IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7512674画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置
<>
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図1
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図2
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図3
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図4
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図5
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図6
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図7
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図8
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図9
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図10
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図11
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図12
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図13
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図14
  • 特許-画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240702BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G06N20/00
G03G21/00 388
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020089958
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184211
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】東内 宏和
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特許第5969676(JP,B1)
【文献】特開2018-126796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0150599(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0133226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0133208(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムであって、
前記画像処理装置は、
画像形成部と、
前記画像形成部の所定の制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、
前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとして前記サーバに送信する通信部とを備え、
前記サーバは、
前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して前記画像処理装置に送信する判定部を備え、
前記画像処理装置はさらに、
前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとする更新部を備える
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記サーバには、前記画像処理装置と同型の画像処理装置が接続されており、
前記判定部は、当該同型の画像処理装置の学習モデルを前記仮決定学習モデルに変更し、当該同型の画像処理装置を使って前記規格試験の合否を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記同型の画像処理装置を使った前記規格試験の合否の判定は、
異なる条件の下で前記規格試験を実施して判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記異なる条件とは、印字動作モード、印刷枚数、用紙サイズ、用紙種類、および設置環境のなかの少なくとも1つ含む
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した学習モデルが記憶され、
前記判定部は、前記仮決定学習モデルが前記合格した学習モデルに含まれる場合には、前記規格試験に合格と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記学習モデルには、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータに係る学習モデルと、前記規格試験に影響しない制御パラメータに係る学習モデルとが含まれ、
前記更新部は、
前記規格試験の合否に影響する制御パラメータに係る学習モデルについては、前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとし、
前記規格試験の合否に影響しない制御パラメータに係る学習モデルについては、前記合否結果によらず前記画像処理装置で実行する学習モデルとする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記画像処理装置の通信部は、前記仮決定学習モデルとともに前記サーバに環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方を送信し、
前記サーバの記憶部には、前記環境情報と前記使用履歴情報と関連付けて前記規格試験に合格したときの学習モデルが記憶され、
前記判定部は、前記仮決定学習モデルが、前記画像処理装置が送信した環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方に関連付けられた前記規格試験に合格したときの学習モデルに対応する場合には、前記規格試験に合格と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記学習モデルは、前記学習モデルの係数によって構築される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記規格試験の規格は、法規制および安全規制の少なくとも一方に対応する規格である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記機械学習により決定する制御パラメータは、
