(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】機能層貼付用フィルムセットおよび絶縁フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240702BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240702BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/00 L
B32B27/32 E
B32B7/022
(21)【出願番号】P 2020079400
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 昭吾
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044512(WO,A1)
【文献】特開2015-189151(JP,A)
【文献】特開2015-213096(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/026684(JP,A1)
【文献】特開2009-287005(JP,A)
【文献】特開2017-109306(JP,A)
【文献】特開2011-161747(JP,A)
【文献】特開2003-306661(JP,A)
【文献】プライムポリプロ(中空・押出)銘柄物性表,日本,2010年11月
【文献】TPX銘柄物性一覧表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルムと、機能層を有する機能性フィルムとを備え、貼付用基材の凹凸を前記機能層で被覆するために用いられる機能層貼付用フィルムセットであって、
前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとを、前記機能性フィルムを前記貼付用基材側にして積層した状態で、前記機能層を前記凹凸の形状に対応して押し込むことで、前記凹凸が前記機能層で被覆され、
前記絶縁フィルムは、絶縁層と、該絶縁層の前記機能性フィルム側の面に積層された第1離型層と、前記絶縁層の前記機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層とを有する積層体で構成されており、
前記絶縁層において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、前記第1離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、前記第2離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)
、式(A)および式(B)の関係を満足することを特徴とする機能層貼付用フィルムセット。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
200≦Y2-Y1≦700 … (A)
1.3≦X/Y1≦5.0 … (B)
【請求項2】
前記第1離型層および前記第2離型層における前記主材料は、それぞれ、その含有量が50wt%以上である請求項1に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項3】
前記絶縁層において、25℃において最大の引張弾性率を有する前記構成材料は、その含有量が30wt%以上90wt%以下である請求項1または2に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項4】
前記絶縁層における前記引張弾性率Xは、900MPa以上2000MPa以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項5】
前記第1離型層における前記引張弾性率Y1は、300MPa以上900MPa以下である請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項6】
前記第2離型層における前記引張弾性率Y2は、300MPa以上1200MPa以下である請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項7】
前記第1離型層における前記主材料は、その融点が100℃以上240℃以下である請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項8】
前記第2離型層における前記主材料は、その融点が110℃以上250℃以下である請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項9】
前記絶縁層において、25℃で最大の引張弾性率を有する前記構成材料は、その融点が120℃以上260℃以下である請求項1ないし
8のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項10】
前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとは、一体的に形成されている請求項1ないし
9のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項11】
前記絶縁フィルムは、前記貼付用基材の前記凹凸に対する前記機能層の被覆の後に、前記機能性フィルムから剥離されるものである請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【請求項12】
機能性フィルムが有する機能層で、貼付用基材の凹凸を被覆する際に用いられる絶縁フィルムであって、
前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとを、前記機能性フィルムを前記貼付用基材側にして積層した状態で、前記機能層を前記凹凸の形状に対応して押し込むことで、前記凹凸が前記機能層で被覆され、
前記絶縁フィルムは、絶縁層と、該絶縁層の前記機能性フィルム側の面に積層された第1離型層と、前記絶縁層の前記機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層とを有する積層体で構成されており、
前記絶縁層において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、前記第1離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、前記第2離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)
、式(A)および式(B)の関係を満足することを特徴とする絶縁フィルム。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
200≦Y2-Y1≦700 … (A)
1.3≦X/Y1≦5.0 … (B)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能層貼付用フィルムセットおよび絶縁フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、スマートフォン、電卓、電子新聞、タブレット端末、テレビ電話、パーソナルコンピュータのような電子機器には、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイルのような電子部品が搭載された電子部品搭載基板が基板上に実装されるが、この電子部品搭載基板は、湿気や埃等の外部因子との接触を防止することを目的に、樹脂により封止がなされることがある。
【0003】
このような樹脂による封止は、例えば、電子部品搭載基板を金属キャビティ内に配置した後に、流動性の高いウレタン樹脂のような熱硬化性樹脂を注入して封止するポッティング法の他、熱可塑性樹脂を溶融状態で電子部品搭載基板に塗布した後に、固化させることで塗布した領域をコーティング(封止)するコーティング法が知られている。
【0004】
しかしながら、ポッティング法では、熱硬化性樹脂の硬化に時間を要し、さらには、通常、封止に金属キャビティを要するため、得られる電子機器の重量化を招くと言う問題があった。また、コーティング法では、溶融状態とする熱可塑性樹脂の粘度管理、および、熱可塑性樹脂の塗布領域に対する塗り分けに時間と手間を有すると言う問題があった。
【0005】
かかる問題点を解決することを目的に、ホットメルト性を有するバリアフィルムを電子部品搭載基板に保護層(機能層)として貼付することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ところが、この場合、電子部品搭載基板が電子部品を備えることに起因して形成される凹凸に対する保護層の追従性が十分に得られず、その結果、湿気や埃等の外部因子に対するバリア性を十分に向上させるには至っていない。
【0007】
