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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/48 20060101AFI20240702BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240702BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240702BHJP
   B41J 11/42 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
B41J11/48
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/14
B41J11/42
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020052680
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151725
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真豪
(72)【発明者】
【氏名】若草 敬介
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶充
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116808(JP,A)
【文献】特開2000-015881(JP,A)
【文献】特開2009-012922(JP,A)
【文献】特開2016-222447(JP,A)
【文献】特開2017-209811(JP,A)
【文献】特開2003-237987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
B41J 11/00-13/32
B65H 1/00-3/68
B65H 7/00-7/20
B65H 29/54-29/70
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の記録媒体に対して記録を行う記録部と、
上方から重ねられた第1の記録媒体と第2の記録媒体とを含む複数の前記記録媒体を重ねた状態で支持する支持面を有し、前記複数の記録媒体を収容する収容部と、
前記収容部から前記記録部へ前記記録媒体が搬送される搬送経路と、
前記収容部に収容された前記記録媒体に上方から接触するように軸支され、前記複数の記録媒体を前記記録媒体の搬送方向に順次給送する給送ローラと、
前記収容部と前記記録部との間で前記搬送経路の少なくとも一部を構成し、前記記録媒体の表裏を反転させながら前記記録媒体を搬送する反転経路と、
前記搬送方向の前記支持面の下流端と前記給送ローラとの間で且つ前記支持面に対する上方に配置され、前記給送ローラにより給送される前記記録媒体を検知する収容部側検知部と、
制御部と、を備え、
前記収容部側検知部は、前記収容部に収容された前記記録媒体との間の距離を検知する測距センサを含み、
前記制御部は、
前記給送ローラにより給送された前記第1の記録媒体の後端部を前記収容部側検知部が検知すると、前記第2の前記記録媒体を、前端部のシート面が前記第1の記録媒体の後端部のシート面と重ね合わさって給送されるように前記給送ローラを制御する重ね合わせ処理を実行し
前記重ね合わせ処理では、前記給送ローラによる前記第1の記録媒体の給送を開始した後、前記収容部側検知部により検知される距離が基準値を超えた場合に、前記第2の記録媒体を給送するように前記給送ローラを制御する、画像記録装置。
【請求項2】
シート状の記録媒体に対して記録を行う記録部と、
上方から重ねられた第1の記録媒体と第2の記録媒体とを含む複数の前記記録媒体を重ねた状態で支持する支持面を有し、前記複数の記録媒体を収容する収容部と、
前記収容部から前記記録部へ前記記録媒体が搬送される搬送経路と、
前記収容部に収容された前記記録媒体に上方から接触するように軸支され、前記複数の記録媒体を前記記録媒体の搬送方向に順次給送する給送ローラと、
前記収容部と前記記録部との間で前記搬送経路の少なくとも一部を構成し、前記記録媒体の表裏を反転させながら前記記録媒体を搬送する反転経路と、