画像形成で使用する高圧出力パラメータ、定着ヒータ出力パラメータである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記機械学習は、所定の報酬判定を伴う強化学習である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項12】
画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムの画像処理装置であって、
画像形成部と、
前記画像形成部の所定の制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、
前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとして前記サーバに送信する通信部と、
前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、前記画像処理装置に送信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとする更新部とを備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータである画像処理装置に実行させるためのプログラムであって、
画像を形成するステップと、
前記画像の形成に係る制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行するステップと、
前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信するステップと、
前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、前記画像処理装置に送信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとするステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
制御パラメータを備える装置の前記制御パラメータの変更を管理する制御管理システムであって、
前記装置は、
前記制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行と、
前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信する通信部と、を備え、
前記サーバは、
前記機械学習後の学習モデルである仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定する合否判定と、を備え、
前記装置はさらに、
前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記装置で実行する学習モデルとする更新
を備える制御管理システム。
【請求項15】
制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、
前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信する通信部と、
前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、返信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して実行する学習モデルとする更新部と
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィスで利用される電気製品や電子機器、工場に設置される製造装置、医療機器などに対して、安全確保や環境保護などに係る規制(規格)がある。一例として、電磁妨害波の規制がある。複合機などの電子写真方式の画像処理装置に備わる現像器には、高電圧の直流成分と、高周波矩形波の交流成分とを含む電圧が掛かっている。交流成分は矩形波であるため多くの高周波成分を含み、電圧が高いため電磁妨害波が発生しやすい。このため、画像処理装置の製造者は、電磁妨害波の規制をクリアしていること(電磁妨害波の電波強度が規制の限度値以下であること)を試験して確認した後に出荷している。
【0003】
一方、画像処理装置に対しては、画像の高画質化、高耐久化、多くの紙種への対応が求められており、出荷後も電圧や周波数の調整が求められている。さらに、画像処理装置が設置された環境(温度や湿度など)に対応するための調整も求められる。なお、高耐久化とは、画像処理装置が経年変化を起こしても、電圧や周波数などの制御パラメータを調整することで、使用期間を長くすることを意味する。このような出荷後の制御パラメータの調整は、画像処理装置に限らず、製造装置や医療機器などを含めさまざまな装置や機器で求められる。
【0004】
一般には、装置や機器の製造ないしは販売業者が、保守サービスの一環として制御パラメータの調整を行っている。また、機械学習技術の進展にともない、装置や機器がその状態に応じて制御パラメータを調整する技術が現れている。例えば、特許文献1に記載の発明は、工作機械において、加工誤差量、機械稼働率の観点から工具補正間隔を、強化学習を用いて最適化している。また、特許文献2に記載の発明は、ロボットの制御装置において、動作時間、目標位置からの乖離、振動などの観点からロボットの動作パラメータを、強化学習を用いて最適化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5969676号公報
【文献】特開2018-126796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の発明では、機械の動作精度や動作時間、効率などの観点から制御パラメータの最適化が行われている。一方、装置や機器には、国や業界の規制、規格への準拠が求められる。例えば、電磁妨害波に関する情報処理装置等電波障害自主規制協議会(略称VCCI(Voluntary Control Council for Interference by Information Technology Equipment))が定める規制やEUのEMC(ElectroMagnetic Compatibility)指令、電気製品の安全性に関するEUの低電圧指令などを遵守する必要がある。
【0007】
制御パラメータが変更されると、規制の対象となる値(例えば、EMC指令における装置が発する電磁妨害波の電波強度)が変化し、限度値を超える可能性がある。しかしながら、上記発明には規制に関する記載はなく、考慮されていない。
【0008】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、機械学習で算出された制御パラメータの規格に準拠した範囲内での変更を可能とする画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムであって、前記画像処理装置は、画像形成部と、前記画像形成部の所定の制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとして前記サーバに送信する通信部とを備え、前記サーバは、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して前記画像処理装置に送信する判定部を備え、前記画像処理装置はさらに、前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとする更新部を備えることを特徴とする画像処理システム。
