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特許7512601管理装置、管理プログラム、及び管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】管理装置、管理プログラム、及び管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240702BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240702BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240702BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
G06F30/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020015796
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124785
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 恭
(72)【発明者】
【氏名】東方 良介
(72)【発明者】
【氏名】荻原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】榊 茂之
【審査官】橋沼 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-048271(JP,A)
【文献】特開平08-314996(JP,A)
【文献】特開2007-172056(JP,A)
【文献】特開2004-318208(JP,A)
【文献】特開2003-044120(JP,A)
【文献】特開2004-192091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
三次元形状によって表される製品に関する属性データを収集する収集規則に従って、ユーザの指示がない場合であっても前記製品が製造されるまでの各工程で得られた前記製品に関する属性データを自律的に収集し、
収集した属性データの数が規定条件数に達していない場合、ユーザが検討した検討条件と異なる別の検討条件を前記規定条件数に達するまで作成して、前記別の検討条件に基づいて生成された前記製品に関する属性データを更に収集し、
前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性データの対応付けを規定する重畳規則に従って、収集した前記属性データを前記製品の三次元形状データに関する属性として対応付け、
前記製品の三次元形状データに対応付ける属性のうち、同じ種類の属性に2つ以上の属性データが収集されている場合、前記2つ以上の属性データが収集された属性種類に対して前記製品に関する代表属性データを特定し、
前記製品の三次元形状データに少なくとも前記製品に関する代表属性データを対応付けた統合データを用いて、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性を管理する
管理装置。
【請求項2】
前記収集規則が前記各工程における業務の流れに沿って規定されている
請求項1載の管理装置。
【請求項3】
前記製品に関する代表属性データが、他の属性データに比べて前記製品の仕様を最も満たしている属性データを表す
請求項1または請求項に記載の管理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、三次元形状データによって表される前記製品の箇所が予め定めた指定条件を満たす場合、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における三次元形状データに対して前記製品に関する新たな属性データを重畳する
請求項1~請求項の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における三次元形状データ及び属性データから前記製品の多次元特徴量を算出し、
前記製品の多次元特徴量を前記製品の三次元形状データに対応付ける
請求項記載の管理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記製品の三次元形状データを、複数に分割された三次元の領域の組み合わせによって構成した三次元形状データに変換する
請求項1~請求項の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記複数に分割された三次元の領域の解像度を変えることで、前記製品の三次元形状データを必要な精度で定義する
請求項記載の管理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、三次元形状データによって表される前記製品の箇所が予め定めた指定条件を満たす場合、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における解像度を、前記指定条件を満たしていない前記製品の箇所における解像度より高くした属性データを前記製品の三次元形状データに重畳する
請求項1~請求項の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、複数の解像度で表される前記製品の三次元形状データを収集し、
各々の解像度で表される前記製品の三次元形状データに基づいて算出した前記製品の多次元特徴量を各々の解像度に対応した前記製品の三次元形状データに対応付ける
請求項1~請求項の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項10】
前記重畳規則は、三次元形状データによって表される前記製品が配置された三次元空間における前記製品に関する属性データとの対応付けを規定している
請求項1~請求項の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記重畳規則に従って前記製品の三次元形状データに前記製品に関する属性データを対応付ける場合、前記製品に関する属性データの属性値を加工した上で前記製品の三次元形状データに対応付ける
請求項10記載の管理装置。
【請求項12】
前記製品に関する属性データが3値以上の値または連続した属性値によって表される場合、
前記プロセッサは、前記製品に関する属性データが取り得る属性値を2値に変換した上で前記製品の三次元形状データに対応付ける
請求項11記載の管理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記製品に関する属性データを対応付ける三次元形状データの解像度と、三次元形状データから得られる前記製品に関する属性データの解像度を調整する
請求項11または請求項12記載の管理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、三次元形状データから得られる前記製品に関する属性データの解像度を調整する前の属性データを、解像度を調整した後の属性データと共に前記製品の統合データで管理する
請求項13記載の管理装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記製品の検討条件数が予め定めた数に達するまで、前記プロセッサの処理の負荷状況に応じて、ユーザが検討した検討条件と異なる条件の各々に基づいた前記製品に関する三次元形状データ及び属性データを生成する処理の開始時期を制御する
請求項1~請求項14の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項16】
コンピュータに、
三次元形状によって表される製品に関する属性データを収集する収集規則に従って、ユーザの指示がない場合であっても前記製品が製造されるまでの各工程で得られた前記製品に関する属性データを自律的に収集し、
収集した属性データの数が規定条件数に達していない場合、ユーザが検討した検討条件と異なる別の検討条件を前記規定条件数に達するまで作成して、前記別の検討条件に基づいて生成された前記製品に関する属性データを更に収集し、
前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性データの対応付けを規定する重畳規則に従って、収集した前記属性データを前記製品の三次元形状データに関する属性として対応付け、
前記製品の三次元形状データに対応付ける属性のうち、同じ種類の属性に2つ以上の属性データが収集されている場合、前記2つ以上の属性データが収集された属性種類に対して前記製品に関する代表属性データを特定し、
前記製品の三次元形状データに少なくとも前記製品に関する代表属性データを対応付けた統合データを用いて、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性を管理する処理を実行させる
管理プログラム。
【請求項17】
請求項1~請求項15の何れか1項に記載の管理装置と、
前記管理装置で管理される前記製品の三次元形状データ及び前記製品に関する属性の少なくとも一方を用いた作業が行われる作業用装置と
を含む管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理プログラム、及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機に対する制御用データである加工情報および該加工情報に関連する加工支援情報を含む板金加工情報の管理を行う板金加工統合支援システムであって、加工側における実加工の際の実加工情報及び該実加工情報の基礎とされた固有属性情報を収集し、収集された前記実加工情報および前記固有属性情報を前記板金加工情報に帰還する板金加工統合支援システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、加工用NCデータに基づき金属加工装置を用いて金型を加工するCAMシステムと、前記加工後の金型の修正箇所を計測して計測点群データを取得する計測システムと、前記計測点群データから前記修正箇所の詳細形状モデルデータを生成する部分詳細形状処理手段と、を備え、前記CAMシステムは、前記加工用NCデータに前記詳細形状モデルデータを重ね合せる重ね合せインターフェースを有する重ね合わせ修正型CAD・CAMシステムが開示されている。
【0004】
特許文献3には、物体の基準形状を表す所定データ形式の基準形状モデル、または前記基準形状モデルを導出可能なデータを記憶する記憶手段と、前記基準形状モデルに対応して製作された物体の三次元形状情報を求め、当該形状情報を前記所定データ形式に変換して実測形状モデルを作成する実測形状モデル作成手段と、前記実測形状モデルを前記基準形状モデルで補完することにより、前記製作された物体の形状を表す前記所定データ形式の実物形状モデルを作成する補完手段と、を備える形状モデル作成装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、物体の三次元幾何形状情報及び属性情報を入力する入力手段と、当該入力手段より入力された三次元幾何形状情報及び属性情報を格納する格納手段と、検索情報を入力する検索情報入力手段と、当該検索情報入力手段より入力された検索情報に基づいて、前記格納手段を検索する検索手段と、当該検索手段による検索結果として得られた三次元幾何形状情報及び属性情報により、物体の2次元投影像を作成する作成手段と、当該作成手段により作成された2次元投影像を表示させる表示制御手段を有する三次元画像処理装置が開示されている。
【0006】
特許文献5には、三次元CADデータを生成する三次元CADデータ作成部と、数値解析のための解析モデルを生成する解析モデル生成部と、前記解析モデルを対象に数値解析を行う解析計算部と、数値解析結果を評価しやすい形式に可視化する解析結果評価部を有してなる解析支援CAE装置において、少なくとも地形、標高、地質、湖沼、河川、植生のいずれかを含む自然環境に関する国土空間データ、及び少なくとも行政区分、土地利用、文化財、公共施設、住居、道路、鉄道、地価のいずれかと、少なくとも行政区分の用途地域境界線及び人口分布の一方を含む社会環境に関する国土空間データを含んでなる数値地図情報データをディジタルデータとして格納するデータベースを備え、前記解析モデル生成部は、前記データベースから前記数値地図情報データを読み出し、解析モデルの一部をなす2次元の地図生成に利用できるデータ形式に変換して2次元の地図をコンピュータ内部に生成する手段を有し、前記解析結果評価部は、解析結果表示する際に、少なくとも前記数値地図情報データに含まれる社会環境に関する国土空間データを、解析結果に重ねて表示する手段を有する解析支援CAE装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-219341号公報
【文献】特開2008-299489号公報
【文献】特開2003-196326号公報
【文献】特開H6-215105号公報
【文献】特許第3940834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンピュータにおける処理速度の高速化やデータ記憶容量の増大に伴い、製品の設計や製造現場では、例えば三次元CAD、三次元CAE、三次元CAT、及び三次元プリンタといった三次元データを扱う三次元設計ツールが広く導入されている。
【0009】
しかしながら、製品が製造されるまでの各工程で用いられる三次元設計ツールで得られた各種データが部門毎や個人毎に管理されてしまうと、同じ製品に関するデータが様々な場所に分散して管理されることになる。こうした場合、例えば下流工程を担当するユーザが上流工程で得られたデータを参考にして業務を行おうとすると、必要なデータを探し出すまでに労力を費やしてしまい、本来の業務の生産性が低下してしまうことがある。また、例えば上流工程を担当したユーザが、試行錯誤の末に得られた要求仕様を満たす製品の設計データだけを下流工程に渡すようなことがある。こうした場合、下流工程を担当するユーザは、上流工程で要求仕様を満たす設計データを作り出すまでの過程で試行錯誤しながら得られた各種データを参考にしながら、様々な角度から別の視点で製品の検討を行うことが困難になる。また、上流工程であっても、過去のデータを参考にして設計を行う場合、過去の業務において下流工程で試行錯誤しながら得られたデータを参考にして、様々な角度から別の視点で製品の検討を行うことが困難になる。
【0010】
