(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240702BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20240702BHJP
B65H 63/06 20060101ALI20240702BHJP
G01N 21/952 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N21/892 C
G01M11/00 G
B65H63/06 B
G01N21/952
(21)【出願番号】P 2020121339
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智哉
(72)【発明者】
【氏名】久保 祐介
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 茂樹
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-069625(JP,A)
【文献】特開2019-137599(JP,A)
【文献】特開2006-126174(JP,A)
【文献】特開2004-012414(JP,A)
【文献】米国特許第06633377(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 6/02
B65H 55/00 - B65H 55/04
B65H 61/00 - B65H 63/08
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光部と、受光部と、前記投光部と前記受光部とにより線状体の表面の凹凸を光学的に検出する検出空間と、第一のガイドローラと、第二のガイドローラと、がカバーにより覆われており、
前記カバー内に清浄気体を供給して、
前記カバーに設けられた入線側開口部から前記カバー内に前記線状体を入線させ、
前記カバー内に入線された前記線状体を前記第一のガイドローラで前記検出空間へ案内し、
前記検出空間を走行する前記線状体に対して前記投光部から光を投光し、該投光した光を前記受光部で受光して、前記線状体の表面の凹凸を光学的に検出し、
前記検出空間を通過した前記線状体を前記第二のガイドローラで前記カバーに設けられた出線側開口部へ案内
し、
前記入線側開口部から、前記カバーの外に前記清浄気体を噴出させ、
前記入線側開口部から噴出する前記清浄気体の流速が、前記入線側開口部から入線する前記線状体の線速よりも大きい、
線状体の凹凸検出方法。
【請求項2】
前記第一のガイドローラおよび前記第二のガイドローラは、それぞれV字状の周溝を有し、
前記周溝は、V字を形成する第一側面と第二側面とを備え、
前記第一側面と前記第二側面とが、走行する前記線状体に接触するように形成されている、
請求項1記載の線状体の凹凸検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行する線状体に対して光を投光し、該投光した光を受光して線状体表面の凹凸を光学的に検出する線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法が開示されている。
特許文献2には、ガラスファイバが樹脂で被覆された光ファイバの走行をガイドするガイドローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-12414号公報
【文献】特開2013-28513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線状体、例えば光ファイバにおいて、被覆を施した光ファイバ素線や、着色層が被覆された光ファイバ心線等の外周には、局所的に微小の凹凸が発生することがある。このような凹凸があると、着色工程やテープ化工程において、凹凸による異物がダイス穴に詰まってしまうことがある。その場合、塗布不良や線状体の断線等の不具合が発生するため、この凹凸を検出する必要がある。そのため、線状体の凹凸を光学的に検出する線状体の凹凸検出装置が用いられている(例えば特許文献1)。
【0005】
上記のような線状体の凹凸検出装置では、浮遊塵によって光が遮られたり散乱したりして、線状体の凹凸が誤検出されるおそれがある。そのため、例えば特許文献1に開示された線状体の凹凸検出装置では、検出空間をカバーで覆い、上記カバー内に清浄気体を供給して、検出空間へ浮遊塵が侵入することを抑制している。
【0006】
また、異物が付着した状態で線状体が検出空間に入るおそれもあり、この場合も線状体の凹凸が誤検出されるおそれがある。そのため、検出空間に入る前の線状体に清浄気体を強く吹き付けて、異物を吹き飛ばすことが考えられる。ところが、異物を除去しようとして清浄気体の流量を増加すると、線状体が清浄気体の流れの影響を受けて、線振れが大きくなる。そして、その線振れを凹凸として誤検出するおそれもある。
