IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7512599三次元造形物の製造方法および情報処理装置
<>
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図1
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図2
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図3
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図4
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図5
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図6
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図7
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図8
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図9
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図10
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図11
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図12
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図13
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図14
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図15
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図16
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図17
  • 特許-三次元造形物の製造方法および情報処理装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20240702BHJP
   B22F 10/80 20210101ALI20240702BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240702BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/386
B22F10/80
B29C64/118
B33Y50/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020013572
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120185
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114114(JP,A)
【文献】特開2018-176597(JP,A)
【文献】特開2019-25759(JP,A)
【文献】特開2019-25761(JP,A)
【文献】特表2009-525207(JP,A)
【文献】国際公開第02/21226(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/094791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを取得する第1工程と、
取得した前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成する第2工程と、
前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成し、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定する第3工程と、
前記第1中間データに従って前記造形材料が堆積される領域、および、特定した前記隙間領域に、前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して造形データを生成する第4工程と、
前記造形データに従って前記三次元造形物を造形する第5工程と、
を備える三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを取得する第1工程と、
取得した前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成する第2工程と、
前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなり、かつ、前記第2中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状が前記第1中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状とは異なる種類の形状になるように、前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成し、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定する第3工程と、
特定した前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して造形データを生成する第4工程と、
前記造形データに従って前記三次元造形物を造形する第5工程と、
を備える三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程にて、前記第1中間データによって表される前記経路の長さよりも前記第2中間データによって表される前記経路の長さの方が長くなるように前記第1中間データの前記経路情報を変更して前記第2中間データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって
前記第3工程にて、前記第1中間データによって表される前記経路において堆積される前記造形材料の幅よりも前記第2中間データによって表される前記経路において堆積される前記造形材料の幅の方が広くなるように前記第1中間データの前記吐出量情報を変更して前記第2中間データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第4工程にて、前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように、前記隙間領域に前記経路を追加する、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第4工程にて、前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように、前記隙間領域を挟んだ前記経路における前記吐出量を増加させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第4工程にて、
前記第3工程で特定された前記隙間領域を、前記第1中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた領域まで拡張し、
