IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-媒体取扱装置 図1
  • 特許-媒体取扱装置 図2
  • 特許-媒体取扱装置 図3
  • 特許-媒体取扱装置 図4
  • 特許-媒体取扱装置 図5
  • 特許-媒体取扱装置 図6
  • 特許-媒体取扱装置 図7
  • 特許-媒体取扱装置 図8
  • 特許-媒体取扱装置 図9
  • 特許-媒体取扱装置 図10
  • 特許-媒体取扱装置 図11
  • 特許-媒体取扱装置 図12
  • 特許-媒体取扱装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】媒体取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20240702BHJP
【FI】
G07D11/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020161846
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054680
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内林 誠
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-293730(JP,A)
【文献】特開2015-022519(JP,A)
【文献】実公昭63-024514(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00 - 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1硬貨搬送路に載置された第1硬貨が硬貨出金口に排出される媒体取扱装置であって、
前記第1硬貨搬送路の終端部で落下した前記第1硬貨を立位状態で前記硬貨出金口まで転がせる傾斜溝と、
並設された複数の第2硬貨搬送路とを有し
前記傾斜溝は、前記第2硬貨搬送路と直交している
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体取扱装置であって、
前記硬貨出金口に隣接し、前記第1硬貨搬送路の終端部の側に配設された硬貨入金口をさらに備え、
前記硬貨出金口は、何れかの前記第2硬貨搬送路で搬送される第2硬貨を、該第2硬貨搬送路の終端部から前記硬貨出金口まで滑落させる傾斜面を有する
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の媒体取扱装置であって、
傾斜溝の幅は、最小径の前記第1硬貨の直径よりも短い
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の媒体取扱装置であって、
前記傾斜溝は、少なくとも前記第1硬貨搬送路の終端部において、該終端部の側に配設する短尺部と該短尺部に対向する長尺部とを有する略J字状の断面形状であり、
前記第1硬貨搬送路の終端部から前記長尺部との幅は、最大径の前記第1硬貨の半径よりも長い
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項5】
第1硬貨搬送路に載置された第1硬貨が硬貨出金口に排出される媒体取扱装置であって、
前記第1硬貨搬送路の終端部で落下した前記第1硬貨を立位状態で前記硬貨出金口まで転がせる傾斜溝を有しており、
前記傾斜溝は、少なくとも前記第1硬貨搬送路の終端部において、該終端部の側に配設する短尺部と該短尺部に対向する長尺部とを有する略J字状の断面形状であり、
前記第1硬貨搬送路の終端部から前記長尺部との幅は、最大径の前記第1硬貨の半径よりも長い
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項の何れか一項に記載の媒体取扱装置であって、
前記傾斜溝は、少なくとも前記第1硬貨搬送路の終端部において、複数の開口部が形成されている
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体取扱装置に関し、例えば、硬貨を出金口に排出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に硬貨を取り扱う媒体取扱装置では、硬貨を投入する硬貨入金口と、硬貨を判別する硬貨判別部と、硬貨判別部で正しく認識した硬貨を金種毎に収納する硬貨収納庫と、硬貨収納庫から硬貨を出金する硬貨出金口とを備える。また、媒体取扱装置が取り扱い可能な硬貨として認識できなかったリジェクト硬貨は、硬貨リジェクト搬送路で搬送され、硬貨リジェクト口に排出されるように構成される。特許文献1には、硬貨リジェクト口を備えた媒体取扱装置が開示されている。
【0003】
