(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】給紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20240702BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20240702BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65H7/14
B65H3/06 350A
B65H3/52 330H
(21)【出願番号】P 2020105039
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】高井 宏章
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-196181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
B65H 3/06
B65H 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙カセットにセットされたシート束からシートを給紙する給紙装置であって、
搬送路に沿ってシートを搬送する給紙ローラーと、
前記給紙ローラーに圧接して従動する従動ローラーと、
前記従動ローラーの回転数を検出する回転数検出部と、
前記給紙ローラーを加速してシート間隔を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記従動ローラーの回転数
と前記給紙ローラーの加速前の回転数に基づいて前記給紙ローラーに対する前記従動ローラーの回転率を求め、当該従動ローラーの回転率と前記給紙ローラー加速後のシートの理論線速に基づいてシートの実線速を求めて、シートの実線速に基づいてシート間隔を調整
し、
前記従動ローラーの回転率をα、前記給紙ローラーの加速前の回転数をN0、前記従動ローラーの回転数をN1としたときに、前記従動ローラーの回転率は次式(1)によって表され、
前記給紙ローラー加速後のシートの理論線速をV、前記給紙ローラーの加速後の回転数をN2、前記給紙ローラーの直径をRとしたときに、前記給紙ローラー加速後のシートの理論線速は次式(2)によって表され、
シートの実線速をVrとしたときに、シートの実線速は次式(3)によって表されることを特徴とする給紙装置。
(1)
α=(N1/N0)×100
(2)
V=N2×R
(3)
Vr=V×(100-(100-α)/2)/100
【請求項2】
シートの前端及び後端の通過を検出するシート検出部を備え、
前記制御部は、前記シート検出部による先行シートの後端及び後続シートの前端の検出結果に基づいてシート間隔を測定し、シート間隔の測定値とシートの実線速に基づいてシート間隔を目標値に近づけるように調整することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、シート間隔の測定値とシート間隔の目標値とシートの実線速に基づいて前記給紙ローラーの加速時間を設定して、シート間隔を目標値に近づけるように調整することを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記回転数検出部は、前記従動ローラーの外周面に向けて検出光を照射し、前記従動ローラーの外周面からの反射光に基づいて前記従動ローラーの回転数を検出し、
前記従動ローラーの外周面には、前記回転数検出部に向けて検出光を反射する第1の反射面と、前記回転数検出部から外れる方向に検出光を反射する第2の反射面とが交互に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記第1の反射面及び前記第2の反射面は、前記従動ローラーの外周面のうちシートの搬送面となる箇所よりも小径な箇所に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記従動ローラーは、先行シートに重なった後続シートを分離するリタードローラーであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置から給紙されたシートにトナーを定着する定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置では、定着温度の低下による省電力化を狙ってシートの線速を低く抑える一方で、生産性を確保するためにシート間隔を最小にすることが求められている。例えば、リタードローラーに連結された駆動モーターのトルクからシート間隔を測定して、所定のシート間隔になるようにシートの搬送速度を調整するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。他にも、給紙装置のリタードローラーの追従や用紙の重送を検出して、異音の発生等を抑えるようにリタードローラーの駆動タイミングを制御するものが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-196181号公報
