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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】発光装置、光学装置および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20240702BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240702BHJP
   G01J 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240702BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01S7/484
G01J1/02 P
G01J1/00 F
G01J1/02 A
G01B11/24 K
H01S5/042 630
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019053386
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155621
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】皆見 健史
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0185638(US,A1)
【文献】特開2002-151782(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103178442(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0307736(US,A1)
【文献】特開2018-022739(JP,A)
【文献】特開2000-149319(JP,A)
【文献】特開2006-177695(JP,A)
【文献】特開2002-333476(JP,A)
【文献】特開2003-234534(JP,A)
【文献】特開2012-021884(JP,A)
【文献】特開平10-246610(JP,A)
【文献】特開2005-127972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069113(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229912(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0182886(US,A1)
【文献】国際公開第2017/196577(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108627845(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
H01S 5/042,
G01J 1/00, 1/02,
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板上に搭載された基材と、
前記基材上に搭載された光源と、
前記配線基板上に搭載された、前記光源を駆動する駆動部と、
前記光源と接続され、前記基材の裏面側から前記駆動部に向けて延びる前記配線基板上の光源用カソード配線パターンと、
前記光源と前記駆動部との間の前記基材上の領域であって、平面視において前記光源用カソード配線パターンと重なる領域に設けられた回路素子と、
を備える発光装置。
【請求項2】
前記回路素子は、前記光源用カソード配線パターンの外側において、前記配線基板上の回路素子用配線パターンに接続されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記回路素子は第1の電極および第2の電極を有し、当該第1の電極は、前記光源用カソード配線パターンの幅方向の一方側で第1の回路素子用配線パターンに接続され、当該第2の電極は、当該光源用カソード配線パターンの幅方向の他方側で第2の回路素子用配線パターンに接続されている請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光源は、互いに対向する第1の側面および第2の側面と、当該第1の側面および当該第2の側面とを接続する、互いに対向する第3の側面および第4の側面とを有する発光素子アレイであり、
前記発光素子アレイの上面電極から当該発光素子アレイの外側に向けて延びる配線が少なくとも前記第1の側面側および前記第2の側面側に設けられ、前記回路素子は前記第4の側面側の前記基材上に設けられ、前記光源用カソード配線パターンが当該第4の側面側から前記駆動部に向けて延びている請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子アレイの上面電極から当該発光素子アレイの外側に向けて延びる配線が前記第3の側面側に設けられている請求項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第3の側面側の前記基材上に他の回路素子が設けられている請求項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記回路素子および前記他の回路素子の少なくとも一方は受光素子である請求項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基材は、前記配線基板よりも熱伝導率が高い部材である請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記配線基板上の前記基材はセラミックで構成されている請求項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光源における前記発光素子アレイの出射経路上に、当該光源から出射された光を外部に向けて拡散する光拡散部材が設けられている請求項ないしのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子アレイは、互いに並列に接続された複数の発光素子を有する請求項ないしのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
配線基板と、
前記配線基板上に搭載された、光源および当該光源を駆動する駆動部と、
前記光源と前記駆動部とを接続する前記配線基板上の光源用カソード配線パターンと、
前記光源と前記駆動部との間において、前記光源用カソード配線パターンを跨いで設けられた基材と、
平面視において前記光源用カソード配線パターンと重なる前記基材上の領域に設けられた回路素子と、を備える発光装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置が備える光源から出射され被測定物で反射された反射光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部は、前記光源から光が出射されてから当該受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する光学装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光学装置と、
前記光学装置が備える光源から出射され被測定物で反射され、当該光学装置が備える受光部が受光した反射光に基づき、当該被測定物の三次元形状を特定する形状特定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項15】
前記形状特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、
を備える請求項14に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、光学装置および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源と、所定の平面上において互いに隣接して配置される複数のレンズを有すると共に、光源が出射する光を拡散する光拡散部材と、光拡散部材によって拡散された光が被写体で反射した反射光を受光する撮像素子と、を備え、複数のレンズは、拡散された光における干渉縞の周期が三画素以下となるように配置された撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-54769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光源を駆動する回路のインダクタンスを低減したい場合など、光源の一つの側面側だけでなく、複数の側面側にボンディングワイヤ等の配線が設けられる場合がある。また、光源から出射される光量を検知する受光素子などの回路素子を光源の側面に近接させて配置させる場合がある。
以上のような場合において、光源の駆動部側に回路素子を配置するとともに、他の側面側にボンディングワイヤ等の配線を設ける構成が考えられる。しかしながら、光源と駆動部との間に回路素子を配置すると、光源と駆動部とを接続する配線パターンの経路が制限され、回路のインダクタンスが増加してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、光源と駆動部との間に回路素子を配置する構成において、光源と駆動部とを接続する配線パターンと回路素子とがともに配線基板上に設けられる構成と比較し、回路素子によって配線パターンの経路が制限を受けにくい構造の発光装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、配線基板と、前記配線基板上に搭載された基材と、前記基材上に搭載された光源と、前記配線基板上に搭載された、前記光源を駆動する駆動部と、前記光源と接続され、前記基材の裏面側から前記駆動部に向けて延びる前記配線基板上の光源用カソード配線パターンと、前記光源と前記駆動部との間の前記基材上の領域であって、平面視において前記光源用カソード配線パターンと重なる領域に設けられた回路素子と、を備える発光装置である。
