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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両用空調ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102C
B60H1/00 102L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033307
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133868
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 謙一郎
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0099539(US,A1)
【文献】国際公開第2016/170878(WO,A1)
【文献】特開2010-030408(JP,A)
【文献】特開2017-128328(JP,A)
【文献】特開平04-208627(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)より前記エンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)と、
前記ファイヤーウォールより前記エンジンルーム側に配置され、前記熱交換器を収納する第1ケース(30)と、
前記ファイヤーウォールより前記車室内側に配置され、前記熱交換器により熱交換された空気を前記車室内側の空間に送風する第2ケース(31)と、を備え、
前記ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記ファイヤーウォールに形成された前記貫通穴を通じて互いに接続されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した投影領域(P1)が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の外側の全域を覆うように前記熱交換器が配置されており、
前記ファイヤーウォールには、前記貫通穴に加えて、前記車室内と前記エンジンルームとの間で前記車室内の空気を前記エンジンルーム側に導く空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が形成されており、
前記空気通路用穴部は、全域が前記投影領域の内側となるよう前記熱交換器が配置されている車両用空調ユニット。
【請求項2】
前記貫通穴と前記空気通路用穴部が単一の穴部(53)として前記ファイヤーウォールに形成されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した前記投影領域(P1)が前記ファイヤーウォールの前記穴部の外側の全域を覆うように前記熱交換器が配置されている請求項1に記載の車両用空調ユニット。
【請求項3】
車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)より前記エンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)と、
前記ファイヤーウォールより前記エンジンルーム側に配置され、前記熱交換器を収納する第1ケース(30)と、
前記ファイヤーウォールより前記車室内側に配置され、前記熱交換器により熱交換された空気を前記車室内側の空間に送風する第2ケース(31)と、を備え、
前記ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記ファイヤーウォールに形成された前記貫通穴を通じて互いに接続されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、
前記ファイヤーウォールには、前記車室内と前記エンジンルームとの間で前記空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が、前記貫通穴とは別々に形成されており、
前記投影領域の一部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の内側となるとともに、前記投影領域の全ての角部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の外側となるように前記熱交換器が配置されており、
前記空気通路用穴部は、全域が前記投影領域の外側となるよう前記熱交換器が配置されている車両用空調ユニット。
【請求項4】
車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)より前記エンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)と、
前記ファイヤーウォールより前記エンジンルーム側に配置され、前記熱交換器を収納する第1ケース(30)と、
前記ファイヤーウォールより前記車室内側に配置され、前記熱交換器により熱交換された空気を前記車室内側の空間に送風する第2ケース(31)と、を備え、
前記ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記ファイヤーウォールに形成された前記貫通穴を通じて互いに接続されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、
前記ファイヤーウォールには、前記車室内と前記エンジンルームとの間で前記空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が、前記貫通穴とは別々に形成されており、
前記投影領域の一部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の内側となるとともに、前記投影領域の全ての角部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の外側および前記空気通路用穴部の外側となるように前記熱交換器が配置されている車両用空調ユニット。
【請求項5】
車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)より前記エンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)と、