【文献】特開2006-8264号公報
【文献】特開2017-154896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1-3に記載のリタードローラーの制御を用いて、シート間隔を詰めるために一定速度で必要な時間だけシートを搬送しても、シートの実線速が低下していた場合にはシート間隔を狙った間隔に調整することはできない。
【0005】
そこで、本発明は、シートの実線速が低下する場合であっても、シート間隔を精度よく調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の給紙装置は、給紙カセットにセットされたシート束からシートを給紙する給紙装置であって、搬送路に沿ってシートを搬送する給紙ローラーと、前記給紙ローラーに圧接して従動する従動ローラーと、前記従動ローラーの回転数を検出する回転数検出部と、前記給紙ローラーを加速してシート間隔を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記従動ローラーの回転数に基づいて前記給紙ローラーに対する前記従動ローラーの回転率を求め、当該従動ローラーの回転率と前記給紙ローラー加速後のシートの理論線速に基づいてシートの実線速を求めて、シートの実線速に基づいてシート間隔を調整する。
【0007】
前記給紙装置は、シートの前端及び後端の通過を検出するシート検出部を備え、前記制御部は、前記シート検出部による先行シートの後端及び後続シートの前端の検出結果に基づいてシート間隔を測定し、シート間隔の測定値とシートの実線速に基づいてシート間隔を目標値に近づけるように調整してもよい。
【0008】
前記制御部は、シート間隔の測定値とシート間隔の目標値とシートの実線速に基づいて前記給紙ローラーの加速時間を設定して、シート間隔を目標値に近づけるように調整してもよい。
【0009】
前記回転数検出部は、前記従動ローラーの外周面に向けて検出光を照射し、前記従動ローラーの外周面からの反射光に基づいて前記従動ローラーの回転数を検出し、前記従動ローラーの外周面には、前記回転数検出部に向けて検出光を反射する第1の反射面と、前記回転数検出部から外れる方向に検出光を反射する第2の反射面とが交互に形成されてもよい。
【0010】
前記第1の反射面及び前記第2の反射面は、前記従動ローラーの外周面のうちシートの搬送面となる箇所よりも小径な箇所に形成されてもよい。
【0011】
前記従動ローラーは、先行シートに重なった後続シートを分離するリタードローラーであってもよい。
【0012】
本発明の一態様の画像形成装置は、上記の給紙装置と、前記給紙装置から給紙されたシートにトナーを定着する定着装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給紙ローラーを加速してシート間隔を調整する際に、給紙ローラーに従動する従動ローラーの回転率を用いて、シートに対する従動ローラーの搬送負荷を考慮したシートの実線速が求められる。これにより、従動ローラーの搬送負荷によってシートの理論線速よりも実線速が低下する場合であっても、シートの実線速に基づいてシート間隔を精度よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本実施形態のリタードローラーと回転数センサーの斜視図である。
【
図4A】本実施形態の給紙ローラー加速前のシートの搬送状態を示す図である。
【
図4B】本実施形態の給紙ローラー加速後のシートの搬送状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、給紙装置を適用した画像形成装置について説明する。なお、以下の説明では、画像形成装置としてプリンターを例示して説明する。
図1は、第1の実施形態のプリンターの模式図である。各図に適宜付される矢印Fr、Re、U、Loは、それぞれプリンターの前側、後側、上側、下側を示している。
【0016】
図1に示すように、プリンター1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング10を備えている。ハウジング10の下部にはシート束がセットされる給紙カセット11が収容され、ハウジング10の上部には画像形成済みのシートが積み重ねられる排紙トレイ12が設けられている。排紙トレイ12の下方にはトナーを貯留したトナーコンテナ13がトナーの色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)毎に着脱可能にセットされている。複数のトナーコンテナ13の下方には、左右一対のローラー14、15に掛け渡された中間転写ベルト16が設けられている。
