(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20240702BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20240702BHJP
F04C 15/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F04C2/10 341E
F04C15/00 K
F04C15/06 A
(21)【出願番号】P 2020144476
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-065974(JP,U)
【文献】特開2011-163163(JP,A)
【文献】特開2012-193616(JP,A)
【文献】実開平06-049779(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
F04C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なインナーロータと、
前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、
前記インナーロータおよび前記アウターロータを収容するポンプ室を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの軸方向一方側に位置する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの軸方向の間に位置するセパレートプレートと、
を備え、
前記セパレートプレートは、
前記ポンプ室の内部に繋がる吸入孔と、
前記吸入孔の前記中心軸回りの
下流側に離れて位置し、前記ポンプ室の内部に繋がる吐出孔と、
を有し、
前記第2ハウジングは、
前記吸入孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吸入ポートと、
前記吸入ポートの
下流側に離れて位置し、前記吐出孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吐出ポートと、
を有し、
前記吐出孔は、
吐出孔本体部と、
前記吐出孔本体部の
上流側の端部から
上流側に突出する突出部と、
を有し、
前記突出部は、軸方向に見て前記吐出ポートの外側で、かつ、周方向において前記吐出ポートよりも前記吸入孔の
下流側の端部に近い位置に位置
し、
前記突出部の軸方向一方側の開口と前記第2ハウジングとの上側の端面とによって、前記吐出孔本体部と前記吐出ポートの底面とによって構成された凹部よりも軸方向の深さが浅い凹部が構成される、ポンプ。
【請求項2】
前記突出部における前記中心軸を中心とする径方向の寸法は、前記吐出孔本体部の周方向他方側の端部における径方向の寸法よりも小さい、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なインナーロータと、
前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、
前記インナーロータおよび前記アウターロータを収容するポンプ室を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの軸方向一方側に位置する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの軸方向の間に位置するセパレートプレートと、
を備え、
前記セパレートプレートは、
前記ポンプ室の内部に繋がる吸入孔と、
前記吸入孔の前記中心軸回りの
下流側に離れて位置し、前記ポンプ室の内部に繋がる吐出孔と、
を有し、
前記第2ハウジングは、
前記吸入孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吸入ポートと、
前記吸入ポートの
下流側に離れて位置し、前記吐出孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吐出ポートと、
を有し、
前記吐出孔は、
吐出孔本体部と、
前記吐出孔本体部の
上流側の端部から
上流側に突出する突出部と、
を有し、
前記突出部における前記中心軸を中心とする径方向の寸法は、前記吐出孔本体部の
上流側の端部における径方向の寸法よりも小さ
く、
前記突出部の軸方向一方側の開口と前記第2ハウジングとの上側の端面とによって、前記吐出孔本体部と前記吐出ポートの底面とによって構成された凹部よりも軸方向の深さが浅い凹部が構成される、ポンプ。
【請求項4】
前記突出部の径方向の寸法は、前記吐出孔本体部から前記吸入孔に近づくに従って小さくなっている、請求項2または3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記突出部は、前記吐出孔本体部の径方向の中央部に設けられている、請求項2から4のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記吸入孔および前記吐出孔本体部は、周方向に延び、
前記吸入孔の径方向の寸法は、周方向において前記突出部に近づくに従って大きくなり、
前記吐出孔本体部の径方向の寸法は、周方向において前記突出部から離れるに従って小さくなっている、請求項2から5のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項7】
前記吐出ポートのうち軸方向における前記吐出孔側を向く底面は、前記
吐出ポートの
上流側の端部から
下流側に離れるに従って前記吐出孔から軸方向に離れる傾斜部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項8】
軸方向に見て、前記吸入孔の全体は、前記吸入ポートの全体と重なり合い、
軸方向に見て、前記吐出孔本体部の全体は、前記吐出ポートの全体と重なり合っている、請求項1から7のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項9】
軸方向に見て、前記突出部の内縁は、曲線状である、請求項1から8のいずれか一項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