拡張された前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データを変更する、三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を造形するための造形データを生成する情報処理装置であって、
前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを用いて前記造形データを生成するデータ生成部を備え、
前記データ生成部は、
前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成し、
前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成して、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定し、
前記第1中間データに従って前記造形材料が堆積される領域、および、特定された前記隙間領域に、前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して前記造形データを生成する、
情報処理装置。
【請求項9】
吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を造形するための造形データを生成する情報処理装置であって、
前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを用いて前記造形データを生成するデータ生成部を備え、
前記データ生成部は、
前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成し、
前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなり、かつ、前記第2中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状が前記第1中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状とは異なる種類の形状になるように、前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成して、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定し、
特定された前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して前記造形データを生成する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の製造方法に関し、例えば、特許文献1には、三次元造形物の各層を構築するためのビルド経路に従って、造形材料の押し出しを行うノズルを移動させる技術が記載されている。ビルド経路には、周囲経路と、バルクラスター経路と、残存経路とが含まれる。周囲経路は、三次元造形物と外部との境界を形成するための経路であり、バルクラスター経路は、周囲経路によって囲まれた領域を埋める経路である。残存経路は、周囲経路およびバルクラスター経路では埋められない空隙領域を埋める経路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-525207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術のように、空隙領域を残存経路で埋めることによって三次元造形物内の空隙率を低減できる。しかし、例えば、無視できる程度に小さな空隙領域のように、埋める必要のない空隙領域にも残存経路が追加され得る。そのため、空隙領域を埋めるための処理が長期化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを取得する第1工程と、取得した前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成する第2工程と、前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成し、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定する第3工程と、特定した前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して造形データを生成する第4工程と、前記造形データに従って前記三次元造形物を造形する第5工程と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を造形するための造形データを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを用いて前記造形データを生成するデータ生成部を備え、前記データ生成部は、前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成し、前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成して、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定し、特定された前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して前記造形データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
図2】フラットスクリューの構成を示す斜視図。
図3】バレルの構成を示す上面図。
図4】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図。
図5】造形データ生成処理の内容を示すフローチャート。
図6】第1実施形態の第1中間データの一例を示す第1の説明図。
図7】第1実施形態の第1中間データの一例を示す第2の説明図。
図8】第1実施形態の第2中間データへの変更の様子を示す説明図。
図9】第1実施形態の第2中間データの一例を示す説明図。
図10】第1実施形態の造形データの一例を示す説明図。
図11】三次元造形処理の内容を示すフローチャート。
図12】第2実施形態の第2中間データへの変更の様子を示す説明図。
図13】第2実施形態の第2中間データの一例を示す説明図。
図14】第2実施形態の第1中間データの他の例を示す説明図。
図15】第2実施形態の第2中間データの他の例を示す説明図。
図16】第3実施形態の第1中間データの一例を示す説明図。
図17】第3実施形態の第2中間データへの変更の様子を示す説明図。
図18】第3実施形態の第2中間データの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム100の概略構成を示す説明図である。三次元造形システム100は、三次元造形装置110と、情報処理装置120とを備えている。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0009】
本実施形態における三次元造形装置110は、造形部200と、ステージ300と、移動部400と、制御部500とを備えている。造形部200は、ノズル61を有している。三次元造形装置110は、制御部500の制御下で、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させつつノズル61から造形材料を吐出することによって、ステージ300の上に造形材料の層を積層して所望の形状の三次元造形物を造形する。尚、造形材料のことを溶融材料と呼ぶこともある。
【0010】
造形部200は、材料MRの供給源である材料供給部20と、材料MRを可塑化して造形材料にする可塑化部30と、上述したノズル61を有する吐出部60とを備えている。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0011】
