(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御プログラム、及び通信制御システム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/14 20090101AFI20240702BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20240702BHJP
H04W 72/563 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
H04W36/14
H04W72/54
H04W72/563
(21)【出願番号】P 2020097215
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 歩
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0086118(US,A1)
【文献】特開2017-063302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、
前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、
前記端末に割り当てられるeSIMのプロファイルを管理するサブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替えることによって、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を行う
通信制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記端末に割り当てられる各々のネットワークスライスに関する情報を管理する管理情報を参照し、前記端末に優先的に割り当てる優先ネットワークスライスが前記管理情報に設定され、かつ、前記優先ネットワークスライスにおける前記端末との通信障害の発生が通知されていなければ、前記端末に割り当てられるネットワークスライスが前記優先ネットワークスライスとなるように、前記サブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替える
請求項
1記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記端末に対する前記優先ネットワークスライスが前記管理情報に設定されていない場合、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の復旧が通知された場合であっても、前記端末への現状のネットワークスライスの割り当てを維持する
請求項
2記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の復旧が通知された場合、前記端末に再び前記第1ネットワークスライスが割り当てられるように、前記サブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替える
請求項
1記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記端末のプロファイルの切り替えを指示する指示電文が他の電文よりも優先して前記端末に通知されるように前記指示電文の通信形態を指定する
請求項
1~請求項
4の何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記指示電文の通信形態としてショートメッセージサービス、またはHTTPSを指定する
請求項
5記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1ネットワークスライスと前記第2ネットワークスライスが異なる通信事業者のネットワークスライスとなるように、前記端末に割り当てるネットワークスライスを切り替える制御を行う
請求項1~請求項
6の何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1ネットワークスライスと前記第2ネットワークスライスが同じ通信事業者のネットワークスライスとなるように、前記端末に割り当てるネットワークスライスを切り替える制御を行う
請求項1~請求項
6の何れか1項に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、通信事業者毎に付与された各々のネットワークスライスを識別する識別情報を用いて、前記端末の接続先となるネットワークスライスの指定を行う
請求項
7または請求項
8に記載の通信制御装置。
【請求項10】
コンピュータに、
各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、
前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、
前記端末に割り当てられるeSIMのプロファイルを管理するサブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替えることによって、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を実行させる
通信制御プログラム。
【請求項11】
各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を行う通信制御装置と、
ソフトウェアによって定義されたポリシーに基づいて通信の制御が行われる広域回線を通じて、前記通信制御装置からネットワークスライスの切り替えを指示する指示電文を受け付けたサブスクリプションマネージャーの制御に従い、前記指示電文で切り替え対象として指示された前記端末のプロファイルの切り替えを行うWAN制御装置と、
