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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/26 20060101AFI20240702BHJP
   H02H 3/38 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02H7/26 B
H02H7/26 H
H02H7/26 M
H02H3/38 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020122280
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018870
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003171
【氏名又は名称】株式会社戸上電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
(72)【発明者】
【氏名】内倉 延幸
(72)【発明者】
【氏名】高羽 佑介
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-028320(JP,A)
【文献】実開昭58-145040(JP,U)
【文献】特開平02-142321(JP,A)
【文献】特開昭63-073824(JP,A)
【文献】特開2001-025157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/26
H02H 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電用変圧器の二次側に設けられた二次側遮断器を制御する二次側制御ユニットと、
前記配電用変圧器の一次側に設けられた一次側遮断器を制御する一次側制御ユニットと、を備え、
前記二次側制御ユニットは、
前記配電用変圧器の二次側に設けられた地絡センサから、地絡の検出結果を取得する第1地絡情報取得部と、
前記第1地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果に基づいて前記二次側遮断器を制御する第1後備保護部と、を有し、
前記一次側制御ユニットは、
前記地絡センサから地絡の検出結果を取得する第2地絡情報取得部と、
前記第2地絡情報取得部が取得した地絡の検出結果に基づいて前記一次側遮断器を制御する第2後備保護部と、を有し、
前記第1後備保護部は、前記第1地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1時間に亘って継続した場合に前記二次側遮断器を開き、
前記第2後備保護部は、前記第2地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が前記第1時間よりも長い第2時間に亘って継続した場合に前記一次側遮断器を開く、制御システム。
【請求項2】
前記地絡センサは、零相電圧センサ及び零相電流センサを含み、
前記第1地絡情報取得部は、零相電圧の検出結果を前記零相電圧センサから取得し、零相電流の検出結果を前記零相電流センサから取得し、
前記第1後備保護部は、前記第1地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が前記第1時間に亘って継続した場合に前記二次側遮断器を開き、
前記二次側制御ユニットは、
前記第1地絡情報取得部が取得した零相電流と零相電圧とに基づいて、前記二次側遮断器の一次側で地絡が生じているか、前記二次側遮断器の二次側で地絡が生じているかを検出する地絡方向検出部と、
前記地絡方向検出部により地絡が前記二次側遮断器の二次側で生じていると判定され、且つ前記第1地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が前記第1時間よりも短い第3時間に亘って継続した場合に前記二次側遮断器を開く第3後備保護部と、を更に有する、請求項記載の制御システム。
【請求項3】
前記第2地絡情報取得部は、零相電圧の検出結果を前記零相電圧センサから取得し、
前記第2後備保護部は、前記第2地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が前記第2時間に亘って継続した場合に前記一次側遮断器を開く、請求項記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変圧器より上位の保護装置と、変圧器より下位の送電線保護装置と、を備え、送電線保護装置に不良が生じた場合に、上位の保護装置からの指令により変圧器より下位の遮断器を遮断するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-309544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、配電用変圧器の二次側における地絡に起因する停電範囲の抑制に有効な制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る制御システムは、配電用変圧器の二次側に設けられた二次側遮断器を制御する二次側制御ユニットと、配電用変圧器の一次側に設けられた一次側遮断器を制御する一次側制御ユニットと、を備え、二次側制御ユニットは、配電用変圧器の二次側に設けられた地絡センサから、地絡の検出結果を取得する第1地絡情報取得部と、第1地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果に基づいて二次側遮断器を制御する第1後備保護部と、を有し、一次側制御ユニットは、地絡センサから地絡の検出結果を取得する第2地絡情報取得部と、第2地絡情報取得部が取得した地絡の検出結果に基づいて一次側遮断器を制御する第2後備保護部と、を有する。
