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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240702BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240702BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240702BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240702BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240702BHJP
【FI】
H01M8/04 J
F24H1/00 631A
F24H15/10
H01M8/00 Z
H01M8/043
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/12 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020069091
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166148
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安岐 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】上山 浩司
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157272(JP,A)
【文献】特開2017-147199(JP,A)
【文献】特開2019-160447(JP,A)
【文献】特開2020-012598(JP,A)
【文献】特開2014-191949(JP,A)
【文献】特開2012-133915(JP,A)
【文献】特開2016-012520(JP,A)
【文献】特開2010-010018(JP,A)
【文献】特開2017-037819(JP,A)
【文献】特開2017-068913(JP,A)
【文献】特開2010-287362(JP,A)
【文献】特開2008-218356(JP,A)
【文献】特開2015-178718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 18/00
F24H 1/00
F24H 1/18 - 1/20
F24H 4/00 - 4/06
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムにおいて、
前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させる制御装置を備え
前記制御装置は、前記ポンプの回転数を増加させた後に所定時間が経過し、かつ前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの作動を一時的に停止させると共に、停止前の回転数で回転するように前記ポンプを再度作動させる燃料電池システム。
【請求項2】
燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムにおいて、
前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が空焚きにより前記ヒータを破損させる温度よりも低く定められた所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させる制御装置を備える燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、前記ヒータは、セラミックヒータである燃料電池システム。
【請求項4】
燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムの制御方法において、
前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させ、前記ポンプの回転数を増加させた後に所定時間が経過し、かつ前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの作動を一時的に停止させると共に、停止前の回転数で回転するように前記ポンプを再度作動させる燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムの制御方法において、
