(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240702BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H05K1/18 F
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2020154596
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】322003802
【氏名又は名称】パナソニックインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宝地 卓
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 英己
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 成樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-356561(JP,A)
【文献】特開2016-092259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0374852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
H01L 23/12-23/13
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置であって、
印加された物理量に応じた信号を出力するセンサ部(21)と、前記センサ部が搭載されるアイランド(241)および複数のリード(242)を有するリードフレーム(24)と、前記リードフレームの一部および前記センサ部を覆う封止樹脂(26)と、を有する半導体パッケージ(2)と、
前記半導体パッケージと向き合う表面(41a)と、裏面(41b)と、を有する基材(41)を有し、前記半導体パッケージが接合材(3)を介して搭載される被搭載部材(4)と、を備え、
前記基材のうち前記アイランドの外郭を前記表面に対する法線方向に沿って前記基材に向かって投影して得られる領域をアイランド投影領域(41c)として、
前記アイランド投影領域は、一部または全部が、前記表面と前記裏面とを繋ぐ貫通孔(411)あるいは前記表面から前記裏面に向かって凹んだ凹部(412)であ
り、
前記センサ部は、MEMSセンサを備える半導体素子であって、固定電極(211)と可変電極(212)とを備え、前記固定電極と前記可変電極との間における静電容量に応じた信号を出力し、
前記半導体パッケージは、複数の前記リードのすべてが前記封止樹脂の外郭内側に配置されている、電子装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記半導体パッケージの厚み方向に沿った方向に印加される物理量に応じた信号を出力する、請求項
1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記被搭載部材は、プリント基板である、請求項1
または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記アイランドと向き合う面とは異なる部分の全部が前記封止樹脂に当接している、請求項
1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記センサ部は、前記センサ部の中心が前記アイランドの中心と重なるように配置されており、
前記アイランドは、前記センサ部が搭載される搭載面の外郭が前記アイランドの中心を軸とする対称形状である、請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記被搭載部材は、前記半導体パッケージの直下に位置する領域、かつ前記アイランド投影領域よりも外側に位置する領域に、前記裏面から前記表面に向かう方向に突出する複数の凸部(44)を有する、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加された物理量に応じた信号を出力するセンサ部を備える半導体パッケージが搭載されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子装置としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の電子装置は、凹部内にセンサ部を有するセンサ本体と、センサ部に当接しないように覆いつつ、これを密閉する保護部材とを有してなる半導体パッケージがプリント配線基板上に搭載されてなる。
【0003】