【0010】
(2)前記サーバには、前記画像処理装置と同型の画像処理装置が接続されており、前記判定部は、当該同型の画像処理装置の学習モデルを前記仮決定学習モデルに変更し、当該同型の画像処理装置を使って前記規格試験の合否を判定することを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0011】
(3)前記同型の画像処理装置を使った前記規格試験の合否の判定は、異なる条件の下で前記規格試験を実施して判定することを特徴とする(2)に記載の画像処理システム。
【0012】
(4)前記異なる条件とは、印字動作モード、印刷枚数、用紙サイズ、用紙種類、および設置環境のなかの少なくとも1つ含むことを特徴とする(3)に記載の画像処理システム。
【0013】
(5)前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した学習モデルが記憶され、前記判定部は、前記仮決定学習モデルが前記合格した学習モデルに含まれる場合には、前記規格試験に合格と判定することを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0014】
(6)前記学習モデルには、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータに係る学習モデルと、前記規格試験に影響しない制御パラメータに係る学習モデルとが含まれ、前記更新部は、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータに係る学習モデルについては、前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとし、前記規格試験の合否に影響しない制御パラメータに係る学習モデルについては、前記合否結果によらず前記画像処理装置で実行する学習モデルとすることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0015】
(7)前記画像処理装置の通信部は、前記仮決定学習モデルとともに前記サーバに環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方を送信し、前記サーバの記憶部には、前記環境情報と前記使用履歴情報と関連付けて前記規格試験に合格したときの学習モデルが記憶され、前記判定部は、前記仮決定学習モデルが、前記画像処理装置が送信した環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方に関連付けられた前記規格試験に合格したときの学習モデルに対応する場合には、前記規格試験に合格と判定することを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0016】
(8)前記学習モデルは、前記学習モデルの係数によって構築されることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0017】
(9)前記規格試験の規格は、法規制および安全規制の少なくとも一方に対応する規格であることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0018】
(10)前記機械学習により決定する制御パラメータは画像形成で使用する高圧出力パラメータ、定着ヒータ出力パラメータであることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0019】
(11)前記機械学習は、所定の報酬判定を伴う強化学習であることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0020】
(12)画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムの画像処理装置であって、画像形成部と、前記画像形成部の所定の制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとして前記サーバに送信する通信部と、前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、前記画像処理装置に送信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとする更新部とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【0021】
(13)コンピュータである画像処理装置に実行させるためのプログラムであって、画像を形成するステップと、前記画像の形成に係る制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行するステップと、前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信するステップと、前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、前記画像処理装置に送信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記画像処理装置で実行する学習モデルとするステップとを実行させるためのプログラム。
【0022】
(14)制御パラメータを備える装置の前記制御パラメータの変更を管理する制御管理システムであって、前記装置は、前記制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行と、前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信する通信部と、を備え、前記サーバは、前記機械学習後の学習モデルである仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定する合否判定と、を備え、前記装置はさらに、前記合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して前記装置で実行する学習モデルとする更新とを備える制御管理システム。
【0023】
(15)制御パラメータの値の決定に係る機械学習を実行する機械学習実行部と、前記機械学習後の学習モデルを仮決定学習モデルとしてサーバに送信する通信部と、前記サーバが、前記仮決定学習モデルが選択した制御パラメータにおける規格試験の合否を判定して、返信した当該合否に応じて前記仮決定学習モデルを更新して実行する学習モデルとする更新部とを備える装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、機械学習で算出された制御パラメータの規格に準拠した範囲内での変更を可能とする画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る画像処理システムの全体構成図である。
図2】本実施形態に係る画像処理装置の内部構成図である。
図3】本実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。