第1ハウジングと第2ハウジングとの間に位置するセパレートプレートを備えるポンプが知られている。例えば、特許文献1には、自動車のトランスミッション用電動ポンプユニットに備えられるポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなポンプにおいては、セパレートプレートに設けられた吐出孔を介して、ポンプ室内の流体が吐出ポートに吐出される。このとき、ポンプ室内から吐出ポートへと急激に流体が流れ、ポンプ室内から吐出された流体の圧力が大きく変動する場合がある。これにより、ポンプ室内から吐出された流体の圧力の脈動が大きくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ポンプ室内から吐出される流体の圧力の脈動を抑制できる構造を有するポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なインナーロータと、前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、前記インナーロータおよび前記アウターロータを収容するポンプ室を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの軸方向一方側に位置する第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの軸方向の間に位置するセパレートプレートと、を備える。前記セパレートプレートは、前記ポンプ室の内部に繋がる吸入孔と、前記吸入孔の前記中心軸回りの周方向一方側に離れて位置し、前記ポンプ室の内部に繋がる吐出孔と、を有する。前記第2ハウジングは、前記吸入孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吸入ポートと、前記吸入ポートの周方向一方側に離れて位置し、前記吐出孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吐出ポートと、を有する。前記吐出孔は、吐出孔本体部と、前記吐出孔本体部の周方向他方側の端部から周方向他方側に突出する突出部と、を有する。前記突出部は、軸方向に見て前記吐出ポートの外側で、かつ、周方向において前記吐出ポートよりも前記吸入孔の周方向一方側の端部に近い位置に位置する。
【0007】
本発明のポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なインナーロータと、前記インナーロータを囲み、前記インナーロータと噛み合うアウターロータと、前記インナーロータおよび前記アウターロータを収容するポンプ室を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの軸方向一方側に位置する第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの軸方向の間に位置するセパレートプレートと、を備える。前記セパレートプレートは、前記ポンプ室の内部に繋がる吸入孔と、前記吸入孔の前記中心軸回りの周方向一方側に離れて位置し、前記ポンプ室の内部に繋がる吐出孔と、を有する。前記第2ハウジングは、前記吸入孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吸入ポートと、前記吸入ポートの周方向一方側に離れて位置し、前記吐出孔を介して前記ポンプ室の内部に繋がる吐出ポートと、を有する。前記吐出孔は、吐出孔本体部と、前記吐出孔本体部の周方向他方側の端部から周方向他方側に突出する突出部と、を有する。前記突出部における前記中心軸を中心とする径方向の寸法は、前記吐出孔本体部の周方向他方側の端部における径方向の寸法よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、ポンプにおいて、ポンプ室内から吐出される流体の圧力の脈動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態のポンプが備えられた油圧制御装置を模式的に示す図であって、バルブが閉じた状態を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のポンプが備えられた油圧制御装置を模式的に示す図であって、バルブが開いた状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のポンプの一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のポンプ機構を上側から見た図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の第1ハウジングを下側から見た図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のポンプの一部を示す断面図であって、
図4におけるVI-VI断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の吸入孔、吐出孔、吸入ポート、および吐出ポートを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の吐出孔の一部および吐出ポートの一部を上側から見た図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の変形例における吐出孔の一部および吐出ポートの一部を上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明においては、図に適宜示す中心軸J1が延びる方向と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸J1は、後述するインナーロータ50の回転軸である。特に断りのない限り、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1回りの周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向は、図においてZ軸で示す。軸方向のうちZ軸の正の側を「上側」と呼び、軸方向のうちZ軸の負の側を「下側」と呼ぶ。本実施形態において「下側」は、「軸方向一方側」に相当する。周方向は、図において矢印θで示す。矢印θは、上側から見て、中心軸J1を中心とする反時計回りに進む向きを向いている。周方向のうち矢印θが向く側を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち矢印θが向く側と逆側を「周方向他方側」と呼ぶ。なお、上側および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態のポンプ10は、油圧制御装置1に備えられるオイルポンプである。つまり、本実施形態のポンプ10によって送られる流体は、オイルOである。油圧制御装置1は、例えば、車両に搭載される。油圧制御装置1は、ポンプ10と、バルブ80と、を備える。