本発明は、三次元形状を有する製品が製造されるまでの各工程において得られた製品に関する属性を工程毎に分散して管理する場合よりも、属性を他工程で活用しやすいように管理することができる管理装置、管理プログラム、及び管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様に係る管理装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、三次元形状によって表される製品に関する属性データを収集する収集規則に従って、ユーザの指示がない場合であっても前記製品が製造されるまでの各工程で得られた前記製品に関する属性データを自律的に収集し、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性データの対応付けを規定する重畳規則に従って、収集した前記属性データを前記製品の三次元形状データに関する属性として対応付け、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性を管理する。
【0012】
第2態様に係る管理装置は、第1態様に係る管理装置において、前記製品の三次元形状データに対応付ける属性のうち、同じ種類の属性に2つ以上の属性データが収集されている場合、前記2つ以上の属性データが収集された属性種類に対して前記製品に関する代表属性データを特定し、前記製品の三次元形状データに少なくとも前記製品に関する代表属性データを対応付けた統合データを用いて、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性を管理する。
【0013】
第3態様に係る管理装置は、第1態様または第2態様に係る管理装置において、前記収集規則が前記各工程における業務の流れに沿って規定されている。
【0014】
第4態様に係る管理装置は、第1態様~第3態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、ユーザが検討した検討条件と異なる条件で前記製品を設計した場合に得られる前記製品に関する属性データを収集する。
【0015】
第5態様に係る管理装置は、第1態様~第4態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記製品に関する代表属性データが、他の属性データに比べて前記製品の仕様を最も満たしている属性データを表す。
【0016】
第6態様に係る管理装置は、第1態様~第5態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、三次元形状データによって表される前記製品の箇所が予め定めた指定条件を満たす場合、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における三次元形状データに対して前記製品に関する新たな属性データを重畳する。
【0017】
第7態様に係る管理装置は、第6態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における三次元形状データ及び属性データから前記製品の多次元特徴量を算出し、前記製品の多次元特徴量を前記製品の三次元形状データに対応付ける。
【0018】
第8態様に係る管理装置は、第1態様~第7態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記製品の三次元形状データを、複数に分割された三次元の領域の組み合わせによって構成した三次元形状データに変換する。
【0019】
第9態様に係る管理装置は、第8態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記複数に分割された三次元の領域の解像度を変えることで、前記製品の三次元形状データを必要な精度で定義する。
【0020】
第10態様に係る管理装置は、第1態様~第8態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、三次元形状データによって表される前記製品の箇所が予め定めた指定条件を満たす場合、前記指定条件を満たす前記製品の箇所における解像度を、前記指定条件を満たしていない前記製品の箇所における解像度より高くした属性データを前記製品の三次元形状データに重畳する。
【0021】
第11態様に係る管理装置は、第1態様~第10態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、複数の解像度で表される前記製品の三次元形状データを収集し、各々の解像度で表される前記製品の三次元形状データに基づいて算出した前記製品の多次元特徴量を各々の解像度に対応した前記製品の三次元形状データに対応付ける。
【0022】
第12態様に係る管理装置は、第1態様~第11態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記重畳規則は、三次元形状データによって表される前記製品が配置された三次元空間における前記製品に関する属性データとの対応付けを規定している。
【0023】
第13態様に係る管理装置は、第12態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記重畳規則に従って前記製品の三次元形状データに前記製品に関する属性データを対応付ける場合、前記製品に関する属性データの属性値を加工した上で前記製品の三次元形状データに対応付ける。
【0024】
第14態様に係る管理装置は、第13態様に係る管理装置において、前記製品に関する属性データが3値以上の値または連続した属性値によって表される場合、前記プロセッサは、前記製品に関する属性データが取り得る属性値を2値に変換した上で前記製品の三次元形状データに対応付ける。
【0025】
第15態様に係る管理装置は、第13態様または第14態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記製品に関する属性データを対応付ける三次元形状データの解像度と、三次元形状データから得られる前記製品に関する属性データの解像度を調整する。
【0026】
第16態様に係る管理装置は、第15態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、三次元形状データから得られる前記製品に関する属性データの解像度を調整する前の属性データを、解像度を調整した後の属性データと共に前記製品の統合データで管理する。
【0027】
第17態様に係る管理装置は、第態様~第16態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記製品の検討条件数が予め定めた数に達するまで、前記プロセッサの処理の負荷状況に応じて、ユーザが検討した検討条件と異なる条件の各々に基づいた前記製品に関する三次元形状データ及び属性データを生成する処理の開始時期を制御する。
【0028】
第18態様に係る管理装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、製品の三次元形状データに前記製品に関する属性データを対応付けた統合データを記憶する記憶装置から、指定された検索条件を満たす統合データを取得し、取得した前記製品の統合データに含まれる三次元形状データに対応付けられた少なくとも1つの前記製品に関する属性データの属性値を、ユーザの要求に応じた内容に変換した上で出力する。
【0029】
第19態様に係る管理装置は、第18態様に係る管理装置において、前記要求が、ユーザが前記製品の統合データを用いて行う作業に対する前記製品に関する属性の出力要求である場合、前記プロセッサは、前記製品に関する属性データの属性値をユーザの作業内容に応じた形式に変換して出力する。
【0030】
第20態様に係る管理装置は、第19態様に係る管理装置において、前記製品の三次元形状データが、複数に分割された三次元の領域の組み合わせによって構成されている場合、前記プロセッサは前記製品の三次元形状データを、前記製品の表面を複数の平面及び曲面の少なくとも一方の形成面を用いて構成した三次元形状データに変換し、変換後の三次元形状データに、ユーザの作業内容に応じて形式を変換した前記製品に関する属性データの属性値を対応付けて出力する。
【0031】
第21態様に係る管理装置は、第18態様に係る管理装置において、前記要求が、装置に自律的に行わせる作業に対する前記製品に関する属性の出力要求である場合、前記プロセッサは、前記製品に関する属性データの属性値を前記装置の作業内容に応じた形式に変換して出力する。
【0032】
第22態様に係る管理装置は、第18態様~第21態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記要求を行ったユーザに設定されているユーザ属性に応じて、前記製品の統合データから取得する前記製品に関する属性データの選択及び属性データの変換内容の選択を行う。
【0033】
第23態様に係る管理装置は、第18態様~第22態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、検索対象となる前記製品の統合データで管理される前記製品の三次元形状データ及び前記製品に関する属性データの少なくとも一方を、解像度の低い方から解像度の高い方に向かって段階的に検索する。
【0034】
第24態様に係る管理装置は、第18態様~第23態様の何れかの態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、複数の検索条件を受け付けた場合、前記製品の統合データが前記複数の検索条件のうち、最初の検索に用いられる主検索条件に一致すれば、他の検索条件の少なくとも1つを満たしていない場合であっても前記複数の検索条件を満たす統合データとして取得する。
【0035】
第25態様に係る管理装置は、第24態様に係る管理装置において、前記プロセッサは、前記主検索条件を満たす前記製品の統合データの三次元形状データに、前記他の検索条件の少なくとも1つによって検索対象として指定されている属性が対応付けられていない場合、前記主検索条件を満たす前記製品の統合データを参考情報として出力する。
【0036】
第26態様に係る管理プログラムは、コンピュータに、三次元形状によって表される製品に関する属性データを収集する収集規則に従って、ユーザの指示がない場合であっても前記製品が製造されるまでの各工程で得られた前記製品に関する属性データを自律的に収集し、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性データの対応付けを規定する重畳規則に従って、収集した前記属性データを前記製品の三次元形状データに関する属性として対応付け、前記製品の三次元形状データと前記製品に関する属性を管理する処理を実行させるためのプログラムである。
【0037】
第27態様に係る管理システムは、第1態様~第25態様の何れかの態様に係る管理装置と、前記管理装置で管理される前記製品の三次元形状データ及び前記製品に関する属性の少なくとも一方を用いた作業が行われる作業用装置とを含む。
【発明の効果】
【0038】
第1態様、第18態様、第26態様、及び第27態様によれば、三次元形状を有する製品が製造されるまでの各工程において得られた製品に関する属性データを工程毎に分散して管理する場合よりも、属性データを他工程で活用しやすいように管理することができる、という効果を有する。
【0039】
第2態様によれば、属性の種類毎に、属性を代表する属性データを設定することができる、という効果を有する。
【0040】
第3態様によれば、各工程で設計された製品の三次元形状データや製品の解析結果に基づく属性データを、業務の流れに沿って統合データで一元的に管理することができる、という効果を有する。
【0041】
第4態様によれば、ユーザが検討しなかった検討条件に対応した属性データも統合データで一元的に管理することができる、という効果を有する。
【0042】
第5態様によれば、統合データで管理されている何れの属性データが、最終的に製品に採用された属性データであるか確認することができる、という効果を有する。
【0043】
第6態様によれば、検討済みの属性データのみを統合データで管理する場合と比較して、下流工程のユーザに有益な情報を提供することができる、という効果を有する。
【0044】
第7態様によれば、製品の特定の箇所を、形状だけでなく多次元特徴量を用いて検索することができる、という効果を有する。
【0045】
第8態様によれば、製品の三次元形状データと属性データとの対応付けをボクセルで管理することができるようになる、という効果を有する。
【0046】
第9態様によれば、三次元形状データを必要な精度で定義できるようになる、という効果を有する。
【0047】
第10態様によれば、単一の解像度の属性データしか統合データで管理していない場合と比較して、製品の特定の箇所に対する属性データの検索精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0048】
第11態様によれば、製品の形状だけでなく製品の多次元特徴量を用いた製品の検索に対応することができる、という効果を有する。
【0049】
第12態様によれば、三次元形状データと属性データとの対応付けを重畳規則によって変化させることができる、という効果を有する。
【0050】
第13態様によれば、加工前の属性データの属性値を三次元形状データに対応付けておく場合よりも、ユーザが設定した検索条件を満たす統合データの検索処理を単純化することができる、という効果を有する。
【0051】
第14態様によれば、属性データの検索に対して既存の検索アルゴリズムを利用することができる、という効果を有する。
【0052】
第15態様によれば、製品の三次元形状データ及び属性データを、低い解像度から高い解像度に向かって段階的に検索することができる、という効果を有する。
【0053】
第16態様によれば、製品の加工前における属性データの属性値同士を比較することができる、という効果を有する。
【0054】
第17態様によれば、管理装置で既に実行されている処理に影響を与えることなく、ユーザが検討しなかった検討条件に対応した三次元形状データ及び属性データを生成することができる、という効果を有する。
【0055】
第19態様によれば、検索された統合データに含まれる変換前の属性データの属性値をユーザに出力する場合と比較して、ユーザの作業効率を向上させることができる、という効果を有する。
【0056】
第20態様によれば、製品の形状をユーザの要求する表示形式にあわせて表示することができる、という効果を有する。
【0057】
第21態様によれば、ユーザが必要とする情報をユーザの操作を介すことなく、検索された統合データに基づいて自動的に装置から取得することができる、という効果を有する。
【0058】
第22態様によれば、ユーザが取得したい属性データや属性データの変換内容を指定することなく、検索された統合データからユーザの作業に必要となる属性データを、ユーザが利用しやすいデータ形式に変換して出力することができる、という効果を有する。
【0059】
第23態様によれば、検索条件を満たす製品の三次元形状データ及び属性データの少なくとも一方を検索する際に、解像度が最も高い三次元形状データまたは属性データを検索対象とする場合と比較して、検索時間を短縮することができる、という効果を有する。
