(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】クランプ構造及びシリンジポンプユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61M5/14 530
(21)【出願番号】P 2020124954
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-517312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0272254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポールに取付け可能なクランプと、
機器に接続可能でかつ前記クランプに固定される固定部材と、を備え、
前記クランプは、
前記ポールを締付け可能なクランプ部と、
前記クランプ部に接続されており、前記固定部材を保持可能な保持部と、を有し、
前記固定部材は、
前記機器に接続可能なベースと、
前記ベースに接続されており、前記保持部に保持されることが可能な被保持部と、を有し、
前記被保持部は、前記機器の前記ポールに対する姿勢が第1姿勢となる第1位置と、前記機器の前記ポールに対する姿勢が第2姿勢となる第2位置と、で前記保持部に保持されることが可能であ
り、
前記固定部材は、前記機器としてシリンジポンプに接続可能であり、
前記第1姿勢は、前記シリンジポンプに取り付けられたシリンジの使用時の姿勢であり、
前記第2姿勢は、前記使用時の姿勢よりも前記シリンジの先端が上向きとなる姿勢である、クランプ構造。
【請求項2】
前記保持部は、
前記クランプ部に接続されており、前記ポールの長手方向と平行な平面を含む円板状に形成された基部と、
それぞれが前記基部の周方向に間隔を置いて配置されており、前記基部の縁部から前記基部の径方向における外向きに張り出す形状を有する複数の張出部と、を有し、
前記被保持部は、前記複数の張出部が並ぶ方向と同方向に間隔を置いて並ぶように配置された複数の被保持片を有し、
前記複数の被保持片の各保持片は、
前記ベースから立ち上がる形状を有する起立部と、
前記起立部の先端部に接続されており、前記ベースとともに前記ベースの厚み方向に前記張出部を挟み込む挟み込み部と、を有する、請求項1に記載のクランプ構造。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のクランプ構造と、
前記クランプ構造の前記固定部材に固定されたシリンジポンプと、を備える、シリンジポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランプ構造及びシリンジポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-104591号公報には、シリンジポンプを搭載可能な医療用のラックが知られている。ラックは、シリンジポンプを搭載可能な本体と、本体に固定されたポールクランプと、を有している。本体は、ポールクランプを用いて、ポールに対して着脱可能に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-104591号公報に記載されるラックでは、シリンジポンプがラックに取り付けられた状態において、シリンジ内の気泡を抜く操作をするためには、シリンジポンプをラックから外す操作、あるいは、シリンジポンプからシリンジを取り外す操作が必要となる。
【0005】
一方、シリンジポンプ等の機器がポールに取り付けられた状態のまま当該機器のポールに対する取り付け姿勢を変更したいというニーズがある。
【0006】
本発明の目的は、ポールに対する機器の取り付け姿勢を変更することが可能なクランプ構造及びシリンジポンプユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一局面に従ったクランプ構造は、ポールに取付け可能なクランプと、機器に接続可能でかつ前記クランプに固定される固定部材と、を備え、前記クランプは、前記ポールを締付け可能なクランプ部と、前記クランプ部に接続されており、前記固定部材を保持可能な保持部と、を有し、前記固定部材は、前記機器に接続可能なベースと、前記ベースに接続されており、前記保持部に保持されることが可能な被保持部と、を有し、前記被保持部は、前記機器の前記ポールに対する姿勢が第1姿勢となる第1位置と、前記機器の前記ポールに対する姿勢が第2姿勢となる第2位置と、で前記保持部に保持されることが可能である。
【0008】
このクランプ構造では、被保持部が保持部に保持される位置を変更することによってポールに対する機器の姿勢が変更される。このため、機器がポールに取り付けられた状態のまま当該機器のポールに対する取り付け姿勢を変更することが可能となる。
【0009】
また、前記保持部は、前記クランプ部に接続されており、前記ポールの長手方向と平行な平面を含む円板状に形成された基部と、それぞれが前記基部の周方向に間隔を置いて配置されており、前記基部の縁部から前記基部の径方向における外向きに張り出す形状を有する複数の張出部と、を有し、前記被保持部は、前記複数の張出部が並ぶ方向と同方向に間隔を置いて並ぶように配置された複数の被保持片を有し、前記複数の被保持片の各保持片は、前記ベースから立ち上がる形状を有する起立部と、前記起立部の先端部に接続されており、前記ベースとともに前記ベースの厚み方向に前記張出部を挟み込む挟み込み部と、を有することが好ましい。
【0010】