前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が空焚きにより前記ヒータを破損させる温度よりも低く定められた所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させる燃料電池システムの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池を含む発電モジュールと、発電モジュールの排熱により加熱された水を貯留する貯湯タンクとを含む燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、改質用原料と改質水とから燃料を生成する改質部と、燃料電池からの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、貯湯水を貯水する貯湯槽と、燃料電池側からの燃焼排ガスと貯湯水との熱交換により当該燃焼排ガスに含まれている水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成する熱交換器と、循環水ポンプおよびヒータを含むと共に貯湯槽と熱交換器との間で貯湯水を循環させる貯湯水循環ラインと、熱交換器からの凝縮水を改質水として貯留する改質水タンクと、燃料電池を発電させるための制御を行う制御装置とを含む燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムでは、系統電源から電力が送電される際、当該系統電源からの電力および電力変換装置からの電力が第一負荷装置に供給される。また、停電等により系統電源の送電が停止されると共に燃料電池からの電力のみが電力変換装置から出力される自立発電運転中には、第二負荷装置に電力変換装置からの電力のみが供給される。更に、かかる燃料電池システムの制御装置は、自立発電運転中に、水量センサによって検出された改質水タンクの水量が判定水量以上である場合、燃料電池の目標発電出力量を最大発電出力量に設定し、水量センサによって検出された改質水タンクの水量が判定水量未満である場合、燃料電池の目標発電出力量を電力センサによって検出された第二負荷装置の消費電力量と第一所定電力量との和に設定する。これにより、燃料電池の実際の発電出力量が第二負荷装置の消費電力より最低でも第一所定電力量だけ大きくなるので、燃料電池に負荷がかかって燃料電池の出力が停止されるのを抑制することができる。
【0003】
また、従来、燃料と酸化剤ガスとにより発電する発電ユニットと、発電ユニットの発電に伴って発生する燃焼排ガスと貯湯槽から貯湯水供給管を介して供給される循環水とを熱交換させる熱交換器と、循環水を圧送する循環水ポンプと、循環水ポンプの回転数に関連する物理量を検出するセンサと、貯湯水供給管に設けられて循環水を加熱するヒータと、発電ユニットの発電、循環水ポンプの駆動およびヒータの作動を統括して制御する制御装置とを含む燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。この燃料電池システムの制御装置は、循環水ポンプが所定の駆動デューティで駆動される際に、上記センサによって検出された物理量に基づく回転数が予め設定された基準回転数以下である場合、ヒータが循環水を加熱することを許可し、回転数が基準回転数よりも高い場合、ヒータが循環水を加熱することを禁止する。すなわち、循環水ポンプの回転数が基準回転数以下である場合には、貯湯水供給管の内部に循環水が存在しており、ヒータを作動させても空焚きにはならない。一方、循環水ポンプの回転数が基準回転数よりも高い場合には、貯湯水供給管の内部に循環水が存在していないことから、ヒータの作動を禁止することで当該ヒータの空焚きを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-157272号公報
【文献】特開2019-160447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような燃料電池システムでは、系統電源から電力が供給されず、燃料電池からの電力のみを所定の負荷に供給する自立運転中に、循環水を加熱するヒータに余剰電力を消費させることで、電力要求の変動を吸収することができる。しかしながら、特許文献1に記載された燃料電池システムでは、自立運転中に改質水タンクの水量が判定水量以上であって燃料電池の目標発電出力量が最大発電出力量に設定されている際に貯湯水循環ラインを流通する水の流量が減少すると、ヒータが空焚きにより破損してしまうおそれがある。また、特許文献2に記載された燃料電池システムでは、自立運転中に循環水ポンプの回転数が基準回転数よりも高くなってヒータの作動が禁止されると、余剰電力をヒータに消費させて自立運転を継続させ得なくなることがある。
【0006】
そこで、本開示は、貯湯タンクと熱交換器とに接続された循環通路内の水を加熱するヒータの空焚きを抑制しつつ、燃料電池を含む発電モジュールの自立運転を継続して実行可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムにおいて、前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させる制御装置を含むものである。
【0008】