このセンサ部は、例えば、加速度、圧力、角速度等の所定の物理量が印加された場合に当該物理量に応じた信号を出力するMEMS(Micro Electro Mechanical Systemsの略)センサとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電子装置では、センサ部が空洞内に配置されているため、センサ部は、温度変化が大きい環境下に置かれる用途であっても、プリント配線基板等の被搭載物とセンサ本体との線膨張係数の差に起因する応力の影響を受けにくく、信号の出力が安定する。なお、上記の用途としては、限定するものではないが、例えば、自動車等などの車載用途が挙げられる。
【0006】
一方、近年、この種の電子装置の分野においては、さらなる小型化が求められている。しかしながら、センサが空洞を有する構造の場合には、半導体パッケージの厚み方向の寸法が大きくなってしまい、電子装置のさらなる小型化のニーズに対応できない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、印加された物理量に応じた信号を出力するセンサ部を備える半導体パッケージが搭載されてなる電子装置において、電子装置の小型化とセンサ部の出力安定とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電子装置は、印加された物理量に応じた信号を出力するセンサ部(21)と、センサ部が搭載されるアイランド(241)および複数のリード(242)を有するリードフレーム(24)と、リードフレームの一部およびセンサ部を覆う封止樹脂(26)と、を有する半導体パッケージ(2)と、半導体パッケージと向き合う表面(41a)と、裏面(41b)と、を有する基材(41)を有し、半導体パッケージが接合材(3)を介して搭載される被搭載部材(4)と、を備え、基材のうちアイランドの外郭を表面に対する法線方向に沿って基材に向かって投影して得られる領域をアイランド投影領域(41c)として、アイランド投影領域は、一部または全部が、表面と裏面とを繋ぐ貫通孔(411)あるいは表面から裏面に向かって凹んだ凹部(412)であり、センサ部は、MEMSセンサを備える半導体素子であって、固定電極(211)と可変電極(212)とを備え、固定電極と可変電極との間における静電容量に応じた信号を出力し、半導体パッケージは、複数のリードのすべてが封止樹脂の外郭内側に配置されている。
【0009】
これにより、半導体パッケージと被搭載部材との熱膨張または熱収縮の差に起因する応力が生じ、半導体パッケージが被搭載部材側に反ったとしても、半導体パッケージが被搭載部材に当該反りによる当接をしない構造の電子装置となる。具体的には、被搭載部材のうち半導体パッケージが搭載されたアイランドの直下に位置する領域の一部または全部が貫通孔あるいは凹部であることで、半導体パッケージが反っても被搭載部材に当接せず、センサ部の出力が安定する。また、半導体パッケージが反っても被搭載部材に当接しない構造であるため、半導体パッケージにセンサ部を配置するための空洞部を設ける必要がなくなり、厚み方向における小型化を図れる。そのため、装置の小型化とセンサ部の信号出力とが両立した電子装置となる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の電子装置の一例を示す上面レイアウト図である。
【
図2】
図1のII-II間の断面を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の電子装置のうち半導体パッケージを示す平面図である。
【
図4】半導体パッケージが加速度センサである場合の機能を説明するための説明図である。
【
図5A】
図2に相当する図であって、比較例の電子装置を示す断面図である。
【
図5B】比較例の電子装置において半導体パッケージが熱変形によりプリント基板側に近づくように反り、一部がプリント基板に当接する様子を示す断面図である。
【
図5C】比較例の電子装置において半導体パッケージが熱変形によりプリント基板から離れるように反った状態を示す図であって、プリント基板上にフラックスが存在する場合の一例を示す断面図である。
【
図5D】比較例の電子装置におけるセンサ出力、雰囲気温度および時間との関係を示す図であって、半導体パッケージのセンサ出力が不連続になる一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態の電子装置において半導体パッケージが熱変形により被搭載部材側に近づくように沿った様子を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態の電子装置におけるセンサ出力、雰囲気温度および時間の関係を示す図であって、半導体パッケージからのセンサ出力の一例を示す図である。
【
図8】第1実施形態の電子装置の変形例における半導体パッケージを示す平面図である。
【
図9】
図2に相当する図であって、第1実施形態の電子装置の変形例を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の電子装置の一例を示す上面レイアウト図である。
【
図12】
