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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像認識装置および画像認識方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240702BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020121872
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018634
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小倉 卓也
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061106(WO,A1)
【文献】特開2009-163555(JP,A)
【文献】特開2018-018234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、前記区画の人物スコアを算出する検索処理部と、
前記検索処理部により検索された前記区画の位置および大きさに基づいて、前記検索処理部により算出された前記区画の人物スコアを調整する調整処理部と、
前記調整処理部により調整された前記区画の人物スコアに基づいて、前記区画に人物が存在するか否かを判定する判定処理部と、を備え
前記調整処理部は、前記区画の大きさが、前記区画の位置に応じて定められる前記区画に存在する人物の大きさの適正範囲内に含まれない場合、前記区画に人物が存在する可能性が低くなるように前記人物スコアを調整することを特徴とする画像認識装置。
【請求項2】
撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、前記区画の人物スコアを算出する検索処理部と、
前記検索処理部により検索された前記区画の位置および大きさに基づいて、前記検索処理部により算出された前記区画の人物スコアを調整する調整処理部と、
前記調整処理部により調整された前記区画の人物スコアに基づいて、前記区画に人物が存在するか否かを判定する判定処理部と、を備え
前記調整処理部は、前記区画の下端部が前記撮像画像における消失点よりも上側に位置する場合、前記区画に人物が存在する可能性が低くなるように前記人物スコアを調整することを特徴とする画像認識装置。
【請求項3】
撮像画像を取得するステップと、
前記撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、前記区画の人物スコアを算出するステップと、
前記検索された前記区画の大きさが、前記区画の位置に応じて定められる前記区画に存在する人物の大きさの適正範囲内に含まれない場合、前記区画の前記区画に人物が存在する可能性が低くなるように、前記算出された前記区画の人物スコアを調整するステップと、
前記調整された前記区画の人物スコアに基づいて、前記区画に人物が存在するか否かを判定するステップと、を備えることを特徴とする画像認識方法。
【請求項4】
撮像画像を取得するステップと、
前記撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、前記区画の人物スコアを算出するステップと、
前記検索された前記区画の下端部が前記撮像画像における消失点よりも上側に位置する場合、前記区画に人物が存在する可能性が低くなるように、前記算出された前記区画の人物スコアを調整するステップと、
前記調整された前記区画の人物スコアに基づいて、前記区画に人物が存在するか否かを判定するステップと、を備えることを特徴とする画像認識方法。
【請求項5】
撮像画像を取得する機能と、
前記撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、前記区画の人物スコアを算出する機能と、
前記検索された前記区画の大きさが、前記区画の位置に応じて定められる前記区画に存在する人物の大きさの適正範囲内に含まれない場合、前記区画の前記区画に人物が存在する可能性が低くなるように、前記算出された前記区画の人物スコアを調整するステップと、
前記調整された前記区画の人物スコアに基づいて、前記区画に人物が存在するか否かを判定する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像認識装置および画像認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲を撮像した画像から歩行者などの対象物を認識辞書を用いて検出する技術が知られている。例えば、認識辞書を用いて歩行者の頭部を検出し、歩行者の接地位置を特定し、接地位置に基づいて歩行者までの距離を算出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-018234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像認識によって歩行者などの人物を検出する場合、縦長の形状であることや、上部に円形の頭部が存在することなどが特徴として用いられる。