前記搬送方向の前記支持面の下流端と前記給送ローラとの間で且つ前記支持面に対する上方に配置され、前記給送ローラにより給送される前記記録媒体を検知する収容部側検知部と、
制御部と、
前記収容部から給送された前記記録媒体を前記搬送経路に沿って搬送する搬送ローラと、
前記搬送経路における前記収容部と前記搬送ローラとの間に配置され、搬送される前記記録媒体の先端部を検知する先端検知部と、を備え
前記制御部は、前記給送ローラにより給送された前記第1の記録媒体の後端部を前記収容部側検知部が検知すると、前記第2の前記記録媒体を、前端部のシート面が前記第1の記録媒体の後端部のシート面と重ね合わさって給送されるように前記給送ローラを制御する重ね合わせ処理を実行する、画像記録装置。
【請求項3】
前記搬送方向の前記収容部と前記反転経路との間に配置され、前記収容部の前記搬送方向の下流端から前記反転経路に向けて上がり勾配に傾斜する傾斜面を有し、搬送される前記記録媒体を案内する傾斜部を更に備え、
前記先端検知部は、前記搬送方向の前記収容部と前記反転経路との間に配置され、前記傾斜部を通過する前記記録媒体を検知する、請求項に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記給送ローラの回転軸線方向から見た前記反転経路の外周側の少なくとも一部を区画する外側ガイド部材と、
前記給送ローラの回転軸線方向から見た前記反転経路の内周側の少なくとも一部を区画し、前記外側ガイド部材よりも前記給送ローラに近接する位置で前記外側ガイド部材と対向して配置された内側ガイド部材と、を更に備え、
前記先端検知部と前記内側ガイド部材との間の最短距離が、前記先端検知部と前記外側ガイド部材との間の最短距離よりも大きい、請求項2又は3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記重ね合わせ処理において、
前記先端検知部が前記第2の記録媒体の前端部を検知すると、前記搬送ローラの前記搬送方向上流側の所定の待機位置に前記第2の記録媒体の前端部が位置する状態で前記第2の記録媒体を待機させる、待機処理と、
前記記録部により記録される前記第1の記録媒体の後端部の余白の大きさに合わせて前記第2の記録媒体の前端部のシート面を前記第1の記録媒体の後端部のシート面と重ね合わせるように前記第2の記録媒体の搬送を再開させる、再搬送処理と、を実行する、請求項2~4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記収容部側検知部は、フォトインタラプタを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記収容部側検知部は、超音波センサを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記給送ローラと前記収容部側検知部とを一体的に支持する支持部を更に備える、請求項1~のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記給送ローラは、前記給送ローラの回転軸線に垂直な平面内で前記支持部と共に揺動可能に軸支され、
前記収容部側検知部は、前記支持面に対する垂直方向の姿勢が前記給送ローラの揺動中に保持されるように前記支持部に支持されている、請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記支持面に対する垂直方向において、前記給送ローラ、前記収容部側検知部、及び前記反転経路の各々の少なくとも一部が、前記支持面と重なるように配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関し、特に重ね合わせ搬送を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置として、複数のシート状の記録媒体を搬送して画像記録する場合、先行する記録媒体の後端部に、後続の記録媒体の前端部を重ね合わせることで記録媒体を搬送する重ね合わせ搬送を行うものが知られている。
【0003】
