IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーカラー株式会社の特許一覧

特許7512716液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、および成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240702BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240702BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08J3/22 CEZ
C08J3/22 CFC
C08J3/22 CFD
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/26
C08K3/34
C08J3/22 CEY
C08J3/22 CES
C08L101/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020115269
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013013
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】西川 悟
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-054451(JP,A)
【文献】特開昭60-166343(JP,A)
【文献】特表2017-526787(JP,A)
【文献】特開昭51-004238(JP,A)
【文献】特開2018-131615(JP,A)
【文献】特開平05-230346(JP,A)
【文献】特開2018-188577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C08K
C08L
D06P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)と、嵩密度が0.80g/mL以下である充填剤(B)と、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)とを含み、
前記液体樹脂(A)は、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、およびアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、
液状マスターバッチ組成物。
【請求項2】
前記液体樹脂(A)は、数平均分子量が200~2000である、請求項1記載の液状マスターバッチ組成物。
【請求項3】
前記充填剤(B)は、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、タルク、およびシリカからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項1または2記載の液状マスターバッチ組成物。
【請求項4】
前記充填剤(B)の含有率は、前記液状マスターバッチ組成物100質量%中、5~25質量%である、請求項1~いずれか1項記載の液状マスターバッチ組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(E)100質量部に対して液状マスターバッチ組成物を0.1~5質量部含有し、
液状マスターバッチ組成物は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)と、嵩密度が0.80g/mL以下である充填剤(B)と、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)とを含み、
前記熱可塑性樹脂(E)は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー樹脂、およびフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、
熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記液体樹脂(A)は、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、およびアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5または6記載の熱可塑性樹脂組成物より成形されてなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状マスターバッチ組成物、それを用いた熱可塑性樹脂組成物、および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品は、成形加工が容易なことから、電気・電子機器部品、自動車部品、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で使用されている。従来より、これらのプラスチック成型品に、色や紫外線吸収性等の機能を付与する目的で、着色剤や紫外線吸収剤等の機能性付与剤を練りこんだマスターバッチ組成物が添加されている。
【0003】
上記マスターバッチ組成物の例として、粉末状であるドライカラーや、粒状着色剤組成物である固形マスターバッチ組成物、液状マスターバッチ組成物等が挙げられ、成型品の色ムラが少なくわずかな添加量で着色可能であることから、液状マスターバッチ組成物を選択して使用するケースが増える傾向にある。
【0004】
液状マスターバッチ組成物としては、着色剤等の添加剤とビヒクル及び活性化合物を含む液体配合物の提案(先行文献1)や、帯電防止性を付与する目的で、帯電防止剤とポリアルキレングリコールからなる帯電防止性樹脂組成物の提案がされている(先行文献2)。
【0005】
しかしながら、このような従来の液状マスターバッチ組成物では、成型機内で、液状マスターバッチが主剤樹脂にまとわりついた結果、スクリュースリップや滞留を生じてしまい、安定して供給することが困難となる場合がある。
【0006】
すなわち、通常の成型工程では、成型機内でのスクリューバックに伴う成型用樹脂の計量工程、スクリュー前進に伴う射出工程、冷却・取出し工程に分けられるが、スクリュースリップを生じた場合、計量工程においてスクリューバックした場合も主剤樹脂及び液状マスターバッチ組成物が食い込んでいかず、規定量の計量が完了できず計量時間オーバーを生じてしまう、といった問題がある。
とくに、成形体中の着色剤または紫外吸収剤の含有量を増加させるために、液状マスターバッチ組成物の配合量を増加させようとすると、スクリュースリップが起こりやすく、安定に成形体を形成することは困難である。
【0007】
また、特にプラスチック成型体の色が無色や薄い色で高い透明性が求められる用途の場合、均一に薄い着色ができることと、高い透明性の両立が求められるが、スクリュースリップを抑制し、かつ透明性を達成することは難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2014-500380号公報