図2に相当する図であって、第3実施形態の電子装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の電子装置1について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0014】
図1では、見易くして構成の理解を助けるため、後述する被搭載部材4のうち上面視にて半導体パッケージ2に隠れてしまうランド42の一部、アイランド投影領域41cの外郭を二点鎖線で示している。また、
図1では、上記と同じ目的で、半導体パッケージ2のうち後述するセンサ部21の外郭を破線で示している。
図3では、見易くするため、半導体パッケージ2のうち後述する封止樹脂26の外郭を二点鎖線で示し、封止樹脂26内に配置される各構成部材の外郭を実線で示している。
【0015】
以下、説明の便宜上、
図1に矢印等で示すように、紙面右方向に向かう方向を「X方向」と、同紙面上においてX方向に直交し、紙面上側に向かう方向を「Y方向」と、XY平面に直交する方向であって、紙面奥側に向かう方向を「Z方向」とそれぞれ称する。
図2以降の図中におけるX、YおよびZの各方向は、
図1におけるX、Y、Zの各方向に対応している。
【0016】
本実施形態の電子装置1は、例えば
図1に示すように、印加された物理量に応じた信号を出力するセンサ部21を有する半導体パッケージ2と、半導体パッケージ2が搭載される被搭載部材4とを備える。電子装置1は、例えば
図2に示すように、半導体パッケージ2が接合材3を介して被搭載部材4に搭載されると共に、被搭載部材4のうち少なくとも半導体パッケージ2のセンサ部21の直下に位置する領域が貫通孔411となっている。これにより、電子装置1は、半導体パッケージ2が熱変形により被搭載部材4側に向かうように反ったときに、半導体パッケージ2が被搭載部材4に当接しない構成となっている。
【0017】
半導体パッケージ2は、例えば
図2または
図3に示すように、センサ部21と、信号処理部22と、接着材23と、アイランド241および複数のリード242を有するリードフレーム24と、ワイヤ25と、封止樹脂26とを備える。半導体パッケージ2は、小型化の観点から、例えば
図3に示すように、複数のリード242のすべてが封止樹脂26の外郭内側に配置されたQFN(Quad Flat Non-leaded packageの略)構造となっている。つまり、半導体パッケージ2は、QFP(Quad Flat Packageの略)構造のように封止樹脂26から突出するアウターリードを備えるものに比べて、平面サイズが小さく、より電子装置1の小型化に適した構造である。
【0018】
センサ部21は、例えば、Si(シリコン)やガラスなどによりなる基板に、外部から印加された物理量に応じた信号を出力するMEMSセンサが形成されてなる電子部品である。センサ部21がMEMSセンサである場合、半導体パッケージ2ひいては電子装置1をより小型化することが可能となる。センサ部21は、例えば、加速度センサや角速度センサ等の慣性センサとされ、加速度、角速度等の各種の物理量が印加された際に当該物理量に応じた信号を出力する。センサ部21は、例えば、半導体素子とされ、
図2に示すように、信号処理部22の上に配置されると共に、信号処理部22の図示しない電極等に熱接合等の任意の方法により接続されている。これにより、センサ部21は、物理量が印加されたときに出力する出力信号が信号処理部22に伝送される構成となっている。
【0019】
なお、本明細書では、センサ部21が半導体パッケージ2の厚み方向、すなわちZ方向における加速度に応じた信号を出力する加速度センサである場合を代表例として説明するが、この例に限定されるものではない。
【0020】
センサ部21は、Z方向の加速度、すなわち重力加速度を検出する加速度センサである場合には、例えば
図4に示すように、固定電極211と、可動電極212と、バネ部213とを有した静電容量検出方式のMEMSセンサとされる。この場合、センサ部21は、固定電極211と可動電極212との間の距離d1の変化に基づく、静電容量の変化に応じた信号を出力する構成とされる。例えば、面積が共にS(単位:m
2)の固定電極211および可動電極212の静電容量C(単位:F)は、電極211、212間の誘電体の誘電率をε(単位:F/m)として、次の(1)式で算出される。
【0021】
C=ε・S/d1・・・(1)
ここで、錘として機能する可動電極212の質量をm(単位:kg)とし、バネ部213のバネ定数をk(単位:N/m)とし、
図4に示すように、可動電極212の移動距離をd2(単位:m)とする。このとき、センサ部21に印加されたZ方向の加速度αは、次の(2)式で算出される。
【0022】
α=k・d2/m・・・(2)
つまり、静電容量Cの変化に基づいて固定電極211と可動電極212との距離d1を算出し、距離d1に基づいて、可動電極212の移動距離d2を算出することで、センサ部21に印加されたZ方向の加速度αを算出することができる。センサ部21は、例えば、
図4に示す固定電極211側の外表面が信号処理部22に接合され、固定電極211に接続される配線を通じて信号処理部22に出力信号を直接伝送する構成となっている。
【0023】
