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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20240702BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20240702BHJP
   F04C 15/06 20060101ALI20240702BHJP
   F04C 14/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F04C2/10 341E
F04C15/00 E
F04C15/06 A
F04C14/24 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020163195
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2021162013
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020065070
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 友三
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
F04C 15/06
F04C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転可能なシャフトを有するモータと、
前記シャフトの軸方向一方側の端部に連結されるポンプ機構と、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記ポンプ機構を収容するポンプハウジングと、
を備え、
前記ポンプ機構は、前記シャフトの端部に連結されるインナーロータと、前記インナーロータの径方向外側に位置するアウターロータと、を有し、
前記ポンプハウジングは、
前記ポンプ機構を収容するポンプ収容部と、
前記ポンプハウジングの径方向外側を向く面に開口する吸入口および吐出口と、
前記吸入口と前記ポンプ収容部とを接続する吸入側流路と、
前記吐出口と前記ポンプ収容部とを接続する吐出側流路と、
を有し、
前記吸入口および吐出口は、軸方向において、前記ポンプ収容部よりも前記モータ側に位置し、
前記ポンプハウジングは、前記ポンプ収容部の前記モータ側の端部に、前記ポンプ機構と軸方向に対向するポート設置面と、前記ポート設置面から前記ポンプ機構とは反対側に凹む吸入ポートおよび吐出ポートとを有し、
前記吸入側流路は前記吸入ポートに接続され、前記吐出側流路は前記吐出ポートに接続され、
前記吸入ポートおよび前記吐出ポートのうち少なくとも一方のポートは、径方向内側または径方向外側を向く面が、中心軸に対して傾斜する傾斜面である、電動ポンプ。
【請求項2】
前記吸入側流路は、前記吸入ポートの径方向を向く面に開口する、請求項に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記吐出側流路は、前記吐出ポートの径方向を向く面に開口する、請求項またはに記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記吸入ポートの径方向内側を向く面および前記吐出ポートの径方向内側を向く面は、中心軸に対して傾斜する傾斜面であり、
前記シャフトの周囲に配置される構成部品のうち少なくとも1つの構成部品が、径方向から見て、前記傾斜面と重なる位置に配置される、請求項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記構成部品は、前記シャフトを支持するベアリングである、請求項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記構成部品は、オイルシールである、請求項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記吸入口および前記吐出口の少なくとも一方が、前記モータの径方向外側に位置する、請求項1からのいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、ギヤハウジングのギヤが収容される空間に対して、シャフトが延びる軸方向の一方側に吸込ポート、軸方向の他方側に吐出ポートが配置されるポンプが知られている。吸込ポートおよび吐出ポートは、いずれもギヤハウジングの径方向外側に開口する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6526371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のポンプにおいては、吸込ポートと吐出ポートがギヤに対して軸方向の両側に位置しており、さらに吸込ポートと吐出ポートはいずれも径方向に延びる油路を有していた。
そのため、ポンプが大型化しやすい課題があった。
