(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240702BHJP
【FI】
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2020162415
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 純
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴則
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044301(JP,A)
【文献】特表2005-511421(JP,A)
【文献】特開平08-195104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
1/30- 1/38
B01D 53/26-53/28
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
A61L 2/00- 2/28
9/00- 9/22
11/00-12/14
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と;
前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;
前記筒部の他方の端部に設けられ、前記筒部側の端面と、前記筒部側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔を有する排出ヘッドと;
フランジと、前記フランジの一方の面から突出し、前記排出ヘッドの前記孔の内部に設けられた凸部と、を有するホルダと;
前記凸部の、前記フランジ側とは反対側の端面に設けられた基板と;
前記基板の、前記凸部側とは反対側の面に設けられ、紫外線を照射する発光素子と;
前記排出ヘッドの前記孔
の前記筒部側に設けられ、前記発光素子と対向
し、前記発光素子から照射された前記紫外線が入射する窓と;
前記排出ヘッドの前記孔の内部
であって、前記孔の内壁と、前記凸部の側面との間に設けられた乾燥剤と;
を具備し
、
前記乾燥剤の前記窓側の端部と、前記窓との間の距離をL1(mm)、前記発光素子の、前記紫外線の出射面と前記窓との間の距離をL2(mm)とした場合に、以下の式を満足する流体殺菌装置。
L1(mm)≧L2(mm)
【請求項2】
前記孔の内壁と、前記凸部の側面との間には隙間が設けられ、
前記隙間において、前記乾燥剤は、前記孔の内壁、および、前記凸部の側面の少なくともいずれかに設けられている請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記凸部の側面、および前記孔の内壁の少なくともいずれかには凹部が設けられ、
前記乾燥剤は、前記凹部の内部に設けられている請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記フランジは、前記排出ヘッドの、前記筒部側とは反対側の端面に設けられ、
前記フランジと、前記排出ヘッドの、前記筒部側とは反対側の端面と、の間に設けられた第1のシール部材;および、
前記フランジの側面と、前記排出ヘッドの、前記筒部側とは反対側の端面と、に密着する第2のシール部材;の少なくともいずれかをさらに具備した請求項1~3のいずれか1つに記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの流体に紫外線を照射して、流体を殺菌する流体殺菌装置がある。例えば、流体が流れる筒部と、筒部の端部に設けられ、筒部の内部に紫外線を照射する光源と、を備えた流体殺菌装置が提案されている。光源から照射された紫外線の一部は、筒部の内部を流れる流体に直接照射される。また、光源から照射され、筒部の内側面に入射した紫外線は、筒部の内部で反射を繰り返しながら伝搬していく。
【0003】
ここで、筒部の内部を流れる流体の温度が、流体殺菌装置が設けられている環境の温度よりも低くなる場合がある。また、環境の温度が上昇する場合もある。これらのような場合には、流体殺菌装置の温度が、環境の温度よりも低くなる。一般的に、流体殺菌装置が設けられる環境には水蒸気を含む空気がある。そのため、流体殺菌装置の温度と環境の温度との差が大きくなると、流体殺菌装置に結露が発生する場合がある。
【0004】
この場合、光源に結露が発生すると、結露による水で光源に設けられた発光素子が故障するおそれがある。また、光源から照射された紫外線の一部が、結露による水に吸収されたり、結露による水で散乱されたりして、殺菌効果が低下するおそれがある。さらに、結露による水で、光源が酸化(腐食)したり、劣化したりするおそれもある。
【0005】
この場合、光源の近傍に、ドライエアを供給することも考えられるが、ドライエアを供給する装置が必要となったり、設置スペースが大きくなったり、コストが増大したりすることになる。
そこで、光源の近傍に結露が発生するのを抑制することができる流体殺菌装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-69166号公報