この場合、同様の特徴を有する街灯や道路標識などを人物として誤認識する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、認識辞書に基づく画像認識処理において人物の検出精度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の画像認識装置は、撮像画像を取得する画像取得部と、撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、その区画の人物スコアを算出する検索処理部と、検索処理部により検索された区画の位置および大きさに基づいて、検索処理部により算出された区画の人物スコアを調整する調整処理部と、調整処理部により調整された区画の人物スコアに基づいて、その区画に人物が存在するか否かを判定する判定処理部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、画像認識方法である。この方法は、撮像画像を取得するステップと、撮像画像において人物が存在する可能性を示す人物スコアが基準値以上となる区画を人物認識辞書を用いて検索し、その区画の人物スコアを算出するステップと、検索された区画の位置および大きさに基づいて、算出された区画の人物スコアを調整するステップと、調整された区画の人物スコアに基づいて、その区画に人物が存在するか否かを判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、認識辞書に基づく画像認識処理において人物の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る画像認識装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2】画像取得部が取得する撮像画像の例を示す図である。
図3】出力部が生成する出力画像の例を示す図である。
図4】撮像画像における人物の妥当な位置および大きさを模式的に示す図である。
図5】人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図である。
図6】人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図である。
図7】人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図である。
図8】実施の形態に係る画像認識方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、図面において、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
本実施の形態を詳細に説明する前に概要を示す。本実施の形態は、取得した画像に人物が存在する否かを人物認識辞書を用いて判定する画像認識装置である。画像認識装置は、例えば車両に搭載され、車両前方を撮像した画像を取得する。画像認識装置は、取得した画像に基づいて、歩行者やサイクリスト(自転車に乗っている人)などの人物を検出する。本実施の形態では、人物が検出される区画の位置や大きさに基づいて、人物が存在する可能性を示す人物スコアを調整することにより、人物の検出精度を高める。
【0012】
図1は、実施の形態に係る画像認識装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。画像認識装置10は、画像取得部12と、認識処理部14と、判定処理部16と、出力部18と、認識辞書記憶部20と、を備える。本実施の形態では、画像認識装置10が車両に搭載される場合について例示する。
【0013】
本実施形態において示される各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
画像取得部12は、カメラ26が撮像した撮像画像を取得する。カメラ26は、車両に搭載され、車両の周囲の画像を撮像する。カメラ26は、例えば、車両の前方の画像を撮像する。カメラ26は、車両の後方を撮像してもよいし、車両の側方を撮像してもよい。
【0015】
カメラ26は、車両の周囲の赤外線を撮像するよう構成される。カメラ26は、いわゆる赤外線サーモグラフィであり、車両の周辺の温度分布を画像化し、車両の周辺に存在する熱源を特定できるようにする。カメラ26は、波長2μm~5μm程度の中赤外線を検出するよう構成されてもよいし、波長8μm~14μm程度の遠赤外線を検出するよう構成されてもよい。なお、カメラ26は、可視光を撮像するよう構成されてもよい。カメラ26は、赤色、緑色および青色のカラー画像を撮像するよう構成されてもよいし、可視光のモノクロ画像を撮像するよう構成されてもよい。
【0016】
図2は、画像取得部12が取得する撮像画像30の例を示す。図2は、交差点で停車中の車両の前方を赤外線カメラで撮像したときの画像を示し、車両の前方の横断歩道を渡っている歩行者30aやサイクリスト30bなどの人物が撮像画像30に存在する。
【0017】
認識処理部14は、画像取得部12が取得する撮像画像の一部区画に所定の対象物が含まれる可能性を示す認識スコアを算出する。認識処理部14は、例えば、図2の歩行者30aが含まれる区画を特定し、特定した区画に人物が存在する可能性を示す人物スコアを算出する。人物スコアは、例えば0~1の範囲で算出され、人物が存在する可能性が高いほど大きな数値(つまり、1に近い値)となり、人物が存在する可能性が低いほど小さな数値(つまり、0に近い値)となる。
【0018】
本実施の形態では、所定の対象物が人物であり、認識スコアが人物スコアである場合を例として説明するが、本実施の形態は、「人物」を「所定の対象物」に置き換え、「人物スコア」を「認識スコア」に置き換えることで一般化することができる。所定の対象物は、人物以外の対象物であってもよく、動物や車両であってもよい。
