(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】金属蒸着積層体および加飾部材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240702BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20240702BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240702BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240702BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B15/08 H
C08G18/62 016
C08G18/79 010
C08G18/76
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2020112336
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹中 信貴
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217764(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080423(WO,A1)
【文献】特開2014-205366(JP,A)
【文献】特開2014-131782(JP,A)
【文献】特開平05-024147(JP,A)
【文献】特開2014-162089(JP,A)
【文献】特開2009-227837(JP,A)
【文献】特開2018-058221(JP,A)
【文献】特開2011-195835(JP,A)
【文献】特開2018-171836(JP,A)
【文献】特開平09-311635(JP,A)
【文献】特開2018-012257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0098349(US,A1)
【文献】特開2021-102285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
B32B 27/00-27/40
C08G 18/62
C08G 18/79
C08G 18/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、印刷層、アンカー層および金属蒸着層を順次有する
加飾部材用金属蒸着積層体であって、
前記印刷層が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル共重合樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有し、前記アンカー層が、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含む、
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項2】
印刷層がウレタン樹脂を含む場合、前記ウレタン樹脂は、ポリエステル由来の構成単位を含有し、
印刷層がアクリル樹脂を含む場合、前記アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する、請求項1に記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項3】
印刷層が、ウレタン樹脂/塩化ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂/セルロース樹脂、およびアクリル樹脂/塩化ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれるいずれかの組み合わせである樹脂を含む、請求項1または2に記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項4】
アンカー層の膜厚が、0.1~10μmである、請求項1~3いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項5】
金属蒸着層が、アルミニウム蒸着層である、請求項1~4いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項6】
アンカー層を構成する樹脂成分の総質量中に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を50質量%以上含む、請求項1~5いずれかに記載の加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項7】
アクリルポリオールの水酸基価が、10~150mgKOH/gである、請求項1~
6いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項8】
イソシアネート化合物が、イソシアヌレート環構造を含有する、請求項1~
7いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項9】
イソシアネート化合物が、芳香族ジイソシアネート単位を含有する、請求項1~
8いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体。
【請求項10】
請求項1~
9いずれかに記載の
加飾部材用金属蒸着積層体の金属蒸着層上に、更に、接着剤層および第2の基板を順次有する、加飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、印刷層、アンカー層、金属蒸着層を順次有する金属蒸着積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内外装部材、家具家電部材、金属缶等において、高級感や意匠性を付与する手段のひとつとして、金属調の外観を持たせることが行われる。そのための方法として、従来、対象となる成型部材の表面に金属めっきを施すことが行われてきた。しかし近年、めっき加工は環境負荷、労働者の安全衛生、生産コストの面で敬遠される傾向にあり、他の方法、特に金属蒸着を利用した方法への切替えが検討されている。さらに金属蒸着を利用する方法では、具体的には、意匠性を担う金属蒸着積層体を、部材に使用される金属基板その他の加飾対象物とは別個に製造しておき、それぞれを貼り合わせることで部材に金属光沢を付与することが可能である。