【0006】
第1後備保護部は、第1地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1時間に亘って継続した場合に二次側遮断器を開き、第2後備保護部は、第2地絡情報取得部により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1時間よりも長い第2時間に亘って継続した場合に一次側遮断器を開いてもよい。
【0007】
地絡センサは、零相電圧センサ及び零相電流センサを含み、第1地絡情報取得部は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサから取得し、零相電流の検出結果を零相電流センサから取得し、第1後備保護部は、第1地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1時間に亘って継続した場合に二次側遮断器を開き、二次側制御ユニットは、第1地絡情報取得部が取得した零相電流と零相電圧とに基づいて、二次側遮断器の一次側で地絡が生じているか、二次側遮断器の二次側で地絡が生じているかを検出する地絡方向検出部と、地絡方向検出部により地絡が二次側遮断器の二次側で生じていると判定され、且つ第1地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1時間よりも短い第3時間に亘って継続した場合に二次側遮断器を開く第3後備保護部と、を更に有していてもよい。
【0008】
第2地絡情報取得部は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサから取得し、第2後備保護部は、第2地絡情報取得部が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第2時間に亘って継続した場合に一次側遮断器を開いてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、配電用変圧器の二次側における地絡に起因する停電範囲の抑制に有効な制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】柱上配電塔システムの構成を例示する模式図である。
図2】一次側制御ユニット及び二次側制御ユニットの機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】一次側制御ユニット及び二次側制御ユニットのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図4】第1の後備保護手順を例示するフローチャートである。
図5】第2の後備保護手順を例示するフローチャートである。
図6】第3の後備保護手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
〔柱上配電塔システム〕
本実施形態に係る柱上配電塔システムは、電柱等の柱上において変圧を行うシステムである。例えば柱上配電塔システム1は、発電所等の電源設備から送電された電力を、配電用に降圧させて需要家設備に供給する。一例として、柱上配電塔システム1は、7000V超(例えば22000V又は33000V)の特別高圧を、600~7000V(例えば6600V)に降圧させる。以下、柱上配電塔システム1の構成においては、電源設備側を「一次側」といい、需要家設備側を「二次側」という。図1に示すように、柱上配電塔システム1は、配電用変圧器10と、一次側遮断器20と、二次側遮断器30と、子局40と、制御電源50とを備える。
【0013】
配電用変圧器10は、一次側の配電線91に接続された一次側巻線11と、二次側の配電線92に接続された二次側巻線12とを有し、一次側巻線11と二次側巻線12との巻数比に応じて配電線91の電圧を配電線92の電圧に降圧する。配電用変圧器10は、制御指令に従って、複数のタップのオン・オフを切り替えることにより、一次側巻線11と二次側巻線12との巻数比を変更する。
【0014】
一次側遮断器20は、配電用変圧器10の一次側に設けられている。例えば一次側遮断器20は、配電線91と配電用変圧器10との間に設けられており、配電線91と配電用変圧器10とが接続された一次側接続状態と、配電線91と配電用変圧器10とが遮断された一次側遮断状態とを切り替える。
【0015】
一次側遮断器20は、電流センサ21と、ガス遮断器22とを有する。電流センサ21は、配電線91と配電用変圧器10との間における各相の電流を検出する。ガス遮断器22は、制御指令に従って、上記一次側接続状態と上記一次側遮断状態とを切り替える。
【0016】
二次側遮断器30は、配電用変圧器10の二次側に設けられている。例えば二次側遮断器30は、配電用変圧器10と配電線92との間に設けられており、配電用変圧器10と配電線92とが接続された二次側接続状態と、配電用変圧器10と配電線92とが遮断された二次側遮断状態とを切り替える。
【0017】