図4】本実施形態に係る画像処理装置の現像器に加わる電圧を例示する図である。
図5】電磁妨害波の規格限度値の一例を説明するための図である。
図6】本実施形態に係るサーバの機能ブロック図である。
図7】本実施形態に係るサーバが記憶する試験用画像処理装置データベースのデータ構成図である。
図8】本実施形態に係る画像処理システムの学習モデル更新処理のシーケンス図である。
図9】本実施形態に係る画像処理装置(ユーザ機)の印刷処理のフローチャートである。
図10】本実施形態に係る画像処理装置(試験対象機)のテスト印刷処理のフローチャートである。
図11】本実施形態の変形例1に係るサーバの機能ブロック図である。
図12】本実施形態の変形例1に係るサーバが記憶する合格学習モデルデータベースのデータ構成図である。
図13】本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの学習モデル変更処理のシーケンス図である。
図14】本実施形態の変形例2に係る画像処理装置が記憶するパラメータ種別データベースのデータ構成図である。
図15】本実施形態の変形例3に係るサーバが記憶する合格学習モデルデータベースのデータ構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための形態(実施形態)における画像処理システムについて説明する。画像処理システムは、ユーザが利用する画像処理装置(ユーザ機)、サーバ、および試験室に設置される画像処理装置(試験対象機)を含む。ユーザ機は、機械学習技術を用いて、制御パラメータを更新する。詳しくは、ユーザ機は、テストチャートを印刷し、印刷結果を読み取って、現在の制御パラメータにおける画像を評価し、機械学習モデルを更新して、更新された機械学習モデルをサーバに送信する。サーバは、試験対象機に機械学習モデルを設定して、機械学習モデルが決定する制御パラメータが電磁妨害波の規制を満たすか否かを試験して、合否をユーザ機に通知する。ユーザ機は、合格なら機械学習モデルを正の報酬で更新し、更新された機械学習モデルが決定した制御パラメータを設定する。ユーザ機は、不合格なら機械学習モデルを負の報酬で更新する。
【0027】
機械学習技術の一つとして、強化学習がある。制御パラメータの設定値を状態とし、設定値の変更を行動として、テストチャートの印刷結果、および電磁妨害波の試験結果に基づいて報酬を定めることで、強化学習による画像品質を向上するための制御パラメータの変更(最適化)が可能となる。強化学習以外の機械学習技術を用いてもよい。
試験対象機で制御パラメータの電磁妨害波の規制を満たすか否かの試験(規格試験)を実行することで、ユーザ機においても規制を満たすことが保証できるようなり、規制を満たす範囲内でのユーザ機ごとの画像品質向上が可能となる。画像処理装置(ユーザ機)の部品のばらつきやユーザ機が設置されている環境、経年変化まで考慮した制御パラメータの最適化が可能となる。
なお、以下の実施形態では、規制(規格)として電磁妨害波を例(安全規制の例)にして説明するが、他の法律や条約、各種団体による規制や規格、基準など(法規制とも記す)であってもよい。
【0028】
≪画像処理システムの全体構成≫
図1は、本実施形態に係る画像処理システム100の全体構成図である。画像処理システム100は、画像処理装置200(ユーザ機)、サーバ300、および画像処理装置600(試験対象機)を含んで構成される。画像処理装置200は、ユーザが利用する画像処理装置であって、ネットワーク800を介してサーバ300と通信可能である。
【0029】
画像処理装置600(試験対象機)は、試験室500(電波暗室)に設置され、規格試験器550により画像処理装置600が発する電磁妨害波の強度が測定される。規格試験器550の測定結果は、サーバ300に送信される。なお、試験室500は、空調設備を備えており、室内の温度や湿度が調整可能であって、画像処理装置600の設置環境を変えながら規格試験を行うことが可能である。
【0030】
図1では、1つの試験室500に1つの画像処理装置600と1つの規格試験器550が設置されているが、これに限らず、複数の画像処理装置600や複数の規格試験器550が設置されてもよい。また、1つのサーバ300に複数の試験室500が接続されているが、1つの試験室500であってもよい。
【0031】
≪画像処理装置(ユーザ機)の構成≫
図2は、本実施形態に係る画像処理装置200の内部構成図である。画像処理装置200は、給紙トレイ281,282,283、搬送路270、画像形成部260、スキャナ291、および排紙トレイ292を含んで構成される。給紙トレイ281,282,283には、用紙(記録媒体)がセットされる。用紙は、搬送路270上を搬送され、画像形成部260で印刷(画像が形成)されて、排紙トレイ292に排出される。画像形成部260と排紙トレイ292との間の搬送路270上にスキャナ291が備えられ、印刷された用紙上の画像を読み取る。
【0032】
画像形成部260は、レーザ264、感光体261、現像器263、帯電極265、一次転写ローラ262、一次転写ベルト268、二次転写ローラ267、および定着器266を含んで構成される。レーザ264、感光体261、現像器263、帯電極265、および一次転写ローラ262は、YMCK4色に対応して、それぞれ4つずつ備わる。
【0033】
画像形成部260は、電子写真方式により搬送路270を搬送される用紙に画像を形成する。詳しくは、感光体261が帯電極265で帯電され、レーザ264で感光体261上に潜像が形成されて、現像器263によりトナーが感光体261にのる。感光体261上のトナーは、一次転写ローラ262により一次転写ベルト268に転写されて、一次転写ベルト268上で4色のトナーが重なり、トナー像が形成される。一次転写ベルト268上のトナー像は、二次転写ローラ267により搬送路270上の用紙に転写される。
【0034】
図3は、本実施形態に係る画像処理装置200の機能ブロック図である。画像処理装置200は、全体制御CPU(Central Processing Unit)211、記憶部212、プリンタ制御部220、ネットワークインタフェース219(図3では「ネットI/F」と記載、通信部とも記す)、レーザ264、およびスキャナ291を備える。
【0035】
全体制御CPU211は、記憶部212が記憶するプログラム214を実行することで、画像処理装置200全体を制御する制御部として機能する。また、全体制御CPU211は、レーザ264のON/OFFを制御して、感光体261上に潜像を形成する。他の制御として、画質に係る制御パラメータの変更(調整)がある。画像処理装置200を含む画像処理システム100の制御パラメータ変更処理については、後記する図8を用いて説明する。
【0036】
記憶部212は、プログラム214の他に、後記する学習モデル213(機械学習モデル)を記憶する。ネットワークインタフェース219(通信部)は、画像処理システム100の構成要素であるサーバ300との間で通信データを送受信する。また、ネットワークインタフェース219は、パソコンなどの他の装置との通信データを送受信し、印刷ジョブのデータを受信する。スキャナ291は、搬送路270上の用紙に形成された画像を読み取り、全体制御CPU211に出力する。
【0037】