特許文献1には、記録媒体の搬送経路内に、レバーを設けると共に、レバーよりも搬送方向の上流側に検知センサを設け、検知センサで検知した先行する記録媒体の後端部をレバーで下方に押圧することで、当該後端部を後続の記録媒体の前端部と重ね合わせる構成が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、搬送経路の下側ガイド面を構成する一部分を、前記部分の搬送方向の下流側よりも高位に配置し、先行する記録媒体よりも後続の記録媒体を高位で搬送することで記録媒体を重ね合わせる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-209811号公報
【文献】特開2017-177619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された構成では、いずれも重ね合わせ搬送を行う機構が複雑となる。また、搬送経路が大型化し、結果として画像記録装置も大型化する。
【0007】
そこで本発明は、記録媒体を重ね合わせ搬送する画像記録装置において、画像記録装置の大型化を防止可能にすると共に、重ね合わせ搬送を行う機構の複雑化を抑制可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像記録装置は、シート状の記録媒体に対して記録を行う記録部と、上方から重ねられた第1の記録媒体と第2の記録媒体とを含む複数の前記記録媒体を重ねた状態で支持する支持面を有し、前記複数の記録媒体を収容する収容部と、前記収容部から前記記録部へ前記記録媒体が搬送される搬送経路と、前記収容部に収容された前記記録媒体に上方から接触するように軸支され、前記複数の記録媒体を前記記録媒体の搬送方向に順次給送する給送ローラと、前記収容部と前記記録部との間で前記搬送経路の少なくとも一部を構成し、前記記録媒体の表裏を反転させながら前記記録媒体を搬送する反転経路と、前記搬送方向の前記支持面の下流端と前記給送ローラとの間で且つ前記支持面に対する上方に配置され、前記給送ローラにより給送される前記記録媒体を検知する収容部側検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記給送ローラにより給送された前記第1の記録媒体の後端部を前記収容部側検知部が検知すると、前記第2の前記記録媒体を、前端部が前記第1の記録媒体の後端部と重ね合わさって給送されるように前記給送ローラを制御する重ね合わせ処理を実行する。
【0009】
上記構成によれば、収容部に収容された記録媒体に接触する給送ローラと、給送ローラにより給送される記録媒体を検知する収容部側検知部とを用いて、制御部が重ね合わせ処理を実行する。このため、給送ローラと収容部側検知部とを、例えば収容部の支持面に対する垂直方向に重ねて配置できる。これにより、記録媒体の重ね合わせ搬送を行うために、平面視における支持面の外方へ画像記録装置が大型化するのを防止できる。
【0010】
また制御部は、収容部から搬送される直後の各記録媒体に対する収容部側検知部の検知結果に基づいて重ね合わせ処理を行う。よって、重ね合わせ処理を行うために搬送経路が複雑化するのを抑制できる。これにより、重ね合わせ搬送を行う機構が複雑化するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体を重ね合わせ搬送する画像記録装置において、画像記録装置の大型化を防止できると共に、重ね合わせ搬送を行う機構の複雑化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る画像記録装置の概略構成図である。
図2図1の画像記録装置の機能ブロック図である。
図3図1の収容部側検知部の出力値の時間変化と、記録媒体の搬送速度の時間変化とを示すグラフである。
図4】(a)は、図1の画像記録媒体の第1の記録媒体の給送中の様子を示す図である。(b)は、図1の画像記録装置の第1の記録媒体の後端部を収容部側検知部が検知するときの様子を示す図である。(c)は、図1の画像記録装置の重ね合わせ処理時の様子を示す図である。
図5】第2実施形態に係る画像記録装置の概略構成図である。