なお、加速度センサにおける加速度の検出方式としては、静電容量検出方式のほか、ピエゾ抵抗方式や熱検知方式などがある。静電容量検出方式は、センサ部21をガラスやSiなどの安定な物質で構成することができるため、センサ部21がおかれる環境の温度におけるセンサ特性が安定し、他の方式に比べて温度特性に優れるという利点がある。
【0024】
信号処理部22は、例えば、センサ部21からの伝送された出力信号を処理する図示しないIC(Integrated Circuitの略)を備える電子部品であり、半導体素子とされる。信号処理部22は、例えば、センサ部21が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を外部に出力する構成とされる。信号処理部22は、例えば
図3に示すように、図示しない電極にワイヤ25が接続されると共に、ワイヤ25を介して複数のリード242と電気的に接続されている。これにより、信号処理部22で処理された信号は、リード242を介して外部に伝送されることとなる。信号処理部22は、例えば
図2に示すように、接着材23によりアイランド241上に搭載されている。
【0025】
接着材23は、例えば、はんだ等の一般的な半導体パッケージの分野で用いられる任意の材料が用いられ得る。
【0026】
リードフレーム24は、信号処理部22およびセンサ部21が搭載されるアイランド241と、アイランド241から分離した複数のリード242とを備える。リードフレーム24は、例えば、Cu(銅)やFe(鉄)等の金属材料あるいはこれらの合金材料等の任意の導電性材料で構成される。リードフレーム24は、例えば、封止樹脂26の形成工程まではアイランド241および複数のリード242が図示しないタイバー等により連結され、封止樹脂26の形成後に連結部分が打ち抜き加工等により切断除去されることでこれらが分離した状態となる。
【0027】
アイランド241は、例えば
図2に示すように、信号処理部22が搭載される側の面とは反対側の面が封止樹脂26から露出している。なお、アイランド241は、例えば
図3に示すように、上面視にてその中心を軸とする四角形等の対称形状とされ、その中心がセンサ部21の中心と重なるように配置されるが、これに限定されない。
【0028】
複数のリード242は、例えば
図2に示すように、ワイヤ25が接続される側の一面とは反対側の他面が封止樹脂26から露出しており、被搭載部材4との接続端子として機能する。複数のリード242は、例えば、一面と他面とを繋ぐ側面であって、アイランド241と向き合う面とは反対側の面が封止樹脂26から露出している。複数のリード242は、例えば
図3に示すように、アイランド241と距離を隔てて、アイランド241を囲むように互いに離れて配置されている。
【0029】
なお、リードフレーム24を構成するアイランド241およびリード242の数、大きさ、形状や配置等については、
図2、
図3等に示す例に限定されるものではなく、適宜変更され得る。
【0030】
ワイヤ25は、例えば、Au(金)等の任意の導電性材料により構成され、ワイヤボンディング等により信号処理部22およびリード242のそれぞれに接続される。
【0031】
封止樹脂26は、例えば、エポキシ樹脂等の任意の絶縁性樹脂材料により構成され、コンプレッション成形等の任意の樹脂成形方法で形成される。封止樹脂26は、センサ部21のうちアイランド241側の面とは異なる部分の全域において、センサ部21に当接している。言い換えると、封止樹脂26は、半導体パッケージ2の内部にセンサ部21を配置するための空洞を有しない構成となっている。つまり、半導体パッケージ2は、QFN構造であって、センサ部21が封止樹脂26によりフルモールドされた構成となっている。
【0032】
接合材3は、半導体パッケージ2を被搭載部材4に接合するために用いられる任意の導電性接合材料、例えば、はんだ等で構成される。なお、区別のために便宜上、アイランド241上に信号処理部22を搭載するための部材を「接着材23」と称し、被搭載部材4上に半導体パッケージ2を搭載するための部材を「接合材3」と称しているが、これらは同じ材料で構成されていてもよい。
【0033】
被搭載部材4は、例えば
図2に示すように、表面41aおよび裏面41bを有する基材41と、表面41aに形成されるランド42と、絶縁層43とを備える。被搭載部材4は、例えば、プリント基板であるが、半導体パッケージ2が搭載可能であればよく、これに限定されない。被搭載部材4は、アイランド241の外郭を基材41の表面41aに対する法線方向に沿って投影してできる領域を「アイランド投影領域41c」として、アイランド投影領域41cの全域が表面41aと裏面41bとを繋ぐ貫通孔411となっている。言い換えると、被搭載部材4は、センサ部21が搭載されたアイランド241の外郭をZ方向に沿って投影してできる領域、すなわちアイランド241の直下に位置する領域が貫通孔411とされている。これは、半導体パッケージ2が温度影響により被搭載部材4側に向かって反ったときに、半導体パッケージ2が被搭載部材4に当接しないようにし、センサ部21のセンサ特性を安定させるためである。この詳細については、後述する。