【文献】特表2001-525447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、成形時にスクリュースリップを生じることのない、液状マスターバッチ組成物を提供することである。
また、成形時の液状マスターバッチ組成物の配合量を増やした場合にも、スクリュースリップを抑制することができ、かつ透明性に優れた成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に達した。
すなわち、本発明は、着色剤により成形体を着色するためのマスターバッチ組成物、または紫外線吸収剤により紫外線吸収能を有する成形体を製造するためのマスターバッチ組成物として、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)と、25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)と、嵩密度が0.80g/mL以下である充填剤(B)とを含む液状マスターバッチ組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、熱可塑性樹脂(E)100重量部に対し、前記液状マスターバッチ組成物を0.1重量部~5重量部含有する、熱可塑性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物より成形されてなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、成形体形成時にスクリュースリップを生じることのない液状マスターバッチ組成物を提供できる。
さらには、本発明の液状樹脂組成物は、成形体形成時の液状マスターバッチ組成物の配合量を増やした場合にも、スクリュースリップを生じることがないだけでなく、プラスチック成型体の色が無色や薄い色で高い透明性が求められる用途に用いる場合にも、均一に薄い着色ができ、高い透明性を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、及び成形体について詳細を説明するが、これに限定されない。
また、マスターバッチとは、樹脂に高濃度の機能性付与剤(C)等の添加剤を分散させた樹脂組成物であって、成形体の形成時に規定の倍率で主剤樹脂と混合し、プラスチックの成形体に機能を付与する役割を有する。
本発明における、液状マスターバッチ組成物とは、25℃において液状のマスターバッチのことを指す。
【0014】
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0015】
また、本明細書では、25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)、嵩密度が0.40g/mL以下である充填剤(B)をそれぞれ、液体樹脂(A)、充填剤(B)と略記することがある。
【0016】
《液状マスターバッチ組成物》
本発明の液状マスターバッチ組成物は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)と、嵩密度が0.80g/mL以下である充填剤(B)と、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)とを含む。この場合の「液状」とは、25℃において液状であることを指す。
本発明の液状マスターバッチ組成物は、嵩密度の低い充填剤(B)を含むことにより、液体樹脂(A)が充填剤(B)の多孔質構造に吸着することで、高い流動性を維持しながら、粒形状の固体としての性質も併せ持ち、スクリュースリップが生じることを抑制できる。さらに、充填剤が液体樹脂を吸着しやすくなり、屈折率差が減少することにより、着色剤または紫外線吸収剤といった機能性付与剤(C)を含む場合においても、高い透明性の成型体を得ることができる。
このような液状マスターバッチ組成物と、後述する熱可塑性樹脂(E)とを混合して用いることで、透明性の高い成形体を安定して成形することができる。
【0017】
<液体樹脂(A)>
本発明の液体樹脂(A)は、充填剤(B)、及び着色剤(C1)もしくは紫外線吸収剤(C2)を分散する分散媒としての役割を有する。また、本発明の液体樹脂(A)は、25℃における粘度が8,000mPa・s以下であることを特徴とし、10~5,000mPa・sがより好ましく、100~3,000mPa・sが更に好ましい。粘度が3,000mPa・s以下であることにより分散性の点で好ましく、100mPa・s以上であることにより成型適性の点で好ましい。
本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0018】
また、液体樹脂(A)は、液状マスターバッチ組成物100質量%中、液体樹脂(A)を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~80質量%である。この範囲内であることにより、製造時の撹拌および分散工程で流動性を維持でき、マスターバッチ製造適性に優れ、分散性の点で好ましく、それにより、成形体の透明性が高いものとすることができる。
【0019】
また、液体樹脂(A)は、数平均分子量(Mn)が、100~3000であることが好ましく、200~2000であることがより好ましく、500~1500がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましい。Mnが100以上であることによりスクリュースリップ性の点で好ましく、Mnが3000以下であることにより、分散性の点で好ましい。
【0020】
液体樹脂(A)としては、エポキシ系樹脂、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられるが、分散性、透明性の点で脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0021】
[エポキシ系樹脂]
エポキシ系樹脂としては、分子内にエポキシ基を有するエポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油が挙げられる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を用いてもよい。
【0022】
[脂肪酸ポリエステル樹脂]
脂肪酸ポリエステル樹脂としては、脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られるポリエステル樹脂が挙げられる。
【0023】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸であれば、特に制限されるものではなく、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、1種単独で用いても良く、2種以上を用いてもよい。