二次側遮断器30は、地絡センサ31と、電流センサ34と、ガス遮断器35とを有する。地絡センサ31は、配電用変圧器10の二次側における地絡を検出する。例えば地絡センサ31は、零相電圧センサ32及び零相電流センサ33を含む。零相電圧センサ32は、配電用変圧器10と配電線92との間における零相電圧を検出する。零相電圧は、配電用変圧器10と配電線92との間における各相電圧の合成に相当する。零相電流センサ33は、配電用変圧器10と配電線92との間における零相電流を検出する。零相電流は、配電用変圧器10と配電線92との間における各相電流の合成に相当する。
【0018】
電流センサ34は、配電用変圧器10と配電線92との間における各相の電流を検出する。ガス遮断器35は、制御指令に従って、上記二次側接続状態と上記二次側遮断状態とを切り替える。
【0019】
子局40は、配電用変圧器10と、一次側遮断器20と、二次側遮断器30とを制御する制御システムである。制御電源50は、配電線91の電力により、子局40の動作電力を生成する。子局40は、変圧制御ユニット100と、二次側制御ユニット300と、一次側制御ユニット200とを備える。
【0020】
変圧制御ユニット100は、配電用変圧器10により配電線92の電圧を調節する。例えば変圧制御ユニット100は、ネットワーク回線NWを介して親局400と接続されており、親局400からの指令に従って、配電用変圧器10により配電線92の電圧を調節する。一例として、変圧制御ユニット100は、配電用変圧器10の上記複数のタップのオン・オフを切り替えることによって配電線92の電圧を調節する。
【0021】
変圧制御ユニット100は、柱上配電塔システム1の状態を親局400に送信してもよい。柱上配電塔システム1の状態の具体例としては、電流センサ21,34、地絡センサ31の検出結果、ガス遮断器22の状態(一次側接続状態又は一次側遮断状態)、ガス遮断器35の状態(二次側接続状態又は二次側遮断状態)、及び配電用変圧器10の状態(例えば複数のタップのオン・オフ状態)等が挙げられる。
【0022】
二次側制御ユニット300は、二次側遮断器30を制御する。例えば二次側制御ユニット300は、配電用変圧器10の二次側に設けられた地絡センサ31から地絡の検出結果を取得し、取得した地絡の検出結果に基づいて二次側遮断器30を制御する。地絡センサ31による地絡の検出結果に基づくことで、配電用変圧器10の二次側における地絡の発生に応じて地絡箇所を電力系統から遮断することができる。
【0023】
ここで、二次側遮断器30の不具合により、地絡箇所を電力系統から遮断できない場合には、一次側遮断器20により地絡箇所を電力系統から遮断することが必要となる。仮に、一次側遮断器20により地絡箇所を電力系統から遮断できないと、一次側遮断器20よりも更に上位まで遡らなければ地絡箇所を電力系統から遮断することができず、停電範囲が拡大してしまうためである。
【0024】
一次側遮断器20により地絡箇所を電力系統から遮断するためには、二次側制御ユニット300から一次側制御ユニット200に遮断指令を出力し、これに応じ一次側制御ユニット200により一次側遮断器20を開いて地絡箇所を電力系統から遮断することが考えられる。しかしながら、二次側制御ユニット300に不具合が生じている場合、一次側制御ユニット200への遮断指令を出力することができず、一次側遮断器20により地絡箇所を電力系統から遮断することが困難となる。
【0025】
これに対し、一次側制御ユニット200は、二次側制御ユニット300を介さずに、二次側の地絡センサ31から地絡の検出結果を取得し、取得した地絡の検出結果に基づいて一次側遮断器20を制御する。これにより、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得することと、取得した地絡の検出結果に基づき遮断器を制御することとが、一次側制御ユニット200及び二次側制御ユニット300の二系統で独立して実行される。このため、一次側制御ユニット200が故障した場合、及び二次側制御ユニット300が故障した場合のいずれにおいても、地絡箇所を電力系統から切り離すことができる。
【0026】
以下、二次側制御ユニット300及び一次側制御ユニット200の構成をより具体的に例示する。図2に示すように、二次側制御ユニット300は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、地絡情報取得部311と、後備保護部312と、地絡方向検出部313と、後備保護部314と、電流情報取得部315と、過電流保護部316とを有する。
【0027】
地絡情報取得部311(第1地絡情報取得部)は、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する。例えば地絡情報取得部311は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得し、零相電流の検出結果を零相電流センサ33から取得する。
【0028】
後備保護部312(第1後備保護部)は、地絡情報取得部311により取得された地絡の検出結果に基づいて二次側遮断器30を制御する。例えば後備保護部312は、地絡情報取得部311により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1長さの時間(第1時間)に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開き、二次側接続状態を二次側遮断状態に切り替える。一例として、後備保護部312は、地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1長さの時間に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開く。