【0017】
中間転写ベルト16の下側に沿って、トナーの色毎に画像形成部17が左右一列に設けられている。各画像形成部17には中間転写ベルト16に転接する感光体ドラム21が回転可能に設けられており、感光体ドラム21の周囲には帯電器22と、現像器23と、一次転写部24と、クリーニング装置25と、徐電器26とが一次転写のプロセス順に配置されている。クリーニング装置25には廃トナーボックス(不図示)が接続されている。各現像器23には不図示の供給路を通じてトナーコンテナ13からトナーが供給され、廃トナーボックスには不図示の排出路を通じて各クリーニング装置25から廃トナーが排出される。
【0018】
各画像形成部17の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)によって構成される露光装置18が設けられている。ハウジング10内の右側部には、複数のローラーによって給紙カセット11から排紙トレイ12に向かうシートの搬送路Lが形成されている。搬送路Lの上流端(下端)には給紙装置31が設けられ、搬送路Lにおいて給紙装置31よりも下流には中間転写ベルト16の右端側に二次転写部32が設けられている。搬送路Lにおいて二次転写部32の下流には定着装置33が設けられ、搬送路Lの下流端(上端)には排紙口34が設けられている。
【0019】
プリンター1の画像形成時には、帯電器22によって感光体ドラム21の表面が帯電された後、露光装置18からのレーザー光によって感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。次に、現像器23から感光体ドラム21の表面の静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成され、感光体ドラム21の表面から中間転写ベルト16の表面にトナー像が一次転写される。各画像形成部17において各色のトナー像が中間転写ベルト16に一次転写されることで、中間転写ベルト16の表面にフルカラーのトナー像が形成される。なお、感光体ドラム21に残留した廃トナーと電荷は、クリーニング装置25と徐電器26によって除去される。
【0020】
一方で、給紙装置31によって給紙カセット11又は手差しトレイ(不図示)からシートが取り込まれ、上記の画像形成動作にタイミングを合わせて二次転写部32に向けてシートが搬送される。二次転写部32において中間転写ベルト16の表面からシートの表面にフルカラーのトナー像が二次転写され、二次転写部32の下流の定着装置33に向けて転写済みのシートが搬送される。定着装置33においてシートにトナー像が定着され、定着済みのシートが排紙口34から排紙トレイ12上に排出される。このように、シートに転写されたトナー像が定着装置33を通過することによってシートの表面に画像が形成される。
【0021】
このプリンター1の給紙装置31では、給紙ローラー42とリタードローラー43によって搬送ニップが形成されており、ピックアップローラー41によって給紙カセット11から搬送ニップにシートが搬送されている。リタードローラー43にはトルクリミッター46(
図2参照)が接続されており、ピックアップローラー41によって先行シートと後続シートが重ねて搬送されると、トルクリミッター46によってリタードローラー43が停止されて先行シートから後続シートが分離される。このようにして、給紙装置31によって給紙カセット11から搬送路Lに沿って1枚ずつシートが搬送される。
【0022】
このとき、給紙装置31によって先行シートの後端から後続シートの先端までのシート間隔が調整されている。シート間隔が目標値よりも大きな場合には、給紙ローラー42を加速して後続シートの先端を先行シートの後端に近づけている。しかしながら、給紙ローラー42を一定速度まで加速しても、給紙ローラー42の回転数に基づく理論的な線速(以下、理論線速とする)でシートが送られるわけではない。シートの実際の線速(以下、実線速とする)は理論線速よりも低下するため、シート間隔を狙った間隔に精度よく調整することができない。
【0023】
シートの実線速は、給紙ローラー42に対するリタードローラー43の回転率(追従率)によって変化する。より詳細には、リタードローラー43の回転率はリタードローラー43とシートの摩擦やリタードローラー43の摩耗によって変化し、リタードローラー43が回転し難くなることでシートに対する搬送負荷になる。特に、先行シートから後続シートを分離させるときにはリタードローラー43が回転しないため、シートに対するリタードローラー43の搬送負荷が大きい。そこで、本実施形態の給紙装置31は、リタードローラー43の回転率からシートの実線速を求めてシート間隔を精度よく調整している。
