(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20240702BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240702BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020057903
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上野 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 裕也
(72)【発明者】
【氏名】町田 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 由樹
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-287258(JP,A)
【文献】特開2004-144377(JP,A)
【文献】特開2011-149615(JP,A)
【文献】特開2005-024111(JP,A)
【文献】特開2009-281717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器と、室内機ファンと、室内温度センサと、前記室内機ファンの駆動を制御する室内機制御装置と、をそれぞれ備えた複数の室内機と、
前記室内機と同じ台数の室内機膨張弁と、
圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、を備
え、
前記室内機制御装置は、暖房運転時に前記室内機の前記室内温度センサで検出した室内空気の温度が設定温度に第1所定温度を加えた温度より高くなれば、当該室内機をサーモオフ運転に切り換えると共に、前記サーモオフ運転の開始から所定の間隔を経過した後に、前記室内機ファンを所定時間だけ駆動させて室内空気の温度を前記室内温度センサで検出して、前記サーモオフ運転を続行するかどうかの判断を行うモニタリング動作を行い、
前記モニタリング動作において、検出した室内空気の温度が設定温度から第2所定温度を引いた温度より高ければ、前記サーモオフ運転を続行し、検出した室内空気の温度が設定温度から第2所定温度を引いた温度より低くなれば、前記サーモオフ運転を終了させて当該室内機をサーモオン運転に切り換
え、
前記室内機制御装置は、前記モニタリング動作によって前記サーモオフ運転が続行となった場合の前記サーモオフ運転の回数をカウントし、
次の前記モニタリング動作を開始する前に、カウントされる同サーモオフ運転の回数に応じて、前記所定の間隔を変更することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記室内機制御装置は、カウントされる前記サーモオフ運転の回数が多くなるにつれて、前記所定の間隔を長くすることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記室内機制御装置は、カウントされる前記サーモオフ運転の回数が所定回数以上になると、カウントされる同サーモオフ運転の回数が多くなるにつれて、前記所定の間隔を長くすることを特徴とする請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記室内機制御装置は、前記所定の間隔の最大値を定めており、前記所定の間隔が前記最大値となった以降の前記所定の間隔は前記最大値のままとすることを特徴とする請求項2または3に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数台の室内機と、を有する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、室内熱交換器と室内ファンとを備えた複数台の室内機とを有する多室型空気調和装置では、空調運転中に、室内機が設置された室内の空気温度が設定温度付近(例えば、設定温度±1℃)となれば、室内機膨張弁を全閉(冷房運転時)もしくは微開(暖房運転時)として冷媒が室内熱交換器へ流入しないようにすると共に、室内ファンの駆動を停止させて室内機の送風を停止させるいわゆるサーモオフ状態とし、室内の空気温度が低下あるいは上昇して設定温度から離れれば、膨張弁開度を要求される空調能力に応じた開度とし室内ファンを起動して室内への送風を再開するいわゆるサーモオン状態とすることが行われている。サーモオフ状態であるときは、室内ファンは停止しているが、定期的に室内ファンを駆動して(例えば、5分に1回)室内空気を室内機に取り込み、その取り込んだ室内空気の温度を室内機に設けた室内温度センサで検出するモニタリング動作を行って、サーモオン状態に移行させるか否かを判断している。
【0003】
上述した多室型空気調和装置おいて、サーモオン状態となっている室内機が1台でも存在する限りは、当該室内機に冷媒を供給する必要があるため圧縮機は駆動させる必要があり、全ての室内機がサーモオフ状態となれば、冷媒を供給する必要はないので圧縮機を停止できる。
【0004】
以上のことから、暖房運転中はサーモオフ状態となっている室内機に微量の冷媒が流れ続けることで室内熱交換器が加熱されており、室内機内部の空気も室内熱交換器で加熱されている。このため、暖房運転のサーモオフ中にモニタリング動作により室内の空気温度を検出する場合、室内熱交換器によって加熱されている室内機内部の空気を、室内ファンを駆動させて室内機内部から排出する必要がある。このため、サーモオフ中に室内の空気温度を検出するモニタリング動作の場合は、例えば、特許文献1に記載の多室型空気調和機のように、室内ファンを所定時間(例えば、1分間)駆動して、室内熱交換器によって加熱されている室内機内部の空気を排除し、その後に室内機内部に取り込んだ室内の空気温度を検出している。このとき、室内には室内熱交換器で暖められた空気が吹き出されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多室型空気調和機では、春秋といった中間期に暖房運転を行う場合に、空調負荷が小さい空間(例えば、南側の窓に面した空間)に設置された室内機では、ほぼ1日中サーモオフ状態となることがある。