、遮光性、経済性の観点から、10~300nmであることが好ましい。
【0081】
<スパッタリング法>
スパッタリング法は、10-1~10-2Pa程度の条件下で、Ar等の不活性ガスを導入し、電圧負荷することで実施される。形成される金属膜の厚さは、バリア性、遮光性、経済性の観点から、10~300nmであることが好ましい。
【0082】
[接着剤層]
本発明の包装材は、接着剤層を有する場合も好ましい。接着剤層は下記接着剤を塗布することにより形成することができる。当該接着剤としては2液型反応性接着剤、アクリル系接着剤、アンカーコート剤、溶融性ポリオレフィン樹脂等が好適に使用され、限定されない。中でも、2液型反応性接着剤を用いたドライラミネート法や、アンカーコート剤と溶融性ポリオレフィン樹脂を用いた押出ラミネート法により形成されることが好ましい。
【0083】
<ドライラミネート法>
ドライラミネート法は、ポリオールとポリイソシアネートとからなる2液型反応性接着剤を塗布する方法であって、当該接着剤を有機溶剤で適当な粘度に希釈して、得られた印刷物の印刷面に塗布し、乾燥後シーラントと圧着して積層することで形成できる。当該接着剤としては例えば、東洋モートン社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14Bが挙げられる。
【0084】
<押出しラミネート法>
押出しラミネート法とは、溶融性ポリオレフィン樹脂をTダイと呼ばれるスリット状の装置からフィルム状に押し出し、基材上に積層して別基材と貼り合わせる方法である。印刷物であれば印刷層上に、予めアンカーコート剤を塗布してから、押出ラミネートすることが多い。また、溶融性ポリオレフィン樹脂を印刷物の印刷面に押し出し、同時にシーラントを貼り合わせることもできる。アンカーコート剤としてはイミン系、ブタジエン系、イソシアネート系のアンカーコート剤が使用できる。具体的には、東洋モートン社製・EL-420(イミン系)、EL-452(ブタジエン系)、EL-530A/B(イソシアネート系)、EL-540/CAT-RT32(イソシアネート系)等が挙げられる。溶融性ポリオレフィン樹脂としては低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が使用できる。具体的には、日本ポリエチレン社製ノバテックLD LC600A(低密度ポリエチレン)等が挙げられる。
【0085】
<包装材の製造方法>
本発明はヒートシール層、紙基材、印刷層及び表面保護層をこの順に有する包装材の製造方法であって、紙基材の一方の面に、印刷インキを印刷して印刷層を形成する工程、アクリル樹脂及び/又はセルロース系樹脂、並びに、ロジン樹脂を含むオーバーコート剤を、印刷層上に印刷して表面保護層を形成する工程、及び、紙基材の他方の面にヒートシール剤を塗工してヒートシール層を形成する工程を含む、包装材の製造方法に関する。上記工程は順序を問わないが、印刷層、表面保護層及びヒートシール層をこの順に形成することが好ましい。
【0086】
包装材の製造方法として、ヒートシール層/バリア層/接着剤樹脂層/紙基材/印刷層/表面保護層の構成を例に説明する。なお、本発明における包装材の構成は上記に限定されるものではない。
【0087】
まず、紙基材(未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)上にドライラミネート接着剤TM-250HV/CAT-RT86L-60を塗布量が4g/m2となるよう塗布し、アルミニウム箔を貼り合わせバリア層を形成する。前記バリア層上に、ポリエチレン系樹脂を積層することで、ヒートシール層を形成する。その後、当該紙基材で前記バリア層を有しない面に印刷インキをフレキソ印刷又はグラビア印刷して印刷層を形成し、オーバーコート剤をフレキソ印刷又はグラビアして表面保護層を形成することで、ヒートシール層/バリア層/接着剤樹脂層/紙基材/印刷層/表面保護層の構成を有する包装材を製造することができる。
【0088】
[包装袋]
本発明における包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしてもよいし、2枚以上の包装材をヒートシールしてもよい。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールしたものであってもよい。
この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
なお、実施例14、15は、参考例である。
【0090】
<調製例1>
(ウレタン樹脂溶液PU1の調製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールの縮合物であるポリエステルポリオールを227.0部、PEG(数平均分子量2000のポリエチレングリコール)9.6部、2,2-ジメチロールプロパン酸(DMPA)30.1部、及びメチルエチルケトン(MEK)250部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(IPDI)90.6部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液に対し、2-アミノエチルエタノールアミン(AEA)2.7部及びイソプロパノール(IPA)150部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、10%アンモニア水38.1部及びイオン交換水801.4部を溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに消泡剤0.5部を添加してMEK及びIPAを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行い、固形分28%、重量平均分子量38,000のウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0091】
(印刷インキK1~K6)
K1:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価50mgKOH/g、ガラス転移温度40℃、固形分48質量%)を含有する印刷インキ