材料供給部20は、造形材料を生成するための材料MRを可塑化部30に供給する。本実施形態では、ペレット状に形成されたABS樹脂が材料MRとして用いられる。本実施形態では、材料供給部20は、材料MRを収容するホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20に収容された材料MRは、供給路22を介して、可塑化部30に供給される。
【0012】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料MRを可塑化して造形材料にして、吐出部60に供給する。可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、加熱部58とを備えている。スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容する筐体である。スクリューケース31の下端部にはバレル50が固定されており、スクリューケース31とバレル50とによって囲まれた空間にフラットスクリュー40が収容されている。
【0013】
フラットスクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸RXがZ方向に平行になるようにスクリューケース31内に配置されている。フラットスクリュー40の上面41側は駆動モーター32に接続されており、駆動モーター32が発生させるトルクによって、フラットスクリュー40は、スクリューケース31内にて中心軸RXを中心に回転する。フラットスクリュー40は、上面41とは反対側に、溝部45が形成された溝形成面42を有している。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。スクリュー対向面52の中央には、吐出部60に連通する貫通孔56が設けられている。
【0014】
図2は、フラットスクリュー40の構成を示す斜視図である。図2には、技術の理解を容易にするために、図1とは上下逆向きにフラットスクリュー40が表されている。図2には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。フラットスクリュー40の溝形成面42の中央部47は、溝部45の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部47は、図1に表されたバレル50の貫通孔56に対向する。中央部47は、中心軸RXと交差する。本実施形態では、溝部45は、中央部47から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部45は、インボリュート曲線状に構成されてもよいし、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、溝部45の側壁部を構成し、各溝部45に沿って延びている凸条部46が設けられている。溝部45は、フラットスクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料MRを受け入れる部分である。材料導入口44から溝部45内に導入された材料MRは、フラットスクリュー40の回転によって溝部45内を中央部47に向かって搬送される。
【0015】
図2には、3つの溝部45と、3つの凸条部46とを有するフラットスクリュー40が表されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部45や凸条部46の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部45のみが設けられてもよいし、2以上の複数の溝部45が設けられてもよい。また、溝部45の数に合わせて任意の数の凸条部46が設けられてもよい。図2には、材料導入口44が3箇所に形成されたフラットスクリュー40が表されている。フラットスクリュー40に設けられる材料導入口44の位置は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料導入口44が1箇所にのみ設けられてもよいし、2箇所以上の複数の位置に設けられてもよい。
【0016】
図3は、バレル50の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、吐出部60に連通する貫通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における貫通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が貫通孔56に接続され、貫通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を貫通孔56に導く機能を有している。尚、スクリュー対向面52には、案内溝54が設けられていなくてもよい。
【0017】
図1に示すように、バレル50には、材料MRを加熱するための加熱部58が埋め込まれている。加熱部58は、バレル50に埋め込まれるのではなく、例えば、バレル50の下方に配置されてもよい。本実施形態では、加熱部58は、電力の供給を受けて発熱するヒーターによって構成されている。加熱部58の温度は、制御部500によって制御される。溝部45内を搬送される材料MRは、フラットスクリュー40の回転によるせん断と加熱部58からの熱によって可塑化されて、ペースト状の造形材料になる。造形材料は、貫通孔56から吐出部60に供給される。
【0018】
吐出部60は、可塑化部30から供給された造形材料を吐出する。吐出部60は、ノズル61と、流路65と、開閉機構70とを備えている。ノズル61は、吐出部60の下端部に設けられている。ノズル61の下端部には、造形材料を吐出するためのノズル孔62が設けられている。本実施形態では、ノズル61には、円形の開口形状を有するノズル孔62が設けられている。ノズル孔62の開口形状は、円形ではなく、例えば、楕円形や、四角形等の多角形であってもよい。流路65は、バレル50の貫通孔56とノズル孔62とに連通し、貫通孔56からノズル孔62に向かって造形材料が流れる。流路65を流れた造形材料は、ノズル孔62から吐出される。
【0019】
開閉機構70は、流路65を開閉して、ノズル61からの造形材料の吐出を制御する。本実施形態では、開閉機構70は、バタフライバルブによって構成されている。開閉機構70は、軸状部材である駆動シャフト72と、駆動シャフト72の回転に応じて流路65を開閉する弁体73と、駆動シャフト72を回転させるバルブ駆動部74とを備えている。
【0020】
駆動シャフト72は、造形材料の流れ方向に交差するように流路65の途中に取り付けられている。本実施形態では、駆動シャフト72は、流路65内の造形材料の流れ方向に対して垂直な向きであるY方向に平行になるように取り付けられている。駆動シャフト72は、Y方向に沿った中心軸を中心にして回転可能である。
【0021】
弁体73は、流路65内において回転する板状部材である。本実施形態では、弁体73は、駆動シャフト72の流路65内に配置されている部位を板状に加工することによって形成されている。弁体73を、その板面に垂直な方向から見たときの形状は、弁体73が配置されている部位における流路65の開口形状とほぼ一致する。
【0022】
バルブ駆動部74は、制御部500の制御下で駆動シャフト72を回転させる。バルブ駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。駆動シャフト72の回転によって弁体73が流路65内において回転する。
【0023】