【0003】
上記のような金属蒸着積層体は、例えば、特許文献1および2には、基材フィルム、アンカー層、金属蒸着層、を順次有する金属蒸着シートが開示され、当該アンカー層としては、アクリルポリオールやウレタン樹脂が挙げられている。また、特許文献3には、第一プライマー層、アルミニウム蒸着層、第二プライマー層を有する金属調シートが開示され、アルミニウム蒸着層の下地となる第一プライマー層としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂96質量%と(メタ)アクリル樹脂4質量%を含む系が挙げられている。すなわち、従来の技術では、単純に金属調を出すためのみの使用形態であり、そのバリエーションとしては少ないものであった。
【0004】
より応用的な使用形態として、絵柄を施した印刷層をいずれかの層に設けることができれば多様な用途に用いることができると考えられるが、その構成を達成することは容易とはいえない。例えば、基材/印刷層/金属蒸着層という、ごく単純な積層構成を考えてみると、印刷層の耐熱性や平滑性が不十分であれば、金属の蒸着時に蒸着金属が印刷層内への潜り込みを起こしたり、印刷層の凹凸に影響されたりするために、美しい鏡面効果を得ることは困難である。したがって、従来技術においては、当該金属蒸着積層体において色彩と鏡面性を同時に有し、更には、延伸などの加工適性を得るような技術は確立されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-039367号公報
【文献】特開2018-171836号公報
【文献】特開2020-019261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、各層間の密着性(アンカー層と印刷層との密着性、および、アンカー層と金属蒸着層との密着性)に優れ、良好な金属調と色彩を有し、更に延伸加工性に優れた、金属蒸着積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、基材、印刷層、アンカー層および金属蒸着層を順次有する金属蒸着積層体であって、
前記印刷層が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル共重合樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有し、前記アンカー層が、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含む、金属蒸着積層体に関する。
【0008】
また、本発明は、印刷層がウレタン樹脂を含む場合、前記ウレタン樹脂は、ポリエステル由来の構成単位を含有し、
印刷層がアクリル樹脂を含む場合、前記アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する、上記金属蒸着積層体に関する。
【0009】
また、本発明は、印刷層が、ウレタン樹脂/塩化ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂/セルロース樹脂、およびアクリル樹脂/塩化ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれるいずれかの組み合わせである樹脂を含む、上記金属蒸着積層体に関する。
【0010】
また、本発明は、アンカー層の膜厚が、0.1~10μmである、上記金属蒸着積層体に関する。
【0011】
また、本発明は、金属蒸着層が、アルミニウム蒸着層である、上記金属蒸着積層体に関する。
【0012】
また、本発明は、アクリルポリオールの水酸基価が、10~150mgKOH/gである、上記金属蒸着積層体に関する。
【0013】
また、本発明は、イソシアネート化合物が、イソシアヌレート環構造を含有する、上記金属蒸着積層体に関する。
【0014】
また、本発明は、イソシアネート化合物が、芳香族ジイソシアネート単位を含有する、上記金属蒸着積層体に関する。
【0015】
また、本発明は、上記金属蒸着積層体の金属蒸着層上に、更に、接着剤層および第2の基板を順次有する、加飾部材に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、各層間の密着性(アンカー層と印刷層との密着性、および、アンカー層と金属蒸着層との密着性)に優れ、良好な金属調と色彩を有し、更に延伸加工性に優れた、金属蒸着積層体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を詳細に示して説明するが、以下に記載する事項は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0018】
以下の説明において、印刷層とは、特に着色インキを印刷または塗工して得られる層を意味する。
以下の説明において、アンカー層とは、本発明で説明するアンカーコート剤(アンカー剤ともいう)を印刷塗工して製造した層を意味する。
以下の説明において、金属蒸着層を単に「蒸着層」と略記する場合があるが同義である。
以下の説明において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」とは、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、並びに「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
【0019】
本発明は、基材、印刷層、アンカー層および金属蒸着層を順次有する金属蒸着積層体であって、
前記印刷層が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル共重合樹脂およびセルロース樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有し、前記アンカー層が、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含む、金属蒸着積層体である。