本開示の燃料電池システムでは、系統電源による電力供給が停止されたときに、発電モジュールにより発電される電力のみを複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力をヒータに消費させる自立運転が実行される。そして、自立運転の実行中に循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときには、ポンプの回転数が増加させられると共に、発電モジュールによる発電電力が低下させられる。これにより、自立運転の実行中に循環通路内の水の温度が上昇したときに、循環通路を流通する水の流量を増やすと共にヒータの消費電力を低下させ、循環通路内の水の温度を低下させると共にヒータの空焚きを抑制することができる。この結果、ヒータの空焚きを抑制しつつ、当該ヒータによる電力消費を許容して燃料電池を含む発電モジュールの自立運転を継続して実行することが可能となる。
【0009】
また、前記制御装置は、前記ポンプの回転数を増加させた後に所定時間が経過し、かつ前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの作動を一時的に停止させると共に、停止前の回転数で回転するように前記ポンプを再度作動させるものであってもよい。すなわち、ポンプの回転数を増加させても循環通路内の水の温度が低下していかない場合、ポンプがエアを吸入するエア噛みが発生し、それにより循環通路を流通する水の流量が減少していることになる。従って、ポンプの回転数を増加させた後に所定時間が経過し、かつ循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときには、ポンプの作動を一時的に停止させてエアを抜き、停止前の回転数で回転するように前記ポンプを再度作動させることで、循環通路を流通する水の流量を良好に確保することが可能となる。
【0010】
更に、前記所定温度は、空焚きにより前記ヒータを破損させる温度よりも低く定められてもよい。これにより、循環通路内の水を加熱するヒータの空焚きを極めて良好に抑制することが可能となる。
【0011】
また、前記ヒータは、セラミックヒータであってもよい。すなわち、本開示の燃料電池システムでは、ヒータの空焚きを抑制しつつ、発電モジュールの自立運転を継続させることができるので、ヒータとして低コストかつコンパクトなセラミックヒータを採用してシステム全体の大型化やコストアップを良好に抑制することが可能となる。
【0012】
本開示の燃料電池システムの制御方法は、燃料電池を含む発電モジュールと、前記発電モジュールの排熱を熱源とする熱交換器と、水を貯留する貯湯タンクと、前記熱交換器と前記貯湯タンクとに接続された循環通路と、前記熱交換器と前記貯湯タンクとの間で前記循環通路を介して水を循環させるポンプと、前記発電モジュールの余剰電力を消費して前記循環通路内の水を加熱するヒータとを含み、前記発電モジュールからの電力と系統電源からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷に供給可能な燃料電池システムの制御方法において、前記系統電源による電力供給が停止されたときに、前記発電モジュールにより発電される電力のみを前記複数の負荷のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を前記ヒータに消費させる自立運転を実行すると共に、前記自立運転の実行中に前記循環通路内の水の温度が所定温度以上であるときに、前記ポンプの回転数を増加させると共に、前記発電モジュールによる発電電力を低下させるものである。
【0013】
かかる方法によれば、貯湯タンクと熱交換器とに接続された循環通路内の水を加熱するヒータの空焚きを抑制しつつ、燃料電池を含む発電モジュールの自立運転を継続して実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】本開示の燃料電池システムにおいて実行されるヒータ保護ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3図2のヒータ保護ルーチンが実行される間の循環通路内の水温、発電モジュールの発電電力、ヒータの出力およびポンプの駆動デューティの時間変化を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は、本開示の燃料電池システム10を示す概略構成図である。同図に示す燃料電池システム10は、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタックFCSを有する発電ユニット20と、湯水を貯留する貯湯タンク101を有する給湯ユニット100と、システム全体を制御する制御装置80とを含むコジェネレーションシステムである。また、発電ユニット20は、燃料電池スタックFCSや、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31、気化器(蒸発器)33、2つの改質器34等を含む発電モジュール30と、発電モジュール30の気化器33に例えば都市ガス(天然ガス)やLPガスといった原燃料ガス(原燃料)を供給するための原燃料ガス供給系統40と、発電モジュール30の燃料電池スタックFCSにカソードガスとしての空気を供給するためのカソードガス供給系統50と、発電モジュール30の気化器33に改質水を供給するための改質水供給系統55と、発電モジュール30で発生した排熱を回収するための排熱回収系統60と、燃料電池スタックFCSの出力端子に接続されたパワーコンディショナ71と、これらを収容する筐体22とを含む。