また、従来のポンプにおいては、ポンプの連続駆動等により吐出圧力が高くなると、ポンプへの負荷が増大してモータの発熱量が大きくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、中心軸回りに回転可能なシャフトを有するモータと、前記シャフトの軸方向一方側の端部に連結されるポンプ機構と、前記モータを収容するモータハウジングと、前記ポンプ機構を収容するポンプハウジングと、を備える電動ポンプが提供される。前記ポンプ機構は、前記シャフトの端部に連結されるインナーロータと、前記インナーロータの径方向外側に位置するアウタロータと、を有する。前記ポンプハウジングは、前記ポンプ機構を収容するポンプ収容部と、前記ポンプハウジングの径方向外側を向く面に開口する吸入口および吐出口と、前記吸入口と前記ポンプ収容部とを接続する吸入側流路と、前記吐出口と前記ポンプ収容部とを接続する吐出側流路と、を有する。前記吸入口および吐出口は、軸方向において、前記ポンプ収容部よりも前記モータ側に位置する。
本発明の1つの態様によれば、中心軸回りに回転可能なロータを有するモータと、前記モータに連結されるポンプ機構と、前記モータを収容するモータハウジングと、前記ポンプ機構を収容するポンプハウジングと、を備え、前記ポンプハウジングは、前記ポンプハウジングの外周面に開口する吸入口及び吐出口と、前記ポンプ機構と前記吸入口とを接続する吸入側流路と、前記ポンプ機構と前記吐出口とを接続する吐出側流路と、を有し、前記吐出側流路は、前記ポンプ機構側から径方向外側へ延びて前記吐出口側へ延びる第1吐出流路と、前記第1吐出流路から分岐して前記中心軸に沿って延びる分岐流路と、前記分岐流路から前記中心軸に交差する方向に延びる排出流路と、前記排出流路から前記吸入側流路へ接続される接続流路と、を有し、前記分岐流路内に、前記吐出側流路内の流体の圧力に応じて動作するリリーフバルブが配置され、前記分岐流路と前記排出流路と前記接続流路とは、前記ポンプ機構から吐出された前記流体の一部を前記吸入側流路へ還流するリリーフ流路であり、前記リリーフ流路の少なくとも一部が、前記モータの径方向外側に配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、軸方向に小型化可能な電動ポンプが提供される。
本発明の1つの態様によれば、モータの放熱効果の高い電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の電動オイルポンプの断面図である。
図2図2は、ポンプ機構の周辺を拡大して示す部分断面図である。
図3図3は、吸入ポートおよび吐出ポートの構造を示す一部断面を含む斜視図である。
図4図4は、吸入側流路および吐出側流路の径方向に延びる部分を示す一部断面を含む斜視図である。
図5図5は、吸入側流路の経路を示す一部断面を含む斜視図である。
図6図6は、吐出側流路の経路を示す一部断面を含む斜視図である。
図7図7は、リリーフバルブ周辺の流路を示す部分断面図である。
図8図8は、第2実施形態の電動オイルポンプにおける吸入側流路の経路を示す一部断面を含む斜視図である。
図9図9は、吐出側流路の経路を示す一部断面を含む斜視図である。
図10図10は、リリーフバルブ周辺の流路を示す部分断面図である。
図11図11は、第2実施形態の電動ポンプにおけるリリーフ流路の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、電動ポンプの一実施形態として、電動オイルポンプについて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態の電動オイルポンプは、車両等に搭載される機器のオイル(流体)の供給に用いられる。
【0009】
以下で参照する各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
XYZ座標系において、X軸方向は、図1に示される中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。中心軸Jは、後述するモータ220のシャフト21の中心軸線である。Y軸方向は、X軸と直交する方向のうち、図1の奥行き方向と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向であり、図1の上下方向と平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0010】
以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と称する。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と称する。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と称する。
【0011】
また、X軸方向の正の側(+X側)を「フロント側」と称する場合がある。同様に、X軸方向の負の側(-X側)を「リア側」と称する場合がある。フロント側(+X側)は、本発明における軸方向一方側に相当する。リア側(-X側)は、本発明における軸方向他方側に相当する。