図6】第3実施形態に係る画像記録装置の給送ローラとその周辺の構成を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る画像記録装置1の概略構成図である。図2は、図1の画像記録装置1の機能ブロック図である。画像記録装置1は、上方から重ねられた第1の記録媒体90Aと第2の記録媒体90Bとを含む複数のシート状の記録媒体90を重ねた状態で支持する支持面2aを有し、複数の記録媒体90を収容する収容部2と、制御部3とを備える。詳細を後述するように、画像記録装置1は、複数枚の記録媒体90に対して印刷ジョブを行う際、給送ローラ9により給送された第1の記録媒体90Aの後端部を収容部側検知部8が検知すると、制御部3が、第2の記録媒体90Bを、前端部が第1の記録媒体90Aの後端部と重ね合わさって給送されるように給送ローラ9を制御する重ね合わせ処理を実行する。これにより、印刷ジョブにおいて、各記録媒体90に画像データを記録する記録動作の効率化が図られる。
【0014】
図1及び2に示すように、具体的に本実施形態の画像記録装置1は、筐体14と、記録媒体90に対して記録を行う記録部4と、記録部4と所定方向(一例として上下方向)に間隙をおいて対向配置されて記録部4に記録される記録媒体90を支持するプラテン5と、収容部2から記録部4へ記録媒体90が搬送される搬送経路6とを備える。記録部4は、外部から供給されるインクを記録媒体90に向けて吐出するインクノズルが設けられた記録ヘッド19と、記録ヘッド19が搭載されたキャリッジ18とを有する。プラテン5は、一例として水平方向に延びている。
【0015】
搬送経路6は、全体として屈曲して形成されている。図1に示される搬送経路6は、一例として、収容部2に収容された最上位の記録媒体90(ここでは第1の記録媒体90A)の所定の搬送方向の下流端から、画像記録装置1の後方且つ上方に向けて延びた後、前方に延びている。搬送経路6は、反転経路6aを有する。この反転経路6aは、収容部2と記録部4との間で搬送経路6の少なくとも一部を構成し、記録媒体90の表裏を反転させながら記録媒体90を搬送する。画像記録装置1は、給送ローラ9の回転軸線Y方向から見た反転経路6aの外周側の少なくとも一部を区画する外側ガイド部材50と、給送ローラ9の回転軸線Y方向から見た反転経路6aの内周側の少なくとも一部を区画し、外側ガイド部材50よりも給送ローラ9に近接する位置で外側ガイド部材50と対向して配置された内側ガイド部材51とを備える。
【0016】
また画像記録装置1は、収容部2に収容された記録媒体90に上方から接触するように軸支され、複数の記録媒体90を搬送方向に順次給送する給送ローラ9と、収容部2から給送された記録媒体90を搬送経路6に沿って搬送する搬送ローラ10、11と、記録部4を通過した記録媒体90を筐体14外に排出する排出ローラ12、13とを備える。搬送ローラ10、11は、搬送方向の給送ローラ9と記録部4との間の所定位置に配置されている。画像記録装置1では、一例として、プラテン5の上流端と近接する位置に搬送ローラ10、11が配置され、下流端と近接する位置に排出ローラ12、13が配置されている。
【0017】
給送ローラ9は、回動軸線Xの軸周りに揺動可能に軸支された揺動部材15により軸支されている。回動軸線Xは、支持面2aに平行な平面内に配置されている。揺動部材15の近傍には、付勢部材17が揺動部材15と接するように配置されている。揺動部材15は、付勢部材17の付勢力により、給送ローラ9を支持面2a側に付勢する。これにより、給送ローラ9は、収容部2内の記録媒体90と常に接触している。
【0018】
また画像記録装置1は、搬送方向の収容部2と反転経路6aとの間に配置された傾斜部16を更に備える。この傾斜部16は、収容部2の搬送方向の下流端から反転経路6aに向けて上がり勾配に傾斜する傾斜面16aを有し、搬送される記録媒体90を案内する。
【0019】
画像記録装置1では、一例として、支持面2aに対する垂直方向において、給送ローラ9、収容部側検知部8、及び反転経路6aの各々の少なくとも一部が、支持面2aと重なるように配置されている。
【0020】
図2に示すように、制御部3は、CPU31、ROM32、RAM33、EEPROM34、及びASIC35を有する。CPU31の個数は、単一又は複数のいずれでもよい。ROM32には、CPU31が所定のジョブを実行するための制御プログラムが格納されている。RAM33には、後述する収容部側検知部8の出力値L1と距離D1との関係を示すテーブルと、予め設定された基準値Dsの情報が格納されている。EEPROM34には、ユーザが入力した各種の初期設定の情報が格納されている。
【0021】