を含む通信制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御プログラム、及び通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、データを転送するネットワークノードであって、前記ネットワークノードを管理する管理装置に接続されており、所定のイベントを検出した場合、当該イベントの検出を前記管理装置に通知するロジックを有し、転送されるデータのトラフィックの仮想ネットワークを識別し、前記識別された仮想ネットワークに定められたロジックを特定し、前記特定されたロジックを当該仮想ネットワークのトラフィックに対して実行するネットワークノードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
“5G”と呼ばれる第5世代移動通信システムでは、例えばWiFi(登録商標)のように、NG-RAN(Next Generation-Radio Access Network)以外の無線アクセスネットワークの接続も行えるように考慮されている。したがって、5Gを利用する端末では、3GPPやnon-3GPPといったアーキテクチャの異なる複数の無線通信回線の中から、用途や通信環境に応じて使用する無線通信回線を選択して通信を行うことがある。
【0005】
こうした複数の無線通信回線と接続可能な端末では、ユーザが例えば接続中の無線通信回線のジッター等を参考にして、規定の回線品質よりも回線品質が低下していると判断した場合、他の無線通信回線に切り替える操作を行うことがある。
【0006】
しかしながら、ユーザが無線通信回線の切り替えの判断に利用できる情報は、端末が通信を通じて取得した、無線通信回線の状況を間接的に表す情報のみである。したがって、ユーザは、無線通信回線を提供する通信事業者の無線設備で実際に障害が発生しているのか判断がつかず、端末を障害の発生している無線通信回線に接続し続けてしまうことがある。
【0007】
本発明は、各々の通信事業者が提供する無線通信回線と接続可能な端末が、端末で取得した情報のみに基づいて接続先の無線通信回線を切り替える場合と比較して、障害の発生している無線通信回線に接続し続けることを抑制することができる通信制御装置、通信制御プログラム、及び通信制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る通信制御装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を行う。
【0009】
第2態様に係る通信制御装置は、第1態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記端末に割り当てられるeSIMのプロファイルを管理するサブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替えることで、前記端末に割り当てられるネットワークスライスを切り換える制御を行う。
【0010】
第3態様に係る通信制御装置は、第2態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記端末に割り当てられる各々のネットワークスライスに関する情報を管理する管理情報を参照し、前記端末に優先的に割り当てる優先ネットワークスライスが前記管理情報に設定され、かつ、前記優先ネットワークスライスにおける前記端末との通信障害の発生が通知されていなければ、前記端末に割り当てられるネットワークスライスが前記優先ネットワークスライスとなるように、前記サブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替える。
【0011】
第4態様に係る通信制御装置は、第3態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記端末に対する前記優先ネットワークスライスが前記管理情報に設定されていない場合、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の復旧が通知された場合であっても、前記端末への現状のネットワークスライスの割り当てを維持する。
【0012】
第5態様に係る通信制御装置は、第2態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の復旧が通知された場合、前記端末に再び前記第1ネットワークスライスが割り当てられるように、前記サブスクリプションマネージャーと連携して前記端末のプロファイルを切り替える。
【0013】
第6態様に係る通信制御装置は、第2態様~第5態様の何れかの態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記端末のプロファイルの切り替えを指示する指示電文が他の電文よりも優先して前記端末に通知されるように前記指示電文の通信形態を指定する。
【0014】
第7態様に係る通信制御装置は、第6態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記指示電文の通信形態としてショートメッセージサービス、またはHTTPSを指定する。
【0015】
第8態様に係る通信制御装置は、第1態様~第7態様の何れかの態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記第1ネットワークスライスと前記第2ネットワークスライスが異なる通信事業者のネットワークスライスとなるように、前記端末に割り当てるネットワークスライスを切り替える制御を行う。
【0016】