線状体製造の効率化のため、製造時の線速を大きくすることが望ましいが、線状体の線速を大きくすると、線振れが大きくなる。また、線状体の線速を大きくすると、線状体と共に異物が検出空間に入る可能性も大きくなってしまう。
【0007】
本開示は、検査する線状体に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる、線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る線状体の凹凸検出装置は、走行する線状体に対して光を投光する投光部と、
該投光部から投光した光を受光する受光部と、
前記投光部と前記受光部との間の検出空間を通過する前記線状体に対して、上流側の走行を案内する第一のガイドローラと、
前記検出空間を通過する前記線状体に対して、下流側の走行を案内する第二のガイドローラと、
前記投光部と前記受光部と前記第一のガイドローラと第二のガイドローラと、を覆うカバーと、
清浄気体を前記カバー内に供給する供給部と、
を有し、
前記カバーには、前記供給部に連通された給気部と、前記線状体が入線する入線側開口部と、前記線状体が出線する出線側開口部とが設けられている。
【0009】
本開示の一態様に係る線状体の凹凸検出方法は、投光部と、受光部と、前記投光部と前記受光部とにより線状体の表面の凹凸を光学的に検出する検出空間と、第一のガイドローラと、第二のガイドローラと、がカバーにより覆われており、
前記カバー内に清浄気体を供給して、
前記カバーに設けられた入線側開口部から前記カバー内に前記線状体を入線させ、
前記カバー内に入線された前記線状体を前記第一のガイドローラで前記検出空間へ案内し、
前記検出空間を走行する前記線状体に対して前記投光部から光を投光し、該投光した光を前記受光部で受光して、前記線状体の表面の凹凸を光学的に検出し、
前記検出空間を通過した前記線状体を前記第二のガイドローラで前記カバーに設けられた出線側開口部へ案内する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、検査する線状体に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る線状体の凹凸検出装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図1における検出部のA-A線の模式的な断面図である。
【
図3】第一のガイドローラまたは第二のガイドローラの断面図である。
【
図4】第一のガイドローラまたは第二のガイドローラの周溝の断面図である。
【
図5】一般的な従来のガイドローラの周溝の断面図である。
【
図6】カバーの入線側開口部における、清浄気体の噴出よる浮遊塵等の異物の挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る線状体の凹凸検出装置は、
(1) 走行する線状体に対して光を投光する投光部と、
該投光部から投光した光を受光する受光部と、
前記投光部と前記受光部との間の検出空間を通過する前記線状体に対して、上流側の走行を案内する第一のガイドローラと、
前記検出空間を通過する前記線状体に対して、下流側の走行を案内する第二のガイドローラと、
前記投光部と前記受光部と前記第一のガイドローラと第二のガイドローラと、を覆うカバーと、
清浄気体を前記カバー内に供給する供給部と、
を有し、
前記カバーには、前記供給部に連通された給気部と、前記線状体が入線する入線側開口部と、前記線状体が出線する出線側開口部とが設けられている。
上記の線状体の凹凸検出装置によれば、検出空間は、清浄気体が供給されたカバーの中にあるので、浮遊塵等の異物が入ることを抑制できる。さらに、検出空間を通過する前後でそれぞれ線状体を案内するガイドローラ(第一のガイドローラおよび第二のガイドローラ)も、清浄気体が供給されたカバーの中にある。これにより、供給される清浄気体の風圧による線状体の線振れを抑えて、両ガイドローラによって検出空間における線状体の走行を安定させることができる。よって、検出空間で検査される線状体に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる。
【0013】
(2) 前記第一のガイドローラおよび前記第二のガイドローラは、それぞれV字状の周溝を有し、
前記周溝は、V字を形成する第一側面と第二側面とを備え、
前記第一側面と前記第二側面とが、走行する前記線状体に接触するように形成されていてもよい。
上記の線状体の凹凸検出装置によれば、両ガイドローラ(第一のガイドローラおよび第二のガイドローラ)は、周溝で走行する線状体を挟み込むようにすることができるので、線状体の線振れを抑制することができる。