【0017】
本実施形態において、発電モジュール30は、2つの燃料電池スタックFCSを含み、2つの燃料電池スタックFCSは、間隔をおいて互いに対向するようにモジュールケース31内に配置されたマニホールド32上に設置される。各燃料電池スタックFCSは、例えば酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とをそれぞれ有すると共に図1中左右方向(水平方向)に配列された複数の固体酸化物形の単セルSCを含む。各単セルSCのアノード電極内には、図示しないアノードガス通路が単セルSCの配列方向と直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。また、各単セルSCのカソード電極の周囲には、カソードガスを流通させる図示しないカソードガス通路が単セルSCの配列方向と直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。各単セルSCのアノードガス通路は、マニホールド32に形成された図示しないアノードガス通路に接続され、各単セルSCのカソードガス通路は、モジュールケース31内の図示しないカソードガス通路に接続される。
【0018】
発電モジュール30の気化器33および改質器34は、モジュールケース31内の2つの燃料電池スタックFCSの上方に両者と間隔をおいて配設される。本実施形態では、一方の燃料電池スタックFCSの上方に気化器33および一方の改質器34が配置され、他方の燃料電池スタックFCSの上方に他方の改質器34が配置される。更に、一方の燃料電池スタックFCSと気化器33および一方の改質器34との間、並びに他方の燃料電池スタックFCSと他方の改質器34との上下方向における間には、燃料電池スタックFCSの作動や、気化器33および改質器34での反応に必要な熱を発生させる燃焼部35が画成されている。各燃焼部35には、点火ヒータ36が設置され、少なくとも何れか一方の燃焼部35には、燃料電池スタックFCSに近接するように温度センサ37が設置されている。
【0019】
気化器33は、燃焼部35からの熱により原燃料ガス供給系統40からの原燃料ガスと改質水供給系統55からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器33により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混ざり合い、予熱された原燃料ガスと水蒸気との混合ガスは、当該気化器33から改質器34に流入する。改質器34は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼部35からの熱の存在下で、改質触媒による気化器33からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器34は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器34によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。改質器34により生成されたアノードガスは、図示しない配管やマニホールド32のアノードガス通路を介して各単セルSCのアノード電極に供給される。
【0020】
また、燃料電池スタックFCSの各単セルSCのカソード電極には、モジュールケース31内のカソードガス通路を介して酸素を含むカソードガスとしての空気が供給される。各単セルSCのカソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。各単セルSCにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)およびカソードガス(以下、「カソードオフガス」という)は、各単セルSCのアノードガス通路やカソードガス通路から上方の燃焼部35へと流出する。
【0021】
各単セルSCから燃焼部35に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各単セルSCから燃焼部35に流入した酸素を含むカソードオフガスと混ざり合う。以下、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを「オフガス」という。そして、点火ヒータ36により点火させられて燃焼部35でオフガス(アノードオフガス)が着火すると、当該オフガスの燃焼により、燃料電池スタックFCSの作動や、気化器33での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器34での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、オフガスの燃焼に伴い、燃焼部35では、水蒸気を含む燃焼排ガスが生成される。