そこで、基材(絶縁層)上に保護層が設けられているフィルムを用意し、このフィルムから保護層を転写することで、電子部品搭載基板が備える凹凸を、保護層で被覆することも考えられるが、この場合、凹凸の凸部を構成する電子部品の側面に対して、優れた被覆精度で被覆することができないと言う問題点を有していた。特に、電子部品搭載基板における、基板上に複数の同一形状をなす電子部品が格子状に配列されている領域では、電子部品搭載基板に保護層を被覆させる際に、かかる問題点がより顕著に認められるのが実情であった。なお、この場合、格子状に配列された複数の電子部品を備える電子部品搭載基板により、保護層(機能層)が被覆される、複数の凹部が並設された構成を含む凹凸を備える貼付用基材が構成される。
【0008】
また、このような問題は、保護層が基材(絶縁層)上に設けられたフィルムから、電子部品搭載基板が備える凹凸に、機能層としての保護層を貼付(転写)する場合の他、機能層としてのノイズ抑制層(電磁波シールド層)を、電子部品搭載基板が備える凹凸に、フィルムから貼付(転写)する場合等についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、凹凸を有する貼着用基材に対して、機能層を優れた被覆精度で被覆することができる機能層貼付用フィルムセット、および、かかる機能層貼付用フィルムセットに用いられる絶縁フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(12)に記載の本発明により達成される。
(1) 絶縁フィルムと、機能層を有する機能性フィルムとを備え、貼付用基材の凹凸を前記機能層で被覆するために用いられる機能層貼付用フィルムセットであって、
前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとを、前記機能性フィルムを前記貼付用基材側にして積層した状態で、前記機能層を前記凹凸の形状に対応して押し込むことで、前記凹凸が前記機能層で被覆され、
前記絶縁フィルムは、絶縁層と、該絶縁層の前記機能性フィルム側の面に積層された第1離型層と、前記絶縁層の前記機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層とを有する積層体で構成されており、
前記絶縁層において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、前記第1離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、前記第2離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)、式(A)および式(B)の関係を満足することを特徴とする機能層貼付用フィルムセット。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
200≦Y2-Y1≦700 … (A)
1.3≦X/Y1≦5.0 … (B)
【0012】
(2) 前記第1離型層および前記第2離型層における前記主材料は、それぞれ、その含有量が50wt%以上である上記(1)に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0013】
(3) 前記絶縁層において、25℃において最大の引張弾性率を有する前記構成材料は、その含有量が30wt%以上90wt%以下である上記(1)または(2)に記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0014】
(4) 前記絶縁層における前記引張弾性率Xは、900MPa以上2000MPa以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0016】
(5) 前記第1離型層における前記引張弾性率Y1は、300MPa以上900MPa以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0017】
(6) 前記第2離型層における前記引張弾性率Y2は、300MPa以上1200MPa以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0018】
(7) 前記第1離型層における前記主材料は、その融点が100℃以上240℃以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0019】
(8) 前記第2離型層における前記主材料は、その融点が110℃以上250℃以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0020】
(9) 前記絶縁層において、25℃で最大の引張弾性率を有する前記構成材料は、その融点が120℃以上260℃以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0021】
(10) 前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとは、一体的に形成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0022】
(11) 前記絶縁フィルムは、前記貼付用基材の前記凹凸に対する前記機能層の被覆の後に、前記機能性フィルムから剥離されるものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の機能層貼付用フィルムセット。
【0023】
(12) 機能性フィルムが有する機能層で、貼付用基材の凹凸を被覆する際に用いられる絶縁フィルムであって、
前記絶縁フィルムと前記機能性フィルムとを、前記機能性フィルムを前記貼付用基材側にして積層した状態で、前記機能層を前記凹凸の形状に対応して押し込むことで、前記凹凸が前記機能層で被覆され、
前記絶縁フィルムは、絶縁層と、該絶縁層の前記機能性フィルム側の面に積層された第1離型層と、前記絶縁層の前記機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層とを有する積層体で構成されており、
前記絶縁層において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、前記第1離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、前記第2離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)、式(A)および式(B)の関係を満足することを特徴とする絶縁フィルム。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
200≦Y2-Y1≦700 … (A)
1.3≦X/Y1≦5.0 … (B)
【発明の効果】
【0024】
本発明の機能層貼付用フィルムセットによれば、凹凸を有する貼着用基材に対して、機能層を優れた被覆精度で被覆することができる。特に、格子状に複数の電子部品が配列されている領域のように、複数の凹部が並設された領域を有する貼付用基材であったとしても、かかる凹部に対して、機能層を優れた被覆精度で被覆することができる。
【0025】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、格子状に複数の電子部品が配列されている領域のように、複数の凹部が並設された領域を有する貼付用基材であったとしても、かかる凹部に対して、例えば、この絶縁フィルムと機能層を有する機能性フィルムとを、機能性フィルムを貼付用基材側にして積層した状態で、機能層を凹凸の形状に対応して押し込むことで、機能層を優れた被覆精度で被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて製造された保護層被覆電子部品搭載基板の実施形態の一部を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す保護層被覆電子部品搭載基板が備える電子部品搭載基板を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す保護層被覆電子部品搭載基板を、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて製造する製造方法を説明するための縦断面図である。
【
図4】
図3(b)において、電子部品搭載基板に対して、本発明の機能層貼付用フィルムセットを配置した状態を示す平面図である。
【
図5】本発明の機能層貼付用フィルムセットが適用された保護層貼付用フィルムの実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の機能層貼付用フィルムセットおよび絶縁フィルムを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
以下では、本発明の機能層貼付用フィルムセットおよび絶縁フィルムを説明するのに先立って、まず、機能層として保護層を備える機能層貼付用フィルムセット(本発明の機能層貼付用フィルムセット)を、貼付用基材としての電子部品搭載基板に対して貼付することで製造された、保護層被覆電子部品搭載基板について説明する。
【0029】
<保護層被覆電子部品搭載基板>
図1は、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて製造された保護層被覆電子部品搭載基板の実施形態の一部を示す縦断面図、
図2は、
図1に示す保護層被覆電子部品搭載基板が備える電子部品搭載基板を示す平面図である。なお、以下の説明では、