請求項2に記載の発明は、前記回路素子は、前記光源用カソード配線パターンの外側において、前記配線基板上の回路素子用配線パターンに接続されている請求項1に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記回路素子は第1の電極および第2の電極を有し、当該第1の電極は、前記光源用カソード配線パターンの幅方向の一方側で第1の回路素子用配線パターンに接続され、当該第2の電極は、当該光源用カソード配線パターンの幅方向の他方側で第2の回路素子用配線パターンに接続されている請求項2に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記光源は、互いに対向する第1の側面および第2の側面と、当該第1の側面および当該第2の側面とを接続する、互いに対向する第3の側面および第4の側面とを有する発光素子アレイであり、前記発光素子アレイの上面電極から当該発光素子アレイの外側に向けて延びる配線が少なくとも前記第1の側面側および前記第2の側面側に設けられ、前記回路素子は前記第4の側面側の前記基材上に設けられ、前記光源用カソード配線パターンが当該第4の側面側から前記駆動部に向けて延びている請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記発光素子アレイの上面電極から当該発光素子アレイの外側に向けて延びる配線が前記第3の側面側に設けられている請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第3の側面側の前記基材上に他の回路素子が設けられている請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記回路素子および前記他の回路素子の少なくとも一方は受光素子である請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記基材は、前記配線基板よりも熱伝導率が高い部材である請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記配線基板上の前記基材はセラミックで構成されている請求項に記載の発光装置である。
請求項10に記載の発明は、前記光源における前記発光素子アレイの出射経路上に、当該光源から出射された光を外部に向けて拡散する光拡散部材が設けられている請求項ないしのいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項11に記載の発明は、前記発光素子アレイは、互いに並列に接続された複数の発光素子を有する請求項ないしのいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項12に記載の発明は、配線基板と、前記配線基板上に搭載された、光源および当該光源を駆動する駆動部と、前記光源と前記駆動部とを接続する前記配線基板上の光源用カソード配線パターンと、前記光源と前記駆動部との間において、前記光源用カソード配線パターンを跨いで設けられた基材と、平面視において前記光源用カソード配線パターンと重なる前記基材上の領域に設けられた回路素子と、を備える発光装置である。
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の発光装置と、前記発光装置が備える光源から出射され被測定物で反射された反射光を受光する受光部と、を備え、前記受光部は、前記光源から光が出射されてから当該受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する光学装置である。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の光学装置と、前記光学装置が備える光源から出射され被測定物で反射され、当該光学装置が備える受光部が受光した反射光に基づき、当該被測定物の三次元形状を特定する形状特定部と、を備える情報処理装置である。
請求項15に記載の発明は、前記形状特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、を備える請求項14に記載の情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、12に記載の発明によれば、光源と駆動部とを接続する配線パターンと回路素子とがともに配線基板上に設けられる構成と比較し、回路素子によって配線パターンの経路が制限を受けにくい。
請求項2に記載の発明によれば、配線パターンの内側で配線基板に接続される場合と比較し、配線パターンの経路が影響を受けない。
請求項に記載の発明によれば、第1の電極および第2の電極が配線パターンの幅方向の一方側で配線基板に接続される場合と比較し、発光装置が小型化しやすい。
請求項に記載の発明によれば、発光素子アレイの一つの側面側にのみ上面電極から外側に向けて延びる配線が設けられている場合と比較し、回路のインダクタンスが低減される。
請求項に記載の発明によれば、発光素子アレイの二つの側面側にのみ上面電極から外側に向けて延びる配線が設けられている場合と比較し、回路のインダクタンスが低減される。
請求項に記載の発明によれば、他の回路素子が設けられていない場合と比較し、放熱効果が高い。
請求項に記載の発明によれば、光源から出射された光が検知される。
請求項に記載の発明によれば、配線基板と同じ熱伝導率である場合と比較し、放熱効果が高い。
請求項に記載の発明によれば、樹脂で構成されている場合に比べ、放熱効果が高い。
請求項10に記載の発明によれば、光拡散部材がない構成と比較し、光源から出射された光が広い範囲に照射される。
請求項11に記載の発明によれば、発光素子を個別に駆動する構成と比較し、強い強度の光が同時に照射される。
請求項13に記載の発明によれば、三次元測定が行える光学装置が提供される。
請求項14に記載の発明によれば、三次元形状を測定できる情報処理装置が提供される。
請求項15に記載の発明によれば、三次元形状に基づく認証処理を搭載した情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理装置の一例を示す図である。
図2】情報処理装置の構成を説明するブロック図である。
図3】光源の平面図である。
図4】光源における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。
図5】光拡散部材の一例を説明する図である(a)は、平面図、(b)は、(a)のVB-VB線での断面図である。
図6】ローサイド駆動により光源を駆動する等価回路の一例を示す図である。
図7】第1の実施の形態が適用される発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIIB-VIIB線での断面図、(c)は、(a)のVIIC-VIIC線での断面図である。
図8】配線基板および基材に設けられる配線パターンを説明する図である。(a)は、配線基板の表面、(b)は、基材の表面、(c)は、基材の裏面である。
図9】PDと配線基板における光源用カソード配線パターンの外側に設けられている関係を説明する図である。(a)は、実施例1、(b)は、実施例2である。
図10】比較例1の発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXB-XB線での断面図である。
図11】比較例2の発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIB-XIB線での断面図である。
図12】第2の実施の形態が適用される発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIIB-XIIB線での断面図、(c)は、(a)のXIIC-XIIC線での断面図である。
図13】配線基板および基材に設けられる配線パターンを説明する図である。(a)は、配線基板の表面、(b)は、基材の表面、(c)は、基材の裏面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
情報処理装置は、その情報処理装置にアクセスしたユーザがアクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであることが認証された場合にのみ、自装置である情報処理装置の使用を許可するようになっていることが多い。これまで、パスワード、指紋、虹彩などにより、ユーザを認証する方法が用いられてきた。最近では、さらにセキュリティ性の高い認証方法が求められている。この方法として、ユーザの顔の形状など、三次元像による認証が行われるようになっている。
ここでは、情報処理装置は、一例として携帯型情報処理端末であるとして説明し、三次元像として捉えられた顔の形状を認識することで、ユーザを認証するとして説明する。なお、情報処理装置は、携帯型情報処理端末以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用しうる。
さらに、本実施の形態で説明する構成、機能、方法等は、顔の形状の認識以外の三次元形状の認識にも適用しうる。すなわち、顔以外の物体の形状の認識に適用してもよい。また、被測定物までの距離は問わない。
【0010】
[第1の実施の形態]
(情報処理装置1)
図1は、情報処理装置1の一例を示す図である。前述したように、情報処理装置1は、一例として携帯型情報処理端末である。
情報処理装置1は、ユーザインターフェイス部(以下では、UI部と表記する。)2と三次元像を取得する光学装置3とを備える。UI部2は、例えばユーザに対して情報を表示する表示デバイスとユーザの操作により情報処理に対する指示が入力される入力デバイスとが一体化されて構成されている。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、入力デバイスは、例えばタッチパネルである。
【0011】
光学装置3は、発光装置4と、三次元センサ(以下では、3Dセンサと表記する。)5とを備える。発光装置4は、三次元像を取得するための被測定物、ここで説明する例では顔に向けて光を照射する。3Dセンサ5は、発光装置4が照射して顔で反射されて戻ってきた光を取得する。ここでは、光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、顔の三次元像を取得するとする。以下では、顔の三次元像を取得する場合であっても、顔を被測定物と表記する。なお、顔以外の三次元像を取得してもよい。三次元像を取得することを、3Dセンシングと表記することがある。3Dセンサ5は、受光部の一例である。