【0022】
図1に示すように、原燃料ガス供給系統40は、都市ガスやLPガスを供給する原燃料供給源1と気化器33とを結ぶ原燃料ガス供給管41と、当該原燃料ガス供給管41に組み込まれた原燃料ガス供給弁(電磁開閉弁)42および原燃料ガスポンプ44と、気化器33と原燃料ガスポンプ44との間に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれた例えば常温脱硫式の脱硫器45とを含む。更に、原燃料ガス供給管41の原燃料ガス供給弁42と原燃料ガスポンプ44との間には、圧力センサ46と第1および第2流量計47,48とが組み込まれている。圧力センサ46は、原燃料ガスポンプ44の吐出口近傍に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれ、当該原燃料ガス供給管41を流通する原燃料ガスの圧力を検出する。第1および第2流量計47,48は、図示しない温度センサおよびヒータを含む熱式流量計であり、当該ヒータから熱が与えられた原燃料ガスの温度変化に基づいて、原燃料供給源1から改質器34(気化器33)に向けて原燃料ガス供給管41を流通する原燃料ガスの単位時間あたりの流量をそれぞれ検出する。
【0023】
カソードガス供給系統50は、モジュールケース31内のカソードガス通路に接続されるカソードガス供給管51と、カソードガス供給管51のガス入口に設置されたエアフィルタ52と、カソードガス供給管51に組み込まれたブロワ53とを含む。ブロワ53を作動させることで、エアフィルタ52を介して吸入されたカソードガスとしての空気が当該ブロワ53により上記カソードガス通路を介して各燃料電池スタックFCSへと圧送(供給)される。また、カソードガス供給管51には、当該カソードガス供給管51を流通するカソードガスの単位時間あたりの流量が所定値に達するとオンする流量スイッチ54が設置されている。
【0024】
改質水供給系統55は、気化器33に接続される改質水供給管56と、改質水供給管56に接続されると共に改質水を貯留する改質水タンク57と、改質水供給管56に組み込まれた改質水ポンプ58とを含む。改質水ポンプ58を作動させることで、改質水タンク57内の改質水が当該改質水ポンプ58により気化器33へと圧送(供給)される。また、改質水タンク57内には、貯留されている改質水を精製する図示しない水精製器が設置されている。
【0025】
排熱回収系統60は、給湯ユニット100の貯湯タンク101に接続された循環配管(循環通路)61と、循環配管61を流通する湯水と発電モジュール30の燃焼部35からの燃焼排ガスとを熱交換させる熱交換器62と、循環配管61に組み込まれた循環ポンプ63とを含む。循環ポンプ63を作動させることで、当該循環ポンプ63により貯湯タンク101に貯留されている湯水を熱交換器62へと導入し、熱交換器62で燃焼排ガスから熱を奪って昇温した湯水を貯湯タンク101へと返送することができる。
【0026】
更に、排熱回収系統60は、循環配管61に組み込まれたラジエータ64と、ラジエータ64に空気を送り込むラジエータファン(電動ファン)65と、発電モジュール30からの電力を消費して循環配管61内の湯水を加熱する電気ヒータ66と、循環配管61内の湯水の温度Twを検出する温度センサ(サーミスタ)67とを含む。ラジエータ64は、熱交換器62と循環ポンプ63との間に位置するように循環配管61に組み込まれ、電気ヒータ66は、循環ポンプ63とラジエータ64との間に位置するように循環配管61に組み込まれる。また、本実施形態では、電気ヒータ66として低コストかつコンパクトなセラミックヒータが採用されている。これにより、燃料電池システム10の大型化やコストアップを良好に抑制することが可能となる。更に、温度センサ67は、電気ヒータ66に近接するように当該電気ヒータ66の下流側に設置される。
【0027】
電気ヒータ66は、発電モジュール30(燃料電池スタックFCS)に要求される出力が常用定格電力Pr(本実施形態では、例えば700W)よりも低い場合、余剰電力を消費するように作動させられる。この際、温度センサ67により検出される温度Twが設定温度になるように、循環ポンプ63がデューティ制御されると共に、必要に応じてラジエータファン65が作動させられる。これにより、発電モジュール30に要求される出力が低い場合であっても、熱交換器62により各燃料電池スタックFCSの排熱を回収したり、電気ヒータ66に発電モジュール30の余剰電力を消費させたりしながら、発電モジュール30の運転を継続させることが可能となる。また、ラジエータファン65を適宜作動させてラジエータ64に空気を送り込むことで、循環配管61を流通する湯水を冷却し(放熱させ)、貯湯タンク101内の湯水の温度が必要以上に高まるのを抑制することができる。