【0024】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールであれば、特に制限されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を用いても。
【0025】
脂肪酸ポリエステル樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0026】
脂肪酸ポリエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーPN‐170(ADEKA社
製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点-15℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーP-200(ADEKA社製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0027】
[ポリアルキレングリコール樹脂]
ポリアルキレングリコール樹脂は一般的には炭素数が1~6の繰り返し単位を有するアルキレングリコールから構成されることが多いが、25℃における粘度が10,000mPa・s以下である限り、様々なポリアルキレングリコールを使用することができる。相溶性、吸水性、スクリュースリップ性の観点から、炭素数が2~4の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコール樹脂が好ましい。
【0028】
ポリアルキレングリコール樹脂の具体例としては、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。相溶性や吸水性の観点からポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0029】
[ポリエーテルエステル樹脂]
ポリエーテルエステル樹脂は、脂肪酸ポリエステル樹脂にて説明した上記脂肪族多価カルボン酸と上記アルキレングリコールをエステル化させたものである。
【0030】
ポリエーテルエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーRS‐107(ADEKA社製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点-47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(ADEKA社製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点-53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0031】
液体樹脂(A)の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0032】
<充填剤(B)>
本発明に用いられる充填剤(B)は、嵩密度が0.80g/mL以下であり、0.20~0.50g/mL以下であることが更に好ましい。上記の範囲内にあることで、液状マスターバッチ組成物中の液体樹脂(A)が充填剤(B)に吸着しやすくなり、スクリュースリップ性、透明性の点で好ましい。
【0033】
本発明における充填剤(B)は、嵩密度が上記範囲内であれば特に限定されず、無機系充填剤や有機系充填剤のいずれも使用することができる。また、充填剤は1種類であっても複数種類を混合したものであっても。ただし、コストや耐熱性の観点から無機系充填剤であることが好ましい。
無機系充填剤の例としては、金属酸化物、金属水酸化物、ステアリン酸金属塩、炭酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、硫酸塩、タルク、シリカ、マイカ、クレー、ドロマイト等が挙げられる。なかでも、透明性、スクリュースリップ性に優れることから、金属酸化物、ステアリン酸金属塩、タルク、シリカが好ましく、なかでもステアリン酸金属塩が好ましい。
【0034】
金属酸化物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が、金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が、ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等が、炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が、ケイ酸塩としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が、アルミノケイ酸塩としては、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム等が、硫酸塩としては硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム等が挙げられる。
これらのなかでも、透明性、スクリュースリップ性に優れることから、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0035】
有機系充填剤の例としては、カーボンブラック、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、並びにポリ塩化ビニル(PVC)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂からなる粒子などが挙げられる。
【0036】
また、充填剤(B)は、液状マスターバッチ組成物100質量%中、5~25質量%の範囲内であることが好ましく、10~20質量%の範囲内であることが更に好ましい。5質量%以上であることによりスクリュースリップ性の点で好ましく、25質量%以下であることにより、透明性の点で好ましい。
【0037】
<機能性付与剤(C)>
機能性付与剤(C)とは、液状マスターバッチ組成物を用いて得られたプラスチック成型体に色や紫外線吸収性などといった機能を付与する目的で使用する添加剤である。具体的には、着色剤(C1)、紫外線吸収剤(C2)、耐候剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤、難燃剤等が挙げられる。
本発明の液状マスターバッチ組成物は、機能性付与剤(C)として、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)を含有する。これら着色剤(C1)と紫外線吸収剤(C2)は、ともに含んでいてもよいし、その他機能性付与剤(C)を併用してもよい。
【0038】
本発明の液状マスターバッチ組成物は、着色剤(C1)を含むことにより、成形時、プラスチック成形体に任意の色を付与することが可能となる。
また、本発明の液状マスターバッチ組成物は、紫外線吸収剤(C2)を含むことにより、成形時、プラスチック成形体に紫外線吸収性を付与することが可能となる。
【0039】