【0014】
本開示の一態様に係る線状体の凹凸検出方法は、
(3) 投光部と、受光部と、前記投光部と前記受光部とにより線状体の表面の凹凸を光学的に検出する検出空間と、第一のガイドローラと、第二のガイドローラと、がカバーにより覆われており、
前記カバー内に清浄気体を供給して、
前記カバーに設けられた入線側開口部から前記カバー内に前記線状体を入線させ、
前記カバー内に入線された前記線状体を前記第一のガイドローラで前記検出空間へ案内し、
前記検出空間を走行する前記線状体に対して前記投光部から光を投光し、該投光した光を前記受光部で受光して、前記線状体の表面の凹凸を光学的に検出し、
前記検出空間を通過した前記線状体を前記第二のガイドローラで前記カバーに設けられた出線側開口部へ案内する。
上記の線状体の凹凸検出方法によれば、清浄気体が供給されたカバーの中にある検出空間で、線状体の表面の凹凸を検出するので、浮遊塵等の異物が検出空間に入ることを抑制できる。また、検出空間の前後のガイドローラ(第一のガイドローラおよび第二のガイドローラ)もカバーにより覆われている。これにより、供給される清浄気体の風圧による線状体の線振れを抑えて、両ガイドローラによって検出空間における線状体の走行を安定させることができる。よって、検出空間で検査される線状体に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる。
【0015】
(4) 前記入線側開口部から、前記カバーの外に前記清浄気体を噴出させてもよい。
上記の線状体の凹凸検出方法によれば、カバーにおける線状体の入線側開口部から、カバーの外に清浄気体を噴出させながら、線状体の表面の凹凸を検出する。これにより、浮遊塵等の異物が入線側開口部から線状体の牽引流によってカバーの中に入ることを抑制することができる。
【0016】
(5) 前記入線側開口部から噴出する前記清浄気体の流速が、前記入線側開口部から入線する前記線状体の線速よりも大きくてもよい。
上記の線状体の凹凸検出方法によれば、入線側開口部から噴出する清浄気体の流速が、入線側開口部から入線する線状体の線速よりも大きいので、浮遊塵等の異物が入線側開口部から線状体の牽引流によってカバーの中に入ることをより確実に抑制することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
図1は、本開示の実施形態に係る線状体の凹凸検出装置の一例を示す概略構成図である。
図2は、検出部10のA-A線の模式的な断面図である。
図1に示すように、本例の線状体の凹凸検出装置1は、検出部10と、第一のガイドローラ20と、第二のガイドローラ30と、カバー40と、供給部50とを備えている。
【0019】
検出部10は、走行する光ファイバ心線2(線状体の一例)が、検出部本体11によって囲まれるように形成された検出空間12の中央に位置するように設けられている。光ファイバ心線2は、線引き工程によって作製された光ファイバに複数の樹脂層が被覆されており、さらにその外周に着色層が被覆された構成である。
【0020】
検出部10は、投光部13および受光部14を2対備えている。これらは、1つの投光部13に対してそれぞれ1つの受光部14が対向するように配置されている。検出部本体11の内部には、受光部14に接続された判別部(図示せず)が設けられている。この判別部は、受光部14に受光された受光量のデータを継続して読み取るとともに、その直前までの一定時間に蓄積された受光量の平均値を算出し、読み取り値との差分を演算する。そして、差分量が予め設定された一定量を超えた時に、凹凸検出の信号を出力する。
【0021】
第一のガイドローラ20は、検出空間12を通過する光ファイバ心線2に対して、光ファイバ心線2が走行する方向の上流側(以下、単に上流側と称する)の走行を案内するように設けられている。第二のガイドローラ30は、検出空間12を通過する光ファイバ心線2に対して、光ファイバ心線2が走行する方向の下流側(以下、単に下流側と称する)の走行を案内するように設けられている。
【0022】
カバー40は、検出部10と、第一のガイドローラ20と、第二のガイドローラ30と、を覆うように設けられている。供給部50は、カバー40の外部に設けられており、清浄気体3を矢印で示すようにカバー40内に供給している。
【0023】
カバー40には、上流側の側面40aに、光ファイバ心線2が入線する入線側開口部41が設けられている。下流側の側面40bには、光ファイバ心線2が出線する出線側開口部42が設けられている。また、側面40bには、供給部50に連通された給気部43が設けられている。
【0024】
図3は、第一のガイドローラ20(第二のガイドローラ30)の断面図である。
図4は、光ファイバ心線2が走行している状態における第一のガイドローラ20(第二のガイドローラ30)の周溝の断面図である。
【0025】