【0028】
また、排熱回収系統60の熱交換器62(燃焼排ガスの通路)は、配管を介して改質水タンク57に接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が貯湯タンク101からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、当該配管を介して改質水タンク57内に導入される。更に、熱交換器62の燃焼排ガスの通路は、排気管68に接続されている。これにより、発電モジュール30の燃焼部35から排出されて熱交換器62で水分が除去された排ガスは、排気管68を介して大気中に排出される。
【0029】
パワーコンディショナ71は、各燃料電池スタックFCSからの直流電力を昇圧するDC/DCコンバータや、DC/DCコンバータからの直流電力を交流電力に変換するインバータ等を含む(何れも図示省略)。パワーコンディショナ71(インバータ)の出力端子は、系統電源2に接続された電力ライン3に接続される。これにより、系統電源2からの電力と、各燃料電池スタックFCSからの電力(上記インバータにより変換された交流電力)との少なくとも何れか一方を家電製品等の複数の負荷4に供給することが可能となる。更に、燃料電池システム10は、パワーコンディショナ71に接続された電源基板72を含む。電源基板72は、各燃料電池スタックFCSからの直流電力や系統電源2からの交流電源を低圧の直流電力に変換し、原燃料ガス供給弁42や原燃料ガスポンプ44、ブロワ53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、ラジエータファン65等の補機類、温度センサ37等のセンサ類、更には制御装置80等に当該直流電力を供給する。
【0030】
また、パワーコンディショナ71や電源基板72等が配置される補機室内には、当該パワーコンディショナ71や電源基板72等を冷却するための冷却ファン(図示省略)と、換気ファン24とが配置されている。図示しない冷却ファンは、パワーコンディショナ71や電源基板72の発熱部に空気を送り込み、当該発熱部を冷却して昇温した空気は、換気ファン24により大気中に排出される。
【0031】
制御装置80は、CPU81や、各種プログラムを記憶するROM82、データを一時的に記憶するRAM83、入力ポートおよび出力ポート等(何れも図示省略)を含むコンピュータである。制御装置80は、温度センサ37や圧力センサ46、第1および第2流量計47,48、温度センサ67等の検出値、流量スイッチ54からの信号、電圧センサ88により検出される発電モジュール30(燃料電池スタックFCS)の出力電圧(スタック電圧)Vs、電流センサ89により検出される発電モジュール30(燃料電池スタックFCS)の出力電流(スタック電流)Is等を入力ポートを介して入力する。また、制御装置80は、換気ファン24や、点火ヒータ36、原燃料ガス供給弁42のソレノイド、原燃料ガスポンプ44、ブロワ53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、ラジエータファン65、電気ヒータ66、パワーコンディショナ71(DC/DCコンバータおよびインバータ)、電源基板72,図示しない表示部等への制御信号を出力ポートを介して出力し、これらの機器を制御する。更に、制御装置80には、無線式または有線式の通信回線を介して図示しないリモコンが接続される。制御装置80は、燃料電池システム10のユーザにより操作された当該リモコンからの信号に基づいて各種制御を実行する。
【0032】
上述のような燃料電池システム10では、停電等により系統電源2による電力供給が停止されたときに、上記複数の負荷4のうちの予めユーザにより選択された所定負荷(1つまたは複数の電気機器)に発電モジュール30(各燃料電池スタックFCS)により発電された電力のみを供給すると共に余剰電力を循環配管61の電気ヒータ66に消費させる自立運転が実行される。この際、制御装置80は、パワーコンディショナ71すなわち発電モジュール30から出力される電力が上記常用定格電力Prになるように電力指令値Pfcを設定し、当該電力指令値Pfcに基づいて対象機器を制御する。また、制御装置80は、発電モジュール30の出力電圧Vsおよび出力電流Isから所定負荷(ユーザ)により要求されているユーザ要求電力Puを算出すると共に、常用定格電力Pr、ユーザ要求電力Puおよび補機消費電力とから余剰電力を算出し、当該余剰電力を消費するように循環配管61の電気ヒータ66を制御する。更に、制御装置80は、温度センサ67により検出される温度Twが設定温度になるように、循環ポンプ63をデューティ制御すると共に、必要に応じてラジエータファン65を作動させる。
【0033】
ここで、かかる自立運転が実行されると共に電気ヒータ66が作動しているときに、循環配管61内の湯水の流量によっては、電気ヒータ66の空焚きが発生してしまうおそれがある。この場合、何ら対策を施さなければ、電気ヒータ66の保護を図る観点から、発電モジュール30の発電すなわち自立運転を停止させなければならない。このため、燃料電池システム10では、自立運転の実行中、電気ヒータ66の保護を図りつつ自立運転を継続させるために、制御装置80により図2に示すヒータ保護ルーチンが実行される。
