(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】転写シート及びこれを用いた化粧シート
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20240702BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B44C1/17 G
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2020115051
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】原田 千穂
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006565(JP,A)
【文献】特開2018-058266(JP,A)
【文献】特開2015-193249(JP,A)
【文献】特開2009-137219(JP,A)
【文献】特開昭58-051180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16-1/175
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に、被転写材の発泡を抑制する発泡抑制インキ部を含む絵柄模様層が、剥離可能に設けられた転写シートであって、
前記発泡抑制インキ部が設けられた領域を少なくとも覆う保護領域に、前記発泡抑制インキ部への吸湿を防止するための防湿保護層を設け
、
前記発泡抑制インキ部と前記防湿保護層とが互いに接していることを特徴とする転写シート。
【請求項2】
前記防湿保護層
は、前記保護領域に保護インキを
用いて塗布形成されたベタ印刷
層であることを特徴とする請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記保護インキの塗布量は、1g/m
2以上20g/m
2以下であることを特徴とする請求項2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記保護インキには、マット添加剤を含有させていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の転写シート。
【請求項5】
前記マット添加剤の添加量は、3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の転写シート。
【請求項6】
前記防湿保護層は、前記絵柄模様層の表面に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の転写シート。
【請求項7】
前記絵柄模様層は、複数の層で構成された積層体であり、
前記防湿保護層は、前記絵柄模様層を構成する層間に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の転写シート。
【請求項8】
前記発泡抑制インキ部が設けられた領域のみを覆う保護領域に、前記防湿保護層を設けていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の転写シート。
【請求項9】
支持体上に発泡性樹脂層を有し、前記発泡性樹脂層の上に、当該発泡性樹脂層における発泡を抑制する発泡抑制インキ部を含む絵柄模様層が少なくとも設けられてなり、
前記発泡抑制インキ部が設けられた領域により、前記発泡性樹脂層の発泡が抑制されることで、前記発泡抑制インキ部が設けられていない領域に比べて相対的に低い凹部を形成してなる化粧シートであって、
前記発泡性樹脂層と前記発泡抑制インキ部との間には、前記発泡抑制インキ部への吸湿を防止するための防湿保護層を設け
、
前記発泡抑制インキ部と前記防湿保護層とが互いに接していることを特徴とする化粧シート。
【請求項10】
前記絵柄模様層は、複数の層で構成された積層体であり、
前記防湿保護層は、前記絵柄模様層を構成する層間に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記発泡抑制インキ部が設けられた領域のみに、前記防湿保護層を設けていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材等に用いる化粧シートの表面に、絵柄模様等を形成する転写シートに関し、より詳しくは被転写材における発泡を部分的に抑制する抑制インキ仕様であり、発泡抑制インキ部への吸湿を防止する防湿保護層を設けた転写シート及びこれを用いた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抑制インキ仕様の転写紙が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-22373号公報
【文献】特開2015-193249号公報
【文献】特開平11-267407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の抑制インキ仕様の転写紙では、夏季の高温高湿環境下だと抑制効果が弱まってしまうという問題点があった。
これは、抑制インキに含まれる抑制剤が水分子と反応する事が要因である(特許文献3参照)。
【0005】