図1中の上側、
図2中の紙面手前側を「上」、
図1中の下側、
図2中の紙面奥側を「下」と言う。
【0030】
図1に示す保護層被覆電子部品搭載基板50(電子装置)は、基板5と、この基板5上に搭載(載置)された電子部品4と、これら基板5および電子部品4で構成される電子部品搭載基板45を、基板5の上面側において被覆する保護層3(機能層)とを有している。
【0031】
基板5は、電子部品4を支持するための平板であり、その平面視形状は、通常、正方形、長方形等の四角形とされる。この基板5は、例えば、シート状をなす配線(配線板)と、この配線をその上下で被覆する樹脂層とを備え、電子部品4が有する端子に対応する位置で配線が露出している露出部を有するプリント配線基板で構成される。
【0032】
電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイル、コネクターおよび抵抗等が挙げられる。このような電子部品4は、電子部品4が有する端子が前記露出部において配線に対して電気的に接続された状態で、基板5上に搭載されている。そして、この電子部品4は、本実施形態では、
図1、
図2に示す領域において、同一形状をなす複数のものが基板5上に格子状(マトリクス状)に配列されている。
【0033】
これら基板5と電子部品4とにより電子部品搭載基板45(貼付用基材)が構成され、この電子部品搭載基板45において、基板5上への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される(
図1、
図2、
図3(a)参照)。特に、
図1、
図2に示す領域では、同一形状をなす複数の電子部品4が基板5上に格子状に配列されることで、X方向に沿って形成された複数の凹部62と、Y方向に沿って形成された複数の凹部62とがこれら同士が重なる十字部63において直交(90°で交差)した状態で並設して形成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、この電子部品搭載基板45、すなわち、格子状に配列された複数の電子部品4を備える電子部品搭載基板45により、保護層3が被覆される、複数の凹部62が並設された凹凸6を備える貼付用基材が構成される。
【0035】
そして、保護層3は、電子部品4の上面および電子部品4の側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆して設けられており、これにより、基板5上への電子部品4の搭載により形成された凹凸6を被覆している。この保護層3の形成により、電子部品搭載基板45、特に、電子部品4における、湿気や埃等の外部因子との接触を抑制または防止するバリア性が向上する。この保護層3は、本発明の機能層貼付用フィルムセットもしくは本発明の絶縁フィルムを用いて形成されるものであり、その詳細な説明は後に行うこととする。
【0036】
また、本実施形態では、基板5上に搭載される電子部品4は、
図1、
図2に示す領域において、同一形状をなすものが格子状に配列されているが、このように配列された構成に限定されず、電子部品4は、例えば、
図1、
図2に示す領域において、異なる形状をなすものがランダムに配置されていてもよいし、さらに、
図1、
図2に示す領域以外では、同一形状をなすものが格子状に配列されていてもよく、もしくは、異なる形状をなすものがランダムに配置されていてもよい。
【0037】
(保護層被覆電子部品搭載基板の製造方法)
以上のような構成をなす保護層被覆電子部品搭載基板の製造、換言すれば、電子部品搭載基板の保護層の被覆に、本発明の機能層貼付用フィルムセットが用いられる。
【0038】
すなわち、本発明の機能層貼付用フィルムセットは、貼付用基材としての電子部品搭載基板45が備える凹凸6を、機能層としての保護層で被覆することで、保護層被覆電子部品搭載基板50(電子部品)を製造するために用いられるものであり、より詳細には、絶縁フィルムと、保護層3(機能層)を有する機能性フィルムとを備え、これら絶縁フィルムと機能性フィルムとを、機能性フィルム(保護層)を電子部品搭載基板45側にして積層した状態で、保護層を凹凸6の形状に対応して押し込むことで、凹凸6を保護層3(機能層)で被覆するために用いられるものである。そして、本発明では、絶縁フィルムは、絶縁層13と、この絶縁層13の機能性フィルム(保護層3)側の面に積層された第1離型層11と、絶縁層13の機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層12とを有する積層体1で構成されており、絶縁層13において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、第1離型層11において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、第2離型層12において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)の関係を満足している。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
【0039】
以下、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いた、保護層被覆電子部品搭載基板50の製造方法について詳述する。
【0040】
図3は、
図1に示す保護層被覆電子部品搭載基板を、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて製造する製造方法を説明するための縦断面図、
図4は、
図3(b)において、電子部品搭載基板に対して、本発明の機能層貼付用フィルムセットを配置した状態を示す平面図、
図5は、本発明の機能層貼付用フィルムセットが適用された保護層貼付用フィルムの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、
図3中の上側および
図4中の紙面手前側を「上」、
図3中の下側および
図4中の紙面奥側を「下」と言う。
【0041】
[1]まず、貼付用基材として、基板5上に電子部品4が搭載された電子部品搭載基板45を用意する(準備工程)。
【0042】
電子部品搭載基板45は、基板5が有する配線が樹脂層から露出する露出部において、電子部品4が有する端子が配線に電気的に接続されるように、電子部品4を基板5上に搭載することで得ることができる。
【0043】
なお、基板5において、配線が樹脂層から露出する露出部は、電子部品4を搭載すべき位置に対応して、電子部品4が備える端子の数と同じ数で形成されており、露出部に対応した電子部品4が有する端子との電気的な接続により、電子部品4は、基板5上に搭載される。
【0044】
このような電子部品4の基板5上への搭載の際に、
図1、
図2に示す領域において、電子部品4は、格子状(マトリクス状)をなして基板5上に配列される。このような電子部品4の配列により、隣接する電子部品4同士間に、互いに直交するX方向(短手方向)およびY方向(長手方向)の2方向に沿って、電子部品4の側面を露出させる、凹部62がそれぞれ並設される。すなわち、X方向に沿って形成された複数の凹部62と、Y方向に沿って形成された複数の凹部62とは、これら同士が重なる十字部63において直交(90°で交差)した状態で形成される。
【0045】
[2]次に、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆する保護層3(機能層)を形成する(保護層形成工程)。
【0046】
なお、本実施形態では、本発明の機能層貼付用フィルムセットとして、絶縁フィルムが、第1離型層11と絶縁層13と第2離型層12とがこの順で積層された積層体1で構成され、機能性フィルムが、保護層3で構成されており、これら積層体1と保護層3とを、積層体1が備える第1離型層11を保護層3側として積層した状態で一体的に形成した保護層貼付用フィルム100を用いる場合を一例に説明する。すなわち、本発明の機能層貼付用フィルムセットが適用された保護層貼付用フィルム100を用いて、保護層3を形成する場合を一例に説明する。
【0047】
この保護層貼付用フィルム100を用いて、保護層3は、例えば、下記工程[2-1]および下記工程[2-2]を経ることにより形成される。
【0048】
[2-1]まず、本発明の機能層貼付用フィルムセットとして、上述した保護層貼付用フィルム100を用意し、すなわち、積層体1と、この積層体1に接合された保護層3(機能層)とを有する保護層貼付用フィルム100を用意し(
図3(a)参照)、電子部品搭載基板45において、基板5上に電子部品4が搭載されている面側(上面側)で、電子部品4に保護層貼付用フィルム100を、保護層3を電子部品4側にして、積層(貼付)する(
図3(c)参照;貼付工程)。
【0049】
この電子部品4に保護層貼付用フィルム100を貼付する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空圧空成形法またはプレス成型法が挙げられる。
【0050】
真空圧空成形法とは、例えば、真空加圧式ラミネーターを用いて、保護層貼付用フィルム100で、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆する方法であり、まず、