K2:ニトロセルロース(重量平均分子量30000、ガラス転移温度120℃)を含有する印刷インキ
K3:スチレン-マレイン酸共重合樹脂(酸価150、ガラス転移温度80℃、固形分30質量%)を含有する印刷インキ
K4:糖由来樹脂(多糖類由来の構成成分を28質量%含有する、平均粒子径150μmのスチレン-アクリル樹脂エマルジョン 水酸基価300mgKOH/g、酸価50mgKOH/g、固形分47質量%)を含有する印刷インキ
K5:ロジン樹脂(ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g、酸価120mgKOH/g、固形分50質量%)を含有する印刷インキ
K6:ウレタン樹脂(固形分30%、水酸基価3.8mgKOH/g、アミン価8.5mgKO H/g、重量平均分子量48000)を含有する印刷インキ
【0092】
(オーバーコート剤V1~V9)
V1:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)及びロジン樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を60:40(固形分質量比)で含有するオーバーコート剤
V2:ニトロセルロース(重量平均分子量30000、ガラス転移温度120℃)及びロジン樹脂(酸価10mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を60:40(固形分質量比)で含有するオーバーコート剤
V3:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)、ニトロセルロース(重量平均分子量30000、ガラス転移温度120℃)及びロジン樹脂(酸価50mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を30:30:40(固形分質量比)で含有するオーバーコート剤
V4:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)及びロジン樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を95:5(固形分質量比)で含有するオーバーコート剤
V5:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)及びロジン樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を20:80(固形分質量比)で含有するオーバーコート剤
V6:スチレンアクリル共重合樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)を含有するオーバーコート剤
V7:ニトロセルロース(重量平均分子量30000、ガラス転移温度120℃)を含有するオーバーコート剤
V8:ロジン樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度100℃、固形分50質量%)を含有するオーバーコート剤
V9:ウレタン樹脂(固形分30%、水酸基価3.8mgKOH/g、アミン価8.5mgKOH/g、重量平均分子量48000)を含有するオーバーコート剤
【0093】
(ヒートシール剤H1~H4)
H1:ポリエチレン樹脂(三菱ケミカル社製 ポリプロピレン樹脂 ノバテックPP)
H2:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(ジャパンコーティングレジン 社製、アクアテックスMC3800、最低造膜温度:100℃、固形分50質量%)を含有するヒートシール剤
H3:エチレンアクリル共重合樹脂(ジャパンコーティングレジン 社製、アクアテックスAC3100、最低造膜温度:100℃、固形分44.5質量%)を含有するヒートシール剤
H4:アクリル樹脂(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度20℃、固形分48質量%)を含有するヒートシール剤
【0094】
<実施例1>(積層体P1の製造)
次に、未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、印刷インキK1を印刷した後、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。前記印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤V1を印刷した後、25℃、12時間の条件で乾燥させ、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である中間積層体p1を得た。
中間積層体p1における、基材の印刷層の反対面に対し、押出ラミネート法により、接着剤樹脂:ポリエチレン(融点:120℃)、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分、塗工厚み10μm、の条件下で、アルミニウム箔を貼り合わせた後、アルミニウム箔上に対し、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分、塗工厚み20μmの条件下で、ポリエチレン樹脂(融点:120℃)を塗工し、ヒートシール層/バリア層/接着剤樹脂層/紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P1を得た。
【0095】
<実施例2~15、比較例1~6>(包装材P2~15、P'1~6の製造)
包装材P1以外のヒートシール層は版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤を印刷してヒートシール層を形成した。それ以外は、表1、表2で示した印刷インキ、オーバーコート剤、ヒートシール剤を使用し、上記包装材P1の作製と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~15、P'1~6をそれぞれ作製した。実施例14のコート紙は、マリーコート紙を使用した。
【0096】
[包装材の評価]