制御部3は、給送ローラ9の駆動源である給送用モータ41を制御する第1モータドライバIC40と、搬送ローラ10、11の駆動源である搬送用モータ43を駆動させる第2モータドライバIC42と、排出ローラ12、13の駆動源である排出用モータ45を駆動させる第3モータドライバIC44と、キャリッジ18の駆動源であるキャリッジ用モータ47を駆動させる第4モータドライバIC46と、記録ヘッド19に設けられた圧電素子を動作させるヘッドドライバIC48とを有する。これらのドライバIC40、42、44、46、48は、ASIC35に接続されている。
【0022】
CPU31は、筐体14に設けられた操作部や外部入力部を介して、ユーザから印刷ジョブの実行要求を受け付ける。印刷ジョブの実行要求を受け付けたCPU31は、印刷ジョブの実行指令をASIC35へ出力する。ASIC35は、この実行指令に基づいて各ドライバIC40、42、44、46、48のそれぞれを所定のタイミングで駆動する。これにより、収容部2内の記録媒体90が最上位から順に給送ローラ9により繰り出され、搬送経路6を搬送される。記録媒体90は、搬送ローラ10、11によりプラテン5上に搬送され、記録ヘッド19がキャリッジ18の動作に合わせて記録媒体90上を所定の走査方向に往復走査される。このとき、所定のタイミングで記録ヘッド19の圧電素子が駆動されてインクノズルからインクが吐出される。その結果、記録媒体90に対して、搬送方向の上流側から下流側に順次印刷がなされる。印刷が完了した記録媒体90は、排出ローラ12、13により筐体14外に排出される。
【0023】
ここで図1及び2に示すように、画像記録装置1は、搬送方向の支持面2aの下流端と給送ローラ9との間で且つ支持面2aに対する上方に配置され、給送ローラ9により給送される記録媒体90を検知する収容部側検知部8を更に備える。収容部側検知部8は、収容部2に収容された記録媒体90との間の距離D1(一例として、収容部側検知部8と記録媒体90との間の支持面2aに垂直な方向の距離)を検知する測距センサを含む。この測距センサは、一例としてフォトインタラプタであり、記録媒体90に向けて発光する発光部と、記録媒体90で反射された発光部からの光を受光する受光部とを有する。発光部と受光部とは、収容部側検知部8の支持面2a側の端部(一例として下端部)に配置されている。この形式の測距センサでは、受光部が受光する受光量に応じて出力値を変化させる。この出力値は、一例として、距離D1が短いほど大きく、長いほど小さい。なお、測距センサの形式は、これに限定されない。収容部側検知部8の出力は、制御部3に入力される。
【0024】
図3は、図1の収容部側検知部8の出力値L1の時間変化と、記録媒体90の搬送速度L2の時間変化とを示すグラフである。図3に示すように、給送ローラ9により収容部2内の複数の記録媒体90が給送される際、搬送速度L2は、一例として周期的に変化する。収容部側検知部8が同一の記録媒体90を検知している間(時刻t0~時刻t1間)、出力値L1が基準範囲内(L1≧LT)であり、距離D1が予め定められた基準値Ds以内に収まっていることが、収容部側検知部8により検知される。その後、記録媒体90が収容部側検知部8の検知範囲から外れると、出力値L1が基準範囲外(L1<LT)となり、距離D1が基準値Dsを超えて変化したことが、収容部側検知部8により検知される(時刻t1~時刻t2間)。更に時刻t2後、出力値L1が時間経過に伴って時刻t0~t1のときと同様に変化し、距離D1が再び基準値Ds以内に収まることが、収容部側検知部8により検知される。
【0025】
このように、距離D1の変化を収容部側検知部8により検知することで、収容部側検知部8は、給送ローラ9により給送される各記録媒体90の後端部を検知できる。なお、収容部側検知部8により距離D1の変化を精度よく検知するため、収容部側検知部8は、給送ローラ9よりも搬送方向下流側で、給送ローラ9と、収容部2内の記録媒体90とに近接するように(例えばそれぞれ数ミリ程度の間隔をおいて)配置されていることが望ましい。
【0026】
上記構成を有する画像記録装置1では、複数の記録媒体90に印刷ジョブを行う際、上記と同様のプロセスが各記録媒体90に対して順次行われると共に、制御部3が以下の重ね合わせ処理を実行する。図4(a)は、図1の画像記録媒体の第1の記録媒体90Aの給送中の様子を示す図である。図4(b)は、図1の画像記録装置の第1の記録媒体90Aの後端部を収容部側検知部8が検知するときの様子を示す図である。図4(c)は、図1の画像記録装置1の重ね合わせ処理時の様子を示す図である。図4(a)~(c)では、画像記録装置1の一部のみを図示し、搬送経路6を規定する画像記録装置1の内部構造の輪郭を破線で示している。
