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特許7512661可塑化装置、三次元造形装置、および射出成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】可塑化装置、三次元造形装置、および射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20240702BHJP
   B29B 7/14 20060101ALI20240702BHJP
   B29B 7/42 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 48/47 20190101ALI20240702BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240702BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20240702BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240702BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/321
B29B7/14
B29B7/42
B29C45/00
B29C48/47
B29C64/106
B29C64/241
B29C64/295
B33Y30/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020079297
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172045
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】江成 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】林 里緒菜
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131115(JP,A)
【文献】特開2019-206160(JP,A)
【文献】特開2009-269183(JP,A)
【文献】国際公開第2007/119533(WO,A1)
【文献】特開2019-202458(JP,A)
【文献】特開2020-015219(JP,A)
【文献】特開2020-029019(JP,A)
【文献】特開2020-049791(JP,A)
【文献】特開2010-241016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-7/94
B29C 45/00-45/84
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化する可塑化装置であって、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記バレルに設けられ、前記第1溝に供給された前記材料を加熱する第1加熱部および第2加熱部と、
前記バレルに設けられ、前記第1溝に供給された前記材料を冷却する冷却部と、
前記第1加熱部および前記第2加熱部を制御する制御部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置し、
前記回転軸方向からみて、前記第2加熱部は、前記第1加熱部よりも前記連通孔の近くに設けられており、
前記回転軸方向からみて、前記冷却部は、前記連通孔、前記第1加熱部、および前記第2加熱部を囲むように設けられた冷却流路を有し、
前記制御部は、前記第1加熱部の温度が、前記第2加熱部の温度よりも低くなるように制御する、可塑化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記回転軸方向からみて、
前記接続部は、前記中央部の周りを周る渦巻状の形状を有し、
前記溝形成面の外周側において前記接続部が隣りに存在しない外周部と、前記外周部と連続し、前記溝形成面の外周側において前記接続部が隣りに存在する内周部と、を有し、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記外周部に重ならない位置であって、前記内周部に重なる位置に位置する、可塑化装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝は、前記第2溝の前記外周側の端から前記連通孔に向かって、前記スクリューの回転方向に沿った螺旋状の溝である、可塑化装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記対向面には、複数の前記第2溝が設けられており、
全ての前記第2溝は、前記連通孔に直接的に接続されており、
前記回転軸方向からみて、全ての前記第2溝の前記外周側の端の各々は、前記スクリューを1回転させた場合のある地点において、前記外周部に重ならない位置であって、前記内周部に重なる位置に位置する、可塑化装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記回転軸方向からみて、前記第1加熱部および前記第2加熱部は、環状の形状を有する、可塑化装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記冷却部は、前記冷却流路に冷媒を導入する入口、前記冷却流路を流れた前記冷媒を前記冷却流路の外に排出する出口、および、前記出口から排出された前記冷媒を前記入口に循環させる循環装置を有する、可塑化装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置によって可塑化された前記材料をステージに向て吐出するノズルと、を備える、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の可塑化装置と、
前記可塑化装置によって可塑化された前記材料を型向けて吐出するノズルと、