[着色剤(C1)]
着色剤(C1)は、成形体に任意の色を付与するために用いられ、一般的に染料や顔料として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。
本発明の液状マスターバッチ組成物とすることで、成形体を均一に着色することが可能となり、なかでも、薄い色で高い透明性を要求される場合にも、ムラなく均一に着色された成形体とすることができる。
また、本発明の液状マスターバッチ組成物はスクリュースリップを抑えることができるため、液状マスターバッチ組成物の配合量を増やして成形体を形成することも可能である。
【0040】
着色剤(C1)としては、一般的に染料や顔料として用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、染料としては、例えば、メチン系染料、ペリノン系染料、アントラキノン系染料等が挙げられる。また、顔料としては、例えば、酸化チタン、クロムチタンエイロー、弁柄、群青、カーボンブラック等の無機顔料やアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料が挙げられる。なかでも透明性の点で染料を用いることが好ましい。
【0041】
上記メチン系染料としては例えば、C.I.ソルベントイエロー93、179等が挙げられる。上記ペリノン系染料としては例えば、C.I.ソルベントレッド135、179、上記アントラキノン系染料としては例えば、C.I.ソルベントレッド52、151、ソルベントバイオレット13、36、ソルベントブルー97等が挙げられる。尚、「C.I.」はカラーインデックスを意味する。
【0042】
上記無機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン24、ピグメントレッド101、ピグメントブルー29、ピグメントブラック7等が挙げられる。上記アゾ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー180、181、ピグメントオレンジ64、ピグメントレッド144、166、214、221等が挙げられる。上記キナクリドン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、ピグメントレッド122等が挙げられる。上記ペリレン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド149、178等が挙げられる。上記ジケトピロロピロール系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254等が挙げられる。上記フタロシアニン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。尚、これらの色素は1種単独で用いても2種以上を用いても。
【0043】
また、着色剤(C)の含有率は、液状マスターバッチ組成物100質量%中、0.5~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~20質量%の範囲内であることが更に好ましい。0.5質量%以上であることにより安定した着色効果が期待でき、30質量%以下であることにより、透明性の点で好ましい。
【0044】
[紫外線吸収剤(C2)]
本発明における紫外線吸収剤(C2)とは、成形体に紫外線吸収機能を付与するために用いられ、紫外線吸収機能を有する有機化合物のことである。
本発明の液状マスターバッチ組成物とすることで、成形体を均一に着色することが可能となり、なかでも、無色あるいは着色剤と併用して薄い色で高い透明性を要求される場合にも、透明性に優れた成形体とすることができる。
また、本発明の液状マスターバッチ組成物はスクリュースリップを抑えることができるため、液状マスターバッチ組成物の配合量を増やして成形体を形成することも可能である。
【0045】
紫外線吸収剤(C2)としては、紫外線吸収剤の種類に特に制限はなく、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ジフェニルメタノン系紫外線吸収剤、2-シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤、アントラニレート系紫外線吸収剤、ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤、カンファー誘導体系紫外線吸収剤、ベンザルマロネート誘導体系紫外線吸収剤、レゾルシノール系紫外線吸収剤、オキザリニド系紫外線吸収剤、クマリン誘導体系紫外線吸収剤等が使用できる。中でもコストと紫外線吸収性の点で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0046】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6[(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール等を挙げることができる。なかでも、紫外線吸収性の点で、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノールが好ましい。
【0047】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2,4,6-トリス-(ジイソブチル4’-アミノ-ベンザルマロネート)-s-トリアジン、4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等を挙げることができる。
【0048】
ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-p-フェニレンビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(6-メチル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(6-クロロ-4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(6-メトキシ-4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(6-ヒドロキシ-4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(ナフタレン-2,6-ジイル)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(チオフェン-2,5-ジイル)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)等を挙げることができる。
【0049】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸イソセチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸フェニルなどが挙げられる。