このため、暖房運転時に1日中サーモオフ状態となっている室内機において、前述した特許文献1に示された多室型空気調和機のように、室内の空気温度を検知するために定期的に室内ファンを駆動させるモニタリング動作を行うと、室内機から吹き出される空気が室内熱交換器によって加熱されているため、当該室内機が空調を行う室内が暖まり過ぎて使用者に不快感を与える恐れがあるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、室内熱交換器と、室内ファンと、室内温度センサと、前記室内ファンの駆動を制御する室内機用制御装置と、をそれぞれ備えた複数の室内機と、前記室内機と同じ台数の膨張弁と、圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、を備えて、前記室内機が設置される室内の冷房空調運転または暖房空調運転を行う空気調和装置において、暖房運転時のサーモオフ中の室内機におけるモニタリング動作によって、室内機から吹き出された空気が使用者に不快感を与えてしまうことを抑制することができる空気調和装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、室内熱交換器と、室内機ファンと、室内温度センサと、前記室内機ファンの駆動を制御する室内機制御装置と、をそれぞれ備えた複数の室内機と、前記室内機と同じ台数の室内機膨張弁と、圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、を備え、前記室内機制御装置は、暖房運転時に前記室内機の前記室内温度センサで検出した室内空気の温度が設定温度に第1所定温度を加えた温度より高くなれば、当該室内機をサーモオフ運転に切り換えると共に、前記サーモオフ運転の開始から所定の間隔を経過した後に、前記室内機ファンを所定時間だけ駆動させて室内空気の温度を前記室内温度センサで検出して、前記サーモオフ運転を続行するかどうかの判断を行うモニタリング動作を行い、前記モニタリング動作において、検出した室内空気の温度が設定温度から第2所定温度を引いた温度より高ければ、前記サーモオフ運転を続行し、検出した室内空気の温度が設定温度から第2所定温度を引いた温度より低くなれば、前記サーモオフ運転を終了させて当該室内機をサーモオン運転に切り換え、前記室内機制御装置は、前記モニタリング動作によって前記サーモオフ運転が続行となった場合の前記サーモオフ運転の回数をカウントし、次の前記モニタリング動作を開始する前に、カウントされる同サーモオフ運転の回数に応じて、前記所定の間隔を変更することを特徴とする空気調和装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、暖房運転時のサーモオフ運転中の室内機が空調を行う室内の暖まり過ぎを抑制でき、使用者の不快感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】室内調和装置のモニタリング動作の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、10台の室内機が室外機に並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された10台の室内機5-1~5-10(
図1では、これらのうちの2台の室内機5-1と5-10のみを描画している)とを備えている。より詳細には、室外機2の閉鎖弁25と各室内機5の液管接続部53とが液管8で接続されている。また、室外機2の閉鎖弁26と各室内機5のガス管接続部54とがガス管9で接続されている。このように、室外機2と10台の室内機5とが液管8およびガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。
【0013】
<室外機の構成>
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機20と、流路切換弁である四方弁22と、室外熱交換器23と、室外機膨張弁24と、液管8が接続された閉鎖弁25と、ガス管9が接続された閉鎖弁26と、アキュムレータ27と、室外機ファン28とを備えている。また、空気調和装置1は、後述する圧縮機20や室外機膨張弁24や室外機ファン28の制御を行う室外機制御装置100を備えている。そして、室外機ファン28を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を形成している。
【0014】
圧縮機20は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機20の冷媒吐出側は、吐出管40で接続されている。また、圧縮機20の冷媒吸入側は、アキュムレータ27の冷媒流出側と吸入管42で接続されている。
【0015】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、吐出管40で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ27の冷媒流入側と冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管45で接続されている。
【0016】
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外機ファン28の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口と閉鎖弁25が室外機液管44で接続されている。室外熱交換器23は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は凝縮器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
【0017】
室外機膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外機膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量が調整される。室外機膨張弁24の開度は、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度が、室内機5-1~5-1の各々で要求される暖房能力に基づいて決定される目標温度となるように、その開度が調整される。また、室外機膨張弁24の開度は、冷房運転を行っている場合は全開とされる。
【0018】
アキュムレータ27は、前述したように、冷媒流入側が四方弁22のポートcと冷媒配管46で接続されるとともに、冷媒流出側が圧縮機20の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。アキュムレータ27は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを圧縮機20に吸入させる。
【0019】
室外機ファン28は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外機ファン28は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0020】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。