プリンタ制御部220は、プリンタ制御CPU221、ROM(Read Only Memory)222、RAM(Random Access Memory)224、I/O部225、D/A部226を備えて構成される。プリンタ制御CPU221は、ROM222に記憶されるファームウェア223に従って動作して画像形成部260(図2参照)を制御し、制御に必要な一時的なデータはRAM224に記憶する。プリンタ制御CPU221は、I/O部225を介して搬送路270に備わる搬送ローラ271と定着器266とを制御する。また、プリンタ制御CPU221は、D/A部226を介して、レーザ264、帯電極265、現像器263、一次転写ベルト268、および二次転写ローラ267を制御する。
【0038】
≪現像電圧と画像との関係≫
図4は、本実施形態に係る画像処理装置200の現像器263に加わる電圧を例示する図である。現像器263のトナーに電圧を印加することで、感光体261上の潜像にトナーが移動する。印加する電圧には、直流成分と交流成分とがある。
【0039】
図4における直流成分の電圧(現像電圧)V1は800Vである。交流成分は矩形波であり、振幅V2は200V、周波数fは3KHzである。時刻t1以前、および時刻t2以後は、アイドリング状態であり、電圧は印加されない。時刻t1と時刻t2との間は、印刷状態であり、図示する電圧が現像器263に印加される。
直流成分の電圧V1を調整することによって、画像の最高濃度が変化する。また、交流成分の振幅V2を調整することで中間濃度が変化し、周波数fを調整することで画像ノイズ、ムラが変化する。これらの電圧や周波数を調整することで、画質を調整、向上させることができる。しかしながら、矩形波は高周波成分を含み電圧が高いので、電磁妨害波が発生しやすく、VCCIなどの規制の範囲内で、調整する必要がある。
【0040】
図5は、電磁妨害波の規格限度値の一例を説明するための図である。図5のなかで、PK(peak)、QP(quasi-peak)、AV(average)は、それぞれ電磁妨害波の尖頭値、準尖頭値、平均値を示し、単位はdBμV/mである。図5において一番下の行は、3GHz~6GHzの電磁妨害波の測定距離3mでの限度値は、平均値で54dBμV/mであり、尖頭値で74dBμV/mであることを示している。
【0041】
≪画像処理装置(試験対象機)の構成≫
画像処理装置600(試験対象機)の基本的な構成は、画像処理装置200(ユーザ機)と同様である(図2および図3参照)。画像処理装置200が、ユーザが指示した印刷ジョブを処理する(ユーザが送信した印刷データを印刷する)のに対して、画像処理装置600は、サーバ300が送信した学習モデルを自身の学習モデル213として設定し、テストチャートの印刷を行う。詳しくは、画像処理装置600は、自身の学習モデル213が決定した制御パラメータを設定して、環境や印刷条件を変えながらテストチャートを印刷する(後記する図10参照)。規格試験器550は、印刷時の画像処理装置600が発する電磁妨害波を測定して、測定結果をサーバ300に送信する。
【0042】
≪サーバの構成≫
図6は、本実施形態に係るサーバ300の機能ブロック図である。サーバ300は、コンピュータであって、制御部310、記憶部320、および通信部340を備える。サーバ300は、画像処理装置200(ユーザ機)から学習モデル213を受信し、画像処理装置600(試験対象機)を利用して学習モデル213が規制(規格)に準拠するか否かを試験する。詳しくは、サーバ300の制御部310(判定部)は、画像処理装置600に学習モデル213を設定してテスト印刷の実行を指示する。制御部310は、規格試験器550から電磁妨害波の強度の測定結果を受信して、規格試験の合否を判定して、判定結果を画像処理装置200に通知する。サーバ300を含む画像処理システム100の制御パラメータ変更処理については、後記する図8を用いて説明する。
通信部340は、画像処理装置200,600や規格試験器550との通信データを送受信する。記憶部320は、試験用画像処理装置データベース330(後記する図7参照)を記憶する。
【0043】
図7は、本実施形態に係るサーバ300が記憶する試験用画像処理装置データベース330のデータ構成図である。試験用画像処理装置データベース330は、表形式のデータであり、1つの行(レコード)は、1つの画像処理装置600(試験対象機)を示す。試験用画像処理装置データベース330のレコードは、識別情報331、機種332、アドレス333、試験室334、および試験器335の列(属性)を含んで構成される。
識別情報331、機種332、およびアドレス333は、画像処理装置600の識別情報、機種、ネットワークアドレスである。試験室334は、画像処理装置600が設置されている試験室500(図1参照)の識別情報である。試験器335は、画像処理装置600が発する電磁妨害波の強度を測定する規格試験器550(図1参照)の識別情報である。
【0044】
機種332に含まれる機種(機種名)は、1つとは限らず、電磁妨害波の試験について同等と見なせるならば、複数の機種を含んでも構わない。また、試験器335に含まれる規格試験器550の識別情報は、1つとは限らず、複数の規格試験器550で電磁妨害波を測定する場合には、複数の識別情報が含まれる。
レコード339は、識別情報331が「T1234」である画像処理装置600の情報であって、機種は「C1234」であり、ネットワークアドレスは「111.22.3.4」である。また、この画像処理装置600は、「R34」の試験室500に設置され、識別情報が「A1234」である規格試験器550により電磁妨害波が測定される。
【0045】
≪学習モデル更新処理≫
学習モデル213(図3参照)の更新処理を説明する前に、画像処理装置200(ユーザ機)の全体制御CPU211(制御部)が実行する制御パラメータの強化学習について説明する。本実施形態における強化学習の対象である制御パラメータは、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数f(図4参照)を設定する制御パラメータであって、それぞれ別の強化学習によって最適になるように調整される。
【0046】
最適な状態とは、テストチャートの印刷結果が最良であるということである。詳しくは、テストチャートを印刷して、印刷結果の画像をスキャナ291が読み取り、読み取った画像における最高濃度の誤差、中間調濃度の誤差、および画像ノイズがないことが最適な状態である。画像処理装置200は、強化学習を実行して、最適となる電圧V1、振幅V2、周波数fの設定値(制御パラメータ値)を求める。
【0047】
電圧V1の強化学習(強化学習Aとも記す)における状態は電圧V1の設定値(制御パラメータ値)であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における最高濃度の誤差の減少量(改善量)である。振幅V2の強化学習(強化学習Bとも記す)における状態は振幅V2の設定値であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における中間調濃度の誤差の減少量である。周波数fの強化学習(強化学習Cとも記す)における状態は周波数fの設定値であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における画像ノイズの減少量である。
【0048】
