(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240702BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240702BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20240702BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/20 Z
B29C55/12
C08J5/18 CFD
(21)【出願番号】P 2020154387
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-286439(JP,A)
【文献】特開2020-125405(JP,A)
【文献】特開2011-190387(JP,A)
【文献】特開2018-149809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 55/00-55/30、61/00ー61/10
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸およびリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液で処理した炭酸カルシウム粒子を
表層に含有し、下記式(I)(II)を満たす二軸延伸ポリエステルフィルム。
(Ra-σ)/Ra<7% (I)
0.5<(粒子含有層の厚み)/(炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2 (II)
ここで、(Ra-σ)/Raは以下により得られる値である。二軸延伸ポリエステルフィルムを10cm四方に切り出し、非接触光学式粗さ測定器(Zygo社製NewView7300)を用い、50倍対物レンズを使用して測定面積139μm×104μmで、場所をランダムに変えて40視野測定を行い、該測定器に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより、波長1.65~50μmの帯域通過フィルタを用いて、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、最大山高さ(Rp)、およびそれぞれの標準偏差である(Ra-σ)、(Rz-σ)、(Rp-σ)を求める。
体積平均径はSEM観察にて倍率5000倍で20視野以上の測定を行い、最低200個以上の粒子から円相当径を測定し、それを擬似的な立体球状とみなし体積平均径を算出する。
【請求項2】
加熱溶融処理後、単離した残存粒子の赤外吸収スペクトル測定を行った際、下記式(III)を満たす請求項1記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(1580cm
-1の吸光度)/(1400cm
-1の吸光度)<0.7 (III)
(加熱溶融処理は、窒素下300℃、10時間溶融し、冷却固化した)
(残存粒子の単離は、上記加熱溶融処理後のポリマーをオルトクロロフェノールに10wt%濃度で溶解し、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離後、得られた固形分にジクロロメタンを加え遠心加速度40900G、20℃、1時間で遠心分離し、得られた固形成分を残存粒子とした。)
【請求項3】
上記加熱溶融処理後の残存粒子体積平均径が下記式(IV)を満たす請求項2記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(残存粒子の体積平均径)/(加熱処理前の炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2.5 (IV)
【請求項4】
炭酸カルシウム粒子がカルサイト型である請求項1~3いずれか1項記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
炭酸カルシウム粒子の体積平均径が0.5~2.5μmである請求項1~4いずれか1項記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
全フィルム厚みに対し、少なくとも10%以内の表面部分に炭酸カルシウム粒子を含有する請求項1~5いずれか1項記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
炭酸カルシウム粒子の含有量が二軸延伸ポリエステルフィルムに対し0.005~1wt%である請求項1~6いずれか1項記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項記載の離型用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
少なくとも2層からなる請求項1~8いずれか1項記載の離型用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粒子含有二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステルの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われている。