【文献】特開2017-051290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、光源の近傍に結露が発生するのを抑制することができる流体殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る流体殺菌装置は、筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられ、前記筒部側の端面と、前記筒部側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔を有する排出ヘッドと;フランジと、前記フランジの一方の面から突出し、前記排出ヘッドの前記孔の内部に設けられた凸部と、を有するホルダと;前記凸部の、前記フランジ側とは反対側の端面に設けられた基板と;前記基板の、前記凸部側とは反対側の面に設けられ、紫外線を照射する発光素子と;前記排出ヘッドの前記孔の前記筒部側に設けられ、前記発光素子と対向し、前記発光素子から照射された前記紫外線が入射する窓と;前記排出ヘッドの前記孔の内部であって、前記孔の内壁と、前記凸部の側面との間に設けられた乾燥剤と;を具備している。前記流体殺菌装置は、前記乾燥剤の前記窓側の端部と、前記窓との間の距離をL1(mm)、前記発光素子の、前記紫外線の出射面と前記窓との間の距離をL2(mm)とした場合に、以下の式を満足する。
L1(mm)≧L2(mm)
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、光源の近傍に結露が発生するのを抑制することができる流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
【
図2】(a)~(d)は、他の実施形態に係る乾燥剤の配置を例示するための模式断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、空間の封止を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、流体殺菌装置1は、例えば、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、カバー9、および乾燥部10を有する。
【0013】
筒部2は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。筒部2は、例えば、円筒管とすることができる。筒部2の材料は、紫外線、および殺菌の対象となる流体301aに対する耐性があれば特に限定はない。筒部2の材料は、例えば、石英、ステンレス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂とすることができる。
【0014】
反射部3は、筒部2の外側面に設けることができる。筒部2が、石英などのように紫外線を透過する材料から形成される場合がある。光源6から照射された紫外線の一部が筒部2を透過して外部に漏れると、流体殺菌装置1の処理能力が低下する。筒部2の外側面に反射部3が設けられていれば、筒部2の外部に向かう紫外線を筒部2の内部に向けて反射させることができる。そのため、光源6から照射された紫外線の利用効率を向上させることができるので、発光素子61の数を少なくすることが可能となる。発光素子61の数が少なくなれば、光源6の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0015】
反射部3は、紫外線の反射率が高い材料から形成される。反射部3の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、二酸化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などである。反射部3は、板状を呈し、筒部2の外側面に取り付けることができる。また、スパッタリング法や蒸着法などの成膜法を用いて、筒部2の外側面に膜状の反射部3を形成することもできる。
【0016】
また、反射部3が筒部2の外側面に設けられる場合を例示したが、反射部3が筒部2の内側面に設けられていてもよい。ただし、反射部3と流体301a(例えば、水)が接触することで腐食などが生じたり、反射部3の材料が溶け出したりする場合には、筒部2の外側面に反射部3を設けることが好ましい。
【0017】
また、反射部3は省くこともできる。例えば、筒部2が、紫外線を反射する材料(例えば、白色の無機材料や白色の樹脂)から形成される場合には、反射部3を省くことができる。
【0018】
供給ヘッド4は、筒部2の一方の端部に設けられている。供給ヘッド4と筒部2の端部との間には、Oリングなどのシール部材を設けることができる。シール部材は、供給ヘッド4と筒部2との間が液密となるように封止する。
【0019】