【0050】
ジフェニルメタノン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジフェニルメタノン、メチルジフェニルメタノン、4-ヒドロキシジフェニルメタノン、4-メトキシジフェニルメタノン、4-オクトキシジフェニルメタノン、4-デシルオキシジフェニルメタノン、4-ドデシルオキシジフェニルメタノン、4-ベンジルオキシジフェニルメタノン、4,2′,4′-トリヒドロキシジフェニルメタノン、2′-ヒドロキシ-4,4′-ジメトキシジフェニルメタノン、4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ-ジフェニルメタノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾインエチルエーテルなどが挙げられる。
【0051】
2-シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルα-シアノ-β,β-ジフェニルプロペン酸エステル、イソオクチルα-シアノ-β,β-ジフェニルプロペン酸エステル等が挙げられる。
【0052】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸イソセチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸フェニルなどが挙げられる。
【0053】
アントラニレート系紫外線吸収剤としては、例えば、メンチルアントラニレート等が挙げられる。
【0054】
ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、エチルヘキシルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリル-エチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、メチル-α-カルボメトキシシンナメート、メチル-α-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート等が挙げられる。
【0055】
カンファー誘導体紫外線吸収剤としては、例えば、ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー等が挙げられる。
【0056】
レゾルシノール系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチルベンゾイルレゾルシノール)等が挙げられる。
【0057】
オキザリニド系紫外線吸収剤としては、例えば、4,4′-ジ-オクチルオキシオキザニリド、2,2′-ジエトキシオキシオキザニリド、2,2′-ジ-オクチルオキシ-5,5′-ジ-tert-ブチルオキザニリド、2,2′-ジ-ドデシルオキシ-5,5′-ジ-tert-ブチルオキザニリド、2-エトキシ-2′-エチルオキザニリド、N,N′-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)オキザニリド、2-エトキシ-5-tert-ブチル-2′-エトキシオキザニリド等が挙げられる。
【0058】
クマリン誘導体系紫外線吸収剤としては、例えば、7-ヒドロキシクマリン等が挙げられる。
【0059】
紫外線吸収剤(C2)の含有率としては、液状マスターバッチ組成物100質量%中、1~30質量%が好ましく、5~20質量%が更に好ましい。上記範囲内にあることで、成形体の紫外線吸収性能、および透明性が優れたものとすることができる点で好ましい。
【0060】
<液状マスターバッチ組成物の製造方法>
本発明における液状マスターバッチ組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、液状樹脂(A)と充填剤(B)と、着色剤(C1)または紫外線吸収剤(C2)と、更に必要に応じてその他機能性付与剤または添加剤とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合し、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)を用いて分散することで、液状マスターバッチ組成物を得ることができる。分散装置は、上記以外にもニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル等、任意の装置を使用することができる。成型加工が容易で分散性に優れるといった理由からシルバーソンミキサーやロールミルを用いることが好ましい。
本発明の液状マスターバッチ組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、増粘剤や貯蔵安定剤などの添加剤を含有させることができる。
【0061】
また、液状マスターバッチの製造時に、粗大粒子によるブツやゲル物の発生を抑制できるという点から、液状マスターバッチ組成物の粒度は、100μm未満が好ましく、80μm未満がさらに好ましく、50μm未満が特に好ましい。
【0062】
《成形体》
成形体は、本発明の液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物より成形されてなる。
【0063】
熱可塑性樹脂組成物は、成形体形成用として、例えば、ペレット状、粉末状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状とすることもでき、中でもペレット状が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物をペレット状とするための製造方法としては、押出機による押出成形の後、ペレタイザーを用いてカッティングするといった一般的な方法をとることができ、また、これらのペレット状樹脂組成物を粉砕することで、粉末状あるいは顆粒状の樹脂組成物を得ることができる。同様に、押出成形した後、アンダーウォーターカッター等でカッティングすることにより、ビーズ状とすることができる。
【0064】
また、液状マスターバッチ組成物と熱可塑性樹脂(E)とを溶融混練した熱可塑性樹脂組成物とし、そのまま成形することもできる。
【0065】
このように、液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物を成形加工して成形体を得る際の成形方法は、キャップ等の成型に用いられる射出成型機や、容器やボトルなどの成型に用いられる押出成形機、ブロー成型機などを用いることができ、連続供給ではなく、断続供給である射出成型機がスクリュースリップ性の点で好ましい。
【0066】
また、成型体の形状としては、射出成型の場合はインジェクションボトルやインジェクションプレート等が、押出成形の場合はフィルムやシート等が、ブロー成型の場合やブローボトル等が挙げられる。
【0067】
「熱可塑性樹脂組成物」
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の液状マスターバッチ組成物と、熱可塑性樹脂(E)を含有し、成形体を形成するための樹脂組成物である。