【0024】
以下、
図2を参照して、給紙装置について説明する。
図2は、本実施形態の給紙装置の模式図である。
図3は、本実施形態のリタードローラーと回転数センサーの斜視図である。
【0025】
図2に示すように、給紙装置31には、給紙カセット11(
図1参照)からシートを取り出すピックアップローラー41と、搬送路Lに沿ってシートを搬送する給紙ローラー42と、給紙ローラー42に圧接して従動するリタードローラー43とが設けられている。ピックアップローラー41には伝達ギア44を介して給紙ローラー42が連結されており、給紙ローラー42には歯車列(不図示)を介して給紙モーター45が連結されている。給紙モーター45の駆動によって給紙ローラー42とピックアップローラー41が回転されて、ピックアップローラー41から給紙ローラー42にシートが搬送される。
【0026】
リタードローラー43にはトルクリミッター46が連結されており、所定トルク以上のトルクが作用するまではトルクリミッター46によってリタードローラー43が停止される。先行シートに後続シートが重なっていても、リタードローラー43が停止することよって先行シートから後続シートが分離されて、給紙ローラー42によって先行シートが搬送路Lに向けて送り出される。リタードローラー43の近辺には、リタードローラー43の回転数を検出する回転数センサー(回転数検出部)51が設けられている。回転数センサー51によるリタードローラー43の回転数の検出構成については後述する。
【0027】
給紙ローラー42とリタードローラー43の下流には、シートの前端及び後端の通過を検出するシートセンサー(シート検出部)55が設けられている。例えば、シートセンサー55は反射型のフォトセンサーによって形成されており、シートからの反射光に応じてON/OFF信号を出力する。シートセンサー55の出力がOFF信号からON信号に切り替わったタイミングでシートの前端の通過が検出され、シートセンサー55の出力がON信号からOFF信号に切り替わったタイミングでシートの後端の通過が検出される。なお、シートセンサー55は、透過型のフォトセンサーによって形成されていてもよい。
【0028】
シートセンサー55の下流には、搬送路Lに沿ってシートを搬送する一対の搬送ローラー61、62が設けられている。一方の搬送ローラー61には、歯車列(不図示)を介して搬送モーター(不図示)が連結されている。他方の搬送ローラー62はスプリング63によって一方の搬送ローラー61に押し付けられて、他方の搬送ローラー62は一方の搬送ローラー61に圧接して従動している。搬送ローラー61の歯車列及び搬送モーターが、給紙ローラー42の歯車列及び給紙モーター45から独立しているため、搬送ローラー61と給紙ローラー42とを個別に制御することが可能になっている。
【0029】
一対の搬送ローラー61、62の下流には、二次転写部32(
図1参照)にシートを送り出す一対のレジストローラー65、66が設けられている。一方のレジストローラー65には、歯車列(不図示)を介してレジストモーター(不図示)が連結されている。他方のレジストローラー66はスプリング67によって一方のレジストローラー65に押し付けられて、他方のレジストローラー66は一方のレジストローラー65に圧接して従動している。画像形成動作にタイミングを合わせて、レジストローラー65、66から二次転写部32にシートが送られて、二次転写部32によってシートの表面に画像が転写される。
【0030】
給紙装置31には、装置各部を統括制御する制御部70が設けられている。制御部70は、給紙ローラー42を加速してシート間隔を調整している。先行シートの後端がシートセンサー55を通過して、後続シートの前端がシートセンサー55を通過したときに、制御部70が給紙ローラー42の回転を所定時間だけ加速させて先行シートの後端と後続シートの前端のシート間隔を調整する。給紙ローラー42の加速前及び加速後の回転数には、事前に実験的、経験的、又は理論的に求められた値が使用される。また、制御部70には、シート間隔測定部71、回転率算出部72、実線速算出部73、シート間隔調整部74が設けられている。
【0031】
シート間隔測定部71は、シートセンサー55による先行シートの後端及び後続シートの前端の検出結果からシート間隔を測定する。シート間隔測定部71にはシートセンサー55からシートの前端及び後端の検出信号としてON/OFF信号が入力され、ON/OFF信号の切り替わりによって先行シートの後端及び後続シートの先端が検出される。そして、先行シートの後端及び後続シートの先端の検出時刻の時間間隔とシートの設定線速からシート間隔が測定される。なお、シートの設定線速には、事前に実験的、経験的、又は理論的に求められた値が使用される。