図3に示すように、ポンプ10は、ハウジング2と、ポンプ機構70と、を備える。ハウジング2は、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、セパレートプレート40と、を有する。つまり、ポンプ10は、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、セパレートプレート40と、を備える。
【0012】
第1ハウジング20と第2ハウジング30とセパレートプレート40とは、例えば、油圧制御装置1のハウジングも構成している。第1ハウジング20と第2ハウジング30とは、セパレートプレート40を軸方向に挟んで配置されている。第1ハウジング20は、例えば、セパレートプレート40の上側に位置する。第2ハウジング30は、例えば、セパレートプレート40の下側に位置する。第1ハウジング20と第2ハウジング30とは、例えば、それぞれオイルOが流れる油路を内部に有する部材である。以下の説明においては、各ハウジングに設けられる油路において、オイルOが流れる方向の上流側を単に「上流側」と呼び、オイルOが流れる方向の下流側を単に「下流側」と呼ぶ。
【0013】
図3に示すように、第1ハウジング20は、本体部21と、取付部22と、を有する。取付部22は、本体部21から上側に突出している。取付部22は、例えば、上側に開口する筒状である。取付部22には、ポンプ機構70を駆動する駆動装置90が取り付けられる。
【0014】
駆動装置90は、例えば、モータやエンジンである。駆動装置90は、筒状部91と、シャフト92と、Oリング93と、を備える。筒状部91は、駆動装置90のハウジングの一部である。筒状部91は、下側に底部を有する筒状である。筒状部91は、取付部22の内側に嵌め合わされる。筒状部91の外周面には、Oリング93が嵌め込まれる溝が設けられている。Oリング93は、筒状部91の外周面と取付部22の内周面との間を封止する。筒状部91の底部は、孔部91aを有する。シャフト92は、中心軸J1回りに回転可能である。中心軸J1は、軸方向に延びる仮想線である。シャフト92は、孔部91aを介して、筒状部91よりも下側に突出している。シャフト92の下側の端部は、ポンプ機構70に連結される。
【0015】
第1ハウジング20は、ポンプ室23と、吸入側凹部25と、吐出側凹部26と、を有する。ポンプ室23と吸入側凹部25と吐出側凹部26とは、例えば、本体部21に設けられている。
【0016】
ポンプ室23は、内部にポンプ機構70を収容する部分である。ポンプ室23は、第1ハウジング20の下側の面から上側に窪んでいる。ポンプ室23は、下側に開口している。
図4に示すように、ポンプ室23は、軸方向に見て、偏心軸J2を中心とする円形状である。偏心軸J2は、中心軸J1と平行に延び、中心軸J1に対して中心軸J1の径方向に偏心した仮想軸である。
図3に示すように、ポンプ室23における下側の開口の一部は、セパレートプレート40によって塞がれている。ポンプ室23の内部は、孔部24を介して、取付部22の内部に繋がっている。
【0017】
孔部24は、ポンプ室23の内側の面のうち上側に位置する面から本体部21の上側の面まで第1ハウジング20を軸方向に貫通している。
図5に示すように、孔部24は、例えば、中心軸J1を中心とする円形状の孔である。
図3に示すように、孔部24は、本体部21の上側の面のうち、取付部22によって囲まれた部分に開口している。孔部24の内径は、例えば、取付部22の内径よりも小さい。
【0018】
吸入側凹部25および吐出側凹部26は、ポンプ室23の内側面のうち上側に位置する面から上側に窪んでいる。吸入側凹部25と吐出側凹部26とは、中心軸J1を径方向に挟んで配置されている。
図5に示すように、吸入側凹部25および吐出側凹部26は、周方向に延びている。吸入側凹部25は、例えば、軸方向に見て、後述する吸入ポート31と同じ形状であり、かつ、吸入ポート31と同じ大きさである。吸入側凹部25と吸入ポート31とは、例えば、軸方向に見て、互いに全体が重なり合っている。吐出側凹部26は、例えば、軸方向に見て、後述する吐出ポート32と同じ形状であり、かつ、吐出ポート32と同じ大きさである。吐出側凹部26と吐出ポート32とは、例えば、軸方向に見て、互いに全体が重なり合っている。
【0019】
図示は省略するが、第1ハウジング20には、ポンプ室23の他に、例えば、オイルOが流れる油路も設けられている。第1ハウジング20に設けられた油路は、例えば、軸方向と直交する平面に沿って延びている。第1ハウジング20に設けられた油路は、例えば、第1ハウジング20の下側の面から上側に窪み軸方向と直交する方向に延びる溝がセパレートプレート40によって下側から塞がれることで構成されている。
【0020】
図3に示すように、第2ハウジング30は、第1ハウジング20の下側に位置する。第2ハウジング30は、第1ハウジング20との間でセパレートプレート40を軸方向に挟んでいる。第2ハウジング30は、吸入ポート31と、吐出ポート32と、を有する。吸入ポート31および吐出ポート32は、軸方向に見て、ポンプ室23に重なっている。吸入ポート31および吐出ポート32は、例えば、ポンプ室23の下側に位置する。吸入ポート31は、後述する吸入孔41を介してポンプ室23の内部に繋がっている。吐出ポート32は、後述する吐出孔42を介してポンプ室23の内部に繋がっている。吸入ポート31には、ポンプ室23に吸入されるオイルOが流入する。吐出ポート32には、ポンプ室23から吐出されるオイルOが流入する。