図3(b)に示すように、真空雰囲気下とし得る閉空間内に、電子部品4の基板5と反対側の面と、保護層貼付用フィルム100の保護層3側の面とが対向するように、電子部品搭載基板45と保護層貼付用フィルム100とを重ね合わせた状態でセットし、その後、これらを加熱下において、保護層貼付用フィルム100側から均一に保護層貼付用フィルム100と電子部品搭載基板45が備える電子部品4とが互いに接近するように、前記閉空間を真空雰囲気下にし、その後加圧することにより実施される。
【0051】
上記の通り、保護層貼付用フィルム100側から均一に加圧しつつ、前記閉空間を真空雰囲気下とすることで、積層体1が凹部62の形状に対応して保護層3を押し込み、この押し込みに併せて、積層体1よりも電子部品4側に位置する、保護層3が凹部62の形状に対応して変形する。これにより、
図3(c)に示すように、凹部62の形状に対応して保護層3が押し込まれた状態で、保護層3により電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面が被覆される。
【0052】
このように、保護層3により、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆することで、得られる保護層被覆電子部品搭載基板50に、湿気や埃等の外部因子との接触を的確に抑制または防止する保護性(バリア性)を付与することができる。
【0053】
上記のような、保護層貼付用フィルム100(本発明の機能層貼付用フィルムセット)を用いた貼付方法によれば、積層体1により、保護層3が凹部62の形状に対応して押し込まれる。これにより、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面が保護層3(被覆層)で被覆される。
【0054】
ここで、本発明では、保護層貼付用フィルム100が備える積層体1は、絶縁層13と、この絶縁層13の保護層3側の面に積層された第1離型層11と、絶縁層13の保護層3とは反対側の面に積層された第2離型層12とで構成されており、絶縁層13において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、第1離型層11において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、第2離型層12において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、下記式(1)の関係を満足している。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
【0055】
これに対して、前記式(1)を満足しない保護層貼付用フィルムを用いて、真空圧空成形法またはプレス成型法を適用して、特に、後述するような比較的低温領域の加熱温度により電子部品搭載基板45を保護層3で被覆した際に、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面のうち、特に電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、優れた被覆精度で被覆することができないと言う問題があった。
【0056】
かかる問題点について、本発明者が検討を行ったところ、以下に示す内容が要因となり、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができなくなっていると推察された。
【0057】
すなわち、保護層貼付用フィルム100の電子部品4に対する載置は、
図4に示すように、電子部品4のY方向(長手方向)と、保護層貼付用フィルム100のMD(またはTD)とが同一方向(平行)となるように行うことが、保護層貼付用フィルム100を効率的に使用することが出来ることから、一般的である。また、電子部品搭載基板45を被覆する保護層貼付用フィルム100(特に、積層体1)は、その製造方法等に起因して、不可避的または意図的に、MD(流れ方向)とTD(流れに直角な方向)との延伸倍率が異なっている。
【0058】
このような状態で、真空圧空成形法またはプレス成型法等を用いて、後述するような比較的低温領域の加熱温度で、積層体1により、保護層3を凹部62の形状に対応して押し込むと、積層体1において、前記式(1)の関係を満足することなく、積層体におけるMDとTDとの延伸倍率が異なっていると、Y方向(長手方向)に沿った凹部62と、X方向(短手方向)に沿った凹部62と、さらにこれら凹部62同士が重なる十字部63とにおいて、保護層3の押し込み速度に差が生じてしまう。
【0059】
より具体的には、後述するような比較的低温領域の加熱温度として真空圧空成形法またはプレス成型法等を用いると、例えば、積層体1において、MDの延伸倍率がTDの延伸倍率よりも高い場合、Y方向(長手方向)に沿った凹部62における積層体1の押し込み速度(Y方向)と、X方向(短手方向)に沿った凹部62における積層体1の押し込み速度(X方向)と、十字部63における積層体1の押し込み速度(十字部63)とは、押し込み速度(積層体1、十字部63)>押し込み速度(積層体1、X方向)>押し込み速度(積層体1、Y方向)なる速度の関係を満足する速度差が生じることとなる。
【0060】
そのため、積層体1により凹部62内に押し込まれる保護層3についても、積層体1と同様に、Y方向(長手方向)に沿った凹部62における保護層3の押し込み速度(Y方向)と、X方向(短手方向)に沿った凹部62における保護層3の押し込み速度(X方向)と、十字部63における保護層3の押し込み速度(十字部63)とは、押し込み速度(保護層3、十字部63)>押し込み速度(保護層3、X方向)>押し込み速度(保護層3、Y方向)なる速度の関係を満足する速度差が生じることとなる。
【0061】
したがって、凹部62の形状に対応して積層体1により押し込まれた保護層3は、凹部62の底部に対して、十字部63、X方向(短手方向)に沿った凹部62およびY方向(長手方向)に沿った凹部62の順で、到達する。そのため、到達するのが最も遅いY方向(長手方向)に沿った凹部62に対して、先に十字部63に到着していた保護層3が広がり、保護層3の浮きが生じることに起因して、十字部63の周辺部に位置する凹部62において、明らかな保護層3の突起が認められ、その結果、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができなくなると推察された。
【0062】
上記の通り、真空圧空成形法またはプレス成型法等を用いて、積層体1の押し込みにより、保護層3を凹部62の形状に対応して押し込む際に、積層体1のMDとTDとの異方性が生じることに起因して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができなくなると推察されるが、かかる点について、本発明者がさらなる検討を行った結果、積層体1のMDとTDとの異方性に起因する、保護層3を押し込む際の速度差は、積層体1を構成する絶縁層13および離型層11、12に含まれる構成材料の引張弾性率の大きさとも密接に関連していることを突き止めた。そして、絶縁層13において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率X[MPa]と、第1離型層11において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y1[MPa]と、第2離型層12において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y2[MPa]とが前記式(1)の関係を満足することで、積層体1におけるMDとTDとの延伸倍率が異なっていたとしても、保護層3を押し込む際に生じる、積層体1のMDとTDとの異方性が改善されることを、本発明者は見出した。これにより、保護層3のMDとTDとの異方性も改善されることから、保護層3および積層体1の押し込み速度(Y方向)と、保護層3および積層体1の押し込み速度(X方向)とをほぼ等しく設定することができるため、前述した速度の関係を、押し込み速度(保護層3および積層体1、十字部63)>押し込み速度(保護層3および積層体1、X方向)≒押し込み速度(保護層3および積層体1、Y方向)なる関係を満足するものとすることができる。したがって、先に十字部63に到着していた保護層3の広がりを、Y方向(長手方向)に沿った凹部62と、X方向(短手方向)に沿った凹部62との双方に対して、同程度に抑制することができることから、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができる。
【0063】
なお、凹部62は、その幅が好ましくは0.05mm以上1mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.5mm以下に設定され、その深さが好ましくは0.1mm以上3mm以下、より好ましくは0.5mm以上1mm以下に設定される。このような幅および深さを有する凹部62に対しても、本発明によれば、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができる。
【0064】