図3に示すように、第一のガイドローラ20および第二のガイドローラ30は、それぞれV字状の周溝21(31)を有している。周溝21(31)は、V字を形成する第一側面22(32)と第二側面23(33)とを備えている。
図4に示すように、第一のガイドローラ20(第二のガイドローラ30)は、第一側面22(32)と第二側面23(33)とからなる挟角が鋭角になるように形成されており、底面24(34)の幅W1は、光ファイバ心線2の外径Rより小さくなっている。なお、光ファイバ心線2の外径は0.2mm程度である。したがって、第一側面22(32)と第二側面23(33)とは、走行する光ファイバ心線2に接触するように形成されている。
【0026】
本実施形態に係る線状体の凹凸検出装置1で使用されるガイドローラ(第一のガイドローラ20、第二のガイドローラ30)と従来のガイドローラとの周溝の構造を比較するため、一般的な従来のガイドローラ120の周溝121の断面を
図5に示す。
【0027】
図5に示すように、従来のガイドローラ120は、周溝121の底部124の幅W2が、光ファイバ心線2の外径Rよりも大きくなっている。これは、周溝121の側面122,123を鋭角に形成するには、高精度の機械加工が要求されるため、周溝121の底部124を狭く形成することが難しいためである。このため、従来のガイドローラ120を用いて光ファイバ心線2を走行させた場合、周溝121の側面122,123の間で走行位置が動いて、ふらつくように走行するおそれがある。このため、光ファイバ心線2の走行時に、線振れが生じるおそれがある。
【0028】
上記の従来のガイドローラ120に対して、第一のガイドローラ20(第二のガイドローラ30)は、第一側面22(32)と第二側面23(33)とは、走行する光ファイバ心線2に接触するように形成されている。これにより、周溝21(31)で走行する光ファイバ心線2を挟み込むようにすることができる。したがって、光ファイバ心線2の走行時の線振れを抑制することができる。
【0029】
次に、
図1~
図4を参照して、光ファイバ心線(線状体の一例)2の凹凸検出方法について説明する。
本例では、着色工程で着色層が被覆された光ファイバ心線2に対して、着色層の凹凸を検出する。まず、
図1の矢印で示すように清浄気体3をカバー40内に供給する。カバー40内が清浄気体3で満たされた後に、入線側開口部41からカバー40内に光ファイバ心線2を入線させる。カバー40内に入線された光ファイバ心線2を第一のガイドローラ20で検出空間12へ案内する。検出空間12を走行する光ファイバ心線2に対して投光部13から光を投光し、投光した光を受光部14で受光して、光ファイバ心線2の表面の凹凸を光学的に検出する。
【0030】
具体的には、2つの投光部13から光ファイバ心線2に対して帯状にレーザ光(投光する光の一例)を投光する。また、1つの投光部13に対してそれぞれ1つの受光部14が対向するように配置され、受光部14は光ファイバ心線2の周囲を通過したレーザ光を受光する。したがって、受光部14は、投光部13から投光した光のうち、光ファイバ心線2によって遮られた光の分だけ少ない光量を受光する。
【0031】
判別部(図示せず)は、受光部14に受光された受光量のデータを継続して読み取るとともに、その直前までの一定時間に蓄積された受光量の平均値を算出し、読み取り値との差分を演算する。この差分量が予め設定された一定量を超えた時に、凹凸検出の信号を出力する。
【0032】
投光された光ファイバ心線2の表面に凹凸が無いときには、受光部14によって受光されるレーザ光が一定量であるが、表面に凹凸のある部分が検出空間12に進入して投光されると、光ファイバ心線2によって遮蔽される光量が変化する。これにより、受光部14に受光されるレーザ光の光量が変化して、凹凸の存在を検出する。
【0033】
検出空間12を通過した光ファイバ心線2を、第二のガイドローラ30で出線側開口部42へ案内する。これにより、光ファイバ心線2は出線側開口部42から、カバー40の外部に出線し、例えば図示しない巻き取り用のドラムに巻き取られる。
【0034】
また、
図6に示すように、上記の光ファイバ心線2の凹凸検出の実行中に、カバー40の側面40aに設けられた入線側開口部41から、カバー40の外に清浄気体3を噴出させている。このとき、入線側開口部41から噴出させる清浄気体3の流速は、入線側開口部41から矢印Bで示す方向に牽引されて入線する光ファイバ心線2の線速よりも大きい。すなわち、供給部50からの清浄気体3の供給量が大きいので、カバー40内が加圧された状態になっている。
【0035】
入線側開口部41から噴出する清浄気体3の流速が、入線側開口部41から入線する光ファイバ心線2の線速よりも大きい。そのため、