【0060】
第24態様によれば、複数の検索条件をすべて満たす統合データを取得する場合と比較して、ユーザによって参考となる統合データを多く出力することができる、という効果を有する。
【0061】
第25態様によれば、複数の検索条件のうち、何れか1つの検索条件を満たす統合データを取得する場合と比較して、取得した統合データの中に含まれる、ユーザにとって参考にならない統合データの数を減少させることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】管理システムの構成例を示す図である。
図2】統合データの一例を示す図である。
図3】スナップフィットの一例を示す図である。
図4】キー溝、Dカット面、及び止め輪溝の一例を示す図である。
図5】造形方向の異なるスナップフィットの一例を示す図である。
図6】統合データの他の一例を示す図である。
図7】管理装置の機能構成例を示す図である。
図8】統合部の機能構成例を示す図である。
図9】管理装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
図10】管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】代表属性データの特定例を示す図である。
図12】代表属性データの他の特定例を示す図である。
図13】CADデータの一例を示す図である。
図14】属性値の分布例を示す図である。
図15】属性データの解像度がCADデータの解像度より低い場合におけるCADデータのデータ点と属性のデータ点の対応例を表す図である。
図16】属性値の補間例を示す図である。
図17】CADの解像度が属性データの解像度より低い場合におけるCADデータのデータ点と属性のデータ点の対応例を表す図である。
図18】属性のデータ点の間引き例を示した図である。
図19】属性のデータ点の他の間引き例を示した図である。
図20】解像度を調整した場合における調整前の属性のデータ点と調整後の属性のデータ点の対応情報の一例を示す図である。
図21】解像度を調整した場合における調整前の属性のデータ点と調整後の属性のデータ点の対応情報の他の一例を示す図である。
図22】統合部の他の機能構成例を示す図である。
図23】管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図24】検索部の機能構成例を示す図である。
図25】検索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図26】開発途中の製品における統合データの一例を示す図である。
図27】検索条件の一例を示す図である。
図28】検索条件に対する検索結果の一例を示す図である。
図29】参考情報の一例を示す図である。
図30】検索条件に対する検索結果の出力例を示す図である。
図31】検索条件に対する参考情報の出力例を示す図である。
図32】検索条件に対する検索結果の他の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0064】
図1は、本実施の形態に係る製品情報の管理システム1の構成例を示す図である。管理システム1は作業用装置10と管理装置20を含み、作業用装置10と管理装置20は通信回線2で接続される。
【0065】
通信回線2は有線回線であっても無線回線であってもよく、有線回線と無線回線が混在した回線であってもよい。また、通信回線2は社内LAN(Local Area Network)のような専用回線であっても、インターネットのように不特定多数のユーザと回線を共有する公衆回線であってもよい。
【0066】
作業用装置10は、各工程を担当するユーザが製品の設計や製造を行うために利用する装置である。製品が製造されるまでの各工程でユーザによって利用される装置であれば、作業用装置10の種類に制約はない。例えば製品の設計に用いられる設計ツール、構造解析のように設計した製品の特性を解析する解析ツール、射出成型や三次元プリンタのように製品を設計データに従って製造する製造装置、及び製造された製品の寸法や重量等が要求仕様を満たしているかを検査する検査装置は作業用装置10の一例である。また、管理システム1に含まれる作業用装置10の数にも制約はない。
【0067】
管理システム1を用いて行われる製品の設計から製造までの各工程の流れには様々な形態が存在するが、以下に何らかの形状を伴う製品の設計が製造されるまでの工程の一例について説明する。
【0068】
設計者は例えばCAD(Computer-Aided Design)等の設計ツールを用いて、要求仕様を満たす製品の形状を設計し、製品が実際に要求仕様を満たしているかを様々な視点で評価する評価者にCADデータを渡す。CADデータは、製品の三次元形状を表す三次元形状データの一例である。本実施の形態では、製品の三次元形状を表す三次元形状データを単にCADデータと呼ぶが、三次元形状データがCADデータに限定されるものではない。例えば三次元形状データはポリゴンデータ、サーフェスデータ、ボクセルデータ等の他の形式によって表されるものであってもよい。
【0069】
評価者は、CAE(Computer-Aided Engineering)等の解析ツールを用いて、CADデータで表される製品の解析を行う。具体的には、製品に力を加えた場合に製品の部分毎にかかる応力、製品の歪み量、強度等を計算し、その解析結果を設計者に通知する。
【0070】
また、射出成型で製品を製造した場合の樹脂、金属、ゴムなどの材料の流動性のように製造技術と密接にかかわるような解析項目が要求されている場合には、評価者は製造技術に精通した製造準備者に製品が製造加工上の制約を満たすか否かの解析を依頼して、解析結果の報告を製造準備者から受けてもよい。こうした評価は解析内容に応じた担当の評価部門で繰り返し行われる。
【0071】
評価者によって製品は要求仕様を満たしていると評価された場合、設計者は上長にCADデータの承認依頼を行い、承認されたCADデータに公差、表面性状、及び溶接位置等の製品の製造に必要な情報(製品製造情報:[Product Manufacturing Information:PMI])を付与してCADデータを保管するデータベース(以降、「CADデータDB」という)に保管する。この際、設計者は用紙に印刷して使用する、製品の形状を表した2次元の図面を作成してCADデータDBに登録してもよい。なお、「DB」とはデータベース(Database)の略語である。評価者は評価した製品毎に製品の解析データを解析データDBに保管する。
【0072】
以降、製品の製造は承認されたCADデータに基づいて製造部門で行われるが、CADデータから製品の寸法や体積を算出すれば、製品に用いられる材料の使用量が判明するため製品の製造コストの見積もりが可能になる。また、PMIを参照することで例えば溶接箇所の数等が得られるため、必要となる人員や設備等の見積もりが可能となる。このように上流工程で得られたデータは、下流工程の担当者によって様々な形で活用される。以降では、設計者、評価者、見積もり担当者、及び製造準備者のように、製品が製造されるまでの各工程に携わる何れかの者を「ユーザ」ということにする。また、CADデータ、解析データ、及び検査データ等の業務上で生成される製品に関わる情報を総称して「データ」ということがある。
【0073】
本実施の形態に係る管理システム1は、各々の工程で用いられる作業用装置10で生成された各々のデータを当該データが保管されているデータベースから収集して、製品のCADデータに重畳して管理する。以降では、CADデータから得られる各種データによって表される項目を製品に関する「属性」と呼び、属性におけるデータを「属性データ」という。したがって、CADデータに基づく製品の解析データは属性データの一例である。
【0074】
製品に関する属性には、製品の形状によって影響を受ける三次元的な数値の分布の他、製品が存在する空間に定義された三次元座標によって表される点と物理量(例えばスカラ及びベクトルの少なくとも一方)の組み合わせによって表されるもの、及びCADデータを基本要素に分割し、分割した要素毎に対応付けられるようなものがある。
【0075】
例えば製品にかかる圧力分布、圧力の方向、製品に風が吹きつけられた場合に製品の周りに生じる気流の向き、CADデータに基づき製品を製造した場合の材料の流れに関する解析データ、製品に熱が加えられた場合の温度変化を表すシミュレーション結果、製品の色分布、製品に使用されている材料の分布、実際に製造された製品の寸法とCADデータ上での寸法の差分等は、製品に関する属性データの一例である。
【0076】
管理システム1では、CADデータに重畳した属性データを統合データ4として管理する。図2は、管理システム1で管理される統合データ4の一例を示す図である。図2の例では、CADデータに対して、構造解析データ、流動解析データ、計測データ、特徴抽出データ、及び詳細形状属性が重畳されており、構造解析データ、流動解析データ、計測データ、特徴抽出データ、及び詳細形状属性がCADデータによって表される製品に関する属性の属性種類をしており、これらの重畳される属性の属性データは主として三次元空間に分布するデータである。当然ながら、三次元以外の属性データ、例えば、抽出された特徴抽出データの数や、状況を記述したテキストなども属性データとして統合することができる。
【0077】
統合データ4では、ユーザが試行錯誤しながら設計したCADデータのバージョン(「Ver」と称す)毎に関連する属性データが重畳される。
【0078】
例えばユーザは製品に対して最初にVer1のCADデータを生成して構造解析を行ったところ、CADデータVer1に対する構造解析結果を示す構造解析データVer1により修正点が見つかったため、CADデータVer2を生成したとする。CADデータVer2に対する構造解析データVer2は修正点が改善されたことを示したが、修正点を改善することで製品の他の箇所に新たな問題が発生したため、念のためにユーザはCADデータVer3を生成したとする。CADデータVer3に対する構造解析データVer3は新たな問題が改善されたことを示したが、製品の隙間が製品の要求仕様ぎりぎりになることがわかったとする。
【0079】
このように製品の設計が進むことで、Ver1~Ver3の3種類のCADデータが生成され、各々のCADデータに対してVer1~Ver3の構造解析データがそれぞれ1対1で対応付けられることになる。
【0080】
ユーザはCADデータVer2とCADデータVer3のどちらを採用すればよいかを判断するため、Ver2とVer3のCADデータに基づいて製品を試作することにしたとする。そのため、ユーザは2種類の製造条件(製造条件1及び製造条件2)を設定し、CADデータVer2を用いて製造条件1で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ1、CADデータVer2を用いて製造条件2で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ2、CADデータVer3を用いて製造条件1で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ3、及びCADデータVer3を用いて製造条件2で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ4が得られた。なお、流動解析とは、例えば射出成型機から製品の金型に射出された樹脂の流れ方や熱の広がりを解析し、成型時に発生する製品の不良箇所等の予測に用いる。また、製造条件とは金型を用いた製品の製造に関する各種設定値の組み合わせであり、例えば金型の製品形状部分への樹脂注入口であるゲートの数等を規定する。
【0081】
こうした流動解析を行うことで、CADデータVer2及びCADデータVer3の各々に対して2つの流動データが対応付けられることになる。
【0082】
流動解析データを検討した結果、流動データ2及び流動データ3に比べて流動データ1及び流動データ4が優れていたため、CADデータVer2で表される製品の試作品を製造条件1で製造すると共に、CADデータVer3で表される製品の試作品を製造条件2で製造し、各々の試作品の形状を3Dスキャナで計測して、計測データ1と計測データ4を得たとする。なお、3Dスキャナで計測した計測データであることを限定するものではなく、例えば基準面と計測対象個所の組み合わせで規定された検査シートによる検査器具を用いた手動による計測結果、または画像、映像、接触式等の各種検査装置などによる計測結果を三次元的な情報に変換したものであってもよい。
【0083】
したがって、CADデータに対して構造解析データ、流動解析データ、及び計測データが図2に示すように重畳される。このようにユーザの作業内容により、CADデータには属性データが1対1で重畳される場合や1対複数で重畳される場合がある。
【0084】
また、CADデータVer2に流動データ1及び流動データ2が対応付けられているように、CADデータに重畳される属性データに関して複数の属性データが対応付けられる場合もあり、ユーザはCADデータに重畳する属性の種類や属性データを目的に応じて選択してもよい。
【0085】
例えばユーザは、CADデータVer2で表される製品の試作品を製造条件1に従って複数製造した場合、製造した試作品の全数の計測データをCADデータVer2に重畳してもよく、選択した少なくとも1つの試作品の計測データをCADデータVer2に重畳してもよい。また、ユーザは、試作品のうち、要求仕様に最も近い形状を有する試作品の3D計測データと、要求仕様から最もはずれている形状を有する試作品の計測データをCADデータVer2に重畳してもよい。CADデータVer2に重畳する計測データは試作品の寸法だけでなく、例えば要求仕様に対する最大誤差及び最小誤差、要求仕様に対する平均誤差、並びに、試作品の形状の判定結果を重畳してもよい。
【0086】
その上で、ユーザはCADデータに重畳された属性データの中から各属性を代表する属性データを特定する。各属性を代表する属性データは「代表属性データ」と呼ばれる。
【0087】
代表属性データの特定方法については後ほど詳細に説明するが、一例として各属性において最終的に採用した属性値が代表属性データとなることがある。すなわち、上記で説明した例において、計測データ1が得られた試作品に用いられたCADデータを最終的な製品のCADデータとして採用したとすれば、CADデータではVer2、構造解析データではVer2、流動解析データでは流動データ1、3D計測データでは計測データ1が各属性の代表属性データとなる。図2では代表属性データを太枠で囲んで表している。
【0088】
更に、CADデータで表される製品の形状に、特定の名称が付与されているような特徴のある形状が含まれる場合、特徴のある形状を詳細形状属性としてCADデータに重畳してもよい。以降では、ユーザの間でその名称や形状に対して共通の認識が得られるような特徴のある形状を「詳細形状」ということにする。