アンカー層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物であることで金属蒸着層との密着性をも発現できる。更に、印刷層においてバインダー樹脂を上記とすることで印刷層/アンカー層間の密着性を発現できる。
【0020】
(基材)
基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリメタクリル酸メチルなどから成るアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状またはシート状の基材および成形物が挙げられる。
基材は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましく、易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。水素結合を利用できるためインキ中には水酸基やアミノ基といった官能基を有する化合物を含むことが好ましい。
基材の透明性は特に限定されないが、金属蒸着層および印刷層による意匠性を発現させるために、透明ないし半透明であることが好ましい。また、プラスチック基材であることが好ましい。
基材の厚みは特に限定されない。プラスチックフィルムの場合、通常印刷に用いられるフィルムがそのまま適用できる。例えばPETフィルムの場合12~100μm、アクリル(PMMA)フィルムの場合は20~100μmが好適に使用できる。
【0021】
(印刷層)
印刷層は顔料で着色された層であり、基材とアンカー層との間にあることで、後の工程でさらに積層される金属蒸着層による金属調と相俟って作用し、積層体としての意匠性をより高め得る。
印刷層を設けるためのインキとしてはウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル共重合樹脂およびセルロース樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有していれば特に限定されず、印刷層がウレタン樹脂を含む場合、当該ウレタン樹脂は、ポリエステル由来の構成単位を含有することが好ましく、印刷層がアクリル樹脂を含む場合、当該アクリル樹脂は、アルキルメタクリレート好ましくはメチルメタクリレート由来の構成単位を有することが好ましい。なお、印刷層が含む樹脂併用の組み合わせとしては、ウレタン樹脂/塩化ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂/セルロース樹脂、アクリル樹脂/塩化ビニル共重合樹脂から選ばれる組み合わせであることが好ましい。アンカー層との密着性、加工適性を得ることができるためである。この場合の質量比において、ウレタン樹脂/塩化ビニル共重合樹脂は、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~30/70であることがなお好ましい。ウレタン樹脂/セルロース樹脂は、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~30/70であることがなお好ましい。更にアクリル樹脂/塩化ビニル共重合樹脂は、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~30/70であることがなお好ましい。これら樹脂は印刷層中で結着樹脂(バインダー樹脂)として作用する。
【0022】
(ウレタン樹脂)
上記ウレタン樹脂は特に制限はなく、例えば特開2013-213109号公報や特開2005-298618号公報に記載された公知の方法により適宜製造される。製造方法にて限定されるものではないが、例えばポリオールとポリイソシアネートからなるウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、更にポリアミンで鎖延長反応させることで得られるウレタン樹脂が好ましい。当該ウレタン樹脂は、アミン価を有することが好ましく、1~15mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがより好ましい。また、水酸基価は、1~20mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがより好ましい。
【0023】
当該ウレタン樹脂はポリエステル由来の構成単位を有していることが好ましく、例えば、ポリエステルポリオールを原料として用いることで構成単位にすることができる。なお当該ポリエステルポリオール由来の構造単位は、ポリウレタン樹脂総質量中に20~75質量%含有することが好ましく、40~75質量%含有することがより好ましい。当該ポリエステルポリオールは、二塩基酸とジオールの縮合物であることが好適であり、当該二塩基酸としては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸その他種々のものが用いられ、当該ジオールとしてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられ、密着性の観点から、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの分岐構造を有するジオール(分岐ジオール)が好ましい。
【0024】
上記ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートは芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種が好適であり、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの公知のジイソシアネートを含むことが好ましい。
また、上記ポリアミンは、イソシアネート基との反応でウレア結合を形成し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンが好適に挙げられる。
【0025】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマーを重合して得られる樹脂をいい、従来公知の方法で製造でき、製造方法は特に制限されるものではない。また(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定はされない。なお、後述する(メタ)アクリルポリオールと同様の形態であっても差し支えない。
【0026】