図6の矢印Cで示すように、浮遊塵等の異物4が入線側開口部41から、光ファイバ心線2の牽引流によってカバー40の中に入ることを抑制することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る線状体の凹凸検出装置1および凹凸検出方法によれば、検出空間12は、清浄気体3が供給されたカバー40の中にあるので、浮遊塵等の異物4が入ることを抑制できる。さらに、検出空間12を通過する前後でそれぞれ光ファイバ心線2を案内するガイドローラ(第一のガイドローラ20および第二のガイドローラ30)も、清浄気体3が供給されたカバー40の中にある。これにより、供給される清浄気体3の風圧による光ファイバ心線2の線振れを抑えて、両ガイドローラ20,30によって検出空間12における光ファイバ心線2の走行を安定させることができる。よって、検出空間12で検査される光ファイバ心線2に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる。
【0037】
(実施例)
実施例では、本実施形態に係る線状体の凹凸検出装置1を用いて、上記の本実施形態に係る線状体の凹凸検出方法によって、光ファイバ心線2の凹凸を検出した。
比較例では、従来の線状体の凹凸検出装置を用いて、光ファイバ心線2の凹凸を検出した。この比較例における線状体の凹凸検出装置は、本実施形態に係る線状体の凹凸検出装置1の第一のガイドローラ20および第二のガイドローラ30を、
図5で示した周溝121を備えた従来のガイドローラ120に替え、カバー40を取り外し、検出部10のみをカバーで覆った構造に相当するものである。
【0038】
上記実施例および比較例において、光ファイバ心線2の線振れ量と誤検出発生頻度を測定した。測定時は、供給部50からの清浄気体3の供給量を0.5m3/分とした。そして、入線側開口部41および出線側開口部42を、φ10mmの円形の開口とした。これにより、入線側開口部41および出線側開口部42から噴出する清浄気体3の流速は、3183m/分となった。
【0039】
測定は次のようにして実施した。着色層が被覆されている光ファイバ心線2を、上記実施例および比較例の線状体の凹凸検出装置でそれぞれ1000km走行させた。そして、光ファイバ心線2の表面(着色層)の凹凸が、検出部10で検出された時点で光ファイバ心線2を切断し、当該箇所に凹凸が有るか否かを触診によって確認した。この確認の際に、凹凸が無かった場合は誤検出とし、この誤検出の回数をカウントした。また、検出部10によって、走行する線振れの量を測定した。
【0040】
比較例は、光ファイバ心線2の線速を、1000m/分とした場合と、1500m/分とした場合の2通りの線速でそれぞれ測定を行った。
実施例は、光ファイバ心線2の線速を、1500m/分として測定を行った。
下記の表1では、比較例における、光ファイバ心線2の線速が1000m/分の場合での測定結果を1.0(基準)として、この基準に対して線振れ量と誤検出発生頻度(光ファイバ心線2を1000km走行させた際の誤検出の回数)を表した。
【0041】
【0042】
表1の結果に示すように、実施例は、光ファイバ心線2の線速が比較例と同じ場合と比べて、線振れ量および誤検出発生頻度が小さくなった。そして、表1の比較例の結果からわかるように、同じ装置であれば、光ファイバ心線2の線速が速くなると線振れ量および誤検出発生頻度は大きくなる。実施例は、比較例の光ファイバ心線2の線速が実施例よりも遅い場合と比べても、線振れ量および誤検出発生頻度が小さくなった。
【0043】
上記のように、実施例は比較例よりも線振れ量が小さいので、検出空間12における光ファイバ心線2の走行が安定している。また、実施例は比較例よりも誤検出発生頻度が小さいので、検出空間12で検査される光ファイバ心線2に対する凹凸の誤検出を少なくすることができる。さらに、実施例は光ファイバ心線2の線速が遅い場合よりも、線振れ量および誤検出発生頻度が小さいので、光ファイバ心線2の凹凸検査を高速に行うことが可能である。
【0044】
上記実施形態では、着色層が被覆された光ファイバ心線を線状体としたが、本開示はこれに限定されない。本開示に係る線状体の凹凸検出装置及び凹凸検出方法における線状体は、例えば、被覆が施された光ファイバ素線、光ファイバ心線がテープ樹脂で連結された光ファイバテープ心線、被覆が施された金属線等の線状体であってもよい。すなわち、これらの被覆やテープ樹脂の凹凸の検出にも適用できる。
【0045】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:凹凸検出装置
2:光ファイバ心線(線状体の一例)
3:清浄気体
4:異物
10:検出部
11:検出部本体
12:検出空間
13:投光部
14:受光部
20:第一のガイドローラ
30:第二のガイドローラ
21、31:周溝
22、32:第一側面
23、33:第二側面
24、34:底面
40:カバー
40a、40b:カバーの側面
41:入線側開口部
42:出線側開口部
43:給気部
50:供給部