【0034】
基材41は、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の任意の絶縁性材料により構成される板状部材である。基材41は、例えば
図2に示すように、半導体パッケージ2が搭載される搭載面である表面41a側に、ランド42、および表面41aの少なくとも一部を覆う絶縁層43が形成されている。
【0035】
なお、基材41は、例えば、裏面41b側が露出した構成とされ得るが、これに限定されるものではなく、裏面41b側にもランド42や絶縁層43を備える構成であってもよい。
【0036】
ランド42は、例えば、Cu等の任意の導電性材料で構成され、他の部材との接合に用いられる。ランド42は、例えば、一端側が半導体パッケージ2のリード242と接合材3を介して接合され、他端側に図示しない配線が接続された構成とされる。ランド42の数、サイズ、形状や配置等については、半導体パッケージ2のリード242の配置等に応じて適宜変更され得る。
【0037】
絶縁層43は、例えば、基材41の表面41aおよびランド42の一部を覆っており、任意の絶縁性樹脂材料により構成される。絶縁層43は、例えば、一般的に電子基板などの分野で用いられるソルダーレジストとされ得る。
【0038】
以上が、本実施形態の電子装置1の基本的な構成である。
【0039】
(作用効果)
次に、本実施形態の電子装置1の効果について
図6、
図7を参照して説明するが、その前にまず、
図5A~
図5Dを参照して、QFN構造の半導体パッケージ2が貫通孔を有しないプリント基板5に搭載されてなる比較例の電子装置100における課題を説明する。
【0040】
図5B、
図5Cでは、比較例の電子装置100が置かれる環境の温度に起因して、半導体パッケージ2およびプリント基板5が膨張または収縮する方向を便宜的に白抜き矢印で示している。以下、説明の便宜上、比較例の電子装置100あるいは本実施形態の電子装置1が置かれる環境の温度を「雰囲気温度」と称する。
【0041】
また、
図5Cでは、半導体パッケージ2が熱変形によりプリント基板5に当接する状態における、半導体パッケージ2の外郭を破線で示している。
図5Dでは、見易くするために、左側の縦軸であるセンサ出力を示すグラフを実線で示し、右側の縦軸である雰囲気温度に対応するグラフを一点鎖線で示している。これは
図7についても同様である。
【0042】
比較例の電子装置100は、例えば
図5Aに示すように、QFN構造の半導体パッケージ2が、接合材3を介してプリント基板5に接合されてなる。プリント基板5は、例えば、フラットな板状の基板51と、基板51の表面51a上に配置された銅箔52と、表面51aおよび銅箔52の一部を覆うソルダーレジスト53とを有してなる。基板51は、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の任意の絶縁性材料によりなると共に、半導体パッケージ2の直下に位置する領域には凹部や貫通孔を有しない構成である。
【0043】
なお、以下に述べる雰囲気温度について「常温」とは、限定するものではないが、例えば、15~25℃程度の通常の大気温度を意味する。また、雰囲気温度について「高温」とは、限定するものではないが、通常の大気温度を超える温度(例えば50℃以上など)を意味する。さらに、雰囲気温度について「低温」とは、限定するものではないが、通常の大気温度未満の温度(例えば0℃以下など)を意味する。
【0044】
比較例の電子装置100は、雰囲気温度が常温から高温になると、例えば
図5Bの白抜き矢印で示すように、半導体パッケージ2およびプリント基板5が共に熱により膨張する。このとき、構成材料の線膨張係数の差により、熱膨張の度合いは、プリント基板5のほうが半導体パッケージ2よりも大きくなる。その結果、半導体パッケージ2は、その外表面のうちプリント基板5側の一面が凸となるように反った状態となり、例えば
図5Bに示すように、センサ部21が搭載されたアイランド241がプリント基板5に当接する。
【0045】
本発明者らがこの比較例の電子装置100について鋭意検討したところ、半導体パッケージ2とプリント基板5との当接および剥離により、センサ精度の低下や後述するセンサ出力の不連続性が生じることを突き止めた。
【0046】
具体的には、半導体パッケージ2がプリント基板5に当接すると、半導体パッケージ2が当接したときの衝撃がセンサ部21に伝わり、センサ部21からの出力信号にノイズが生じ得る。また、この当接状態においては、センサ部21は、プリント基板5に近い固定電極211のほうが、固定電極211よりもプリント基板5から遠い可変電極212に比べて、変形の抑制度合いが大きい。これにより、物理量が印加されていない状態であっても、センサ部21は、固定電極211と可変電極212との間の距離d1が小さくなってしまうことで、出力信号の傾向が変化してしまい、センサ精度が低下し得る。
【0047】
一方で、比較例の電子装置100は、雰囲気温度が常温から低温になると、例えば