上記アクリル樹脂の重量平均分子量は、5,000~300,000であることが好ましく、30,000~200,000、更には、50,000~150,000であることがなお好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度は20~120℃であることが好ましく、40~110℃であることがなお好ましい。当該ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)による測定値をいう。
【0027】
以下、アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリルモノマーについて列記する。尚、(メタ)アクリルモノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有することが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量としてはアクリル樹脂総量中の主成分(50質量%以上)であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの有する当該アルキル基は炭素数1~12であることが好ましく、メチルメタクリレート由来の構成単位を有することが好ましい。アクリルモノマーの例を後述するが、これらに限定されるものではない。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが、基材に対して良好な密着性を得やすいという点からより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリルモノマーは、水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートを含有してもよく、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリルモノマーは、他にカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、アミド結合基含有(メタ)アクリルモノマー、アミノ基含有(メタ)アクリルモノマー、アルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリルモノマー、芳香環含有(メタ)アクリルモノマー、エポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー、更にスチレン系モノマーなどを含有してもよく、限定されない。
【0031】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル‐アクリル共重合樹脂が好ましい。
【0032】
<塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50~90℃であることが好ましい。
【0033】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、30,000~70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50~90℃であることが好ましい。
【0034】
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性等が良好となる。
【0035】
<セルロース樹脂>
セルロース樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~1,000,000のものが好ましく、10,000~200,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100~160℃であるものが好ましい。
【0036】
(ニトロセルロース)
ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、平均重合度35~480、更には50~200の範囲のものが好ましい。平均重合度が50以上の場合、インキ被膜の強度および基材への密着性が向上するため好ましい。又、平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。また、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
【0037】
<他のバインダー樹脂>
バインダー樹脂は、他の樹脂を併用しても良く、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、酢酸ビニル樹脂、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、その含有量は、バインダー樹脂の固形分100質量%に対して、0~30質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましい。
【0038】
(顔料)
公知のグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等に使用される顔料を用いることができる。当該顔料としては、公知の有機顔料および/または無機顔料から選ばれる少なくとも1種類を含む。
【0039】
印刷層を形成する方法としては、基材上に、従来公知の方法、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート等でインキを印刷または塗布した後、適宜乾燥することにより行われる。印刷層の膜厚は特に限定されるものではないが、0.1~15μmであることが好ましく、0.2~10μmであることがなお好ましく、0.3~3μmであることが更に好ましい。基材との密着性のため、また、以下に説明のアンカー層を均一に形成させるためである。
【0040】
(アンカー層)
アンカー層は、基材上に設けられた印刷層の上面に、アンカー剤を塗布することで設けられる。アンカー剤とはアクリルポリオールおよびイソシアネート化合物を含む組成物である。アンカー層は、さらに顔料や金属粉などを含んでいてもよい。
なお、当該アンカー層上には更に金属蒸着層がアンカー層に接する形で設けられる。すなわち、基材、印刷層、アンカー層および金属蒸着層をこの順に具備する。アンカー層は、アクリルポリオールを含むことで平滑性と耐熱性を有し、金属蒸着面の鏡面性をより高め得る。さらに金属蒸着積層体としての加工性を高め得る。