【0021】
吸入ポート31および吐出ポート32は、第2ハウジング30の上側の面から下側に窪んでいる。
図4に示すように、吸入ポート31と吐出ポート32とは、周方向に延びている。より詳細には、吸入ポート31の径方向内側の縁部および吐出ポート32の径方向内側の縁部は、中心軸J1を中心とする周方向に延びている。吸入ポート31の径方向外側の縁部および吐出ポート32の径方向外側の縁部は、偏心軸J2を中心とする周方向に延びている。吸入ポート31と吐出ポート32とは、中心軸J1を径方向に挟んで配置されている。吸入ポート31と吐出ポート32とは、周方向に間隔を空けて配置されている。吐出ポート32は、吸入ポート31の周方向一方側(+θ側)に離れて位置する。
【0022】
吸入ポート31の径方向の寸法は、周方向一方側に向かうに従って大きくなっている。吐出ポート32の径方向の寸法は、周方向一方側に向かうに従って小さくなっている。吸入ポート31内および吐出ポート32内においてオイルOは、周方向一方側向き(+θ向き)に流れる。つまり、吸入ポート31および吐出ポート32においては、周方向一方側が下流側であり、周方向他方側が上流側である。
【0023】
図6に示すように、吸入ポート31の底面31aは、傾斜部31sを有する。底面31aは、吸入ポート31の内側面のうち下側に位置する面である。底面31aは、軸方向における後述する吸入孔41側、すなわち上側を向いている。底面31aは、周方向に延びている。傾斜部31sは、周方向一方側(+θ側)に向かうに従って上側に位置する。つまり、傾斜部31sは、吐出ポート32の周方向他方側(-θ側)の端部に近づくに従って吸入孔41に軸方向に近づいている。
【0024】
傾斜部31sは、例えば、底面31aのうち周方向一方側(+θ側)寄りの部分である。傾斜部31sの周方向一方側の端部は、底面31aの周方向一方側の端部である。図示は省略するが、底面31aのうち周方向他方側(-θ側)寄りの部分は、例えば、軸方向と直交する平坦部となっている。底面31aにおける平坦部の周方向他方側の端部は、例えば、底面31aの周方向他方側の端部である。底面31aにおける平坦部の周方向一方側の端部は、例えば、傾斜部31sの周方向他方側の端部と繋がっている。
【0025】
吐出ポート32の底面32aは、傾斜部32sを有する。底面32aは、吐出ポート32の内側面のうち下側に位置する面である。底面32aは、軸方向における後述する吐出孔42側、すなわち上側を向いている。底面32aは、周方向に延びている。傾斜部32sは、周方向一方側(+θ側)に向かうに従って下側に位置する。つまり、傾斜部32sは、吐出ポート32の周方向一方側の端部から周方向一方側に離れるに従って吐出孔42から軸方向に離れている。
【0026】
傾斜部32sは、例えば、底面32aのうち周方向他方側(-θ側)寄りの部分である。傾斜部32sの周方向他方側の端部は、底面32aの周方向他方側の端部である。図示は省略するが、底面32aのうち周方向一方側(+θ側)寄りの部分は、例えば、軸方向と直交する平坦部となっている。底面32aにおける平坦部の周方向一方側の端部は、例えば、底面32aの周方向一方側の端部である。底面32aにおける平坦部の周方向他方側の端部は、例えば、傾斜部32sの周方向一方側の端部と繋がっている。
【0027】
図4に示すように、第2ハウジング30は、吸入油路33と、吐出油路34と、を有する。吸入油路33は、吸入ポート31に繋がっている。吸入油路33には、油圧制御装置1の外部からオイルOが吸入される。吸入油路33に吸入されたオイルOは、吸入ポート31に流入する。吐出油路34は、吐出ポート32に繋がっている。ポンプ機構70によってポンプ室23内から吐出ポート32に吐出されたオイルOは、吐出油路34に流入する。吐出油路34に流入したオイルOは、油圧制御装置1の外部に吐出される。
【0028】
第2ハウジング30に設けられた各油路は、例えば、軸方向と直交する平面に沿って延びている。第2ハウジング30に設けられた各油路は、例えば、第2ハウジング30の上側の面から下側に窪み軸方向と直交する方向に延びる溝がセパレートプレート40によって上側から塞がれることで構成されている。
【0029】
図6に示すように、セパレートプレート40は、第1ハウジング20と第2ハウジング30との軸方向の間に位置する。セパレートプレート40は、軸方向を向く板面を有する板状である。セパレートプレート40の板面は、例えば、軸方向と直交している。セパレートプレート40の上側の面は、第1ハウジング20の下側の端面に接触している。セパレートプレート40の下側の面は、第2ハウジング30の上側の端面に接触している。セパレートプレート40によって、第1ハウジング20に設けられた油路と第2ハウジング30に設けられた油路とが軸方向に隔てられている。
【0030】
セパレートプレート40は、吸入孔41と、吐出孔42と、を有する。吸入孔41および吐出孔42は、セパレートプレート40を軸方向に貫通している。吸入孔41および吐出孔42は、ポンプ室23の内部に繋がっている。吸入孔41および吐出孔42は、軸方向に見て、ポンプ室23に重なっている。吸入孔41および吐出孔42は、例えば、ポンプ室23の下側に位置する。吸入孔41は、ポンプ室23と吸入ポート31との軸方向の間に位置する。吐出孔42は、ポンプ室23と吐出ポート32との軸方向の間に位置する。
【0031】
図4および
図7に示すように、本実施形態において吸入孔41は、周方向に延びている。吸入孔41の径方向の寸法は、周方向一方側(+θ側)に向かうに従って大きくなっている。吸入孔41のうち周方向一方側の端部は、吸入孔41のうちで、後述する突出部42bに最も周方向に近い部分である。つまり、本実施形態において吸入孔41の径方向の寸法は、周方向において突出部42bに近づくに従って大きくなっている。以下の説明においては、吸入孔41の周方向一方側の端部を、下流側端部41cと呼ぶ。吸入孔41は、例えば、軸方向に見て、吸入ポート31と同じ形状であり、かつ、吸入ポート31と同じ大きさである。本実施形態では、軸方向に見て、吸入孔41の全体は、吸入ポート31の全体と重なり合っている。