また、プレス成型法とは、例えば、基板5上に搭載された電子部品4上に保護層貼付用フィルム100を配置し、さらに、この保護層貼付用フィルム100上に、クッション材を配置した状態で、これらを、その上面側および下面側から、2つの平板で挾持し、その後、2つの平板を接近させて、加圧することにより実施される。
【0065】
このように、保護層貼付用フィルム100上に、クッション材を配置した状態で、保護層貼付用フィルム100と電子部品4とを接近させることによっても、積層体1が凹部62の形状に対応して保護層3を押し込み、この押し込みに併せて、積層体1よりも電子部品4側に位置する、保護層3を凹部62の形状に対応して変形させることができる。そのため、
図3(c)に示すように、凹部62の形状に対応して保護層3が押し込まれた状態で、保護層3により電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆することができる。
【0066】
以上のような真空圧空成形法またはプレス成型法を用いた貼付工程[2-1]において、貼付する温度は、前述した構成をなす保護層貼付用フィルム100を用いた際には、比較的低温度の領域に設定されることが好ましく、具体的には、90℃以上140℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以上130℃以下、さらに好ましくは110℃以上120℃以下に設定される。真空圧空成形法またはプレス成型法を用いた際の保護層貼付用フィルム100の加熱温度を前記範囲内に設定することにより、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができる。
【0067】
また、貼付する圧力は、特に限定されないが、0.1MPa以上30.0MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.5MPa以上25.0MPa以下である。
【0068】
さらに、貼付する時間は、特に限定されないが、5秒以上90分以下であることが好ましく、より好ましくは30秒以上10分以下である。
【0069】
貼付工程における条件を上記範囲内に設定することにより、隣接する電子部品4同士間の凹部62に対して保護層3を押し込んだ状態で、この保護層3により電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を優れた被覆精度で被覆することができる。
【0070】
上記のような保護層貼付用フィルム100において、積層体1は、前述した通り、凹部62の形状に追従して保護層3を押し込むことで、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆する際に、保護層3を押し込み、かつ、押し込まれた保護層3が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能するものである。また、次工程[2-2]において、保護層3から剥離されるものである。
【0071】
この積層体1は、実施形態では、
図5に示すように、保護層3側から第1離型層11と絶縁層13と第2離型層12とがこの順で積層されたもので構成され、絶縁層13において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率X[MPa]と、第1離型層11において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y1[MPa]と、第2離型層12において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y2[MPa]とが下記式(1)の関係を満足している。これにより、前述の通り、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができる。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
【0072】
かかる構成をなす積層体1において、絶縁層13は、第1離型層11と第2離型層12との間に位置する中間層であり、保護層3を押し込み、かつ、押し込まれた保護層3が破断するのを防止する保護(緩衝)材としての機能を積層体1に発揮させるための主層として機能するものである。
【0073】
この絶縁層13の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有する、エチレン等のオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のようなオレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中から、前記式(1)の関係を満足するように、10wt%以上含まれる構成材料を適宜選択することにより、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料が決定される。すなわち、この構成材料の25℃での引張弾性率X[MPa]の大きさが決定される。
【0074】
絶縁層13において、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料は、その含有量が30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、30wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。最大の引張弾性率を有する構成材料の含有量がかかる範囲内に設定されることにより、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。そのため、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3をより優れた被覆精度で被覆することができる。
【0075】
また、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料は、25℃における引張弾性率Xが900MPa以上2000MPa以下であるのが好ましく、1000MPa以上1500MPa以下であるのがより好ましい。これにより、前記式(1)を比較的容易に満足させることができる。そのため、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果をより確実に発揮させることができる。
【0076】
さらに、25℃で最大の引張弾性率を有する構成材料は、その融点が120℃以上260℃以下であることが好ましく、130℃以上180℃以下であることがより好ましい。かかる範囲内の融点を有するものを、25℃で最大の引張弾性率を有する構成材料として選択することにより、この構成材料の25℃における引張弾性率Xを、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0077】
また、絶縁層13は、10wt%以上含まれる構成材料として、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料の他に、前記最大の引張弾性率よりも低い引張弾性率を有する他の構成材料が含まれることが好ましい。これにより、積層体1において、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
【0078】
さらに、前記他の構成材料は、その融点が90℃以上260℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましい。かかる範囲内の融点を有するものを、絶縁層13において10wt%以上含まれる前記他の構成材料として選択することにより、積層体1において、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果をより確実に発揮させることができる。
【0079】
以上のような、絶縁層13において10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料と、これとは異なる他の構成材料との組み合わせとしては、具体的には、例えば、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が115℃の低密度ポリエチレン(LDPE)との組み合わせ、融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が115℃の低密度ポリエチレン(LDPE)との組み合わせ、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が93℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との組み合わせ、融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が115℃の低密度ポリエチレン(LDPE)との組み合わせ、融点が127℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が115℃の低密度ポリエチレン(LDPE)との組み合わせ、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と融点が115℃の低密度ポリエチレン(LDPE)との組み合わせ、融点が120℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と融点が113℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との組み合わせ、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が101℃のエチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との組み合わせ等が挙げられる。