本発明において、アンカー層がアクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記アンカー層を構成する樹脂成分の総質量中に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を50質量%以上含むことで、上記の平滑性、耐熱性、印刷層との密着性、金属蒸着層との密着性、柔軟性が良好または適切となり、金属蒸着積層体としても良好な加工性を得られる。アンカー層を構成する樹脂成分総質量中のアクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物の含有量は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがなお好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。耐熱性、金属蒸着面の鏡面性、などが向上するためである。
【0041】
アンカー層を構成する樹脂成分としては、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含むほかに、本発明の趣旨の範囲において他の樹脂を有していてもよく、特段限定されない。他の樹脂としては、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース樹脂、ロジン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂等から選ばれる少なくとも1種類などが挙げられる。
【0042】
(アクリルポリオール)
アクリルポリオールは、アクリルモノマーを重合して得られる樹脂で水酸基を有するものをいい、従来公知の方法で製造でき、製造方法は特に制限されるものではない。またアクリルモノマーとしては上記で挙げたものを好適に使用でき、特に限定はされない。当該アクリルモノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アクリルポリオールはアルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレート由来の構成単位を含有することが好ましく、含有量としてはアクリルポリオール総量中の主成分(50質量%以上)であることが好ましい。
【0043】
アクリルポリオールは、水酸基価が10~150mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましい。印刷層との密着性、金属蒸着積層体の加工性を得るためである。また、アクリルポリオールは、重量平均分子量が2,000以上200,000以下であることが好ましく、10,000以上150,000以下であることがなお好ましく、20,000以上100,000以下であることが更に好ましい。なお、当該重量平均分子量は、50,000を超え、100,000以下の値であれば特に好適に利用できる。金属蒸着層あるいは印刷層との密着性を向上させるためである。更に、アクリルポリオールのガラス転移温度については特に限定されないが、アンカー層がより高い耐熱性を有し、金属蒸着によるより良好な鏡面性を得るためには、ガラス転移温度は高い方が好ましく、20~120℃であることがより好ましく、50~110℃であることがなお好ましく、70~105℃であることが更に好ましい。なお、本明細書においてガラス転移温度とは示差走査熱量計(DSC)により測定し、ガラス転移が起こる温度範囲の変曲点を表す。
【0044】
(イソシアネート化合物)
アンカー層はアクリルポリオールをイソシアネート化合物の硬化物からなり、硬化されていることを要件とするが、当該イソシアネート化合物は必ずしもアクリルポリオールと架橋していることを要件としない。ただし、上記アクリルポリオールと架橋されていることが好ましい。印刷層との密着性、金属蒸着層との密着性、耐熱性に優れたアンカー層を形成する。
イソシアネート化合物は、各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられ、脂環族ジイソシアネートとしては例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、やダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
イソシアネート化合物における一実施形態として、イソシアヌレート系、アダクト系およびビウレット系から選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物であることが好ましい。イソシアヌレート系(以下、「ヌレート系」と表記する場合がある)であることがなお好ましい。イソシアヌレート系イソシアネート化合物とは、ジイソシアネートが3量体となってイソシアヌレート環構造となっている形態をいい、ビウレット系イソシアネート化合物とは、ビウレット構造を有するイソシアネート化合物をいい、アダクト系イソシアネート化合物とは、トリメチロールプロパン等の3官能アルコール化合物とジイソシアネートが反応してアダクト体となったイソシアネート化合物をいう。これらのイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
アンカー層として高い耐熱性を発現し金属蒸着による鏡面性をより良好に得るために、イソシアネート化合物は芳香族ジイソシアネートを含むことが好ましく、中でもトルエンジイソシアネートを含むことがより好ましい。更に一実施形態としてヌレート系イソシアネート化合物を含むことが好ましい。即ち、芳香族ジイソシアネートからなるヌレート系イソシアネート化合物を含むことが特に好ましい。この場合であっても、当該芳香族ジイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネートを含むことが好ましい。
【0048】
アクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比率については特に限定されないが、十分に架橋させ、アンカー層として期待される特性を発現するために、アンカー層中のNCO/OHモル比率は0.1~5.0であることが好ましく、0.3~3.0であることがより好ましい。アクリルポリオールとイソシアネート化合物の質量比率にあっては95:5~5:95であることが好ましく、90:10~20:80であることがなお好ましく、90:10~50:50、あるいは90:10~60:40であることが、更に好ましい。