【0089】
詳細形状には、例えば図3に示すようなスナップフィット5や、図4に示すようなキー溝6、Dカット面7、及び止め輪溝8等が存在する。
【0090】
スナップフィット5とは、樹脂のばね特性を利用して、ねじ等を用いることなく製品の部品同士を嵌合させるために用いられる形状のことをいう。キー溝6とは、歯車等の部品を軸に取り付けるために用いられる締結部品(「キー」という)を差し込むための溝であり、止め輪溝8とは、軸の円周方向に沿って切られた溝のことであり、部品を軸に取り付けるリング状の止め輪が差し込まれる溝である。Dカット面7とは、軸の円周上の一部を表面が平らになるように加工した面のことであり、加工面を軸方向に向かって眺めた場合、アルファベットの“D”の形状に似ていることからこうした名前が付けられている。加工面は1面以外に対向した2面、直交した2面などの場合もある。
【0091】
この他、詳細形状には「ねじ」や「シボ」が含まれる。シボとは、製品の表面に施される表面加工のことであり、様々なパターン形状が存在する。
【0092】
こうした製品の詳細形状属性をCADデータに重畳することで、後ほど説明する製品の検索機能において、製品全体の形状で統合データ4を検索する機能を提供するだけでなく、指定された詳細形状属性を含む製品の統合データ4を検索する機能を提供するようにしている。
【0093】
なお、CADデータに対する詳細形状属性の重畳については、後ほど図22に示す統合部20Aの機能構成例を用いて説明する。
【0094】
製品を射出成型ではなく3Dプリンタを用いて製造する場合、製品のどの面を底面として製造すればよいかを決定する必要がある。これは、3Dプリンタの場合、樹脂を1層ずつ積み重ねて製品を造形するため、積層方向の強度が積層方向と直交する方向の強度よりも弱くなるためである。
【0095】
したがって、図3に示したようなスナップフィット5を有する製品を3Dプリンタで造形する場合、図5に示すように、スナップフィット5の方向が積層方向と直交するような角度で造形されることが好ましい。
【0096】
このように、ユーザはCADデータによって表される製品をどのような角度から造形すれば、強度不足に陥りやすい肉薄部や、危険なぐらつきや反りを有する箇所が少なくなるかをシミュレーション等により解析することがある。
【0097】
当該解析結果は特徴抽出データとして、解析を行った角度毎に製品と対応付けて特徴抽出DBに保管される。図2に示すように、統合データ4はこうした特徴抽出データもCADデータに重畳して管理する。図2の例では、角度1よりもぐらつきの危険度の大きい箇所が少ない角度2が特徴抽出データの代表属性データとして特定されている。
【0098】
製品を3Dプリンタで造形する場合には製品の金型は不要であり、それに伴い製造条件も不要となることから、CADデータ、構造解析データ、詳細形状属性、及び特徴抽出データが統合データ4で管理されることになる。
【0099】
このように、統合データ4には各属性の代表属性データだけでなく、最終的に採用されなかった、設計上何らかの問題があるようなデータ(失敗データ)もCADデータに重畳されて管理される。
【0100】
図6は、管理システム1で管理される統合データ4の他の一例を示す図である。
【0101】
例えばユーザが最初に設計したCADデータVer1の構造解析データVer1からCADデータVer1に修正点が見つかったため、CADデータVer2を生成したとする。このCADデータVer2の構造解析を行ったところ、CADデータVer2には修正点がなかったため、CADデータVer2を用いて製造条件1で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ1と、CADデータVer2を用いて製造条件2で試作した場合の流動解析結果を表す流動データ2を得たとする。
【0102】
2つの流動解析データを検討した結果、流動データ2に比べて流動データ1が優れていたため、CADデータVer2を用いて製造条件1で製造した試作品の形状を3Dスキャナで計測した計測データを計測データ1とする。
【0103】
したがって、最終的に採用した属性データを代表属性データとすれば、CADデータではVer2、構造解析データではVer2、流動解析データでは流動データ1、計測データでは計測データ1が各属性における属性データの代表属性データとなる。
【0104】
こうした製品を3Dプリンタで造形する場合、既に説明したように造形の角度が重要になるが、3Dプリンタでの製品の造形に精通した熟練のユーザであれば、試行錯誤しなくても、過去の知見に基づいて製品に最も適した造形の角度を1度で決定することができる。したがって、図6に示した統合データ4には、角度1で表される1つの特徴抽出データだけがCADデータVer2に重畳されている。なお、製品を3Dプリンタで造形する場合、CADデータ、構造解析データ、詳細形状属性、及び特徴抽出データが統合データ4で管理されることになる。
【0105】
このように、ユーザには製品の設計や製造に影響を与える検討条件を様々に変化させながら製品の設計及び製造を行うユーザもいれば、製品に対する最適な検討条件を一目で見抜き、1種類の検討条件だけで製品の解析等を行うユーザも存在する。検討条件の数が予め定めた数(以降、「規定条件数」という)に達していない場合、管理装置20は後ほど説明するように、異なる検討条件で製品を設計した場合に得られるCADデータや属性データも収集する。なお、属性データを収集するとは、具体的には製品の属性毎に属性データを収集することを意味する。また、製品の製造条件も属性の一例であり、例えば流動解析データと対応付けられて統合データ4で管理される。
【0106】
図7は管理システム1に含まれる管理装置20の機能構成例を示す図である。管理装置20は、製品が製造されるまでの各工程で得られた製品に関する属性データを収集ルールに従って自律的に収集し、CADデータと属性データを統合して統合データ4を生成する統合部20Aと、ユーザによって指定された検索条件を満たす統合データ4を検索し、検索した統合データ4に含まれる属性の属性データをユーザの要求に従って変換した上で出力する検索部20Bを含む。
【0107】
図8は、統合部20Aの機能構成例を示す図である。図8に示すように統合部20Aはインターフェース部21、収集ルール設定部22、収集部23、編集部24、重畳ルール設定部25、重畳部26、及び統合データDB13を含む。更にインターフェース部21は、通信部21A及びUI(User Interface)部21Bを含む。
【0108】
インターフェース部21は、ユーザ及び作業用装置10から指示や各種データを受け付けると共に、ユーザに対して統合データ4の検索結果を通知したり、作業用装置10に対して指定した処理を行うように要求したりするためのインターフェース機能を提供する。インターフェース部21は、作業用装置10とは通信部21Aが通信回線2を通じて各種データの受信や指定した処理の要求を行い、ユーザとはUI部21Bを通じてユーザからの指示の受け付けや管理装置20での処理結果を通知する。
【0109】
収集ルール設定部22は、インターフェース部21で受け付けたユーザの指示に従って、統合データ4で管理する属性データの収集ルール(収集規則ともいう)を設定する。
【0110】
収集部23は、収集ルール設定部22で設定された収集ルールに従って、作業用装置10及び作業用装置10で生成された製品に関する属性が保管されているデータベースの少なくとも一方から、収集ルールで指定された製品に関する属性及びCADデータを通信回線2経由で収集する。
【0111】
編集部24は、収集部23が収集したCADデータ及び属性データの重畳準備を行う。具体的には、編集部24は、収集部23が収集したCADデータ及び属性データに対して代表属性データを特定すると共に、収集したCADデータや属性データの数が規定条件数に達していない場合には、収集したCADデータや属性データの検討条件とは異なる検討条件を規定条件数に達するまで作成し、異なる検討条件に基づいて作業用装置10に製品の設計作業や解析作業を要求する。その上で、編集部24は、異なる検討条件に対応したCADデータや属性データを収集部23に収集させる。また、編集部24は、後述する重畳部26でCADデータと属性データが重畳されるようにCADデータの解像度と属性データの解像度をあわせる修正処理を行う。
【0112】
なお、解像度とは隣り合うデータ間の間隔のことであり、データ間の間隔が短くなるほど製品に関するデータのデータ密度が高くなるため、CADデータによって表される製品の形状や属性が詳細に表されることになる。
【0113】
重畳ルール設定部25は、インターフェース部21で受け付けたユーザの指示に従って、CADデータと属性データの対応付けを規定する重畳ルール(重畳規則ともいう)を設定する。
【0114】
重畳部26は、重畳ルール設定部25で設定された重畳ルールに従って、CADデータに属性データを重畳し、CADデータと属性データの重畳関係を管理する統合データ4を生成して統合データDB13に記憶する。
【0115】
なお、検索部20Bの機能構成例については後ほど説明する。
【0116】
次に、管理装置20における電気系統の要部構成例について説明する。
【0117】
図9は、管理装置20における電気系統の要部構成例を示す図である。管理装置20は例えばコンピュータ30を用いて構成される。
【0118】
コンピュータ30は、管理装置20に係る処理を制御するCPU(Central Processing Unit)31、コンピュータ30を管理装置20として機能させる管理プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)32、CPU31の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)33、不揮発性メモリ34、及び入出力インターフェース(I/O)35を備える。そして、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、及びI/O35がバス36を介して各々接続されている。
【0119】
不揮発性メモリ34は、不揮発性メモリ34に供給される電力が遮断されても、記憶したデータが維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。不揮発性メモリ34は、必ずしもコンピュータ30に内蔵されている必要はなく、例えばコンピュータ30に着脱可能な可搬型の記憶装置であってもよい。
【0120】
I/O35には、例えば通信ユニット37及びUIユニット38が接続される。
【0121】
通信ユニット37は通信回線2と接続され、通信回線2に接続される作業用装置10、設計した製品に関するCADデータや属性データが記憶されるデータベース、及び例えばファイルサーバのような外部装置との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0122】
UIユニット38は、管理装置20とユーザとのインターフェースを提供するユニットである。UIユニット38は、ユーザの指示を受け付けてCPU31に通知すると共に、CPU31によって処理された情報をユーザに通知する。UIユニット38にはユーザの指示を受け付けるため、例えばキーボードやマウスといった入力デバイス、及び、処理した情報をユーザに通知するためのLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイといった出力デバイスが用いられる。
【0123】
図10は、管理装置20のCPU31によって実行される管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0124】
管理処理を規定する管理プログラムは、例えば管理装置20のROM32に予め記憶されている。管理装置20のCPU31は、ROM32に記憶される管理プログラムを読み込み、管理処理を実行する。
【0125】
なお、ここでは一例として、設計ツールを備えた作業用装置10の記憶装置に製品のCADデータが保管され、各種解析ツールを備えた各々の作業用装置10の記憶装置に解析内容に応じた属性データが保管されているものとする。
【0126】
ユーザが予め設定した収集ルールの条件が成立した場合、ステップS10において、CPU31は、収集対象として指定された製品のデータを作業用装置10から収集する。
【0127】
例えばユーザは製品のデータ収集が必要になったと判断した時に、その都度、管理装置20に対して収集指示を行ってもよいが、収集ルールを設定しておけばCPU31が収集ルールを参照し、収集ルールの条件が成立したと判定した場合に、CPU31は自律的に製品のデータ収集を開始する。
【0128】
収集ルールに規定される収集内容に制約はなく、例えば指定した種類のツールでデータの保存が行われた場合や、保存されたデータ数が指定値に達した場合や、保存されたデータ量が指定量に達した場合や、また、保存されたデータのファイル名が指定したファイル名規則に従っている場合というように、作業用装置10でのユーザの作業状況に応じて製品のデータを収集するか否かを判断する収集ルールを規定してもよい。
【0129】
また、例えば指定した時間になった場合や、予め定めた間隔毎というように、時間に関する条件を満たした場合に製品のデータを収集する収集ルールを規定してもよい。
【0130】
また、例えば外部装置に記憶されているユーザのスケジュール情報を参照し、ユーザの設計作業及び解析作業を邪魔しないように、ユーザが会議に出席している時間帯や出張している期間にデータの収集を行うような、ユーザのスケジュールに同期させて製品のデータを収集する収集ルールを規定してもよい。
【0131】
また、例えば承認済みのデータが保管されるデータベースといった特定のデータ保管領域にデータが保管された場合に、データの収集を行うような収集ルールを規定してもよい。
【0132】
更に、例えば製品の設計及び製造の各工程における業務の流れに沿って収集ルールを規定してもよい。具体的には、設計したCADデータや解析結果の承認が上長によって行われた場合や、各工程における作業が終了し、次の工程に移行するタイミングで製品のデータを収集する収集ルールを規定してもよい。
【0133】
ステップS20において、CPU31はステップS10で収集したデータに基づいて、データの編集を行う。
【0134】
データの編集には様々な処理が存在するが、そのうちの1つとして、例えばCPU31は、収集したCADデータ及び属性データの各々に対して代表属性データの特定を行う。代表属性データの特定方法には様々な方法が存在するが、CPU31が収集したCADデータ及び属性種類毎の属性データをUIユニット38に表示し、ユーザが選択したCADデータにユーザが選択した属性種類を対応付け、選択された属性種類の各々に対して、更にユーザが選択した属性データを代表属性データとすればよい。ユーザが、選択した各々の属性種類に対して最終的に採用した属性値を選択すれば、代表属性データは実際の製品に適用されている属性値ということになる。