【0027】
複数の記録媒体90が搬送経路6を搬送される場合、収容部2に収容された最上位に位置する第1の記録媒体90Aは、支持面2aに垂直な方向で収容部側検知部8と重なり、収容部側検知部8の検知範囲に位置している。第1の記録媒体90Aは、給送ローラ9の回転駆動により、まず搬送方向の前端部(搬送経路6に近い側の端部)が、傾斜面16aと外側ガイド部材50とに接触して搬送経路6内に案内される。第1の記録媒体90Aは、例えば、搬送方向の前端部が搬送ローラ10、11にニップされることにより、内側ガイド部材51に接触しながら反転経路6aを通過する(図4(a))。その後、第1の記録媒体90Aの後端部(搬送方向の下流端部)が、給送ローラ9から離隔し、第1の記録媒体90Aが、収容部側検知部8の検知範囲から外れる。
【0028】
このとき図3に示すように、収容部側検知部8の出力値L1は、第1の記録媒体90Aが収容部側検知部8の検知範囲に位置する間は基準範囲内(L1≧LT)に収まっているが(図3の時刻t0~時刻t1)、第1の記録媒体90Aが検知範囲から外れると、基準範囲を超えて変化する(図3の時刻t1~時刻t2、図4(b))。このとき、給送ローラ9により給送された第1の記録媒体90Aの後端部を収容部側検知部8が検知する。制御部3は、RAM33に格納された前記テーブルを参照することにより、収容部側検知部8の出力値L1と対応する距離D1を把握し、出力値L1が基準範囲を超えたことにより距離D1が基準値Dsを超えたと判定する。ここで画像記録装置1では、収容部2と記録部4との間で記録媒体90の表裏を反転させる反転経路6aが配置されているため、反転経路6aを通過する第1の記録媒体90Aは、後端部が支持面2aに向けて撓んだ状態となる。つまり、第1の記録媒体90Aの後端部は、搬送方向の前側部分が後側部分よりも第2の記録媒体90Bから上方へ浮いた状態となる。従って、反転経路6aを通過する第1の記録媒体90Aが給送ローラ9から離隔すると、第1の記録媒体90Aの後端部が、距離D1が大きくなる方向に収容部側検知部8から離隔する。これにより、第1の記録媒体90Aが給送ローラ9から離隔する前後において距離D1の変化が大きくなるため、収容部側検知部8は、距離D1の変化に基づいて第1の記録媒体90Aの後端部を適切に検知できる。
【0029】
その後、制御部3は、第2の記録媒体90Bを前端部が第1の記録媒体90Aの後端部と重ね合わさって給送されるように給送ローラ9を制御する重ね合わせ処理を実行する(図4(c))。第2の記録媒体90Bの前端部は、傾斜部16の傾斜面16aに案内されて、第1の記録媒体90Aの後端部に重ね合わされる。この重ね合わせ処理では、第1の記録媒体90Aの記録面側の後端部の上に第2の記録媒体90Bの前端部が重ねられる。このように本実施形態の制御部3は、給送ローラ9による第1の記録媒体90Aの給送を開始した後、収容部側検知部8により検知される距離D1が基準値Dsを超えた場合に、第2の記録媒体90Bを給送するように給送ローラ9を制御する。
【0030】
以上に説明したように、画像記録装置1は、収容部2に収容された記録媒体90に接触する給送ローラ9と、給送ローラ9により給送される記録媒体90を検知する収容部側検知部8とを用いて、制御部3が重ね合わせ処理を実行する。このため、給送ローラ9と収容部側検知部8とを、例えば収容部2の支持面2aに対する垂直方向に重ねて配置できる。これにより、記録媒体90の重ね合わせ搬送を行うために、平面視における支持面2aの外方へ画像記録装置1が大型化するのを防止できる。
【0031】
また制御部3は、収容部2から搬送される直後の各記録媒体90に対する収容部側検知部8の検知結果に基づいて重ね合わせ処理を行う。よって、重ね合わせ処理を行うために搬送経路6が複雑化するのを抑制できる。これにより、重ね合わせ搬送を行う機構が複雑化するのを抑制できる。
【0032】
また収容部側検知部8は、距離D1が基準値Dsを超えた場合に、第2の記録媒体90Bを給送するように給送ローラ9を制御する。これにより、距離D1の変化に基づいて第2の記録媒体90Bを給送するように給送ローラ9を制御できる。よって、比較的簡素な構造で重ね合わせ処理を実現できる。