【0049】
アンカー層を形成する方法としては、あらかじめ基材上に形成された印刷層上に、従来公知の方法、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート等で、本発明で説明するアンカー剤を印刷または塗布したのち、適宜乾燥することにより行われる。
【0050】
上記アンカー剤は、バインダー樹脂およびイソシアネート化合物のほかに、液状媒体として有機溶剤または水を適宜含有することができる。アンカー剤は、液状媒体の主成分(50質量%以上)として有機溶剤を含有することが好ましく、かかる有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など公知の溶剤を使用でき、これらの混合溶剤として含有することが好ましい。また、アンカー剤が、媒体の主成分として水を含有する場合にあっては必要に応じて水溶性のアルコール系有機溶剤等を20質量%以下含有することができる。
【0051】
アンカー層の膜厚は、0.1~10μmであることが好ましく、0.2~8μmであることがなお好ましく、0.3~3μmであることが更に好ましい。加工時の延伸性を十分満たすためである。これによりひび割れその他の不具合が大きく減少する。また当該膜厚ではアンカー層は均一に形成でき、均一に形成されたアンカー層に蒸着された金属蒸着層は外観が良好で、鏡面化できるなどの利点がある。
【0052】
(金属蒸着層)
金属蒸着層はアンカー層に隣接して設けられる層をいい、金属調の外観を有することが好ましい。金属蒸着層を形成する方法としては、先の工程で形成したアンカー層上に、アルミニウム、インジウム、スズ、パラジウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、鉛、亜鉛、ケイ素、クロム、ニッケル、金、銀、銅などの中から選ばれた少なくとも1種の金属を蒸着させることが好適である。加飾部材の場合には、接着剤層つき第2の基板の接着剤層上に金属蒸着層を形成さえたのち、アンカー層と張り合わせたものであってもよい。
【0053】
(アルミニウム蒸着層)
上記の金属の中でも、鏡面効果、アンカー層への密着性および費用の観点から、アルミニウム蒸着層が好適に用いられる。加飾・鏡面効果を有するため当該アルミニウム蒸着層は金属アルミニウム(Al)を主成分(蒸着層を構成する金属のうち50質量%以上)とする。酸化アルミニウムを主成分とする場合は蒸着膜が透明となるので適さない。鏡面蒸着方法としては、抵抗加熱蒸着、高周波誘導加熱蒸着、電子ビーム加熱蒸着などの手法の真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が好適に用いられる。金属蒸着層の膜厚は特に限定されるものではないが、5~500nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましく、10~200nmであることが更に好ましい。
【0054】
(加飾部材)
本発明では、金属蒸着層上に、更に、接着剤層および第2の基板を順次有する実施形態(加飾部材)も好ましく用いられる。具体的実施形態としてはABS樹脂等で製造されたプラスチック板または成形物と、上記金属蒸着積層体とを貼り合わせることで得られる。貼り合わせは接着剤層を介して行われる。
(接着剤層)
接着剤層は接着剤を塗布することで得られる。上記のように金属蒸着積層体と第2の基板等とを貼り合わせる場合、接着剤を塗布する対象は第2の基板であってもよいし、金属蒸着積層体であってもよい。当該接着剤としては、特に限定されず、例えば、ウレタン系、塩化ビニル系、アクリル系、エポキシ系などの従来公知の接着剤を用いることができ、特段限定されない。
(第2の基板)
上記基板としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリメタクリル酸メチルなどから成るアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど、もしくはこれらの複合材料からなるシート状または立体の成形物が挙げられる。その他、鋼板、アルミニウム板、錫めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板などの金属板が挙げられる。
【0055】
上記加飾部材は、自動車内外装部材、家具家電部材、金属缶等において、高級感や意匠性を付与する手段として好適に用いられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0057】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂PU1の合成]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物である数平均分子量5,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/AA」)100部、プロピレングリコールとアジピン酸の縮合物である数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「PP/AA」)24部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール(以下「PPG」)16部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)20.5部、および酢酸エチル73.7部を窒素気流下に80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの溶剤溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)8.2部、2-エタノールアミン(以下「2EtAm」)0.5部、酢酸エチル222.9部、イソプロパノール(以下「IPA」)127.1部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、固形分30%、アミン価3.5mgKOH/g、水酸基価1.7mgKOH/g、重量平均分子量50,000、ガラス転移温度は-40℃のポリウレタン樹脂PU1溶液を得た。