【0032】
なお、本明細書において「軸方向に見て、或る対象の全体が、他の対象の全体と重なり合う」とは、軸方向に見た際に、或る対象が他の対象と重ならない部分を有さず、かつ、他の対象が或る対象と重ならない部分を有しないことを含む。
【0033】
吐出孔42は、吸入孔41の中心軸J1回りの周方向一方側(+θ側)に離れて位置する。吐出孔42は、吐出孔本体部42aと、突出部42bと、を有する。本実施形態において吐出孔本体部42aは、周方向に延びている。吐出孔本体部42aの径方向の寸法は、周方向一方側(+θ側)に向かうに従って小さくなっている。吐出孔本体部42aのうち周方向一方側の端部は、吐出孔42のうちで、突出部42bから最も周方向に離れた部分である。つまり、本実施形態において吐出孔本体部42aの径方向の寸法は、周方向において突出部42bから離れるに従って小さくなっている。吐出孔本体部42aは、例えば、軸方向に見て、吐出ポート32と同じ形状であり、かつ、吐出ポート32と同じ大きさである。本実施形態では、軸方向に見て、吐出孔本体部42aの全体は、吐出ポート32の全体と重なり合っている。
【0034】
突出部42bは、吐出孔本体部42aの周方向他方側(-θ側)の端部から周方向他方側に突出している。以下の説明においては、吐出孔本体部42aの周方向他方側の端部を、上流側端部42cと呼ぶ。突出部42bは、上流側端部42cから吸入孔41の下流側端部41cに向かって周方向他方側に突出している。突出部42bは、吐出孔本体部42aの内側面のうち周方向他方側の縁部に周方向他方側に窪む凹部が設けられることで作られている。
【0035】
本実施形態において突出部42bは、軸方向に見て吐出ポート32の外側で、かつ、周方向において吐出ポート32よりも吸入孔41の周方向一方側(+θ側)の端部、すなわち下流側端部41cに近い位置に位置する。つまり、本実施形態において突出部42bは、軸方向に見て、吐出ポート32と重なっていない。突出部42bは、軸方向に見て、第2ハウジング30の上側の端面と重なっている。第2ハウジング30の上側の端面のうち、軸方向に見て突出部42bと重なる部分は、セパレートプレート40の上側に露出する露出部30aである。
図6に示すように、露出部30aは、突出部42bの内部を介して、ポンプ室23の内部に露出している。これにより、露出部30aは、ポンプ室23内に収容されたポンプ機構70と軸方向に対向している。
【0036】
図8に示すように、本実施形態において、突出部42bにおける径方向の寸法L2は、吐出孔本体部42aの上流側端部42cにおける径方向の寸法L1よりも小さい。突出部42bの径方向の寸法L2は、例えば、周方向他方側(-θ側)に向かうに従って小さくなっている。つまり、本実施形態において突出部42bの径方向の寸法L2は、吐出孔本体部42aから吸入孔41に近づくに従って小さくなっている。なお、
図8において示す寸法L2は、突出部42bの周方向一方側(+θ側)の端部における寸法L2を示している。
【0037】
突出部42bは、例えば、吐出孔本体部42aの径方向内縁部および吐出孔本体部42aの径方向外縁部から径方向に離れて配置されている。本実施形態において突出部42bは、上流側端部42cの径方向の中央部から周方向他方側(-θ側)に突出している。つまり、本実施形態において突出部42bは、吐出孔本体部42aの径方向の中央部に設けられている。
【0038】
なお、本明細書において「或る対象が他の対象の径方向の中央部に設けられている」とは、或る対象が、他の対象の径方向両縁部から径方向に離れており、かつ、或る対象の径方向位置が他の対象の径方向の中心における径方向位置を含んでいればよい。
【0039】
本実施形態では、軸方向に見て、突出部42bの内縁は、曲線状である。軸方向に見て、突出部42bの内縁は、例えば、周方向他方側(-θ側)に凸となる略半円弧状の部分を含む。突出部42bの内縁のうち吐出孔本体部42aの内縁との接続部分は、丸みを帯びており、吐出孔本体部42aの内縁と滑らかに繋がっている。なお、本明細書において「或る対象が曲線状である」とは、或る対象の形状が尖った角を有しない形状であればよい。
【0040】
図1および
図2に示すように、ハウジング2は、バルブ80が収容されるスプール穴81を有する。スプール穴81は、例えば、第1ハウジング20に設けられている。スプール穴81は、一方向に延びている。バルブ80は、例えば、スプールバルブである。バルブ80は、スプール穴81内に、スプール穴81が延びる一方向に移動可能に収容されている。スプール穴81内には、弾性部材82が収容されている。弾性部材82は、例えば、スプール穴81が延びる方向に延びるコイルスプリングである。弾性部材82は、バルブ80に対して、スプール穴81が延びる一方向に弾性力を加えている。
【0041】
ハウジング2は、リリーフ油路83を有する。リリーフ油路83は、例えば、第1ハウジング20と第2ハウジング30とに跨って設けられている。リリーフ油路83は、吐出油路34と吸入油路33とを繋ぐ油路である。リリーフ油路83は、吐出油路34からスプール穴81を通って吸入油路33まで延びている。リリーフ油路83のうちスプール穴81よりも吐出油路34に近い側の第1部分83aと、リリーフ油路83のうちスプール穴81よりも吸入油路33に近い側の第2部分83bとは、バルブ80によって接続と遮断とが切り替えられる。
【0042】
図1は、バルブ80が閉じた状態となり、第1部分83aと第2部分83bとが遮断された状態を示している。
図2は、バルブ80が開いた状態となり、第1部分83aと第2部分83bとが接続された状態を示している。
図2に示すように、第1部分83aと第2部分83bとが接続された状態においては、吐出油路34内のオイルOの一部がリリーフ油路83を通って、吸入油路33に流入する。
【0043】
ハウジング2は、接続油路84を有する。接続油路84は、例えば、第1ハウジング20に設けられている。接続油路84は、例えば、第1部分83aとスプール穴81とを繋いでいる。スプール穴81内には、第1部分83aおよび接続油路84を介して、吐出油路34内のオイルOが流入する。接続油路84を介してスプール穴81内に流入したオイルOは、バルブ80に対して、弾性部材82がバルブ80に弾性力を加える向きと逆向きに力を加える。
【0044】