【0029】
地絡方向検出部313は、地絡情報取得部311が取得した零相電流と零相電圧とに基づいて、二次側遮断器30の一次側で地絡が生じているか、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じているかを検出する。例えば地絡方向検出部313は、零相電流の位相と零相電圧の位相との関係に基づいて、二次側遮断器30の一次側で地絡が生じているか、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じているかを検出する。
【0030】
後備保護部314(第3後備保護部)は、地絡情報取得部311により地絡が二次側遮断器30の二次側で生じていると判定され、且つ地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1長さよりも短い第2長さの時間(第3時間)に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開き、二次側接続状態を二次側遮断状態に切り替える。
【0031】
電流情報取得部315は、電流センサ34から電流の検出結果を取得する。過電流保護部316は、電流情報取得部315が取得した電流の検出結果に基づいて二次側遮断器30を制御する。例えば過電流保護部316は、電流情報取得部315が取得した電流の検出結果が所定の過電流検知条件を満たした状態が所定長さの時間に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開き、二次側接続状態を二次側遮断状態に切り替える。これにより、二次側遮断器30の二次側における相間短絡の発生に応じて短絡箇所を電力系統から遮断することも可能となる。
【0032】
一次側制御ユニット200は、機能ブロックとして、地絡情報取得部211と、後備保護部212と、電流情報取得部213と、過電流保護部214とを有する。地絡情報取得部211(第2地絡情報取得部)は、二次側制御ユニット300を介さずに、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する。例えば地絡情報取得部211は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得する。
【0033】
後備保護部212(第2後備保護部)は、地絡情報取得部211が取得した地絡の検出結果に基づいて一次側遮断器20を制御する。例えば後備保護部212は、地絡情報取得部211により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1長さよりも長い第3長さの時間(第2時間)に亘って継続した場合に一次側遮断器20を開き、一次側接続状態を一次側遮断状態に切り替える。一例として、後備保護部212は、地絡情報取得部211が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第3長さの時間に亘って継続した場合に一次側遮断器20を開く。
【0034】
電流情報取得部213は、電流センサ21から電流の検出結果を取得する。過電流保護部214は、電流情報取得部213が取得した電流の検出結果に基づいて一次側遮断器20を制御する。例えば過電流保護部214は、電流情報取得部213が取得した電流の検出結果が所定の過電流検知条件を満たした状態が所定長さの時間に亘って継続した場合に一次側遮断器20を開き、一次側接続状態を一次側遮断状態に切り替える。これにより、一次側遮断器20の二次側における相間短絡の発生に応じて短絡箇所を電力系統から遮断することも可能となる。
【0035】
図3は、一次側制御ユニット200及び二次側制御ユニット300のハードウェア構成を例示するブロック図である。二次側制御ユニット300は、通信機能を有するコンピュータであり、回路390を有する。回路390は、プロセッサ391と、メモリ392と、ストレージ393と、入出力ポート394と、通信ポート395とを含む。ストレージ393は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ393は、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得し、取得した地絡の検出結果に基づいて二次側遮断器30を制御することを二次側制御ユニット300に実行させるためのプログラムを記憶している。ストレージ393は、例えば、上記各機能ブロックを二次側制御ユニット300に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0036】
メモリ392は、ストレージ393の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ391による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ391は、メモリ392と協働して上記プログラムを実行することで、二次側制御ユニット300の各機能ブロックを構成する。入出力ポート394は、プロセッサ391からの指令に応じて二次側遮断器30との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート395は、プロセッサ391からの指令に従って、変圧制御ユニット100との間で情報通信を行う。