第9態様に係る通信制御装置は、第1態様~第7態様の何れかの態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、前記第1ネットワークスライスと前記第2ネットワークスライスが同じ通信事業者のネットワークスライスとなるように、前記端末に割り当てるネットワークスライスを切り替える制御を行う。
【0017】
第10態様に係る通信制御装置は、第8態様または第9態様に係る通信制御装置において、前記プロセッサは、通信事業者毎に付与された各々のネットワークスライスを識別する識別情報を用いて、前記端末の接続先となるネットワークスライスの指定を行う。
【0018】
第11態様に係る通信制御プログラムは、コンピュータに、各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を実行させるためのプログラムである。
【0019】
第12態様に係る通信制御システムは、各々の通信事業者が提供する無線通信回線のうち、ユーザが利用する端末の接続先として割り当てられている第1ネットワークスライスを制御する制御装置から、前記第1ネットワークスライスの接続情報を表す通信情報を取得し、前記通信情報によって前記第1ネットワークスライスの通信品質の低下が通知された場合、前記第1ネットワークスライスとは異なる第2ネットワークスライスが前記端末に割り当てられるようにネットワークスライスを切り替える制御を行う通信制御装置と、ソフトウェアによって定義されたポリシーに基づいて通信の制御が行われる広域回線を通じて、前記通信制御装置からネットワークスライスの切り替えを指示する指示電文を受け付けたサブスクリプションマネージャーの制御に従い、前記指示電文で切り替え対象として指示された前記端末のプロファイルの切り替えを行うWAN制御装置と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
第1態様、第11態様、及び第12態様によれば、各々の通信事業者が提供する無線通信回線と接続可能な端末が、端末で取得した情報のみに基づいて接続先の無線通信回線を切り替える場合と比較して、障害の発生している無線通信回線に接続し続けることを抑制することができる、という効果を有する。
【0021】
第2態様によれば、端末の接続先となるネットワークスライスを遠隔操作によって切り替えることができる、という効果を有する。
【0022】
第3態様によれば、端末の接続先を他のネットワークスライスよりも優先的に優先ネットワークスライスに切り替えることができる、という効果を有する。
【0023】
第4態様によれば、接続中のネットワークスライスの通信品質に問題がなくても、ネットワークの切り替えが強制的に行われることを抑制することができる、という効果を有する。
【0024】
第5態様によれば、ネットワークスライスを切り換える前に接続していた元のネットワークスライスを利用することができる、という効果を有する。
【0025】
第6態様によれば、電文の遅延が発生する程度にトラフィックが増加している場合であっても、優先的にネットワークスライスの切り替えを行うことができる、という効果を有する。
【0026】
第7態様によれば、ショートメッセージサービス以外の通信形態を用いて端末にネットワークスライスの切り替えを指示する指示電文を送信する場合と比較して、指示電文が早く端末に通知される、という効果を有する。
【0027】
第8態様によれば、異なる通信事業者間で、端末に接続するネットワークスライスを切り替えることができる、という効果を有する。
【0028】
第9態様によれば、端末に接続するネットワークスライスを、同じ通信事業者が提供するネットワークスライスに制限することができる、という効果を有する。
【0029】
第10態様によれば、端末に接続する無線通信回線をネットワークスライス単位で指定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】通信制御システムのシステム構成例を示す図である。
【
図4】オーケストレータにおける電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図5】UEに割り当てられているネットワークスライスで障害が発生した場合に実行されるネットワークスライスの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】UEに割り当てられていた元のネットワークスライスの障害が復旧した場合に実行されるネットワークスライスの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る通信制御システム1のシステム構成例を示す図である。通信制御システム1は、第5世代移動通信システム(以降、「5Gシステム」という)のCN(Core Network)10と、5Gシステムが提供するネットワーク(以降、「5Gネットワーク」という)とは異なる外部のデータネットワーク(例えばインターネット)を介してCN10と接続されるオーケストレータ20と、外部のデータネットワークを介してオーケストレータ20と接続されるSSM(サブスクリプションマネージャー:Subscription Manager)30と、外部のデータネットワークを介してオーケストレータ20、SSM30、及びCN10と接続される広域回線の一例であるSDWAN(Software Defined WAN)40を含む。
【0033】
CN10は、5Gシステムにおいて通信制御を担う制御装置を含むネットワークであり、例えば各種交換機や加入者情報管理装置といった5Gサービスの提供に用いられる設備によって構成される。ユーザが利用する端末(以降、“UE2”という)とCN10は、5Gシステムが提供する無線通信回線によって接続され、CN10はUE2に5Gサービスを提供する。
【0034】
CN10は5Gサービスを提供する通信事業者毎に構築され、