実施例1~15、比較例1~6で得られた包装材P1~15、P'1~6について、以下に記載の評価を行った。結果を表1、表2に示す。なお、表面保護層の無い比較例2以外の実施例、比較例について、JISZ8741:1997に記載された方法で表面保護層の60度光沢値を測定した。
【0097】
<耐水摩擦性>
得られた包装材を25mm×150mmの大きさに切り出し、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて、以下基準にて耐水摩擦性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《試験条件》
荷重:200g、往復回数:2回、当紙:カナキン布に水を5滴滴下したもの
《評価基準》
A.印刷層が取られることがなく、原紙の露出面積比率が1%未満であるもの。
B.当紙にわずかにインキが付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が1%以上10%未満であるもの。
C.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が10%以上20%未満であるもの。
D.当紙全面にインキが濃く付着。印刷層がほとんど取られて、原紙の露出面積比率が20%以上であるもの。
【0098】
<耐熱性>
得られた包装材を25mm×150mmの大きさに切り取り、表面保護層上に、25mm×150mmの大きさのアルミニウム箔艶面を(厚み:15μm)を重ね、以下の装置及び条件でヒートシールした後、アルミニウム箔を剥離した際の印刷層の状態から、下記基準にて耐熱性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:熱傾斜式ヒートシーラー〔東洋精機(株)製;TYPE,HG-100〕、
シール幅:折り曲げ部より10mm、ヒーター温度:160℃、
シール圧力:2kg/cm2、シール時間:1sec
《評価基準》
A.印刷層が取られることがなく、原紙の露出面積比率が1%未満であるもの。
B.当紙にわずかにインキが付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が1%以上10%未満であるもの。
C.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が10%以上20%未満であるもの。
D.当紙全面にインキが濃く付着。印刷層がほとんど取られて、原紙の露出面積比率が20%以上であるもの。
【0099】
<リリース性>
得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、切り出した包装材のヒートシール層と表面保護層とを重ね、アズワン社製、小型熱プレス機 H30-10Dを使用して、温度40℃、荷重100Kg/cm2の条件(加重として、大幅な過剰条件を意味する。)で加圧した。その状態で12時間静置したのち、2枚重ねた印刷物同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.未晒クラフト紙の裏面への印刷層の転移量が1面積%未満である。
B.未晒クラフト紙の裏面への印刷層の転移量が1面積%以上、10面積%未満である。
C.未晒クラフト紙の裏面への印刷層の転移量が10面積%以上、20面積%未満である。
D.未晒クラフト紙の裏面への印刷層の転移量が20面積%以上である。
【0100】
<水蒸気バリア性>
得られた包装材について、JIS Z0208に準拠した方法で透湿度の測定を行い、それを基に下記基準にて水蒸気バリア性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価条件》
評価時間:15時間
《評価基準》
A.透湿度が5g/m2・15h未満である。
B.透湿度が5g/m2・15h以上、1000g/m2・15h未満である。
C.透湿度が1000g/m2・15h以上、3000g/m2・15h未満である。
D.透湿度が3000g/m2・15h以上である。
【0101】
<ヒートシ-ル性>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm2 、
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、
剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が5.0N以上である。
B.ヒートシール強度が3.5N以上、5.0N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、3.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0102】
【0103】
【0104】
本発明により、耐水摩擦性、耐熱性、リリース性、水蒸気バリア性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供できた。
特に、表面保護層にアクリル樹脂を含む比較例3では、耐水摩擦性が基準を満たさず、表面保護層にセルロース系樹脂を含む比較例4、ロジン樹脂を含む比較例5、及びウレタン樹脂を含む比較例6では、リリース性が基準を満たさなかった。
【要約】
【課題】本発明は、耐水摩擦性、耐熱性、リリース性、水蒸気バリア性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】
ヒートシール層、紙基材、印刷層、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、
前記表面保護層が、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ロジン樹脂とを含む、包装材。ヒートシール層、紙基材、印刷層及び表面保護層をこの順に有する包装材の製造方法であって、紙基材の一方の面に、印刷インキを印刷して印刷層を形成する工程、アクリル樹脂及びセルロース系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、水性ロジン樹脂とを含むオーバーコート剤を、印刷層上に印刷して表面保護層を形成する工程、及び、紙基材の他方の面にヒートシール剤を塗工してヒートシール層を形成する工程を含む、包装材の製造方法。
【選択図】なし