硬貨リジェクト口を有した媒体取扱装置は、入金先行の運用と、釣銭先行の運用との双方を実行可能に構成されている。入金先行の運用は、硬貨が硬貨入金口に投入されているときにリジェクト硬貨が発生し、釣銭があるときに硬貨収納庫から硬貨が出金されるものである。釣銭先行の運用は、オペレータが受け取った金銭の金額を操作表示部に手打ちで入力したときに、受け取った硬貨を現金処理機で認識させることなく、釣銭を先行して出金させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-125607号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
釣銭先行の運用はオペレータが金銭の金額を見誤ることや、金額の誤入力等で、正確に金銭の金額を管理できない。このため、近年、入金先行の運用が主流となり、媒体取引装置の硬貨リジェクト口が不要になることから、媒体取扱装置を小型化できる一方、これまで硬貨リジェクト口に排出していたリジェクト硬貨を硬貨出金口に排出する必要が生じている。
【0006】
そのため、硬貨リジェクト搬送路と硬貨出金口との間に新たな搬送路(スロープ)を設け、リジェクト硬貨を硬貨出金口まで滑落させることが考えられる。しかしながら、硬貨リジェクト搬送路の上部に硬貨判別部を有する搬送路があったり、硬貨リジェクト搬送路と硬貨出金口との距離が長かったりすると、スロープ角度が小さくなってしまう。そのため、リジェクト硬貨の滑りが悪くなり、硬貨が搬送路内に残留してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、搬送路内の硬貨の残留を低減することができる媒体取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の媒体取扱装置は、第1硬貨搬送路(60)に載置された第1硬貨が硬貨出金口(20)に排出される媒体取扱装置であって、前記第1硬貨搬送路の終端部(60a)で落下した前記第1硬貨を立位状態で前記硬貨出金口まで転がせる傾斜溝(30)と、並設された複数の第2硬貨搬送路(71)とを有し、前記傾斜溝は、前記第2硬貨搬送路と直交していることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送路内の硬貨の残留を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の全体構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の全体構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す平面図である。
図4】本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態である硬貨リジェクト搬送路と傾斜溝との関係を示す平面図である。
図6】本発明の第1実施形態である硬貨リジェクト搬送路と傾斜溝との関係を示す断面図(1)である。
図7】本発明の第1実施形態である硬貨リジェクト搬送路と傾斜溝との関係を示す断面図(2)である。
図8】本発明の第1比較例である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図である。
図9】本発明の第2比較例である媒体取扱装置の下段の構成を示す平面図である。
図10】本発明の第2実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図である。
図11】本発明の第2実施形態である硬貨リジェクト搬送路と落下溝との関係を示す平面図である。
図12】本発明の第1変形例である硬貨リジェクト搬送路と落下溝との関係を示す断面図である。
図13】本発明の第2変形例である硬貨リジェクト搬送路と落下溝との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
(構成の説明)
図1は、本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、その断面図である。媒体取扱装置100は、硬貨入金口10と、硬貨判別搬送部40と、硬貨選別搬送部50と、硬貨リジェクト搬送路60(図3)と、硬貨収納庫70と、硬貨出金口20とを備える釣銭機である。各図の矢印は、媒体取扱装置100の「前後」、「左右」、「上下」を示す。
【0013】