【0037】
一次側制御ユニット200は、通信機能を有するコンピュータであり、回路290を有する。回路290は、プロセッサ291と、メモリ292と、ストレージ293と、入出力ポート294と、通信ポート295とを含む。ストレージ293は、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得し、取得した地絡の検出結果に基づいて一次側遮断器20を制御することを一次側制御ユニット200に実行させるためのプログラムを記憶している。ストレージ293は、例えば、上記各機能ブロックを一次側制御ユニット200に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0038】
メモリ292は、ストレージ293の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ291による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ291は、メモリ292と協働して上記プログラムを実行することで、一次側制御ユニット200の各機能ブロックを構成する。入出力ポート294は、プロセッサ291からの指令に応じて一次側遮断器20及び二次側遮断器30との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート295は、プロセッサ291からの指令に従って、変圧制御ユニット100との間で情報通信を行う。
なお、一次側制御ユニット200及び二次側制御ユニット300は、必ずしもプログラムにより各機能ブロックを構成するものに限られない。例えば一次側制御ユニット200及び二次側制御ユニット300の各機能ブロックは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0039】
〔後備保護制御手順〕
続いて、柱上配電塔システム1による後備保護方法の一例として、一次側制御ユニット200及び二次側制御ユニット300が実行する後備保護手順を説明する。この制御手順は、第1の後備保護手順と、第2の後備保護手順と、第3の後備保護手順とを含む。これらの後備保護手順は、並行して実行される。以下、各後備保護手順を詳細に例示する。
【0040】
(第1の後備保護手順)
第1の後備保護手順は、二次側制御ユニット300により実行される。図4に示すように、二次側制御ユニット300は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、地絡情報取得部311が、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する。例えば地絡情報取得部311は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得し、零相電流の検出結果を零相電流センサ33から取得する。ステップS02では、地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えているか否かを地絡方向検出部313が確認する。
【0041】
ステップS02において零相電圧が所定レベルを超えていると判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS03を実行する。ステップS03では、地絡情報取得部311が取得した零相電流が所定レベルを超えているか否かを地絡方向検出部313が確認する。
【0042】
ステップS03において零相電流が所定レベルを超えていると判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS04,S05を実行する。ステップS04では、地絡方向検出部313が、二次側遮断器30の一次側で地絡が生じているか、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じているかを、地絡情報取得部311が取得した零相電流と零相電圧とに基づいて検出する。ステップS05では、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じていると地絡方向検出部313が判定したか否かを、後備保護部314が確認する。
【0043】
ステップS02において零相電圧が所定レベルを超えていないと判定した場合、ステップS03において零相電流が所定レベルを超えていないと判定した場合、及びステップS05において二次側遮断器30の二次側で地絡が生じていないと判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS06を実行する。ステップS06では、経過時間を表すタイマー変数(以下、「第1タイマー」という。)を後備保護部314がクリアする(例えばゼロにする)。
【0044】
ステップS05において二次側遮断器30の二次側で地絡が生じていると判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS07,S08を実行する。ステップS07では、後備保護部314が第1タイマーをカウントアップする。ステップS08では、第1タイマーが上記第2長さの時間(第3時間)に達したか否かを後備保護部314が確認する。