【0135】
また、CPU31は、予め設定された特定ルール(特定規則ともいう)に従って製品の代表属性データを特定してもよい。
【0136】
特定ルールは、他の属性データに比べて製品の仕様が最も定義されている属性データの条件を規定したルールであり、CPU31は、特定ルールを満たす属性データを製品の代表属性データとして特定する。具体的には、ユーザが作業用装置10において最も長い時間にわたって閲覧や利用していた属性データ、最も多くのユーザが閲覧や利用した属性データ、または最も製品の要求仕様を満足した属性データを代表属性データとするルール等が特定ルールとして設定される。
【0137】
こうした特定ルールを満たすか否かを判定するために用いられる付加情報は、特定ルールの内容に応じて、CPU31がステップS10で製品のデータと共に各々の作業用装置10または外部装置から収集する。
【0138】
特定ルールはユーザによって予め設定され、例えば不揮発性メモリ34に記憶されるが、ユーザが複数の特定ルールを設定しておき、CPU31が、収集した付加情報によって表されるユーザの作業傾向に基づいて、何れか1つの特定ルールを選択するようにしてもよい。例えば、CPU31は、初めのうちは代表属性データの候補をUIユニット38に表示し、その中からユーザが代表属性データとして選択した属性の選択傾向を学習し、学習した選択傾向からユーザに最適な特定ルールを選択するようにしてもよい。特定ルールを選択した後は、ユーザから特定ルールの変更指示を受け付けるまで、選択した特定ルールに従って代表属性データを特定する。
【0139】
CPU31は、予め1つのCADデータを代表属性データとして特定した後に、特定したCADデータと対応付けられる各属性における複数の属性値の中から代表属性データを特定してもよい。図11の例は、特定の属性における属性データA、属性データB、及び属性データCの3つの属性データの中から、代表属性データのCADデータに対応付ける代表属性データを1つ特定する状況を表している。
【0140】
また、CPU31は、複数のCADデータの各々に対して予め各属性における属性データを対応付けておき、複数の対応付けの中から何れか1つの対応付けを代表属性データの対応付けとして選択してもよい。例えば図12に示すように、CADデータVer1と属性データA、CADデータVer2と属性データA2、及びCADデータVer3と属性データA3をそれぞれ予め対応付けておき、この中から何れか1つの対応付けによって表されるCADデータと属性データの組み合わせを各々の属性における代表属性データの対応付けとしてもよい。
【0141】
ステップS10で収集した製品のデータは、ユーザが検討した条件に基づいたデータということになるが、下流工程ではユーザが検討した条件に基づく製品のデータだけでは、製品のデータを活用しようとしても不十分な状況が発生することがある。
【0142】
例えば、下流工程で別の製品のCADデータに対して規定の製造条件を設定して流動解析を行ったところ、製品の反りが要求仕様よりも大きくなってしまうため、過去に設計された製品の製造条件を参考にして製品の反りを抑えたいという状況が発生したり、製品を3Dプリンタで造形しようとした場合に、どのような角度で造形すればよいかわからないため、過去に設計された製品の造形角度を参考にしたいという状況が発生したりすることがある。
【0143】
こうした状況において、ユーザが最終結論として導いた設計データしか過去の製品の統合データ4に含まれない場合、製品の形状は類似しているのに、製品の反りが抑えられた製造条件がCADデータに重畳されていなかったり、様々な造形角度に対する特徴抽出データが重畳されていなかったりすることになる。
【0144】
また、ユーザの中には様々な製造条件や造形角度を試したにもかかわらず、製品の製造に最終的に採用しなかった失敗データを統合データ4に登録せずに、自分だけが使う参考資料として保管するユーザも存在する。
【0145】
したがって、別の製品を担当する他のユーザは、参考にできそうな過去の製品の統合データ4を参照しても、必ずしも問題点の解決につながりそうな情報を得られるとは限らないことになり、再度、自らが試行錯誤しながら問題点の解決を行うことになる。
【0146】
したがって、CPU31は、ステップS10でデータを収集した製品について、ユーザが検討した条件、すなわち、統合データ4に含まれる各属性の属性データが得られた場合の検討条件とは異なる検討条件(「追加検討条件」という)を生成し、追加生成条件に基づいてCADデータで表される製品の解析を行った場合の解析結果を解析項目に対する新たな属性値として生成する。
【0147】
追加検討条件には、ユーザによる検討済みの条件に対して例えば射出成型におけるゲートの数や設置位置といった製品の製造条件を変えた値、製品に加える力や方向といった構造解析条件を変えた値、及び特徴抽出データにおける製品の肉薄箇所、及び反りやぐらつきの危険度合いを判定する判定閾値を変えた値が設定される。
【0148】
また、製品を3Dプリンタで造形する場合の造形の角度に関しては、任意の角度を追加検討条件に設定可能であるが、角度を設定するのではなく、縦、横、及び高さを表すXYZ座標系で定義されたCADデータによって表される製品を3Dプリンタに配置した場合に、2つの軸に沿った辺によって構成される製品の何れの面を3Dプリンタでの造形時の底面とするかを指定してもよい。
【0149】
また、CPU31は、CADデータで表される製品の形状を囲むバウンディングボックスの体積が最小となる製品の角度を算出し、バウンディングボックスの縦、横、及び高さのうち、最も短い長さの辺が3Dプリンタで造形する場合の高さ方向となるような角度での特徴抽出データを取得する追加検討条件を設定してもよい。この場合、樹脂の積層回数が最小になるため、製品の製造に要する時間が短縮される角度として頻繁に利用されることから、CPU31はユーザが当該角度での特徴抽出データを検討していない場合、ユーザの指示がなくても追加検討条件に設定してもよい。
【0150】
また、CPU31は、バウンディングボックスの縦、横、及び高さのうち、最も短い辺と、その次に短い辺で表される面が、製品を3Dプリンタで造形する場合の底面となるような角度での特徴抽出データを取得する追加検討条件を設定してもよい。この場合、1台の3Dプリンタで1度に製造できる製品の数が最大となるため、製品の製造効率を高める角度として頻繁に利用されることから、CPU31はユーザが当該角度での特徴抽出データを検討していない場合、ユーザの指示がなくても追加検討条件に設定してもよい。
【0151】
更に、CPU31は、CADデータで表される製品を回転させ、3Dプリンタで製品を造形する場合に必要となるサポート材が最小になる角度や、最下点の数が最小になる角度を算出して、ユーザが当該角度での特徴抽出データを検討していない場合、ユーザの指示がなくても追加検討条件に設定してもよい。
【0152】
また、CPU31は、収集したCADデータの解像度と異なる解像度を追加検討条件に設定してもよい。この場合、設定した解像度で表されるCADデータが得られることになる。
【0153】
なお、CADデータの解像度とは、製品の三次元形状データをポリゴンやボクセルなどで表す場合における分解能のことを表す。例えばポリゴンなら三角形の細かさ、ボクセルなら1辺のサイズ等である。また、属性データの解像度とは、属性データをサンプリングして扱うときのサンプリング間隔等である。解像度が高くなるほど製品に関するデータのデータ密度が増すため、CADデータによって表される製品の形状や属性が詳細に表されることになる。
【0154】
段階的に解像度が変化するCADデータが得られるように複数の解像度を追加検討条件に設定すれば、同じ製品を粗い形状で表したCADデータや細部の形状まで詳細に表したCADデータというように、同じ製品に対して解像度が異なる複数のCADデータが得られることになる。
【0155】
CPU31は、製品の形状の複雑度合いやCADデータで表される製品における属性データの解像度を参照して、追加検討条件に設定するCADデータの解像度を決定してもよい。
【0156】
CPU31は、収集したCADデータに対してユーザが検討した各属性の検討条件数が予め定めた規定数未満の場合、各属性における製品の検討条件数が予め定めた規定数に達するまで追加検討条件を設定し、追加検討条件に基づいて生成された属性値を取得する。なお、各属性で検討する検討条件数は属性毎に異なる値を設定してもよい。
【0157】
CPU31は、設計内容及び解析内容に応じて、設計及び解析を担当する作業用装置10を特定し、特定した作業用装置10に対して追加検討条件を送信して製品の再設計及び再解析を実施させ、追加設計情報を送信した各々の作業用装置10から追加検討条件に基づいて算出した属性値を収集する。なお、CPU31は、管理装置20に製品の設計ツールや解析ツールが備えられている場合には、追加検討条件を作業用装置10に送信せず、管理装置20で追加検討条件に基づいた属性値を生成してもよい。
【0158】
作業用装置10に追加検討条件に基づく製品の再設計及び再解析を実施させる場合、CPU31は製品の再設計及び再解析を実施させる前に、製品の再設計及び再解析を依頼する作業用装置10の負荷状況を確認し、例えば負荷率が予め定めた閾値以下の場合に、追加検討条件と共に製品の再設計及び再解析を指示する設計解析指示を作業用装置10に送信することが好ましい。
【0159】
また、管理装置20で追加検討条件に基づいた属性値を生成する場合、CPU31は自身の負荷状況を確認し、例えば負荷率が予め定めた閾値以下の場合に、追加検討条件に基づいた属性値の生成を行うことが好ましい。
【0160】
一方、CPU31は、下流工程において製品の形状の検討を行いやすくするため、CADデータをユーザが指定した表現形式に変換してもよい。CADデータの表現形式に制約はなく、例えばサーフィス、ポリゴン、及びボクセル等の表現形式が用いられる。
【0161】
このうち、ボクセルとは、製品の三次元形状を構成する基本要素であり、CPU31は、CADデータによって表される製品の形状をボクセルの組み合わせによって表現する。例えばボクセルには正方体が用いられるが、正方体に限らず、直方体、三角錐、球、及び円柱等の他の三次元要素を用いてもよい。
【0162】
ボクセルには、例えば色、強度、材質、質感といった情報を設定できることから、ボクセルの有無及びボクセルに設定した情報によって、製品の形状だけでなく、製品の色や材質等を対応付けることができる。
【0163】
なお、「質感」とは、製品の反射率、透過率、光沢、表面性状等の色だけではない物性情報や触り心地を表す情報である。
【0164】
ステップS30において、CPU31は、各々のCADデータに製品の属性を重畳した統合データ4を作成し、製品のCADデータと属性を一元的に管理する。この場合、CPU31は、少なくとも各属性に対して代表属性データが含まれるように統合データ4を作成する。
【0165】
CADデータに対して製品の属性をどのように重畳するかを示す規則は、例えば不揮発性メモリ34に予め記憶された重畳ルールで設定される。解析対象となるCADデータの向きを変更することなく解析ツールで解析を行う場合には、解析の結果として得られた属性値の位置を変更する必要がないため、得られた属性の属性値をそのままの三次元分布でCADデータに重畳するという規則を重畳ルールに設定しておけばよい。
【0166】
しかしながら、解析ツールで解析を行う場合、様々な検討条件に基づいて解析を行うことがあるため、CADデータによって表される製品の向きを変更した上で解析を行うことがある。このようにCADデータによって表される製品の向きと、解析時に用いたCADデータによって表される製品の向きが異なる場合、CADデータに重畳する属性値の三次元分布をCADデータによって表される製品の向きにあわせてから重畳する必要がある。
【0167】
こうした場合における属性値の三次元分布とCADデータの重畳方法には、例えばベストフィットあわせ、バウンディングボックスあわせ、中心あわせ、及び重心あわせ等が存在する。
【0168】
ベストフィットあわせとは、CADデータによって表される製品の三次元形状と、属性値の三次元分布から想定される製品の三次元形状が最も一致するように調整した上で、CADデータに対応する位置の属性値を重畳する方法である。
【0169】
バウンディングボックスあわせとは、CADデータによって表される製品のバウンディングボックスと、属性値の三次元分布から想定される製品のバウンディングボックスが一致するように調整した上で、CADデータに対応する位置の属性値を重畳する方法である。
【0170】
中心あわせとは、CADデータによって表される製品の三次元形状の中心点と、属性値の三次元分布から想定される製品の三次元形状の中心点をあわせ、各々の三次元形状ができるだけ一致するように調整した上で、CADデータに対応する位置の属性値を重畳する方法である。
【0171】
また、重心あわせとは、CADデータによって表される製品の重量分布を用いて製品の重心点を算出し、中心あわせにおける中心点を重心点に変えた重畳方法である。
【0172】
当然のことながら、CPU31は、ユーザが指示する向きにCADデータに重畳する属性値の三次元分布を回転させ、CADデータに重畳してもよい。
【0173】
なお、製品の属性毎に異なる重畳ルールを設定してもよい。同じ属性であれば、CADデータに重畳する属性値が代表属性データであるか否かにかかわらず、同じ重畳ルールに従ってCADデータに製品の属性を重畳することが好ましい。
【0174】
なお、CPU31は、重畳ルールに従ってCADデータに属性を重畳する場合、属性値を加工した上でCADデータに重畳することがある。
【0175】
例えば解析ツールでは製品の解析に各種数値演算を伴う処理を行うことがあるため、解析対象となるCADデータの解像度にあわせて解析を行うと、解析結果が出力されるまでの時間が許容範囲を超えることがある。したがって、解析ツールでは解析対象となるCADデータの解像度を実際の解像度よりも低くした上で解析を行う場合がある。
【0176】
こうした、CADデータの解像度と属性データの解像度の不一致は、解析ツールの解析結果だけに生じる現象ではない。例えば製品に関する物理量を測定するセンサの数によって計測対象となる物理量の解像度が変化することから、センサの計測値もCADデータの解像度と異なることがある。また、ユーザが製品の予め指定した箇所の物理量だけを計測するような場合にも、計測結果の解像度とCADデータの解像度と異なることがある。
【0177】
図13は、解析対象となるCADデータの一例を示す図である。これに対して図14は、図13に示すCADデータの解像度を低下させて構造解析した場合に得られるミーゼスひずみの属性値の分布例を示す図である。
【0178】
図13及び図14に示すように、解析ツールでは解像度を低下させて構造解析を行ったため、解析結果から得られるミーゼスひずみの解像度は、図13に示すCADデータの解像度よりも低くなる。
【0179】