バルブ駆動部74によって、流路65における造形材料が流れる方向に対して弁体73の板面が垂直に保持された場合、流路65からノズル61への造形材料の供給が遮断され、ノズル61からの造形材料の吐出が停止される。バルブ駆動部74によって駆動シャフト72が回転されて、流路65における造形材料が流れる方向に対して弁体73の板面が鋭角に保持されると、流路65からノズル61への造形材料の供給が開始され、弁体73の回転角度に応じた吐出量の造形材料がノズル61から吐出される。図1に表されているように、バルブ駆動部74によって、流路65における造形材料が流れる方向に対して弁体73の板面が平行に保持された場合、流路65の流路抵抗が最も低い状態になる。この状態では、ノズル61からの単位時間あたりの造形材料の吐出量が最大となる。このように、開閉機構70は、造形材料の吐出のON/OFFを切り替えるとともに、造形材料の吐出量の調整を実現できる。
【0024】
ステージ300は、ノズル61に対向する造形面310を有している。造形面310の上に三次元造形物が造形される。本実施形態では、造形面310は、水平方向に平行に設けられている。ステージ300は、移動部400によって支持されている。
【0025】
移動部400は、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動部400は、ステージ300を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態における移動部400は、3つのモーターが発生させる動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成されている。各モーターは、制御部500の制御下で駆動される。尚、移動部400は、ステージ300を移動させずに造形部200を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。また、移動部400は、ステージ300と造形部200との両方を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。
【0026】
制御部500は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部500は、情報処理装置120によって生成された造形データに従って、造形部200と移動部400との動作を制御して、ステージ300上に三次元造形物を造形する。動作には、造形部200とステージ300との三次元の相対的な位置を変化させることが含まれる。尚、制御部500は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0027】
情報処理装置120は、三次元造形装置110の制御部500に接続されている。情報処理装置120は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。情報処理装置120は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、データ生成部121としての機能のほか、種々の機能を発揮する。尚、情報処理装置120は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0028】
データ生成部121は、三次元造形装置110によって三次元造形物を造形するための造形データを生成する。データ生成部121は、三次元造形物の三次元形状を表す形状データを用いて造形データを生成する。三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成されたSTL形式やAMF形式等のデータが形状データとして用いられる。造形データには、造形材料の吐出経路を表す経路情報と、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報とが含まれる。造形材料の吐出経路とは、ノズル61が、造形材料を吐出しながら、ステージ300の造形面310に沿って相対的に移動する経路のことを意味する。
【0029】
吐出経路は、複数の部分経路から構成される。各部分経路は、直線状の経路である。吐出量情報は、各部分経路に対して個別に対応付けられる。本実施形態では、吐出量情報に表される吐出量は、その部分経路において単位時間あたりに吐出される造形材料の量である。尚、他の実施形態では、吐出量情報に表される吐出量は、その部分経路全体において吐出される造形材料の総量であってもよい。
【0030】
図4は、三次元造形装置110によって三次元造形物OBが造形される様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置110では、上述したように、可塑化部30において、回転しているフラットスクリュー40の溝部45に供給された固体状態の材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部500は、ステージ300の造形面310とノズル61との間の距離を保持したまま、造形面310に対するノズル61の位置を変化させながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動する吐出経路に沿って線状に堆積されていく。
【0031】
制御部500は、ノズル61からの造形材料MMの吐出を繰り返して層MLを形成する。制御部500は、1つの層MLを形成した後、造形面310に対するノズル61の位置を+Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物OBを造形していく。
【0032】
制御部500は、例えば、一層分の層MLの形成を完了した後に造形面310に対するノズル61を+Z方向に移動させる場合や、各層において不連続な吐出経路がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、制御部500は、開閉機構70の弁体73によって流路65を閉塞させることによって、ノズル61からの造形材料MMの吐出を停止させる。制御部500は、ノズル61の位置を変更した後、開閉機構70の弁体73によって流路65を開放することによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。三次元造形装置110によれば、開閉機構70によって、ノズル61による造形材料MMの堆積位置を簡易に制御することができる。
【0033】
図5は、情報処理装置120のデータ生成部121において実行される造形データ生成処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、三次元造形物の造形に先立って、三次元造形物の造形に用いられる造形データを生成するための処理である。この処理は、情報処理装置120に所定の開始命令が供給されることによって、情報処理装置120によって開始される。
【0034】
まず、ステップS110にて、データ生成部121は、三次元造形物の三次元形状を表す形状データを取得する。データ生成部121は、例えば、情報処理装置120に接続されたコンピューターやUSBメモリー等の記録媒体から形状データを取得する。次に、ステップS120にて、データ生成部121は、取得された形状データを解析して、形状データに表された三次元造形物をXY平面に平行な面で複数の層にスライスして、層データを生成する。層データには、その面における三次元造形物の輪郭線が表されている。層内における、三次元造形物の輪郭線に囲まれた領域のことを造形領域と呼ぶ。
【0035】