供給ヘッド4は、例えば、円柱状を呈し、一方の端面と他方の端面との間を貫通する孔4aを有する。孔4aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔4aの他方の開口は、供給口4a1となる。供給口4a1には、配管を介して、流体301aの供給源を接続することができる。また、フィルタや整流板などを孔4aの内部に設けることもできる。
【0020】
供給ヘッド4の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。供給ヘッド4の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0021】
排出ヘッド5は、筒部2の他方の端部に設けられている。排出ヘッド5と筒部2の端部との間には、Oリングなどのシール部材を設けることができる。シール部材は、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。
【0022】
排出ヘッド5は、例えば、円柱状を呈し、孔5a、孔5b、および孔5cを有する。
孔5aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔5aの他方の開口は、排出ヘッド5の側面に設けられた排出口5a1となる。排出口5a1には、配管を介して、タンクや洗浄装置などを接続することができる。
【0023】
また、孔5aの、筒部2側の開口の近傍には、Oリングなどのシール部材を設けることができる。シール部材は、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。
排出ヘッド5の材料は、殺菌済みの流体301bと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。排出ヘッド5の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0024】
また、孔5aは屈曲した流路となっている。孔5aは、排出ヘッド5の筒部2側の端面に略平行な流路5a2と、排出ヘッド5の軸方向に延びる流路5a3とを有する。
【0025】
流路5a2は、排出ヘッド5の、筒部2側の端面に開口している。また、流路5a2の内壁には、窓7が露出している。流路5a2は、例えば、円板状の空間である。
流路5a3の一方の端部は、流路5a2の周縁近傍に接続されている。流路5a3の他方の端部には、排出口5a1が接続されている。流路5a3は、例えば、円筒状の空間である。
【0026】
なお、流路5a2に照射された紫外線の一部は、筒部2の内部空間に照射される。また、筒部2の内部空間に照射された紫外線の一部は、反射部3により反射される。そのため、筒部2の内部空間においても流体301aの殺菌が行われる。
【0027】
孔5bは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、流路5a2とに開口している。すなわち、排出ヘッド5は、筒部2側の端面と、筒部2側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔(孔5bおよび孔5a)を有する。
孔5bには、ホルダ63の凸部63b、基板62、および発光素子61が設けられる。
孔5cは、排出ヘッド5の側面と、孔5bの内壁とに開口している。なお、孔5cは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、孔5bの内壁とに開口していてもよい。すなわち、孔5cの一方の端部は孔5bに接続され、孔5cの他方の端部は流体殺菌装置1の外部に開口している。
【0028】
光源6は、排出ヘッド5に着脱自在に設けられている。
光源6は、例えば、発光素子61、基板62、およびホルダ63を有する。
発光素子61は、基板62の、凸部63b側とは反対側の面に設けられている。発光素子61は、窓7に向けて紫外線を照射する。発光素子61は、少なくとも1つ設けることができる。発光素子61が複数設けられる場合には、複数の発光素子61を直列接続することができる。発光素子61は、紫外線を発生させる素子であれば特に限定はない。発光素子61は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
【0029】
発光素子61から照射される紫外線のピーク波長は、殺菌効果があれば特に限定はない。ただし、ピーク波長が260nm~280nmであれば、殺菌効果を向上させることができる。そのため、ピーク波長が260nm~280nmの紫外線を照射可能な発光素子61とすることが好ましい。
【0030】
基板62は、板状を呈し、ホルダ63の凸部63bの、フランジ63a側とは反対側の端面に設けられている。基板62の面には、配線パターンを設けることができる。基板62の材料は、紫外線に対する耐性を有するものとすることが好ましい。基板62の材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板62は、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板62の材料がセラミックスなどであったり、基板62がメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0031】