備える、射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化装置、三次元造形装置、および射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料を可塑化する可塑化装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、材料流入通路が一端面に開口するバレルと、バレルの一端面に対して摺接する端面を有するローターと、ローターの端面に形成された螺旋溝と、を備えた可塑化送出装置が記載されている。螺旋溝は、径方向外側端部から材料が供給されるとともに、径方向内側端部がバレルの材料流入通路の開口端に連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-241016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなローターを備えた可塑化送出装置では、材料の搬送と材料の溶融とのバランスによって、安定して材料を可塑化することができる。理想的には、螺旋溝の径方向外側端部である材料の供給部では、材料が固体の状態であり、螺旋溝の径方向内側端部に向かうにつれて、材料が溶融した状態となっていることが望ましい。例えば供給部で材料が溶融した状態であると、材料のバレルに対する摩擦力が材料のローターに対する摩擦力よりも小さくなる。そのため、材料がローターと共に空回りし、安定して材料を可塑化できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に可塑化装置の一態様は、
材料を可塑化する可塑化装置であって、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【0007】
本発明に三次元造形装置の一態様は、
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
材料を可塑化して溶融材料にする可塑化部と、
前記可塑化部から供給された前記溶融材料をステージに向かって吐出するノズルと、
を含み、
前記可塑化部は、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【0008】
本発明に射出成形装置の一態様は、
材料を可塑化して溶融材料にする可塑化部と、
前記可塑化部から供給された前記溶融材料を金型に射出するノズルと、
を含み、
前記可塑化部は、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
図3】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューとバレルとの相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレルの下から透視した図。
図4】本実施形態に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す平面図。
図5】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューとバレルとの相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレルの下から透視した図。
図6】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態に係る三次元造形装置の造形処理を説明するためのフローチャート。
図8】本実施形態に係る三次元造形装置によって造形される三次元造形物を模式的に示す断面図。
図9】第2溝が第1溝の材料供給部と重なっている例を模式的に示す断面図。
図10】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図11】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置のフラットスクリューとバレルとの相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレルの下から透視した図。
図12】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す平面図。
図13】本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す平面図。
図14】本実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 三次元造形装置
1.1. 構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す断面図である。なお、図1では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0012】
三次元造形装置100は、図1に示すように、例えば、造形ユニット10と、ステージ20と、移動機構30と、制御部40と、を含む。
【0013】
三次元造形装置100は、造形ユニット10のノズル170からステージ20に溶融材料を吐出させつつ、移動機構30を駆動して、ノズル170とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。造形ユニット10の詳細な構成は、後述する。
【0014】
ステージ20は、移動機構30によって移動される。三次元造形物は、ステージ20の造形面22に形成される。
【0015】
移動機構30は、造形ユニット10とステージ20との相対的な位置を変化させる。図示の例では、移動機構30は、造形ユニット10に対して、ステージ20を移動させる。移動機構30は、例えば、3つのモーター32の駆動力によって、ステージ20をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。モーター32は、制御部40によって制御される。
【0016】
なお、移動機構30は、ステージ20を移動させずに、造形ユニット10を移動させる構成であってもよい。または、移動機構30は、造形ユニット10およびステージ20の両方を移動させる構成であってもよい。
【0017】
制御部40は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部40は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部40は、後述する駆動モーター124、加熱部150,152、冷却部154、および移動機構30を制御する。なお、制御部40は、コンピ
ューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0018】
1.2. 造形ユニット
造形ユニット10は、図1に示すように、例えば、材料投入部110と、可塑化部(可塑化装置)120と、ノズル170と、を有している。
【0019】