【0080】
なお、絶縁層13に含まれる構成材料としては、その含有量が10重量%以下であれば、25℃における引張弾性率Xよりも大きい引張弾性率を有する構成材料が含まれていてもよい。このような構成材料が絶縁層13に含まれていたとしても、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果を確実に発揮させ得ることから、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3をより優れた被覆精度で被覆することができる。
【0081】
また、絶縁層13は、上述のような単層体で構成される場合の他、最大の弾性率を有する構成材料の含有量が異なる層を2層以上有する積層体(複層体)で構成されていてもよい。絶縁層13が積層体で構成される場合、絶縁層13における最大の弾性率を有する構成材料の含有量Rは、各層における前記構成材料の含有量と、各層の厚さとを考慮して求めることができる。具体的には、例えば、絶縁層13が3層からなる積層体であるとき、各層における前記構成材料の含有量をA、B、Cとし、各層の平均厚さをa、b、cとすると、下記式(3)を用いて求めることができる。
R = (a・A+b・B+c・C)/(a+b+c) … (3)
【0082】
絶縁層13の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましく、200μm以上350μm以下であることがさらに好ましい。これにより、絶縁層13に、前述した主層としての機能を確実に発揮させることができる。そのため、積層体1において、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
【0083】
また、積層体1は、絶縁層13の保護層3側に積層された第1離型層11と、絶縁層13の保護層3の反対側に積層された第2離型層12とを有している。
【0084】
さらに、第1離型層11は、本工程[2-1]において、電子部品搭載基板45上の凹凸6に保護層3を押し込んだ後に、次工程[2-2]において、積層体1を剥離させる際に、保護層3との離型性の機能を、保護層貼付用フィルム100により確実に付与するためのものである。また、本工程[2-1]において、電子部品搭載基板45上の凹凸形状に応じて、第1離型層11が追従する追従性の機能を有し、かつ、積層体1側に押圧部または平板からの押圧力を伝播するためのものである。
【0085】
第1離型層11は、本工程[2-1]において、電子部品搭載基板45上の凹凸6に保護層3を押し込む際に、真空圧空成形法で用いられる押圧部またはプレス成型法で用いられる平板との離型性の機能を、保護層貼付用フィルム100により確実に付与するためのものである。また、積層体1側に押圧部または平板からの押圧力を伝播するためのものである。
【0086】
これら第1離型層11および第2離型層12の構成材料としては、例えば、前述した絶縁層13の構成材料として挙げたものが用いられる他、シンジオタクチックポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、シリコーンのような樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中から、前記式(1)の関係が満足するように、第1離型層11において最大の含有率を有する主材料と、第2離型層12において最大の含有率を有する主材料とが決定される。すなわち、第1離型層11に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y1[MPa]と、第2離型層12に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y2[MPa]との大きさが決定される。
【0087】
第1離型層11および第2離型層12における主材料は、それぞれ、その含有量が50wt%以上であることが好ましく、70wt%以上であることがより好ましい。第1離型層11および第2離型層12における主材料の含有量がかかる範囲内に設定されることにより、前記式(1)の関係を満足することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。そのため、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3をより優れた被覆精度で被覆することができる。
【0088】
また、第1離型層11に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y1[MPa]と、第2離型層12に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y2[MPa]とは、Y2≧Y1なる関係を満足するのが好ましいが、200≦Y2-Y1≦700なる関係を満足するのがより好ましい。引張弾性率Y1[MPa]と引張弾性率Y2[MPa]とがかかる関係を満足しつつ、前記式(1)の関係を満足することで、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3をより優れた被覆精度で被覆することができる。
【0089】
さらに、第1離型層11に含まれる主材料は、25℃での引張弾性率Y1が300MPa以上900MPa以下であるのが好ましく、350MPa以上750MPa以下であるのがより好ましい。また、第2離型層12に含まれる主材料は、25℃での引張弾性率Y2が300MPa以上1200MPa以下であるのが好ましく、400MPa以上1100MPa以下であるのがより好ましい。これにより、前記式(1)およびY2≧Y1なる関係を比較的容易に満足させることができる。そのため、前記式(1)の関係、さらにはY2≧Y1なる関係を満足することにより得られる効果をより確実に発揮させることができる。
【0090】
さらに、第1離型層11に含まれる主材料は、その融点が100℃以上240℃以下であるのが好ましく、115℃以上240℃以下であるのがより好ましい。また、第2離型層12に含まれる主材料は、その融点が110℃以上250℃以下であるのが好ましく、120℃以上240℃以下であるのがより好ましい。かかる範囲内の融点を有するものを、第1離型層11に含まれる主材料および第2離型層12に含まれる主材料として、それぞれ、選択することにより、第1離型層11に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y1および第2離型層12に含まれる主材料の25℃での引張弾性率Y2を、それぞれ、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0091】
以上のような、第1離型層11および第2離型層12において、第1離型層11に含まれる主材料と、第2離型層12に含まれる主材料との組み合わせとしては、具体的には、例えば、共に融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、共に融点が127℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、共に融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、共に融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、共に融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とする組み合わせ、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ等が挙げられる。
【0092】
なお、第1離型層11および第2離型層12には、前記主材料の他に、前記主材料とは異なる樹脂材料や、充填材、安定剤、滑剤のような添加剤等が含まれていてもよい。
【0093】
第1離型層11および第2離型層12の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した第1離型層11および第2離型層12としての機能を、第1離型層11および第2離型層12のそれぞれに確実に発揮させることができる。
【0094】
また、上述したような絶縁層13と離型層11、12とを有する積層体1は、前述のように、引張弾性率X、Y1、Y2の関係式が、上記関係式(1)すなわちX≧Y1,Y2なる関係を満足していればよいが、これらのうち、引張弾性率X、Y1の関係式が、1.3≦X/Y1≦5.0なる関係を満足するのが好ましく、1.5≦X/Y1≦4.0なる関係を満足するのがより好ましく、1.6≦X/Y1≦2.0なる関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、上記関係式(1)を満足することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができるため、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3をより優れた被覆精度で被覆することができる。