また、熱可塑性樹脂(E)100質量部に対する液状マスターバッチ組成物の含有量は、成型適性及び透明性、スクリュースリップ性の点より、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~2質量部がより好ましい。また、熱可塑性樹脂の種類によっては、5質量部を超える含有量であっても実用可能である。
本発明の液状マスターバッチ組成物は、成形時のスクリュースリップを抑制することができるため、成形時の液状マスターバッチ組成物の配合量が多い場合にも、透明性やムラのない、優れた成形体を形成することができる。
【0068】
<熱可塑性樹脂(E)>
本発明の熱可塑性樹脂(E)は、成形体を形成する際、液状マスターバッチ組成物と一緒に配合して使用する主剤樹脂であって、25℃における粘度が8,000mPa・s以下である液体樹脂(A)は除く。
【0069】
熱可塑性樹脂(E)としては特に制限はなく、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン樹脂や、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、塩化ビニル樹脂またはフッ素樹脂等の樹脂が使用できる。一般に、成型時に高い温度を要するため、耐熱性が高く、また、高い透明性が要求される、Tgの低い樹脂の方が帯電防止性に優れる等の理由から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、またはフッ素樹脂、等が好適に使用できる。
【0070】
液体樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(E)の好ましい組合せとしては、液体樹脂(A)が、ポリアルキレングリコール樹脂である場合、熱可塑性樹脂(E)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリエステル樹脂である。また、液体樹脂(A)が、脂肪族ポリエステル樹脂である場合、熱可塑性樹脂(E)が、ポリカーボネート樹脂である場合が好ましい。
液体樹脂(A)が、ポリアルキレングリコールエステル樹脂である場合、熱可塑性樹脂(E)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリエステル樹脂である。
液体樹脂(A)が、アセチルクエン酸トリブチルである場合、熱可塑性樹脂(E)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリアミド樹脂である。
これらは、アクリル樹脂の中でも、ポリメチルメタクリレート樹脂が好ましい。
【0071】
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、以下に例示する(メタ)アクリル系モノマーを重合することによって得ることができる。モノマーとしては、例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等のビニルエステル、無水マレイン酸、ビニルエーテル、スチレン等が挙げられる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよび/またはメタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を、それぞれ意味する。具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂が好ましい。
【0072】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分(カルボキシル基を有する化合物)と水酸基成分(水酸基を有する化合物)とを重合することによって得ることができる。
【0073】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0074】
ポリエステル樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、1、6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール等のジオールの他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の水酸基を3つ以上有する多官能アルコールが挙げられる。
【0075】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂は、例えば、上述したカルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物を反応させることによって得ることができる。例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて得ることができる。
【0076】
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
【0077】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを反応させることにより容易に製造される。反応は公知の反応、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、また炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法により得ることができる。
【0078】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4´-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
【0079】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0080】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0081】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0082】
[シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂]
COC樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環構造の種類としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好適に用いることができる。ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。
【0083】
COC樹脂の具体例としては、JSR ARTON F4520(JSR社製、ノルボルネン共重合体)等が挙げられる。
【0084】