前記ファイヤーウォールより前記エンジンルーム側に配置され、前記熱交換器を収納する第1ケース(30)と、
前記ファイヤーウォールより前記車室内側に配置され、前記熱交換器により熱交換された空気を前記車室内側の空間に送風する第2ケース(31)と、を備え、
前記ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記ファイヤーウォールに形成された前記貫通穴を通じて互いに接続されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、
前記ファイヤーウォールには、前記貫通穴に加えて、前記車室内と前記エンジンルームとの間で前記空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が形成されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記ファイヤーウォールに形成された前記貫通穴を通じて互いに接続されており、
前記車両の前方から後方に前記熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、
前記投影領域の一部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の内側および前記空気通路用穴部の内側となるとともに、前記投影領域の全ての角部が前記ファイヤーウォールの前記貫通穴の外側および前記空気通路用穴部の外側となるように前記熱交換器が配置されている車両用空調ユニット。
【請求項6】
前記熱交換器は、
冷媒が通過する複数のチューブを有するコア部(11)と、
前記コア部の両端に配置され前記チューブと連通する一対のヘッダタンク(12、13)と、を有し、
前記投影領域は、前記車両の前方から後方に前記コア部を投影したコア部投影領域(P2)である請求項1ないしのいずれか1つに記載の車両用空調ユニット。
【請求項7】
前記熱交換器は、該熱交換器の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりも前記ファイヤーウォールの近くになるよう傾斜して配置されており、
前記投影領域における前記ファイヤーウォールの前記貫通穴より前記車両上方向の重なり面積が、前記投影領域における前記ファイヤーウォールの前記貫通穴より前記車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている請求項1ないしのいずれか1つに記載の車両用空調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された空調装置がある。この空調装置は、冷凍サイクルを構成する部品であるコンデンサとエバポレータを有する冷凍サイクルモジュールユニットがエンジンルームに配置されている。また、冷凍サイクルを構成する部品であるブロワとヒータコアを有する配風ユニットが車室内に配置されている。また、この空調装置を搭載した車両には、エンジンルームと車室内を区画するファイヤーウォールが設けられている。そして、ファイヤーウォールの貫通穴を通じて冷凍サイクルモジュールユニットと配風ユニットが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-126800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装置が搭載された車両は、車両が車両前方の物体と衝突すると、エンジンルームに配置された冷凍サイクルモジュールユニットがファイヤーウォールに衝突してファイヤーウォールが破損する可能性がある。この場合、この破損した箇所からエンジンルーム内の各種部品が車室内に入り込み乗員に接触する可能性が高くなるといった問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みたもので、車両衝突時における乗員の安全性を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース(30)を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)がファイヤーウォールの貫通穴の外側の全域を覆うように熱交換器が配置されている。また、ファイヤーウォールには、貫通穴に加えて、車室内とエンジンルームとの間で車室内の空気をエンジンルーム側に導く空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が形成されている。そして、空気通路用穴部は、全域が投影領域の内側となるよう熱交換器が配置されている。
【0007】
このような構成によれば、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)がファイヤーウォールの貫通穴の外側の全域を覆うように熱交換器が配置されている。このため、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの貫通穴の周縁部の全域で受け止められる。したがって、ファイヤーウォールの破損が抑制され、車両衝突時における乗員の安全性を確保することができる。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項に記載の発明は、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース(30)を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、投影領域の一部が前記ファイヤーウォールの貫通穴の内側となるとともに、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の外側となるように熱交換器が配置されている。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明は、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース(30)を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が、貫通穴とは別々に形成されており、投影領域の一部がファイヤーウォールの貫通穴の内側となるとともに、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の外側となるように熱交換器が配置されており、空気通路用穴部は、全域が投影領域の外側となるよう熱交換器が配置されている。