吐出油路34内のオイルOの圧力が大きくなると、接続油路84を介してスプール穴81内に流入するオイルOの圧力も大きくなる。例えば、
図1に示すバルブ80が閉じた状態において、吐出油路34内のオイルOの圧力が所定の圧力よりも大きくなると、接続油路84からスプール穴81内に流入するオイルOによってバルブ80に加えられる力が、弾性部材82によってバルブ80に加えられる力よりも大きくなる。そのため、バルブ80が弾性部材82の弾性力に抗して移動し、
図2に示すバルブ80が開いた状態となる。これにより、リリーフ油路83を介して吐出油路34内からオイルOの一部が排出され、吐出油路34内のオイルOの圧力が低下する。
【0045】
吐出油路34内のオイルOの圧力が所定の圧力よりも小さくなると、接続油路84からスプール穴81内に流入するオイルOによってバルブ80に加えられる力が、弾性部材82によってバルブ80に加えられる力よりも小さくなる。そのため、バルブ80が弾性部材82の弾性力によって移動させられ、再び
図1に示すバルブ80が閉じた状態になる。このようにして、吐出油路34内のオイルOの圧力によってバルブ80が開閉されることで、吐出油路34内のオイルOの圧力が所定の圧力より大きくなることを抑制できる。
【0046】
図4に示すように、ポンプ機構70は、インナーロータ50と、アウターロータ60と、を有する。インナーロータ50およびアウターロータ60は、ポンプ室23内に収容されている。インナーロータ50は、中心軸J1を中心として回転可能である。インナーロータ50は、環状部51と、複数の外歯部52と、を有する。環状部51は、例えば、中心軸J1を中心とする円環状である。環状部51の外縁は、例えば、軸方向に見て、吸入孔41の径方向内縁部、吸入ポート31の径方向内縁部、吐出孔本体部42aの径方向内縁部、および吐出ポート32の径方向内縁部と重なっている。環状部51の外縁は、軸方向に見た際におけるインナーロータ50の外縁のうち中心軸J1からの距離が最小となる部分である。
【0047】
複数の外歯部52は、環状部51の外周面から径方向外側に突出している。複数の外歯部52は、中心軸J1回りの周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数の外歯部52によって構成されるインナーロータ50の歯形は、例えば、トロコイド歯形である。軸方向に見たインナーロータ50の外縁の形状は、例えば、トロコイド曲線からなる。
【0048】
図3に示すように、インナーロータ50は、環状部51の径方向内縁部から上側に突出する突出筒部53を有する。突出筒部53は、例えば、中心軸J1を中心とする円筒状である。突出筒部53は、上側に開口している。突出筒部53は、孔部24の内部に下側から嵌め合わされている。
【0049】
環状部51の内部と突出筒部53の内部とによって、インナーロータ50を軸方向に貫通する連結孔部54が構成されている。
図4に示すように、連結孔部54の内周面には、中心軸J1を径方向に挟んで対向して配置された一対の平面部54aが設けられている。平面部54aは、例えば、径方向と直交する平坦な面である。
【0050】
図3に示すように、インナーロータ50には、駆動装置90のシャフト92が連結される。シャフト92は、インナーロータ50の上側から連結孔部54に挿入される。図示は省略するが、シャフト92の外周面には、一対の平面部54aと対向して配置される平面部が設けられている。インナーロータ50の平面部54aとシャフト92の平面部とが対向して配置されることで、シャフト92がインナーロータ50に対して周方向に引っ掛かる。これにより、シャフト92が中心軸J1回りに回転することで、インナーロータ50も中心軸J1回りに回転する。
【0051】
図4に示すように、アウターロータ60は、インナーロータ50を囲む環状である。アウターロータ60は、例えば、偏心軸J2を中心とする円環状である。アウターロータ60は、ポンプ室23の内部に嵌め合わされている。アウターロータ60は、環状部61と、複数の内歯部62と、を有する。環状部61は、例えば、偏心軸J2を中心とする円環状である。環状部61の内縁は、例えば、軸方向に見て、吸入孔41の径方向外縁部、吸入ポート31の径方向外縁部、吐出孔本体部42aの径方向外縁部、および吐出ポート32の径方向外縁部と重なっている。環状部61の内縁は、軸方向に見た際におけるアウターロータ60の内縁のうち偏心軸J2からの距離が最大となる部分である。
【0052】
複数の内歯部62は、環状部61の内周面から、偏心軸J2を中心とする径方向の内側に突出している。複数の内歯部62は、偏心軸J2回りの周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数の内歯部62によって構成されるアウターロータ60の歯形は、例えば、トロコイド歯形である。軸方向に見たアウターロータ60の内縁の形状は、例えば、トロコイド曲線からなる。
【0053】
内歯部62が外歯部52に噛み合うことで、アウターロータ60は、インナーロータ50と噛み合っている。インナーロータ50とアウターロータ60とは、周方向の一部において噛み合っている。インナーロータ50が駆動装置90によって中心軸J1回りに回転させられることで、インナーロータ50と噛み合うアウターロータ60が偏心軸J2回りに回転させられる。本実施形態においてインナーロータ50およびアウターロータ60は、周方向一方側向き(+θ向き)に回転させられる。
【0054】
駆動装置90によってインナーロータ50が中心軸J1回りに回転させられると、油圧制御装置1の外部から、吸入油路33内にオイルOが吸入される。
図6に示すように、吸入油路33に吸入されたオイルOは、吸入ポート31および吸入孔41を介して、ポンプ室23内に吸入される。ポンプ室23内に吸入されたオイルOは、インナーロータ50の外歯部52とアウターロータ60の内歯部62との隙間に入り、インナーロータ50およびアウターロータ60の回転に伴ってポンプ室23内を周方向一方側(+θ側)に移動させられる。外歯部52と内歯部62との隙間内のオイルOは、周方向一方側に移動させられた後、吐出孔42および吐出ポート32を介して、吐出油路34に吐出される。
【0055】