図1に示すように、吐出管40には、圧縮機20から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機20から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、圧縮機20に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機20に吸入される冷媒の温度を検出する吸込温度センサ34とが設けられている。
【0021】
室外機液管44における室外熱交換器23と室外機膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
【0022】
室外機制御装置100には、圧縮機20、四方弁22、室外機膨張弁24、閉鎖弁25、閉鎖弁26、室外機ファン28、吐出圧力センサ31、吐出温度センサ33、吸入圧力センサ32、吸込温度センサ34、外気温度センサ36が接続されており、また、後述する室内機制御装置200とも接続している。室外機制御装置100は、各種センサ、および、室内機制御装置200からの信号に基づき、圧縮機20、四方弁22、室外機膨張弁24、閉鎖弁25、室外機ファン28の制御を行う。
【0023】
<各室内機の構成>
次に、10台の室内機5-1~5-10について説明する。10台の室内機5-1~5-10は全て同じ構成を有しており、室内熱交換器51と、室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを備えている。また、室内機ファン55の駆動と室内機膨張弁52の開度を制御する室内機制御装置200を備えている。そして、室内機ファン55を除くこれら各構成装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0024】
室内熱交換器51は、冷媒と、後述する室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53とが室内機液管71で接続され、他方の冷媒出入口とガス管接続部54aとが室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部53やガス管接続部54は、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0025】
室内機膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内機膨張弁52は電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合すなわち室内機5が冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。また、室内機膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合すなわち室内機5が暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度や目標冷媒過冷却度とは、室内機5-1~5-10の各々で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
【0026】
室内機ファン55は樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
【0027】
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間には、室内熱交換器51に流入あるいは室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72には、室内熱交換器51から流出あるいは室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62が設けられている。室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度を検出する室内温度センサ63が備えられている。
【0028】
室内機制御装置200には、室内機膨張弁52、室内機ファン55、液側温度センサ61、ガス側温度センサ62、室内温度センサ63、および、カウンタ76が接続されており、また、室外機制御装置100とも接続している。室内機制御装置200は、室外機制御装置100からの信号、および、液側温度センサ61、ガス側温度センサ62、室内温度センサ63からの信号に基づき、室内機ファン55の駆動制御や室内機膨張弁52の開度調整を行う。さらに、室内機制御装置200は、後述するサーモオフ運転時に行われるモニタリング動作においての室内機ファン55の駆動を制御する。また、カウンタ76は、サーモオフ運転が続行される場合のサーモオフ運転の回数をカウントする。
【0029】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、
図1を用いて説明する。尚、以下の説明ではまず、空気調和装置1が暖房運転を行う場合について説明し、次に、空気調和装置1が冷房運転を行う場合について説明する。尚、
図1における実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。また、
図1における破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。
【0030】
<暖房運転>
図1に示すように、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するように、また、ポートbとポートcとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器23が蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
【0031】
冷媒回路10が暖房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、室外機ガス管45を流れて、閉鎖弁26を介してガス管9へと流入する。
【0032】
ガス管9を流れる冷媒は、各ガス管接続部54を介して室内機5-1~5-10に分流する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。
【0033】
このように、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の暖房が行われる。
【0034】
各室内熱交換器51から各室内機液管71に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される暖房能力に基づいて定められるものである。また、暖房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0035】