本発明は、上記のような点に着目したもので、抑制インキへの吸湿を防止する防湿保護層を、発泡抑制インキ部が設けられた領域を少なくとも覆う保護領域に設けることで、長期保存に対しても安定した効果を発揮することが可能な転写シート及びこれを用いた化粧シートを提供しようとするものである。
【0006】
一方、発泡抑制インキ部の印刷抜けは、絵柄用インキと抑制インキとの光沢差を利用して確認している。
これに対し、本発明に係る防湿保護層を、発泡抑制インキ部を含む絵柄模様層の表面又は裏面に設けると、防湿保護層と抑制インキとの光沢が接近し、或いは防湿保護層と基材シートとの光沢が接近し、発泡抑制インキ部の印刷抜けの確認が困難になることが予想される。
そこで、第二に、本発明は、上記のような点に着目したもので、防湿保護層を形成する保護インキの塗布量を変化させたり、或いは保護インキに所定量のマット添加剤を含有させることで、抑制インキと異なる光沢差を持たせ、発泡抑制インキ部の印刷抜けの確認が容易化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る転写シートは、基材シートの表面に、被転写材の発泡を抑制する発泡抑制インキ部を含む絵柄模様層が、剥離可能に設けられた転写シートであって、前記発泡抑制インキ部が設けられた領域を少なくとも覆う保護領域に、前記発泡抑制インキ部への吸湿を防止するための防湿保護層を設けていることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る転写シートは、前記防湿保護層として、前記保護領域に保護インキをベタ印刷することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る転写シートは、前記保護インキの塗布量が、1g/m2以上20g/m2以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る転写シートは、前記保護インキに、マット添加剤を含有させていることを特徴とする。
本発明の一態様に係る転写シートは、前記マット添加剤の添加量が、3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る転写シートは、前記防湿保護層が、前記絵柄模様層の表面に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る化粧シートは、支持体上に発泡性樹脂層を有し、前記発泡性樹脂層の上に、当該発泡性樹脂層における発泡を抑制する発泡抑制インキ部を含む絵柄模様層が少なくとも設けられてなり、前記発泡抑制インキ部が設けられた領域により、前記発泡性樹脂層の発泡が抑制されることで、前記発泡抑制インキ部が設けられていない領域に比べて相対的に低い凹部を形成してなる化粧シートであって、前記発泡性樹脂層と前記発泡抑制インキ部との間に、前記発泡抑制インキ部への吸湿を防止するための防湿保護層を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、長期保存に対しても安定した効果を発揮することが可能な転写シート及びこれを用いた化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係わる転写シートの断面図である。
【
図2】実施形態2に係わる転写シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態に係わる転写シート10)
図1中、10は、実施形態1に係わる転写シート10であり、図示しないが、キッチンや洗面所、トイレなどの水回り用床材(化粧用材)である被転写材の表面に、絵柄模様等を形成するのに用いられる。
転写シート10は、次の層から形成されている。
なお、次の(1)~(3)については後述する。
(1)基材シート20(離型紙)
(2)絵柄模様層30
(3)防湿保護層40
【0013】
(基材シート20)
基材シート20は、例えば離型紙である。
基材シート20は、「紙」のほか、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、或いは紙とオレフィン系樹脂とを積層した積層体や、紙とポリエステル系樹脂シートとを積層した積層体でも良い。
本実施形態に係る基材シート20としては、紙とオレフィン系樹脂とを積層した積層体を好適に用いることができる。
【0014】
オレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などの各種樹脂を1種又は2種以上混合したものを、単層或いは複数組み合わせた積層構造として用いることができる。
後述する実施例に即して説明すると、紙の両面にポリプロピレン樹脂をラミネートしたものを基材シート20としている。
基材シート20の表面である印刷面は、グロス仕上げのものを使用したが、マット仕上げでも構わない。
また、基材シート20の裏面はマット仕上げのものを使用したが、グロス仕上げでも構わない。
【0015】
(絵柄模様層30)
絵柄模様層30は、
図1に示すように、基材シート20の表面である印刷面に設けられ、被転写材における発泡を抑制する抑制インキを含むものである。
絵柄模様層30は、
図1に示すように、基材シート20側から、1色目(抑制)、2色目、3色目の順に積層し、複数、例えば3層から形成している。複数層、例えば3層に分けたのは、印刷インキを色ごとに印刷するためであり、1色目は、抑制インキを用いている。なお、絵柄模様層30を複数層から形成したが、これに限定されず、単層としても良いし、又、2層或いは4層以上としても良い。
各色目の絵柄模様層30は、