ポリエステル成形品にアンチブロッキング性、滑り性、隠蔽性、耐摩耗性、意匠性、耐UV性等を付与するためには、ポリエステル組成物に粒子を添加することが一般的に実施されている。その中でも安価であることから、炭酸カルシウム粒子がしばしば用いられる。しかし、炭酸カルシウム粒子は、ポリエステル重合中や溶融成形中、さらにはリサイクル等の加熱下において、粒子表面よりカルシウムが溶出し、粒子形状や形態が変化してしまう課題がある。これら粒子の形状や形態の変化によって、特に高品位化が求められる光学フィルムや離型用フィルムなどにおいては、欠点となり品位の低下を引き起こす。
これらの課題に対して、以下の文献に示されるような検討がされてきている。
特許文献1では、炭酸カルシウム粒子の凝集抑制およびポリエステルとの親和性向上のため、ポリアクリル酸で処理する技術が開示されている。
特許文献2では、均一な粒径を有するバテライト型炭酸カルシウム粒子を適用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-111101号公報
【文献】特開平5-262901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ポリアクリル酸にて処理をするだけでは、ポリエステル重合中や溶融成形中、さらにはリサイクル等の加熱下において炭酸カルシウム粒子表面よりカルシウムが溶出することを防ぐことができず、結果としてフィルム表面粗さの均一性は不十分である。また、特許文献2のように、均一な粒径を有するバテライト型炭酸カルシウム粒子を用いても、バテライト型の炭酸カルシウム粒子は熱に対し不安定であり、容易にカルサイト型へと変異することから、ポリエステル重合中や溶融成形中、さらにはリサイクル等の加熱下において粒径が不均一化してしまう。
本発明の目的は、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制に優れた炭酸カルシウム粒子含有二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制に優れた炭酸カルシウム粒子含有二軸延伸ポリエステルフィルムに到達した。
本発明の目的は以下の手段によって達成される。
【0006】
(1)リン酸およびリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液で処理した炭酸カルシウム粒子を表層に含有し、下記式(I)(II)を満たす二軸延伸ポリエステルフィルム。
【0007】
(Ra-σ)/Ra<7% (I)
0.5<(粒子含有層の厚み)/(炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2 (II)
ここで、(Ra-σ)/Raは以下により得られる値である。二軸延伸ポリエステルフィルムを10cm四方に切り出し、非接触光学式粗さ測定器(Zygo社製NewView7300)を用い、50倍対物レンズを使用して測定面積139μm×104μmで、場所をランダムに変えて40視野測定を行い、該測定器に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより、波長1.65~50μmの帯域通過フィルタを用いて、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、最大山高さ(Rp)、およびそれぞれの標準偏差である(Ra-σ)、(Rz-σ)、(Rp-σ)を求める。
【0008】
体積平均径はSEM観察にて倍率5000倍で20視野以上の測定を行い、最低200個以上の粒子から円相当径を測定し、それを擬似的な立体球状とみなし体積平均径を算出する。
(2)加熱溶融処理後、単離した残存粒子の赤外吸収スペクトル測定を行った際、下記式(III)を満たす(1)記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【0009】
(1580cm-1の吸光度)/(1400cm-1の吸光度)<0.7 (III)
(加熱溶融処理は、窒素下300℃、10時間溶融し、冷却固化した)
(残存粒子の単離は、上記加熱溶融処理後のポリマーをオルトクロロフェノールに10wt%濃度で溶解し、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離後、得られた固形分にジクロロメタンを加え遠心加速度40900G、20℃、1時間で遠心分離し、得られた固形成分を残存粒子とした。)
(3)上記加熱溶融処理後の残存粒子体積平均径が下記式(IV)を満たす(2)記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【0010】
(残存粒子の体積平均径)/(加熱処理前の炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2.5 (IV)
(4)炭酸カルシウム粒子がカルサイト型である(1)~(3)いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(5)炭酸カルシウム粒子の体積平均径が0.5~2.5μmである(1)~(4)いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(6)全フィルム厚みに対し、少なくとも10%以内の表面部分に炭酸カルシウム粒子を含有する(1)~(5)いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(7)炭酸カルシウム粒子の含有量が二軸延伸ポリエステルフィルムに対し0.005~1wt%である(1)~(6)いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
(8)(1)~(7)いずれかに記載の離型用二軸延伸ポリエステルフィルム。