また、前記固定部材は、前記機器としてシリンジポンプに接続可能であり、前記第1姿勢は、前記シリンジポンプに取り付けられたシリンジの使用時の姿勢であり、前記第2姿勢は、前記使用時の姿勢よりも前記シリンジの先端が上向きとなる姿勢であることが好ましい。
【0011】
この態様では、クランプによってシリンジポンプをポールに取り付けた状態において、シリンジポンプの使用前に保持部が第2位置で被保持部を保持することによってシリンジ内の気泡を抜き、その後、保持部が第1位置で被保持部を保持することによってシリンジを使用することが可能となる。
【0012】
このように、このクランプ構造では、シリンジポンプがポールに取り付けられた状態において、シリンジ内の気泡を抜く操作を簡単に行うことが可能となる。
【0013】
また、この発明の一局面に従ったシリンジポンプユニットは、前記クランプ構造と、前記クランプ構造の前記固定部材に固定されたシリンジポンプと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポールに対する機器の取り付け姿勢を変更することが可能なクランプ構造及びシリンジポンプユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のシリンジポンプユニットがポールに固定された状態を概略的に示す斜視図である。
【
図2】固定部材がクランプに第2位置で保持された状態のシリンジポンプユニットを概略的に示す斜視図である。
【
図3】クランプと固定部材とが互いに離間した状態におけるクランプ構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態のシリンジポンプユニットがポールに固定された状態を概略的に示す斜視図である。
図2は、固定部材がクランプに第2位置で保持された状態のシリンジポンプユニットを概略的に示す斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、シリンジポンプユニット1は、ポール2に取付けられる。シリンジポンプユニット1は、機器としてのシリンジポンプ5と、クランプ構造10と、を備えている。
【0019】
シリンジポンプ5には、図示略のシリンジが取付けられている。シリンジポンプ5は、シリンジを駆動可能である。
【0020】
クランプ構造10は、シリンジポンプ5をポール2に固定する構造である。クランプ構造10は、クランプ100と、固定部材200と、を有している。
【0021】
クランプ100は、ポール2に取付け可能である。クランプ100は、クランプ部110と、保持部120と、を有している。
【0022】
クランプ部110は、ポール2を締付け可能である。クランプ部110は、クランプ本体112と、ハンドル114と、を有している。
【0023】
図3及び
図4に示されるように、クランプ本体112は、ポール2を挟持する一対の挟持部112aと、一対の挟持部112aを連結する連結部112bと、を有している。
【0024】
ハンドル114は、クランプ本体112の一方の挟持部112aに取付けられている。ハンドル114の操作によりポール2を締め付け力が調整される。
【0025】
保持部120は、クランプ部110に接続されており、固定部材200を保持可能である。保持部120は、基部122と、複数の(本実施形態では4つの)張出部124と、節度部材126と、付勢部材128と、を有している。
【0026】
基部122は、連結部112bと平行な平面(ポール2の長手方向と平行な平面)を含む板状に形成されている。本実施形態では、基部122は、円板状に形成されている。
図5に示されるように、基部122には、貫通孔122hが設けられている。
【0027】
複数の張出部124は、基部122の縁部に接続されている。複数の張出部124は、基部122の周方向に間隔を置いて配置されている。具体的に、複数の張出部124は、基部122の周方向に等間隔に配置されている。各張出部124は、基部122の縁部から基部122の径方向における外向きに張り出す形状を有している。
【0028】
節度部材126は、基部122に取り付けられている。節度部材126は、筒状部126aと、節度部126bと、を有している。
【0029】
筒状部126aは、円筒状に形成されている。筒状部126aは、クランプ本体112と基部122との間に配置されている。筒状部126aの外径は、貫通孔122hの外形よりも大きい。このため、節度部材126がクランプ本体112と基部122との間から離脱することが防止されている。
【0030】
節度部126bは、筒状部126aの端部に接続されている。節度部126bは、貫通孔122h内に配置されている。節度部126bは、中実に形成されている。節度部126bの先端部は、クランプ本体112から離間する向きに基部122から突出している。節度部126bの先端部は、筒状部126aから離間する向きに凸となるように湾曲する形状を有している。
【0031】
付勢部材128は、節度部材126をクランプ本体112から離間する方向に付勢している。付勢部材128は、節度部材126とクランプ本体112との間に配置されている。具体的に、付勢部材128は、筒状部126a内に配置されている。節度部材126は、付勢部材128の付勢力に抗して筒状部126aの軸方向に移動可能である。
【0032】
固定部材200は、機器としてのシリンジポンプ5に接続可能であり、かつ、クランプ100に固定されることが可能である。固定部材200は、ベース210と、被保持部220と、を有している。
【0033】
ベース210は、シリンジポンプ5に接続可能である。ベース210は、平板状に形成されている。
図3及び
図6に示されるように、ベース210には、節度部126bと係合する凹部210aが設けられている。本実施形態では、ベース210には、等間隔に4つの凹部210aが設けられている。