材料投入部110には、ペレット状や粉末状の材料が投入される。ペレット状の材料としては、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)が挙げられる。材料投入部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料投入部110と可塑化部120とは、材料投入部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料投入部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。
【0020】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、第1加熱部150と、第2加熱部152と、冷却部154と、を有している。可塑化部120は、材料投入部110から供給された固体状態の材料を可塑化して、流動性を有するペースト状の溶融材料にして、ノズル170に供給する。
【0021】
なお、可塑化は溶融を含む概念であり、ガラス転移温度を示す材料の場合、可塑化は、材料の温度をガラス転移点温度以上にすることであり、ガラス転移点を示さない材料の場合、可塑化は、材料の温度を融点以上にすることであり、固体から流動性の有する状態に変化させることを溶融または可塑化という。
【0022】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が固定されている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0023】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に固定されている。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131側に接続されている。駆動モーター124は、制御部40によって制御される。
【0024】
フラットスクリュー130は、回転軸RA方向の大きさが、回転軸RA方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸RAは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸RAを中心に回転される。
【0025】
フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が設けられている。ここで、図2は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。図3は、フラットスクリュー130とバレル140との相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレル140の下から透視した図である。なお、便宜上、図2および図3では、図1に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0026】
フラットスクリュー130の第1溝134は、図2および図3に示すように、中央部135と、接続部136と、材料供給部137と、を有している。
【0027】
中央部135は、バレル140に設けられた連通孔146と対向している部分である。中央部135は、連通孔146と連通している。中央部135の形状は、例えば、Z軸方
向からみて、円形である。
【0028】
接続部136は、中央部135と材料供給部137とを接続する部分である。図示の例では、接続部136の形状は、Z軸方向からみて、中央部135の周りを周る渦巻状である。接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。
【0029】
材料供給部137は、溝形成面132の外周に設けられた部分である。すなわち、材料供給部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられた部分である。材料供給部137は、Z軸方向からみて、フラットスクリュー130の外周に接している部分である。言い換えると、材料供給部137は、側面133が開放された部分であり、フラットスクリュー130の側方から見える部分である。材料供給部137の深さは、接続部136の深さよりも大きくてもよい。材料投入部110から投入された材料は、材料供給部137から第1溝134に供給される。供給された材料は、接続部136および中央部135を通り、バレル140に設けられた連通孔146に搬送される。
【0030】
バレル140は、図1に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、連通孔146が設けられている。連通孔146は、ノズル流路172に連通している。ここで、図4は、バレル140を模式的に示す平面図である。
【0031】
バレル140の対向面142には、図4に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が設けられている。第2溝144は、複数設けられている。図示の例では、6つの第2溝144が設けられているが、その数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに設けられている。第2溝144は、連通孔146と接続されている。第2溝144は、連通孔146から外周148に向かって設けられている。第2溝144は、溶融材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0032】
第2溝144の形状は、図3に示すように、Z軸方向からみて、フラットスクリュー130の回転方向Rに凸なアーチ状である。より具体的には、第2溝144は、第2溝144の外周148側の端149から連通孔146に向かって、フラットスクリュー130の回転方向Rに沿って湾曲した螺旋状の溝である。言い換えれば図示の例のように、フラットスクリュー130の回転方向Rは、反時計回りの方向であり、第2溝144の形状は、連通孔146から時計回りの方向に延びる円弧状である。なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。
【0033】
第2溝144の外周148側の端149は、Z軸方向からみて、フラットスクリュー130を1回転させた場合に、材料供給部137と接続部136との境界線Bが描く軌跡Tの内側に位置する。すなわち、第2溝144の端149は、Z軸方向からみて、軌跡Tと重ならない。図示の例では、フラットスクリュー130の外周は円であり、境界線Bはフラットスクリュー130の外周と直交している。なお、便宜上、図3では、軌跡Tに複数の点からなる模様を付している。
【0034】