【0034】
図2の燃料不足判定ルーチンは、上記自立運転が実行されており、電気ヒータ66が作動している間に制御装置80により所定時間おきに繰り返し実行される。ヒータ保護ルーチンの開始に際して、制御装置80(CPU81)は、循環配管61に設置された温度センサ67により検出される循環配管61内の湯水の温度Twと、別途算出されたユーザ要求電力Puとを取得する(ステップS100)。次いで、制御装置80は、温度Twが予め定められた閾値(所定温度)Twref以上であるか否かを判定する(ステップS110)。閾値Twrefは、実験・解析を経て取得される空焚きにより電気ヒータ66を破損させる温度Tx(図3参照)よりも低い温度として予め定められる。
【0035】
温度Twが閾値Twref未満であると判定した場合(ステップS110:NO)、制御装置80は、上述の電力指令値Pfcを常用定格電力Prに設定すると共に、上記余剰電力を消費するように循環配管61の電気ヒータ66を制御する(ステップS115)。更に、制御装置80は、温度センサ67により検出される温度Twが上記設定温度になるように循環ポンプ63の駆動デューティを設定し(ステップS125)、ヒータ保護ルーチンを一旦終了させる。制御装置80は、次の実行タイミングが到来した段階で、当該燃料不足判定ルーチンを再度実行する。
【0036】
一方、温度Twが閾値Twref以上であると判定した場合(ステップS110:YES)、制御装置80は、ステップS100にて取得したユーザ消費電力Puに所定値ΔP(本実施形態では、例えば150W)を加算した値を電力指令値Pfcに設定する(ステップS120)。所定値ΔPは、当該所定値ΔPとユーザ消費電力Puとの和が常用定格電力Prよりも小さくなるように予め定められる。また、ステップS120において、制御装置80は、上記余剰電力を消費するように循環配管61の電気ヒータ66を制御すると共に、発電モジュール30の出力が安定するまで、電気ヒータ66の出力(発生熱量)が発電モジュール30(各燃料電池スタックFCS)の出力電力の低下に追従して低下するように当該電気ヒータ66を制御する。ステップS120の処理の後、制御装置80は、カウンタCをインクリメントし(ステップS130)、当該カウンタCが予め定められた閾値Cref未満であるか否かを判定する(ステップS140)。カウンタCが閾値Cref未満であると判定した場合(ステップS130:YES)、制御装置80は、循環ポンプ63の駆動デューティを100%に設定し(ステップS150)、ヒータ保護ルーチンを一旦終了させる。制御装置80は、次の実行タイミングが到来した段階で、当該燃料不足判定ルーチンを再度実行する。
【0037】
また、カウンタCが閾値Cref以上であると判定した場合(ステップS140:NO)、制御装置80は、カウンタCをリセットした上で、循環ポンプ63の駆動デューティを0%に設定し(ステップS160)、ヒータ保護ルーチンを一旦終了させる。制御装置80は、次の実行タイミングが到来した段階で、当該燃料不足判定ルーチンを再度実行する。ステップS160にてカウンタCがリセットされた後、ステップS110にて温度Twが閾値Twref以上であると判定された場合には、ステップS140にて肯定判断がなされ、上記ステップS150の処理が実行されることになる。これにより、ステップS140にてカウンタCが閾値Cref以上であると判定された場合には、循環ポンプ63の作動が一時的に停止された後、駆動デューティが再度100%に設定され、循環ポンプ63は、停止前の回転数で回転するように制御される。
【0038】
上述のようなヒータ保護ルーチンが実行される結果、燃料電池システム10では、図3に示すように、上記自立運転の実行中に循環配管61内の湯水の温度Twが閾値Twref以上になると(図3における時刻t1)、発電モジュール30への電力指令値Pfcが常用定格電力Prよりも低く設定される(ステップS120)と共に、循環ポンプ63の駆動デューティが100%に設定される(ステップS150)。これにより、循環ポンプ63の回転数が増加すると共に、発電モジュール30(各燃料電池スタックFCS)による発電電力が低下する。従って、自立運転の実行中に循環配管61内の湯水の温度Twが上昇したときに、循環配管61を流通する湯水の流量を増やすと共に電気ヒータ66の消費電力を低下させ、循環配管61内の湯水の温度Twを低下させると共に電気ヒータ66の空焚きを抑制することができる。この結果、電気ヒータ66の空焚きを抑制しつつ、当該電気ヒータ66による電力消費を許容して燃料電池スタックFCSを含む発電モジュール30の自立運転を継続して実行することが可能となる。
【0039】