こうした場合、CADデータを構成する製品の1つ1つのデータ点(以降、「CADデータのデータ点11」という)に対して、ミーゼスひずみという属性を表す1つ1つのデータ点(以降、「属性のデータ点12」という)におけるひずみ値を対応付ける場合、解像度が異なるため、CADデータのデータ点11に属性のデータ点12を1対1に重畳することができない。
【0180】
図15はこうした状況をわかりやすく説明するため、解像度の違いを2次元で表した例を示している図である。CADデータに重畳する属性データの解像度が重畳先のCADデータの解像度より低い場合、単位体積あたりにおける属性のデータ点12の数がCADデータのデータ点11の数より少なくなる。
【0181】
したがって、CADデータに重畳する属性データの解像度が重畳先のCADデータの解像度より低い場合には、CADデータの解像度にあわせて属性値を補間し、CADデータに重畳する必要がある。
【0182】
属性値の補間には、例えば補間関数を用いた方法が用いられる。
【0183】
図16は、補間関数を用いた属性値の補間例を示す図である。説明の便宜上、2次元空間での補間例について説明するが、三次元空間における属性値の補間も同様の考えを適用することができる。
【0184】
図16に示す位置に存在するCADデータのデータ点11に重畳する属性値をその周辺に存在する複数の属性のデータ点12(図16の例では4つの属性のデータ点12)の属性値から算出する場合、X軸方向及びY軸方向に沿ったそれぞれの属性のデータ点12からCADデータのデータ点11までの距離により、属性のデータ点12における属性値を比例配分して求めればよい。
【0185】
例えば属性のデータ点12Aにおける属性値をV(xn,yn+1)、属性のデータ点12Bにおける属性値をV(xn+1,yn+1)、属性のデータ点12Cにおける属性値をV(xn+1,yn)、及び属性のデータ点12Dにおける属性値をV(xn,yn)とする。また、CADデータのデータ点11のX軸方向の位置が、X軸方向に沿って隣り合う属性のデータ点12間をp:(1-p)に分割した位置xで表され、かつ、CADデータのデータ点11のY軸方向の位置が、Y軸方向に沿って隣り合う属性のデータ点12をq:(1-q)に分割した位置yで表される場合、CADデータのデータ点11における属性値V(x,y)は(1)式によって表される。
【0186】
【数1】
【0187】
なお、属性値の補間に用いる属性のデータ点12(図16に示した例の場合、属性のデータ点12A~12D)を特に「補間用属性のデータ点12」と呼び、その数や範囲はユーザによって指定される。
【0188】
三次元空間において属性値の補間を行う場合には、補間用属性のデータ点12とCADデータのデータ点11の間のZ軸方向に沿った距離の関係に従って、補間用属性のデータ点12における属性値をZ軸方向に比例配分し、(1)式に加えればよいことになる。
【0189】
このように、CPU31は、属性のデータ点12間に存在するCADデータのデータ点11における属性値を、補間用属性のデータ点12における属性値を用いて関数で近似する。ここでは一例として属性値の補間に線形関数を用いたが、公知の非線形関数を用いてもよい。
【0190】
特に属性値が有限要素法を用いた解析によって得られた値であれば、節点解から要素解を近似することで、要素内における任意の位置の属性値を用いて補間することもできる。
【0191】
また、属性値の補間対象となるCADデータのデータ点11に最も近い属性のデータ点12における属性値を、当該CADデータのデータ点11における属性値としてもよく、更に、補間用属性のデータ点12における各々の属性値の平均値、中央値、及び最頻値といった統計量を当該CADデータのデータ点11における属性値にしてもよい。
【0192】
上記では、CADデータの解像度が属性データの解像度より高い場合についての属性値の補間方法について説明したが、状況によってはCADデータの解像度が属性データの解像度より低いことがある。こうした場合、CPU31は、属性値を間引いてCADデータに重畳する必要がある。
【0193】
図17は、CADデータの解像度が属性データの解像度より低い状況をわかりやすく説明するため、2次元で表した例を示している図である。
【0194】
CADデータの解像度が属性データの解像度より低い場合、単位体積あたりにおけるCADデータのデータ点11の数は、属性のデータ点12の数より少なくなる。
【0195】
こうした場合、例えばCPU31は、CADデータの解像度と属性データの解像度が一致するように属性のデータ点12を間引き、CADデータのデータ点11から最も近い位置にある属性のデータ点12の属性値を、各々のCADデータのデータ点11における属性値としてCADデータに重畳する。
【0196】
図18は、属性のデータ点12を間引く様子を示した図である。図18の例の場合、領域39に含まれる属性のデータ点12が間引かれた後、CADデータのデータ点11Aには属性のデータ点12Aの属性値、CADデータのデータ点11Bには属性のデータ点12Bの属性値、CADデータのデータ点11Cには属性のデータ点12Cの属性値、及びCADデータのデータ点11Dには属性のデータ点12Dの属性値というように、CADデータのデータ点11A~11Dからそれぞれ最も近い位置にある属性のデータ点12A~12Dが重畳されている。
【0197】
また、CPU31は、CADデータに重畳する属性のデータ量を予め定めたデータ量とするために必要となる属性のデータ点12の間引き量を予め算出してから、算出した間引き量に従って属性のデータ点12を等間隔に間引いてもよい。例えば、属性データのデータ量を8分の1にするためには、CPU31は7個置きに属性のデータ点12を残し、それ以外の属性のデータ点12を間引くようにすればよい。その上で、残った属性のデータ点12から最も近い位置にあるCADデータのデータ点11に、それぞれ当該属性のデータ点12における属性値を重畳すればよい。
【0198】
なお、この場合、属性のデータ点12の間引き量によっては、一部のCADデータのデータ点11だけに属性値が重畳されることがある。
【0199】
属性のデータ点12の間引き方法は上記の例に限られず、例えば図19に示すように1つのCADデータのデータ点11を囲むように枠40を設定し、枠40に含まれる属性のデータ点12における各々の属性値の平均値、中央値、及び最頻値といった統計量を枠40内のCADデータのデータ点11における属性値とした上で、枠40内に含まれるすべての属性のデータ点12を間引いてもよい。
【0200】
また、CPU31は、詳細形状属性やユーザによる製品のアノテーションの結果から、製品の特徴的な箇所や重要な箇所を抽出し、抽出した箇所における属性のデータ点12のみ残すようにして、それ以外の属性のデータ点12を間引いてもよい。
【0201】
CPU31は、属性データの解像度を調整した場合、下流工程で解像度を調整する前の属性データの属性値を参考にしたい状況が発生することに備え、解像度を調整する前の本来の属性データの属性値もCADデータに重畳して統合データ4に保管しておくことが好ましい。具体的には、CPU31は、調整前の属性データの解像度と同じ解像度を有するCADデータを取得し、当該CADデータに調整前の属性データの属性値を重畳すればよい。すなわち、統合データ4には、解像度を調整する前の属性データが重畳されたCADデータと、解像度を調整した後の属性データが重畳されたCADデータが含まれることになる。
【0202】
また、CPU31は、属性データの解像度を調整した場合、調整前の属性データの属性値と調整後の属性データの属性値との関係がわかる対応情報を生成し、解像度の調整を行った属性データと対応付けて統合データ4に記憶してもよい。
【0203】
例えば図16に示したように4つの属性のデータ点12から特定の位置にあるCADデータのデータ点11の属性値を補間した場合、CPU31は、補間により新たに生成される各々の属性のデータ点12に対して属性のデータ点12を一意に表す識別子を振り直し、図20に示すような解像度の調整前における属性のデータ点12と調整後の属性のデータ点12との対応付けを表す対応情報を生成する。
【0204】
また、例えば7個置きに属性のデータ点12を残し、それ以外の属性のデータ点12を間引く調整を行った場合、CPU31は、残った各々の属性のデータ点12に対して識別子を振り直し、図21に示すような解像度の調整前における属性のデータ点12と調整後の属性のデータ点12との対応付けを表す対応情報を生成する。
【0205】
これにより下流工程では、例えばCADデータのデータ点11から、当該CADデータのデータ点11に重畳された属性種類において、解像度を調整する前の属性値の分布状況が統合データ4から得られることになり、ユーザは、例えば解像度を調整する前の属性データの属性値同士を比較する等の検討を行うことができるようになる。
【0206】
管理装置20では、上記のようにCADデータ及び属性データの解像度を調整する以外にも、下流工程における統合データ4の検索の利便性を考慮して、属性値を加工した属性データをCADデータに重畳することがある。
【0207】
製品から特徴抽出データを抽出する場合、CPU31は三次元空間上のサンプリング間隔において、CADデータが存在するか存在しないかの2値の分布から任意の特徴に合致する領域を抽出すればよい。
【0208】
しかしながら、例えば製品の強度データのように、属性値が3値以上の値または連続値で表される属性からも同様に特徴抽出データを抽出したい場合が考えられる。
【0209】
CPU31は、こうした属性値が3値以上の値または連続値で表される属性データ(「多値属性データ」という)に対してユーザが指定した閾値を用いて、例えば閾値以上の属性値であれば「1」、閾値未満の属性値であれば「0」というように属性の各データ点12における属性値が2値で表されるように変換し、変換結果を新たな属性データとしてCADデータに重畳してもよい。このように属性データの属性値を2値化することで、CPU31は、製品から特徴抽出データを抽出するアルゴリズムを利用することができる。
【0210】
なお、特定の属性種類の属性データに関して複数の閾値で属性値を2値化してもよく、この場合、各々の閾値で2値化された複数の新たな属性データをCADデータに重畳すればよい。
【0211】
以上により、図10に示した管理処理を終了する。
【0212】
次に、図8に示した統合部20Aの機能構成例の変形例を図22に示す。図22に示す統合部20Aの機能構成例が図8に示した統合部20Aの機能構成例と異なる点は、特徴検出条件設定部14、特徴検出部15、特徴情報登録部16、特徴量算出部17、及び特徴量登録部18が追加された点である。
【0213】
特徴検出条件設定部14は、インターフェース部21を通じてユーザから受け付けた形状に関する製品の特徴を表す情報に従って、製品の特定の箇所を指定する指定条件の一例である特徴検出条件を設定する。
【0214】
形状に関する製品の特徴を表す情報とは、製品の部分的な形状、及び製品に施される加工等によって、製品の特定の箇所を指定することができる情報である。例えばスナップフィット5、キー溝6、Dカット面7、及び止め輪溝8等の詳細形状属性や、穴あけ、タップ、面取り、研磨、及びメッキ等の製品に対する後加工情報や、ばね及び歯車といったCADデータには表現されないが加工が行われる特定加工情報は、形状に関する製品の特徴を表す情報の一例である。
【0215】
なお、特徴検出条件には、特徴検出条件を満たす製品の箇所に対する処理内容も設定される。例えばユーザは特徴検出条件を満たす製品の箇所の形状や属性を詳細に記録しておきたいと思った場合、既に統合データ4で管理されているCADデータの解像度より解像度の高いCADデータの作成要求や、他の箇所よりも属性データの解像度を高めて解析するように指示した解析要求を処理内容として設定する。
【0216】
特徴検出部15は、特徴検出条件設定部14で設定された特徴検出条件を満たす製品の箇所を製品のCADデータを参照して検出する。そして、検出した製品の箇所に対して、特徴検出条件に設定された処理内容を実行し、特徴検出条件によって指定された製品の箇所における特徴情報を取得する。特徴検出条件によって指定された製品の箇所を表すCADデータや詳細形状属性等の属性は特徴情報の一例である。
【0217】
特徴情報登録部16は、製品の統合データ4に含まれるCADデータに、特徴検出部15で検出された製品の箇所に対する特徴情報を重畳して統合データ4に登録する。
【0218】
特徴量算出部17は、後ほど説明するように製品の特徴量を用いた製品の検索に対応するため、特徴検出条件によって指定された製品の箇所の特徴量を算出する。製品の特徴量とは、製品の特徴を検索可能な内容で表した物理量であり、スカラ値及びベクトル値の少なくとも一方によって表される。例えば、製品のCADデータがボクセルで構成されている場合、積層されたボクセル1層分の面を画像とみなした場合の面積ヒストグラムや面積変化率が製品の特徴量となる。
【0219】
製品の特徴を特徴量で表しておくことにより、例えばCADデータを参照して製品の形状そのものを比較するのではなく、形状の特徴量を比較することで、参考にしたい製品の統合データ4を検索することができる。
【0220】
特徴量登録部18は、特徴量算出部17で算出した特徴量を、特徴量の算出元となった製品のCADデータに重畳して統合データ4に登録する。
【0221】
図23は、図22に示した統合部20Aの機能構成例に基づいて、管理装置20のCPU31によって実行される管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0222】
管理処理を規定する管理プログラムは、例えば管理装置20のROM32に予め記憶されている。管理装置20のCPU31は、ROM32に記憶される管理プログラムを読み込み、管理処理を実行する。
【0223】
図23に示す管理処理が、図10に示した管理処理と異なる点はステップS40~S80が追加された点であり、その他の処理は図10に示した管理処理と同じである。したがって、以降では図10に示した管理処理と異なる点について説明する。
【0224】
ステップS30で、各々のCADデータに製品の属性データを重畳した統合データ4が作成された後、ステップS40が実行される。
【0225】
ステップS40において、CPU31は、ユーザから何らかの特徴検出条件を受け付けたか否かを判定する。特徴検出条件を受け付けていない場合には図23に示す管理処理を終了する。一方、特徴検出条件を受け付けている場合にはステップS50に移行する。
【0226】
ステップS50において、CPU31は、ステップS30で統合データ4を作成した製品のCADデータを参照して、製品の形状から特徴検出条件を満たす箇所を検出する。
【0227】
CPU31は、検出した製品の箇所に対して、特徴検出条件に設定された処理内容を実行する。
【0228】