本実施形態によれば、吐出孔42は、吐出孔本体部42aと、吐出孔本体部42aの周方向他方側の端部、すなわち上流側端部42cから周方向他方側に突出する突出部42bと、を有する。突出部42bは、軸方向に見て吐出ポート32の外側で、かつ、周方向において吐出ポート32よりも吸入孔41の周方向一方側の端部、すなわち下流側端部41cに近い位置に位置する。そのため、
図6に示すように、ポンプ室23内において周方向一方側に送られたオイルOは、吐出孔本体部42aよりも先に突出部42bに流入する。また、突出部42bは軸方向に見て吐出ポート32の外側に位置するため、突出部42bの下側の開口は第2ハウジング30の上側の端面によって塞がれている。これにより、突出部42bと第2ハウジング30との上側の端面とによって、吐出孔本体部42aと吐出ポート32の底面32aとによって構成された凹部よりも軸方向の深さが浅い凹部が作られている。したがって、突出部42bに流入するオイルOの量は、吐出孔本体部42aに流入するオイルOの量よりも少なくなる。突出部42bに流入したオイルOは、露出部30a上を周方向一方側に流れて吐出ポート32に流入する。
【0056】
以上のように、吐出孔42のうちポンプ室23内からオイルOが流入し始める部分に、オイルOの流入量を吐出孔本体部42aよりも小さくできる突出部42bを設けることで、ポンプ機構70の周方向の回転に伴ってポンプ室23内から吐出ポート32に流入し始める際のオイルOの流量を少なくできる。そのため、ポンプ室23内から吐出ポート32へと急激にオイルOが流れることを抑制できる。これにより、ポンプ室23内から吐出された際にオイルOの圧力が大きく変動することを抑制できる。したがって、ポンプ10において、ポンプ室23内から吐出されるオイルOの圧力の脈動を抑制できる。
【0057】
また、突出部42bはセパレートプレート40に設けられているため、セパレートプレート40の一部をプレス加工などによって打ち抜くことで容易に突出部42bを作ることができる。これにより、例えば、第2ハウジング30に設けられた吐出ポート32に突出部42bのような凹部または溝などを設ける場合に比べて、吐出ポート32に流入し始める際のオイルOの流量を少なくできる部分を容易に設けることができる。したがって、ハウジング2の製造を容易にしつつ、ポンプ室23内から吐出されるオイルOの圧力の脈動を抑制できる。また、セパレートプレート40に突出部42bを設けることで、第1ハウジング20および第2ハウジング30を変更せずにセパレートプレート40のみを変えることで、突出部42bの形状を容易に変更できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、突出部42bにおける径方向の寸法L2は、吐出孔本体部42aの周方向他方側の端部、すなわち上流側端部42cにおける径方向の寸法L1よりも小さい。そのため、ポンプ室23内から突出部42bを介して吐出ポート32に流入するオイルOの流量をより好適に少なくしやすい。これにより、ポンプ室23内から吐出ポート32内にオイルOが流入し始める際のオイルOの流量をより好適に少なくしやすい。したがって、ポンプ室23内から吐出された際にオイルOの圧力が大きく変動することをより抑制でき、ポンプ室23内から吐出されるオイルOの圧力の脈動をより抑制できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、突出部42bの径方向の寸法L2は、吐出孔本体部42aから吸入孔41に近づくに従って小さくなっている。そのため、周方向一方側向きに回転するインナーロータ50とアウターロータ60との隙間に対向する突出部42bの径方向の寸法は、インナーロータ50およびアウターロータ60が周方向一方側に回転するに従って大きくなっていく。これにより、ポンプ室23内から突出部42b内に流入するオイルOの量を、インナーロータ50およびアウターロータ60が周方向一方側に回転するに従って徐々に増加させていくことができる。したがって、突出部42bを介して吐出ポート32に流入するオイルOの量を徐々に増加させることができる。そのため、ポンプ室23内から吐出ポート32に急激にオイルOが流入することをより抑制できる。これにより、ポンプ室23内から吐出された際にオイルOの圧力が大きく変動することをより抑制できる。したがって、ポンプ室23内から吐出されるオイルOの圧力の脈動をより抑制できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、突出部42bは、吐出孔本体部42aの径方向の中央部に設けられている。ここで、
図4に示すように、インナーロータ50の外歯部52とアウターロータ60の内歯部62との隙間と吐出孔42の周方向他方側の端部とが軸方向に重なり始める際、外歯部52と内歯部62との隙間のうち吐出孔42と軸方向に重なる部分における径方向の寸法は、吐出孔本体部42aの上流側端部42cにおける径方向の寸法L1よりも小さい。また、外歯部52と内歯部62との隙間と吐出孔42の周方向他方側の端部とが軸方向に重なり始める際、外歯部52と内歯部62との隙間のうち吐出孔42と軸方向に重なる部分における径方向位置は、吐出孔本体部42aの上流側端部42cにおける径方向中央部の径方向位置と同じになりやすい。そのため、突出部42bを吐出孔本体部42aの径方向の中央部に設けることで、突出部42bの大きさを小さくしつつ、外歯部52と内歯部62との隙間が吐出孔42と軸方向に重なり始めた際に突出部42bを好適に外歯部52と内歯部62との隙間と対向させることができる。したがって、セパレートプレート40に設ける孔の面積を小さくでき、セパレートプレート40の強度が低下することを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、吸入孔41の径方向の寸法は、周方向において突出部42bに近づくに従って大きくなっている。ここで、
図4に示すように、インナーロータ50の環状部51の外縁とアウターロータ60の環状部61の内縁との径方向の距離は、吸入孔41と軸方向に重なる部分において周方向一方側に向かうに従って大きくなっている。また、吸入孔41と軸方向に重なる位置において、外歯部52と内歯部62との径方向の隙間も周方向一方側に向かうに従って大きくなっていく。そのため、吸入孔41の径方向の寸法を周方向において突出部42bに近づくに従って大きくすることで、外歯部52と内歯部62との隙間が大きくなるのに合わせて、吸入孔41の径方向の寸法を大きくできる。これにより、吸入孔41からポンプ室23内へとオイルOを好適に吸入しやすくしつつ、吸入孔41の大きさを比較的小さくしやすい。