また、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明は、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース(30)を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が、貫通穴とは別々に形成されており、投影領域の一部がファイヤーウォールの貫通穴の内側となるとともに、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の外側および空気通路用穴部の外側となるように熱交換器が配置されている。
さらに、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明は、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器(10)を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース(30)を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、ファイヤーウォールには、貫通穴に加えて、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されており、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、投影領域の一部がファイヤーウォールの貫通穴の内側および空気通路用穴部の内側となるとともに、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の外側および空気通路用穴部の外側となるように熱交換器が配置されている。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
図2】車両の前方から貫通穴が形成されたファイヤーウォールを見た図である。
図3】車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
図4】蒸発器に応力が加えられたときの蒸発器とファイヤーウォールの様子を模式的に示した図である。
図5】投影領域がファイヤーウォールの貫通穴の外側の全域を覆うように構成されていない比較例を示した図である。
図6】第2実施形態における車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
図7】第2実施形態の変形例について説明するための図である。
図8】第3実施形態における車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
図9】車両の前方から後方に蒸発器のコア部を投影したコア部投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の内側となるように蒸発器が配置された比較例を示した図である。
図10】第3実施形態の変形例について説明するための図である。
図11】第4実施形態に係る車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
図12】第4実施形態における車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴および空気通路用穴部を重ねて示した図である。
図13】第5実施形態に係る車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
図14】第5実施形態における車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴および空気通路用穴部を重ねて示した図である。
図15】第6実施形態における車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された穴部を重ねて示した図である。
図16】第7実施形態の車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図と、車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
図17】第8実施形態の車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図と、車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
図18】第9実施形態に係る車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
図19】第10実施形態に係る車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
図20】第11実施形態に係る車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る車両用空調ユニットについて図1図5を用いて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図である。図1中の各矢印DR1、DR2は、車両用空調ユニットが車両に搭載された車両搭載状態での向きを示す。すなわち、図1の矢印DR1は車両上下方向を示しており、矢印DR2は車両前後方向を示している。
【0014】
図1では、車両用空調ユニット全体のうちの主要部分が図示されている。本車両用空調ユニットは、乗用車等の車両に搭載されている。車両には、エンジンルームと車室内の空間を区画するファイヤーウォール5が設けられている。本車両用空調ユニットは、蒸発器10、空調ケース3および送風ファン20を備えている。
【0015】
蒸発器10は、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器である。蒸発器10は、いずれも不図示のコンプレッサ、コンデンサおよび膨張弁とともに、冷媒を循環させる周知の冷凍サイクル装置を構成している。蒸発器10は、ファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置され空気と冷媒の熱交換を行うことにより空気を冷却する。車両の前方から蒸発器10を見た形状は矩形形状を成している。蒸発器10は、該蒸発器10を通過した空気が水平方向を向くように空調ケース3の底面に対して直立するよう配置されている。