(9)少なくとも2層からなる(1)~(8)いずれかに記載の離型用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムとは、炭酸カルシウム粒子を含有し、下記式(I)(II)を満たすものである。
【0013】
(Ra-σ)/Ra<7% (I)
(粒子含有層の厚み)/(炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2 (II)
式(I)におけるRaは算術平均表面粗さであり、Ra-σはそのRaの標準偏差である。式(I)は標準偏差に対する平均値であることから、変動係数を表すものであり、その値が小さいほど均一な表面粗さを有している。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、この変動係数(Ra-σ)/Raが7%未満であることが必要であり、より好ましくは6%未満である。上記範囲を満たすことで、表面の均一性が求められる離型用フィルム等に適したハンドリング性を有した二軸延伸ポリエステルフィルムとなる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル重縮合工程にて炭酸カルシウム粒子を添加する際、炭酸カルシウム粒子と特定のリン化合物を混合してから添加することで、この特異的な表面粗さ均一性を達成した。炭酸カルシウム粒子は、重縮合反応や溶融成形時の熱や、ポリエステルの酸末端や重合触媒といった酸成分によって、粒子表面からカルシウムイオンが溶出する。カルシウムイオンが溶出することで、炭酸カルシウム粒子は粒径が小さくなり、さらにはポリエステルの酸末端と反応し、粗大な凝集体となる。このように、カルシウムイオンの溶出が発生することで、炭酸カルシウム粒子の粒径は不均一化する。本発明において、リン酸とリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液で炭酸カルシウム粒子を処理することにより、このカルシウムイオンの溶出を抑制した結果、炭酸カルシウムの形状・形態を維持でき、均一な表面粗さを達成することができた。
式(II)における炭酸カルシウムの体積平均径はSEM観察にて得られた値であり、(粒子含有層の厚み)/(炭酸カルシウム粒子の体積平均径)が2未満であることが必要である。より好ましくは1.6未満、さらに好ましくは1.3未満である。下限としては、0.5より大きいことが好ましい。上記範囲を満たすことで、粒子の脱落などを引き起こすことなく、フィルム表面に炭酸カルシウム粒子の突起を有効に形成することができるため、フィルムにハンドリング性を付与できる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、加熱溶融処理後、単離した残存粒子の赤外吸収スペクトル測定を行った際、下記式(III)を満たすことが好ましい。
(1580cm-1の吸光度)/(1400cm-1の吸光度)<0.7 (III)
この加熱溶融処理とは、二軸延伸ポリエステルフィルムを窒素下300℃、10時間溶融し、冷却固化する処理である。また、残存粒子の単離は、上記加熱溶融処理後のポリマーをオルトクロロフェノールに10wt%で溶解し、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離後、得られた固形分にジクロロメタンを加え、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離することで行った。この得られた固形成分を残存粒子とする。炭酸カルシウム粒子を含むポリエステルフィルムを加熱溶融すると、熱やポリエステルの酸末端などにより炭酸カルシウム粒子の表面よりカルシウムイオンが溶出する。この溶出したカルシウムイオンとポリエステルのカルボキシル末端基とが反応することでカルボン酸カルシウムを形成する。このようにカルシウムイオンが溶出することで、炭酸カルシウム粒子の粒径は小さくなり、さらにカルボン酸カルシウムを形成することにより、凝集していくことから、粒子径は不均一化する。式(III)にて赤外吸収スペクトル測定で得られる1580cm-1の吸収はカルボン酸塩に対応するピークであり、1400cm-1の吸収は炭酸カルシウムに対応するピークである。したがって、式(III)にて得られる値は、炭酸カルシウムからカルボン酸カルシウムへの変化度を示したものであり、値が小さいほど好ましい。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、この式(III)の値が0.7より小さいことが好ましく、より好ましくは0.4、さらに0.2より小さいことが好ましい。上記範囲を満たすことで、炭酸カルシウム粒子が維持されているため、均一な表面粗さが得られ良好なハンドリング性達成することができる。さらに、上述したような炭酸カルシウム粒子からカルシウムイオンが溶出することで引き起こされる粒子の凝集によって発生するフィルムの輝点欠点を抑制することが可能となる。また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、リサイクルなどで再溶融した場合でも、炭酸カルシウム粒子がカルボン酸カルシウムへと変異することなく、炭酸カルシウム粒子を維持できることから、品位を損なうことなくリサイクルすることが可能である。
さらに本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、上記加熱溶融処理後の残存粒子体積平均径が下記式(IV)を満たすことが好ましい。なお、この体積平均径はSEM観察にて測定した値である。
【0014】
(残存粒子の体積平均径)/(炭酸カルシウム粒子の体積平均径)<2.5 (IV)