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂は含フッ素モノマーの共重合によって得ることができる。含フッ素モノマーとしてはフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物や シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。また含フッ素モノマーと共重合するモノマーとしてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物でもよい。フッ素樹脂としては例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)、テトラフルオロエチレンのホモポリマーであるポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE樹脂)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体であるエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE樹脂)等が挙げられる。
【0085】
フッ素樹脂の具体例としてKFポリマーW#1100(クレハ社製、PVDF樹脂)、フルオンPTFE CD123E(旭硝子社製、PTFE樹脂)、フルオンETFE C-55AP(旭硝子社製、ETFE樹脂)等が挙げられる。
【実施例
【0086】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるも
のではない。実施例中、部および%は、特に断りがない場合は、それぞれ、質量部および
質量%を表す。
【0087】
<粘度>
粘度は、JIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0088】
<DSC融点>
DSC融点は、示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度であり、以下の条件で測定を行った。
装置名:セイコーインスツルメンツ社製DSC6200 加熱速度:10℃/分
【0089】
<粒度>
粒度は、JISK5600-2-5に従い、グラインドメーターを用いて25℃で測定した値である。
【0090】
<数平均分子量>
数平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)を2本直列で用いることにより測定されるものである。
【0091】
<粘度平均分子量>
粘度平均分子量とは、溶媒としてメチレンクロライドを用い25℃で測定した溶液粘度より換算された値である。
【0092】
<嵩密度>
嵩密度とは、JIS K5101-12-1:2004に準じ、目開き0.5mmのふるいにかけた後、容量30mLの容器に入れてすりきり、測定した質量より算出した値である。
【0093】
使用した材料を以下に列挙する。
<液体樹脂>
(A1):ユニオールD-1200(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量1200、粘度200mPa・s)
(A2):ユニオールD-400(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度100mPa・s)
(A3):アデカサイザーRS-107(ADEKA社製、エーテルエステル樹脂、アジピン酸エーテルエステル樹脂、数平均分子量430、粘度20mPa・s)
(A4):アデカサイザーPN-6810(ADEKA社製、アセチルクエン酸トリブチル、数平均分子量190、粘度43mPa・s)
(A5):アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量2100、粘度4,500mPa・s)
(A6):アデカサイザーO-130P(ADEKA社製、エポキシ系樹脂、エポキシ化大豆油、数平均分子量1000、粘度280mPa・s)
(A’1):アデカサイザーPN-350(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量4500、粘度10,000mPa・s)
【0094】
<充填剤>
(B1):SM-1000(堺化学工業社製、ステアリン酸マグネシウム、嵩密度:0.21g/mL)
(B2):SC-100(堺化学工業社製、ステアリン酸カルシウム、嵩密度:0.26g/mL)
(B3):SZ-2000(堺化学工業社製、ステアリン酸亜鉛、嵩密度:0.23g/mL)
(B4):微粒子酸化亜鉛(堺化学社製、酸化亜鉛、嵩密度:0.27g/mL)
(B5):軽質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、炭酸カルシウム、嵩密度:0.33g/mL)
(B6):MS-P(日本タルク社製、タルク、嵩密度:0.35g/mL)
(B7):アエロジル300(日本アエロジル社製、シリカ、嵩密度:0.05g/mL)
(B8):シルトンJC-20(水澤化学社製、アルミノケイ酸ナトリウム・アルミノケイ酸カルシウム混合物、嵩密度:0.69g/mL)
(B9):沈降性硫酸バリウム100(堺化学工業社製、硫酸バリウム、嵩密度:0.72g/mL)
(B1’):ゼオライト(ゼオライト、嵩密度:1.00g/mL)
【0095】
<着色剤(C1)>
(C1-1):スミプラストレッドHL2B(住化ケムテックス社製、アントラキノン系染料、ソルベントレッド151)
(C1-2):リオノールブルーCB7801(トーヨーカラー社製、フタロシアニン系有機顔料、ピグメントブルー15:1)
【0096】
<紫外線吸収剤(C2)>
(C2-1):チヌビン326(BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、DSC融点138~142℃)
(C2-2):サイアソーブUV-3638(サンケミカル社製、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、2,2’-(p-フェニレン)ジ-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、DSC融点316℃)
【0097】
<熱可塑性樹脂(E)>
(E1):ポリエステルMA-2101M(ポリエステル樹脂、ユニチカ製、粘度平均分子量20,000)
(E2):ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)
(E3):アクリペットVH(ポリメチルメタクリレート系樹脂、三菱ケミカル社製、粘度平均分子量50,000)
(E4):アミランCM3001-N(ポリアミド樹脂、東レ製、粘度平均分子量50,000)
【0098】
[実施例1]
(液状マスターバッチ組成物(S1-1)の製造)
液体樹脂(A1)75質量部、充填剤(B1)15質量部、および着色剤(C1-1)10質量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散し、液状マスターバッチ組成物(S-1)を得た。
【0099】
[実施例2~18]