【0032】
回転率算出部72は、リタードローラー43の回転数に基づいて、給紙ローラー42に対するリタードローラー43の回転率を算出する。回転率算出部72にはシート間隔の測定時に回転数センサー51からリタードローラー43の回転数が入力され、給紙ローラー42を加速させる前のリタードローラー43の回転数と給紙ローラー42の回転数から給紙ローラー42に対するリタードローラー43の回転率が算出される。リタードローラー43の回転率αは、給紙ローラー42の加速前の回転数をN0、リタードローラー43の回転数をN1としたときに、次式(1)によって表される。
(1)
α=(N1/N0)×100
【0033】
実線速算出部73は、リタードローラー43の回転率及び給紙ローラー加速後のシートの理論線速に基づいてシートの実線速を算出する。シートの理論線速Vは、給紙ローラー42の加速後の回転数をN2、給紙ローラー42の直径をRとしたときに、次式(2)によって表される。さらに、シートの実線速Vrは、シートの理論線速をV、リタードローラー43の回転率をαとしたときに、次式(3)によって表される。なお、リタードローラー43の回転率αが70[%]以下のときには、シートの理論線速Vに固定値(例えば、0.85)を乗じた数値がシートの実線速Vrとして使用される。
(2)
V=N2×R
(3)
Vr=V×(100-(100-α)/2)/100
【0034】
例えば、給紙ローラー42に対してリタードローラー43が完全に追従する場合には(α=100[%])、シートの実線速Vrがシートの理論線速Vに一致する(Vr=V)。給紙ローラー42に対してリタードローラー43が70[%]しか追従していない場合には(α=70[%])、シートの実線速Vrがシートの理論線速Vの0.85倍になる(Vr=0.85V)。なお、リタードローラー43の回転率α及びシートの実線速Vrは、給紙装置31の構成によって異なるため、上記の算出方法には限定されず、仕様に応じた算出方法が適宜採用される。
【0035】
シート間隔調整部74は、シートの実線速とシート間隔の測定値に基づいて給紙ローラー42の加速時間を設定してシート間隔を目標値に近づけるように調整する。シート間隔調整部74には、実線速算出部73から給紙ローラー加速後のシートの実線速が入力され、シート間隔測定部71からシート間隔の測定値が入力される。給紙ローラー42の加速時間tは、シートの実線速をVr、シート間隔の測定値をX、シート間隔の目標値をXaとしたときに、次式(4)によって表される。これにより、シート間隔を狙った間隔にするのに要する時間だけ給紙ローラー42が加速されてシート間隔が調整される。
(4)
t=(X-Xa)/Vr
【0036】
なお、制御部70の各部は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
【0037】
続いて、回転数センサー51によるリタードローラー43の回転数の検出構成について簡単に説明する。
図3に示すように、回転数センサー51は、いわゆる反射型のフォトセンサーであり、リタードローラー43の外周面に向けて検出光を照射し、リタードローラー43の外周面からの反射光に基づいてリタードローラー43の回転数を検出するように形成されている。リタードローラー43の外周面の一端部が段状に窪んでいる。リタードローラー43の上段箇所にはシートの搬送面47が形成されており、リタードローラー43の下段箇所には回転数センサー51からの検出光を反射する第1、第2の反射面48、49が周方向に交互に形成されている。
【0038】
第1の反射面48は回転数センサー51に向けて検出光を反射可能に形成され、第2の反射面49は回転数センサー51から外れる方向に検出光を反射するように傾けられている。回転数センサー51には計測器53が設けられており、センサー部52から計測器53にON/OFF信号であるパルス信号が出力されて、計測器53によってパルス信号からリタードローラー43の回転数が求められる。このような簡易な構成によってリタードローラー43の回転数が検出される。また、第1、第2の反射面48、49がリタードローラー43の外周面のうちシートの搬送面47よりも小径な箇所に形成されるため、第1、第2の反射面48、49とシートの干渉によるジャムの発生が抑えられている。
【0039】
なお、本実施形態では、回転数センサー51が第1、第2の反射面48、49の傾きの違いによってリタードローラー43の回転数を検出したが、回転数センサー51はリタードローラー43の回転数を検出可能に形成されていればよい。例えば、回転数センサー51は、第1、第2の反射面48、49の反射率の違いによってリタードローラー43の回転数を検出してもよい。また、回転数センサー51は、1つの反射面によってリタードローラー43の回転数を検出してもよい。また、リタードローラー43の回転軸にパルス板を取り付けて、回転数センサー51が透過型のフォトセンサーによって形成されてもよい。