図5Cの白抜き矢印で示すように、半導体パッケージ2およびプリント基板5が共に熱により収縮する。このときの熱収縮の度合いは、構成材料の線膨張係数差に起因して、プリント基板5のほうが半導体パッケージ2よりも大きくなる。その結果、半導体パッケージ2は、その外表面のうちプリント基板5側の一面とは反対の他面が凸となるように反り、プリント基板5から遠ざかるように変形する。
【0048】
ここで、本発明者らによる検討の結果、接合材3としてはんだを用いた場合には、半導体パッケージ2のセンサ部21におけるセンサ精度がさらに低下し得ることが判明した。
【0049】
具体的には、接合材3としてはんだを用いた場合、例えば
図5Cに示すように、プリント基板5のうち半導体パッケージ2の直下に位置する領域にフラックスFが流れ込むことがある。半導体パッケージ2が上記のようにプリント基板5に当接すると、半導体パッケージ2は、粘着性のあるフラックスFにより、一時的にプリント基板5に貼り付いた状態となる。その後、雰囲気温度が低温になると、半導体パッケージ2は、貼り付いたフラックスFによって変形が一時的に抑制されるものの、変形の度合いが所定以上となると、フラックスFから剥離して勢いよくプリント基板5から遠ざかるように変形する。このとき、外部からの物理量とは別に、半導体パッケージ2がフラックスFから剥離した際の意図しない力がセンサ部21に印加され、出力信号として反映されることで、センサ部21のセンサ出力は、例えば
図5Dに示すように、不連続となる箇所が生じてしまう。
【0050】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、半導体パッケージ2が雰囲気温度に起因して変形した際に、半導体パッケージ2のうち接合部位以外の部分が被搭載部材4に当接しない構成の電子装置1をなすに至った。
【0051】
本実施形態の電子装置1は、被搭載部材4のうち半導体パッケージ2のセンサ部21が搭載されたアイランド241の直下に位置することとなるアイランド投影領域41cが貫通孔411となっている。そのため、半導体パッケージ2は、例えば
図6に示すように、被搭載部材4側に近づくように弓なりに反ったとしても、半導体パッケージ2の凸となる部位が貫通孔411上になるため、意図しない部位が被搭載部材4に当接しなくなる。また、アイランド投影領域41cが貫通孔411であり、接合材3がはんだである場合であっても、フラックスFが半導体パッケージ2の直下となる位置に流れ込んで留まることはない。
【0052】
そのため、本実施形態の電子装置1は、上記の比較例に比べて、センサ部21のセンサ精度が向上する構成となる。また、電子装置1では、半導体パッケージ2と被搭載部材4とが意図しない接触をしないため、接合材3としてはんだを用いた場合であっても、例えば
図7に示すように、センサ出力が安定し、センサ出力の不連続が生じることはない。
【0053】
なお、半導体パッケージをQFP構造とし、封止樹脂から突出するアウターリードの部分で被搭載部材との線膨張係数の差に起因する熱応力が緩和させ、半導体パッケージの変形を抑えることにより、センサ出力を安定させることも考えられる。しかし、QFP構造の場合には、アウターリードの分だけ平面サイズが大きくなってしまうため、電子装置の小型化のニーズに対して不十分となり得る。
【0054】
これに対して、本実施形態の電子装置1は、半導体パッケージ2がQFN構造であり、封止樹脂26の外郭よりも外側に突出するアウターリードがないため、QFP構造に比べて平面サイズが小さくなる。
【0055】
本実施形態によれば、QFN構造の半導体パッケージ2が、センサ部21が搭載されたアイランド241の直下に位置することとなるアイランド投影領域41cが貫通孔411とされた被搭載部材4に搭載されてなる電子装置1となる。これにより、半導体パッケージ2が雰囲気温度に起因して変形した際に、被搭載部材4に意図しない接触をしない構成となり、電子装置の小型化とセンサ出力の安定とを両立することが可能となる。
【0056】
(第1実施形態の変形例)
センサ部21は、例えば
図8に示すように、信号処理部22の上ではなく、信号処理部22と距離を隔てて配置され、信号処理部22が搭載されるアイランド241の他の領域に搭載されてもよい。この場合、センサ部21は、信号処理部22とリード242とを繋ぐワイヤを第1のワイヤ251として、図示しない電極部が第2のワイヤ252を介して信号処理部22と電気的に接続されている。これにより、センサ部21からの出力信号は、第2のワイヤ252を通じて信号処理部22に伝送されることとなる。
【0057】
被搭載部材4は、上記第1実施形態と同様に、例えば
図9に示すように、センサ部21および信号処理部22が搭載されたアイランド241の外郭をZ方向に向かって投影してできるアイランド投影領域41cが貫通孔411とされる。
【0058】
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態の電子装置1について、
図10、