ホルダ63は、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。発光素子61は放電ランプなどに比べて長寿命ではあるが、点灯時間が長くなれば発光効率が低下する。また、発光素子61が故障して不灯になることも考えられる。ホルダ63が排出ヘッド5に着脱自在に設けられていれば、発光素子61の交換を容易とすることができる。
【0032】
ホルダ63は、例えば、フランジ63aと凸部63bを有する。フランジ63aと凸部63bは一体に形成することができる。
フランジ63aは、板状を呈し、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面に設けられている。フランジ63aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて排出ヘッド5に取り付けられる。
【0033】
凸部63bは、フランジ63aの、筒部2側の面に設けられている。凸部63bは、フランジ63aの一方の面から突出し、排出ヘッド5の孔5bの内部に設けられる。凸部63bの、筒部2側の端面には、発光素子61が実装された基板62を設けることができる。また、凸部63bは、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決める機能を有することができる。例えば、凸部63bの側面を、排出ヘッド5の孔5bの内壁に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決めることができる。
【0034】
また、排出ヘッド5の孔5bと流路5a2は、窓7により仕切られているので、流路5a2に流体301aがある状態でも、光源6の着脱が可能となる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0035】
また、ホルダ63は、発光素子61において発生した熱を外部に放出する機能を有する。そのため、ホルダ63は、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。ホルダ63は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属から形成することができる。また、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側の端面や、側面などに放熱フィンを設けることもできる。
【0036】
窓7は、板状を呈し、排出ヘッド5の孔5bの内壁に液密となるように設けられている。すなわち、窓7は、排出ヘッド5設けられ、一方の面が、排出ヘッド5に設けられた流路5a2に露出している。窓7は、発光素子61と対向している。窓7と発光素子61との間には空間5b1を設けることができる。窓7は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線と流体301aに対する耐性を有する材料から形成される。窓7は、例えば、石英や、紫外線を透過するフッ素樹脂などから形成される。
【0037】
また、窓7の、発光素子61側の面には、反射防止膜を設けることもできる。反射防止膜が設けられていれば、発光素子61から照射された紫外線が窓7により反射されて、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。すなわち、発光素子61から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0038】
また、窓7の筒部2側の面には、防汚膜を設けることもできる。流体殺菌装置1に供給される流体301aには異物が含まれている場合がある。異物が窓7に付着すると、発光素子61から照射された紫外線が窓7を透過し難くなる。防汚膜が設けられていれば、異物が窓7に付着するのを抑制することができる。
【0039】
冷却部8は、例えば、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側に設けることができる。冷却部8は、例えば、ホルダ63に空気を供給するファンなどである。ホルダ63に放熱フィンが設けられる場合には、冷却部8は、放熱フィンに空気を供給するファンとすることができる。また、冷却部8は、例えば、ホルダ63に設けられた流路に液体を供給するものとしてもよい。すなわち、冷却部8は、空冷式であってもよいし、液冷式であってもよい。
【0040】
なお、発光素子61の数や発熱量、流体301aの温度や流量などによっては冷却部8を省くこともできる。ただし、冷却部8が設けられていれば、発光素子61の数や印加電力などを増加させても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。
【0041】
また、冷却部8が設けられていれば、流体301aの温度が高くなったり、温度の高い流体301aの流量が増加したりしても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。そのため、対応可能な流体301aの範囲を広げることができる。