【0016】
空調ケース3は、車両用空調ユニットの外殻を成す樹脂製の部材であり、車両の車室内の空間に送風される空気が流れる空気通路を形成する。空調ケース3は、蒸発器10を収納する第1ケース30と、蒸発器10により冷却された空気を車室内に送風する第2ケース31と、第1ケース30と第2ケース31を接続する接続部32と、を有している。第1ケース30はファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置されている。
【0017】
送風ファン20は、第2ケース31に収納され、空調ケース3内に空気流れを生じさせる。第2ケース31および送風ファン20は、ファイヤーウォール5より車室内側に配置され、蒸発器10により冷却された空気を車室内に向けて送風する。
【0018】
送風ファン20が作動を開始すると、車室内または車室外の空気が第1ケース30に導入される。第1ケース30に導入された空気は蒸発器10で冷却された後、接続部32および第2ケース31を通って車両の車室内の空間に送風される。
【0019】
ファイヤーウォール5には、表裏を貫く貫通穴51が形成されている。接続部32は貫通穴51に配置されている。接続部32は、ファイヤーウォール5の貫通穴51に配置されている。第1ケース30は、ファイヤーウォール5より車両のエンジンルーム側から接続部32に接続され、第2ケース31は、ファイヤーウォール5より車室内側の空間側から接続部32に接続されている。
【0020】
第1ケース30、接続部32および第2ケース31は、それぞれ筒状を成している。また、第1ケース30の通路面積は接続部32の通路面積よりも大きく、第2ケース31の通路面積は接続部32の通路面積よりも大きくなっている。
【0021】
また、車両の前方から後方に第1ケース30を投影した投影領域は、車両の前方から後方に第1ケース30を投影した投影領域の内側となるよう第1ケース30および第2ケース31が配置されている。
【0022】
図2は、車両の前方から見たファイヤーウォール5の様子を表している。ファイヤーウォール5に1つの貫通穴51が形成されている。貫通穴51は、矩形形状を成しており、貫通穴51の4隅は丸みを帯びている。
【0023】
図3は、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1とファイヤーウォール5に形成された貫通穴51を重ねて示した図である。なお、図中、投影領域P1は斜線ハッチングで示してある。
【0024】
図に示すように、投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うようになっている。すなわち、投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように蒸発器10が配置されている。
【0025】
これにより、図4中の矢印Pに示す方向の応力が蒸発器10に加えられた際に、ファイヤーウォール5の貫通穴51の外縁部で蒸発器10が受け止められる。したがって、ファイヤーウォール5の破損が抑制される。
【0026】
図5は、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側を覆うように構成されていない比較例を示したものである。
【0027】
図に示すように、この比較例は、投影領域P1の1つの角部がファイヤーウォール5の貫通穴51に位置しており、投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように構成されていない。
【0028】
この場合、車両が車両前方の物体と衝突した際に、ファイヤーウォール5で蒸発器10を十分に受け止めることができないため、ファイヤーウォール5が破損しやすい。そして、この破損した箇所からエンジンルーム内の各種部品が車室内に入り込み乗員に接触する可能性が高くなる。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態の車両用空調ユニットは、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う蒸発器10を備えている。また、ファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケース30を備えている。また、ファイヤーウォール5より車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース31を備えている。また、ファイヤーウォール5には表裏を貫通する貫通穴51が形成されており、第1ケース30および第2ケース31は、ファイヤーウォール5に形成された貫通穴51を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように蒸発器10が配置されている。
【0030】
このような構成によれば、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように蒸発器10が配置されている。このため、車両が車両前方の物体と衝突した際に、蒸発器10がファイヤーウォール5の貫通穴51の周縁部の全域で受け止められる。したがって、ファイヤーウォール5の破損が抑制され、車両衝突時における乗員の安全性を確保することができる。
【0031】
また、車両の前方から後方に第1ケース30を投影した投影領域は、車両の前方から後方に第1ケース30を投影した投影領域の内側となるよう第1ケース30および第2ケース31が配置されている。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る車両用空調ユニットについて図6図7を用いて説明する。上記第1実施形態の車両用空調ユニットは、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように蒸発器10が配置されている。これに対し、本実施形態の車両用空調ユニットは、図6に示すように、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が矩形形状を成している。さらに、この投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0033】
ファイヤーウォール5に1つの貫通穴51が形成されている。この貫通穴51は、矩形形状を成しており、貫通穴51の4隅は丸みを帯びている。
【0034】
そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が貫通穴51の対向する上下の2辺と重複し、貫通穴51の対向する左右の2辺と重複しないように蒸発器10が配置されている。
【0035】
すなわち、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0036】
これにより、車両が車両前方の物体と衝突し、蒸発器10に車両前方から後方側への応力が加えられた際に、ファイヤーウォール5の貫通穴51の外縁部で蒸発器10の全ての角部が受け止められる。したがって、ファイヤーウォール5の破損が抑制される。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態の車両用空調ユニットは、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う蒸発器10を備えている。また、ファイヤーウォール5よりエンジンルーム側に配置され、蒸発器10を収納する第1ケース30を備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケース(31)を備えている。また、ファイヤーウォール5には表裏を貫通する貫通穴51が形成されており、第1ケース30および第2ケース31は、ファイヤーウォール5に形成された貫通穴51を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1は矩形形状を成し、投影領域の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0038】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、蒸発器10の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の周縁部で受け止められる。したがって、ファイヤーウォール5の破損が抑制され、車両衝突時における乗員の安全性を確保することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が貫通穴51の対向する上下の2辺と重複し、貫通穴51の対向する左右の2辺と重複しないように蒸発器10を配置するようにした。
【0040】
これに対し、図7に示すように、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が貫通穴51の対向する左右の2辺の一方と重複し、貫通穴51の対向する左右の2辺の他方と重複しないように蒸発器10を配置するようにしてもよい。
【0041】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る車両用空調ユニットについて図8図10を用いて説明する。上記第2実施形態では、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が矩形形状を成しており、この投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。これに対し、本実施形態では、車両の前方から後方に蒸発器10のコア部11を投影したコア部投影領域P2が矩形形状を成しており、このコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0042】
蒸発器10は、冷媒が通過する複数のチューブを有するコア部11と、コア部11の両端に配置されチューブと連通する一対のヘッダタンク部12、13と、を有している。コア部11および一対のヘッダタンク部12、13は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属材により構成されている。
【0043】
コア部11は、ヘッダタンク部12、13にそれぞれ連通し扁平断面形状を有する複数本の冷媒チューブと、その冷媒チューブ同士の間に設けられ波状に成形された複数のコルゲートフィンとから構成されている。そして、コア部11は、冷媒チューブとコルゲートフィンとが一方向に交互に積層された構造を有している。コア部11の強度は、ヘッダタンク部12、13よりも低くなっている。
【0044】
ヘッダタンク部12は、コア部11の上下方向上側に配置され、ヘッダタンク部13は、コア部11の上下方向下側に配置されている。
【0045】
そして、車両の前方から後方に蒸発器10のコア部11を投影したコア部投影領域P2が矩形形状を成しており、このコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0046】
これにより、車両が車両前方の物体と衝突し、蒸発器10に車両前方から後方側への応力が加えられた際に、ファイヤーウォール5の貫通穴51の外縁部で蒸発器10の4つの角部が受け止められる。したがって、ファイヤーウォール5の破損が抑制される。
【0047】
図9に、車両の前方から後方に蒸発器10のコア部11を投影したコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の内側となるように蒸発器10が配置された例を示す。
【0048】
この例では、車両の前方から後方にヘッダタンク部12を投影した領域がファイヤーウォール5の貫通穴51の上下方向上側の辺と重複する。さらに、車両の前方から後方にヘッダタンク部13を投影した領域がファイヤーウォール5の貫通穴51の上下方向下側の辺と重複する。
【0049】
このような構成では、車両が車両前方の物体と衝突し、蒸発器10に車両前方から後方側への応力が加えられた際に、ヘッダタンク部12がファイヤーウォール5の貫通穴51の上下方向上側の辺と接触する。さらに、ヘッダタンク部13がファイヤーウォール5の貫通穴51の上下方向下側の辺と接触する。このため、ファイヤーウォール5の貫通穴51の上下の辺が破損しやすい。そして、この破損した箇所からエンジンルーム内の各種部品が車室内に入り込み乗員に接触する可能性が高くなる。
【0050】
したがって、図8のように、車両の前方から後方に蒸発器10のコア部11を投影したコア部投影領域P2が矩形形状を成し、このコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10を配置するのが好ましい。
【0051】
これにより、ヘッダタンク部12、13がファイヤーウォール5に接触してファイヤーウォール5を破損するのを防止することができる。
【0052】