【0012】
なお、情報処理装置1は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成されている。なお、ROMには、不揮発性の書き換え可能なメモリ、例えばフラッシュメモリを含む。そして、ROMに蓄積されたプログラムや定数が、RAMに展開されて、CPUが実行することによって、情報処理装置1が動作し、各種の情報処理が実行される。
【0013】
図2は、情報処理装置1の構成を説明するブロック図である。
情報処理装置1は、上記した光学装置3と、光学装置制御部8と、システム制御部9とを備える。光学装置制御部8は、光学装置3を制御する。そして、光学装置制御部8は、形状特定部81を含む。システム制御部9は、情報処理装置1全体をシステムとして制御する。そして、システム制御部9は、認証処理部91を含む。そして、システム制御部9には、UI部2、スピーカ92、二次元カメラ(図2では、2Dカメラと表記する。)93などが接続されている。
以下、順に説明する。
【0014】
光学装置3が備える発光装置4は、配線基板10と、基材100と、光源20と、光拡散部材30と、光量監視用受光素子(図2および以下では、PDと表記する。)40と、駆動部50と、保持部60と、キャパシタ70とを備える。さらに、発光装置4は、駆動部50を動作させるために、抵抗素子6、キャパシタ7などの受動素子を備える。なお、キャパシタ70は、2個を示しているが、1個でもよく、2個を超える数であってもよい。さらに、抵抗素子6およびキャパシタ7のそれぞれは、複数あってよい。ここでは、光源20、PD40および駆動部50以外のキャパシタ70、3Dセンサ5、抵抗素子6、キャパシタ7などをそれぞれ区別しないで回路部品と表記することがある。
【0015】
光源20およびPD40は、基材100上に設けられている。基材100は、電気絶縁性部材で構成されている。そして、基材100、駆動部50、キャパシタ70、抵抗素子6、キャパシタ7は、配線基板10上に設けられている。
【0016】
光源20は、複数の発光素子が二次元に配列された発光素子アレイとして構成されている(後述する図3参照)。発光素子は、一例として垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。以下では、発光素子は垂直共振器面発光レーザ素子VCSELであるとして説明する。そして、垂直共振器面発光レーザ素子VCSELをVCSELと表記する。光源20は、配線基板10または基材100の表面に対して垂直方向に光を出射する。ToF法により三次元センシングを行う場合、光源20は、駆動部50により、例えば、100MHz以上で、且つ、立ち上り時間が1ns以下のパルス光(以下では、出射光パルスと表記する。)を出射することが求められる。また、顔認証を例とする場合、光が照射される距離は10cm程度から1m程度である。そして、被測定物の3D形状を測定する範囲は、1m角程度である。このため、光源20は、大出力であって、光源20の発熱を効率よく放熱することが求められる。なお、光が照射される距離を測定距離と表記し、被測定物の3D形状を測定する範囲を測定範囲または照射範囲と表記する。また、測定範囲または照射範囲に仮想的に設けられる面を照射面と表記する。
【0017】
PD40は、受光した光量(以下では、受光量と表記する。)に応じた電気信号を出力する、アノードとなるp型のSi領域、i(イントリンシック)型のSi領域、カソードとなるn型のSi領域で構成されたpin型などのフォトダイオードである。そして、p型のSi領域にアノード電極が設けられ、n型のSi領域にカソード電極が設けられている。なお、PD40は、回路素子の一例であり、アノード電極が第1の電極の一例、カソード電極が第2の電極の一例である。
【0018】
光拡散部材30は、光源20およびPD40を覆うように設けられている。つまり、光拡散部材30は、基材100上に設けられた保持部60により、基材100上の光源20およびPD40から予め定められた距離離して設けられている。なお、光拡散部材30が光源20を覆うとは、光拡散部材30が光源20の出射する光の出射経路上に設けられ、光源20が出射する光が光拡散部材30を透過するように設けられていることを言う。後述するように、平面視した場合に、光源20およびPD40と光拡散部材30とが重なる状態を言う。ここで、平面視とは、後述する図3図7(a)などにおいて、xy平面で見た場合を指す。なお、PD40は、光源20が出射した光の内、光拡散部材30によって反射された光の一部を受光するように、光拡散部材30によって覆われる位置に配置されている。
【0019】
保持部60は、光源20およびPD40を囲むように設けられた壁61A、61B、62A、62Bを備える。ここでは、基材100の外形、光拡散部材30の外形および保持部60の外形が同じであるとした。このため、基材100、光拡散部材30および保持部60の外縁が重なっている。なお、基材100の外形が光拡散部材30の外形や保持部60の外形より大きくてもよい。
【0020】
発光装置4における配線基板10、基材100、光源20、光拡散部材30、駆動部50および保持部60の詳細については、後述する。
【0021】
3Dセンサ5は、複数の受光セルを備える。例えば、各受光セルは、光源20からの出射光パルスに対する被測定物からのパルス状の反射光(以下では、受光パルスと表記する。)を受光し、受光されるまでの時間に対応する電荷を受光セル毎に蓄積するように構成されている。3Dセンサ5は、各受光セルが2つのゲートとそれらに対応した電荷蓄積部とを備えたCMOS構造のデバイスとして構成されている。そして、2つのゲートに交互にパルスを加えることによって、発生した光電子を2つの電荷蓄積部の何れかに高速に転送する。2つの電荷蓄積部には、出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じた電荷が蓄積される。そして、3Dセンサ5は、ADコンバータを介して、受光セル毎に出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じたデジタル値を信号として出力する。すなわち、3Dセンサ5は、光源20から光が出射されてから3Dセンサ5で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する。なお、ADコンバータは、3Dセンサ5が備えてもよく、3Dセンサ5の外部に設けられてもよい。
【0022】
以上説明したように、顔認証を例とする場合、光源20は、距離が10cm程度から1m程度で1m角程度の照射範囲に光を照射することが求められる。そして、被測定物からの反射光を3Dセンサ5が受光することで、被測定物の3D形状が測定される。このことから、光源20は大出力であることが求められる。このため、光源20から熱が効率よく放熱されることが求められる。
【0023】
光学装置制御部8の形状特定部81は、3Dセンサ5から受光セル毎に得られるデジタル値を取得し、受光セル毎に被測定物までの距離を算出する。そして算出された距離により、被測定物の3D形状を特定する。
【0024】
システム制御部9の認証処理部91は、形状特定部81が特定した特定結果である被測定物の3D形状がROMなどに予め蓄積された3D形状である場合に、情報処理装置1の使用に関する認証処理を行う。なお、情報処理装置1の使用に関する認証処理とは、一例として、自装置である情報処理装置1の使用を許可するか否かの処理である。例えば、被測定物である顔の3D形状が、ROM等の記憶部材に記憶された顔形状に一致すると判断される場合には、情報処理装置1が提供する各種アプリケーション等を含む情報処理装置1の使用が許可される。
上記の形状特定部81および認証処理部91は、一例として、プログラムによって構成される。また、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてもよい。さらには、プログラム等のソフトウエアとASIC等の集積回路とで構成されてもよい。
【0025】
図2では、光学装置3、光学装置制御部8およびシステム制御部9をそれぞれ分けて示したが、システム制御部9が光学装置制御部8を含んでもよい。また、光学装置制御部8が光学装置3に含まれてもよい。さらに、光学装置3、光学装置制御部8およびシステム制御部9が一体に構成されてもよい。
【0026】
次に、発光装置4を説明する前に、発光装置4を構成する光源20、光拡散部材30、駆動部50およびキャパシタ70を説明する。
【0027】
(光源20の構成)
図3は、光源20の平面図である。光源20は、複数のVCSELが二次元のアレイ状に配列されて構成されている。つまり、光源20は、VCSELを発光素子とする発光素子アレイとして構成されている。紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向およびy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。なお、各図面におけるx、y、z方向は、共通になっている。なお、表面とは、+z方向側の面を言い、裏面とは、-z方向側の面を言う。他の場合も同様である。
【0028】
VCSELは、半導体基板200(後述する図4参照)上に積層された下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に発光領域となる活性領域を設け、半導体基板200と垂直方向にレーザ光を出射させる発光素子である。このことから、二次元のアレイ化が容易である。光源20の備えるVCSELの数は、一例として、100個~1000個である。なお、複数のVCSELは、互いに並列に接続され、並列に駆動される。なお、上記のVCSELの数は一例であり、測定距離や測定範囲に応じて設定されればよい。
【0029】
光源20の表面には、複数のVCSELに共通のアノード電極218(後述する図4参照)が設けられている。光源20の裏面には、カソード電極214が設けられている(後述する図4参照)。つまり、複数のVCSELは、並列接続されている。複数のVCSELを並列接続して駆動することで、VCSELを個別に駆動する場合と比較し、強い強度の光が同時に出射されて被測定物に照射される。
【0030】