【0062】
また、本実施形態によれば、吐出孔本体部42aの径方向の寸法は、周方向において突出部42bから離れるに従って小さくなっている。ここで、
図4に示すように、インナーロータ50の環状部51の外縁とアウターロータ60の環状部61の内縁との径方向の距離は、吐出孔本体部42aと軸方向に重なる部分において周方向一方側に向かうに従って小さくなっている。また、吐出孔本体部42aと軸方向に重なる位置において、外歯部52と内歯部62との径方向の隙間も周方向一方側に向かうに従って小さくなっていく。そのため、吐出孔本体部42aの径方向の寸法を周方向において突出部42bから離れるに従って小さくすることで、外歯部52と内歯部62との隙間が小さくなるのに合わせて、吐出孔本体部42aの径方向の寸法を小さくできる。これにより、ポンプ室23内から吐出孔本体部42aへとオイルOを好適に吐出しやすくしつつ、吐出孔本体部42aの大きさを比較的小さくしやすい。
【0063】
また、本実施形態によれば、吐出ポート32のうち軸方向における吐出孔42側を向く底面32aは、吸入ポート31の周方向一方側の端部、すなわち下流側端部41cから周方向一方側に離れるに従って吐出孔42から軸方向に離れる傾斜部32sを有する。そのため、傾斜部32sが設けられている部分において、吐出ポート32の軸方向の深さを、周方向一方側に向かうに従って徐々に深くすることができる。これにより、吐出孔本体部42aから吐出ポート32に流入するオイルOの量を、インナーロータ50およびアウターロータ60が周方向一方側に回転するに従って徐々に増加させていくことができる。したがって、オイルOが吐出孔本体部42aから吐出ポート32に流入し始めた際においても、吐出ポート32に流入するオイルOの流量が急激に増大することを抑制できる。そのため、ポンプ室23内から吐出された際にオイルOの圧力が大きく変動することをより抑制できる。これにより、ポンプ室23内から吐出されるオイルOの圧力の脈動をより抑制できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、軸方向に見て、吸入孔41の全体は、吸入ポート31の全体と重なり合っている。そのため、吸入ポート31から吸入孔41を介してポンプ室23内へとオイルOを好適に吸入できる。また、本実施形態によれば、軸方向に見て、吐出孔本体部42aの全体は、吐出ポート32の全体と重なり合っている。そのため、ポンプ室23内から吐出孔本体部42aを介して吐出ポート32へとオイルOを好適に吐出できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、軸方向に見て、突出部42bの内縁は、曲線状である。そのため、例えば、セパレートプレート40の一部を金型によって打ち抜いて突出部42bを作る場合において、軸方向に見て突出部42bの内縁が尖った角を有する形状である場合に比べて、金型が摩耗することを抑制できる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。吐出孔の突出部は、軸方向に見て吐出ポートの外側で、かつ、周方向において吐出ポートよりも吸入孔の周方向一方側の端部に近い位置に位置するならば、どのような形状であってもよいし、どのような大きさであってもよい。
【0067】
軸方向に見て、突出部の内縁は、尖った角を有する形状であってもよい。突出部は、
図8に二点鎖線で示すように、吐出孔本体部を周方向他方側に延長させた形状であってもよい。この場合、突出部の径方向の寸法は、例えば、吐出孔本体部の周方向他方側の端部における径方向の寸法よりも大きい。突出部は、
図9に示す突出部142bのような形状であってもよい。突出部142bは、周方向他方側に丸みを帯びた頂部を有する略三角形状である。突出部142bの内縁は、軸方向に見て、直線状に延びる部分と、湾曲して延びる部分と、を有する。突出部142bの内縁において、当該直線状に延びる部分と、当該湾曲して延びる部分とは、滑らかに繋がっている。つまり、軸方向に見て、突出部142bの内縁は、尖った角を有しない曲線状である。
【0068】
吐出孔の突出部は、突出部における径方向の寸法が吐出孔本体部の周方向他方側の端部における径方向の寸法よりも小さければ、軸方向に見て吐出ポートと重なる位置に設けられてもよい。つまり、例えば、上述した実施形態における突出部42bがより周方向一方側に位置して軸方向に見て吐出ポート32と重なってもよい。このような場合であっても、突出部の径方向の寸法が吐出孔本体部の周方向他方側の端部における径方向の寸法よりも小さいため、吐出孔から吐出ポートに流体が吐出され始める際における流体の流量を少なくできる。これにより、吐出ポートに急激に流体が流入することを抑制できる。したがって、ポンプ室内から吐出される流体の圧力の脈動を抑制できる。
【0069】
吸入孔の形状および吐出孔本体部の形状は、特に限定されない。軸方向に見て、吸入孔の一部は、吸入ポートと重ならなくてもよい。軸方向に見て、吐出孔本体部の一部は、吐出ポートと重ならなくてもよい。吸入ポートの底面は、傾斜部を有しなくてもよい。吐出ポートの底面は、傾斜部を有しなくてもよい。
【0070】
本発明が適用されるポンプの用途は、特に限定されない。ポンプは、油圧制御装置以外の機器に搭載されてもよい。ポンプは、車両に搭載される機器以外の機器に搭載されてもよい。ポンプが搭載された油圧制御装置は、車両以外の機器に搭載されてもよい。ポンプによって送られる流体は、特に限定されず、例えば、水等であってもよい。以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
2…ハウジング、10…ポンプ、20…第1ハウジング、23…ポンプ室、30…第2ハウジング、31…吸入ポート、32a…底面、32s…傾斜部、32…吐出ポート、40…セパレートプレート、41…吸入孔、42…吐出孔、42a…吐出孔本体部、42b,142b…突出部、50…インナーロータ、60…アウターロータ、J1…中心軸