また、硬貨判別搬送部40は、硬貨入金口10から硬貨を受け取る受渡ローラ41と、画像センサ等を用いて、硬貨の金種や真偽を判別する硬貨判別部42とを有する搬送路である。硬貨選別搬送部50は、L字状に形成されており、リジェクトブレード52と、複数(6個)の選別収納ブレード51(51a,61b,51c,51d,51e,51f)とを備える搬送路である。リジェクトブレード52は、硬貨判別部42でリジェクト硬貨と判別されたリジェクト硬貨Cを下方の硬貨リジェクト搬送路60(図3,4)に落とす。複数の選別収納ブレード51は、硬貨判別部42で真正硬貨と判別された硬貨を下方の硬貨収納庫70に金種毎に落とす。ここで、真正硬貨とは、媒体取扱装置100で取り扱い可能な硬貨であって、例えば本実施形態では、日本硬貨のうち、変形していないまたは変形が少ない硬貨のことである。また、リジェクト硬貨とは、媒体取扱装置100で取り扱いできない硬貨または媒体であって、例えば本実施形態では、日本硬貨のうち変形の大きい硬貨や一部の記念硬貨、外国硬貨、偽物の硬貨、メダル等のことである。
【0014】
なお、選別収納ブレード51は、例えば、左側から選別収納ブレード51aが50円玉用であり、選別収納ブレード51bが5円玉用であり、選別収納ブレード51cが500円玉用であり、選別収納ブレード51dが100円玉用であり、選別収納ブレード51eが10円玉用であり、選別収納ブレード51fが1円玉用である。
【0015】
硬貨入金口10は、利用者が媒体としての硬貨を投入する投入口であり、硬貨を1枚ずつ硬貨判別搬送部40に繰り出す機能を有する。硬貨判別搬送部40と硬貨選別搬送部50と硬貨リジェクト搬送路(第1硬貨搬送路)60とは、硬貨を係止する複数のピン(不図示)を設けたピンベルト(搬送ベルト)を有し、硬貨を1枚ずつ搬送する。
【0016】
硬貨入金口10は、左側の選別収納ブレード51(51a,61b,51c)の前方であって、硬貨判別搬送部40の右側前方に配設されている。また、硬貨出金口20の左部は、硬貨入金口10の一部と重複し、硬貨出金口20の右部は、硬貨入金口10の右側に配設されている。
【0017】
硬貨リジェクト搬送路60(図3,4)は、リジェクトブレード52によって、選別されたリジェクト硬貨Cを前方に搬送する。硬貨収納庫70は、硬貨判別部42で真正硬貨と判別された硬貨を金種毎に収納する収納部である。硬貨リジェクト搬送路60及び硬貨収納庫70では、前方が高く、後方が低い傾斜状態で硬貨が収納される。
【0018】
図3は、本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す平面図である。
硬貨収納庫70は、複数の第2硬貨搬送路としての硬貨搬送路71a,71b,71c,71d,71e,71fと、リバースローラ77と、複数の出金ゲート75と、複数の出金センサ76とを有する。硬貨搬送路71a,71b,71c,71d,71e,71fは、1枚の幅広の搬送ベルトが複数(例えば、7枚)の仕切板78で仕切られたものである。硬貨搬送路71a,71b,71c,71d,71e,71fは、真正硬貨と判別された硬貨を後方から前方に搬送し、前方に押し込んだ状態にする。リバースローラ77は、前方に搬送された硬貨を1枚ずつ分離する。出金ゲート75は、1枚ずつ分離された硬貨を停止させたり、前方に進行させたりする。出金センサ76は、前方に送り出された硬貨を検出する。
【0019】
硬貨出金口20は、硬貨搬送路71a,71b,71c,71d,71e,71fから出金(排出)された硬貨(例えば、釣銭)及びリジェクト硬貨を保持する器である。利用者は、硬貨出金口20に出金された硬貨又はリジェクト硬貨を手で取り出す。そのため、硬貨出金口20の前部では、手の大きさに適合した大きさになっているが、後部では、全種類の硬貨を出金可能な幅を確保するため、平面視で台形状に形成されている。また、硬貨出金口20は、硬貨搬送路71a,71b,71c,71d,71e,71fから出金された硬貨が滑落するように、後部に傾斜面20aが形成されている。
【0020】
なお、硬貨入金口10(図1)は、平面視で、硬貨判別搬送部40及び硬貨リジェクト搬送路60の右側前方であって、左側の硬貨搬送路71a,71b,71cの前方に配設されている。
【0021】
図4は、本発明の第1実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図であり、図3のIV-IV線の断面を示している。
媒体取扱装置100は、前記した硬貨リジェクト搬送路60及び硬貨出金口20と、傾斜溝30とを備えて構成されている。硬貨リジェクト搬送路60の上面に載置状態で搬送されたリジェクト硬貨Cは、硬貨リジェクト搬送路60のベルト終端部60aで落下し、傾斜溝30を転がり、硬貨出金口20に蓄積される。
【0022】
なお、傾斜溝30の底部31の位置21は、硬貨出金口20の底面20bよりも上方に配設されている。これにより、リジェクト硬貨Cが集積された集積硬貨によって、傾斜溝30の終端部の排出口が塞がることを防いでいる。
【0023】
図5は、本発明の第1実施形態である硬貨リジェクト搬送路と傾斜溝との関係を示す平面図であり、図6,7は、その断面図である。