【0019】
判定処理部16は、認識処理部14により算出される人物スコアに基づいて、撮像画像30に人物が存在するか否かを判定する。判定処理部16は、人物スコアが所定の基準値以上である区画が存在する場合、人物スコアが基準値以上である区画に人物が存在すると判定する。判定処理部16は、人物スコアが基準値以上である区画が存在しない場合、人物が存在しないと判定する。
【0020】
出力部18は、判定処理部16の判定結果に基づく情報を出力する。出力部18は、判定処理部16により人物が存在すると判定された場合、検出した人物を強調する枠などを付加した出力画像を生成する。出力部18が生成する出力画像は、ディスプレイなどの外部装置28に表示される。出力部18は、判定処理部16により人物が存在すると判定された場合、警告音声を生成してもよい。出力部18が生成する警告音声は、スピーカなどの外部装置28から出力される。画像認識装置10は、外部装置28を備えてもよいし、外部装置28を備えなくてもよい。
【0021】
図3は、出力部18が生成する出力画像38の例を示す図である。出力画像38は、撮像画像30に検出枠38a,38bを重畳したものである。出力画像38の第1検出枠38aは、撮像画像30に存在する歩行者30aに対応する位置に重畳される。出力画像38の第2検出枠38bは、撮像画像30に存在するサイクリスト30bに対応する位置に重畳される。
【0022】
認識辞書記憶部20は、認識処理部14が人物スコアの算出に用いる人物認識辞書データを記憶する。人物認識辞書データは、画像を入力とし、人物スコアを出力とするモデルを用いた機械学習によって生成される。機械学習に用いるモデルとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などを用いることができる。認識辞書記憶部20は、人物以外の対象物を画像認識するための認識辞書データを記憶してもよい。
【0023】
認識処理部14は、検索処理部22と、調整処理部24とを含む。検索処理部22は、撮像画像30の一部区画を切り出し、切り出した区画に人物が含まれる可能性を示す人物スコアを算出する。検索処理部22は、切り出しする区画の位置および大きさを変えて人物スコアを順次算出することで、人物スコアが基準値以上である区画を検索する。検索処理部22は、人物認識辞書データを用いた画像認識処理によって人物スコアを算出する。検索処理部22は、例えば、人物認識辞書データを読み込んでモデルを生成し、切り出した区画の画像データをモデルに入力し、入力した区画の人物スコアをモデルに出力させる。
【0024】
検索処理部22によって切り出される区画の形状は、人物認識辞書データに応じて予め定められている。本実施の形態に係る人物認識辞書では、切り出される区画が長方形であり、区画の縦方向および横方向の画像サイズの比率が約2:1となるように定められている。切り出される区画の形状は、例えば、人物認識辞書データを生成するための機械学習において使用された学習用画像の縦方向および横方向の画像サイズに対応する。
【0025】
調整処理部24は、検索処理部22によって検索された区画の位置および大きさの少なくとも一方に基づいて、検索処理部22によって算出された人物スコアを調整する。調整処理部24は、検索された区画の位置および大きさが妥当であるかを判定し、検索された区画の位置および大きさが妥当でなければ、人物が存在する可能性が低くなるように人物スコアの調整をする。調整処理部24は、検索された区画の位置および大きさが妥当であれば、人物スコアを調整しない。
【0026】
図4は、撮像画像30における人物40a,40bの妥当な位置および大きさを模式的に示す図である。図4は、カメラ26からの距離が異なる第1人物40aおよび第2人物40bを撮像した撮像画像30を模式的に示す。第1人物40aは、カメラ26から相対的に近くに位置し、第2人物40bは、カメラ26から相対的に遠くに位置する。第1人物40aおよび第2人物40bの身長は同じであるが、撮像画像30における第1人物40aの縦方向の大きさhおよび第2人物40bの縦方向の大きさhは異なる。これは、近くの第1人物40aが大きく見え、遠くの第2人物40bが小さく見えるためである。
【0027】
撮像画像30における人物40a,40bの縦方向の大きさh,hは、カメラ26から人物40a,40bまでの距離によって決まる。カメラ26から人物40a,40bまでの距離は、人物40a,40bの接地位置42a,42bの縦方向の位置座標から推定でき、例えば、撮像画像30における消失点36から接地位置42a,42bまでの距離d,dから推定できる。したがって、人物40a,40bの身長と接地位置42a,42bが分かれば、撮像画像30における人物40a,40bの縦方向の大きさh,hを算出できる。人間の身長は0.5m~2.5mの範囲内であり、たいていの場合に1m~2mの範囲に収まる。そのため、接地位置42a,42bが分かれば、その接地位置42a,42bに存在する人物40a,40bの縦方向の大きさh,hの適正範囲を算出できる。
【0028】
調整処理部24は、撮像画像30における人物の接地位置に応じた縦方向の大きさが適正範囲内であれば、検索された区画の位置および大きさが妥当であると判定する。調整処理部24は、撮像画像30における人物の接地位置に応じた縦方向の大きさが適正範囲内でなければ、検索された区画の位置および大きさが妥当ではないと判定する。調整処理部24は、撮像画像30における人物の接地位置に応じた縦方向の大きさが適正範囲内でない場合、検索された区画に人物が存在する可能性が低くなるように人物スコアを調整する。