【0012】
電動オイルポンプ(電動ポンプ)200は、図1に示すように、ポンプボディ210と、モータ220と、ポンプ機構30と、制御基板40と、を備える。
ポンプボディ210は、モータ220を収容するモータハウジング211と、ポンプ機構30を収容するポンプハウジング212と、制御基板40を収容する基板ハウジング213と、を有する。本実施形態の場合、モータハウジング211と、ポンプハウジング212と、基板ハウジング213とは、単一の部材の一部である。
【0013】
モータハウジング211は、ポンプボディ210のリア側(-X側)に位置する。モータハウジング211は、軸方向に延びる円筒状である。モータハウジング211は、リア側に開口する凹部からなる第1収容凹部211aを有する。第1収容凹部211aは、後述するモータカバー226によりリア側から塞がれる。
【0014】
ポンプハウジング212は、ポンプボディ210のフロント側(+X側)に位置する。
ポンプハウジング212は、フロント側に開口する凹部からなる第2収容凹部(ポンプ収容部)212aを有する。第2収容凹部212aにポンプ機構30が収容される。電動オイルポンプ200は、第2収容凹部212aをフロント側から塞ぐポンプカバー212bを有する。
【0015】
基板ハウジング213は、モータハウジング211およびポンプハウジング212の側面に位置する。基板ハウジング213は、モータハウジング211およびポンプハウジング212の図示下側(-Z側)に位置する。基板ハウジング213は、径方向外側から見て概略矩形状である。基板ハウジング213は、ポンプボディ210の図示下側に向かって開口する第3収容凹部213aを有する。基板ハウジング213には、後述する基板ユニット240が図示下側から装着される。
【0016】
ポンプボディ210は、モータハウジング211の第1収容凹部211aと、ポンプハウジング212の第2収容凹部212aとを軸方向に繋ぐ第1貫通孔210aを有する。
ポンプボディ210は、第1収容凹部211aと、基板ハウジング213の第3収容凹部213aとを径方向に繋ぐ第2貫通孔210bを有する。
【0017】
モータ220は、シャフト21を有するロータ22と、ステータ23と、バスバーアッシー224と、バスバーカバー225と、モータカバー226と、第1ベアリング27(ベアリング)および第2ベアリング(ベアリング)28と、を備える。第1ベアリング27および第2ベアリング28は、本実施形態では転がり軸受である。第1ベアリング27および第2ベアリング28のいずれか一方または両方が、滑り軸受であってもよい。シャフト21のフロント側の端部は、ポンプ機構30に連結される。
【0018】
バスバーアッシー224は、複数のバスバー224aと、複数のバスバー224aを保持する樹脂製のバスバーホルダとを有する。バスバーアッシー224は、軸方向から見て円環状である。複数のバスバー224aは、バスバーホルダにねじ止めされる。バスバー224aの固定方法は、圧入、スナップフィット、インサート成形などであってもよい。
【0019】
バスバーアッシー224は、ステータ23のリア側に位置する。バスバーアッシー224は、モータハウジング211の第1収容凹部211aに、リア側から挿入される。
バスバー224aの一方側の端部は、コイル23cからリア側へ延びるコイル線23dと接続される。バスバー224aは、コイル線23dとの接続位置から、基板ハウジング213側へ延びる。バスバー224aの他方側の端部は、バスバーアッシー224の端部において、ジョイントバスバー251に接続される。
【0020】
バスバーカバー225は、バスバーアッシー224のリア側に位置する。バスバーカバー225は、第1収容凹部211aに、リア側から挿入される。バスバーカバー225は、軸方向から見て円環状である。バスバーカバー225は、バスバーアッシー224をリア側から覆う。バスバーカバー225のリア側からモータカバー226が被せられる。モータカバー226は、第1収容凹部211aをリア側から塞ぐ。
【0021】
バスバーカバー225は、リア側を向く面の外周端に、段差部225aを有する。段差部225aは、リア側を向く面と、径方向外側を向く面とを有する。段差部225aの内部に、Oリングからなる弾性部材225bが配置される。弾性部材225bは、モータカバー226とバスバーカバー225とによって軸方向に挟まれる。モータカバー226は、弾性部材225bを介して、バスバーカバー225をフロント側へ押す。
【0022】
モータカバー226は、バスバーカバー225をリア側から覆う円板状の部材である。
モータカバー226は、中心軸Jに沿って延びる円筒部226aと、円筒部226aの外周面から径方向外側に広がる円環状のカバー本体226bとを有する。円筒部226aは、モータカバー226の軸方向の両側に開口する。円筒部226aのフロント側の開口部に第1ベアリング27がフロント側から挿入される。第1ベアリング27は、円筒部226aの内部に位置するベアリング保持部226cに支持される。
【0023】