【0095】
なお、絶縁層13と離型層11、12とを有する積層体1において、絶縁層13に10wt%以上含まれる構成材料のうち25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率X、第1離型層11で最大の含有率を有する主材料(構成材料)の25℃での引張弾性率Y1、第2離型層12で最大の含有率を有する主材料(構成材料)の25℃での引張弾性率Y2は、例えば、押出成形法を用いて各構成材料で構成される試験片をそれぞれ作成し、これら試験片についてテンシロン万能材料試験機(引張・圧縮試験機)(エー・アンド・ディー社製「テンシロンRTF-1250」)を用いることにより求めることができる。
【0096】
以上のような、絶縁層13と離型層11、12とを有する積層体1において、絶縁層13に10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有する構成材料と、第1離型層11で最大の含有率を有する主材料との組み合わせとしては、具体的には、例えば、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が127℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、共に融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、融点が142℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との組み合わせ、融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が127℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が132℃のランダムポリプロピレン(r-PP)との組み合わせ、共に融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)とする組み合わせ、融点が139℃のランダムポリプロピレン(r-PP)と融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との組み合わせ等が挙げられる。
【0097】
保護層3(機能層)は、本実施形態では、電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面を被覆して設けられている。
【0098】
この保護層3は、電子部品搭載基板45、特に、電子部品4と、湿気や埃等の外部因子との電子部品搭載基板45(電子部品4)の上面側からの接触を抑制または防止するバリア性を保護層被覆電子部品搭載基板50に付与する機能を有する。
【0099】
このような保護層3は、樹脂材料を主材料として構成されるものであり、この樹脂材料としては、湿気や埃等の外部因子に対してバリア性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性エラストマー等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
保護層3の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上300μm以下であることが好ましく、2μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0101】
[2-2]次に、
図3(d)に示すように、電子部品4に貼付された保護層貼付用フィルム100から、積層体1を剥離する。
【0102】
すなわち、保護層貼付用フィルム100を用いた、電子部品搭載基板45に対する保護層3の形成の後、積層体1を保護層3から剥離させる。
【0103】
この積層体1の剥離では、保護層貼付用フィルム100における積層体1と保護層3との界面において、剥離が生じ、その結果、保護層3から積層体1が剥離される。これにより、保護層3から積層体1を剥離した状態で、保護層3により電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面が被覆された保護層被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0104】
また、積層体1を剥離する方法としては、特に限定されないが、例えば、手作業による剥離が好ましい。
【0105】
この手作業による剥離では、例えば、まず、積層体1の一方の端部を把持し、この把持した端部から積層体1を保護層3から引き剥がし、次いで、この端部から中央部へさらには他方の端部へと順次積層体1を引き剥がすことにより、保護層3から積層体1が剥離される。
【0106】
剥離する温度は、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは165℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0107】
以上のような工程[2-1]および工程[2-2]を経ることにより、保護層3から積層体1を剥離した状態で、保護層3により電子部品4の上面および側面、ならびに、電子部品4から露出する基板5の上面が被覆された保護層被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
以上のような工程を経て、保護層被覆電子部品搭載基板50が製造される。
【0108】
なお、本実施形態では、基板5上に搭載される電子部品4が、
図1、
図2に示す領域において、同一形状をなすものが格子状に配列されることにより形成された十字部63を有する凹部62に対して、保護層3が押し込まれ、本発明によれば、かかる構成の凹部62において露出する、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対しても、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができることを説明したが、本発明を適用して、保護層3を押し込むことができる凹部の構成は、上記のような十字部63を有する凹部62に限定されるものではない。すなわち、凹部は、異なる形状をなす電子部品4がランダムに配置されることで形成されたものであっても良く、本発明によれば、十字部63を有する凹部62のような微細形状を有するものに対して、優れた被覆精度で保護層3を被覆することができる。そのため、前記ランダムに配置されることで形成された凹部62に対しても、優れた被覆精度で保護層3を被覆することができる。
【0109】
また、本実施形態では、積層体1は、第1離型層11と絶縁層13と第2離型層12とがこの順で積層されたものである場合について説明したが、これに限定されず、積層体1は、第1離型層11と絶縁層13との間、および、絶縁層13と第2離型層12との間の少なくとも一方に設けられた中間層を備えるものであってもよいし、第1離型層11および第2離型層12の少なくとも一方に積層された最外層等を備えるものであってもよい。
【0110】
以上、本発明の機能層貼付用フィルムセットについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0111】
例えば、前記実施形態では、貼着用基材としての、凹凸6を備える電子部品搭載基板45に、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて、機能層としての保護層3を被覆して保護層被覆電子部品搭載基板50を得る場合について説明したが、これに限定されず、本発明の機能層貼付用フィルムセットは、機能層として電磁波シールド層を備える機能性フィルムを有するものであり、かかる構成の機能性フィルムセットを用いて、貼付用基材が有する凹凸の形状に対応して電磁波シールド層を押し込むために用いられるものであってもよい。
【0112】
また、前記実施形態では、凹凸6を備える電子部品搭載基板45に、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて、保護層3を形成する際に、積層体1からなる絶縁フィルムと保護層3(機能層)からなる機能性フィルムとが厚さ方向に積層することで一体化された保護層貼付用フィルム100をフィルムセットとして用いる場合について説明したが、用いるフィルムセットはかかる構成のものに限定されず、例えば、積層体1で構成される絶縁フィルムと、保護層3(機能層)で構成される機能性フィルムとを別体として備え、これらを重ね合わせて用いるフィルムセットであってもよい。
【0113】