上述しているが、炭酸カルシウム粒子を含むポリエステルフィルムを加熱溶融すると、熱やポリエステルの酸末端などにより炭酸カルシウム粒子の表面よりカルシウムイオンが溶出する。この溶出したカルシウムイオンとポリエステルのカルボキシル末端基とが反応することでカルボン酸カルシウムを形成する。このようにカルシウムイオンが溶出することで、炭酸カルシウム粒子の粒径は小さくなるが、カルボン酸カルシウムが形成されることにより、ポリエステル成分が取り込まれ、カルボン酸カルシウムが凝集し粒子が粗大化する。このように加熱溶融処理後は、残存粒子として、炭酸カルシウムとカルボン酸カルシウムが混在する状態となり、加熱溶融処理後の残存粒子の体積平均径は大きい値となる。分母である炭酸カルシウム粒子の体積平均径は、加熱処理前の二軸延伸ポリエステルフィルムに含まれる炭酸カルシウム粒子の体積平均径である。本指標は、製膜工程における溶融成型時にポリマーの異常滞留などにより、強熱された場合に多く発生する輝点欠点の抑制効果を明確化するために設定した指標である。すなわち、式(IV)の値が小さいほど、加熱をした時、粒子が変化していないということである。長時間の加熱においても炭酸カルシウムの変化量が著しく少ないことから、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、通常の溶融製膜時の熱履歴においても変化することがない。本発明では、リン酸とリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液で炭酸カルシウム粒子を処理することにより、このカルシウムイオンの溶出を抑制した結果、炭酸カルシウムの形状・形態を維持でき、均一な表面粗さを達成することができたものである。本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、この式(IV)の値が2.5より小さいことが好ましく、より好ましくは2.0、さらに1.5より小さいことが好ましい。上記範囲を満たすことで、炭酸カルシウム粒子が維持されているため、良好なハンドリング性と輝点欠点抑制効果を達成することができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、含有する炭酸カルシウム粒子はカルサイト型であることが好ましい。炭酸カルシウムは、カルサイト型、バテライト型、アラゴナイト型と結晶構造によって分類される。従来、均一な粒度分布を得るために、合成したバテライト炭酸カルシウム粒子を用いる例もあるが、バテライト型やアラゴナイト型は熱的に不安定であるため、ポリエステル重合中や、溶融成型時に変異してしまう。変異する際に、粒度分布は不均一化するため、熱的に安定であるカルサイト型を用いることが好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、炭酸カルシウム粒子の体積平均径が0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。本体積平均径は、SEM観察にて得られた値である。下限として、より好ましくは0.7μm以上であり、上限としてより好ましくは1.5μm以下である。上記範囲とすることで、粒子の脱落を起こすことなく、ハンドリング性のよい二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、全フィルム厚みに対し、少なくともフィルム厚み方向におけるフィルム表面から10%以内の表面部分に炭酸カルシウム粒子を含有することが好ましい。より好ましくは5%以内である。フィルムの表面部分に炭酸カルシウム粒子を含有していることで、効果的にハンドリング性を付与できる。積層フィルムとする場合、表層に用いる樹脂に炭酸カルシウム粒子を含有させることが特に好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、炭酸カルシウム粒子の含有量は、二軸延伸ポリエステルフィルムに対し0.005wt%以上1wt%以下であることが好ましい。より好ましくは0.01wt%以上0.1wt%以下である。上記範囲を満たすことで、良好なハンドリング性とすることができる。
以下、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリエステルフィルムとは、ジカルボン酸成分とジオール成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂から得られるフィルムである。ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でも、ポリエステル樹脂組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましい。
ジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。
【0015】
この中で、反応系外に留出させやすいことから、沸点230℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法において、炭酸カルシウム粒子を添加することが必要である。さらに、ポリエステルの重縮合反応の過程において、炭酸カルシウム粒子スラリーとリン酸及びリン酸アルカリ金属塩とからなる緩衝溶液を混合させ、ポリエステル重縮合系内に添加することが必要である。添加するタイミングとしては、エステル化反応およびエステル交換反応が終了した段階から、重縮合反応が終了するまでの間に添加することが好ましい。添加することでポリエステルが解重合され、粘度が低下し重合時間が延長、ポリエステルの品位が低下することから、エステル化反応およびエステル交換反応が終了し、重縮合反応を開始するまでの間に添加することがさらに好ましい。