図1に示す通信制御システム1の例では、キャリアA、キャリアB、及びキャリアCの3つの通信事業者がそれぞれCN10を構築している。UE2にはeSIM(Embedded Subscriber Identity Module)に対応したeUICC(Embedded Universal Integrated Circuit Card)が予め組み込まれており、eUICCに契約先の通信事業者のプロファイルを書き込むことで、UE2でeUICCにプロファイルを書き込んだ通信事業者が提供する5Gサービスの利用が可能となる。
【0035】
eUICCに書き込まれるプロファイルには、例えばUE2に割り当てられるMSISDN(Mobile Station International Subscriber Directory Number)や、UE2の接続先となるアクセスポイント情報等、5Gネットワークへの接続に必要な回線情報が含まれる。なお、MSISDNはUE2に割り当てられる携帯電話番号のことである。UE2のユーザは、少なくとも1つの通信事業者と5Gサービスの利用契約を行っているものとするが、同時に接続可能な5Gネットワークは1つであり、UE2はeUICCに書き込まれたプロファイルに対応した通信事業者が提供する5Gネットワークと接続される。通信事業者は「キャリア」とも呼ばれる。また、eUICCに書き込まれるプロファイルは、eSIMのプロファイルとも呼ばれる。
【0036】
各々のCN10には外部連携部12が含まれ、外部連携部12は、5Gネットワークと異なる外部のデータネットワークに接続されたオーケストレータ20のような外部装置に対して、5Gシステムに関する各種情報を提供するインターフェースとして機能する。
【0037】
オーケストレータ20は、UE2が利用する無線通信回線の切り替えを制御する通信制御装置であり、モニタリングAPI連携部22、SDWAN管理部24、及びSSM連携部26の各機能部と、管理情報テーブル28を含む。
【0038】
モニタリングAPI連携部22は、予め用意されたAPI(Application Programming Interface)を通じて、UE2が利用する無線通信回線の通信情報を取得する。具体的には、モニタリングAPI連携部22が通信情報を取得するために用意されたAPIにUE2のMSISDNを指定すると、指定したMSISDNと対応付けられたUE2が利用する無線通信回線の通信情報が得られる。
【0039】
通信情報には、UE2が利用するキャリアを特定するためのキャリア識別情報、UE2が利用している無線通信回線を識別するためのネットワークスライス識別情報、及びネットワークスライス識別情報によって表される、UE2に割り当てられた無線通信回線の一例であるネットワークスライスとUE2との割り当て状況が含まれる。
【0040】
ネットワークスライスとは、サーバやルータといった5Gサービスの提供に用いられる設備の処理能力やネットワークの帯域といったリソースを仮想的に分割し、分割した仮想リソースを組み合わせてUE2とCN10との間の5Gネットワーク上に仮想網(スライス)を構築する技術である。
【0041】
UE2にネットワークスライスが割り当てられていない場合、UE2とCN10は切断されていることを表すため、UE2とネットワークスライスとの割り当て状況はUE2とCN10の接続状況を表す接続情報として用いられる。
【0042】
接続情報には、何らかの原因によってUE2とネットワークスライスとの割り当てが解除され、UE2とCN10との間でデータ転送が行えない状態になっていることを表す“Loss of connectivity”や、一旦割り当てが解除されたUE2に再度ネットワークスライスが割り当てられ、UE2とCN10との間でデータ転送が可能になった状態を表す“UE reachability”が含まれる。オーケストレータ20は、通信情報によって“Loss of connectivity”が通知された場合、UE2に割り当てられたネットワークスライスに何らかの障害が発生したと認識し、“UE reachability”が通知された場合、ネットワークスライスで発生した障害が復旧したと認識する。UE2に割り当てられたネットワークスライスでの障害の有無は、ネットワークスライスの通信品質を表す属性の一例である。
【0043】
モニタリングAPI連携部22は、取得したネットワークスライスの状態をSDWAN管理部24に通知する。
【0044】
SDWAN管理部24は、モニタリングAPI連携部22に対してネットワークスライスの監視対象となるUE2を指定すると共に、モニタリングAPI連携部22から受け付けたネットワークスライスの割り当て状態に応じて、UE2に割り当てるネットワークスライスの切り替えを行う。
【0045】
SDWAN管理部24は、ネットワークスライスの監視対象となるUE2の指定及びネットワークスライスの切り替えを行う場合、UE2とネットワークスライスに関する管理情報を記憶する管理情報テーブル28を参照する。
【0046】
図2は、管理情報テーブル28の一例を示す図である。管理情報テーブル28にはUE欄、契約回線欄、バックアップの有無欄、及びデフォルト回線欄が含まれる。
【0047】
UE欄には、“UE-1” 、“UE-2”、・・・というように、オーケストレータ20で管理しているUE2を一意に識別するための識別情報が設定される。UE2を一意に識別するための識別情報として、例えばUE2のMSISDNが用いられるが、UE2の製造番号(IMEI)を用いてもよい。管理情報テーブル28のUE欄にMSISDN以外の識別情報を設定する場合、オーケストレータ20は、UE2の識別情報からMSISDNが得られるような対応付け情報を別途有するものとする。
【0048】
契約回線欄には、UE2で利用可能なすべての5Gサービスに関する回線情報が設定される。したがって、複数のキャリアが提供する各々の5Gネットワークに接続可能なUE2の場合、各々のキャリアと契約した回線の回線情報が契約回線欄に設定される。具体的には、UE2で利用可能なキャリアのキャリア識別情報の他、当該キャリアにおいてUE2に割り当てられるネットワークスライス識別情報を含んだ回線情報が契約回線欄に設定される。