画像処理装置200(全体制御CPU211、機械学習実行部)は、最高濃度の誤差改善の強化学習A(電圧V1に対応)、中間調濃度の誤差改善の強化学習B(振幅V2に対応)、画像ノイズ改善の強化学習C(周波数fに対応)の3つの強化学習を同時並行して実行する。詳しくは、画像処理装置200(全体制御CPU211)は、現在設定されている電圧V1(現像バイアスの直流成分)近傍の複数の電圧による複数のテストパッチ、振幅V2(現像バイアスの交流成分)近傍の複数の振幅による複数のテストパッチ、および周波数f近傍の複数の周波数による複数のテストパッチを含むテストチャートを印刷して(後記する図9のステップS35参照)、印刷結果をスキャナ291で読み取る(ステップS36参照)。
【0049】
続いて、画像処理装置200は、読み取った画像においける最高濃度の誤差の減少量、中間調濃度の誤差の減少量、画像ノイズの減少量から、報酬を算出し、上記強化学習A,B,Cの学習モデル213を更新する(ステップS37参照)。なお、減少量が大きいほど報酬は大きい。強化学習として、例えばQ学習を採用し、画像処理装置200は、報酬に基づいて状態(設定値)における行動(設定値の変更)の価値(行動価値)を更新するようにしてもよい。この報酬に基づき、画質向上のための学習モデル213が更新される。学習モデル213は、この行動価値を示すデータである。
【0050】
次に、画像処理装置200は、更新された学習モデル213を、より画質を向上させるための制御パラメータの変更値(ステップS44参照)を選択する学習モデル213(仮決定学習モデルとも記す)と仮決定する(ステップS38参照)。画像処理装置200は、仮決定した学習モデル213をサーバ300に送信して(ステップS39参照)電磁妨害波の試験を依頼する。
続いて、画像処理装置200(全体制御CPU211、更新部)は、サーバ300から受信した電磁妨害波の試験の合否結果に応じた報酬で、学習モデル213を更新する(ステップS42,S43参照)。次に、画像処理装置200は、更新された学習モデル213によって選択された制御パラメータの変更値に変更する(ステップS44参照)。この変更値は、次回のテストチャートの印刷(ステップS35参照)で評価される。
【0051】
≪学習モデル更新処理:画像処理システム全体の動作≫
図8は、本実施形態に係る画像処理システム100の学習モデル更新処理のシーケンス図である。図8を参照しながら、画像処理システム100が実行する学習モデル213の更新処理を説明する。なお、画像処理装置200(ユーザ機)が実行する強化学習については、後記する図9を参照して説明する。
【0052】
ステップS11において画像処理装置200(制御部または機械学習実行部として機能する全体制御CPU211)は、強化学習を実行する。このとき、画像処理装置200は、学習モデル213を更新する。
ステップS12において画像処理装置200は、ステップS11で更新された学習モデル213を、より画質を向上させるための制御パラメータの変更値を選択する(ステップS23参照)学習モデルと仮決定する。なお、ステップS11~S12の処理の詳細は、後記する図9を参照して説明する。
【0053】
ステップS13において画像処理装置200は、自身の機種と学習モデル213をサーバ300に送信する。
ステップS14においてサーバ300(制御部310(判定部))は、学習モデルを画像処理装置600(試験対象機)に送信して、画像処理装置600自身の学習モデルに設定するように指示する。詳しくは、サーバ300は、試験用画像処理装置データベース330(図7参照)のなかで機種332にステップS13で受信した機種を含むレコードを検索して、画像処理装置200(ユーザ機)と同一機種の画像処理装置600(試験対象機)を特定する。次に、サーバ300は、特定した画像処理装置600に学習モデルを送信して、画像処理装置600の学習モデルをステップS13で受信した学習モデルに変更するように指示する。
【0054】
ステップS15においてサーバ300(制御部310(判定部))は、画像処理装置600と規格試験器550とに試験を指示する。なお、規格試験器550は、ステップS14で特定された画像処理装置600に対応する試験器335(図7参照)に示される規格試験器550(図1参照)である。
ステップS16において画像処理装置600(試験対象機)は、テスト印刷処理を実行する。テスト印刷処理の詳細は、後記する図10を参照して説明する。
ステップS17において規格試験器550は、上記テスト印刷処理時の電磁妨害波を測定する。
ステップS18において規格試験器550は、電磁妨害波の測定結果をサーバ300に送信する。
ステップS19においてサーバ300は、測定結果と規制の規格限度値(図5参照)とを比較して合否を判定し、画像処理装置200に送信する。
【0055】
ステップS20において画像処理装置200は、試験に合格ならば(ステップS20→YES)ステップS21に進み、不合格ならば(ステップS20→NO)ステップS22に進む。
ステップS21において画像処理装置200は、画質が向上する制御パラメータの選択に対して正の報酬を与えてステップS12で仮決定された学習モデル213を更新する。
ステップS22において画像処理装置200は、画質が向上する制御パラメータの選択に対して負の報酬を与えてステップS12で仮決定された学習モデル213を更新する。
ステップS23において画像処理装置200は、ステップS21,S22で更新された学習モデル213を用いて、画質が向上する制御パラメータの変更値を選択して設定する。
【0056】
≪学習モデル更新処理:画像処理装置の動作≫
図9は、本実施形態に係る画像処理装置200(ユーザ機)の印刷処理のフローチャートである。図9を参照しながら、図8のステップS11~S13,S19~S23に対応する画像処理装置200(図3に記載の全体制御CPU211(機械学習実行部、更新部))が実行する印刷処理を説明する。
ステップS31において画像処理装置200は、印刷指示があれば(ステップS31→YES)ステップS32に進み、印刷指示がなければ(ステップS31→NO)ステップS31に戻る。
【0057】
ステップS32において画像処理装置200は、現在の制御パラメータの設定値に基づく設定電圧(現像電圧)を現像器263に加える。
ステップS33において画像処理装置200は、前回のテストチャート印刷から所定枚数印刷していれば(ステップS33→YES)ステップS35に進み、印刷していなければ(ステップS33→NO)ステップS34に進む。
ステップS34において画像処理装置200は、1枚印刷してステップS31に戻る。
【0058】
ステップS35において画像処理装置200は、テストチャートを印刷する。
ステップS36において画像処理装置200は、スキャナ291が読み取ったテストチャート印刷の印刷結果を取得し、最高濃度の誤差、中間調濃度の誤差、および画像ノイズ量を算出する。
ステップS37において画像処理装置200は、学習モデル231を更新する。詳しくは、画像処理装置200は、ステップS36で算出した値から、前回の制御パラメータの変更(ステップS44、図8のステップS23参照)における誤差やノイズ量の減少量(改善量)を報酬として算出し、行動価値(図3の学習モデル213)を更新する。
【0059】
ステップS38において画像処理装置200は、ステップS37で更新された学習モデル231をより画質を向上させるための制御パラメータの変更値(ステップS44参照)を選択する学習モデルと仮決定する。
ステップS39において画像処理装置200は、仮決定した学習モデル231と自身の機種をサーバ300に送信する。
ステップS40以降は、図8のステップS19以降と同様である。