【0029】
撮像画像30における人物の縦方向の大きさの適正範囲の上限値および下限値は、特に限られないが、例えば、2mの身長に対応する縦方向の大きさを上限値とし、1mの身長に対応する縦方向の大きさを下限値とすることができる。接地位置に応じた適正範囲の上限値および下限値は、接地位置を変数とする数式に基づいて算出されてもよいし、接地位置と適正範囲を対応付けるテーブル情報を参照して算出されてもよい。接地位置に応じた適正範囲の具体的な数値は、カメラ26から異なる距離に立つ人物を実際に撮像したときに撮像画像30に含まれる人物の縦方向の大きさから実験的に決定されてもよい。撮像画像30における消失点36の位置も実験的に決定されてもよい。
【0030】
図4において、人物40a,40bの接地位置42a,42bは、撮像画像30の消失点36よりも下側の領域44に存在する。これは、撮像画像30において消失点36よりも下側の領域44に地面が存在するためである。仮に、撮像画像30の消失点36よりも上側の領域46に人物の接地位置が検出される場合、歩道橋などの地面よりも高い場所に存在するか、空中に浮いていることになる。車両用の画像認識装置の場合、地面よりも高い場所に存在する人物を検出する必要性は低く、また、空中に浮いている人物が検出されることは妥当ではない。そこで、調整処理部24は、人物の接地位置が撮像画像30の消失点36よりも上側の領域46にある場合、検索された区画の位置および大きさが妥当ではないと判定する。調整処理部24は、人物の接地位置が撮像画像30の消失点36よりも上側にある場合、検索された区画に人物が存在する可能性が低くなるように人物スコアを調整する。
【0031】
図5は、人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図であり、歩行者30aに対応する第1区画32aにおける人物スコア調整方法を示す。第1区画32aは、検索処理部22によって算出された人物スコアが基準値以上の区画である。調整処理部24は、第1区画32aの下端34aの縦方向の位置を特定する。図5では第1区画32aの下端34aが消失点36よりも下側に位置するため、調整処理部24は、第1区画32aの下端34aの位置(接地位置)に基づいて、第1区画32aにおける人物の縦方向の大きさの適正範囲を算出する。図5には、第1区画32aの接地位置における適正範囲の下限値h1Lと上限値h1Hを示している。下限値h1Lは、例えば身長1mの高さに相当する。上限値h1Hは、例えば身長2mの高さに相当する。第1区画32aの縦方向の大きさhは、適正範囲の下限値h1Lと上限値h1Hの間にあるため、第1区画32aの縦方向の大きさhは妥当と言える。調整処理部24は、第1区画32aについて検索処理部22が算出した人物スコアを調整せず、検索処理部22が算出した人物スコアをそのまま出力する。
【0032】
図6は、人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図であり、道路標識30cに対応する第2区画32cにおける人物スコア調整方法を示す。第2区画32cは、検索処理部22によって算出された人物スコアが基準値以上の区画であるが、道路標識30cが人物として誤検出されている。調整処理部24は、第2区画32cの下端34cの縦方向の位置を特定する。図6においても第2区画32cの下端34cが消失点36よりも下側に位置するため、調整処理部24は、第2区画32cの下端位置(接地位置)に基づいて、第2区画32cにおける人物の縦方向の大きさの適正範囲を算出する。第2区画32cの縦方向の大きさhは、適正範囲の下限値h2Lと上限値h2Hの間にはない。そのため、第2区画32cの縦方向の大きさhは、適切範囲内に含まれておらず、妥当とは言えない。調整処理部24は、第2区画32cについて検索処理部22が算出した人物スコアを調整し、人物が存在する可能性が低くなるように調整した人物スコアを出力する。
【0033】
調整処理部24は、第2区画32cの縦方向の大きさhと、第2区画32cにおける人物の縦方向の大きさの適正範囲との差δの大きさに応じて、人物スコアの調整量を変化させてもよい。調整処理部24は、第2区画32cの縦方向の大きさhと、第2区画32cにおける人物の縦方向の大きさの適正範囲との差δが大きいほど、人物スコアの調整量を大きくし、人物が存在する可能性がより低くなるように人物スコアを調整してもよい。
【0034】
図6の例では、第2区画32cの縦方向の大きさhが適正範囲の上限値h2Hよりも大きい場合を示している。この場合、調整処理部24は、第2区画32cの縦方向の大きさhと適正範囲の上限値h2Hの差δに応じて人物スコアを調整してもよい。この場合、第2区画32cの縦方向の大きさhが大きくなるほど、人物が存在する可能性がより低くなるように人物スコアを調整してもよい。なお、図6の例とは逆に、区画の縦方向の大きさが適正範囲の下限値よりも小さい場合、調整処理部24は、区画の縦方向の大きさと適正範囲の下限値の差に応じて人物スコアを調整してもよい。この場合、区画の縦方向の大きさが小さくなるほど、人物が存在する可能性がより低くなるように人物スコアを調整してもよい。
【0035】
図7は、人物スコアの調整方法の一例を模式的に示す図であり、街灯30dに対応する第3区画32dにおける人物スコア調整方法を示す。第3区画32dは、検索処理部22によって算出された人物スコアが基準値以上の区画であるが、街灯30dが人物として誤検出されている。調整処理部24は、第3区画32dの下端34dの縦方向の位置を特定する。図7では、第3区画32dの下端34dが消失点36よりも上側に位置するため、調整処理部24は、第3区画32dの位置が妥当ではないと判定する。調整処理部24は、第3区画32dについて検索処理部22が算出した人物スコアを調整し、人物が存在する可能性が低くなるように調整した人物スコアを出力する。