第2溝144の端149は、図5に示すように、Z軸方向からみて、接続部136の最外周部136aよりも中央部135側に位置する。すなわち、第2溝144の端149は、Z軸方向からみて、最外周部136aと重ならない。最外周部136aは、Z軸方向からみて、接続部136に挟まれてない部分である。なお、図5は、図3と同様に、フラットスクリュー130とバレル140との相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレル140の下から透視した図である。図5では、最外周部136aに複数の点からな
る模様を付している。
【0035】
第1加熱部150および第2加熱部152は、図1に示すように、バレル140の内部に設けられている。加熱部150,152は、材料投入部110から第1溝134に供給された材料を加熱する。第1加熱部150の温度は、第2加熱部152の温度よりも低い。第1加熱部150の温度は、例えば、供給される材料の融点未満である。第2加熱部152の温度は、例えば、供給される材料の融点以上である。ここで、図6は、三次元造形装置100を模式的に示す図1のVI-VI線断面図である。
【0036】
第1加熱部150および第2加熱部152は、図6に示すように、例えば、棒ヒーターである。加熱部150,152は、セラミックヒーターであってもよいし、電熱線ヒーターであってもよい。図示の例では、第1加熱部150および第2加熱部152は、2つずつ設けられている。2つの第1加熱部150の間に、連通孔146および2つの第2加熱部152が位置している。2つの第2加熱部152の間に、連通孔146が位置している。なお、図示はしないが、加熱部150,152は、環状の形状を有するリングヒーターであってもよい。
【0037】
なお、三次元造形装置100が有する加熱部の数は、特に限定されない。例えば、三次元造形装置100は、第1加熱部150および第2加熱部152の他に第3加熱部を有していてもよい。
【0038】
冷却部154は、バレル140の内部に設けられている。冷却部154は、例えば、冷却流路154aと、入口154bと、出口154cと、を有している。図示の例では、冷却流路154aは、バレル140の外周に沿って設けられている。Z軸方向からみて、冷却流路154aは、連通孔146および加熱部150,152を取り囲むように設けられている。冷却部154は、材料投入部110から第1溝134に供給された材料を冷却する。加熱部150,152および冷却部154によって、バレル140の外側から内側に向けて徐々に温度が高くなる温度勾配が形成される。
【0039】
冷却流路154aには、入口154bから冷媒が導入される。入口154bから導入された冷媒は、冷却流路154aを流れ、出口154cから排出される。冷却部154は、図示はしないが、入口154bおよび出口154cに接続された冷媒循環装置を有している。該冷媒循環装置は、冷媒を冷却させながら、出口154cから入口154bへと循環させる。冷媒としては、例えば、水、工業用水などが挙げられる。
【0040】
なお、加熱部150,152および冷却部154が設けられる位置は、特に限定されない。加熱部150,152および冷却部154は、スクリューケース122に設けられてもよいし、フラットスクリュー130に設けられてもよい。
【0041】
ノズル170は、図1に示すように、バレル140の下方に設けられている。ノズル170は、可塑化部120から供給された溶融材料を、ステージ20に向かって吐出する。ノズル170には、ノズル流路172と、ノズル孔174と、が設けられている。ノズル流路172は、連通孔146に連通している。ノズル孔174は、ノズル流路172に連通している。ノズル孔174は、ノズル170の先端部分に設けられた開口である。ノズル孔174の平面形状は、例えば、円形である。連通孔146からノズル流路172に供給された溶融材料は、ノズル孔174から吐出される。
【0042】
1.3. 造形処理
次に、本実施形態に係る三次元造形装置100の造形処理について説明する。図7は、本実施形態に係る三次元造形装置100の造形処理を説明するためのフローチャートであ
る。制御部40は、所定の開始操作を受け付けた場合に、三次元造形物OBを造形するための造形処理を開始する。以下、制御部40の造形処理について、順に説明する。
【0043】
1.3.1. ステップS1
まず、制御部40は、図7に示すように、三次元造形物OBを造形するための造形データを取得する処理を行う。造形データは、ステージ20の造形面22に対するノズル170の移動経路、ノズル170から吐出される溶融材料の量、フラットスクリュー130の回転速度、加熱部150,152の温度、および冷却部154の温度などに関する情報が表されたデータである。
【0044】
造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって生成される。スライサーソフトは、例えば、三次元CAD(Computer-Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトを用いて作成された三次元造形物OBの形状を表す形状データを読み込み、三次元造形物OBの形状を所定の厚さの層に分割して、造形データを生成する。スライサーソフトに読み込まれる形状データは、STL(Standard Triangulated Language)形式、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)形式、STEP(Standard for the Exchange of Product)形式などのデータである。スライサーソフトによって作成された造形データは、GコードやMコード等によって表されている。制御部40は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0045】
1.3.2. ステップS2
次に、制御部40は、溶融材料を生成し、生成した溶融材料を吐出する処理を行う。具体的には、まず、制御部40は、取得した造形データに基づいて、フラットスクリュー130の回転、加熱部150,152の温度、および冷却部154の温度を制御することによって、材料を可塑化して溶融材料を生成する。
【0046】
フラットスクリュー130の回転によって、材料投入部110から投入された材料が、フラットスクリュー130の材料供給部137から第1溝134に供給される。第1溝134に導入された材料は、第1溝134の経路に沿って中央部135へと搬送される。第1溝134を搬送される間、材料は、フラットスクリュー130とバレル140との相対的な回転によるせん断、および加熱部150,152による加熱によって溶融されて、流動性を有するペースト状の溶融材料になる。中央部135に集められた溶融材料は、連通孔146からノズル170に圧送される。
【0047】