モータカバー226は、径方向において、バスバーカバー225の外側まで広がる。モータカバー226は、バスバーカバー225よりも径方向外側に位置する部位において、モータハウジング211にねじ止めされる。
【0024】
円筒部226aのリア側の端部に、ブリーザ60が装着される。ブリーザ60は、内部にフィルタを内蔵する。ブリーザ60のフィルタは、例えば、気体を通し液体を遮断する気液分離フィルタである。
【0025】
図1に示すように、第2ベアリング28は、第1収容凹部211aと第2収容凹部212aとを接続する第1貫通孔210aに、リア側から挿入される。第1貫通孔210aの内部には、オイルシール15と、固定リング16と、ウェーブワッシャ17と、第2ベアリング28とが、フロント側から順に配置される。
【0026】
シャフト21は、第2ベアリング28、ウェーブワッシャ17、固定リング16、およびオイルシール15の内孔に通される。シャフト21のフロント側の端部に、ポンプ機構30が連結される。
【0027】
図2は、ポンプ機構30の周辺を拡大して示す部分断面図である。
ポンプ機構30は、シャフト21のフロント側の端部に連結されるインナーロータ31と、インナーロータ31の径方向外側に位置するアウターロータ32と、を有する。本実施形態のポンプ機構30は、例えばトロコイド式ポンプである。インナーロータ31およびアウターロータ32は、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ31およびアウターロータ32は、それぞれトロコイド歯形を有する。モータ220は、インナーロータ31を回転させてポンプ機構30を駆動する。
【0028】
ポンプ機構30は、第2収容凹部212aに収容される。すなわち、ポンプハウジング212は、ポンプ機構30を収容するポンプ収容部として、第2収容凹部212aを有する。第2収容凹部212aは、フロント側から見て円形状の凹部である。ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aに収容されるポンプ機構30をフロント側から覆う。
【0029】
ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aよりも径方向外側へ広がる。ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aよりも径方向外側の位置で、ポンプハウジング212のフロント側を向く端面に、複数のねじ215を用いて締結される。ポンプハウジング212のフロント側を向く端面には、第2収容凹部212aの開口部を径方向外側から囲む環状の弾性部材214が配置される。ポンプハウジング212とポンプカバー212bとの接続面は、弾性部材214により封止される。
【0030】
ポンプハウジング212は、第2収容凹部212aのリア側の端部に、フロント側を向くポート設置面212cを有する。ポート設置面212cは、ポンプ機構30と軸方向に対向する。
図2および図3に示すように、ポンプハウジング212は、ポート設置面212cからリア側に凹む吸入ポート71および吐出ポート72を有する。吸入ポート71および吐出ポート72は、軸方向から見て、周方向に沿って延びる弧状の溝である。吸入ポート71の外周部に位置する径方向内側を向く面71aに、吸入側流路81が開口する。吐出ポート72の外周部に位置する径方向内側を向く面72aに、吐出側流路82が開口する。
【0031】
吸入側流路81は、図4および図5に示すように、吸入ポート71との接続位置から径方向外側に延びる第1吸入流路81aと、第1吸入流路81aの径方向外側の端部からリア側へ延びる第2吸入流路81bと、第2吸入流路81bのリア側の端部から径方向外側へ延びる第3吸入流路81cとを有する。第3吸入流路81cの径方向外側の端部は、ポンプハウジング212の外周面に開口する吸入口51に繋がる。すなわち、吸入側流路81は、ポンプハウジング212の径方向外側を向く面に開口する吸入口51と、第2収容凹部212aとを接続する流路である。
【0032】
第1吸入流路81aと第2吸入流路81bとの交差部には、ポンプハウジング212の外周面からキャップ85が嵌め込まれる。第2吸入流路81bのフロント側の端部に、ポンプハウジング212のフロント側の端面からキャップ86が嵌め込まれる。キャップ85、86は、第1吸入流路81a、第2吸入流路81bを形成するドリル穴の開口を塞ぐ。第1吸入流路81aと第2吸入流路81bとの交差部からキャップ86まで延びる流路は、第2吸入流路81bをドリル加工により形成する過程で形成される孔であり、流路としての機能面からは吸入側流路81に必須な部位ではない。
【0033】
ポンプハウジング212は、図5に示すように、オイルシール15を収容する空間と吸入ポート71とを繋ぐ貫通孔73を有する。貫通孔73は、オイルシール15のフロント側に溜まるオイルを吸入ポート71に排出する流路である。
【0034】
吐出側流路82は、図4および図6に示すように、吐出ポート72との接続位置から径方向に沿って外周側へ延びる第1吐出流路82aを有する。第1吐出流路82aの外周側の端部は、ポンプハウジング212の外周面に開口する吐出口52に繋がる。吐出側流路82は、第1吐出流路82aから分岐してリア側へ延びる分岐流路82bを有する。分岐流路82bのリア側の端部は、ポンプボディ210のリア側の端部に達する。