【0049】
UE2に割り当てられるネットワークスライスには、通信事業者毎にネットワークスライスを識別する識別情報の一例であるネットワークスライス識別情報が付与されている。したがって、オーケストレータ20は、ネットワークスライス識別情報を用いてネットワークスライスの指定を行う。
【0050】
バックアップの有無欄には、UE2に割り当てられたネットワークスライスで障害が発生した場合、他に割り当て可能なネットワークスライス(バックアップ回線)が存在するか否かを表すバックアップ情報が設定される。バックアップの有無欄に「有」が設定されている場合、他に割り当て可能なネットワークスライスが存在することを表し、「無」が設定されている場合、障害が発生したネットワークスライス以外には割り当て可能なネットワークスライスが存在しないことを表す。
【0051】
デフォルト回線欄には、UE2に割り当て可能なネットワークスライスのうち、UE2に優先的に割り当てを行うネットワークスライスの回線情報が設定される。UE2に割り当て可能なネットワークスライスのうち、何れのネットワークスライスの回線情報をデフォルト回線欄に設定してもよいが、例えば通信費用が最も安いネットワークスライスや、使用できるデータ容量が無制限に設定されているネットワークスライス等、ユーザにとって最も有益となるネットワークスライスの回線情報がデフォルト回線欄に設定される。
【0052】
以降では、管理情報テーブル28のデフォルト回線欄に設定されている回線情報によって表されるネットワークスライスを「優先ネットワークスライス」ということにする。優先ネットワークスライスは各々のUE2のユーザによって指定される。なお、管理情報テーブル28は必ずしもオーケストレータ20に記憶される必要はなく、オーケストレータ20から参照可能な外部装置に記憶されていてもよい。
【0053】
SDWAN管理部24は、ネットワークスライスでの障害の発生及び復旧により、UE2に割り当てるネットワークスライスの切り替えを行う場合、管理情報テーブル28を参照して、切り替え先となるネットワークスライスを選択する。SDWAN管理部24は、ネットワークスライスの切り替え対象となるUE2のMSISDNと切り替え先となるネットワークスライスの回線情報をSSM連携部26に通知する。
【0054】
説明の便宜上、ネットワークスライスの切り替え前にUE2に割り当てられていたネットワークスライスを「元の回線」と表し、切り替え先となるネットワークスライスを「切り替え先回線」、デフォルト回線欄に設定されているネットワークスライスを「デフォルト回線」と表すことがある。元の回線は本実施の形態に係る第1ネットワークスライスの一例であり、切り替え先回線は本実施の形態に係る第2ネットワークスライスの一例である。
【0055】
SSM連携部26は、SDWAN管理部24から受け付けたMSISDNと対応付けられたUE2におけるeUICCの識別情報、すなわちEIDを取得する。オーケストレータ20は、例えばMSISDNとEIDの対応付けを管理するEIDテーブルを参照してMSISDNに対応するEIDを取得する。EIDテーブルはオーケストレータ20で管理してもオーケストレータ20以外の外部装置で管理してもよい。EIDテーブルをオーケストレータ20で管理する場合には、EIDテーブルと管理情報テーブル28を統合して管理してもよい。
【0056】
SSM連携部26は、SSM30と連携してネットワークスライスの切り替え対象となるUE2のeUICCに書き込まれているプロファイルが切り替え先回線の回線情報に対応したプロファイルに書き換えられるように制御する。そのため、SSM連携部26は、SSM30に対して、プロファイルの切り替え対象となるeUICCを特定するためのEIDと切り替え先回線の回線情報を含んだ回線指定電文を通知する。
【0057】
SSM30は、eSIMのプロファイルを管理するサーバであり、プロファイル管理部32を含む。プロファイル管理部32は、オーケストレータ20のSSM連携部26から受け付けた回線指定電文に含まれるEIDに対応したeUICCに対して、切り替え先回線の回線情報に対応したプロファイルのダウンロードを行い、ダウンロードしたプロファイルを有効にしてプロファイルを切り換えるように指示する指示電文をSDWAN40に通知する。
【0058】
SDWAN40とは、ソフトウェアを通じて一元管理が可能で、予め規定したユーザポリシーに従ってユーザ毎に拠点間の回線制御を行い、トラフィックをコントロールするWAN(Wide Area Network)のことである。SDWAN40では、ユーザポリシーに従ってルータ等の設定を行うことで物理的なネットワーク上に仮想ネットワークを構築し、拠点間でのセキュアな通信を実現する。
【0059】
SDWAN40を制御するWAN制御装置には、eSIM部42及びIF管理部44が含まれる。
【0060】
eSIM部42はSSM30から指示電文を受け付けると、指示電文で指定されたeUICCに、同じく指示電文で指定されたプロファイルをCN10経由で送信し、UE2のプロファイルを切り替え先回線のプロファイルに書き換える。
【0061】
IF管理部44は、eSIM部42によるプロファイルの書き換えが完了した場合に、完了通知をオーケストレータ20のSDWAN管理部24に通知する。これにより、UE2に割り当てられている現状のネットワークスライスがオーケストレータ20で把握されることになる。
【0062】