ここでは、光源20は、平面視した場合の形状である平面形状が四角形であるとする。そして、+y方向側の側面を側面21A、-y方向側の側面を側面21B、-x方向側の側面を側面22Aおよび+x方向側の側面を側面22Bと表記する。側面21Aと側面21Bとが対向する。側面22Aと側面22Bとは、それぞれが側面21Aと側面21Bとをつなぐとともに、対向する。ここで、側面21Aが第1の側面、側面21Bが第2の側面、側面22Aが第3の側面および側面22Bが第4の側面の一例である。
【0031】
(VCSELの構造)
図4は、光源20における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。このVCSELは、λ共振器構造のVCSELである。紙面の上方向をz方向とする。
【0032】
VCSELは、n型のGaAsなどの半導体基板200上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)202と、上部スペーサ層および下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域206と、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部分布ブラック型反射鏡208とが順に積層されて構成されている。以下では、分布ブラック型反射鏡をDBRと表記する。
【0033】
n型の下部DBR202は、Al0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体で、各層の厚さはλ/4n(但し、λは発振波長、nは媒質の屈折率)であり、これらを交互に40周期で積層してある。n型不純物であるシリコンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。
【0034】
活性領域206は、下部スペーサ層と、量子井戸活性層と、上部スペーサ層とが積層されて構成されている。例えば、下部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層であり、量子井戸活性層は、アンドープのInGaAs量子井戸層およびアンドープのGaAs障壁層であり、上部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層である。
【0035】
p型の上部DBR208は、p型のAl0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体で、各層の厚さはλ/4nであり、これらを交互に29周期積層してある。p型不純物であるカーボンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。好ましくは、上部DBR208の最上層には、p型GaAsからなるコンタクト層が形成され、上部DBR208の最下層もしくはその内部に、p型AlAsの電流狭窄層210が形成されている。
【0036】
上部DBR208から下部DBR202に至るまで積層された半導体層をエッチングすることにより、半導体基板200上に円柱状のメサMが形成される。これにより、電流狭窄層210は、メサMの側面に露出する。酸化工程により、電流狭窄層210には、メサMの側面から酸化された酸化領域210Aと酸化領域210Aによって囲まれた導電領域210Bとが形成される。なお、酸化工程において、AlAs層はAlGaAs層よりも酸化速度が速く、酸化領域210Aは、メサMの側面から内部に向けてほぼ一定の速度で酸化されるため、導電領域210Bの平面形状は、メサMの外形を反映した形状、すなわち円形状となり、その中心は、メサMの軸方向(一点鎖線)とほぼ一致する。本実施の形態において、メサMは、柱状構造をなしている。
【0037】
メサMの最上層には、Ti/Auなどを積層した金属製の環状のp側電極212が形成される。p側電極212は、上部DBR208に設けられたコンタクト層にオーミック接触する。環状のp側電極212の内側は、レーザ光が外部へ出射される光出射口212Aとなる。つまり、VCSELでは、半導体基板200に垂直な方向に光が出射され、メサMの軸方向が光軸になる。さらに、半導体基板200の裏面には、n側電極としてカソード電極214が形成される。なお、p側電極212の内側の上部DBR208の表面が光出射面である。つまり、VCSELの光軸方向が、光出射方向になる。
【0038】
そして、p側電極212のアノード電極(後述するアノード電極218)が接続される部分および光出射口212Aを除いて、メサMの表面を覆うように、絶縁層216が設けられる。そして、光出射口212Aを除いて、アノード電極218がp側電極212とオーミック接触するように設けられる。なお、アノード電極218は、複数のVCSELに共通に設けられている。つまり、光源20を構成する複数のVCSELは、各々のp側電極212がアノード電極218により並列接続されている。なお、アノード電極218は、発光素子アレイの上面電極の一例である。
【0039】
なお、VCSELは、単一横モードで発振してもよく、多重横モードで発振してもよい。一例として、VCSELの1個の光出力は、4mW~8mWである。よって、例えば500個のVCSELで光源20が構成されている場合、光源20の光出力は、2W~4Wになる。このような大出力の光源20では、光源20からの発熱が大きい。
【0040】
(光拡散部材30の構成)
図5は、光拡散部材30の一例を説明する図である。図5(a)は、平面図、図5(b)は、図5(a)のVB-VB線での断面図である。図5(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向およびy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。よって、図5(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向となる。
【0041】
図5(b)に示すように、光拡散部材30は、両面が平行で平坦なガラス基材31の裏面に光を拡散させるための凹凸が形成された樹脂層32を備える。光拡散部材30は、光源20のVCSELから入射する光の拡がり角をさらに拡げて出射する。つまり、光拡散部材30の樹脂層32に形成された凹凸は、光を屈折させたり、散乱させたりして、入射する光の拡がり角αより出射する光の拡がり角βを大きくする。つまり、図5に示すように、VCSELから出射される光の拡がり角αより、光拡散部材30を透過して光拡散部材30から出射される光の拡がり角βが大きくなる(α<β)。このため、光拡散部材30を用いると、光拡散部材30を用いない場合に比べ、光源20の出射する光が照射される照射面の面積が拡大される。また、照射面における光密度が低下する。なお、光密度とは、単位面積当たりの放射照度をいい、拡がり角α、βは、半値全幅(FWHM)である。
【0042】
そして、光拡散部材30は、例えば、平面形状が四角形であって、x方向の幅Wおよびy方向の縦幅Wが1mm~10mm、z方向の厚みtが0.1mm~1mmである。そして、光拡散部材30が以上のような大きさおよび形状であれば、特に、携帯型情報処理端末の顔認証や、数m程度までの比較的近距離の計測に適した光拡散部材が提供される。なお、光拡散部材30は、平面形状が、多角形や円形など、他の形状であってもよい。
【0043】
(駆動部50およびキャパシタ70)
光源20をより高速に駆動させたい場合は、ローサイド駆動するのがよい。ローサイド駆動とは、VCSELなどの駆動対象に対して、電流経路の下流側にMOSトランジスタ等の駆動素子を位置させた構成を言う。逆に、上流側に駆動素子を位置させた構成をハイサイド駆動と言う。
【0044】
図6は、ローサイド駆動により光源20を駆動する等価回路の一例を示す図である。図6では、光源20のVCSELと、駆動部50と、キャパシタ70と、電源82と、PD40と、PD40に流れる電流を検出する検出用抵抗素子41とを示す。
電源82は、図2に示した光学装置制御部8に設けられている。電源82は、+側を電源電位とし、-側を接地電位とする直流電圧を発生する。電源電位は、電源線83に供給され、接地電位は、接地線84に供給される。
【0045】
光源20は、前述したように複数のVCSELが並列接続されて構成されている。VCSELのアノード電極218(図4参照)が電源線83に接続される。
駆動部50は、nチャネル型のMOSトランジスタ51と、MOSトランジスタ51をオンオフする信号発生回路52とを備える。MOSトランジスタ51のドレインは、VCSELのカソード電極214(図4参照)に接続される。MOSトランジスタ51のソースは、接地線84に接続される。そして、MOSトランジスタ51のゲートは、信号発生回路52に接続される。つまり、VCSELと駆動部50のMOSトランジスタ51とは、電源線83と接地線84との間に直列接続されている。信号発生回路52は、光学装置制御部8の制御により、MOSトランジスタ51をオン状態にする「Hレベル」の信号と、MOSトランジスタ51をオフ状態にする「Lレベル」の信号とを発生する。
【0046】
キャパシタ70は、一方の端子が電源線83に接続され、他方の端子が接地線84に接続されている。キャパシタ70が複数ある場合には、複数のキャパシタ70は、並列接続される。なお、キャパシタ70は、例えば電解コンデンサやセラミックコンデンサなどである。
【0047】
PD40は、カソード電極が電源線83に接続され、アノード電極が検出用抵抗素子41の一方の端子と接続されている。そして、検出用抵抗素子41の他方の端子が接地線84に接続されている。つまり、PD40と検出用抵抗素子41とは、電源線83と接地線84との間に直列接続されている。そして、PD40と検出用抵抗素子41との接続点である出力端子42は、光学装置制御部8に接続されている。
【0048】
次に、ローサイド駆動である光源20の駆動方法を説明する。
まず、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Lレベル」であるとする。この場合、MOSトランジスタ51は、オフ状態である。つまり、MOSトランジスタ51のソース-ドレイン間には電流が流れない。よって、直列接続されたVCSELにも、電流が流れない。VCSELは非発光である。
【0049】
このとき、キャパシタ70が、電源82により充電される。つまり、キャパシタ70の電源線83に接続された一方の端子が電源電位になり、接地線84に接続された他方の端子が接地電位になる。キャパシタ70は、容量と電源電圧(=電源電位-接地電位)と時間とで決まる電荷を蓄積する。
【0050】