図1に示すように、次の層から形成されている。
(1)絵柄用インキ部31
絵柄用インキ部31は、色インキより構成されている。
(2)発泡抑制インキ部32
発泡抑制インキ部32は、隣接する絵柄用インキ部31の間に形成され、抑制インキより構成されている。
【0016】
(抑制インキや色インキ)
抑制インキは、従来公知の発泡抑制剤を任意に用いることができ、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系やアミノトリアゾール類などのトリアゾール系化合物、無水トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸などを例示することができ、中でもトリアゾール系化合物を好適に用いることができる。
さらに、好ましくは、アミノトリアゾール類であることが望ましい。
【0017】
抑制インキを含む発泡抑制インキ部32は、バインダ樹脂として、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂、アクリル系樹脂類、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂など樹脂類を適宜選択して、単独或いは混合物や共重合体などの複合物として用いることができる。
さらに、発泡抑制インキ部32には、タック性を切るための体質顔料や各種安定剤などを適宜添加することができ、体質顔料としては、例えばシリカなどを好適に用いることができる。
【0018】
絵柄模様層30は、例えば住宅、店舗等の建築物や、電車、自動車等の車輌、飛行機、船舶等の内装材や外装材、床材等の表面を化粧するための化粧柄や、模様、彩色、木目柄、コルク柄、石目柄、タイル柄、目地、木目導管柄等の任意の絵柄を設けることができる。
このような絵柄模様層30は、従来公知の色インキであれば、何れも用いることができ、色インキの顔料としては、例えばイソインドリノンイエロー、ポリアゾレッド、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタンなどを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0019】
また、色インキに用いられるバインダ樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂などの各種樹脂を適宜任意に選定して単独或いは混合物、共重合体などの複合物として用いることができる。
また、絵柄模様層30には、選定したバインダ樹脂に応じて、各種硬化剤、触媒、安定剤、開始剤などの添加剤が加えられてあっても何ら問題はない。
上述のような発泡抑制インキ部32並びに絵柄模様層30は、グラビア印刷をはじめ、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの従来公知の印刷技術を適宜選定して設けることができる。
【0020】
(防湿保護層40)
防湿保護層40は、
図1に示すように、絵柄模様層30において、発泡抑制インキ部32が設けられた領域を少なくとも覆う保護領域に、発泡抑制インキ部32への吸湿を防止するために設けている。
具体的には、防湿保護層40は、絵柄模様層30の表面に設けられている。なお、防湿保護層40は、絵柄模様層30の表面に限定されず、
図2を用いて後述するが、防湿保護層40を、基材シート20と絵柄模様層30との間に設けても良い。
防湿保護層40は、発泡抑制インキ部32を覆うように、保護インキを印刷、望ましくはベタ印刷する。
【0021】
(保護インキ)
保護インキは、例えば色インクでも良いし、絵柄模様層30と同様のアクリル塩酢ビ系インキでも良い。また、保護インキは、色インクなどに限定されることなく、熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを主成分とした樹脂タイプのインキや塗料でも良い。
防湿保護層40は、「ベタ印刷」が望ましいが、発泡抑制インキ部32上に形成されていれば良く、単なる「印刷」でもよく、発泡抑制インキ部32の表面を樹脂タイプのインキなどを用いてコーティングするように印刷しても良いし、塗布しても良い。
【0022】
(印刷方法)
「ベタ印刷」には、例えば、グラビア印刷を用いているが、これに限定することなく、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷方法を用いても良い。
(保護インキの塗布量)
保護インキの塗布量は、1g/m2以上20g/m2以下が望ましい。
保護インキの塗布量は、防湿保護層40の光沢度合に影響する。
これは、発泡抑制インキ部32の印刷抜けを、光沢差を用いて確認しているためである。
【0023】
防湿保護層の光沢度合は、次のように、右側の光沢が最も低く、左側に向かって段階的に高くなることが望ましく、部と層や層と層との間は光沢度合いにより区別できるように、所定量、離れていることが必要である。
発泡抑制インキ部32<防湿保護層40<絵柄模様層30(基材シート20)
1~20g/m2の塗布量ではいずれも光沢差がはっきりと分かるため、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認が比較的、容易であった。
0.5g/m2未満の塗布量では原紙単体の光沢と変わりないため、印刷抜けの確認が困難であった。
30g/m2の塗布量では、巻き取り時に印刷面とのインキ密着による剥離が起きたため、評価できず、印刷抜けの検知できなくなった。