【0060】
図10は、本実施形態に係る画像処理装置600(試験対象機)のテスト印刷処理(図8のステップS16参照)のフローチャートである。図10を参照して、テスト印刷処理の詳細を説明する。
ステップS51において画像処理装置600は、制御パラメータを設定する。詳しくは、画像処理装置600は、ステップS14(図8参照)で設定された学習モデルを用いて画質が向上する制御パラメータを選択して設定する(強化学習における行動)。
【0061】
ステップS52において画像処理装置600は、環境ごとにステップS53~S55を繰り返す処理を開始する。環境とは、画像処理装置600の設置環境であり、温度(高温、普通、低温)および湿度(高湿度、普通、低湿度)の9つの組み合わせである。画像処理装置600は、試験室500(図1参照)の空調設備に指示して、試験室500の温度および湿度が組み合わせの温度および湿度になってからステップS53~S55の処理を繰り返し実行する。
ステップS53において画像処理装置600は、印刷条件ごとにステップS54を繰り返す処理を開始する。印刷条件とは、印字動作モード、印刷枚数、用紙サイズ、用紙種類の組み合わせであり、組み合わせごとにステップS54の処理を繰り返し実行する。
【0062】
ステップS54において画像処理装置600は、テストチャートを印刷する。
ステップS55において画像処理装置600は、全ての印刷条件ごとにステップS54を実行したならばステップS55に進み、未実行の印刷条件があれば、当該印刷条件でステップS54を実行する。
ステップS56において画像処理装置600は、全ての環境ごとにステップS53~S55を実行したならばテスト印刷処理を終了し、未実行の環境があれば、試験室500の環境が当該環境になってからステップS53~S55を実行する。
【0063】
≪学習モデル更新処理の特徴≫
学習モデル更新処理において、画像処理装置200は、テストチャートの印刷結果を評価して学習モデル213を更新して仮決定(図9のステップS35~S38参照)する。サーバ300は、仮決定された学習モデルが選択した制御パラメータを用いたテスト印刷処理(図8のステップS16、および図10参照)における電磁妨害波を測定することで学習モデルの規格試験の合否を判定する(ステップS17~S19参照)。画像処理装置200は、合否に応じた報酬で仮決定された学習モデル213を更新して(ステップS21,S22参照)、この更新された学習モデル213を用いて、画質が向上する制御パラメータを選択して設定する(ステップS23参照)。
更新された学習モデル213が選択した画質が向上する制御パラメータは、画像処理装置600において規格試験に合格済みである。このため、画像処理装置200は、規格(規制)を守ったうえで、画像の品質向上(最高濃度の誤差や中間調濃度の誤差、画像ノイズの削減)を行うことができる。
【0064】
なお、上記した実施形態では、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2、および周波数fに係る制御パラメータ(高圧出力パラメータ)の変更処理を説明した。画像処理装置200の制御パラメータには、この3つに限らず、搬送路270に備わる搬送モータの速度や加減速タイミングなどの制御パラメータ、定着器266のヒータに係る制御パラメータ(定着ヒータ出力パラメータ)も存在しており、強化学習による最適化の対象としてもよい。報酬については、画質に限らず、例えば、処理時間の短さ、騒音の低さ、消費電力の低さ、消費トナー量の少なさなどから算出されてもよい。
【0065】
≪変形例1:サーバが合格学習モデルを保持≫
上記した実施形態において、サーバ300は、画像処理装置200(ユーザ機)から送信された学習モデルを画像処理装置600(試験対象機)に設定し試験して合否を通知している(図8のステップS14~S19参照)。これに対して、サーバ300は、合格した学習モデルを記憶しておき、合格実績のある学習モデルに対しては、試験なしに合格を通知してもよい。詳しくは、サーバ300は、画像処理装置200から送信された学習モデルが、試験に合格実績のある学習モデルと同等である(例えば、学習モデルのパラメータ(係数)が一致する)場合には、試験なしに合格を通知する。
【0066】
図11は、本実施形態の変形例1に係るサーバ300Aの機能ブロック図である。サーバ300(図6参照)と比較して、サーバ300Aは、合格学習モデルデータベース410(後記する図12参照)をさらに記憶する。
【0067】
図12は、本実施形態の変形例1に係るサーバ300Aが記憶する合格学習モデルデータベース410のデータ構成図である。合格学習モデルデータベース410は、表形式のデータであり、機種別に規格試験に合格した学習モデルを記憶する。合格学習モデルデータベース410の列(属性)は、機種411、および学習モデル412を含む。機種411は画像処理装置200の機種であって、学習モデル412は合格した学習モデルを示す。
【0068】
図13は、本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの学習モデル変更処理のシーケンス図である。
ステップS61~S63は、ステップS11~S13(図8参照)と同様である。
ステップS64においてサーバ300A(制御部310(判定部))は、受信した学習モデルが合格済みであるか否かを判断する。詳しくは、サーバ300Aは、合格学習モデルデータベース410(図12参照)のレコードであって、ステップS63で受信した機種が機種411に一致するレコードの学習モデル412が、受信した学習モデルを含むか否かを判断する。サーバ300Aは、含んでいれば(ステップS64→YES)ステップS65に進み、含まなければ(ステップS64→NO)ステップS66に進む。
【0069】
ステップS65においてサーバ300Aは、合格を通知する。合格を受信した画像処理装置200は、ステップS74に進む。
ステップS66~S70は、ステップS14~S18(図8参照)と同様である。
ステップS71においてサーバ300Aは、測定結果と規制の規格限度値(図5参照)とを比較して、合否を判断し、合格ならば(ステップS71→YES)ステップS72に進み、不合格ならば(ステップS71→NO)ステップS73に進む。
【0070】
ステップS72においてサーバ300Aは、合格した学習モデルを合格学習モデルデータベース410に追加する。詳しくは、サーバ300Aは、合格学習モデルデータベース410のステップS63で受信した機種が機種411に一致するにレコードを特定する。次に、サーバ300Aは、特定したレコードの学習モデル412に学習モデルを追加する。
ステップS73以降は、図8のステップS19以降と同様である。
【0071】
サーバ300Aが、合格学習モデルデータベース410を備えることで、サーバ300Aの応答が速くなる。詳しくは、画像処理装置200が送信した学習モデルが、過去に合格した学習モデルであれば、サーバ300Aは、試験することなく合格を通知する(ステップS65参照)。このため、画像処理装置200の印刷処理(図9参照)において、ステップS39~S40における、学習モデルを送信してから合否を受信するまでの待ち時間が短縮される。また、合格実績がある無駄な試験を削減することができ、試験に必要な電力が削減される。また、同じ機種の複数の画像処理装置200(ユーザ機)から連続して学習モデルを受信した場合でも、サーバ300Aは、合格実績のある学習モデルの試験を省略できるために合格実績のない試験を早く開始することができ、画像処理システム100全体の性能が向上する。