【0033】
また収容部側検知部8は、フォトインタラプタを有する。これにより、比較的安価で高精度な検知性能を有する収容部側検知部8を実現できる。
【0034】
以下、第1実施形態の変形例を説明する。本変形例に係る画像記録装置は、収容部側検知部8が超音波センサを有する。この超音波センサは、一例として、高周波型超音波センサである。市販されているこの形式の超音波センサとしては、例えば、(株)村田製作所製「MA300D1-1」を例示できる。このような超音波センサによれば、記録媒体90に向けて超音波を発すると共に、発した超音波の反射波を受信することで、反射波の受信状態に基づいて、フォトインタラプタを用いた場合と同様の効果を得ることができる。以下、その他の実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0035】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る画像記録装置101の概略構成図である。画像記録装置101は、搬送経路6における収容部2と搬送ローラ10、11との間に配置され、搬送される記録媒体90の先端部を検知する先端検知部20を更に備える。先端検知部20は、ここでは搬送方向の収容部2と反転経路6aとの間に配置され、傾斜部16を通過する記録媒体90を検知する。先端検知部20は、一例として搬送経路6に露出する筐体14の内側に固定されている。
【0036】
先端検知部20は、一例としてフォトインタラプタである。先端検知部20の種類は、これに限定されない。先端検知部20は、例えば、記録媒体90の先端部との接触時に回転するローラと、当該ローラの回転により電力を発生する発電装置でもよい。また先端検知部20は、例えば、記録媒体90の先端部と接触可能に配置された接触部と、接触部と接続されて接触部と記録媒体90との接触前後で出力が変化する出力部とを有していてもよい。接触部としては、例えば記録媒体90の先端部との接触により位置変化可能に配置されたレバーを例示でき、出力部としては、レバーの位置によりオンオフされるスイッチ素子を例示できる。
【0037】
制御部3は、重ね合わせ処理において、先端検知部20が第2の記録媒体90Bの前端部を検知すると、搬送ローラ10、11の搬送方向上流側の所定の待機位置WPに第2の記録媒体90Bの前端部が位置する状態で第2の記録媒体90Bを待機させる待機処理を実行する。また制御部3は、重ね合わせ処理において、記録部4により記録される第1の記録媒体90Aの後端部の余白の大きさに合わせて第2の記録媒体90Bの前端部を第1の記録媒体90Aの後端部と重ね合わせるように第2の記録媒体90Bの搬送を再開させる再搬送処理を実行する。ここで制御部3は、例えば、記録部4により第1の記録媒体90Aに印刷予定の画像データ量により、第1の記録媒体90Aの後端部の余白の大きさを把握できる。待機処理と再搬送処理とは、例えば、制御部3が、給送ローラ9及び搬送ローラ10の少なくともいずれかを所定のタイミングで駆動するようにモータドライバIC40、42を制御することで実現できる。
【0038】
画像記録装置101によれば、第2の記録媒体90Bの先端部を先端検知部20により検知できるので、第1の記録媒体90Aの後端部の正確な位置に第2の記録媒体90Bの先端部を重ね易くできる。また、制御部3が待機処理と再搬送処理とを実行することで、第1の記録媒体90Aに印刷予定の画像データ量に応じて、第1の記録媒体90Aと第2の記録媒体90Bとの重ね合わせ量を個別に調整できる。よって、重ね合わせ搬送の機構の複雑化を防止しながら、重ね合わせ搬送を一層効率的に行うことができる。
【0039】
また先端検知部20が、搬送方向の収容部2と反転経路6aとの間に配置され、傾斜部16を通過する記録媒体90を検知するので、例えば、傾斜部16の傾斜面16aに記録媒体90を接触させることにより記録媒体90の不要な重送を防止しながら、記録媒体90の先端部を先端検知部20により正確に検知できる。
【0040】