なお、光沢度とは、ものの表面に光を当てたときの反射の程度を表す量をいう。
【0024】
(マット添加剤の含有)
保護インキには、光沢差が用いた印刷抜けなどの印刷トラブルの確認化を図るため、シリカ等のマット添加剤を含有させる。
マット添加剤の添加量は、3質量%以上30質量%以下が望ましい。
マット添加剤の添加量が、1質量%未満の場合、添加部数が少なすぎるため、添加剤なしと光沢差が見られなかった。
【0025】
マット添加剤の添加量が、3~30質量%の場合、発泡抑制インキ部32と防湿保護層40とが異なる光沢差であったため、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認が比較的、容易であった。
マット添加剤の添加量が、50質量%以上の場合、発泡抑制インキ部32の光沢度合より、防湿保護層40の光沢が低くなるため、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認検知できなくなった。
【0026】
(ベタ印刷)
インキ濃度が100%の色又は100%の色同士の掛け合わせで塗りつぶした部分のことを「ベタ」といい、「ベタ印刷」とは先に説明した色での印刷を指し、保護インキで印刷が覆い尽くされる状態になり、隙間なく保護インキで覆われる。
保護インキは、CMYKの4色もしくは特定の色を表現するために調合されたDIC(特色)で構成されるが、以下のようなカラーは、ベタに該当する。
(1)C100%のカラー(CMYK単色の100%)
(2)C100%+M100%のカラー(CMYK100%同士の組み合わせ)
(3)DIC 100%のカラー(特色インキ100%)
(4)CMYKが全て100%の掛け合わせ(総ベタ)
【0027】
(化粧シート)
化粧シートは、被転写材である。
化粧シートには、図示しないが、支持体上に発泡性樹脂層を有する。
発泡性樹脂層上に、
図1に示す転写シート10の絵柄模様層30が転写されることで、当該発泡性樹脂層における発泡を抑制する発泡抑制インキ部32を含む絵柄模様層30が少なくとも設けられている。
化粧シートにおいて、転写シート10の発泡抑制インキ部32が設けられた領域により、発泡性樹脂層の発泡が抑制されることで、発泡抑制インキ部32が設けられていない領域に比べて相対的に低い凹部が形成される。
【0028】
(実施形態1による効果)
本発明の一態様に係る転写シート10によれば、防湿保護層40として、保護領域に保護インキをベタ印刷することで、防湿保護層40を比較的簡便に、安価に設けられ、防湿保護層40により、発泡抑制インキ部32への吸湿を防止できる。
本発明の一態様に係る転写シート10によれば、保護インキの塗布量を、1g/m2以上20g/m2以下とすることで、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認が比較的、容易にできる。
【0029】
本発明の一態様に係る転写シート10によれば、保護インキに、マット添加剤を含有させることで、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認が比較的、容易にできる。
本発明の一態様に係る転写シート10は、マット添加剤の添加量を、3質量%以上30質量%以下とすることで、発泡抑制インキ部32の印刷抜けの確認が一層、容易にできる。
本発明の一態様に係る転写シート10によれば、防湿保護層40が、絵柄模様層の表面に設けられていることで、表面側からの発泡抑制インキ部32への吸湿を防止できる。
本発明の一態様に係る化粧シートによれば、それに用いる転写シート10の発泡抑制インキ部32への吸湿を防止できる。
【0030】
(
図2に示す実施形態2)
つぎに、
図2を用いて、実施形態2について説明する。
本実施形態2は、
図2に示すように、防湿保護層40を、複数層の絵柄模様層30の中間に配置した点を特徴とする。
すなわち、絵柄模様層30は、
図2に示すように、基材シート20側から、1色目(抑制)、2色目、3色目の順に積層し、複数、例えば3層から形成している。
そして、防湿保護層40は、1色目と2色目との間に設けている。なお、防湿保護層40は、1色目と2色目との間に設けたが、これに限定されず、2色目と3色目との間に設けても良い。また、絵柄模様層30を3層から形成したが、これに限定されず、2層或いは4層以上とし、それらの中間に設けても良い。防湿保護層40は、このように印刷しても生産に不具合を与えない。
本発明の一態様に係る転写シート10は、防湿保護層40が、基材シート20と絵柄模様層30との間に設けられていることで、基材シート20側からの発泡抑制インキ部32への吸湿を防止できる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明に係る転写シートの実施例A~D、並びに比較例A~Gについて説明する。なお、本発明は、下記の実施例A~Dに限定されるものではない。
【0032】
(実施例A)
実施例Aに係る転写シートは、下記の材料と手順で作成した。
ポリプロピレンラミ紙を基材シート(原反)とし、グラビア印刷によってPP面に柄印刷を行う。
柄印刷により絵柄模様層が作られる。その層構成はPP面より(1)発泡抑制インキ部、(2)絵柄用インキ部となっている。
絵柄模様層の上に防湿保護層としてインキと同様のアクリル塩酢ビないし、色インキをベタ刷りした。