【0040】
図4A及び
図4Bを参照して、シート間隔の調整動作について説明する。
図4Aは、本実施形態の給紙ローラー加速前のシートの搬送状態を示す図である。
図4Bは、本実施形態の給紙ローラー加速後のシートの搬送状態を示す図である。ここでは、
図2の符号を適宜使用して説明する。
【0041】
図4Aに示すように、一対の搬送ローラー61、62からレジストローラー65、66に向けて先行シートS1が送り出されると、ピックアップローラー41から給紙ローラー42及びリタードローラー43に向けて後続シートS2が送り出される。このとき、給紙ローラー42は加速前の回転数でシートを搬送している。先行シートS1の後端がシートセンサー55を通過し、後続シートS2の前端がシートセンサー55を通過すると、シートセンサー55による先行シートS1の後端及び後続シートS2の前端の検出時刻からシート間隔測定部71によってシート間隔が測定される。
【0042】
このとき、回転数センサー51によってリタードローラー43の回転数が検出されて、回転率算出部72によって給紙ローラー42の回転数及びリタードローラー43の回転数からリタードローラー43の回転率が求められる。続けて、実線速算出部73によってリタードローラー43の回転率と給紙ローラー加速後のシートの理論線速からシートの実線速が求められ、シート間隔調整部74によってシートの実線速、シート間隔の測定値、シート間隔の目標値から給紙ローラー42の加速時間が設定される。これにより、給紙ローラー42を加速したときにシート間隔が目標値になるまでの時間が求められる。
【0043】
そして、
図4Bに示すように、シート間隔調整部74に求められた加速時間だけ給紙ローラー42が加速されて、この加速時間に後続シートS2が実線速で先行シートS1に向けて送られる。これにより、先行シートS1と後続シートS2のシート間隔が目標値に近づけられて、このシート間隔を維持したまま先行シートS1と後続シートS2が定着装置33(
図1参照)に向けて搬送される。よって、先行シートS1と後続シートS2のシート間隔を狭めることで生産性が確保され、シート間隔を狭めた分だけ定着装置33においてシートの線速を低く抑えることで定着温度を低下させて省電力化が図られている。
【0044】
以上、本実施形態によれば、給紙ローラー42を加速してシート間隔を調整する際に、給紙ローラー42に従動するリタードローラー43の回転率を用いて、シートに対するリタードローラー43の搬送負荷を考慮したシートの実線速が求められる。これにより、リタードローラー43の搬送負荷によってシートの理論線速よりも実線速が低下する場合であっても、シートの実線速に基づいてシート間隔を精度よく調整することができる。また、生産性を確保するためにシート間隔を狭めることで、定着装置33におけるシート線速を低く抑えて定着温度の低下による省電力化を図ることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、給紙ローラーに従動する従動ローラーとしてリタードローラーを例示したが、従動ローラーはリタードローラーに限定されない。従動ローラーは、給紙ローラーの回転に従動回転するものであればよく、先行シートから後続シートを分離するものに限られない。このため、従動ローラーにはトルクリミッターが連結されていなくもよい。
【0046】
また、各実施形態では、画像形成装置としてプリンターを例示したが、画像形成装置は、コピー機及びファクシミリの他、プリント機能、コピー機能及びファックス機能等を複合的に備えた複合機でもよい。
【0047】
また、各実施形態において、シートは、画像の形成対象となるシート状のものであればよく、例えば、普通紙、コート紙、トレーシングペーパー、OHP(Over Head Projector)シートでもよい。
【0048】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0049】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0050】
1 :プリンター(画像形成装置)
11:給紙カセット
31:給紙装置
33:定着装置
42:給紙ローラー
43:リタードローラー(従動ローラー)
48:第1の反射面
49:第2の反射面
51:回転数センサー(回転数検出部)
55:シートセンサー(シート検出部)
70:制御部
71:シート間隔測定部
72:回転率算出部
73:実線速算出部
74:シート間隔調整部