例えば処理内容に「CADデータの高解像度化」が指定されていた場合、CPU31は、特徴検出条件を満たす箇所の解像度が、特徴検出条件を満たしていない箇所の解像度より高くなるようなCADデータを、設計ツールを備えた作業用装置10に設計させ、作業用装置10から当該CADデータを収集する。管理装置20に製品の設計ツールが備えられている場合には、CPU31は、管理装置20で処理内容に従ったCADデータを生成してもよい。
【0229】
また、処理内容に「属性データの高解像度化」が指定されていた場合、CPU31は、特徴検出条件を満たす箇所に関して、処理内容で指定された属性データの解像度が、特徴検出条件を満たしていない箇所の解像度より高くなるような解析データを、解析ツールを備えた作業用装置10に計算させ、作業用装置10から当該解析データを収集する。管理装置20に製品の解析ツールが備えられている場合、CPU31は、管理装置20で処理内容に従った解析データを生成してもよい。
【0230】
CPU31は、特徴検出条件を満たす箇所における属性データの解像度が、特徴検出条件を満たさない箇所における属性データの解像度より高くなるような解析データを収集または生成した場合、特徴検出条件を満たす箇所における属性データの解像度と同じ解像度を有した、特徴検出条件を満たす箇所の形状を表すCADデータを収集または生成した上でCADデータをボクセルで構成し、各々のボクセルに高解像度化された属性データの属性値を重畳してもよい。
【0231】
また、処理内容に「属性の詳細化」が指定されていた場合、CPU31は、特徴検出条件を満たす箇所に関して、特徴検出条件を満たさない箇所よりも重畳される属性種類を増やす等の処理を行い、重畳される属性の詳細化を行う。
【0232】
例えば特徴検出条件によって指定された製品の箇所がスナップフィット5、キー溝6、Dカット面7、及び止め輪溝8等の製品製造情報が存在しない形状であった場合、CPU31は、検出結果に従ってその有無や数を詳細形状属性として製品のCADデータに重畳する。
【0233】
なお、CADデータで表された製品の配置方向によっては、特徴検出条件で指定された特徴を有する製品の箇所を検出することが困難な場合があるため、このような場合、CPU31は、CADデータを回転させながら特徴検出条件に類似した特徴を有する箇所を検出するようにしてもよい。
【0234】
例えば特徴検出条件によって指定された製品の箇所がスナップフィット5である場合、CPU31は、ぐらつきの先端に過剰オーバーハングがつながっている箇所をスナップフィット5であるとして検出するが、スナップフィット5のぐらつきの検出には方向依存性が存在するため、図5に示した方向に配置された製品のCADデータからぐらつきを検出することは困難であることが知られている。したがって、CPU31は、CADデータを回転させながら特徴検出条件に類似した特徴を有する箇所を検出して、スナップフィット5の有無や数といった特徴情報を取得する。
【0235】
特徴検出条件によって指定された製品の箇所がDカット面7である場合、CPU31は、円筒面に対してその一部が平面となっている箇所をDカット面7として検出する。
【0236】
特徴検出条件によって指定された製品の箇所がキー溝6である場合、CPU31は、円筒面の一部に長丸穴または四角穴のような穴がある箇所をキー溝6として検出する。
【0237】
特徴検出条件によって指定された製品の箇所が止め輪溝8である場合、CPU31は、円筒面の軸方向に段差がある箇所を止め輪溝8として検出する。
【0238】
なお、円筒面の検出はHough変換による円柱の当てはめ等、公知の検出手法を適用してもよい。
【0239】
また、特徴検出条件によって指定された製品の箇所が後加工情報や特定加工情報によって表されている場合、CPU31は、該当する情報を製品製造情報または製品の図面データから抽出し、特徴検出条件を満たす箇所の属性データとしてCADデータに重畳する。
【0240】
図23のステップS60において、CPU31は、ステップS50で検出した特徴検出条件を満たす箇所の特徴情報をCADデータに重畳して統合データ4に登録する。
【0241】
ステップS70において、CPU31は、特徴検出条件によって指定された製品の箇所の特徴量を算出する。特徴検出条件によって指定された製品の箇所のみを対象として特徴量を算出することで、指定された特定の形状の数や位置関係等の特徴量を取得することができる。
【0242】
なお、CPU31は、特徴検出条件によって指定された製品の箇所の特徴量を算出する例について説明したが、当然のことながら、統合データ4に含まれるCADデータ全体または属性データ全体に対する特徴量も算出する。
【0243】
例えば製品における応力が予め定めた閾値を超える部分の体積(またはボクセル数)を特徴量として取得してもよい。また、例えばCPU31は、解像度が異なる複数のCADデータに対してそれぞれ指定された項目に関する特徴量を予め算出しておけば、製品の特徴量を用いて最初は解像度の低いCADデータに対して検索を行い、段階的に解像度の高いCADデータに対して検索を行うというような検索方法にも対応することができる。
【0244】
CADデータや属性データの解像度が高くなるほど、単位体積あたりに含まれるCADデータのデータ点11及び属性のデータ点12の数が増加するため、特徴量の算出に要する時間も長くなる。したがって、CPU31は、解像度が基準解像度より低いCADデータや属性データに対しては製品全体の特徴量を算出し、解像度が基準解像度より高いCADデータや属性データに対しては、製品の一部分のみの特徴量を算出するようにしてもよい。
【0245】
なお、算出した特徴量と特徴量の算出元である製品の識別番号とを対応付けたデータベースを別途作成し、ユーザが入力した特徴量と類似する製品の識別番号を当該データベースから検索するような処理を行えば、複数の統合データ4に順次アクセスして、ユーザが入力した特徴量と類似する特徴量を有する製品を検索する場合よりも、検索時間を短縮することができる。
【0246】
ステップS80において、CPU31は、ステップS70で算出した特徴量を、特徴量の算出元となった製品のCADデータに重畳した上で統合データ4に登録し、図23に示す管理処理を終了する。
【0247】
次に、図7に示した管理装置20の検索部20Bの処理について説明する。
【0248】
既に説明したように、統合データ4には、様々な形状の製品に関する、様々な設計条件、解析条件、及び製造条件等の検討条件に対応した属性データが一元的に保管されている。したがって、管理装置20は、下流工程のユーザや、新たな製品の設計及び製造に携わっているユーザに、当該ユーザが抱えている設計上及び製造上の問題点を解決できるような参考になる製品の形状や属性データを、ユーザの要望する出力形態で出力する機能を有する。
【0249】
図24は、検索部20Bの機能構成例を示す図である。図24に示すように検索部20Bはインターフェース部21、取得部27、変換部28、及び統合データDB13を含む。このうち、インターフェース部21及び統合データDB13は、図8に示した統合部20Aと共通に用いられる機能部である。すなわち、統合部20Aの処理によって、統合データDB13には予め複数の製品に関する統合データ4が記憶されているものとする。
【0250】
取得部27は、ユーザが入力した検索条件を満たす統合データ4を、統合データDB13から検索して取得する。ユーザは、管理装置20のUI部21Bを操作して検索条件を入力してもよく、また、通信部21Aを通じて作業用装置10から管理装置20に検索条件を入力してもよい。
【0251】
変換部28は、検索条件を満たした統合データ4に含まれるCADデータ及びCADデータに重畳されている属性データの属性値の少なくとも一方を、ユーザの要求に従って変換した上で出力する。データをどのように変換するかを規定した指示は、インターフェース部21から出力要求として変換部28に通知される。
【0252】
本実施の形態に係る「出力」とは、UIユニット38に画像として表示する形態、用紙等の記録媒体に印刷して出力する形態、作業用装置10や外部装置で利用できるようにデータとして送信したり、記憶装置に記憶したりする形態の何れの形態であってもよい。
【0253】
図25は、ユーザから検索開始指示を受け付けた場合に、管理装置20のCPU31によって実行される検索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0254】
検索処理を規定する管理プログラムは、例えば管理装置20のROM32に予め記憶されている。管理装置20のCPU31は、ROM32に記憶される管理プログラムを読み込み、検索処理を実行する。
【0255】
まず、ステップS100において、CPU31は、ユーザから統合データ4の検索条件を受け付けたか否かを判定する。
【0256】
検索条件の内容に制約はなく、例えば検索条件は、検索したい具体的な製品名や製品の識別番号、属性の種類及び属性データの属性値の範囲、特定のユーザが携わった製品の統合データ4を検索するためのユーザ名、特定の期間に統合データDB13に登録された製品の統合データ4を検索するための期間、及び特定の部門や工程が関わった製品の統合データ4を検索するための工程名や部門名等を少なくとも1つ組み合わせて構成される。また、検索条件を満たす製品の各属性データにおける代表属性データだけ、または代表属性データ以外の属性データだけを検索するといった検索条件の指定も可能である。
【0257】
更に、検索条件として複数の検索条件を指定することも可能である。この場合、第1検索条件、第2検索条件、・・・、第N検索条件(Nは正の整数)というように、各々の検索条件に検索順序を表す番号が設定される。
【0258】
検索条件を受け付けていない場合にはステップS100の判定処理を繰り返し実行してユーザによる検索条件の入力を監視する。一方、検索条件を受け付けた場合には、ステップS110に移行する。
【0259】
ステップS110において、CPU31は、ステップS100で受け付けた検索条件を満たす統合データ4を統合データDB13から検索して取得する。
【0260】
検索条件が複数設定されている場合、CPU31は、各々の検索条件を用いて統合データ4を段階的に絞り込む。
【0261】
複数の検索条件による統合データ4の段階的な絞り込みに関して具体的に説明するため、新たに製品を開発しているユーザ(開発ユーザ)が、過去の製品の統合データ4を参考にして製品の開発を進める場面で行う検索例について説明する。
【0262】
図26は、開発途中の製品における統合データ4の一例を示す図である。図26の統合データ4では、製品の形状の初期案であるCADデータVer1が作成され、CADデータVer1に、CADデータVer1に対する構造解析結果である構造解析データVer1と、仮に製品を3Dプリンタで造形した場合に得られる特徴抽出データが重畳されている。
【0263】
これに対して、開発ユーザが開発中の製品を射出成型で製造するか3Dプリンタで製造するかを決定したいと考えた場合に、開発中の製品と類似した過去の製品が射出成型で製造されているのか、それても3Dプリンタで製造されているのかを参考にして決定すればよいことに気づき、製品の形状、構造解析データ、及び特徴抽出データに対してそれぞれ開発中の製品と類似しているとみなすことができる属性値の範囲を指定した検索条件を設定したとする。
【0264】
図27は、この開発ユーザが設定した検索条件の一例を示す図である。図27の検索条件によれば、第1検索条件では、代表属性データによって表される製品の形状の類似度が開発中の製品の形状と60%以上であるようなCADデータを有する統合データ4を検索するための検索条件が設定されている。また、第2検索条件では、応力による最大変位量が±1mm以上であるような構造解析データを有する統合データ4を検索するための検索条件が設定されている。また、第3検索要件では、ぐらつきや反りといった各項目に関して危険度の大きい箇所(危険大の箇所)が0箇所であるような特徴抽出データを有する統合データ4を検索するための検索条件が設定されている。
【0265】
CPU31は、図27に示した検索条件を受け付けた場合、まず、主検索条件である第1検索条件を満たす属性データの属性値を含む統合データ4を統合データDB13から取得する。CPU31は、取得した統合データ4において、第1検索条件を満たす属性値と対応付けられている、第2検索条件で指定された属性データの属性値に対して第2検索条件を満たすか否かを判定し、次に、第1検索条件を満たす属性値と対応付けられている、第3検索条件で指定された属性データの属性値に対して第3検索条件を満たすか否かを判定し、1つの検索条件だけを満たす統合データ4と、2つの検索条件を満たす統合データ4と、3つすべての検索条件を満たす統合データ4に分類する。その上で、CPU31は分類結果を検索結果として出力する。
【0266】
すなわち、CPU31は、まず第1検索条件で製品の属性は別として、形状が開発中の製品に類似した製品の統合データ4だけを統合データDB13から抽出し(粗ふるい)、構造設計データの属性値を用いて絞り込み、特徴抽出データに対する要求によって参考になる統合データ4を特定している。
【0267】
図28は、図27に示した検索条件に対する統合データ4の検索結果の一例を示す図である。図28の例の場合、統合データIDが“05”、“23”、及び“16”の統合データ4が3つすべての検索条件を満たす統合データ4であり、統合データIDが“04”、“03”、及び“11”の統合データ4が2つの検索条件を満たす統合データ4であり、統合データIDが“09”の統合データ4が1つの検索条件を満たす統合データ4である。
【0268】
仮に、CPU31が図27に示した第1検索条件、第2検索条件、及び第3検索条件のAND条件、すなわち、すべての検索条件を満たす統合データ4だけを統合データDB13から取得した場合、統合データIDが“05”、“23”、及び“16”の統合データ4しか出力されないことになる。しかしながら、例えば第2検索条件は満たさなくても第1検索条件及び第3検索条件を満たす統合データ4に、開発ユーザの参考となる情報が含まれるような場合もある。したがって、CPU31は、統合データ4が複数の検索条件のうち第1検索条件を満たせば、第2検索条件以降の検索条件の少なくとも1つの検索条件を満たしていない場合であっても、統合データDB13から取得して出力することが好ましい。
【0269】
一方、CPU31が図27に示した第1検索条件、第2検索条件、及び第3検索条件のOR条件、すなわち、第1検索条件から第3検索条件の何れか1つの検索条件を満たす統合データ4を統合データDB13から取得した場合、例えば製品の形状に関する代表属性データの類似度が60%未満の統合データ4であっても、第2検索条件及び第3検索条件の少なくとも一方を満たせば統合データDB13から取得されることになる。例えば開発ユーザがプリンタの筐体を設計しているのに、参考としてボールペンの形状を表す統合データ4が出力されても参考にならないように、この場合に取得された統合データ4は、製品全体の形状が開発中の製品とは類似していないので、開発者に有益な統合データ4となる可能性は低い。したがって、粗ふるいとしての役割を担う第1検索条件を満たさない統合データ4は、統合データDB13から取得して出力しない方が好ましい。