【0045】
ステップS08において第1タイマーが第2長さの時間に達していないと判定した場合、二次側制御ユニット300は処理をステップS01に戻す。以後、地絡が二次側遮断器30の二次側で生じていると判定され、且つ零相電圧が所定レベルを超えた状態が、第2長さの時間に亘って継続しない限り、ステップS01からステップS07が繰り返される。
【0046】
ステップS08において第1タイマーが第2長さの時間に達したと判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS09を実行する。ステップS09では、後備保護部314が二次側遮断器30を開き、二次側接続状態を二次側遮断状態に切り替える。以上で第1の後備保護手順が完了する。
【0047】
(第2の後備保護手順)
第2の後備保護手順は、二次側制御ユニット300により実行される。図5に示すように、二次側制御ユニット300は、まずステップS11,S12を実行する。ステップS11では、地絡情報取得部311が地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する。例えば地絡情報取得部311は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得する。ステップS12では、地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えているか否かを後備保護部312が確認する。なお、地絡方向検出部313は、ステップS01において取得された零相電圧が所定レベルを超えているか否かを確認してもよい。この場合、ステップS11を省略可能である。
【0048】
ステップS12において零相電圧が所定レベルを超えていないと判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS13を実行する。ステップS13では、経過時間を表すタイマー変数(以下、「第2タイマー」という。)を後備保護部312がクリアする(例えばゼロにする)。
【0049】
ステップS12において零相電圧が所定レベルを超えていると判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS14,S15を実行する。ステップS14では、後備保護部312が第2タイマーをカウントアップする。ステップS15では、第2タイマーが上記第1長さの時間(第1時間)に達したか否かを後備保護部312が確認する。
【0050】
ステップS15において第2タイマーが第1長さの時間に達していないと判定した場合、二次側制御ユニット300は処理をステップS11に戻す。以後、零相電圧が所定レベルを超えた状態が、第1長さの時間に亘って継続しない限り、ステップS11からステップS15が繰り返される。
【0051】
ステップS15において第2タイマーが第1長さの時間に達したと判定した場合、二次側制御ユニット300はステップS16を実行する。ステップS16では、後備保護部312が二次側遮断器30を開き、二次側接続状態を二次側遮断状態に切り替える。以上で第2の後備保護手順が完了する。
【0052】
(第3の後備保護手順)
第3の後備保護手順は、一次側制御ユニット200により実行される。図6に示すように、一次側制御ユニット200は、まずステップS21,S22を実行する。ステップS21では、地絡情報取得部211が地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する。例えば地絡情報取得部211は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得する。ステップS22では、地絡情報取得部211が取得した零相電圧が所定レベルを超えているか否かを後備保護部212が確認する。
【0053】
ステップS22において零相電圧が所定レベルを超えていないと判定した場合、一次側制御ユニット200はステップS23を実行する。ステップS23では、経過時間を表すタイマー変数(以下、「第3タイマー」という。)を後備保護部212がクリアする(例えばゼロにする)。
【0054】
ステップS22において零相電圧が所定レベルを超えていると判定した場合、一次側制御ユニット200はステップS24,S25を実行する。ステップS24では、後備保護部212が第3タイマーをカウントアップする。ステップS25では、第3タイマーが上記第3長さの時間(第2時間)に達したか否かを後備保護部212が確認する。
【0055】
ステップS25において第3タイマーが第3長さの時間に達していないと判定した場合、一次側制御ユニット200は処理をステップS21に戻す。以後、零相電圧が所定レベルを超えた状態が、第3長さの時間に亘って継続しない限り、ステップS21からステップS25が繰り返される。
【0056】
ステップS25において第3タイマーが第3長さの時間に達したと判定した場合、一次側制御ユニット200はステップS26を実行する。ステップS26では、後備保護部212が一次側遮断器20を開き、一次側接続状態を一次側遮断状態に切り替える。以上で第3の後備保護手順が完了する。