傾斜溝30は、硬貨出金口20まで硬貨を立位させて転がす(転落させる)スロープである。傾斜溝30は、断面視で略逆J字状(又は略U字状)であり(図7参照)、傾斜面31aが形成された底部31と長尺部32と短尺部33とを有している。長尺部32は、壁部32cと壁部32cよりも高さが高い規制部32bとを備えている(図6参照)。規制部32bは、ベルト終端部60aで落下するときのリジェクト硬貨Cの異常な食み出しを規制する。なお、上記異常の程度は、一意に定まるものか、若しくは、1又は複数の条件に応じて適宜に変更され得る。
【0024】
ベルト終端部60aから規制部32bまでの距離L(図5)は、最大径の硬貨(例えば、五百円玉)の半径rよりも長くなっている。これにより、リジェクト硬貨C(Cb)の重心がベルト終端部60aよりも前方に配置されるので、リジェクト硬貨C(Cb)は底部31に確実に落下する。なお、リジェクト硬貨C(Cb)は、ベルト終端部60aで落下するとき、傾斜状態になるので(図7)、平面視で楕円形状になる(図5)。
【0025】
短尺部33は、硬貨Cを立位させるために、長尺部32に対向して設けられている。そのため、傾斜溝30の幅つまり、底部31の幅dは、最小径の硬貨(例えば、一円玉)の直径φ=2rよりも短くなっている。なお、長尺部32には、内面32aが形成され、短尺部33には、内面32aに対向する内面33aが形成されている(図7参照)。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の媒体取扱装置100は、硬貨リジェクト搬送路60のベルト終端部60aまで搬送されたリジェクト硬貨Cは、傾斜面31aに落下する。傾斜溝30は、長尺部32及び短尺部33には、内面32aと内面33aとが対向しているので、リジェクト硬貨Cの姿勢が立位する。立位したリジェクト硬貨Cは、傾斜面31aを右方向に転がり(転落し)、硬貨出金口20に排出される。
【0027】
(第1比較例)
図8は、本発明の第1比較例である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図である。
媒体取扱装置101は、前記実施形態の媒体取扱装置100と同様に、硬貨入金口10(図1)と、硬貨判別部42と、硬貨リジェクト搬送路60と、硬貨出金口20とを備える。媒体取扱装置101は、傾斜溝30(図7)を備えることなく、傾斜板39を備える点で媒体取扱装置100と相違する。
【0028】
傾斜板39は、リジェクト硬貨Cを載置した状態で滑落させる点で、立位状態で転がす前記第1実施形態の傾斜溝30と相違する。つまり、傾斜板39は、幅が最大の硬貨(例えば、五百円玉)の直径φ=2rよりも広くなっている点で前記第1実施形態の傾斜溝30の傾斜面31a(図7)と相違する。なお、傾斜板39は、両側に壁面を備え、リジェクト硬貨Cが両側から落下しないようにしても構わない。
【0029】
媒体取扱装置101であっても、硬貨リジェクト搬送路60のベルト終端部60aから落下したリジェクト硬貨Cは、傾斜板39に載置された状態で、硬貨出金口20まで滑落する。しかしながら、摩擦力が大きいので、傾斜板39の傾斜角θは、前記実施形態の媒体取扱装置100よりも大きくする必要がある。言い換えれば、硬貨判別部42の存在により、傾斜板39の左端側を高くすることができなかったり、硬貨リジェクト搬送路60と硬貨出金口20との距離Dが長くなったりすると、リジェクト硬貨Cが傾斜板39を滑落することが困難になる。
【0030】
しかしながら、前記実施形態の媒体取扱装置100であれば、傾斜面31aの傾斜角が小さくても、リジェクト硬貨Cは、立位状態で傾斜溝30を硬貨出金口20まで転がることができる。
【0031】
(第2比較例)
前記第1実施形態では、リジェクト硬貨を硬貨出金口20に排出していたが、硬貨リジェクト口25を追加した比較例と対比する。
【0032】
図9は、本発明の第2比較例である媒体取扱装置の下段の構成を示す平面図である。
媒体取扱装置102は、前記第1実施形態の媒体取扱装置100と同様に、硬貨入金口10と、硬貨判別搬送部40と、硬貨選別搬送部50と、硬貨リジェクト搬送路60と、硬貨搬送路71と、硬貨出金口20とを備える。しかしながら、媒体取扱装置102は、硬貨リジェクト搬送路60の前段に傾斜溝30を設けることなく、硬貨リジェクト口25を設けている点で媒体取扱装置100と相違する。つまり、硬貨リジェクト搬送路60によって前方に搬送されたリジェクト硬貨Cが硬貨リジェクト口25に蓄積される。
【0033】
また、媒体取扱装置100,102は、現金処理機(不図示)の一部として構成されるものである。言い換えれば、現金処理機は、媒体取扱装置100,102の他に、操作者が操作する入力操作部(不図示)と紙幣処理装置(不図示)とを備えたものである。現金処理機には、入金先行(入金確定)と釣銭先行との運用方法が用意されている。
【0034】