本実施形態では、上記第2実施形態と共通の構成から奏される同様の効果を上記第2実施形態と同様に得ることができる。
【0053】
なお、第1実施形態のように、車両の前方から後方に蒸発器10のコア部11を投影したコア部投影領域P2がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側の全域を覆うように蒸発器10を配置することもできる。
【0054】
また、本実施形態では、コア部11の上下にヘッダタンク部12、13を配置するよう構成し、車両の前方から後方にコア部11を投影したコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるように蒸発器10を配置した。
【0055】
これに対し、図10に示すように、コア部11の左右にヘッダタンク部12、13を配置するよう構成し、車両の前方から後方にコア部11を投影したコア部投影領域P2の全ての角部がファイヤーウォール5の貫通穴51の外側となるようにしてもよい。
【0056】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る車両用空調ユニットについて図11図12を用いて説明する。図11に示すように、本実施形態の車両用空調ユニットを搭載した車両のファイヤーウォール5には、貫通穴51に加えて、車室内の空気をエンジンルーム側に導く空気通路33を通すための空気通路用穴部52が形成されている。すなわち、ファイヤーウォール5には、貫通穴51と空気通路用穴部52が別々に形成されている。
【0057】
空気通路33は、第1ケース30と一体に形成されており、車室内の空気をエンジンルーム側に導く空気通路を形成する。空気通路用穴部52は、ファイヤーウォール5の貫通穴51より上下方向下側に形成されている。
【0058】
そして、図12に示すように、ファイヤーウォール5に形成された空気通路用穴部52は、全域が車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の外側となるよう蒸発器10が配置されている。すなわち、空気通路用穴部52は、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1と重複しないように配置されている。
【0059】
このような構成により、車両が車両前方の物体と衝突した際に、蒸発器10がファイヤーウォール5の空気通路用穴部52の周辺に負荷をかけてファイヤーウォール5が損傷するのを防止することができる。
【0060】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る車両用空調ユニットについて図13図14を用いて説明する。上記第4実施形態では、ファイヤーウォール5に形成された空気通路用穴部52が、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の外側となるよう蒸発器10が配置されている。これに対し、本実施形態では、図13図14に示すように、ファイヤーウォール5に形成された空気通路用穴部52は、全域が車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の内側となるよう蒸発器10が配置されている。
【0061】
本実施形態では、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1が、貫通穴51および空気通路用穴部52と重複するよう蒸発器10が配置されている。
【0062】
上記したように、本実施形態では、図13図14に示すように、ファイヤーウォール5に形成された貫通穴51および空気通路用穴部52の全域が、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の内側となるよう蒸発器10が配置されている。
【0063】
このような構成により、車両が車両前方の物体と衝突した際に、蒸発器10がファイヤーウォール5の空気通路用穴部52の周辺に負荷をかけてファイヤーウォール5が損傷するのを防止することができる。
【0064】
なお、貫通穴51と空気通路用穴部52を単一の穴部53として形成し、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の穴部53の外側となるよう蒸発器10を配置することもできる。
【0065】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る車両用空調ユニットについて図15を用いて説明する。本実施形態では、図に示すように、貫通穴51と空気通路用穴部52が単一の穴部53としてファイヤーウォール5に形成されている。また、穴部53の4隅は丸みを帯びている。
【0066】
そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1は矩形形状を成しており、投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の穴部53の外側となるように蒸発器10が配置されている。
【0067】
このように、貫通穴51と空気通路用穴部52を単一の穴部53として形成し、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1の全ての角部がファイヤーウォール5の穴部53の外側となるように蒸発器10が配置することもできる。
【0068】
このような構成により、車両が車両前方の物体と衝突した際に、蒸発器10がファイヤーウォール5の穴部53の周辺に負荷をかけてファイヤーウォール5が損傷するのを防止することができる。
【0069】
なお、貫通穴51と空気通路用穴部52を単一の穴部53として形成し、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1がファイヤーウォール5の穴部53の外側の全域を覆うように蒸発器10を配置することもできる。
【0070】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る車両用空調ユニットについて図16を用いて説明する。図16(a)は、車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図であり、図16(b)は、車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域P1とファイヤーウォール5に形成された貫通穴51を重ねて示した図である。
【0071】