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内機液管71から各液管接続部53を介して液管8に流出する。液管8で合流し閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は室外機液管44を流れ、圧縮機20の吐出温度が目標温度となるように開度が調整された室外機膨張弁24を通過する際にさらに減圧される。
【0036】
室外機膨張弁24で減圧された冷媒は、室外機液管44を流れて室外熱交換器23に流入し、最大回転数とされている室外機ファン28の回転によって室外機5の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管43へと流入した冷媒は、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
【0037】
<冷房運転>
空気調和装置1が冷房運転を行う場合は、
図1に示すように、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するように、また、ポートcとポートdとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能するとともに、室外熱交換器23が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0038】
冷媒回路10が冷房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて室外熱交換器23へと流入する。室外熱交換器23へと流入した冷媒は、室外機ファン28の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から室外機液管44へと流出した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁24を通過し、閉鎖弁25を介して液管8に流出する。
【0039】
液管8を流れる冷媒は、各液管接続部53を介して室内機5-1~5-10に流入する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は各室内機液管71を流れ、各室内熱交換器51の各々の冷媒出口での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過熱度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。また、冷房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0040】
各室内機液管71から各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により室内機5-1~5-10の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の冷房が行われる。
【0041】
各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介してガス管9に流出する。ガス管9で合流し閉鎖弁26を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
【0042】
空気調和装置1では、複数の室内機で同時に暖房運転などの空調運転を行うことが可能である。室内機5-1~5-10の室内機制御装置200は、暖房運転時において、室内温度センサ63に基づき室内空気の温度を検知し、室内空気の温度が設定温度に第1所定温度(例えば、1℃)を加えた温度(設定温度+第1所定温度)より高くなれば、室内機膨張弁52を微開として室内熱交換器51への冷媒の流入量を大幅に減少させると共に、室内機ファン55の駆動を停止させて空調運転を停止させるサーモオフ運転に切り換える。また、サーモオフ中に、室内空気の温度が、設定温度から第2所定温度(例えば、1℃)を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より低くなれば、膨張弁開度を要求される空調能力に応じた開度とし室内ファンを起動して室内への送風を再開するサーモオン運転に切換える。
【0043】
以下、本実施形態の空気調和装置1が暖房運転を行っているときに実施される、サーモオフ運転中に行われるモニタリング動作について、
図3のフロー図を用いて説明する。
<モニタリング動作>
モニタリング動作は、暖房運転時に、サーモオフ運転の開始から所定の間隔を経過した後に、室内機ファン55を所定時間だけ駆動させて室内空気の温度を室内温度センサ63で検出して、サーモオフ運転を続行するか、または、サーモオフ運転を終了してサーモオン運転に切換えるかどうかの判断を行う動作であり、検出した室内空気の温度が、設定温度から第2所定温度(例えば、1℃)を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より高ければ、サーモオフ運転を続行し、設定温度から第2所定温度(例えば、1℃)を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より低くなれば、サーモオフ運転を終了させてサーモオン運転に切換える。
【0044】
本実施形態では、モニタリング動作において、サーモオフ運転の開始から所定の間隔を経過した後に、室内機ファン55を所定時間だけ駆動させる場合の上記所定の間隔を、続行されるサーモオフ運転の回数に応じて変えていく制御を行う。このような制御を行うことによって、例えば、春秋といった中間期に暖房運転を行う場合に、空調負荷が小さい空間(例えば、南側の窓に面した空間)に設置された室内機では、ほぼ1日中サーモオフ運転が繰り返されるが、この際にサーモオフ運転の度に室内機から吹き出される加熱された空気によって室内が暖まり過ぎてしまうことを抑制できる。
【0045】
室内機制御装置200は、暖房運転中(サーモンオン運転中)に室内空気の温度が、設定温度に第1所定温度を加えた温度(設定温度+第1所定温度)より高い温度であるかどうかを判断する(S1)。室内空気の温度が、設定温度に第1所定温度を加えた温度(設定温度+第1所定温度)より高い温度になれば(S1-YES)、室内機制御装置200は、カウンタ75を初期値としてCOUNT=0に設定する(S2)。次に、室内機制御装置200は、室内機ファンが停止している所定の間隔Tを予め定めた初期設定値(デフォルト)、例えば4分とし(S3)、サーモオフ運転を開始する(S4)。
【0046】