次に、制御部40は、図8に示すように、取得した造形データに基づいて、移動機構30を制御してノズル170と造形面22との相対的な位置を変化させつつ、ノズル170から造形面22に向かって溶融材料を吐出させる処理を行う。これにより、例えば、三次元造形物OBの1層目が造形される。なお、図8は、三次元造形装置100の造形処理を説明するための図であり、三次元造形装置100によって三次元造形物OBが造形される様子を模式的に示している。
【0048】
1.3.3. ステップS3
次に、制御部40は、図7に示すように、取得した造形データに基づいて、三次元造形物OBの全ての層の造形が完了したか否か判定する処理を行う。三次元造形物OBの全ての層の造形が完了したと判定しなかった場合(ステップS3で「NO」)、制御部40は、ステップS2に戻り、例えば三次元造形物OBの2層目を造形する。一方、三次元造形物OBの全ての層の造形が完了したと判定した場合(ステップS3で「YES」)、制御部40は、造形処理を終了する。制御部40は、ステップS3において、三次元造形物O
Bの全ての層の造形が完了したと判定するまで、ステップS2およびステップS3の処理を繰り返し行うことによって、三次元造形物OBを造形する。
【0049】
1.4. 作用効果
可塑化部120では、Z軸方向からみて、第2溝144の外周148側の端149は、フラットスクリュー130を1回転させた場合に、第1溝134の材料供給部137と接続部136との境界線Bが描く軌跡Tの内側に位置する。そのため、可塑化部120では、接続部136で溶融した材料が第2溝144を通って材料供給部137に至ることを防ぐことができる。
【0050】
ここで、図9に示すように、第2溝1144が材料供給部1137と重なっている場合、接続部1136の圧力は材料供給部1137の圧力よりも高いため、接続部1136で溶融した材料Lは、第2溝1144を通って材料供給部1137に至る。溶融した材料Lが材料供給部1137に至ると、溶融した材料Lの熱で固体状態の材料Sが溶融する。特に、固体状態の材料Sのバレル1140と接している部分は、溶融し易い。バレル1140に対する摩擦係数は、溶融した材料Lの方が固体状態の材料Sに比べて小さく、材料によっては1桁以上小さい。そのため、材料が溶融すると、材料のバレル1140に対する摩擦力は、材料のフラットスクリュー1130に対する摩擦力よりも小さくなる。これにより、固体状態の材料Sは、フラットスクリュー1130に貼り付いてフラットスクリュー1130と共に空回りし、第1溝1134の接続部1136に搬送されない。その結果、材料を安定して可塑化することができない。
【0051】
これに対し、可塑化部120では、上記のように、第2溝144の端149は軌跡Tの内側であり、図10に示すように、第2溝144が材料供給部137と重なっていないため、接続部136で溶融した材料Lが、第2溝144を通って材料供給部137に至ることを防ぐことができる。そのため、材料は、材料供給部137において固体状態を保つことができる。これにより、材料のバレル140に対する摩擦力を、材料のフラットスクリュー130に対する摩擦力よりも大きくすることができ、フラットスクリュー130の回転によって固体状態の材料Sを接続部136に押し出すことができる。その結果、材料を安定して可塑化することができる。例えば、新たな可塑化材料が連通孔146に供給されないブリッジ現象を防ぐことができる。
【0052】
なお、図9は、第2溝1144が第1溝1134の材料供給部1137と重なっている例を模式的に示す断面図である。第1溝1134は、中央部1135と、接続部1136と、材料供給部1137と、を有している。図10は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す図3のX-X線断面図である。また、便宜上、図9および図10では、フラットスクリュー130,1130、バレル140,1140、およびノズル170,1170を簡略化して図示している。
【0053】
可塑化部120では、Z軸方向からみて、接続部136の形状は、中央部135の周りを周る渦巻状であり、第2溝144の外周148側の端149は、接続部136の最外周部136aよりも中央部135側に位置する。そのため、可塑化部120では、溶融した材料が第2溝144を通って最外周部136aに至ることを防ぐことができる。
【0054】
可塑化部120では、材料供給部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。そのため、可塑化部120では、フラットスクリュー130の側方から材料を供給することができる。
【0055】
可塑化部120では、Z軸方向からみて、第2溝144は、第2溝144の外周148側の端149から連通孔146に向かって、フラットスクリュー130の回転方向Rに沿
った螺旋状の溝である。そのため、可塑化部120では、第2溝が外周側の端から連通孔に向かって回転方向Rに沿った螺旋状の溝ではない場合に比べて、接続部136で溶融した材料を、第2溝144によってスムーズに中央部135に搬送することができる。
【0056】
2. 三次元造形装置の変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200のフラットスクリュー130とバレル140との相対的な位置関係を模式的に示す平面図であり、バレル140の下から透視した図である。図12は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200のバレル140を模式的に示す平面図である。
【0057】
以下、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200において、上述した本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す本実施形態の第2,第3変形例に係る三次元造形装置において同様である。
【0058】
三次元造形装置200では、図11および図12に示すように、第3溝244を含む点において、上述した三次元造形装置100と異なる。第3溝244は、連通孔146と接続されている。第3溝244は、連通孔146から外周148に向かって設けられている。第3溝244の形状は、Z軸方向からみて、フラットスクリュー130の回転方向Rに凸なアーチ状である。Z軸方向からみて、第3溝244の外周148側の端249と連通孔146との間の最短距離D1は、第2溝144の外周148側の端149と連通孔146との間の最短距離D2よりも大きい。すなわち、第3溝244の長さは、第2溝144の長さよりも大きい。なお、第3溝244の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。