次に、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Hレベル」になると、MOSトランジスタ51がオフ状態からオン状態に移行する。すると、キャパシタ70に蓄積されていた電荷が放電され、直列接続されたMOSトランジスタ51とVCSELとに電流が流れてVCSELが発光する。
【0051】
そして、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Lレベル」になると、MOSトランジスタ51がオン状態からオフ状態に移行する。これにより、VCSELの発光が停止する。すると、電源82によりキャパシタ70への電荷の蓄積が再開される。
【0052】
以上説明したように、信号発生回路52の出力する信号が「Lレベル」と「Hレベル」とに移行する毎に、MOSトランジスタ51がオンオフを繰り返し、VCSELの発光が停止状態である非発光と発光とが繰り返される。つまり、VCSELから光パルスが出射される。MOSトランジスタ51のオンオフの繰り返しは、スイッチングと呼ばれることがある。ここでは、図6の等価回路に示すような、光源20、MOSトランジスタ51、キャパシタ70などで構成され、光源20への電流経路を、光源20を駆動する回路または回路と表記する。
【0053】
なお、キャパシタ70を設けずに、電源82からVCSELに電荷(電流)を直接供給してもよいが、キャパシタ70に電荷を蓄積し、蓄積された電荷をMOSトランジスタ51がオフからオンに移行した際に放電させて、VCSELに電流を急激に供給することで、VCSELの発光の立ち上り時間が短くなる。
【0054】
PD40は、電源線83と接地線84との間に検出用抵抗素子41を介して逆方向接続されている。このため、光が照射されていない状態では、電流が流れない。前述したように、PD40がVCSELの出射する光の内、光拡散部材30で反射された光の一部を受光すると、PD40には受光量に応じた電流が流れる。よって、PD40に流れる電流が出力端子42の電圧として測定され、光源20の光強度が検知される。そこで、光学装置制御部8は、PD40の受光量により、光源20の光強度が予め定められた光強度になるように制御する。例えば、光学装置制御部8は、光源20の光強度が予め定められた光強度より小さい場合は、電源82の電源電位を高くすることにより、キャパシタ70が蓄積する電荷量を増加させて、VCSELに流れる電流を増加させる。一方、光源20の光強度が予め定められた光強度より多い場合は、電源82の電源電位を低くすることにより、キャパシタ70が蓄積する電荷量を減少させて、VCSELに流れる電流を低減させる。このようにして、光源20の光強度が制御される。
【0055】
また、PD40の受光量が極端に低下した場合には、光拡散部材30が外れたり、破損したりして、光源20が出射する光が直接外部に照射されているおそれがある。このような場合には、光学装置制御部8によって、光源20の光強度が抑制される。例えば、光源20からの光の出射、つまり被測定物への光の照射が停止される。
【0056】
以上説明したように、PD40は、光源20の光強度を検知するために設けられている。よって、PD40を光源20から遠くに配置すればするほど、受光量が小さくなり、光源20の光強度の検知感度が低下する。このため、PD40は、光源20に近接して配置されることがよい。つまり、PD40は、光源20に近接して配置したい回路素子の一例である。また、PD40が光源20に近接して配置されれば、光拡散部材30の面積が少なくてすむ。つまり、高価な光拡散部材30が小型になり、発光装置4が安価になる。
【0057】
(発光装置4)
次に、発光装置4について、詳細に説明する。
図7は、第1の実施の形態が適用される発光装置4を説明する図である。図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)のVIIB-VIIB線での断面図、図7(c)は、図7(a)のVIIC-VIIC線での断面図である。ここで、図7(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向およびy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。よって、図7(b)、(c)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向になる。以下に示す同様の図面においても、同じである。
【0058】
図7(b)、(c)に示すように、発光装置4は、配線基板10上に、基材100および駆動部50が設けられている。そして、基材100上に光源20、PD40および保持部60が設けられている。保持部60上に、光拡散部材30が設けられている。そして、図7(a)、(c)に示すように、光源20およびPD40は、光拡散部材30で覆われている。よって、PD40によって、光源20が出射した光の内、光拡散部材30の裏面で反射した光の一部が受光される。なお、保持部60は、配線基板10上に設けられていてもよい。
【0059】
そして、図7(a)に示すように、発光装置4では、光源20、PD40、駆動部50がx方向に直線状に配列されている。そして、発光装置4では、光源20と駆動部50との間にPD40を配置し、光源20にPD40を近接させる構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(後述する光源用カソード配線パターン12)の経路がPD40によって制限されないようになっている。
【0060】
つまり、発光装置4では、配線パターンを設けた基材100に光源20とPD40とを搭載し、その基材100を駆動部50と接続する配線パターンを設けた配線基板10に搭載することで、配線パターンを立体交差させることにより、光源20と駆動部50とを接続する配線パターンの経路がPD40によって制限されないようにしている。
以下詳細に説明する。
【0061】
配線基板10は、例えば3層の多層基板である。つまり、配線基板10は、基材や駆動部50などが搭載される側から第1導電層、第2導電層、第3導電層を備える。さらに、第1導電層と第2導電層との間、第2導電層と第3導電層との間に、絶縁層を備える。例えば、第3導電層を電源線83、第2導電層を接地線84とする。そして、第1導電層により、光源20への電流経路の一部を構成する光源用アノード配線パターン11、光源用カソード配線パターン12、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン13、PD用カソード配線パターン14が形成される。さらに、第1導電層により、キャパシタ70、抵抗素子6、キャパシタ7などの回路部品が接続される配線パターンが形成されるが、これらについては図示を省略する。このように、配線基板10を多層基板とし、電源線83を第3導電層とし、接地線84を第2導電層として構成することで、電源電位および接地電位の変動が抑制されやすい。なお、光源用アノード配線パターン11、光源用カソード配線パターン12、PD用アノード配線パターン13、PD用カソード配線パターン14など電流が流れる経路を配線パターンと表記する。そして、第1導電層で構成された配線パターンと第2導電層または第3導電層とは、ビアを介して電気的に接続される。ビアとは、例えば、配線基板10を厚さ方向に貫いて設けられた孔に導電性材料が埋め込まれて構成された導電部である。
【0062】
第1導電層、第2導電層、第3導電層は、例えば銅(Cu)、銀(Ag)などの金属またはこれらの金属を含む導電性ペーストなどの導電性材料で構成される。絶縁層は、例えばエポキシ樹脂、セラミックなどで構成される。
【0063】
基材100は、電気絶縁性材料で構成されている。なお、基材100上には光源20が設けられるので、電気絶縁性で配線基板10よりも熱伝導率が高い部材である熱放熱部材で構成されているとよい。電気絶縁性の熱放熱部材としては、窒化ケイ素や窒化アルミニウムなどのセラミックスがある。基材100が熱放熱部材であれば、光源20の発生する熱が基材100を介して保持部60、光拡散部材30に伝導して放熱されやすくなり、放熱効率が向上する。
【0064】
基材100の表面には、光源20への電流経路の一部を構成する光源用アノード配線パターン111F、光源用カソード配線パターン112F、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン113F、PD用カソード配線パターン114Fが設けられている。基材100の裏面にも、光源20への電流経路の一部を構成する光源用アノード配線パターン111B、光源用カソード配線パターン112B、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン113B、PD用カソード配線パターン114Bが設けられている(後述する図8参照)。そして、基材100の表面と裏面とにおいて、同じ数字の配線パターン間がビアで接続されている。例えば、図7(b)に示すように、表面に設けられた光源用アノード配線パターン111Fと裏面に設けられた光源用アノード配線パターン111Bとは、ビア111Vで接続されている。ビアについては、配線パターンの番号に“V”を付して表記する。ここでのビアは、例えば、基材100を貫いて設けられた孔に導電性材料が埋め込まれて構成された導電部であって、表面の配線パターンと裏面の配線パターンとを電気的に接続する。配線パターン間を複数のビアを用いて接続することで、回路のインダクタンスが低減される。
【0065】
そして、基材100の光源用カソード配線パターン112Fと光源20のカソード電極214(図4参照)とが、導電性接着剤などにより接続される。そして、基材100の光源用アノード配線パターン111Fと、光源20のアノード電極218(図4参照)とが、光源20の側面21A、21B、22A側において、ボンディングワイヤ23A、23B、23Cにより接続される。ここでは、光源用アノード配線パターン111Fは、光源20の側面21A、21B、22A側に設けられ、光源20の側面22B側には設けられていない。このようにして、光源20の側面22B側には、アノード電極218と光源用アノード配線パターン111Fとを接続するボンディングワイヤを設けない。よって、光源20に近接して配置したい回路素子の一例であるPD40が、光源20に近接して配置される。
【0066】