【0058】
(合成例2)[アクリル樹脂Ac1の合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにIPA600部を仕込み、攪拌下、窒素雰囲気下で80℃迄昇温した。次に、予め調整しておいたアクリル酸20部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル58部、アクリル酸メチル20部、メタクリル酸メチル370部、アクリル酸ブチル130部およびアゾビスイソブチロニトリル(製品名「V-60」、和光純薬工業社製)12部の混合液を2時間で滴下した。滴下後1時間経て、アゾビスイソブチロニトリル2部を加え、更に2時間反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンで固形分の調整を行った。このようにして固形分30%、酸価26mgKOH/g、重量平均分子量50000、ガラス転移温度46℃、メタクリル酸メチル構造単位の含有量62質量%のアクリル樹脂Ac1溶液を得た。
【0059】
(製造例1)インキA(ウレタン樹脂/塩酢ビ樹脂)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、ポリウレタン樹脂PU1溶液40部、塩化ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11(固形分25%酢酸エチル溶液))15部、酢酸エチル25部、イソプロパノール(IPA)10部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキAを得た。
【0060】
(製造例2)インキB(アクリル樹脂/塩酢ビ樹脂)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、アクリル樹脂Ac1溶液40部、塩化ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11(固形分25%酢酸エチル溶液))15部、酢酸エチル25部、イソプロパノール(IPA)10部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキBを得た。
【0061】
(製造例3)インキC(ウレタン樹脂/セルロース樹脂)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、ポリウレタン樹脂PU1溶液40部、ニトロセルロース樹脂(TR2:T.N.C.INDUSTRIAL CO.,LTD社製 固形分30%(メチルシクロヘキサン/IPA/酢酸エチル溶液))15部、酢酸エチル25部、イソプロパノール(IPA)10部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキCを得た。
【0062】
(製造例4)インキD(ウレタン樹脂のみ)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、ポリウレタン樹脂PU1溶液50部、酢酸エチル35部、イソプロパノール(IPA)15部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキDを得た。
【0063】
(製造例5)インキE(アクリル樹脂のみ)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、アクリル樹脂Ac1溶液50部、酢酸エチル35部、イソプロパノール(IPA)15部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキEを得た。
【0064】
(製造例6)インキF(塩酢ビ樹脂のみ)の作製
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow83:LIONOL YELLOW 1805G:トーヨーカラー社製)10部、塩化ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11(固形分25%酢酸エチル溶液))55部、酢酸エチル30部、イソプロパノール(IPA)15部を混合し、ディスパーで撹拌した後、サンドミルを使用してこれを10分間で分散し、インキFを得た。
【0065】
(アクリルポリオールAの合成)
反応槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下槽、窒素導入管を備えた重合反応装置を用意した。酢酸エチル100部を反応槽に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃に加熱した。次いで、メチルメタクリレート86.1部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.9部、およびアゾビスイソブチロニトリル(製品名「V-60」、和光純薬工業社製)0.6部を予め混合したモノマー混合物を、滴下槽より2時間かけて滴下した。滴下終了後、攪拌しながら1時間反応させ、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.2部を後添加し、5時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、アクリルポリオールAを含む溶液を得た。得られたアクリルポリオールの重量平均分子量は80,000、水酸基価は60mgKOH/g、ガラス転移温度は97.2℃、不揮発分は50%であった。
【0066】
(アクリルポリオールB~Eの合成)
表1に示すモノマー組成で、アクリルポリオールAの合成と同様の手順で、アゾビスイソブチルニトリルの添加量および反応温度等の調整により分子量を調節し、アクリルポリオールB~Eを得た。
なお、表1 中の略語は、下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート、BMA:ブチルメタクリレート、2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0067】
(実施例1)