炭酸カルシウム粒子スラリーの溶媒は、ポリエステル樹脂の物性に影響しないよう原料として用いるジオール成分と統一することが好ましい。また、炭酸カルシウム粒子スラリーの濃度は、粒子分散性の観点から、50wt%以下であることが好ましく、より好ましくは30wt%以下である。また、コストの点から5wt%以上であることが好ましく、より好ましくは15wt%以上である。
本発明において、炭酸カルシウム粒子スラリーとリン酸及びリン酸アルカリ金属塩とからなる緩衝溶液を混合させて製造されることが好ましい。リン酸とリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液を炭酸カルシウム粒子スラリーと混合することで、炭酸カルシウム粒子表面を被覆し、重縮合反応や溶融成型時の加熱などによって炭酸カルシウム粒子表面からカルシウムが溶出することを抑制することが可能となる。
リン酸とリン酸アルカリ金属塩からなる緩衝溶液の溶媒としては、ポリエステル樹脂の物性に影響しないよう原料として用いるジオール成分と統一することが好ましい。リン酸とリン酸アルカリ金属塩の混合比は、リン酸/リン酸アルカリ金属塩(モル比率)が0.5以上2.5以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことで、緩衝溶液としての作用を保つことができる。リン酸の比率が高くなると、リン酸の酸成分により炭酸カルシウム粒子が分解され、粒子の均一性を維持できなくなる。また、リン酸アルカリ金属塩の比率が高くなると、炭酸カルシウム粒子表面への被覆が弱くなることから、重縮合反応や溶融成型時の加熱などによる炭酸カルシウム粒子表面からのカルシウム溶出を抑制できない。
リン酸アルカリ金属塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられる。ポリエステル中での分散性の点から、ナトリウム塩であることが好ましく、リン酸二水素ナトリウムが特に好ましい。また、複数のリン酸アルカリ金属塩を併用しても構わない。
炭酸カルシウム粒子スラリーと、リン酸及びリン酸アルカリ金属塩の緩衝溶液の混合量としては、炭酸カルシウム粒子に対し、リン元素(原子)として0.1wt%以上3wt%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5wt%以上1.5wt%以下である。上記範囲を満たすことで、ポリエステル重縮合反応の遅延を起こすことなく、効果的に炭酸カルシウム粒子の表面に被覆することが可能となる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する手法(溶融キャスト法)にて製造することができる。このとき、ポリマー中の未溶融物を除去するために、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過してもよい。また、その他の方法として、ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
また、積層フィルムの場合は、積層する各層のポリエステル樹脂を別の押出機に投入し溶融してから拘留させ、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出し法により溶融製膜する方法)を好ましく用いることができる。以下、本方法について詳細に説明する。
まず、各層に対応する押出機にポリエステル樹脂をそれぞれ投入し、加熱溶融する。合流ブロックを用いて積層し、口金から表面温度10~60℃に冷却したキャストドラム上に共押出し、静電気により密着冷却固化させ、未延伸フィルムを作成する。この時、押出機で溶融したポリエステル樹脂は、フィルターにより濾過することが好ましい。ごく小さな異物もフィルム中にて粗大な突起や欠点となるため、フィルターには5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。
次にこの未延伸フィルムを70~140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3~4倍延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80~240℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3~4倍に延伸する。また、延伸後に、長手及び/幅方向に0.1~5%の弛緩処理を施してもよい。なお、二軸延伸する方法としては、上述のように長手方向と幅方向の延伸を分離して行う逐次二軸延伸方法のほかに、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【0016】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用であり、特に均一な表面設計が重要となる離型用工程フィルムや光学用フィルムに好適である。
【実施例】
【0017】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
【0018】
(1)二軸延伸ポリエステルフィルムの全層厚み(単位:μm)
フィルムの全層厚みはダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5か所についてフィルム面の法線方向の厚みを測定し、その平均値を10で除して全層厚みとした。
(2)二軸延伸ポリエステルフィルムの粒子含有層の厚み(単位:μm)