上記では、光源20の三側面(側面21A、21B、22A)側にボンディングワイヤ(ボンディングワイヤ23A、23B、23C)で光源20のアノード電極218と光源用アノード配線パターン111Fとを接続した。光源20の少なくとも二側面側において、ボンディングワイヤにて光源20のアノード電極218と光源用アノード配線パターン111Fとが接続されていてもよい。なお、二側面側においてボンディングワイヤにて光源20のアノード電極218と光源用アノード配線パターン111Fとを接続する場合に比較し、三側面側においてが接続する方が回路のインダクタンスが低減する。なお、二側面(側面21A、21B)側においてボンディングワイヤにて光源20のアノード電極218と光源用アノード配線パターン111Fとを接続し、他の一側面(側面22A)側の基材100上に、他の回路素子を設けてもよい。他の回路素子は、一例として温度センサである。他の回路素子を設けることで、回路のインダクタンスが低減させられる。
【0067】
なお、PD40は、PD40のカソード電極が基材100のPD用カソード配線パターン114F上に導電性接着剤により接着され、PD40のアノード電極が基材100のPD用アノード配線パターン113Fとボンディングワイヤ23Dにより接続される。
【0068】
そして、配線基板10に設けられた光源用アノード配線パターン11、光源用カソード配線パターン12と、基材100の裏面の光源用アノード配線パターン111B、光源用カソード配線パターン112Bとがそれぞれ接続される。同様に、配線基板10に設けられたPD用アノード配線パターン13、PD用カソード配線パターン14と、基材100の裏面のPD用アノード配線パターン113B、PD用カソード配線パターン114Bとがそれぞれ接続される。なお、配線基板10の配線パターンと基材100の配線パターンとの接続は、導電性接着剤などにより行われる。
【0069】
そして、図7(b)に示すように、y方向の中央から-y方向側にずれたVIIB-VIIB線での断面図では、配線基板10の光源用アノード配線パターン11と基材100の裏面の光源用アノード配線パターン111Bとが接続される。基材100の光源用アノード配線パターン111Bは、ビア111Vを介して、基材100の表面の光源用アノード配線パターン111Fに接続される。そして、基材100の光源用アノード配線パターン111Fはボンディングワイヤ23A、23B、23Cを介して、光源20のアノード電極218(図4参照)に接続される。
【0070】
同様に、配線基板10のPD用カソード配線パターン14と基材100の裏面のPD用カソード配線パターン114Bとが接続される。基材100のPD用カソード配線パターン114Bは、ビア114Vを介して、基材100の表面のPD用カソード配線パターン114Fに接続される。そして、基材100のPD用カソード配線パターン114Fは、PD40のカソード電極に接続される。
【0071】
つまり、VIIB-VIIB線の断面においては、配線基板10の光源用アノード配線パターン11と、基材100の裏面の光源用アノード配線パターン111Bと、基材100の表面の光源用アノード配線パターン111Fとは、互いに対向するように設けられている。同様に、配線基板10のPD用カソード配線パターン14と、基材100の裏面のPD用カソード配線パターン114Bと、基材100の表面のPD用カソード配線パターン114Fとは、互いに対向するように設けられている。
【0072】
一方、図7(c)に示すように、y方向の中央部のVIIC-VIIC線での断面図では、配線基板10の光源用カソード配線パターン12が光源20の下方から駆動部50まで延びて設けられている。配線基板10の光源用アノード配線パターン11と基材100の裏面の光源用アノード配線パターン111Bとが接続されるとともに、光源用カソード配線パターン12と基材100の裏面の光源用カソード配線パターン112Bとが接続される。そして、基材100の光源用アノード配線パターン111Bは、ビア111Vを介して、基材100の表面の光源用アノード配線パターン111Fに接続されるとともに、光源用カソード配線パターン112Bは、ビア112Vを介して、基材100の表面の光源用カソード配線パターン112Fに接続される。そして、光源用カソード配線パターン112Fは、光源20のカソード電極214に接続される。
【0073】
しかし、図7(c)に示すVIIC-VIIC断面では、基材100上のPD用カソード配線パターン114Fは配線基板10に設けられた光源用カソード配線パターン12に接続されない。
【0074】
つまり、VIIC-VIIC線の断面においては、配線基板10の光源用アノード配線パターン11と、基材100の裏面の光源用アノード配線パターン111Bと、基材100の表面の光源用アノード配線パターン111Fとは、互いに対向するように設けられている。しかし、基材100の裏面の光源用カソード配線パターン112Bと、基材100の表面の光源用カソード配線パターン112Fとは、互いに対向するように設けられているが、配線基板10の光源用カソード配線パターン12は、光源用カソード配線パターン112Bと対向する部分から駆動部50まで延びるように設けられている。また、基材100の裏面には、基材100上のPD用カソード配線パターン114Fに対向する配線パターンが設けられていない。つまり、基材100上のPD用カソード配線パターン114Fと配線基板10に設けられた光源用カソード配線パターン12とが、立体交差して電気的に接続されないようになっている。つまり、基材100は、光源用カソード配線パターン12を跨いで設けられている。このようにすることで、配線基板10の光源用カソード配線パターン12は、基材100の裏面において、光源20から駆動部50まで延びて設けられるとともに、PD40は、基材100上の領域であって、平面視したときに、光源用カソード配線パターン12と重なる領域に設けられている。なお、基材100が光源用カソード配線パターン12を跨いで設けず、基材100を光源用カソード配線パターン12の幅方向の一方側に設けると、発光装置4が大型化してしまう。
【0075】
以上のようにすることで、図7(a)に示すように、第1の実施の形態が適用される発光装置4では、光源20に近接してPD40が配置されるとともに、光源20と駆動部50との間にPD40を配置する構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(ここでは、光源用カソード配線パターン12)が直線状に設けられている。これにより、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(ここでは、光源用カソード配線パターン12)が短くなり、回路のインダクタンスの増加が抑制されている。つまり、光源20と駆動部50とを接続する配線パターンの経路がPD40によって制限されないようになっている。
【0076】
次に、配線基板10および基材100に設けられる配線パターンを詳細に説明する。
図8は、配線基板10および基材100に設けられる配線パターンを説明する図である。図8(a)は、配線基板10の表面、図8(b)は、基材100の表面、図8(c)は、基材100の裏面である。図8(a)では、配線基板10の第1導電層による配線パターンを示し、接地線84である第2導電層、電源線83である第3導電層による配線パターンは示さない。第2導電層および第3導電層は、第1導電層で構成される配線パターンと接続するために用いられるビアが設けられる部分を除いて、べた膜である。
【0077】
図8(a)に示す配線基板10の表面には、光源用アノード配線パターン11および光源用カソード配線パターン12が設けられている。光源用カソード配線パターン12は、平面形状が四角形である。光源用アノード配線パターン11は、光源用カソード配線パターン12の-x方向側の短辺側に隣接して設けられるとともに、その短辺に繋がる二つの長辺側に延びている。さらに、配線基板10の表面には、PD用アノード配線パターン13およびPD用カソード配線パターン14が設けられている。PD用アノード配線パターン13およびPD用カソード配線パターン14は、光源用カソード配線パターン12を±y方向から挟むように設けられている。
【0078】
図8(b)に示す基材100の表面には、光源用アノード配線パターン111F、光源用カソード配線パターン112Fが設けられている。光源用カソード配線パターン112Fは、図3に示した光源20の平面形状に対応した四角形の平面形状をなしている。そして、光源用アノード配線パターン111Fは、光源用カソード配線パターン112Fの三辺に隣接して設けられている。さらに、基材100の表面には、PD用アノード配線パターン113FおよびPD用カソード配線パターン114Fが設けられている。
【0079】
図8(c)に示す基材100の裏面には、光源用アノード配線パターン111Fにビア111Vを介して接続される光源用アノード配線パターン111B、光源用カソード配線パターン112Fにビア112Vを介して接続される光源用カソード配線パターン112B、PD用アノード配線パターン113Fにビア113Vを介して接続されるPD用アノード配線パターン113B、PD用カソード配線パターン114Fにビア114Vを介して接続されるPD用カソード配線パターン114Bが設けられている。なお、基材100において、図8(b)に示す表面の配線パターンと、図8(c)に示す裏面の配線パターンとは、PD用アノード配線パターン11FとPD用アノード配線パターン11Bとを除いて、ミラー反転となっている。つまり、平面視した場合、基材100における表面の配線パターンと裏面の配線パターンとは重なるように設けられている。なお、光源用カソード配線パターン12は、光源20と接続され、基材100の裏面側から駆動部50に向けて延びる配線基板10上の配線パターンである。
【0080】
一方、PD用アノード配線パターン11FとPD用アノード配線パターン11Bとは、表面のPD用アノード配線パターン11、裏面のPD用アノード配線パターン11Bに比べ、y方向の長さが長く、基材100のy方向の中央部まで伸びている。
【0081】
そして、図8(a)の配線基板10の破線で囲って示す場所に、基材100を配置すると、配線基板10の光源用アノード配線パターン11と基材100の光源用アノード配線パターン111Bとが接続され、配線基板10の光源用カソード配線パターン12と基材100の光源用カソード配線パターン112Bとが接続される。同様に、配線基板10のPD用アノード配線パターン13と基材100のPD用アノード配線パターン113Bとが接続され、配線基板10のPD用カソード配線パターン14と基材100のPD用カソード配線パターン114Bとが接続される。