【0036】
調整処理部24は、第3区画32dの下端34dから消失点36までの縦方向の距離dに応じて、人物スコアの調整量を変化させてもよい。調整処理部24は、第3区画32dの下端34dから消失点36までの縦方向の距離dが大きいほど、人物スコアの調整量を大きくし、人物が存在する可能性がより低くなるように人物スコアを調整してもよい。
【0037】
調整処理部24は、図7のように区画の下端が消失点36よりも上側に位置する場合であっても、検索された区画における人物の縦方向の大きさの適正範囲を算出してもよい。調整処理部24は、区画の下端が消失点36よりも上側に位置する場合、検索された区画における人物の縦方向の大きさの適正範囲の上限値および下限値をゼロとしてもよい。この場合、検索された区画の大きさが有限であり、区画の大きさが適正範囲内に含まれないため、調整処理部24は、区画の位置および大きさが妥当ではないと判定できる。
【0038】
調整処理部24は、検索処理部22が算出した人物スコアSに調整係数αを乗算することによって調整後の人物スコアS’を算出してもよい。調整処理部24は、検索処理部22が算出した人物スコアSから調整値βを減算することによって調整後の人物スコアS’を算出してもよい。調整後の人物スコアS’は、例えば、S’=αS-βと表されてもよい。調整係数αや調整値βは、調整処理部24による妥当性の判定内容に応じて変化してもよい。
【0039】
判定処理部16は、調整処理部24から出力される調整後の人物スコアを用いて、検索された区画に人物が存在するか否かを判定する。判定処理部16は、調整後の人物スコアが基準値以上である区画に人物が存在すると判定する。判定処理部16は、調整後の人物スコアが基準値以上である区画が存在しない場合、人物が存在しないと判定する。本実施の形態によれば、検索処理部22によって検索された人物スコアが基準値以上である区画について、区画の位置および大きさの妥当性が低い場合、その区画の人物スコアを下げるように調整できる。その結果、妥当性の低い区画に人物が存在すると誤検出される可能性を下げることができ、人物の検出精度を高めることができる。
【0040】
図8は、実施の形態に係る画像認識方法の流れを示すフローチャートである。撮像画像30を取得すると(S10)、人物認識辞書を用いて人物が存在する区画を検索し(S12)、検索した区画の人物スコアを算出する(S14)。検索した区画が消失点36よりも下側にあれば(S16のY)、区画の位置に応じた人物の大きさの適正範囲を算出する(S18)。区画の大きさが算出された適正範囲内になければ(S20のN)、人物が存在する可能性が低くなるように人物スコアを調整する(S22)。区画の大きさが算出された適正範囲内にあれば(S20のY)、S22の処理をスキップする。S16において、検索した区画が消失点よりも上側にあれば(S16のN)、人物である可能性が低くなるように人物スコアを調整する(S22)。その後、人物スコアに基づいて人物が存在するか否かを判定する(S24)。
【0041】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に示す各構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0042】
上述の実施の形態では、検出された区画の縦方向の位置を消失点36を基準にする場合について示した。別の実施の形態では、検出された区画の縦方向の位置は、消失点36とは異なる位置を基準にしてもよく、例えば撮像画像30の上端や下端を基準にしてもよい。検出された区画の縦方向の位置は、撮像画像30において各画素の位置を定義する座標値に基づいて特定されてもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、検出された区画の下端を接地位置とする場合について示した。別の実施の形態では、検出された区画の画像内容に基づいて接地位置を検出してもよい。例えば、検出された区画に含まれる人物の足下が隠れて見えなくなっているような場合、検出された区画に含まれる人物の頭部の位置や大きさに基づいて人物の身長を推定し、身長の推定結果に基づいて接地位置を検出してもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、検出された区画の縦方向の大きさが適正範囲内であるか否かを判定する場合について示した。別の実施の形態では、検出された区画の横方向の大きさが適正範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0045】
上述の実施の形態では、画像認識装置10が車両に搭載される場合について示した。別の実施の形態では、画像認識装置10の設置場所は特に限られず、任意の用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…画像認識装置、12…画像取得部、14…認識処理部、16…判定処理部、18…出力部、20…認識辞書記憶部、22…検索処理部、24…調整処理部、26…カメラ、28…外部装置、30…撮像画像、32…区画、36…消失点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8