【0072】
≪変形例2:画像処理装置のパラメータ種別データベース≫
本実施形態の変形例1では、サーバ300Aが合格学習モデルデータベース410を記憶しており、記憶している学習モデルに関する試験を行うことなく合格を通知している。これに対して、画像処理装置200(ユーザ機)が試験不要な制御パラメータを記憶して、当該制御パラメータに係る学習モデルの規格試験(図13のステップS63~S73参照)を削減するようにしてもよい。
【0073】
図14は、本実施形態の変形例2に係る画像処理装置200が記憶するパラメータ種別データベース420のデータ構成図である。パラメータ種別データベース420は、制御パラメータ値の変更が、電磁妨害波の強度に影響がある制御パラメータと影響がない制御パラメータとを記憶する。図14では、電磁妨害波の強度に影響があるパラメータとして交流成分の周波数fである「AC周波数」や直流成分の電圧V1である「DC電圧」が記憶されている。また、電磁妨害波の強度に影響がないパラメータとして定着器266(図2参照)に備わる定着ローラモータの回転数が記憶されている。
【0074】
画像処理装置200は、学習モデルを仮決定したとき(図8のステップS12参照)に、当該学習モデルが電磁妨害波の強度に影響があるパラメータに係る強化学習の学習モデルならば、サーバ300に規格試験を依頼し(ステップS13参照)、影響がないパラメータに係る強化学習の学習モデルならばサーバに依頼しない。このように、電磁妨害波の強度に影響がない場合には、規格試験を実施しないことで、画像処理装置200の学習モデルの更新処理が高速化できる。また、サーバ300の負荷を減らすことができる。
【0075】
≪変形例3:サーバが設置環境や使用履歴と関連付けた合格学習モデルを保持≫
合格学習モデルデータベース410(図12参照)は、規格試験に合格した学習モデルを記憶している。サーバ300Aは、画像処理装置200の設置環境や使用履歴と関連付けて合格した学習モデルを記憶するようにしてもよい。
【0076】
図15は、本実施形態の変形例3に係るサーバ300Aが記憶する合格学習モデルデータベース410Aのデータ構成図である。合格学習モデルデータベース410Aは、合格学習モデルデータベース410(図12参照)に環境413、および使用履歴414の属性が追加された表形式のデータである。環境413は、画像処理装置200の設置環境を示し、例えば、「高温,高湿度」や「普通,普通」などがある。使用履歴414は、累計の印刷枚数を示す。
【0077】
画像処理装置200は、規格試験依頼(図13のステップS63参照)の際に、機種に加えて自身の設置環境(環境情報)や使用履歴(使用履歴情報)を含めて学習モデルを送信する。サーバ300Aは、機種411、環境413、および使用履歴414が受信した機種、設置環境、および使用履歴に対応する学習モデル412に、受信した学習モデルが含まれるならば合格を通知し、含まれないならば試験を実行する。規格試験を行う場合には、試験室500(図1参照)の環境を画像処理装置200が送信した設置環境に合致するようにして規格試験を行う。
【0078】
なお、画像処理装置200は、設置環境および使用履歴の一方のみを送信してもよい。また、合格学習モデルデータベース410Aは、合格学習モデルデータベース410(図12参照)に環境413および使用履歴414の一方のみの属性が追加されたデータであってもよい。
【0079】
≪変形例4:複数の制御パラメータについての強化学習≫
上記した実施形態において、強化学習の対象は、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数f(図4参照)であり、それぞれの制御パラメータごとに強化学習を実行している。これは、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数fは独立しており、1つの制御パラメータの変更が他に影響を及ぼさないからである。例えば、電圧V1を変更しても、中間調濃度への影響がない。
【0080】
他の制御パラメータにおいて、複数の制御パラメータ間で相互影響がある場合には、これらの制御パラメータをセットとして強化学習を実行してもよい。この場合には、状態は制御パラメータ値のセットであり、行動は複数の制御パラメータ値の変更となる。
【0081】
≪変形例5:規格試験時の環境≫
規格試験を実施するとき、画像処理装置600は、環境および印刷条件を変えながらテスト印刷を行っている(図10のステップS52参照)。詳しくは、画像処理装置600は、全ての環境(温度および湿度の組み合わせ)それぞれにおいて、全ての印刷条件でテストチャートを印刷している。
これに替えて、全ての印刷条件でテストチャートを印刷するのは、通常の温度と通常の湿度とを組み合わせた環境のみに限定し、他の環境の組み合わせにおいては、代表的な印刷条件のみでテストチャートを印刷して、規格試験を実施するようにしてもよい。このようにすることで、規格試験の時間を短縮することができる。
【0082】
≪その他の変形例≫
上記した実施形態では、画像処理装置200は、所定枚数出力するごとにテストチャートを印刷して、強化学習を実行している(図9のステップS33→YES,S35~S37参照)。画像処理装置200は、別のタイミングで強化学習を実行してもよい。例えば、画像処理装置200は、実行する印刷ジョブがないアイドリング時間中に制御パラメータ変更処理を実行してもよい。
【0083】
上記した実施形態は、画像処理装置200を含む画像処理システム100の実施例である。画像処理装置200に限らず、制御パラメータを有する製造装置や医療機器、家電製品などの装置であっても、同様に規制の範囲内で装置の制御パラメータの最適化が可能である。詳しくは、装置とサーバとを含んで構成される制御管理システムにおいて、装置の制御パラメータの変更値を選択する強化学習の学習モデルをサーバに送信する。サーバは、装置と同型の装置に学習モデルを設定し、学習モデルを用いて決定された制御パラメータを設定して規格試験を実行して、合否を装置に通知する。装置は、合否に応じた報酬で学習モデルを更新して、更新された学習モデルを用いて制御パラメータを選択して設定を変更する。
【0084】
以上、本発明の実施形態やその変形例について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他のさまざまな実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
100 画像処理システム(制御管理システム)
200 画像処理装置(ユーザ機、装置)
211 全体制御CPU(制御部、機械学習実行部、更新部、機械学習処実行段、更新手段)
212 記憶部
213 学習モデル
214 プログラム
219 ネットワークインタフェース(通信部、通信手段)
223 ファームウェア
260 画像形成部
300,300A サーバ
310 制御部(判定部、合否判定手段)
320 記憶部
330 試験用画像処理装置データベース
340 通信部
410,410A 合格学習モデルデータベース
420 パラメータ種別データベース
550 規格試験器
600 画像処理装置(試験対象機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15