【0059】
図示の例では、第2溝144および第3溝244は、3つずつ設けられている。3つの第2溝144および3つの第3溝244は、回転方向Rに沿って交互に設けられている。なお、第2溝144の数および第3溝244の数は、特に限定されない。例えば、第2溝144は1つ設けられ、第3溝244は5つ設けられていてもよいし、第2溝144は5つ設けられ、第3溝244は1つ設けられていてもよい。
【0060】
三次元造形装置200では、上記のように、Z軸方向からみて、第3溝244の外周148側の端249と連通孔146との間の最短距離D1は、第2溝144の外周148側の端149と連通孔146との間の最短距離D2よりも大きい。そのため、三次元造形装置200では、第3溝が設けられていない場合に比べて、接続部136で溶融した材料を、第3溝244によって中央部135に搬送し易い。これにより、溶融した材料を早く中央部135に搬送することができ、効率よく材料を可塑化することができる。
【0061】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図13は、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置300のフラットスクリュー130を模式的に示す平面図である。
【0062】
上述した三次元造形装置100では、図3に示すように、第1溝134は、1つの接続部136および1つの材料供給部137を有していた。
【0063】
これに対し、三次元造形装置300では、図13に示すように、第1溝134は、複数の接続部136および複数の材料供給部137を有している。図示の例では、第1溝13
4は、2つの接続部136および2つの材料供給部137を有している。なお、接続部136の数および材料供給部137の数は、特に限定されない。
【0064】
なお、接続部136の最外周部136aとは、複数の接続部136が設けられている場合、いずれの接続部136によっても挟まれていない部分である。例えば、図13に示すように、接続部136が2つ設けられている場合、最外周部136aは、一方の接続部136と他方の接続部136によって挟まれていない部分である。図12では、最外周部136aに複数の点からなる模様を付している。
【0065】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置について説明する。上述した三次元造形装置100では、三次元造形物を造形するための材料として、ペレット状のABSが用いられていた。
【0066】
これに対し、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置は、可塑化部120において用いられる材料として、例えば、ABS以外の熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0067】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0068】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、加熱部150,152の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された溶融材料は、ノズル170から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0069】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル170から吐出されることが望ましい。例えば、ABSは、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル170からの吐出時には約200℃であることが望ましい。
【0070】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、溶融材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0071】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(N
i)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼
、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0072】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが挙げられる。
【0073】
材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0074】
材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0075】
その他に、材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0076】
3. 射出成形装置
次に、本実施形態に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。図14は、本実施形態に係る射出成形装置900を模式的に示す断面図である。
【0077】
射出成形装置900は、図14に示すように、例えば、上述した可塑化部120を含む。射出成形装置900は、さらに、例えば、材料投入部110と、ノズル170と、射出機構910と、金型部920と、型締装置930と、制御部40と、を含む。
【0078】
可塑化部120は、フラットスクリュー130の第1溝134に供給された材料を可塑化し、流動性を有するペースト状の溶融材料を生成して連通孔146から射出機構910へと導く。
【0079】
射出機構910は、射出シリンダー912と、プランジャー914と、プランジャー駆動部916と、を有している。射出機構910は、射出シリンダー912内の溶融材料をキャビティーCvに射出する機能を有している。制御部40は、ノズル170からの溶融
材料の射出量を制御する。射出シリンダー912は、バレル140の連通孔146に接続された略円筒状の部材である。プランジャー914は、射出シリンダー912の内部を摺動し、射出シリンダー912内の溶融材料を、可塑化部120に接続されたノズル170側に圧送する。プランジャー914は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部916により駆動される。
【0080】