【0042】
カバー9は、筒状を呈し、内部の空間に、筒部2および反射部3を収納する。カバー9の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。カバー9の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。カバー9は、例えば、供給ヘッド4と排出ヘッド5に固定することができる。カバー9の固定方法には特に限定がない。例えば、カバー9の一方の端部を供給ヘッド4に設けられた凹部や溝の内部に設け、カバー9の他方の端部を排出ヘッド5に設けられた凹部や溝の内部に設けることができる。また、例えば、カバー9の両側の端部のそれぞれにフランジを設け、一方のフランジを供給ヘッド4にネジなどで固定し、他方のフランジを排出ヘッド5にネジなどで固定してもよい。
【0043】
ここで、筒部2の内部を流れる流体301aの温度が、流体殺菌装置1が設けられている環境の温度よりも低くなる場合がある。例えば、夏などの気温が高い時期に、地下水や湧き水などの殺菌を行う場合がある。また、流体殺菌装置1が設けられている環境の温度が上昇する場合もある。例えば、夜や朝方などの気温の低い時間帯から、昼などの気温の高い時間帯になると、流体殺菌装置1が設けられている環境の温度が上昇する。
【0044】
これらのような場合には、流体殺菌装置1の温度が、環境の温度よりも低くなる。一般的に、流体殺菌装置1が設けられる環境には水蒸気を含む空気がある。そのため、流体殺菌装置1の温度と環境の温度との差が大きくなると、流体殺菌装置1に結露が発生する場合がある。
【0045】
この場合、排出ヘッド5に設けられた空間5b1においても結露が発生する場合がある。空間5b1において結露が発生すると、結露による水で光源6に設けられた発光素子61が故障するおそれがある。また、窓7の、発光素子61側の面に結露による水が付着すると、発光素子61から照射された紫外線の一部が水に吸収されたり、水で散乱されたりして、殺菌効果が低下するおそれがある。さらに、結露による水で、ホルダ63が酸化(腐食)したり、劣化したりするおそれもある。
【0046】
そこで、本実施の形態に係る流体殺菌装置1には、乾燥部10が設けられている。
乾燥部10は、例えば、筐体11、および乾燥剤12を有する。
筐体11は、内部に空間を有し、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。筐体11は、排出ヘッド5に気密となるように設けることができる。例えば、筐体11と排出ヘッド5との間には、Oリングやパッキンなどのシール部材を設けることができる。筐体11が排出ヘッド5に取り付けられた際には、流体殺菌装置1の外部の雰囲気に含まれている水蒸気が、筐体11の内部空間に侵入するのを抑制することができる。
【0047】
一方、筐体11の内部空間は、孔5cを介して、孔5b(空間5b1)と連通している。そのため、空間5b1に含まれている水蒸気が、筐体11の内部空間に到達することができる。
【0048】
乾燥剤12は、筐体11の内部空間に設けられている。乾燥剤12は、例えば、シリカゲル、酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを含むものとすることができる。ただし、乾燥剤12は、例示をしたものに限定されるわけではなく、雰囲気に含まれる水蒸気を吸着可能なものであればよい。
【0049】
本実施の形態によれば、筐体11の内部に設けられた乾燥剤12が、孔5cを介して、空間5b1に含まれている水蒸気を吸着することができる。そのため、流体殺菌装置1の温度が、環境の温度よりも低くなっても、排出ヘッド5に設けられた空間5b1に結露が発生するのを抑制することができる。その結果、発光素子61が故障したり、殺菌効果が低下したり、ホルダ63が酸化(腐食)したり、ホルダ63が劣化したりするのを抑制することができる。
【0050】
また、乾燥剤12は、水蒸気の吸着量や、経年変化などにより機能が低下する。そのため、必要に応じて、あるいは定期的に乾燥剤12を交換することが好ましい。本実施の形態によれば、筐体11が排出ヘッド5に着脱自在に設けられているので、乾燥剤12の点検や交換などのメンテナンス作業が容易となる。
【0051】
図2(a)~(d)は、他の実施形態に係る乾燥剤12の配置を例示するための模式断面図である。
図1に例示をした実施形態においては、乾燥剤12が排出ヘッド5の外部に設けられている。これに対して、
図2(a)~(d)に例示をした実施形態においては、乾燥剤12が排出ヘッドの孔5bの内部に設けられている。
【0052】
図2(a)、(b)に示すように、排出ヘッド15は、前述した排出ヘッド5と同様の構成を有することができる。ただし、孔5cは設けられていない。また、孔5bの内壁と、凸部63bの側面との間には隙間が設けられている。そして、この隙間に、乾燥剤12が設けられている。この場合、乾燥剤12は、孔5bの内壁、および凸部63bの側面の少なくともいずれかに設けられていればよい。