【0057】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、子局40は、配電用変圧器10の二次側に設けられた二次側遮断器30を制御する二次側制御ユニット300と、配電用変圧器10の一次側に設けられた一次側遮断器20を制御する一次側制御ユニット200と、を備え、二次側制御ユニット300は、配電用変圧器10の二次側に設けられた地絡センサ31から、地絡の検出結果を取得する地絡情報取得部311と、地絡情報取得部311により取得された地絡の検出結果に基づいて二次側遮断器30を制御する後備保護部312と、を有し、一次側制御ユニット200は、地絡センサ31から地絡の検出結果を取得する地絡情報取得部211と、地絡情報取得部211が取得した地絡の検出結果に基づいて一次側遮断器20を制御する後備保護部212と、を有する。
【0058】
配電用変圧器10の二次側における地絡に起因する停電範囲を抑制するためには、可能な限り、配電用変圧器10の上位まで遡らない範囲で地絡箇所を電力系統から遮断する必要がある。二次側遮断器30の不具合により、二次側制御ユニット300が地絡箇所を電力系統から遮断することができない場合、二次側制御ユニット300から一次側制御ユニット200に遮断指令を出力し、これに応じ一次側制御ユニット200により一次側遮断器20を開いて地絡箇所を電力系統から遮断することが考えられる。しかしながら、二次側制御ユニット300に不具合が生じている場合、一次側制御ユニット200への遮断指令を出力することができず、一次側遮断器20よりも更に上位まで遡らなければ地絡箇所を電力系統から遮断することができず、停電範囲が拡大する可能性がある。
【0059】
これに対し、子局40によれば、配電用変圧器10の二次側に設けられた地絡センサ31から地絡の検出結果を取得することと、取得した地絡の検出結果に基づき遮断器を制御することとが、二次側制御ユニット300及び一次側制御ユニット200の二系統で独立して実行される。このため、一次側制御ユニット200が故障した場合、及び二次側制御ユニット300が故障した場合のいずれにおいても、地絡箇所を電力系統から切り離すことができる。従って、子局40は、配電用変圧器10の二次側における地絡に起因する停電範囲の抑制に有効である。
【0060】
後備保護部312は、地絡情報取得部311により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1時間に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開き、後備保護部212は、地絡情報取得部211により取得された地絡の検出結果が所定の地絡検知条件を満たした状態が第1時間よりも長い第2時間に亘って継続した場合に一次側遮断器20を開いてもよい。この場合、一次側制御ユニット200と、二次側制御ユニット300とが互いに独立して遮断器を制御する本制御システムにおいても、配電用変圧器10の二次側における地絡に対しては二次側遮断器30を優先的に作動させることができる。従って、配電用変圧器10の二次側における地絡に起因する停電範囲の抑制に更に有効である。
【0061】
地絡センサ31は、零相電圧センサ32及び零相電流センサ33を含み、地絡情報取得部311は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得し、零相電流の検出結果を零相電流センサ33から取得し、後備保護部312は、地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1時間に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開き、二次側制御ユニット300は、地絡情報取得部311が取得した零相電流と零相電圧とに基づいて、二次側遮断器30の一次側で地絡が生じているか、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じているかを検出する地絡方向検出部313と、地絡方向検出部313により地絡が二次側遮断器の二次側で生じていると判定され、且つ地絡情報取得部311が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第1時間よりも短い第3時間に亘って継続した場合に二次側遮断器30を開く後備保護部314と、を更に有していてもよい。この場合、二次側遮断器30の一次側で地絡が生じている場合に比較して、二次側遮断器30の二次側で地絡が生じている場合に、二次側遮断器30が短い時限で作動するので、二次側遮断器30の後備保護をより確実に図ることができる。
【0062】
地絡情報取得部211は、零相電圧の検出結果を零相電圧センサ32から取得し、後備保護部212は、地絡情報取得部211が取得した零相電圧が所定レベルを超えた状態が第2時間に亘って継続した場合に一次側遮断器20を開いてもよい。この場合、地絡情報取得部211が取得する情報を零相電圧レベルに絞ることで、システムの簡素化を図ることができる。
【0063】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…配電用変圧器、20…一次側遮断器、30…二次側遮断器、31…地絡センサ、32…零相電圧センサ、33…零相電流センサ、40…子局(制御システム)、200…一次側制御ユニット、211…地絡情報取得部(第2地絡情報取得部)、212…後備保護部(第2後備保護部)、300…二次側制御ユニット、311…地絡情報取得部(第1地絡情報取得部)、312…後備保護部(第1後備保護部)、313…地絡方向検出部、314…後備保護部(第3後備保護部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6