【0082】
このとき、基材100において、裏面のPD用カソード配線パターン114Bが表面のPD用カソード配線パターン114Fと同じ形状であると、PD用カソード配線パターン114Bは、配線基板10の光源用カソード配線パターン12とPD用カソード配線パターン14とを短絡させてしまう。このため、基材100において、裏面のPD用カソード配線パターン114Bは、表面のPD用カソード配線パターン114Fより+y方向側への長さを短くし、PD用カソード配線パターン114Bが、配線基板10の光源用カソード配線パターン12とPD用カソード配線パターン14とを短絡させないようになっている。つまり、光源20と駆動部50との間にPD40を配置するために、基材100上にPD40のカソード電極に接続されるPD用カソード配線パターン114Fを設けることにより、配線基板10に設けられる光源用カソード配線パターン12と短絡しないように、立体交差させている。
【0083】
なお、配線基板10上に基材100が配置される前に、基材100上に光源20およびPD40が搭載される。つまり、基材100の光源用カソード配線パターン112F上に、光源20のカソード電極214(図4参照)が導電性接着剤などにより接着される。そして、光源20のアノード電極218(図4参照)と光源用アノード配線パターン111Fとがボンディングワイヤ23A、23B、23Cにより接続される。
【0084】
さらに、PD40のカソード電極が基材100のPD用カソード配線パターン114F上に導電性接着剤により接着され、PD40のアノード電極が基材100のPD用アノード配線パターン113Fとボンディングワイヤ23Dにより接続される。
【0085】
以上説明したように、第1の実施の形態の発光装置4では、基材100を用いることにより、光源20と駆動部50との間にPD40を配置する構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターンの経路がPD40によって制限されないようになっている。これにより、回路のインダクタンスの増加を抑制される。
【0086】
上述したように、PD40のアノード電極およびカソード電極は、配線基板10に設けられた光源用カソード配線パターン12を挟んで両側に分かれてPD用アノード配線パターン13およびPD用カソード配線パターン14に接続されている。つまり、PD40は、光源用カソード配線パターン12を挟むように外側において配線基板10に接続されている。
図9は、PD40と配線基板10における光源用カソード配線パターン12の外側に設けられている関係を説明する図である。図9(a)は、実施例1、図9(b)は、実施例2である。
【0087】
図9(a)に示す実施例1は、図8に示したものと同じである。実施例1では、光源用カソード配線パターン12は、光源20と駆動部50とを直線状に接続する。そして、光源用カソード配線パターン12は、平面形状が四角形に形成されている。つまり、PD40を接続するためのPD用アノード配線パターン13、PD用カソード配線パターン14が設けられていても、光源用カソード配線パターン12は、それらの影響を受けないで同じ線幅で設けられている。よって、光源用カソード配線パターン12は、光源20と駆動部50とが直線状に最も短い距離で設けられるので、回路のインダクタンスが増加することが抑制される。そして、光源用カソード配線パターン12の抵抗は、次に述べる実施例2に比べて小さい。
【0088】
図9(b)に示す実施例2は、PD40を設けるために、光源用カソード配線パターン12がPD用アノード配線パターン13およびPD用カソード配線パターン14が設けられる部分において、細められて設けられている。よって、光源用カソード配線パターン12の抵抗は、上記の実施例1に比べて大きい。しかし、実施例2でも、光源20と駆動部50とを直線状に最も短い距離で設けられる。つまり、光源用カソード配線パターン12は、PD40を設けたことによる影響を受けにくい。光源用カソード配線パターン12は、このように構成されてもよい。
【0089】
以上述べたように、PD40が光源用カソード配線パターン12を両側から挟むように外側において配線基板10に接続されることで、後述する比較例2の発光装置4-2で示す光源用カソード配線パターン12′の内側にPD40を設ける場合と比較し、光源用カソード配線パターン12の経路が影響を受けない。よって、回路のインダクタンスの増加が抑制される。なお、PD用アノード配線パターン13、PD用カソード配線パターン14は、回路素子の一例であるPD40の配線基板10との接続部の一例であり、PD40のアノード電極が第1の電極の一例であり、カソード電極が第2の電極の一例である。
【0090】
第1の実施の形態の発光装置4では、基材100を用いた。以下では、基材100を用いない場合の発光装置を比較例として説明する。
(比較例の発光装置)
図10は、比較例1の発光装置4-1を説明する図である。図10(a)は、平面図、図10(b)は、図10(a)のXB-XB線での断面図である。発光装置4-1は、発光装置4に用いた基材100を用いない。つまり、発光装置4-1は、配線基板10上に、光源20、PD40、駆動部50や他の回路部品が設けられている。
【0091】
比較例1の発光装置4-1では、図10(a)に示すように、配線基板10のx方向に向けてPD40、光源20、そして駆動部50が配列されている。このため、光源20の側面22B側は、光源用カソード配線パターン12により光源20と駆動部50とが接続される。よって、図10(a)、(b)に示すように、光源20と駆動部50との間において、光源用カソード配線パターン12は、PD40の影響を受けることなく設定される。
【0092】
一方、PD40は、光源用カソード配線パターン12が設けられた光源20の側面22B以外の側面側、つまり側面21A、21B、22A側に配置せざるを得ない。しかし、側面21A、21B、22A側には、光源用アノード配線パターン11が設けられている。そして、光源用アノード配線パターン11と光源20のアノード電極218とがボンディングワイヤ23A、23B、23Cにて接続されている。このため、PD40は、光源用アノード配線パターン11の-x側である外側に配置せざるを得ず、光源20とPD40とを近接して配置させられない。
【0093】
図11は、比較例2の発光装置4-2を説明する図である。図11(a)は、平面図、図11(b)は、図11(a)のXIB-XIB線での断面図である。発光装置4-2は、発光装置4に用いた基材100を用いない。つまり、発光装置4-2は、配線基板10上に、光源20、PD40、駆動部50や他の回路部品が設けられている。
【0094】
比較例2の発光装置4-2では、図11(b)に示すように、配線基板10のx方向に光源20、PD40および駆動部50が直線状に配列されている。つまり、光源20と駆動部50との間にPD40が配置されている。そして、発光装置4-1と同様に、光源20は、側面21A,21B、22A側に光源用アノード配線パターン11が設けられ、光源用アノード配線パターン11と光源20のアノード電極218とがボンディングワイヤ23A、23B、23Cで接続されている。そして、光源用アノード配線パターン11が設けられていない側面22B側にPD40が設けられている。よって、光源20に近接して設けたいPD40が、光源20に近接して配置されている。
【0095】
一方、光源用カソード配線パターン12′は、PD40を内側に含むように分岐して設けられている。つまり、光源用カソード配線パターン12′は、PD40を迂回するように設けざるを得ない。このように、発光装置4-2では、光源20と駆動部50との間を接続する光源用カソード配線パターン12′が、PD40の配置の影響を受けることになり、回路のインダクタンスが増加することになる。
【0096】
以上説明したように、第1の実施の形態が適用される発光装置4のように、基材100を設けることにより、光源20に近接して設けたい回路素子(ここでは、一例としてPD40)を光源20と駆動部50との間に配置する構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(ここでは、光源用カソード配線パターン12)の経路がPD40によって制限されない。
【0097】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態が適用される発光装置4は、基材100上に光源20と近接して配置したいPD40とが設けられていた。第2の実施の形態が適用される発光装置4Aでは、後述するように、基材150上に光源20を設けていない。
【0098】
図12は、第2の実施の形態が適用される発光装置4Aを説明する図である。図12(a)は、平面図、図12(b)は、図12(a)のXIIB-XIIB線での断面図、図12(c)は、図12(a)のXIIC-XIIC線での断面図である。発光装置4と同様な部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
図12(b)、(c)に示すように、発光装置4Aは、配線基板10上に、光源20、基材150、駆動部50および保持部60が設けられている。そして、基材150上にPD40が設けられている。発光装置4Aでは、配線基板10上に保持部60が設けられ、保持部60によって、光拡散部材30が保持されている。ここで、基材150は、電気絶縁性材料で構成されていればよい。なお、光源20が設けられる配線基板10が、基材150より熱伝導率が高い放熱基板であってもよい。
【0100】
図12(a)に示すように、発光装置4Aでは、光源20、PD40および駆動部50がx方向に直線状に配置されている。そして、発光装置4Aでは、光源20と駆動部50との間にPD40を配置し、光源20にPD40を近接させる構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(後述する光源用カソード配線パターン12)の経路がPD40によって制限されないようになっている。
【0101】
配線基板10の第1導電層により、光源20への電流経路の一部を構成する光源用アノード配線パターン11A、光源用カソード配線パターン12、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン15、PD用カソード配線パターン16が形成される。なお、図12(a)では、PD用アノード配線パターン15、PD用カソード配線パターン16は、基材150の裏面側にあるので図示していない。光源用アノード配線パターン11Aは、図8(a)で示した光源用アノード配線パターン11より幅が狭くなっている。