ステップS130にて、データ生成部121は、層データを解析して、第1中間データを生成する。三次元造形物の各層は、シェル部とインフィル部とによって構成される。シェル部とは、輪郭線に沿った部分であり、三次元造形物の外観に影響を与える部分である。インフィル部とは、シェル部よりも内側の部分であり、三次元造形物の強度を確保するための部分である。第1中間データには、シェル部を造形するための経路情報および吐出量情報と、インフィル部を造形するための経路情報および吐出量情報とが含まれている。データ生成部121は、まず、所定のパターンの吐出経路、所定の厚み、および、所定の線幅でシェル部が造形されるように、シェル部を造形するための経路情報および吐出量情報を生成し、次に、所定のパターンの吐出経路、所定の厚み、および、所定の線幅でインフィル部が造形されるように、インフィル部を造形するための経路情報および吐出量情報を生成することによって、第1中間データを生成する。線幅とは、吐出経路に沿って線状に堆積される造形材料の幅のことを意味する。シェル部が造形される造形領域内の領域のことをシェル領域と呼び、シェル領域を除いた造形領域内の領域のことをインフィル領域と呼ぶ。
【0036】
図6は、第1中間データMD1の一例を示す第1の説明図である。図7は、第1中間データMD1の一例を示す第2の説明図である。図6には、矩形状の輪郭線LCに囲まれた造形領域RZ内に、シェル部を造形するための吐出経路Psが表された第1中間データMD1の例が表されている。図6では、シェル部を造形するための吐出経路Psに沿って造形材料が堆積される領域にハッチングが施されている。この例では、シェル部は、予め定められた基準線幅で造形される。シェル部を造形するための吐出経路Psは、シェル部の外周縁が輪郭線LCに接するように生成されている。シェル部を造形するための吐出経路Psは、輪郭線LCの内側を1周するように生成されている。シェル部を造形するための吐出経路Psは、部分経路Ps1と、部分経路Ps2と、部分経路Ps3と、部分経路Ps4とがこの順に連接されて構成されている。各部分経路Ps1~Ps4は、各始点Ss1~Ss4から終点Es1~Es4に向かって直線状に延びている。各部分経路Ps1~Ps4は、輪郭線LCに沿って直線状に延びている。この例では、シェル部が造形されるシェル領域RSの内側に、矩形状のインフィル領域RIが形成されている。尚、第1中間データに表されたシェル部を造形するための吐出経路Psは、上述した各部分経路Ps1~Ps4の内側に、さらにもう1周分の部分経路を有してもよい。シェル部は、基準線幅とは異なる線幅で造形されてもよい。
【0037】
図7には、図6に示したインフィル領域RI内に、インフィル部を造形するための吐出経路Piが表された第1中間データMD1の例が表されている。図7では、インフィル部を造形するための吐出経路Piに沿って造形材料が堆積される領域にハッチングが施されている。この例では、インフィル部は、基準線幅で造形される。インフィル部を造形するための吐出経路Piは、S字状に蛇行するパターンで生成されている。インフィル部を造形するための吐出経路Piは、矩形状のインフィル領域RIの-X方向側の短辺と+X方向側の短辺との間を長辺に平行に往復しつつ、-Y方向に向かって徐々に延びるように生成されている。インフィル部を造形するための吐出経路Piは、部分経路Pi1と、部分経路Pi2と、部分経路Pi3と、部分経路Pi4と、部分経路Pi5と、部分経路Pi6と、部分経路Pi7とがこの順に連接されて構成されている。各部分経路Pi1~Pi7は、各始点Si1~Si7から終点Ei1~Ei7に向かって直線状に延びている。各部分経路Pi1~Pi7の各始点Si1~Si7および各終点Ei1~Ei7は、インフィル領域RIの外周縁から基準線幅の半分の間隔を空けて生成されている。インフィル領域RIの長辺に平行に延びる各部分経路Pi1,Pi3,Pi5,Pi7は、互いに基準線幅の間隔を空けて生成されている。部分経路Pi7に沿って造形材料が堆積される領域よりも-Y方向側の領域には、当該領域の幅が基準線幅よりも狭いため、部分経路が生成されていない。
【0038】
インフィル領域内には、隙間領域が形成され得る。隙間領域とは、造形材料が堆積される領域を除いたインフィル領域内の領域のことを意味する。つまり、隙間領域は、シェル部を造形するために造形材料が堆積される領域とインフィル部を造形するために造形材料が堆積される領域に挟まれた領域であるか、または、インフィル部を造形するために造形材料が堆積される領域とインフィル部を造形するために造形材料が堆積される領域とに挟まれた領域である。図7に示した例では、インフィル領域RI内に、4つの隙間領域RV1~RV4が形成されている。尚、隙間領域のことを空隙領域と呼ぶこともある。
【0039】
図5に示すように、ステップS140にて、データ生成部121は、吐出経路に沿って堆積される造形材料の量が増加するように第1中間データに表された経路情報と吐出量情報とのうちの少なくともいずれか一方を変更して、第2中間データを生成する。本実施形態では、データ生成部121は、インフィル部を造形するための各部分経路に沿って堆積される造形材料の量が増加するように第1中間データを変更して、第2中間データを生成する。
【0040】
図8は、本実施形態における第1中間データMD1から第2中間データMD2への変更の様子を模式的に示す説明図である。図8の上側には、第1中間データMD1に表された経路情報および吐出量情報に従った場合に部分経路に沿って造形材料が堆積される領域が表されている。図8の下側には、第2中間データMD2に表された経路情報および吐出量情報に従った場合に部分経路に沿って造形材料が堆積される領域が表されている。本実施形態では、データ生成部121は、インフィル部を造形するための部分経路について、部分経路の向き、堆積される造形材料の厚み、および、堆積される造形材料の線幅W1を変更せずに、部分経路の長さを増加させる。データ生成部121は、部分経路の始点側が線幅W1の半分の長さ延長され、かつ、部分経路の終点側が線幅W1の半分の長さ延長されるように、部分経路の始点および終点の位置を変更することによって、部分経路の長さを増加させる。尚、データ生成部121は、部分経路の始点および終点の位置を変更せずに、部分経路の始点側に線幅W1の半分の長さの部分経路を追加し、かつ、部分経路の終点側に線幅W1の半分の長さの部分経路を追加してもよい。
【0041】
図9は、第2中間データMD2の一例を示す説明図である。図9には、図7に示したインフィル部を造形するための吐出経路Piが変更された様子が表されている。図9に示すように、第2中間データMD2では、第2中間データMD2に表された各部分経路Pi1~Pi7の長さが第1中間データMD1に表された各部分経路Pi1~Pi7の長さに比べて長くされることによって、図7に示した隙間領域RV1~RV3が除去されており、隙間領域RV4の範囲が縮小されている。
【0042】
図5に示すように、ステップS150にて、データ生成部121は、隙間領域特定処理を実行する。隙間領域特定処理では、データ生成部121は、第2中間データを解析して、インフィル領域内に形成される隙間領域を特定する。図9に示した例では、隙間領域特定処理によって、隙間領域RV4が特定される。
【0043】
ステップS160にて、データ生成部121は、第1中間データを用いて造形データを生成する。隙間領域特定処理によって隙間領域が特定された場合には、データ生成部121は、特定された隙間領域の少なくとも一部に造形材料が堆積されるように、第1中間データに表された経路情報と吐出量情報とのうちの少なくともいずれか一方を変更して造形データを生成する。データ生成部121は、例えば、予め定められた空隙率に応じて、特定された隙間領域において、造形材料を堆積させる領域を決定する。一方、隙間領域特定処理によって隙間領域が特定されなかった場合には、データ生成部121は、第1中間データに表された経路情報および吐出量情報を変更せずに造形データを生成する。尚、データ生成部121は、第2中間データを用いて造形データを生成してもよい。
【0044】