【0034】
被保持部220は、ベース210に接続されている。被保持部220は、保持部120に保持されることが可能である。具体的に、被保持部220は、第1位置(
図1に示される位置)と第2位置(
図2に示される位置)とで保持部120に保持されることが可能である。
【0035】
第1位置は、機器のポール2に対する姿勢が第1姿勢となる位置である。本実施形態では、第1姿勢は、シリンジポンプ5に取り付けられたシリンジの使用時の姿勢である。
【0036】
第2位置は、機器のポール2に対する姿勢が第2姿勢となる位置である。本実施形態では、第2姿勢は、前記使用時の姿勢よりもシリンジの先端が上向きとなる姿勢である。
【0037】
図3及び
図6に示されるように、被保持部220は、複数の(本実施形態では4つの)被保持片222を有している。複数の被保持片222は、複数の張出部124が並ぶ方向(基部122の周方向)と同方向に間隔を置いて配置されている。具体的に、複数の被保持片222は、前記方向に等間隔に配置されている。各被保持片222は、4つの凹部210aを結ぶ円の外側に形成されている。具体的に、各被保持片222は、前記円の中心と凹部210aとを結ぶ直線上における当該凹部210aの外側に形成されている。各被保持片222は、起立部222aと、挟み込み部222bと、を有している。
【0038】
起立部222aは、ベース210から立ち上がる形状を有している。挟み込み部222bは、起立部222aの先端部に接続されており、ベース210とともにベース210の厚み方向に張出部124を挟み込む形状を有している。挟み込み部222bは、起立部222aの先端部から内向きに突出する形状を有している。
【0039】
次に、以上に説明したシリンジポンプユニット1の使用方法について説明する。
【0040】
まず、ハンドル114の操作によってクランプ100をポール2の所望の高さ位置に固定するとともに、固定部材200にシリンジポンプ5を接続する。
【0041】
続いて、クランプ100の保持部120によって固定部材200の被保持部220を保持する。具体的に、各張出部124が互いに隣接する被保持片222間に位置するように保持部120をベース210に押し付けた後、シリンジポンプ5及び固定部材200をクランプ100に対して回転させる。これにより、被保持部220と保持部120とが互いに係合する。換言すれば、各張出部124がベース210と挟み込み部222bとの間に位置する。このとき、節度部材126が凹部210aに係合するため、使用者には、節度感が伝わる。
【0042】
次に、保持部120によって被保持部220が第2位置で保持されるようにシリンジポンプ5及び固定部材200をクランプ100に対して回転させる。このとき、節度部材126は、付勢部材128の付勢力に抗して凹部210aから離脱し、ベース210の表面上を摺動する。被保持部220が第2位置で保持部120に保持された際、節度部材126は、凹部210aに係合する。このため、使用者には、節度感が伝わる。これにより、シリンジ内の気泡は、シリンジの先端に移動する。
【0043】
シリンジ内の気泡を抜く操作の完了後、保持部120によって被保持部220が第1位置で保持されるようにシリンジポンプ5及び固定部材200をクランプ100に対して回転させる。被保持部220が第1位置で保持部120に保持された際、節度部材126が凹部210aに係合する。このため、使用者には、節度感が伝わる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態のクランプ構造10では、被保持部220が保持部120に保持される位置を変更することによってポール2に対するシリンジの姿勢が変更される。このため、クランプ100によってシリンジポンプ5がポール2に取り付けられた状態において、シリンジポンプ5の使用前に保持部120が第2位置で被保持部220を保持することによってシリンジ内の気泡を抜き、その後、保持部120が第1位置で被保持部220を保持することによってシリンジを使用することが可能となる。
【0045】
よって、シリンジポンプ5がポール2に取り付けられた状態において、シリンジ内の気泡を抜く操作のために、シリンジポンプ5をクランプ100から外す操作、あるいは、シリンジポンプ5からシリンジを取り外す操作が不要となる。
【0046】
また、固定部材200は、保持部120に対して360度回転可能であり、被保持部220は、第1位置及び第2位置を含む4つの位置で保持部120に保持されることが可能である。このため、例えば、機器が薬剤を含む場合、この機器及び固定部材200をクランプ100に対して回転させることにより、機器がポール2に取り付けられた状態のまま薬剤を撹拌することが可能となる。
【0047】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0048】
保持部120及び被保持部220の形状は、適宜変更が可能である。例えば、保持部120は、基部122から立ち上がる起立部と、起立部の先端から内向き又は外向きに突出する突出部と、を有し、被保持部220は、前記突出部を保持する形状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 シリンジポンプユニット、2 ポール、5 シリンジポンプ(機器)、10 クランプ構造、100 クランプ、110 クランプ部、112 クランプ本体、114 ハンドル、120 保持部、122 基部、122h 貫通孔、124 張出部、126 節度部材、126a 筒状部、126b 節度部、128 付勢部材、200 固定部材、210 ベース、220 被保持部。