図11を参照して説明する。
【0060】
図10では、被搭載部材4のうち後述する凸部44の構成を分かりやすくするため、半導体パッケージ2の外郭を二点鎖線で、センサ部21の外郭を破線でそれぞれ示すと共に、断面を示すものではないが、凸部44にハッチングを施している。
【0061】
本実施形態の電子装置1は、被搭載部材4が半導体パッケージ2と基材41とのギャップ調整用の凸部44をさらに備える点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0062】
凸部44は、半導体パッケージ2を被搭載部材4に搭載する際に、半導体パッケージ2と基材41との距離を所定以上とするためのギャップ調整に用いられる部材である。凸部44は、半導体パッケージ2が雰囲気温度に起因して変形した際に、半導体パッケージ2と基材41とが接触することをさらに抑制する役割を果たす。
【0063】
凸部44は、例えば
図10に示すように、基材41のうち半導体パッケージ2の外郭をZ方向に向かって投影してできる領域内、すなわち半導体パッケージ2の直下に位置する領域、かつアイランド投影領域41cの外側に位置する領域に複数配置される。以下、説明の簡便化のため、基材41のうち半導体パッケージ2の外郭をZ方向に向かって投影してできる領域内であって、凸部44が配置されうる上記の領域を「凸部配置領域」と称することがある。凸部44は、例えば、半導体パッケージ2の四隅を支えるように4つ配置されるが、半導体パッケージ2と基材41とのギャップ調整ができればよく、この例に限られず、その数、平面サイズ、高さ、形状や配置等については適宜変更され得る。
【0064】
なお、凸部44は、基材41のうち凸部配置領域において、ランド42および絶縁層43などの他の部位よりもZ方向において突出しつつ、半導体パッケージ2と基材41とが接合不良とならない程度の所定以下の距離となる高さであればよい。
【0065】
凸部44は、例えば
図11に示すように、絶縁層43上に形成される。この場合、凸部44は、絶縁性材料で構成され、当該材料をディスペンサー塗布やシルク印刷等の任意の方法により成膜することで形成される。なお、凸部44の下地は、絶縁層43だけに限られず、ダミーのランドと絶縁層43とが積層されたものでもよいし、基材41であってもよく、任意である。
【0066】
本実施形態によれば、被搭載部材4のアイランド投影領域41cが貫通孔411であることに加えて、ギャップ調整用の凸部44を備えるため、半導体パッケージ2が被搭載部材4により当接しにくくなり、第1実施形態の効果がより高められた構成となる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態の電子装置1について、
図12を参照して説明する。
【0068】
本実施形態の電子装置1は、例えば
図12に示すように、被搭載部材4のうちアイランド投影領域41cが凹部412である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0069】
被搭載部材4は、本実施形態では、アイランド投影領域41cの全部が基材41の表面41aから裏面41bに向かって凹んだ凹部412となっている。これにより、半導体パッケージ2は、雰囲気温度の影響により基材41側に向かって反った状態になった場合であっても、アイランド投影領域41cが凹部412であることで、基材41に当接することが抑制される。凹部412は、基材41側に向かって反った半導体パッケージ2が基材41に当接しなければよく、その深さ、形状や平面サイズ等については、適宜変更され得る。アイランド投影領域41cが凹部412である場合において、接合材3としてはんだを用いたときであっても、フラックスFは、半導体パッケージ2の直下に流れこんだとしても凹部412の底部に留まることとなり、半導体パッケージ2と当接することはない。
【0070】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる電子装置1となる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0072】
例えば、上記各実施形態では、被搭載部材4のうちアイランド投影領域41cの全部が貫通孔411または凹部412である例について説明したが、これに限定されるものではない。具体的には、アイランド投影領域41cは、半導体パッケージ2が基材41側に向かって反った状態になった際に、半導体パッケージ2と基材41とが当接しない形状であればよく、一部のみが貫通孔411または凹部412であってもよい。例えば、アイランド投影領域41cのうちセンサ部21が搭載されたアイランド241の中心を含む所定の領域の直下に位置する領域、あるいはセンサ部21の直下に位置する所定の領域等の一部が貫通孔411または凹部412とされ得る。
【符号の説明】
【0073】
2 半導体パッケージ
21 センサ部
24 リードフレーム
241 アイランド
242 リード
3 接合材
4 被搭載部材
41 基材
41c アイランド投影領域