なお、eSIM部42及びIF管理部44に相当する機能部をSDWAN40ではなくUE2に備えるようにしてもよい。この場合、SSM30は、SDWAN40を経由してEIDと対応付けられたUE2に指示電文を送信する。指示電文を受信したUE2は、指定された切り替え先回線のプロファイルをSSM30からダウンロードして、現在のプロファイルを切り替え先回線のプロファイルに書き換える。その後、UE2はプロファイルの書き換えが完了したことを通知する完了通知をオーケストレータ20のSDWAN管理部24に通知する。
【0063】
次に、CN10を含む5Gネットワークについて詳細に説明する。
【0064】
図3は、5Gネットワークの構成例を示す図である。5GネットワークはRAN(Radio Access Network)8とCN10を含んで構成される。
【0065】
RAN8はUE2と無線を通じて接続される基地局ネットワークのことであり、無線アンテナ機能を提供するDU(Distributed Unit)4と、基地局機能を提供するCU(Centralized Unit)6に分離される。CU6は少なくとも1つのDU4と接続され、EU2との通信はDU4を経由して行われることから、DU4を分散ノード、CU6を集約ノードということがある。5Gネットワークは複数のRAN8を含んでもよい。
【0066】
一方、CN10はC-Plane14及びU-Plane16を含んで構成され、C-Plane14及びU-Plane16は、各RAN8のCU6と接続される。
【0067】
C-Plane14は5Gネットワークの通信制御を担う機能部であり、EU2との通信の確立や切断を行う。U-Plane16はデータの転送を担う機能部であり、C-Plane14の制御に従ったデータの転送を行う。データの転送は5Gネットワーク内に限られず、5Gネットワークとは異なる外部のネットワークDN18との間でも行われる。DN18には、例えばインターネット及びSDWAN40が含まれる。
【0068】
次に、オーケストレータ20における電気系統の要部構成例について説明する。
【0069】
図4は、オーケストレータ20における電気系統の要部構成例を示す図である。オーケストレータ20は例えばコンピュータ50を用いて構成される。
【0070】
コンピュータ50は、
図1に示したオーケストレータ20の各機能部の処理を担うCPU(Central Processing Unit)51、コンピュータ50をオーケストレータ20として機能させる通信制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)52、CPU51の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)53、不揮発性メモリ54、及び入出力インターフェース(I/O)55を備える。そして、CPU51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、及びI/O55がバス56を介して各々接続されている。
【0071】
不揮発性メモリ54は、不揮発性メモリ54に供給される電力が遮断されても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。管理情報テーブル28のように、オーケストレータ20の電源が遮断されても記憶し続ける必要のある情報は不揮発性メモリ54に記憶される。
【0072】
不揮発性メモリ54は必ずしもコンピュータ50に内蔵されている必要はなく、例えばコンピュータ50に着脱可能な可搬型の記憶装置であってもよい。
【0073】
I/O55には、例えば通信ユニット57、入力ユニット58、及び表示ユニット59が接続される。
【0074】
通信ユニット57はDN18に接続され、CN10、SSM30、及びSDWAN40を含む各装置やネットワークとの間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0075】
入力ユニット58は、ユーザの指示を受け付けてCPU51に通知する装置であり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が用いられる。音声によって指示を受け付ける場合には、入力ユニット58としてマイクが用いられることがある。
【0076】
表示ユニット59は、CPU51によって処理された情報を視覚的に表示する装置の一例であり、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。
【0077】
I/O55に接続される各種ユニットは一例であり、例えば画像を用紙等の記録媒体に形成する画像形成ユニットのように、必要に応じて
図4に示したユニットとは異なるユニットをI/O55に接続してもよい。また、オーケストレータ20が無人のデータセンター等に設置されているような場合には、入力ユニット58及び表示ユニット59は必ずしも必要ではない。この場合、オーケストレータ20は通信ユニット57を通じてユーザの指示を受け付けると共に、オーケストレータ20が表示ユニット59に表示しようとした情報を、通信ユニット57を通じて他の装置に送信するようにしてもよい。
【0078】
次に、オーケストレータ20におけるネットワークスライスの切り替え処理について説明する。
【0079】
図5は、UE2に割り当てられているネットワークスライスで障害が発生したことをCN10から通知された場合に、オーケストレータ20のCPU51によって実行されるネットワークスライスの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
ネットワークスライスの切り替え処理を規定する通信制御プログラムは、例えばオーケストレータ20のROM52に予め記憶されている。オーケストレータ20のCPU51は、ROM52に記憶される通信制御プログラムを読み込んでネットワークスライスの切り替え処理を実行する。
図5の切り替え処理の説明では、障害発生が通知されたネットワークスライスが割り当てられているUE2のことを、単に「UE2」と表す。