さらに、前記実施形態では、電子部品搭載基板45が備える凹凸6のほぼ全面に、本発明の機能層貼付用フィルムセットを用いて、保護層3を形成する場合について説明したが、保護層3を形成する領域は、凹凸6のほぼ全面に限らず、凹凸6の一部であってもよい。このように、凹凸6の一部を保護層3で被覆する場合、機能層貼付用フィルムセットとして、保護層3を形成すべき領域に対応して選択的に保護層3が形成されたものを用意し、かかる領域に対応するように保護層3を配置した状態で、凹凸6に保護層3を押し込むことで、凹凸6の一部を保護層3で選択的に被覆することができる。
【0114】
また、本発明の絶縁フィルムは、機能性フィルムが有する機能層で、貼付用基材の凹凸を被覆する際に用いられるものであり、絶縁層と、この絶縁層の機能性フィルム側の面に積層された第1離型層と、絶縁層の機能性フィルムとは反対側の面に積層された第2離型層とを有する積層体で構成されており、絶縁層において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率をX[MPa]とし、第1離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY1[MPa]とし、第2離型層において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率をY2[MPa]としたとき、前記式(1)の関係を満足することを特徴とする。これにより、この絶縁フィルムを、例えば、前記保護層貼付用フィルム100の剥離層として使用した場合に、凹部62における、電子部品4の側面ならびに基板5の上面に対して、保護層3を優れた被覆精度で被覆することができる。また、絶縁層を有する絶縁フィルムは、前記保護層貼付用フィルム100の剥離層として用いる以外にも、例えば、絶縁フィルムに対する機能性フィルムの積層を省略し、この絶縁フィルムを単独で貼付用基材に対して積層させた状態で、絶縁層を凹凸の形状に対応して押し込むことで、絶縁層により凹凸を被覆する場合等の用途にも使用できる。
【0115】
さらに、絶縁フィルムの構成や製造方法等は、前記積層体1と同様の材料、方法を使用することができるため、前記積層体1の記載内容を準用する。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0117】
<実施例1>
1.保護層貼付用フィルムの製造
まず、積層体1の上面および下面にそれぞれ第1離型層11および第2離型層12が積層された積層体1を得るために、第1離型層11および第2離型層12を形成するための樹脂材料としてランダムポリプロピレン(r-PP、融点:132℃、住友化学社製、商品名:S131)を用意した。また、絶縁層13を形成するための樹脂材料として、低密度ポリエチレン(LDPE、融点:115℃、日本ポリエチレン社製、商品名:LF280H)を60重量%、ランダムポリプロピレン(r-PP、融点:142℃、日本ポリプロ社製、商品名:EG7FTB)を40重量%含む混合物を用意した。
【0118】
なお、第1離型層11、絶縁層13および第2離型層12に含まれる各構成材料について、それぞれ、押出成形法を用いて各構成材料で構成される試験片をそれぞれ作成し、そして、これら試験片についてテンシロン万能材料試験機(エー・アンド・ディー社製、「テンシロンRTF-1250」)を用いて測定することで、各構成材料の引張弾性率を求めたところ、ランダムポリプロピレン(r-PP、融点:132℃、住友化学社製、商品名:S131)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点:115℃、日本ポリエチレン社製、商品名:LF280H)およびランダムポリプロピレン(r-PP、融点:142℃、日本ポリプロ社製、商品名:EG7FTB)の引張弾性率は、それぞれ、650MPa、400MPaおよび1150MPaであった。
【0119】
次いで、用意した第1離型層11、絶縁層13および第2離型層12を形成するための樹脂材料を、フィードブロックおよびマルチマニホールドダイを用いて共押出により、フィルム化することで、第1離型層11と絶縁層13と第2離型層12とがこの順で積層された積層体1を得た。
【0120】
また、保護層3を形成するための樹脂材料(液状材料)として、エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:EPICRON N-670)を22重量部、アクリルゴム(ナガセケムテックス社製、商品名:SG-708-6)を22重量部、およびフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、商品名:PR-HF-3)を11重量部含み、さらに、溶媒としてメチルエチルケトンを含むものを用意した。
【0121】
次いで、送出しローラーと巻取りローラーとの間で、送出された積層体1が備える第1離型層11に、保護層3を形成するための樹脂材料を、塗布した後に乾燥させることで保護層3を形成して保護層貼付用フィルム100を作製した。
【0122】
なお、得られた保護層貼付用フィルム100において、積層体1を構成する第1離型層11、絶縁層13および第2離型層12の厚さはそれぞれ45μm、210μmおよび45μm、保護層3の平均厚さは40μmであった。
【0123】
2.凹部が設けられた電子部品搭載基板の製造
凹部62が設けられた電子部品搭載基板45を得るために、まず、FR4基板(ガラス繊維の布をエポキシ樹脂の硬化物で封止して形成された疑似配線基板)上に、縦5mm×横10mm×厚さ0.8mmのSi基板(擬似電子部品)を隣接するSi基板同士の離間距離が0.2mmとなるように格子状に配列することで電子部品搭載基板45を得た。
【0124】
3.評価
作製した保護層貼付用フィルム100について、凹部62が設けられた電子部品搭載基板45を用いて、以下の評価を行った。
【0125】
保護層貼付用フィルム100を、凹部62が設けられた電子部品搭載基板45上に、保護層貼付用フィルム100(積層体1)の長手方向が、電子部品搭載基板45の長手方向と平行となるように配置した。
【0126】
次いで、真空加圧式ラミネーターを用いて、真空雰囲気下において、保護層貼付用フィルム100と電子部品搭載基板45とが互いに接近するように、圧力13MPa、温度115℃、時間240秒の条件で加圧して、保護層貼付用フィルム100を電子部品搭載基板45に貼付することで、保護層貼付用フィルム100が備える保護層3を、電子部品搭載基板45に設けられた凹部62の形状に対応するように押し込んだ。
【0127】
次いで、電子部品搭載基板45に貼付された保護層貼付用フィルム100から積層体1を、積層体1の一端を持って剥離させた。
【0128】
その後、凹部62の形状に対応するように押し込まれた保護層3について、凹部62の底部に対する被覆精度を、目視にて観察し、その結果を下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0129】
[評価基準]
◎◎:凹部62の底部まで保護層3は被覆できており、
保護層3の凹部62の底部からの浮きなどに起因する突起は観測されない。
◎:凹部62の底部まで保護層3は被覆できているが、
十字部63の周辺部に保護層3の極小な突起が観測される。
○:凹部62の底部まで保護層3は被覆できているが、
十字部63の周辺部に保護層3の小さな突起が観測される。
×:凹部62の底部まで保護層3は被覆できているが、
十字部63の周辺部に保護層3の凹部62の底部からの浮きに起因する
明らかな突起が観測される。
【0130】
<実施例2~実施例21、比較例1~比較例4>
第1離型層11および第2離型層12を形成するための樹脂材料と、絶縁層13を形成するための樹脂材料として、表1に示すものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、保護層3を、電子部品搭載基板45に設けられた凹部62の形状に対応するように押し込んだ後、保護層貼付用フィルム100から積層体1を剥離させた。
【0131】
そして、実施例2~実施例21、比較例1~比較例4について、それぞれ、凹部62に押し込まれた保護層3の凹部62の底部に対する被覆精度を、目視にて観察し、その結果を前記評価基準に基づいて評価した。
これらの評価結果を表1に示す。
【0132】
【0133】
表1に示すように、各実施例では、絶縁層13において、10wt%以上含まれる構成材料のうち、25℃において最大の引張弾性率を有するものの25℃での引張弾性率X[MPa]と、第1離型層11において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y1[MPa]と、第2離型層12において、最大の含有率を有する主材料の25℃での引張弾性率Y2[MPa]とが、下記式(1)を満足しており、その結果、保護層3の凹部62の底部からの浮きに起因する明らかな突起は観測されず、凹部62に対して保護層3を優れた被覆精度で被覆し得ることが明らかとなった。
X ≧ Y1,Y2 … (1)
【0134】
これに対して、比較例では、前記式(1)を満足しておらず、これにより、保護層3の凹部62の底部からの浮きに起因する明らかな突起が認められ、そのため、凹部62に対して保護層3を優れた被覆精度で被覆することができない結果を示した。
【符号の説明】
【0135】
1 積層体
3 保護層
4 電子部品
5 基板
6 凹凸
11 第1離型層
12 第2離型層
13 絶縁層
45 電子部品搭載基板
50 保護層被覆電子部品搭載基板
61 凸部
62 凹部
63 十字部
100 保護層貼付用フィルム