図10は、造形データZDの一例を示す説明図である。本実施形態では、データ生成部121は、隙間領域特定処理によって隙間領域が特定された場合に、特定された隙間領域の少なくとも一部に造形材料が堆積されるように吐出経路を追加する。図10には、図9に示した隙間領域RV4に造形材料が堆積されるように、吐出経路Pi8が追加された造形データZDが表されている。尚、データ生成部121は、特定された隙間領域RV4の少なくとも一部に造形材料が堆積されるように、インフィル部を造形するための吐出経路Piのうちの当該隙間領域RV4に最も近い部分経路Pi7の線幅を増加させて造形データを生成してもよい。データ生成部121は、特定された隙間領域RV4の少なくとも一部に造形材料が堆積されるように、図6に示したシェル部を造形するための吐出経路Psのうちの当該隙間領域RV4に最も近い部分経路Ps3の線幅を増加させて造形データを生成してもよい。
【0045】
ステップS170にて、データ生成部121は、全ての層について造形データを生成したか否かを判定する。ステップS170で全ての層について造形データを生成したと判断されなかった場合、データ生成部121は、ステップS130に処理を戻して、他の層についてステップS130からステップS160までの処理を繰り返すことによって、他の層の造形データを生成して、ステップS170の処理を再度実行する。一方、ステップS170で全ての層について造形データを生成したと判断された場合、データ生成部121は、この処理を終了する。尚、上述した造形データ生成処理におけるステップS110のことを三次元造形物の製造方法における第1工程とも呼び、ステップS130のことを同方法における第2工程とも呼び、ステップS140およびステップS150のことを同方法における第3工程とも呼び、ステップS160のことを同方法における第4工程とも呼ぶ。
【0046】
図11は、制御部500によって実行される三次元造形処理の内容を示すフローチャートである。図11に示した三次元造形処理は、図5に示した造形データ生成処理において生成された造形データを用いて制御部500によって実行される処理である。図5に示した造形データ生成処理と図11に示した三次元造形処理とが実行されることによって、三次元造形システム100による三次元造形物の製造方法が実現される。
【0047】
ステップS210において、制御部500は、三次元造形物を構成する複数の層のうちの1つの層について、造形データを読み込む。本実施形態では、制御部500は、まず、三次元造形物を構成する複数の層のうちの重力方向において最も下側に位置する層の造形データを読み込む。
【0048】
ステップS220において、制御部500は、シェル造形処理を実行する。シェル造形処理では、制御部500は、読み込まれた造形データに含まれる、シェル部を造形するための経路情報および経路情報に対応付けられた吐出量情報に従って造形部200および移動部400を制御して、現在の層についてシェル部を形成する。
【0049】
ステップS230において、制御部500は、インフィル造形処理を実行する。インフィル造形処理では、制御部500は、読み込まれた造形データに含まれる、インフィル部を造形するための経路情報および経路情報に対応付けられた吐出量情報に従って造形部200および移動部400を制御して、現在の層についてインフィル部を形成する。
【0050】
ステップS240において、制御部500は、全ての層について造形を完了したか否かを判定する。全ての層について造形が完了していなければ、制御部500は、次の層、すなわち、現在の層の重力方向上側に隣接する層について、ステップS210からステップS230までの処理を繰り返す。上記ステップS220では、制御部500は、ノズル61からの造形材料の吐出に先立って移動部400を制御して、ノズル61の位置をステージ300から1層分だけ上昇させる。全ての層について造形が完了した場合、制御部500は、当該三次元造形処理を終了する。尚、上述した三次元造形処理におけるステップS220およびステップS230のことを、三次元造形物の製造方法における第5工程とも呼ぶ。
【0051】
以上で説明した本実施形態における三次元造形システム100によれば、情報処理装置120のデータ生成部121は、造形データ生成処理において、形状データを用いて第1中間データを生成し、第1中間データに従ってノズル61から造形材料を吐出させた場合に各部分経路に沿って堆積される造形材料の総量よりも第2中間データに従ってノズル61から造形材料を吐出させた場合に各部分経路に沿って堆積される造形材料の総量の方が多くなるように第1中間データを変更して第2中間データを生成する。そのため、第1中間データに表された隙間領域の個数や面積に比べて、第2中間データに表された隙間領域の個数や面積を低減できる。データ生成部121は、埋める必要のない微小な隙間領域が除去された第2中間データを用いて隙間領域を特定するので、隙間領域の特定から造形データの生成までの処理を効率良く実行できる。したがって、隙間領域を埋めるための処理が長期化することを抑制できる。特に、本実施形態では、データ生成部121は、第1中間データによって表される各部分経路の長さよりも第2中間データによって表される各部分経路の長さの方を長くすることによって、第1中間データに従ってノズル61から造形材料を吐出させた場合に各部分経路に沿って堆積される造形材料の総量よりも第2中間データに従ってノズル61から造形材料を吐出させた場合に各部分経路に沿って堆積される造形材料の総量の方を多くする。そのため、各部分経路の端部に形成される隙間領域の数や面積を低減できる。
【0052】
また、本実施形態では、三次元造形装置110の制御部500は、上述した造形データ生成処理によって生成された造形データを用いて三次元造形処理を実行するので、三次元造形物の強度に影響を及ぼさない程度の微小な隙間領域を埋めずに、三次元造形物を効率良く造形できる。そのため、三次元造形処理が長期化することをも抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、造形データに吐出経路を追加することによって、特定された隙間領域に造形材料を堆積させることができる。そのため、隙間領域を埋めるための処理の長期化を抑制しつつ、造形される三次元造形物の空隙率を低減できる。
【0054】
尚、本実施形態では、ペレット状のABS樹脂が材料MRとして用いられたが、造形部200において用いられる材料MRとしては、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形する材料を採用することもできる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0055】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0056】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記のいずれか一つまたは2以上を組み合わせた熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチック。
【0057】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、フラットスクリュー40の回転と加熱部58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0058】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から吐出されることが望ましい。尚、「完全に溶融した状態」とは、未溶融の熱可塑性を有する材料が存在しない状態を意味し、例えばペレット状の熱可塑性樹脂を材料に用いた場合、ペレット状の固形物が残存しない状態のことを意味する。
【0059】