上記インキAを、酢酸エチル/IPA=70/30の溶剤を適宜加え離合社製ザーンカップ#3-約16秒の粘度に希釈調製した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「E5100」、厚み12μm、東洋紡社製)に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるようにグラビア印刷し、基材上に印刷層を有する印刷物を得た。
次いで、上記で得られたアクリルポリオールA 100部と、トルエンジイソシアネート(TDI)のヌレート化合物(製品名「コロネートC2037」、東ソー社製)30部を混合し、メチルエチルケトン(MEK)を適宜加え離合社製ザーンカップ#3-約16秒の粘度に希釈調製した後、上記で得られた印刷物の印刷層上に、乾燥後の膜厚が約2μmとなるようにグラビア印刷し、基材、印刷層、アンカー層を順次有する印刷物を得た。
さらにこの印刷物のアンカー層上に、アルミニウムを真空蒸着法にて約40nmの膜厚で積層することで、基材、印刷層、アンカー層、金属蒸着層を順次有する金属蒸着積層体S1を得た。
【0068】
(実施例2~24、比較例1~4)(S2~S24およびSS1~SS4)
印刷層、アンカー層および金属蒸着層について、表2に記載した原料、配合比率、膜厚とした以外は実施例1と同様の方法にて、実施例2~24および比較例1~4の金属蒸着積層体(S2~S24およびSS1~SS4)を得た。
なお、表中の原料については以下である。
・ポリウレタン樹脂:製品名「LU-4213」、大日精化工業社製、重量平均分子量60,000~70,000
・塩化ビニル共重合樹脂:日信化学工業社製 製品名「ソルバインC」(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂 水酸基価無し、重量平均分子量75,000)の固形分50%MEK溶液、
・XDIヌレート:キシリレンジイソシアネートのヌレート化合物 製品名「タケネートD131N」、三井化学社製、固形分50質量%溶液とした。
・IPDIヌレート:イソホロンジイソシアネートのヌレート化合物 製品名「VESTANAT T1890」、Evonik社製、固形分50質量%溶液とした。
・HDIヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化合物 製品名「スミジュールN3300」、住化コベストロ社製、固形分50質量%溶液とした。
・TDIアダクト:トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト化合物 製品名「デスモジュールL75-C」、住化コベストロ社製、固形分50質量%溶液とした。
・XDIアダクト:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト化合物 製品名「タケネートD110N」、三井化学社製、固形分50質量%溶液とした。
・HDI二官能:ヘキサメチレンジイソシアネートと2官能ポリオール化合物との反応で得られる末端イソシアネート基含有の2官能ポリイシシアネート化合物 製品名「デュラネートD101」、旭化成社製、固形分50質量%溶液とした。
【0069】
<性能評価>
[印刷層/アンカー層間の密着性]
上記実施例、比較例における、基材/印刷層/アンカー層の積層体について、JISK5600-5-6を用いて、アンカー層と印刷層との密着性を評価した。
A:印刷層からのアンカー層の剥離が無い(良好)
B:印刷層からのアンカー層の剥離面積が0~5%である
C:印刷層からのアンカー層の剥離面積が5~15%である(使用可)
D:印刷層からのアンカー層の剥離面積が15~50%である
E:印刷層からのアンカー層の剥離面積が50%以上である
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0070】
[アンカー層/金属蒸着層間の密着性]
上記実施例、比較例における、基材/印刷層/アンカー層/金属蒸着層の積層体について、JISK5600-5-6を用いて、アンカー層と金属蒸着層との密着性を評価した。
A:アンカー層からの金属蒸着層の剥離が無い(良好)
B:アンカー層からの金属蒸着層の剥離面積が0~5%である
C:アンカー層からの金属蒸着層の剥離面積が5~15%である(使用可)
D:アンカー層からの金属蒸着層の剥離面積が15~50%である
E:アンカー層からの金属蒸着層の剥離面積が50%以上である
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0071】
[外観(金属蒸着層の鏡面性)]
上記実施例、比較例における、基材/印刷層/アンカー層/金属蒸着層の積層体について、金属蒸着層のアンカー層とは逆側の面から目視観察し、金属蒸着層の鏡面性を評価した。
A:曇りやくすみが全くなく、入射した光が明瞭に反射し、高い輝度感がある(良好)
B:AとCの間の輝度感がある。
C:若干の曇りやくすみがあるが、入射した光がおおよそ反射し、輝度感がある(使用可)
D:CとEの間の輝度感がある。
E:著しく曇りやくすみがあり、入射した光がぼんやりと反射し、全く輝度感がない
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0072】
[外観(色彩)]
上記実施例、比較例における、基材/印刷層/アンカー層/金属蒸着層の積層体について、基材層の印刷層とは逆側の面から目視観察し、外観(色彩)を評価した。
A:印刷層に由来する色彩について白化や黒化等の変化がなく、 金属調と色彩がともに鮮明である(良好)
B:AとCの間の色彩外観を有する
C:印刷層に由来する色彩についてわずかに白化や黒化等があるが、金属調と色彩はおおよそ鮮明である(使用可)
D:CとEの間の色彩外観を有する
E: 印刷層に由来する色彩について白化や黒化等があり、金属調と色彩がともに全く鮮明でない
なお実用レベルの評価はA、BまたはCである。
【0073】
[加工性]
上記実施例、比較例における、基材/印刷層/アンカー層/金属蒸着層の積層体について、ダンベル型に試験片を切り出し、引張試験機を用い150℃熱間にて引張速度50mm/分で1.2倍に延伸した。
A:延伸前後で外観に変化なく、高い輝度感がある(良好)
B:AとCの間の輝度感がある。
C:延伸により若干のひび割れなどの外観変化があるが、輝度感がある(使用可)
D:CとEの間の輝度感がある。
E:延伸により著しくひび割れなどの外観変化があり、全く輝度感がない
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0074】
【0075】