本実施形態の車両用空調ユニットは、蒸発器10が、該蒸発器10を通過した空気が水平方向よりも下方を向くように空調ケース3の底面に対して傾斜して配置されている。
【0072】
すなわち、蒸発器10は、該蒸発器10の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりもファイヤーウォール5の近くになるよう傾斜して配置されている。
【0073】
そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両上方向の重なり面積が、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている。
【0074】
つまり、投影領域P1のうち、ファイヤーウォール5に近い蒸発器10の端部側の重なり面積が、ファイヤーウォール5から遠い蒸発器10の端部側の重なり面積よりも大きくなっている。
【0075】
例えば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、ファイヤーウォール5に近い蒸発器10の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりも先にファイヤーウォール5に衝突し、貫通穴51より車両上方向のファイヤーウォール5に大きな衝撃が加わる。その後、蒸発器10の車両下方向の端部がファイヤーウォール5に衝突する。この際、ファイヤーウォール5の貫通穴51の外縁部で蒸発器10が受け止められる。
【0076】
本実施形態では、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両上方向の重なり面積が、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている。したがって、貫通穴51より車両上方向のファイヤーウォール5の強度を確保でき、ファイヤーウォール5の耐衝撃性を確保することができる。
【0077】
(第8実施形態)
第8実施形態に係る車両用空調ユニットについて図17を用いて説明する。図17(a)は、車両用空調ユニットの主要な構成を示す断面図であり、図17(b)は、車両の前方から後方に蒸発器を投影した投影領域とファイヤーウォールに形成された貫通穴を重ねて示した図である。
【0078】
本実施形態の車両用空調ユニットは、蒸発器10が、該蒸発器10を通過した空気が水平方向よりも上方を向くように空調ケース3の底面に対して傾斜して配置されている。
【0079】
すなわち、蒸発器10は、該蒸発器10の車両下方向の端部が車両上方向の端部よりもファイヤーウォール5の近くになるよう傾斜して配置されている。
【0080】
そして、車両の前方から後方に蒸発器10を投影した投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両上方向の重なり面積が、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている。
【0081】
このように、蒸発器10は、該蒸発器10の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりもファイヤーウォール5の近くになるよう傾斜して配置することができる。そして、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両上方向の重なり面積が、投影領域P1におけるファイヤーウォール5の貫通穴51より車両下方向の重なり面積よりも大きくなるよう構成することもできる。
【0082】
(第9実施形態)
第9実施形態に係る車両用空調ユニットについて図18を用いて説明する。上記各実施形態では、第2ケース31に送風ファン20を配置し、第1ケース30から第2ケース31側に空気流れを生じさせる例を示した。これに対し、図17に示すように、送風ファン20を第1ケース30に配置し、第2ケース31から第1ケース30側に空気流れを生じさせるように構成することもできる。
【0083】
第1ケース30には、送風ファン20および蒸発器10が配置されている。蒸発器10は、送風ファン20と第2ケース31との間に配置されている。また、第1ケース30には、車両のエンジンルーム側に配置された第1ケース30から車室内の空間に空気を送風する空気通路34が形成されている。
【0084】
送風ファン20が作動を開始すると、車室内の空気が第2ケース31に導入される。第2ケース31に導入された空気は接続部を通って第1ケースに導入され、蒸発器10によって冷却された後、空気通路34を通って車室内に送風される。
【0085】
(第10実施形態)
第10実施形態に係る車両用空調ユニットについて図19を用いて説明する。本実施形態では、第1ケース30に送風ファン20および蒸発器10が配置されている。また、送風ファン20は、蒸発器10と第2ケース31の間に配置されている。
【0086】
このように、送風ファン20と蒸発器10を車両のエンジンルーム側に配置された第1ケース30に配置し、送風ファン20を蒸発器10と第2ケース31の間に配置することもできる。
【0087】
(第11実施形態)
第11実施形態に係る車両用空調ユニットについて図20を用いて説明する。本実施形態では、第1ケース30に送風ファン20および蒸発器10が配置されている。また、蒸発器10は、送風ファン20と第2ケース31の間に配置されている。
【0088】
このように、送風ファン20と蒸発器10を車両のエンジンルーム側に配置された第1ケース30に配置し、蒸発器10を送風ファン20と第2ケース31の間に配置することもできる。
【0089】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、第1ケース30および第2ケース31が接続部32を介して接続されているが、第1ケース30および第2ケース31を直接接続するようにしてもよい。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0091】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、車両用空調ユニットは、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケースを備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケースを備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域がファイヤーウォールの貫通穴の外側の全域を覆うように熱交換器が配置されている。