造形部200では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0060】
造形部200においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ300に配置された造形材料は、例えばレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0061】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0062】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0063】
その他に、材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0064】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態における造形データ生成処理によって、第1中間データMD1が第2中間データMD2に変更される様子を模式的に示す説明図である。第2実施形態における造形データ生成処理では、データ生成部121は、第1中間データMD1に表された各部分経路の長さおよび線幅を増加させて第2中間データMD2を生成することが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0065】
本実施形態では、データ生成部121は、部分経路の始点側が線幅W1の半分の長さ延長され、かつ、部分経路の終点側が線幅W1の半分の長さ延長されるように、部分経路の始点および終点の位置を変更することによって、部分経路の長さを増加させ、さらに、予め定められた増加量に応じて部分経路の線幅W1を線幅W2に増加させて、第2中間データMD2を生成する。線幅の増加量は、三次元造形装置110のノズル61から吐出される造形材料の吐出量のばらつきの度合いに応じて設定されてもよい。例えば、三次元造形処理において、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量が5%ばらつく場合に、線幅の増加量は5%に設定されてもよい。線幅の増加量は、三次元造形装置110の移動部400によるノズル61の移動誤差に応じて設定されてもよい。
【0066】
図13は、本実施形態における第2中間データMD2の一例を示す説明図である。図13に示すように、本実施形態における第2中間データMD2では、図9に示した第1実施形態と同様に、各部分経路Pi1~Pi7の始点および終点の近傍に形成される隙間領域RV1~RV3が除去されており、さらに、第1実施形態に比べて隙間領域RV4の範囲が縮小されている。
【0067】
図14は、第1中間データMD1の他の例を示す説明図である。図15は、第2中間データMD2の他の例を示す説明図である。図14に示すように、この例では、各部分経路Pi1~Pi6がシェル部の内周に沿うように第1中間データMD1が生成されている。この例では、隙間領域RV1~RV6が形成されている。図15に示すように、第2中間データでは、各部分経路Pi1~Pi6の始点および終点の近傍に形成される隙間領域RV1~RV5が除去されており、さらに、並行する各部分経路同士の間に形成される隙間領域RV6の範囲が縮小されている。
【0068】
以上で説明した本実施形態の造形データ生成処理によれば、データ生成部121は、第1中間データに表された各部分経路の線幅および長さを増加させて第2中間データを生成し、第2中間データを用いて隙間領域特定処理を実行するので、隙間領域特定処理において特定される隙間領域の個数や範囲を第1実施形態よりもさらに低減できる。特に、本実施形態では、データ生成部121は、各部分経路の線幅を増加させるので、各部分経路同士の間に形成される隙間領域の個数や面積を低減できる。
【0069】
C.第3実施形態:
図16は、第3実施形態における第1中間データMD1の一例を示す説明図である。第3実施形態における造形データ生成処理では、データ生成部121は、各部分経路Pi1~Pi7の各端部に、造形材料が堆積される半円形状の領域を追加して第1中間データを生成することが第1実施形態と異なる。また、第3実施形態における造形データ生成処理では、データ生成部121は、第1中間データMD1に表された領域の形状を変更して第2中間データMD2を生成することが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。この例では、隙間領域RV1~RV8が形成されている。尚、上述した領域の形状は、半円形状に限られず、例えば、三角形状であってもよい。
【0070】
図17は、本実施形態における造形データ生成処理によって、第1中間データMD1が第2中間データMD2に変更される様子を模式的に示す説明図である。本実施形態における造形データ生成処理では、データ生成部121は、部分経路の端部に設けられた半円形状の領域を、矩形状の領域に変更する。データ生成部121は、当該領域の面積が増加するように、当該領域の形状を変更する。本実施形態では、データ生成部121は、線幅W1の半分の半径を有する半円形状の領域を、線幅W1の半分の長さ、および、線幅W1と同じ幅を有する矩形状の領域に変更する。当該領域の面積が増加することによって、当該領域に堆積される造形材料の量は増加する。
【0071】
図18は、本実施形態における第2中間データMD2の一例を示す説明図である。この例では、各部分経路Pi1~Pi7の端部に設けられた領域の形状が変更されることによって、隙間領域RV1~RV7が除去されて、隙間領域RV8の範囲が縮小されている。
【0072】
以上で説明した本実施形態の造形データ生成処理によれば、データ生成部121は、各部分経路の端部に設けられた、造形材料が堆積される領域の形状を変更することによって、隙間領域特定処理において特定される隙間領域の個数や面積を低減できる。特に、本実施形態では、各部分経路の長さを変更しなくても、各部分経路の端部近傍に形成される隙間領域の数や面積を低減できる。尚、本実施形態に、第1実施形態または第2実施形態を組み合わせてもよい。つまり、データ生成部121は、各部分経路の長さと各部分経路の端部に設けられた領域の形状とを変更してもよいし、各部分経路の長さと線幅と端部に設けられた領域の形状とを変更してもよい。また、データ生成部121は、各部分経路の長さを変更せずに、各部分経路の線幅と端部に設けられた領域の形状を変更してもよい。
【0073】
D.他の実施形態:
(D1)上述した第2実施形態の造形データ生成処理において、データ生成部121は、第1中間データに表された各部分経路の長さおよび線幅を増加させて第2中間データを生成している。これに対して、データ生成部121は、第1中間データに表された各部分経路の長さを変更せずに線幅を増加させて第2中間データを生成してもよい。
【0074】
(D2)上述した第2実施形態の造形データ生成処理において、データ生成部121は、第2中間データを用いて特定された隙間領域の範囲を、第1中間データに表された範囲に戻してから、吐出経路の追加や、隙間領域に隣接する吐出経路の線幅の変更を実行してもよい。この場合、隙間領域を埋めるための処理の長期化の抑制と、三次元造形物の空隙率の低減とを両立できる。
【0075】
(D3)上述した各実施形態の造形データ生成処理を実行するデータ生成部121の機能は、三次元造形装置110の制御部500に組み込まれていてもよい。この場合、三次元造形システム100は、情報処理装置120を備えていなくてもよい。
【0076】
E.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0077】