【0270】
なお、CPU31は、検索条件を段階的に適用していくのではなく、検索対象を段階的に変化させて、目的とする統合データ4を検索するようにしてもよい。例えば複数の解像度のCADデータが含まれる複数の統合データ4の中から、指定した形状と類似するCADデータを検索する場合、最初から最も解像度の高いCADデータを用いて1つ1つ形状の類似度を判定してしまうと、データの密度が高いため、検索時間が長くなる。したがって、CPU31は、まず最も低い解像度のCADデータに対して形状が類似しているか否かの判定を行い、形状が類似していれば、当該製品における更に解像度の高いCADデータに対して形状が類似しているか否かの判定を行う処理を行い、各々の判定で形状が類似していると判定された場合のみ、最後に最も解像度の高いCADデータを用いて形状の類似度を判定することが好ましい。
【0271】
このように検索対象を段階的に変化させることで、最初から最も解像度の高いCADデータを用いて1つ1つ形状の類似度を判定するよりも、検索時間が短縮することになる。
【0272】
なお、検索対象となる統合データ4に、必ずしも検索条件で指定した属性が含まれるとは限られない。例えば図27に示した検索条件に従って統合データ4を検索したところ、第1検索条件と第3検索条件を満たすが、例えばCADデータに対して構造解析を行う前に製品の形状に関して問題が見つかった等の理由によって構造解析が行われず、そのため、応力による変位量が重畳されていない統合データ4も存在する。
【0273】
こうした統合データ4の場合、いくら第1検索条件を満たすといっても第2検索条件が判定不能であるため、第1検索条件のみを満たす図28における統合データIDが“09”の統合データ4と異なり、検索条件を満たす統合データ4として出力しない方が好ましい。
【0274】
しかしながら、同じ統合データ4に含まれる別のバージョンのCADデータに対しては特に問題点が見つからなかったことから構造解析が行われ、応力による変位量が重畳されていることがあり、こうした情報が開発ユーザの参考になることも考えられる。
【0275】
したがって、CPU31は、第1検索条件を満たす製品の統合データ4の属性に、第2検索条件以降の少なくとも1つによって検索対象として指定されている属性種類が重畳されていない場合、検索条件を満たす統合データ4としてではなく参考情報として出力する。
【0276】
図29は、参考情報として出力された統合データ4の検索結果の一例を示す図である。統合データIDが“12”で示される統合データ4では第1検索条件を満たすCADデータに対して構造解析データが重畳されておらず、統合データIDが“29”、及び“08”で示される統合データ4では第1検索条件を満たすCADデータに対して特徴抽出データが重畳されていないため、参考情報として図28に示した検索結果とは区別して出力される。
【0277】
図29において、例えば統合データIDが“12”で示される統合データ4の最終的に採用された別のバージョンのCADデータにおいて、例えば当該別のバージョンのCADデータで表される製品での応力に対する最大変位量が1mm以下である場合、開発ユーザは当該別のバージョンのCADデータを参考にすれば、製品をどのような形状にすれば最大変位量を1mm以下に抑える形状にすることができるのか、その知見を得ることができる。
【0278】
ステップS120において、CPU31は、ステップS110で取得した統合データ4(以降、「取得した統合データ4」という)の検索条件を満たすCADデータ及び各種属性の属性データにおける属性値をどのように変換して出力するのかを規定した出力要求を受け付けたか否かを判定する。
【0279】
出力要求を受け付けていない場合にはステップS120の処理を繰り返し実行して、出力要求の受付状況を監視する。一方、出力要求を受け付けた場合にはステップS130に移行する。なお、CPU31は、検索条件と出力要求を別々に受け付けるのではなく、ステップS100で検索条件と出力要求を一緒に受け付けるようにしてもよい。
【0280】
ステップS130において、CPU31は、取得した統合データ4を出力要求の内容に応じた形式に変換する。
【0281】
出力要求が、例えば取得した統合データ4を参考にして別の製品の開発を行ったり、上流工程で設計されたCADデータに対して各種解析を行うため、統合データ4から該当するCADデータを取得したりというように、ユーザが製品の形状や属性データを確認しながら行う、いわゆる、ユーザによって行われる作業での利用を目的とした統合データ4の出力要求である場合、CPU31は、取得した統合データ4をユーザの作業内容に応じた形式に変換する。
【0282】
具体的には、ユーザの作業内容が製品の概略形状や概略属性がわかれば十分であるような作業内容である場合、高解像度のデータがそのまま出力されてもユーザによってメリットがなく、反対に、高解像度ゆえにデータの出力に時間がかかってしまい、ユーザの作業効率が低下する。したがって、CPU31は、出力用に予め定められた解像度までデータ点を間引いて軽量化したデータを出力してもよい。こうしたCPU31の処理はLOD(Level of Detail)と呼ばれる。
【0283】
また、ユーザの作業内容が製品の輪郭形状がわかれば十分であるような作業内容であって、取得した統合データ4のCADデータがボクセルで構成されている場合、CPU31は、取得した統合データ4のCADデータによって表される製品の形状を、三角形等の形状をしたポリゴンを組み合わせて構成し、ポリゴンで表される領域毎に属性データを重畳したデータを出力してもよい。当然のことながら、ポリゴンで表した製品の形状に基づいて、製品の形状をサーフィスで表すように変換してもよい。また、CPU31は、サーフェスで表せない、解析結果や計測結果の三次元的な数値の分布のようなデータに対してCADデータやサーフェスデータに重畳表示されるようにボリュームレンダリングを行ってもよい。
【0284】
また、CPU31は、取得した統合データ4のCADデータに重畳された属性データをそのまま数値で出力するのではなく、対応する製品の箇所を属性データの属性値の大きさによって色分けして、製品の形状を表すようにしてもよい。この際、色分けして表示する属性の数に制約はなく、例えば複数の属性が指定された場合、製品の同じ箇所に重畳された複数の属性における各々の属性データの属性値を用いて演算を行い、その演算結果によって得られる数値を新たな属性値とみなして、対応する製品の箇所を当該新たな属性値の大きさによって色分けすればよい。複数種類の属性における属性データの属性値から新たな属性値を得るための演算の内容に制約はない。
【0285】
また、ユーザは、検索条件に設定した内容に関して興味を示していると考えられる。例えば図27の検索条件における第2検索条件でユーザは、応力による最大変位量が±1mm以上という条件を設定していることから、最大変位量が±1mm未満の箇所には興味を示さないと考えられる。したがって、CPU31は、最大変位量が±1mm未満となるような、検索条件を満たしていない製品の箇所や属性値に対してクリッピングやフィルタリングを行ってからデータを出力してもよい。
【0286】
反対に、CPU31は、検索条件を満たす製品の箇所や属性値を、そうでない製品の箇所や属性値と区別して出力するようにしてもよい。
【0287】
また、CPU31は、取得した複数の統合データ4を出力する場合、比較しやすいように、属性データの属性値を正規化してからCADデータに重畳して出力するようにしてもよい。
【0288】
CPU31は、ユーザの作業内容と管理装置20が実行すべき変換処理の内容を予め定義している処理テーブルを参照して、検索条件を満たすデータをユーザの作業内容に応じた形式に変換し、変換後のCADデータに変換後の属性データの属性値を対応付けて出力する。
【0289】
一方、出力要求が、ユーザによって行われる作業での利用を目的とした統合データ4の出力要求ではなく、データが入力されると自律的に作業を行う作業用装置10での利用を目的とした統合データ4の出力要求である場合、CPU31は、取得した統合データ4を作業用装置10の作業内容に応じた形式に変換する。
【0290】
例えば製品の寸法や体積等を入力すると、製品の製造に使用される材料の使用量を算出して製品の製造コストの見積もりを行う作業用装置10が設置されている場合に、CPU31はユーザから当該作業用装置10に製造コストの見積もりを行わせる指示を受け付けると、取得した統合データ4のうち、ユーザが指定した統合データ4から計測データと体積を取得して製品の製造コストの見積もりを行う作業用装置10に送信する処理を行う。これにより、製品の製造コストの見積もりを行う作業用装置10をユーザが操作することなく、製品の製造コストが自動で算出されることになる。
【0291】
このように、指定された統合データ4から作業用装置10で用いられるCADデータや特定の属性種類の属性データだけを抽出する処理も、作業用装置10の作業内容に応じてデータ形式を変換するデータ変換の一例である。
【0292】
なお、製品の設計及び製造での工程毎に用いられる製品の属性種類、解像度、及び製品の形状や属性データの表示方法は固定化されている。例えば構造解析を行う工程では、解析対象となるCADデータが必要であり、構造解析に適した解像度の範囲が決められている場合がある。また、製品の設計及び製造の各工程では専門的知識が必要とされることから、1人のユーザが複数の工程を担当するといった状況は発生しづらい。
【0293】
したがって、CPU31は、例えば検索条件を入力したユーザの名前、担当工程、担当製品名、及び所属部署といったユーザの個人情報や分類情報を表すユーザ属性を取得し、検索条件を入力したユーザが、取得した統合データ4の中からどのような属性種類や解像度のデータを必要としているのか、及び属性データに対してどのような変換が必要であるのかをユーザから出力要求を受け付けなくてもユーザの属性から判断して、必要となる属性種類及び属性データの選択や属性値の変換処理を行い、その結果を出力するようにしてもよい。
【0294】
なお、ユーザが必要としている種類の属性データであっても、特定の工程ではすべての属性値は必要なく、予め定めた範囲以内に含まれる属性値しか必要ないという状況も存在する。したがって、CPU31は、ユーザの属性に応じて予め定めた範囲に含まれる属性値だけを出力するようにしてもよい。
【0295】
ユーザの属性と、ユーザが必要とする属性種類、解像度、属性データの属性値の変換内容、及び属性値の範囲との対応関係を規定したユーザテーブルは、例えば不揮発性メモリ34に予め記憶しておけばよい。
【0296】
図25のステップS140において、CPU31は、ステップS130で変換した統合データ4の内容を出力して、図25に示す検索処理を終了する。
【0297】
図30は、図27に示した検索条件に対する統合データ4の検索結果を表した図28の検索結果に対応した出力例を示す図である。また、図31は、図27に示した検索条件に対する統合データ4の参考情報を表した図29の参考情報に対応した出力例を示す図である。図30及び図31は、それぞれ検索結果及び参考情報をUIユニット38に表示した場合の表示例を表している。
【0298】
図30及び図31の表示例では、図27に示した第1検索条件~第3検索条件のうち、いくつの条件を満たしているかを表す一致条件数によって、表示位置のソート及び色分けが行われている。当然のことながら、CPU31は、図32に示すように、検索条件を満たしている属性値と検索条件を満たしていない属性値とを区別して表示してもよい。
【0299】
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0300】
実施の形態では、一例として各処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが図10図23、及び図25に示した各フローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、各処理をそれぞれソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
【0301】
このように、汎用的なプロセッサの一例であるCPU31を、例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0302】
また、各実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのCPU31によって実現されるのではなく、複数のプロセッサによって実現されるものであってもよい。更に、各実施形態におけるプロセッサの動作は、物理的に離れた位置に存在する複数のコンピュータ30に含まれるプロセッサが協働して実現するものであってもよい。
【0303】
上述した実施の形態では、管理プログラムがROM32にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。管理プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば管理プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、またはDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、管理プログラムを、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカードといった可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
【0304】
更に、管理装置20は通信ユニット37を通じて、通信回線2に接続された外部装置から本実施の形態に係る管理プログラムを取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0305】
1 管理システム、2 通信回線、4 統合データ、5 スナップフィット、6 キー溝、7 Dカット面、8 止め輪溝、10 作業用装置、11(11A、11B、11C、11D) CADデータのデータ点、12(12A、12B、12C、12D) 属性のデータ点、13 統合データDB、14 特徴検出条件設定部、15 特徴検出部、16 特徴情報登録部、17 特徴量算出部、18 特徴量登録部、20 管理装置、20A 統合部、20B 検索部、21 インターフェース部、21A 通信部、21B UI部、22 収集ルール設定部、23 収集部、24 編集部、25 重畳ルール設定部、26 重畳部、27 取得部、28 変換部、30 コンピュータ、31 CPU、32 ROM、33 RAM、34 不揮発性メモリ、35 I/O、36 バス、37 通信ユニット、38 UIユニット、39 領域、40 枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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