次に、室内機制御装置200は、暖房運転中のサーモオフ運転の回数を現在のカウントに加え(S5)、カウントが所定回数(例えば、10回)未満でない(S6-No)、つまり、サーモオフ運転の回数が所定回数未満でなければ、室内機制御装置200は、所定の間隔Tを初期設定値である4分に1分加算された5分に変更する(S11)。次に、室内機制御装置200は、所定の間隔Tが14分未満であるか否かを判断し(S12)、所定の間隔Tが14分未満であれば(S12―Yes)、ST7に処理を進め、所定の間隔Tが14分未満でなければ(S12―No)、所定の間隔Tを14分として(S13)、S7に処理を進める。つまり、S11~S13の処理では、続行されるサーモオフ運転の回数に応じて、所定の間隔Tを初期設定値から変更する制御を行っている。また、所定の間隔Tの最大値は、本実施形態では14分としている。
【0047】
次に、サーモオフ運転を続行するか、または、サーモオフ運転を終了させてサーモオン運転に切換えるかどうかの判断を行うモニタリング動作に移る(S8~S10がモニタリング動作に関わる処理である)。ST6において、カウントが所定回数未満である(S6-Yes)、つまり、サーモオフ運転の回数が10回未満の場合は、室内機制御装置200は、サーモオフ運転が開始されてから所定の間隔Tを経過したか否かを判断し(S7)、サーモオフ運転が開始されてから所定の間隔Tを経過していなければ(S7-No)、S7に処理を戻して所定の間隔Tが経過するのを待つ。
【0048】
サーモオフ運転が開始されてから所定の間隔Tを経過していれば((S7-Yes)、室内機制御装置200は、室内機ファン55を所定時間(例えば、1分間)駆動させ(S8)、室内温度センサ63で室内空気の温度を検知し(S9)、検知した室内空気の温度が、設定温度から第2所定温度を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より低いかどうかを判断する(S10)。なお、サーモオフ運転の回数が10回未満の場合(前述した、S6-Noの場合)は、所定の間隔Tは初期設定値の4分間であり、サーモオフ運転の回数が10回以上の場合(前述した、S6-Yesの場合)は、所定の間隔Tは5分間~14分間のいずれかとなっている。
【0049】
検知した室内空気の温度が、設定温度から第2所定温度を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より低くなければ(S10-No)、すなわち、検知した室内空気の温度が(設定温度-第2所定温度)より高ければ、室内機制御装置200は、S4に処理を戻してサーモオフ運転を続行する。検知した室内空気の温度が、設定温度から第2所定温度を引いた温度(設定温度-第2所定温度)より低くなれば(S10-Yes)、室内機制御装置200は、サーモオフ運転を中止して(S14)、暖房運転を再開させるサーモオン運転に切り換えて(S15)、S1に処理を戻す。
【0050】
以上に説明したS11~S13の処理では、サーモオフ運転の回数が10回以上となった以降、サーモオフ運転が続行される毎に、所定の間隔Tは1分毎増えていくが、所定の間隔Tの最大値は14分として定める。また、サーモオフ運転の1回目は、サーモオフ運転の回数が1であるため(前述した、S6-Yesの場合)、所定の間隔Tは初期設定値である4分とされる。サーモオフ運転の連続回数が9回までは(前述した、S6-Yesの場合)、所定の間隔Tは初期設定値の4分のままとされる。
【0051】
そして、サーモオフ運転の連続回数が10回以上となれば(前述した、S6-Noの場合)、所定の間隔Tは初期設定値である4分にサーモオフ運転の連続回数が増えるたびに1分を加えていき、所定の間隔Tは14分間に到達すれば、これ以降は所定の間隔Tは14分間に固定される。
【0052】
春秋といった中間期に暖房運転を行う場合に、空調負荷が小さい空間(例えば、南側の窓に面した空間)に設置された室内機では、ほぼ1日中サーモオフ状態となることがあるが、本実施形態では、サーモオフが続行された場合に、続行されるサーモオフ運転の回数が多くなるにつれ、モニタリング動作によって室内機ファン55を駆動させる間隔である所定の間隔が長くなるので、室内熱交換器51によって加熱された空気が室内機から吹き出される間隔が長くなり、室内が暖まり過ぎて使用者に不快感を与える恐れを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、10回目のサーモオフ運転でのモニタリング動作から、当初の所定の間隔である4分を変更して、当初の所定の間隔より1分長い5分としたが、2回目のサーモオフ運転でのモニタリング動作から、所定の間隔を長くしても構わない。また、19回目以降のサーモオフ運転の場合では、モニタリング動作が行われるまでの所定間隔を最大値である14分に固定したが、最大値を設けずにサーモオフ運転の回数が多くなるにつれ、所定の間隔を長くしていく態様でも構わない。
【0054】
また、所定の間隔は、続行されたサーモオフ運転の回数が所定回数以上になった場合は、続行されたサーモオフ運転の回数から所定の値(例えば、5)を引いた値で設定されても構わない。例えば、サーモオフ運転の回数が所定回数である10回になった場合には、所定の間隔を10から5を引いた5、サーモオフ運転の回数が所定回数である11回になった場合には、所定の間隔を11から5を引いた6となるように設定しても構わない。
【0055】
本実施形態における、室内機制御装置200は、モニタリング動作によって続行されるサーモオフ運転の回数が多くなるにつれて、室内機ファン55が停止している所定の間隔を長くする制御としたが、例えば、空調負荷が大きい空間に設置された室内機の場合においては、モニタリング動作によって続行されるサーモオフ運転の回数が設定した所定の回数に到達する前に、モニタリング動作によってサーモオン運転に切換える場合は、モニタリング動作において室内機ファン55が停止する所定の間隔を短くしていく制御でも構わない。すなわち、モニタリング動作によって続行されるサーモオフ運転の回数が少なくなるにつれて、室内機ファン55が停止する所定の間隔を短くする制御を行っても構わない。このような制御を行えば、空調負荷が大きい空間に設置された室内機の場合において、サーモオフ運転中に早くサーモオン運転に切換えることができるため、室内空気の温度が設定温度の範囲から外れてしまっている時間を短くすることができる。
【0056】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0057】
1…空気調和装置、2…室外機、5-1~5-10…室内機、10…冷媒回路、20…圧縮機、23…室外熱交換器、51…室内熱交換器、52…室内機膨張弁、55…室内機ファン、63…室内温度センサ、100…室外機制御装置、200…室内機制御装置