粒子含有層の厚みは、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームを用いてフィルム断面を切り出し、該断面を日立製電界放射型走査電子顕微鏡(型番S-4000)で5000倍の倍率で観察し、全層厚みに対する粒子含有層の比率を求め、(1)にて測定した全層厚みより粒子含有層厚みを算出した。
(3)炭酸カルシウム粒子含有量(単位:wt%)
原子吸光法((株)日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度型180-80、フレーム:アセチレン-空気)にてカルシウム定量を行い、炭酸カルシウム粒子含有量を算出した。
【0019】
(4)炭酸カルシウム粒子の結晶構造
二軸延伸ポリエステルフィルムをオルトクロロフェノール(以下OCP)に溶解し(濃度10wt%、温度150℃、時間1時間)、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離した。得られた固形分にジクロロメタンを加え遠心加速度40900G、20℃、1時間で遠心分離を3回行い、OCPを除去した。得られた固形分を真空乾燥(25℃、1時間)することで、フィルム中に含まれる炭酸カルシウム粒子を単離した。得られた炭酸カルシウム粒子をX線粉末回折装置にて分析することで結晶構造を同定した。遠心機はHITACHI製himacCR20G(ローター:R19A)を用いた。
【0020】
(5)炭酸カルシウム粒子の体積平均径(単位:μm)
二軸延伸ポリエステルフィルムをプラズマ処理し、日立製電界放射型走査電子顕微鏡(型番S-4000)、ニデコ製SEM-IMAGEANALYZER(型番ルーデックスAP)にて、粒子の体積平均径測定をおこなった。また、粒子径を解析する際は倍率5000倍で20視野以上の測定を行い、最低200個以上の粒子から円相当径を測定し、それを擬似的な立体球状とみなし体積平均径を算出した。
(6)3次元粗さ
二軸延伸ポリエステルフィルムを10cm四方に切り出し、非接触光学式粗さ測定器(Zygo社製NewView7300)を用い、50倍対物レンズを使用して測定面積139μm×104μmで、場所をランダムに変えて40視野測定を行った。このとき、粒子含有層が観察面となるよう、サンプルをセットした。該測定器に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより、波長1.65~50μmの帯域通過フィルタを用いて、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、最大山高さ(Rp)、およびそれぞれの標準偏差である(Ra-σ)、(Rz-σ)、(Rp-σ)を求めた。
(7)残存粒子の赤外吸収スペクトルピーク強度比
二軸延伸ポリエステルフィルム10gを150℃で3時間、さらに180℃で7.5時間真空乾燥し、窒素流通下、300℃で10時間加熱溶融した後、水中で急冷する。得られた加熱処理後のポリマーをオルトクロロフェノールに10wt%濃度で溶解し、遠心加速度40900G、20℃で1時間遠心分離後、得られた固形分にジクロロメタンを加え遠心加速度40900G、20℃、1時間で遠心分離し、得られた固形成分を残存粒子とした。遠心機はHITACHI製himacCR20G(ローター:R19A)を用いた。
得られた残存粒子の赤外線吸収スペクトル(ヤマト科学(株)Nicolet iS10 FT-IR)を測定し、カルボン酸カルシウムのC=O伸縮振動に対応する1580cm-1の吸光度と、炭酸カルシウムのC=O伸縮振動に対応する1400cm-1の吸光度から、スペクトル強度比を算出した。
(8)残存粒子の体積平均径(単位:μm)
二軸延伸ポリエステルフィルム10gを150℃で3時間、さらに180℃で7.5時間真空乾燥し、窒素流通下、300℃で10時間加熱溶融した後、水中で急冷する。得られた加熱処理後のポリマーを(5)と同様の方法で、処理・観察することで、残存粒子の体積平均径を算出した。
(9)ハンドリング性評価
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999年)に準じて、2枚のフィルムの第1層面と第2層面を重ねて摩擦させたときの値を3回測定し、その平均値から静摩擦係数μsを求めた。静摩擦係数をハンドリング性の指標として、下記基準に従い評価した。
◎:0.1を超えて0.3以下
〇:0.3を超えて0.35以下
△:0.35を超えて0.5以下
×:0.5を超える。
(10)粒子脱落抑制評価
二軸延伸ポリエステルフィルムの粒子含有層面(第1層面)を、東レ(株)製トレシーを使用し、荷重500g/cm2、速度60mm/秒、往復移動距離120mmで100往復させた。耐摩耗試験装置として、学振型摩擦堅牢度試験器(テスター産業(株)製AB-301)を用い、試験後のトレシー表面の粉を目視で観察し、下記基準に従い評価した。
◎:トレシー上に全く粉がない
○:トレシーの所々に粉が見られる
×:トレシー全体に粉が見られる。
(11)輝点欠点抑制評価
二軸延伸ポリエステルフィルムを1m2サイズに切り取り、スポットライトを光源とし、反射光および透過光を用いて光の散乱に基づく輝点に注目し、欠点箇所をペンでマークしカウントした。さらに偏光光源を用いてクロスニコルによる偏光乱れ欠点についても観察し、欠点としてカウントし、合計について下記基準にした従い評価した。
◎:5個未満
△:5個以上30個未満
×:30個以上。
(参考例1)樹脂Aの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
【0021】