また画像記録装置101は、一例として、先端検知部20と内側ガイド部材51との間の最短距離D2が、先端検知部20と外側ガイド部材50との間の最短距離D3よりも大きい。ここで第1の記録媒体90Aは、反転経路6aを通過する際、先端部が搬送ローラ10、11にニップされることで、内側ガイド部材51に接触し易い。これに対して第2の記録媒体90Bは、反転経路6aを通過するときの初期の段階では、外側ガイド部材50に接触し易い。従って、最短距離D2、D3を上記のように設定することで、第1の記録媒体90Aの先端部よりも第2の記録媒体90Bの先端部を先端検知部20により検知し易くできる。これにより、例えば2枚の記録媒体90が重送されている場合でも、第2の記録媒体90Bの先端部を先端検知部20により正確に検知できる。
【0041】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る画像記録装置201の給送ローラ9とその周辺の構成を示す部分図である。画像記録装置201は、給送ローラ9と収容部側検知部8とを一体的に支持する支持部25を備える。支持部25は、回動軸線Xに垂直な平面内で給送ローラ9と共に揺動可能に軸支されている。収容部側検知部8は、支持面2aに対する垂直方向の姿勢が給送ローラ9の揺動中に保持されるように支持部25に支持されている。これにより本実施形態では、収容部側検知部8の下端部が給送ローラ9の揺動中に常に鉛直方向の下方を向くように保持される。支持部25は、揺動部材15に接続されている。
【0042】
一例として、本実施形態の支持部25は、給送ローラ9の回転軸線Y方向から見て搬送方向に延びる長孔25aを有する。収容部側検知部8は、長孔25aの長手方向に往復移動自在に長孔25a内に配置されて長孔25aの周縁により支持される軸部分8aを有する。軸部分8aは、回転軸線Yに沿って延びている。
【0043】
収容部側検知部8の支持面2aとは反対側には、支持面2aに向けて開口するガイド部材26が設けられている。収容部側検知部8の支持面2aとは反対側の端部8bは、ガイド部材26の開口からガイド部材26の内部に挿入され、支持面2aに対する垂直方向に往復自在にガイド部材26により支持されている。ガイド部材26は、筐体14の内部に設けられた固定部27に固定されて位置決めされている。
【0044】
画像記録装置201によれば、揺動部材15が回動軸線Xの周りに揺動する動作に追随して、支持部25が長孔25aの周縁を介して収容部側検知部8を支持面2aに対する垂直方向に往復移動させる。このとき、収容部側検知部8はガイド部材26により支持面2aに対する垂直方向にガイドされる。その結果、収容部側検知部8は、支持面2aに対する垂直方向の姿勢が給送ローラ9の揺動中に保持される。これにより、給送ローラ9により収容部2内の複数の記録媒体90が搬送経路6に順次給送されて、支持面2aに支持される複数の記録媒体90の積載量が減少していっても、支持面2aに支持される記録媒体90のうち最上の記録媒体90と収容部側検知部8との支持面2aに対する垂直方向における距離D1が、略一定に保たれる。従って、支持面2aに支持される複数の記録媒体90の積載量によらずに、給送ローラ9により給送された第1の記録媒体90Aの後端部を収容部側検知部8により安定して検知できる。
【0045】
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。記録媒体90は、紙でもよいし、紙以外の材料(例えば樹脂や金属)からなるシートであってもよい。モータ41、43、45は、個別に設けられていなくてもよく、このうち1つのモータが、他のいずれかのモータを兼ねていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように本発明は、記録媒体を重ね合わせ搬送する画像記録装置において、画像記録装置の大型化を防止できると共に、重ね合わせ搬送を行う機構の複雑化を抑制できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる画像記録装置に本発明を広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0047】
WP 待機位置
Y 給送ローラの回転軸線
1、101、201 画像記録装置
2 収容部
2a 支持面
3 制御部
6 搬送経路
6a 反転経路
8 収容部側検知部
9 給送ローラ
10、11 搬送ローラ
16 傾斜部
16a 傾斜面
20 先端検知部
50 外側ガイド部材
51 内側ガイド部材
90 記録媒体
90A 第1の記録媒体
90B 第2の記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6