入金先行(入金確定)の運用は、小計画面で硬貨入金口10に金銭を投入しないと釣銭が出金されないものである。入金先行(入金確定)の運用は、入金処理と出金処理とが同時に行われることがない。そのため、入金先行(入金確定)の運用は、硬貨リジェクト口25が存在しない媒体取扱装置100で実行されるが、媒体取扱装置102でも実行可能である。
【0035】
一方、釣銭先行の運用は、顧客から金銭を受け取り、オペレータが受け取った金額を入力操作部に手入力で打ち込むことで、受け取った硬貨を媒体取扱装置102で認識させることなく、媒体取扱装置102から釣銭を先行して出金させるものである。釣銭先行の運用は、入金処理と出金処理とが同時に行われることがあり、リジェクト硬貨Cが出金硬貨と混在することを防ぐため専用の硬貨リジェクト口25が必要になる。つまり、釣銭先行の運用は、媒体取扱装置102を用いて実行される。
【0036】
釣銭先行の運用は、処理が早いが、オペレータが金銭の金額を見誤ることや、金額の誤入力等で、正確な金銭の金額を管理できないことがある。そのため、入金先行(入金確定)の運用が好まれるので、硬貨リジェクト口25が存在しない前記実施形態の媒体取扱装置100で足りる。
【0037】
なお、従来の現金処理機の構成では、硬貨リジェクト口に硬貨の有無の確認を行う残留検知センサが配設されておらず、オペレータが返却したリジェクト硬貨を取り忘れてしまう問題もあった。
【0038】
(第2実施形態)
前記第1実施形態の傾斜溝30は、全底面が傾斜面31aを形成していたが、底面に複数の開口部(例えば、スリット)を設け、リジェクト硬貨C以外の異物(例えば、硬貨粉やクリップ等)を落下させても構わない。
【0039】
図10は、本発明の第2実施形態である媒体取扱装置の下段の構成を示す断面図であり、図11は、硬貨リジェクト搬送路と落下溝との関係を示す平面図である。
媒体取扱装置103は、前記実施形態の媒体取扱装置100と同様に、硬貨リジェクト搬送路60と、硬貨出金口20とを備える。媒体取扱装置103は、傾斜溝30(図6,7)の代わりに、傾斜溝35aを備え、さらにスリット部材37を備える点で媒体取扱装置100と相違する。
【0040】
傾斜溝35aは、傾斜面が形成された底部34と長尺部32と短尺部33とを有している。底部34は、開口部としての複数のスリット34aが形成されている点で、前記第1実施形態の底部31(図5)と異なる。複数のスリット34aは、矩形状であり、長手方向が底部34の長手方向に対して直交している。
【0041】
スリット部材37は、略L字状に形成された板金であり、短辺部37aと長辺部37bとから構成される。短辺部37aは、長尺部32に固定されている。長辺部37bは、硬貨リジェクト搬送路60の下部に配設されている。長辺部37bには、スリット34aと同様に、開口部としての複数のスリット37aが形成されている。
【0042】
スリット34a及びスリット37bは、リジェクト硬貨C以外の異物を落下させる。これにより、底部34に異物が蓄積されることが無くなる。そのため、リジェクト硬貨Cの転がりが異物で停止し、リジェクト硬貨Cは、傾斜溝35aの長尺部32と短尺部33との間に挟まれることが無い。
【0043】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が可能である。
(1)前記第1実施形態の傾斜溝30の傾斜面31aは、平面であったが、曲面にすることができる。例えば、断面視で湾曲した曲面の傾斜板38(図12参照)や断面視で折れ線状に屈曲した曲面の傾斜板39(図13参照)にすることができる。なお、傾斜板38の曲面は、硬貨リジェクト搬送路60の近傍で傾斜が大きく、硬貨出金口20の近傍で傾斜が小さくなっている。傾斜板39は、傾斜角が大きな平面39aと、傾斜角が小さな平面39bとが連続して構成されている。
【0044】
(2)前記第1,2実施形態では、搬送ベルト(タイミングベルト)を用いた例を説明したが、リジェクト硬貨Cを硬貨リジェクト搬送路60と直交する方向に搬送できる機構であれば適用可能である。
【0045】
(3)前記実施形態の規制部32b(図6)は、硬貨リジェクト搬送路60で搬送されたリジェクト硬貨Cの異常な食み出しを規制するものであったが、搬送されたリジェクト硬貨Cが衝突する衝突部として機能することもある。
【符号の説明】
【0046】
10 硬貨入金口
20 硬貨出金口
20a 傾斜面
30,35a,35b,35c 傾斜溝
31,34,38,39 底部
31a 傾斜面
34a,37b スリット(開口部)
42 硬貨判別部
60 硬貨リジェクト搬送路(第1硬貨搬送路)
60a ベルト終端部
70 硬貨収納庫
71a,71b,71c,71d,71e,71f 硬貨搬送路(第2硬貨搬送路)
100,101,102,103 媒体取扱装置
C リジェクト硬貨
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13