【0081】
通信情報によって、CN10からネットワークスライスでの障害発生が通知された場合、ステップS10において、CPU51は管理情報テーブル28のバックアップの有無欄を参照し、UE2にバックアップ回線が存在するか否かを判定する。
【0082】
UE2にバックアップ回線が存在しなければネットワークスライスを切り換えることができないため、
図5に示すネットワークスライスの切り替え処理を終了し、UE2に割り当てられたネットワークスライスの障害が復旧するまで待機する。
【0083】
一方、UE2にバックアップ回線が存在する場合には、ステップS20に移行する。
【0084】
ステップS20において、CPU51は管理情報テーブル28を参照し、UE2に新たに割り当てる切り替え先回線を選択する。具体的には、CPU51は、管理情報テーブル28のデフォルト回線欄を参照し、デフォルト回線欄にデフォルト回線が設定されている場合で、かつ、デフォルト回線に対して障害の発生が通知されていない場合、デフォルト回線を切り替え先回線として選択する。
【0085】
UE2にデフォルト回線が設定されていない場合、またはデフォルト回線に対して障害の発生が通知されている場合、CPU51は契約回線欄に回線情報が設定されているネットワークスライスの中から、障害の発生が通知されていない何れか1つのネットワークスライスを切り替え先回線として選択する。切り替え先回線の候補が複数存在する場合には、例えば切り替え先回線の候補のうち、最も通信費用が安いネットワークスライスを選択する等、予めユーザが指定した選択基準に従って切り替え先回線を選択してもよい。
【0086】
ステップS30において、CPU51は、プロファイルの切り替え対象となるEU2のEIDと、ステップS20で選択した切り替え先回線の回線情報を含んだ回線指定電文をSSM30に送信する。以上により、既に説明したようにプロファイルの切り替えを指示する指示電文がSSM30からSDWAN40に通知され、EU2のeUICCに切り替え先回線のプロファイルが書き込まれ、ネットワークスライスの切り替えが行われる。
【0087】
なお、CPU51は、プロファイルの切り替えを指示する指示電文が他の電文よりも優先してUE2に通知されるように、回線指定電文で指示電文の通信形態を指定してもよい。例えばCN10において、ショートメッセージサービス(Short Message Service:SMS)を利用して送信した電文は他の通信形態を利用して送信した電文よりも優先してUE2に送信されることから、CPU51は、指示電文をSMSで送信するように回線指定電文で指定すればよい。また、CPU51は、指定電文を暗号化通信の一例であるHTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)で送信するように回線指定電文で指定してもよい。指定電文の通信形態をHTTPSとした場合にはSSL(Secure Socket Layer)が用いられるため、通信形態にHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を用いた場合と比較して、通信に関するセキュリティ性能が向上する。
【0088】
一方、
図6は、ネットワークスライスの切り替え前にUE2に割り当てられていたネットワークスライス、すなわち元の回線が復旧した場合に、オーケストレータ20のCPU51によって実行されるネットワークスライスの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
図6の切り替え処理の説明では、切り替え前に復旧したネットワークスライスが割り当てられていたUE2を、単に「UE2」と表す。
【0089】
ステップS100において、CPU51は管理情報テーブル28のバックアップの有無欄を参照し、UE2にバックアップ回線が存在するか否かを判定する。
【0090】
UE2にバックアップ回線が存在しない場合には、そもそもネットワークスライスの切り替えは行われていないことから、
図6に示すネットワークスライスの切り替え処理を終了する。すなわち、ネットワークスライスの復旧に伴い、復旧したネットワークスライスがUE2に割り当てられる。
【0091】
一方、UE2にバックアップ回線が存在する場合には、ステップS110に移行する。
【0092】
ステップS110において、CPU51は管理情報テーブル28のデフォルト回線欄を参照し、UE2のデフォルト回線欄にデフォルト回線が設定されているか否かを判定する。UE2のデフォルト回線欄にデフォルト回線が設定されている場合には、ステップS120に移行する。
【0093】
ステップS120において、CPU51は、UE2のデフォルト回線に対してCN10から障害の発生が通知されていないか否かを判定する。UE2のデフォルト回線に対して障害の発生が通知されていなければ、ステップS130に移行する。
【0094】
ステップS130において、CPU51は、UE2に割り当てられている現状のネットワークスライスがUE2のデフォルト回線であるか否かを判定する。UE2に割り当てられている現状のネットワークスライスがUE2のデフォルト回線である場合には、
図6に示す切り替え処理を終了する。すなわち、元の回線の障害発生により、
図5の切り替え処理でUE2に割り当てるネットワークスライスをデフォルト回線に切り替えた場合、元の回線が復旧したとしても、引き続きUE2にデフォルト回線が割り当てられるようにする。
【0095】
一方、ステップS130の判定処理で、UE2に割り当てられている現状のネットワークスライスがUE2のデフォルト回線ではないと判定された場合、ステップS140に移行する。
【0096】
ステップS140において、CPU51は、UE2の切り替え先回線をUE2のデフォルト回線に設定する。
【0097】