なお、ベタ刷りに用いるベタ版の線数は、175線が標準であり、狙いはドライ塗布量1g/m2である。マット添加剤部数は、5質量%(以下、単に「部」ともいう。)とした。
防湿保護層の塗布量は、1g/m2として作成した。
【0033】
(実施例B)
実施例Bでは、防湿保護層の塗布量を20g/m2として作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(実施例C)
実施例Cでは,防湿保護層のマット添加剤部数を3部として1g/m2作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(実施例D)
実施例Dでは、防湿保護層のマット添加剤部数を30部として、1g/m2で作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
【0034】
(比較例A)
比較例Aは、防湿保護層を設けないもの(0g/m2)を作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(比較例B)
比較例Bでは、防湿保護層を30g/m2として作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
【0035】
(比較例C)
比較例Cでは、防湿保護層を0.5g/m2として作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(比較例D)
比較例Dでは、防湿保護層において、マット展開剤部数を1部として、1g/m2で作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
【0036】
(比較例E)
比較例Eでは、防湿保護層において、マット添加剤部数を50部として、1g/m2で作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(比較例F)
比較例Fでは、防湿保護層において、マット添加剤部数を2部として、1g/m2で作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
(比較例G)
比較例Gでは、防湿保護層において、マット添加剤部数を40部として、1g/m2で作成し、それ以外は実施例Aと同じである。
【0037】
(評価方法及び評価基準)
評価方法は、次の通りである。
(1)印刷時にインキ抜け等の不具合を「欠点検査機」が検知するかどうかを確認した。
(2)実施例及び比較例に記載の抑制インキ仕様の転写紙を、40℃の90%環境下で保管し、経時でサンプルを取り出した。
取り出したサンプルは、転写機を用いてPVC発泡層へ熱転写させる(I)。
その後、基材シート(原紙、離型紙)を剥離し、(I)の上に均一にゾルコートを塗布した。
【0038】
220℃のオーブンに2分入れ発泡させた評価シートを、次の方法にて評価した。
(1)抑制効果検証
抑制効果検証は、手触り感評価で評価し、官能試験にて評価した。評価は10人の試験員で行った。
評価基準は、良いとした人「0人・・・×」、「1~6人・・・△」、「7~9人・・・○」、「10人・・・◎」とした。
40℃、90%での促進試験は、週間経過状態で常温保管の2カ月経過状態に相当する。
【0039】
(2)印刷欠点検知可否
印刷欠点検知可否は、「欠点検査機」による検知ができる場合を、「可」とし、検知ができない場合を「不可」とした。
(3)最終的な合否
最終的な合否は、(1)抑制効果検証(手触り感評価)と、(2)印刷欠点検知可否とを総合的に判断し、「合格」、「不合格」を決定した。(1)抑制効果検証(手触り感評価)において、12週間経過時点で、「合格」で、且つ(2)印刷欠点検知可否において、「可」の場合を、「合格」とし、それ以外を「不合格」とした。
【0040】
(評価結果)
壁紙の評価結果は、次の表1の通りである。
【表1】
【0041】
(実施例A~D及び比較例A~G)
実施例A~Dび比較例A~Gの計11枚の評価シートのうち、「合格」のものは、実施例A~Dの計4枚の評価シートだけである。
残る比較例A~Gの計7枚の評価シートは、すべて「不合格」であった。
【0042】
なお、比較例Bは、生産安定性に問題があったため「評価不可」し、「不合格」とした。すなわち、30g/m2の塗布量では、巻き取り時に印刷面とのインキ密着による剥離が起きたため、評価できなかった。
比較例A~Gのうち、比較例Aは、防湿保護層を設けなかったことから、抑制効果検証
(手触り感評価)が12週間経過時点で「不合格」となった。比較例Bは、「評価不可」で「不合格」となった。比較例Cは、防湿保護層の塗布量が「0.5g/m2」であり、少なすぎたものと推測できる。比較例Dは、マット展開剤部数が「1部」であり、少なすぎたものと推測できる。比較例Eは、マット展開剤部数が「50部」であり、多すぎたものと推測できる。比較例Eは、マット展開剤部数が「2部」であり、少なすぎたものと推測できる。比較例Eは、マット展開剤部数が「40部」であり、多すぎたものと推測できる。
【0043】
一方、防湿保護層の塗布量は、実施例Aの「1g/m2」を下限とし、実施例Bの「20g/m2」を上限と推測できる。
防湿保護層に対するマット展開剤部数は、実施例Cの「3部」を下限とし、実施例Dの「30部」を上限と推測でき、結果、マット添加剤の添加量は、3質量%以上30質量%以下が望ましい。
【符号の説明】
【0044】
10 転写シート
20 基材シート
30 絵柄模様層
31 絵柄用インキ部
32 発泡抑制インキ部
40 防湿保護層