(液状マスターバッチ組成物(S1-2~18)の製造)
表1に示した原料及び配合比率(質量%)とした以外は、液状マスターバッチ組成物(S1-1)と同様の方法で液状マスターバッチ組成物(S1-2~18)を得た。
【0100】
[実施例19]
(液状マスターバッチ組成物(S2-1)の製造)
液体樹脂(A1)75質量部、充填剤(B1)15質量部、および紫外線吸収剤(C2)10質量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散し、液状マスターバッチ組成物(S2-1)を得た。
【0101】
[実施例20~36]
(液状マスターバッチ組成物(S2-2~18)の製造)
表2に示した原料及び配合比率(質量%)とした以外は、液状マスターバッチ組成物(S2-1)と同様の方法で液状マスターバッチ組成物(S2-2~18)を得た。
【0102】
[比較例1]
(液状マスターバッチ組成物(S-1)の製造)
液体樹脂(A’1)75質量部、充填剤(B1)15質量部、及び着色剤(C1-1)10質量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散したものの、得られた液状マスターバッチ組成物の粒度は100μm以上であり、実用可能な分散性の液状マスターバッチ組成物を得ることはできなかった。
【0103】
[比較例2~4]
(液状マスターバッチ組成物(S-2~4)の製造)
表2に示した原料及び配合比率(質量%)とした以外は、液状マスターバッチ組成物(S-1)と同様の方法で液状マスターバッチ組成物(S-2~4)を得た。
【0104】
<液状マスターバッチ組成物の評価>
得られた液状マスターバッチ組成物の製造適性について、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表1、2に示す。
【0105】
(分散性評価)
得られた液状マスターバッチ組成物の粒度を測定し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:粒度が50μm未満であり、良好
△:粒度が50μm以上100μm未満で実用可能
×:粒度が100μm以上であり、不可
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
[実施例37]
(インジェクション(INJ)プレート(SA1-1)の製造)
液状マスターバッチ組成物(S1-1)100質量部、及び熱可塑性樹脂(E1)9900質量部を混合し、下記射出成型機を用いて、280℃で射出成形し、厚さ2.6mmのINJプレート(SA1-1)を得た。
成型機:日精樹脂工業社製射出成型機「PNX60-5A」
成型温度:280℃
成型重量:約24g
【0110】
[実施例38~59]
(INJプレート(SA1-2~24)の製造)
表4に示した原料及び配合量(質量部)とした以外は、INJプレート(SA1-1)と同様の方法でINJプレート(SA1-2~24)を得た。
【0111】
[実施例60]
(インジェクション(INJ)プレート(SA2-1)の製造)
液状マスターバッチ組成物(S2-1)1質量部、及び熱可塑性樹脂(E1)100質量部を混合し、下記射出成型機を用いて、280℃で射出成形し、厚さ2.6mmのINJプレート(SA1-1)を得た。
成型機:日精樹脂工業社製射出成型機「PNX60-5A」
成型温度:280℃
成型重量:約24g
【0112】
[実施例61~82]
(INJプレート(SA2-2~23)の製造)
表5に示した原料及び配合量(質量部)とした以外は、INJプレート(SA2-1)と同様の方法でINJプレート(SA2-2~23)を得た。
【0113】
[比較例5]
(INJプレート(SA-1)の製造)
液状マスターバッチ組成物(S-1)の粒度が100μm以上と大きく、分散性が悪かったため、INJプレート(SA-1)の製造は実施しなかった。
【0114】
[比較例6]
(INJプレート(SA-2)の製造)
液状マスターバッチ組成物(S-2)100質量部、及び熱可塑性樹脂(E1)9900質量部を混合し、下記射出成型機を用いて、280℃で射出成形し、厚さ2.6mmのINJプレート(SA-2)を得た。
成型機:日精樹脂工業社製射出成型機「PNX60-5A」
成型温度:280℃
成型重量:約24g
【0115】
[比較例7~8]
(INJプレート(SA-3、及びSA-4)の製造)
表6に示した原料及び配合量(質量部)とした以外は、INJプレート(SA-2)と同様の方法でINJプレート(SA-3、及びSA-4)を得た。
【0116】
<INJプレートの評価>
得られたINJプレートを用いて、HAZE(透明性)、ΔT値(スクリュースリップ性)を、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表4~6に示す。
【0117】
(透明性評価)
作製したINJプレートを23℃‐65%RH雰囲気下で24時間静置し、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて、HAZE(%)を測定し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:5%未満であり、良好
△:5%以上、10%未満であり、実用可能
×:10%以上であり、不可
【0118】
(スクリュースリップ性評価)
表4~6記載の配合比で液状マスターバッチ組成物および熱可塑性樹脂を混合し、インジェクション成型機を用いて10ショット成型し、計量時間の平均値(T1)を算出する。熱可塑性樹脂(E1)のみで同様にして得られた計量時間の平均値(T2)との差(ΔT=T1-T2)から、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:ΔTが3未満であり、良好
△:ΔTが3以上8未満で実用可能
×:ΔTが8以上であり、不可
【0119】
(分配性評価)
作製したINJプレートを用いて、色ムラの有無を目視で観察し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:色ムラがなく均一に着色されており、良好
×:色ムラが確認でき、不可
【0120】
(紫外線吸収性評価)
作製したINJプレートを用いて、分光透過率を測定し、測定波長380nmにおける透過率の値から、下記基準で評価を行った。
測定機:島津製作所社製分光光度計「UV-3150」
[評価基準]
〇:380nmにおける透過率が10%未満であり、良好
△:380nmにおける透過率が10%以上30%未満であり、実用可能
×:380nmにおける透過率が30%以上であり、不可
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
表1~5に示すように、本発明の液状マスターバッチ組成物は、特定の充填剤(B)を含む常温で液状の樹脂組成物であることにより、成形時にスクリュースリップを生じることなく、また成形時の液状マスターバッチ組成物の配合量を増やした場合にも、スクリュースリップを抑制することができ、かつ透明性に優れた成形体であった。