【0092】
また、第2の観点によれば、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路を形成する空気通路用穴部が形成されている。そして、空気通路用穴部は、全域が投影領域の外側となるよう熱交換器が配置されている。
【0093】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの空気通路用穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0094】
また、第3の観点によれば、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路を形成する空気通路用穴部が形成されている。そして、空気通路用穴部は、全域が投影領域の内側となるよう熱交換器が配置されている。
【0095】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの空気通路用穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0096】
また、第4の観点によれば、貫通穴と空気通路用穴部が単一の穴部としてファイヤーウォールに形成されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域がファイヤーウォールの穴部の外側の全域を覆うように熱交換器が配置されている。
【0097】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0098】
また、第5の観点によれば、車両のエンジンルームと車室内側の空間を区画するファイヤーウォール(5)よりエンジンルーム側に配置され、空気と冷媒の熱交換を行う熱交換器を備えている。また、ファイヤーウォールよりエンジンルーム側に配置され、熱交換器を収納する第1ケースを備えている。また、ファイヤーウォールより車室内側に配置され、熱交換器により熱交換された空気を車室内側の空間に送風する第2ケースを備えている。また、ファイヤーウォールには表裏を貫通する貫通穴(51)が形成されており、第1ケースおよび第2ケースは、ファイヤーウォールに形成された貫通穴を通じて互いに接続されている。そして、車両の前方から後方に熱交換器を投影した投影領域(P1)は矩形形状を成し、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴の外側となるように熱交換器が配置されている。
【0099】
また、第6の観点によれば、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路(33)を形成する空気通路用穴部(52)が形成されている。そして、空気通路用穴部は、全域が投影領域の外側となるよう熱交換器が配置されている。
【0100】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの空気通路用穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0101】
また、第7の観点によれば、ファイヤーウォールには、車室内とエンジンルームとの間で空気が流れる空気通路を形成する空気通路用穴部が形成されている。そして、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの貫通穴および空気通路用穴部の外側となるように熱交換器が配置されている。
【0102】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの空気通路用穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0103】
また、第8の観点によれば、貫通穴と空気通路用穴部が単一の穴部としてファイヤーウォールに形成されている。そして、投影領域の全ての角部がファイヤーウォールの穴部の外側となるように熱交換器が配置されている。
【0104】
このような構成によれば、車両が車両前方の物体と衝突した際に、熱交換器がファイヤーウォールの穴部の周辺に負荷をかけてファイヤーウォールが損傷するのを防止することができる。
【0105】
また、第9の観点によれば、熱交換器は、冷媒が通過する複数のチューブを有するコア部と、コア部の両端に配置されチューブと連通する一対のヘッダタンクと、を有している。そして、投影領域は、車両の前方から後方にコア部を投影したコア部投影領域である。
【0106】
このように、車両の前方から後方にコア部を投影したコア部投影領域を投影領域とすることができる。
【0107】
また、第10の観点によれば、熱交換器は、該熱交換器の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりもファイヤーウォールの近くになるよう傾斜して配置されている。そして、投影領域におけるファイヤーウォールの貫通穴より車両上方向の重なり面積が、投影領域におけるファイヤーウォールの貫通穴より車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている。
【0108】
この場合、車両が車両前方の物体と衝突した際に、ファイヤーウォール5に近い蒸発器10の車両上方向の端部が車両下方向の端部よりも先にファイヤーウォール5に衝突し、貫通穴51より車両上方向のファイヤーウォール5に大きな衝撃が加わる。その後、蒸発器10の車両下方向の端部がファイヤーウォール5に衝突する。この際、ファイヤーウォール5の貫通穴51の外縁部で蒸発器10が受け止められる。
【0109】
上記した構成では、投影領域におけるファイヤーウォールの貫通穴より車両上方向の重なり面積が、投影領域におけるファイヤーウォールの貫通穴より車両下方向の重なり面積よりも大きくなっている。したがって、したがって、貫通穴より車両上方向のファイヤーウォールの強度を確保でき、ファイヤーウォールの耐衝撃性を確保することができる。
【符号の説明】
【0110】
3 空調ケース
5 ファイヤーウォール
10 蒸発器
11 コア部
12、13 ヘッダタンク部
20 送風ファン
30 第1ケース
31 第2ケース
51 貫通穴
52 空気通路用穴部
53 穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20