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、リン酸0.01重量部(樹脂の重量に対しリン原子(元素)として32ppm)を添加し、次いで三酸化二アンチモン0.01重量部(樹脂の重量に対しアンチモン原子(元素)として84ppm)、酢酸マンガン4水和物0.02重量部(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として45ppm)を添加した。
【0022】
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Aを得た。
(参考例2)樹脂Bの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として24ppm)、三酸化二アンチモン(樹脂の重量に対しSb原子(元素)として251ppm)を添加し、次いでエチレングリコール5重量部を追加した。その後、リン酸(樹脂の重量に対しP原子(元素)として41ppm)およびリン酸2水素ナトリウム2水和物(樹脂の重量に対しNa原子(元素)として14ppm、P原子(元素)として19ppm)とからなるエチレングリコール緩衝溶液0.8重量部と、炭酸カルシウム粒子エチレングリコールスラリー(炭酸カルシウム粒子として1重量部、粒子濃度20wt%、粒子体積平均径1.5μm、カルサイト型)を1時間事前に混合した均一な粒子スラリーを反応系内に添加した。その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Bを得た。
(参考例3~8)樹脂C~Hの製造
使用する炭酸カルシウム粒子の粒子径を表1に示す通りに変更した以外は参考例2と同様にして、樹脂C~Hを得た。
(参考例9)樹脂Iの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として24ppm)、三酸化二アンチモン(樹脂の重量に対しSb原子(元素)として251ppm)を添加し、次いでエチレングリコール5重量部を追加した。その後、リン酸(樹脂の重量に対しP原子(元素)として41ppm)およびリン酸2水素ナトリウム2水和物(樹脂の重量に対しNa原子(元素)として14ppm、P原子(元素)として19ppm)とからなるエチレングリコール緩衝溶液0.8重量部を添加し、次いで炭酸カルシウム粒子エチレングリコールスラリー(炭酸カルシウム粒子として1重量部、粒子濃度20wt%、粒子体積平均径1.5μm)を添加した。その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Iを得た。
(参考例10)樹脂Jの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として24ppm)、三酸化二アンチモン(樹脂の重量に対しSb原子(元素)として251ppm)を添加し、次いでエチレングリコール5重量部を追加した。その後、トリメチルリン酸(樹脂の重量に対しP原子(元素)として60ppm)のエチレングリコール溶液0.8重量部と、炭酸カルシウム粒子エチレングリコールスラリー(炭酸カルシウム粒子として1重量部、粒子濃度20wt%、粒子体積平均径1.5μm)を1時間事前に混合した均一な粒子スラリーを反応系内に添加した。その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Jを得た。
(参考例11)樹脂Kの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として24ppm)、三酸化二アンチモン(樹脂の重量に対しSb原子(元素)として251ppm)を添加し、次いでエチレングリコール5重量部を追加した。その後、リン酸(樹脂の重量に対しP原子(元素)として60ppm)のエチレングリコール溶液0.8重量部と、炭酸カルシウム粒子エチレングリコールスラリー(炭酸カルシウム粒子として1重量部、粒子濃度20wt%、粒子体積平均径1.5μm)を1時間事前に混合した均一な粒子スラリーを反応系内に添加した。その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Kを得た。
(参考例12)樹脂Lの製造
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物(樹脂の重量に対しMn原子(元素)として24ppm)、三酸化二アンチモン(樹脂の重量に対しSb原子(元素)として251ppm)を添加し、次いでエチレングリコール5重量部を追加した。その後、リン酸2水素ナトリウム(樹脂の重量に対しP原子(元素)として60ppm)のエチレングリコール溶液0.8重量部と、炭酸カルシウム粒子エチレングリコールスラリー(炭酸カルシウム粒子として1重量部、粒子濃度20wt%、粒子体積平均径1.5μm)を1時間事前に混合した均一な粒子スラリーを反応系内に添加した。その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水にストランド状に吐出、カッティングし、樹脂Lを得た。
(参考例13)樹脂Mの製造
使用する炭酸カルシウム粒子をバテライト型に変更した以外は参考例2と同様にして、樹脂Mを得た。
(参考例14)樹脂Nの製造
シード法によって得られたジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(粒子体積平均径0.3μm)の水スラリーを、樹脂Aに対し粒子濃度1重量%となるようにベント式二軸押し出し機を用いて混錬し、樹脂Nを得た。
【0023】
【0024】
(実施例1)