【0102】
基材150の表面には、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン115F、PD用カソード配線パターン116Fが設けられている。基材150の裏面にも、PD40への電流経路の一部を構成するPD用アノード配線パターン115B、PD用カソード配線パターン116Bが設けられている(後述する図13参照)。そして、基材150の表面と裏面とにおいて、同じ数字の配線パターン間がビアで接続されている。
【0103】
そして、配線基板10の光源用カソード配線パターン12と光源20のカソード電極214(図4参照)とが、導電性接着剤などにより接着される。そして、配線基板10の光源用アノード配線パターン11Aと、光源20のアノード電極218(図4参照)とが、光源20の側面21A、21B、22A側において、ボンディングワイヤ23A、23B、23Cにより接続される。ここでは、光源用アノード配線パターン11Aは、光源20の側面21A、21B、22A側に設けられ、光源20の側面22B側には設けられていない。このようにして、光源20の側面22B側には、アノード電極218と光源用アノード配線パターン11Aとを接続するボンディングワイヤを設けない。よって、光源20に近接して配置したい回路素子の一例であるPD40が、光源20に近接して配置される。
【0104】
PD40は、PD40のカソード電極が基材100のPD用カソード配線パターン116F上に導電性接着剤により接着され、PD40のアノード電極が基材100のPD用アノード配線パターン115Fとボンディングワイヤ23Dにより接続される。
【0105】
そして、配線基板10に設けられたPD用アノード配線パターン15、PD用カソード配線パターン16と、基材100の裏面のPD用アノード配線パターン115B、PD用カソード配線パターン116Bとがそれぞれ接続される。
【0106】
そして、図12(b)に示すように、y方向の中央から-y方向側にずれたXIIB-XIIB線での断面図では、配線基板10のPD用カソード配線パターン16と基材150の裏面のPD用カソード配線パターン116Bとが接続される。基材150のPD用カソード配線パターン116Bは、ビア116Vを介して、基材150の表面のPD用カソード配線パターン116Fに接続される。そして、基材150のPD用カソード配線パターン116Fは、PD40のカソード電極に接続される。
【0107】
つまり、XIIB-XIIB線の断面においては、配線基板10のPD用カソード配線パターン16と、基材150の裏面のPD用カソード配線パターン116Bと、基材150の表面のPD用カソード配線パターン116Fとは、互いに対向するように設けられている。
【0108】
一方、図12(c)に示すように、y方向の中央部のXIIC-XIIC線での断面図では、基材150上のPD用カソード配線パターン116Fは配線基板10に設けられた光源用カソード配線パターン12に接続されない。
【0109】
つまり、XIIC-XIIC線の断面においては、配線基板10の光源用カソード配線パターン12は、光源20から駆動部50まで延びて設けられている。そして、配線基板10には、基材150上のPD用カソード配線パターン116Fに対向する配線パターンが設けられていない。このようにすることで、基材150上のPD用カソード配線パターン116Fと配線基板10に設けられた光源用カソード配線パターン12とが、立体交差して電気的に接続されないようになっている。
【0110】
次に、配線基板10および基材150に設けられる配線パターンを説明する。
図13は、配線基板10および基材150に設けられる配線パターンを説明する図である。図13(a)は、配線基板10の表面、図13(b)は、基材100の表面、図13(c)は、基材100の裏面である。図13(a)では、配線基板10の第1導電層による配線パターンを示す。
【0111】
図13(a)に示す配線基板10の表面には、光源用アノード配線パターン11Aおよび光源用カソード配線パターン12が設けられている。光源用カソード配線パターン12は、図8(a)で示した光源用カソード配線パターン12と同じであるので、同じ符号を付している。配線基板10の表面には、PD用アノード配線パターン15およびPD用カソード配線パターン16が設けられている。PD用アノード配線パターン15およびPD用カソード配線パターン16は、図8(a)で示したPD用アノード配線パターン13およびPD用カソード配線パターン14よりy方向の長さが短くなっている。
【0112】
図13(b)、(c)に示す基材150には、図8(b)、(c)に示した基材100のPD用アノード配線パターン113F、113BおよびPD用カソード配線パターン114F、114Bと同様に、表面にPD用アノード配線パターン115F、PD用カソード配線パターン116F、裏面にPD用アノード配線パターン115B、PD用カソード配線パターン116Bが設けられている。なお、表面のPD用アノード配線パターン115Fと裏面のPD用アノード配線パターン115Bとは同じ平面形状であって、基材150の表裏においてミラー反転した形状となっている。一方、表面のPD用カソード配線パターン116Fは、裏面のPD用カソード配線パターン116Bに比べ、y方向の長さが長く、基材150のy方向の中央部まで延びている。そして、表面のPD用アノード配線パターン115Fと裏面のPD用アノード配線パターン115Bとの間および表面のPD用カソード配線パターン116Fと裏面のPD用カソード配線パターン116Bとの間は、基材150を貫いて設けられたビアで接続されている。
【0113】
そして、図13(a)の配線基板10の破線で囲って示す場所に、基材150を配置すると、配線基板10のPD用アノード配線パターン15と基材150のPD用アノード配線パターン115Bとが接続され、配線基板10のPD用カソード配線パターン16と基材150のPD用カソード配線パターン116Bとが接続される。
【0114】
このとき、基材150において、裏面のPD用カソード配線パターン116Bが表面のPD用カソード配線パターン116Fと異なる形状とし、配線基板10の光源用カソード配線パターン12とPD用カソード配線パターン16とを短絡させることがないようにしている。つまり、配線基板10のy方向の中央部にPD40を配置するために、基材150上にPD40のカソード電極に接続されるPD用カソード配線パターン116Fを設けることにより、配線基板10に設けられる光源用カソード配線パターン12と短絡しないように、立体交差させている。つまり、基材150は、光源用カソード配線パターン12を跨いで設けられている。このようにすることで、配線基板10の光源用カソード配線パターン12は、基材150の裏面において、光源20から駆動部50まで延びて設けられるとともに、PD40は、基材100上の領域であって、平面視したときに、光源用カソード配線パターン12と重なる領域に設けられている。なお、光源用カソード配線パターン12は、光源20と接続され、基材150の裏面側から駆動部50に向けて延びる配線基板10上の配線パターンである。
【0115】
なお、配線基板10上に基材150を配置する前に、基材150上にPD40が搭載される。一方、配線基板10には、光源用カソード配線パターン12に光源20のカソード電極214が導電性接着剤により接着される。そして、PD40が搭載された基材150が配線基板10上に搭載される。次に、光源20のアノード電極218が、光源用アノード配線パターン11に、ボンディングワイヤ23A、23B、23Cにより接続され、PD40のアノード電極が、基材150上のPD用アノード配線パターン115Fに、ボンディングワイヤ23Dにより接続される。
【0116】
以上説明したように、第2の実施の形態の発光装置4Aでは、基材150を設けることにより、光源20に近接して設けたい回路素子(ここでは、一例としてPD40)を光源20と駆動部50との間に配置する構成であっても、光源20と駆動部50とを接続する配線パターン(ここでは、光源用カソード配線パターン12)の経路がPD40によって制限されない。これにより、回路のインダクタンスの増加を抑制される。
【0117】
なお、上記の第1の実施の形態および第2の実施の形態では、回路素子の一例として光量監視用受光素子(PD40)で説明したが、回路素子として、光源20に電流を供給するキャパシタ(キャパシタ70)などの他の回路部品であってもよい。
【0118】
また、上記の第1の実施の形態および第2の実施の形態では、光拡散部材30を用いたが、光拡散部材30に代えて、光を透過する部材、例えば、保護用のカバーなどの透明基材、集光レンズやマイクロレンズアレイなどの光学部材を有する構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…情報処理装置、2…ユーザインターフェイス(UI)部、3…光学装置、4、4-1、4-2、4A…発光装置、5…3Dセンサ、6…抵抗素子、7、70…キャパシタ、8…光学装置制御部、9…システム制御部、10…配線基板、11、11A、111F、111B…光源用アノード配線パターン、12、12′、112F、112B…光源用カソード配線パターン、13、15、113F、113B、115F、115B…PD用アノード配線パターン、14、16、114F、114B、116F、116B…PD用カソード配線パターン、20…光源、21A、21B、22A、22B…側面、23A、23B、23C、23D…ボンディングワイヤ、30…光拡散部材、40…PD(光量監視用受光素子)、50…駆動部、51…MOSトランジスタ、52…信号発生回路、60…保持部、61A、61B、62A、62B…壁、81…形状特定部、82…電源、83…電源線、84…接地線、91…認証処理部、100、150…基材、200…半導体基板、202…下部DBR、206…活性領域、208…上部DBR、210…電流狭窄層、210A…酸化領域、210B…導電領域、214…カソード電極、218…アノード電極、M…メサ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ素子
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