この様にすれば、乾燥剤12と空間5b1との間の距離を短くすることができる。そのため、空間5b1に含まれている水蒸気を乾燥剤12に吸着させるのが容易となる。
【0053】
図2(c)に示すように、ホルダ163は、前述したホルダ63と同様の構成を有することができる。ただし、凸部163bの側面には、凹部163b1が設けられている。そして、凹部163b1の内部に、乾燥剤12が設けられている。また、凸部163bの側面の一部を、排出ヘッド15の孔5bの内壁に接触させている。
【0054】
この様にすれば、乾燥剤12と空間5b1との間の距離を短くすることができる。そのため、空間5b1に含まれている水蒸気を乾燥剤12に吸着させるのが容易となる。
また、凸部163bの側面の一部が、排出ヘッド15の孔5bの内壁に接触しているので、排出ヘッド15に対する発光素子61の位置決めを行うこともできる。
【0055】
図2(d)に示すように、排出ヘッド25は、前述した排出ヘッド5と同様の構成を有することができる。ただし、孔5cは設けられていない。また、孔5bの内壁には凹部5b2が設けられている。そして、凹部5b2の内部に、乾燥剤12が設けられている。また、凸部63bの側面を、排出ヘッド25の孔5bの内壁に接触させている。
【0056】
この様にすれば、乾燥剤12と空間5b1との間の距離を短くすることができる。そのため、空間5b1に含まれている水蒸気を乾燥剤12に吸着させるのが容易となる。
また、凸部63bの側面が、排出ヘッド25の孔5bの内壁に接触しているので、排出ヘッド25に対する発光素子61の位置決めを行うこともできる。
【0057】
ここで、乾燥剤12を排出ヘッドの孔5bの内部に設けると、発光素子61から照射された紫外線により、乾燥剤12が劣化するおそれがある。
そのため、乾燥剤12を排出ヘッドの孔5bの内部に設ける場合には、例えば、
図2(a)~(d)に示す様に、乾燥剤12と窓7との間の距離をL1(mm)、発光素子61の、紫外線の出射面と窓7との間の距離をL2(mm)とした場合に、「L1(mm)≧L2(mm)」となるようにすることが好ましい。
この様にすれば、発光素子61から照射された紫外線が、乾燥剤12に直接入射するのを抑制することができる。そのため、紫外線による乾燥剤12の劣化を抑制することができる。
【0058】
図3(a)~(c)は、空間5b1の封止を例示するための模式断面図である。
なお、
図3(a)~(c)においては、一例として、
図2(a)に例示をした実施形態を用いて説明するが、
図1、
図2(b)~(d)に例示をした実施形態の場合も同様とすることができる。
【0059】
図3(a)に示すように、ホルダ63のフランジ63aと、排出ヘッド15の、筒部2側とは反対側の端面との間に、シール部材64(第1のシール部材の一例に相当する)を設けることができる。シール部材64は、例えば、パッキンやOリングなどとすることができる。シール部材64の材料は、例えば、ニトリルゴムなどの合成ゴム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などとすることができる。
シール部材64が設けられていれば、ホルダ63と排出ヘッド15との間を密閉することができるので、水蒸気を含む外気が空間5b1の内部に侵入するのを抑制することができる。そのため、乾燥剤12による乾燥状態を維持可能な時間を長くすることができる。
【0060】
図3(b)に示すように、ホルダ63のフランジ63aの側面と、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面とに密着するシール部材65(第2のシール部材の一例に相当する)を設けることができる。シール部材65は、例えば、シリコーン樹脂などを含むコーキング材をフランジ63aの側面に沿って塗布することで形成することができる。
【0061】
シール部材65が設けられていれば、ホルダ63と排出ヘッド15との間を密閉することができるので、水蒸気を含む外気が空間5b1の内部に侵入するのを抑制することができる。そのため、乾燥剤12による乾燥状態を維持可能な時間を長くすることができる。
【0062】
また、コーキング材の除去や再塗布は容易であるため、乾燥剤12を交換する際のメンテナンス性を向上させることができる。
【0063】
図3(a)、(b)に示すように、シール部材64とシール部材65を設けることもできる。この様にすれば、ホルダ63と排出ヘッド15との間をより確実に密閉することができる。そのため、乾燥剤12による乾燥状態を維持可能な時間をさらに長くすることができる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 流体殺菌装置、2 筒部、4 供給ヘッド、5 排出ヘッド、5a 孔、5a2 流路、5b 孔、5b1 空間、5b2 凹部、5c 孔、6 光源、7 窓、10 乾燥部、11 筐体、12 乾燥剤、15 排出ヘッド、25 排出ヘッド、61 発光素子、63 ホルダ、63a フランジ、63b 凸部、64 シール部材、65 シール部材、163 ホルダ、163b 凸部、163b1 凹部、301a 流体、301b 流体