第1層を構成する樹脂として樹脂Aを45重量部、樹脂Bを50重量部、樹脂Nを5重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第1層用の押出機に投入した。また第2層を構成する樹脂として、樹脂A160℃で2時間減圧乾燥した後、第2層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、層用合流ブロックで合流積層し、第1層および第2層とからなる2層積層とした。その後、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、2層構成をもつ積層シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度ロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って厚み25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0025】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を表2に示す。均一な粒子径であり、炭酸カルシウム粒子の形態を維持していることから、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
(実施例2~7、比較例1~4)
表2に示すとおり、第1層を構成する樹脂を変更、また第1層の厚みを変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0026】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を表2に示す。
【0027】
実施例2~4にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、均一な粒子径であり、炭酸カルシウム粒子の形態を維持していることから、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
【0028】
実施例5にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、輝点欠点抑制が良好であった。
【0029】
実施例6にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、実施例1に比べ劣るもののハンドリング性が良好であり、粒子脱落抑制が良好であった。
【0030】
実施例7にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、輝点欠点抑制が良好であった。
【0031】
比較例1~4にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、輝点欠点が多く、離型用フィルム等に供するには品位が低いものであった。
【0032】
【0033】
(実施例8~15、比較例5、6)
表3に示すとおり、第1層および第2層を構成する樹脂を変更、また第1層の厚みを変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0034】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を表3に示す。
【0035】
実施例8にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、ハンドリング性が良好であった。
【0036】
実施例9にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、粒子含有層厚みが厚いため、実施例1に比べハンドリング性が低下したが、粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
【0037】
実施例10にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、炭酸カルシウム粒子含有量が少ないため実施例1に比べハンドリング性が低下したが、粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
【0038】
実施例11、12にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、均一な粒子径であり、炭酸カルシウム粒子の形態を維持していることから、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
【0039】
実施例13にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、粒子含有量が多く、また子含有層厚みが厚いため、実施例1に比べハンドリング性が低下したが、粒子脱落抑制が良好であった。
【0040】
実施例14、15にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、均一な粒子径であり、炭酸カルシウム粒子の形態を維持していることから、ハンドリング性および粒子脱落抑制、輝点欠点抑制が良好であった。
【0041】
比較例5にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、輝点欠点が多く、離型用フィルム等に供するには品位が低いものであった。
【0042】
比較例6にて得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、炭酸カルシウム粒子を含有していないため、ハンドリング性が不良であった。
【0043】