金型部920は、可動金型922と、固定金型924と、を有している。可動金型922と固定金型924とは、互いに対向して設けられている。可動金型922と固定金型924との間には、成形品の形状に応じた空間であるキャビティーCvが設けられている。キャビティーCvには、溶融材料が射出機構910によって圧送される。ノズル170は、溶融材料を金型部920に吐出する。
【0081】
型締装置930は、金型駆動部932を有している。金型駆動部932は、可動金型922と固定金型924との開閉を行う機能を有している。型締装置930は、金型駆動部932を駆動して可動金型922を移動させて金型部920を開閉させる。
【0082】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0083】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0084】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0085】
可塑化装置の一態様は、
材料を可塑化する可塑化装置であって、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【0086】
この可塑化装置によれば、接続部で溶融した材料が、第2溝を通って材料供給部に至ることを防ぐことができる。そのため、材料は、材料供給部において固体状態を保つことができる。これにより、材料のバレルに対する摩擦力を、材料のフラットスクリューに対する摩擦力よりも大きくすることができ、フラットスクリューの回転によって固体状態の材料を接続部に押し出すことができる。その結果、材料を安定して可塑化することができる
【0087】
前記可塑化装置の一態様において、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第3溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第3溝の前記外周側の端と前記連通孔との間の最短距離は、前記第2溝の前記外周側の端と前記連通孔との間の最短距離よりも大きくてよい。
【0088】
この可塑化装置によれば、第3溝が設けられていない場合に比べて、接続部で溶融した材料を、第3溝によって中央部に搬送し易い。これにより、溶融した材料を早く中央部に搬送することができ、効率よく材料を可塑化することができる。
【0089】
前記可塑化装置の一態様において、
前記回転軸方向からみて、前記接続部の形状は、前記中央部の周りを周る渦巻状であり、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記接続部の最外周部よりも前記中央部側に位置してよい。
【0090】
この可塑化装置によれば、溶融した材料が第2溝を通って最外周部に至ることを防ぐことができる。
【0091】
前記可塑化装置の一態様において、
前記回転軸方向からみて、前記最外周部は、前記接続部に挟まれていない部分であってもよい。
【0092】
前記可塑化装置の一態様において、
前記材料供給部は、前記スクリューの側面に設けられていてもよい。
【0093】
この可塑化装置によれば、フラットスクリューの側方から材料を供給することができる。
【0094】
前記可塑化装置の一態様において、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝は、前記第2溝の前記外周側の端から前記連通孔に向かって、前記スクリューの回転方向に沿った螺旋状の溝であってもよい。
【0095】
この可塑化装置によれば、第2溝の形状が回転方向に凸なアーチ状でない場合に比べて、接続部で溶融した材料を、第2溝によってスムーズに中央部に搬送することができる。
【0096】
三次元造形装置の一態様は、
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
材料を可塑化して溶融材料にする可塑化部と、
前記可塑化部から供給された前記溶融材料をステージに向かって吐出するノズルと、
を含み、
前記可塑化部は、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【0097】
この三次元造形装置によれば、材料を安定して可塑化することができる。
【0098】
射出成形装置の一態様は、
材料を可塑化して溶融材料にする可塑化部と、
前記可塑化部から供給された前記溶融材料を金型に射出するノズルと、
を含み、
前記可塑化部は、
回転軸を中心に回転され、第1溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に前記第1溝と連通する連通孔が設けられたバレルと、
前記第1溝に供給された前記材料を加熱する加熱部と、
を含み、
前記第1溝は、
前記連通孔と対向する中央部と、
前記溝形成面の外周に設けられ、前記材料が供給される材料供給部と、
前記中央部と前記材料供給部とを接続する接続部と、
を有し、
前記対向面には、前記連通孔と接続され前記連通孔から前記対向面の外周に向かう第2溝が設けられ、
前記回転軸方向からみて、前記第2溝の前記外周側の端は、前記スクリューを1回転させた場合に、前記材料供給部と前記接続部との境界線が描く軌跡の内側に位置する。
【0099】
この射出成形装置によれば、材料を安定して可塑化することができる。
【符号の説明】
【0100】
10…造形ユニット、20…ステージ、22…造形面、30…移動機構、40…制御部、100…三次元造形装置、110…材料投入部、112…供給路、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…接続部、136a…最外周部、137…材料供給部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、148…外周、149…端、150…第1加熱部、152…第2加熱部、154…冷却部、154a…冷却流路、154b…入口、154c…出口、170…ノズル、172…ノズル流路、174…ノズル孔、200…三次元造形装置、244…第3溝、249…端、300…三次元造形装置、900…射出成形装置、910…射出機構、912…射出シリンダー、914…プランジャー、916…プランジャー駆動部、920…金型部、922…可動金型、924…固定金型、930…型締装置、932…金型駆動部、1130…フラットスクリュー、1134…第1溝、1135…中央部、1136…接続部、1137…材料供給部、1140…バレル、1144…第2溝、1170…ノズル
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