ステップS150において、CPU51は、プロファイルの切り替え対象となるEU2のEIDと、デフォルト回線の回線情報を含んだ回線指定電文をSSM30に送信し、
図6の切り替え処理を終了する。
【0098】
すなわち、CPU51は、UE2にデフォルト回線が設定され、かつ、デフォルト回線に障害が発生していない場合には、UE2にデフォルト回線が優先して割り当てられるように制御する。
【0099】
一方、ステップS110の判定処理で、UE2のデフォルト回線欄にデフォルト回線が設定されていないと判定された場合、及びステップS120の判定処理で、UE2のデフォルト回線に対してCN10から障害の発生が通知されていると判定された場合には、ステップS160に移行する。
【0100】
この場合、UE2にデフォルト回線を割り当てることができない。したがって、ステップS160において、CPU51は、UE2の切り替え先回線を元の回線に設定してステップS150に移行する。すなわち、CPU51は、ネットワークスライスの切り替え前にUE2に割り当てていたネットワークスライスの復旧に伴い、UE2に割り当てるネットワークスライスを、ネットワークスライスの切り替え前にUE2に割り当てていた元の回線に戻す。
【0101】
なお、CPU51は、元の回線の復旧が通知されたとしても、必ずしもUE2に割り当てるネットワークスライスを元の回線に戻す必要はない。例えばUE2で利用できるネットワークスライスが複数存在する場合、契約している複数のネットワークスライスの中から、障害の発生が通知されていない何れか1つのネットワークスライスをUE2に割り当てるようにしてもよい。この場合、CPU51は、障害の発生が通知されていないネットワークスライスのうち、通信費用や通信品質の良し悪しといった評価項目に基づいて、ユーザにとって最も有益となるネットワークスライスを割り当てるようにすればよい。通信品質の良し悪しは、例えばUE2と接続する電波の電波強度で判断することができる。CPU51は、CN10の外部連携部12を通じてUE2と接続する電波の電波強度を取得すればよい。
【0102】
また、ネットワークスライスの切り替え後に新たに割り当てられた現状のネットワークスライスがそのままUE2に割り当て続けられるように、現状のネットワークスライスの割り当てを維持してもよい。
【0103】
図5及び
図6に示したネットワークスライスの切り替え処理でUE2に割り当てるネットワークスライスを切り換える場合、異なる通信事業者間でネットワークスライスを切り替えても、同じ通信事業者内でネットワークスライスを切り替えてもよい。
【0104】
また、管理情報テーブル28のデフォルト回線欄には、UE2毎に複数の優先ネットワークスライスを設定してもよい。この場合、各々のネットワークスライスに対して「第1優先ネットワークスライス」、「第2優先ネットワークスライス」というように優先ネットワークスライスの優先順位を設定する。その上で、優先順位の高い優先ネットワークスライスから順にUE2に対して割り当てが可能であるか判定し、割り当て可能な優先ネットワークスライスのうち、最も優先順位の高い優先ネットワークスライスをUE2に割り当てるようにしてもよい。
【0105】
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0106】
また、実施の形態では、一例としてネットワークスライスの切り替え処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、
図5及び
図6に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、ネットワークスライスの切り替え処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0107】
このように、オーケストレータ20のCPU51を例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0108】
実施の形態に係るオーケストレータ20の処理は、1つのCPU51によって実現される形態の他、複数のCPU51によって実現される形態であってもよい。更に、実施の形態に係るオーケストレータ20の処理は、物理的に離れた位置に存在するプロセッサの協働によって実現されるものであってもよい。
【0109】
また、上述した実施の形態では、ROM52に通信制御プログラムがインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。実施の形態に係る通信制御プログラムは、コンピュータ50で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば通信制御プログラムをCD(Compact Disc)-ROM、またはDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、実施の形態に係る通信制御プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
【0110】
更に、オーケストレータ20は、DN18を通じて外部装置から通信制御プログラムを取得してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 通信制御システム、2 UE、4 DU、6 CU、8 RAN、10 CN、12 外部連携部、14 C-Plane、16 U-Plane、18 DN、20 オーケストレータ、22 モニタリングAPI連携部、24 SDWAN管理部、26 SSM連携部、28 管理情報テーブル、30 SSM、32 プロファイル管理部、40 SDWAN、42 eSIM部、44 IF管理部、50 コンピュータ、51 CPU、52 ROM、53 RAM、54 不揮発性メモリ、55 I/O、56 バス、57 通信ユニット、58 入力ユニット、59 表示ユニット