また、閾値Twrefを空焚きにより電気ヒータ66を破損させる温度よりも低く定めることで、循環配管61内の湯水を加熱する電気ヒータ66の空焚きを極めて良好に抑制することができる。加えて、燃料電池システム10では、電気ヒータ66の空焚きを抑制しつつ、発電モジュール30の自立運転を継続させることができるので、電気ヒータ66として低コストかつコンパクトなセラミックヒータを採用してシステム全体の大型化やコストアップを良好に抑制することが可能となる。ただし、電気ヒータ66は、セラミックヒータ以外のヒータであってもよい。
【0040】
更に、上記燃料電池システム10において、循環ポンプ63の駆動デューティ(回転数)を増加させた後にカウンタCの閾値Crefとヒータ保護ルーチンの実行周期との積に相当する時間(所定時間)が経過し、かつ循環配管61内の湯水の温度Twが閾値Twref以上であるときには(図3における時刻t2)、循環ポンプ63が一時的に作動停止させられた後、停止前の回転数で回転するように制御される(ステップS110-S160)。すなわち、循環ポンプ63の回転数を増加させても循環配管61内の湯水の温度Twが低下していかない場合、循環ポンプ63がエアを吸入するエア噛みが発生し、それにより循環配管61を流通する湯水の流量が減少していることになる。従って、循環ポンプ63の回転数を増加させた後に閾値Crefに基づく所定時間が経過し、かつ循環配管61内の湯水の温度Twが閾値Twref以上であるときには、循環ポンプ63の作動を一時的に停止させてエアを抜き、停止前の回転数で回転するように当該循環ポンプ63を再度作動させることで、循環配管61を流通する湯水の流量を良好に確保することが可能となる。なお、循環ポンプ63を一時的に停止させる時間は、任意に定めることができる。
【0041】
また、循環ポンプ63の駆動デューティ(回転数)を増加させた後に循環配管61内の湯水の温度Twが閾値Twref未満になると(図3における時刻t3)、発電モジュール30への電力指令値Pfcが常用定格電力Prに設定されると共に(ステップS115)、温度センサ67により検出される温度Twが設定温度になるように循環ポンプ63の駆動デューティが設定される(ステップS125)。この際、ステップS115では、発電モジュール30の出力が安定するまで、電気ヒータ66は、その出力(発生熱量)が発電モジュール30(各燃料電池スタックFCS)の出力電力の増加に追従して増加するように制御される。
【0042】
以上説明したように、本開示の燃料電池システム10は、燃料電池スタックFCSを含む発電モジュール30と、当該発電モジュール30の排熱を熱源とする熱交換器62と、湯水を貯留する貯湯タンク101と、熱交換器62と貯湯タンク101とに接続された循環配管61と、熱交換器62と貯湯タンク101との間で循環配管61を介して湯水を循環させる循環ポンプ63と、発電モジュール30の余剰電力を消費して循環配管61内の湯水を加熱する電気ヒータ66と、制御装置80を含み、発電モジュール30からの電力と系統電源2からの電力との少なくとも何れか一方を複数の負荷4に供給可能なものである。そして、制御装置80は、系統電源2による電力供給が停止されたときに、発電モジュール30により発電される電力のみを複数の負荷4のうちの所定負荷に供給すると共に余剰電力を電気ヒータ66に消費させる自立運転を実行すると共に、自立運転の実行中に循環配管61内の湯水の温度Twが閾値Twref以上であるときに、循環ポンプ63の回転数を増加させると共に、発電モジュール30による発電電力を低下させる(図2のステップS110-S150)。これにより、電気ヒータ66の空焚きを抑制しつつ、当該電気ヒータ66による電力消費を許容して燃料電池スタックFCSを含む発電モジュール30の自立運転を継続して実行することが可能となる。
【0043】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、燃料電池システムの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 原燃料供給源、2 系統電源、3 電力ライン、4 負荷、10 燃料電池システム、20 発電ユニット、22 筐体、24 換気ファン、30 発電モジュール、31 モジュールケース、32 マニホールド、33 気化器、34 改質器、35 燃焼部、36 点火ヒータ、37 温度センサ、40 原燃料ガス供給系統、41 原燃料ガス供給管、42 原燃料ガス供給弁、44 原燃料ガスポンプ、45 脱硫器、46 圧力センサ、47 第1流量計、48 第2流量計、49 第3流量計、50 カソードガス供給系統、51 カソードガス供給管、52 エアフィルタ、53 ブロワ、54 流量スイッチ、55 改質水供給系統、56 改質水供給管、57 改質水タンク、58 改質水ポンプ、60 排熱回収系統、61 循環配管、62 熱交換器、63 循環ポンプ、64 ラジエータ、65 ラジエータファン、66 電気ヒータ、67 温度センサ、68 排気管、71 パワーコンディショナ、72 電源基板、80 制御装置、81 CPU、82 ROM、83 RAM、88 電圧センサ、89 電流センサ、100 給湯ユニット、101 貯湯タンク、FCS 燃料電池スタック、SC 単セル。
図1
図2
図3