(1)本開示の第1の形態によれば、吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを取得する第1工程と、取得した前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成する第2工程と、前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成し、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定する第3工程と、特定した前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して造形データを生成する第4工程と、前記造形データに従って前記三次元造形物を造形する第5工程と、を備える。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、形状データを用いて生成した第1中間データによって表される隙間領域に比べて第2中間データによって表される隙間領域の個数や面積を低減できるため、隙間領域の特定から造形データの生成までの処理を効率良く実行できる。そのため、隙間領域を埋めるための処理が長期化することを抑制できる。
【0078】
(2)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第3工程にて、前記第1中間データによって表される前記経路の長さよりも前記第2中間データによって表される前記経路の長さの方が長くなるように前記第1中間データの前記経路情報を変更して前記第2中間データを生成してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、経路の端部において特定される隙間領域の個数や面積を低減できる。
【0079】
(3)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第3工程にて、前記第1中間データによって表される前記経路において堆積される前記造形材料の幅よりも前記第2中間データによって表される前記経路において堆積される前記造形材料の幅の方が広くなるように前記第1中間データの前記吐出量情報を変更して前記第2中間データを生成してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、経路同士の間において特定される隙間領域の個数や面積を低減できる。
【0080】
(4)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第3工程にて、前記第2中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状が、前記第1中間データに従って前記経路の端部に堆積される前記造形材料の形状とは異なる種類の形状になるように、前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、経路の端部において特定される隙間領域の個数や面積を低減できる。
【0081】
(5)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第4工程にて、前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように、前記隙間領域に前記経路を追加してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、経路を追加することによって、特定された隙間領域に造形材料を堆積させることができる。そのため、隙間領域を埋めるための処理の長期化を抑制しつつ、造形される三次元造形物の空隙率を低減できる。
【0082】
(6)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第4工程にて、前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように、前記隙間領域を挟んだ前記経路における前記吐出量を増加させてもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、既存の経路に沿った造形材料の吐出量を増加させることによって、特定された隙間領域に造形材料を堆積させることができる。そのため、隙間領域を埋めるための処理の長期化を抑制しつつ、造形される三次元造形物の空隙率を低減できる。
【0083】
(7)上記形態の三次元造形物の製造方法では、前記第4工程にて、前記第3工程で特定された前記隙間領域を、前記第1中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた領域まで拡張し、拡張された前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データを変更してもよい。
この形態の三次元造形物の製造方法によれば、隙間領域の個数や面積が低減された第2中間データを用いて隙間領域を特定した後、特定された隙間領域を元の面積に戻してから隙間領域を埋められる。そのため、隙間領域を埋めるための処理の長期化を抑制しつつ、造形される三次元造形物の空隙率をより確実に低減できる。
【0084】
(8)本開示の第2の形態によれば、吐出部からステージに向かって造形材料を吐出させて層を積層することで三次元造形物を造形するための造形データを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、前記三次元造形物の三次元形状を表す形状データを用いて前記造形データを生成するデータ生成部を備え、前記データ生成部は、前記形状データを用いて、前記吐出部が前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表す経路情報と、前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量情報とを有する第1中間データを生成し、前記第1中間データに従って堆積される前記造形材料の量よりも第2中間データに従って堆積される前記造形材料の量の方が多くなるように前記第1中間データを変更して前記第2中間データを生成して、前記第2中間データに従って前記造形材料が堆積される領域に挟まれた隙間領域を特定し、特定された前記隙間領域に前記造形材料が堆積されるように前記第1中間データまたは前記第2中間データを変更して前記造形データを生成する。
この形態の情報処理装置によれば、形状データを用いて生成した第1中間データによって表される隙間領域に比べて、第2中間データによって表される隙間領域の個数や面積を低減できるため、隙間領域の特定から造形データの生成までの処理を効率良く実行できる。そのため、隙間領域を埋めるための処理が長期化することを抑制できる。
【0085】
本開示は、三次元造形物の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、情報処理装置、三次元造形装置等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0086】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…上面、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…貫通孔、58…加熱部、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル孔、65…流路、70…開閉機構、72…駆動シャフト、73…弁体、74…バルブ駆動部、100…三次元造形システム、110…三次元造形装置、120…情報処理装置、121…データ生成部、200…造形部、300…ステージ、310…造形面、400…移動部、500…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18