【0035】
分岐流路82b内には、リリーフバルブ95が配置される。リリーフバルブ95は、軸方向に沿って移動可能な弁体95aと、弁体95aをフロント側へ押すコイルスプリング95bと、コイルスプリング95bのリア側の端部を支持する固定部95cとを有する。固定部95cは、雄ねじ状であり、分岐流路82bのリア側の端部に締め込まれる。固定部95cは、分岐流路82bのリア側の端部の開口を塞ぐ。
【0036】
吐出側流路82は、図7に示すように、分岐流路82bから図示下側へ延びる排出流路82cを有する。排出流路82cは、分岐流路82b内の弁体95aが軸方向に進退する領域から分岐される。排出流路82cの図示下側の端部は、吸入側流路81に繋がる。本実施形態の場合、排出流路82cは、第2吸入流路81bと第3吸入流路81cとが交差する位置に接続される。
【0037】
リリーフバルブ95は、吐出側流路82の圧力により動作する。オイル圧力によって弁体95aが所定長さ以上リア側へ後退すると、分岐流路82bと排出流路82cとが繋がり、吐出側流路82内のオイルの一部が、吸入側流路81に戻される。これにより、電動オイルポンプ200の吐出圧力を制限値以下に維持できる。また、リリーフバルブ95を設置することにより、異常な圧力による配管や機器の破損を抑制できる。
【0038】
本実施形態において、ポンプハウジング212は、電動オイルポンプ200のうち、ポンプ機構30を収容する第2収容凹部212a(ポンプ収容部)と、第2収容凹部212aに繋がる吸入ポート71および吐出ポート72と、吸入ポート71に吸入側流路81を通じて繋がる吸入口51と、吐出ポート72に吐出側流路82と通じて繋がる吐出口52と、を有する部位である。
本実施形態では、ポンプボディ210のモータ220の径方向外側に位置する部位に、流路81b、81c、82b、82c、吸入口51、および吐出口52が設けられる。これらの流路および吸入口、吐出口が設けられる部位は、本実施形態ではポンプハウジング212に含まれる。すなわち本実施形態のポンプハウジング212は、モータ220のフロント側と径方向外側とに位置する。
【0039】
上記構成を備える電動オイルポンプ200では、図2および図6に示すように、吸入口51および吐出口52は、軸方向において、第2収容凹部212a(ポンプ収容部)よりもモータ220側に位置する。
この構成によれば、電動オイルポンプ200の要部を、モータ220からポンプ機構30までの軸方向長さの範囲内に納めることができる。したがって、ポンプカバー212b側に吸入口または吐出口を有する構成と比較して軸方向に小型化された電動オイルポンプとすることができる。
また本実施形態では、ポンプハウジング212内に、吸入口51および吐出口52と、吸入側流路81および吐出側流路82が設けられる。そのため、ポンプハウジング212の加工時にオイルの流路を一括して形成できる。したがって電動オイルポンプ200は、効率よく低コストに製造可能である。
【0040】
本実施形態では、図5に示すように、吸入口51がモータ220の径方向外側に位置する。この構成によれば、吸入口51に繋がる第2吸入流路81b、第3吸入流路81cがモータ220の径方向外側を通る。すなわち、モータ220の発熱源であるステータ23の近くをオイルが通る。これにより、オイルによってステータ23が冷却されやすくなる。
本実施形態では、吸入口51のみがモータ220の径方向外側に位置する構成としたが、吐出口52がモータ220の径方向外側に位置する構成であってもよい。あるいは、吸入口51と吐出口52の両方がモータ220の径方向外側に位置する構成であってもよい。
【0041】
また本実施形態では、ポンプハウジング212は、第2収容凹部212aのモータ220側(リア側)の端部に、ポンプ機構30と軸方向に対向するポート設置面212cと、ポート設置面212cからポンプ機構30とは反対側に凹む吸入ポート71および吐出ポート72と、を有する。吸入ポート71には吸入側流路81が接続される。吐出ポート72には吐出側流路82が接続される。
この構成によれば、吸入ポート71および吐出ポート72が、ポンプ機構30のモータ220側に配置されるので、電動オイルポンプ200が、より軸方向に大型化しにくくなる。発熱源であるモータ220の近くをオイルが通るので、モータ220がオイルにより冷却されやすい。
【0042】
本実施形態では、吸入側流路81は、吸入ポート71の径方向を向く面に開口する。また、吐出側流路82は、吐出ポート72の径方向を向く面に開口する。この構成によれば、吸入ポート71および吐出ポート72から流路が径方向に延びるので、ポンプ機構30とモータ220との間に位置する流路を軸方向に小さくできる。したがって、電動オイルポンプ200が、より軸方向に大型化しにくくなる。
【0043】
本実施形態では、図2および図3に示すように、吸入ポート71の径方向外側を向く面が、中心軸に対して傾斜する傾斜面71bである。また、吐出ポート72の径方向外側を向く面が、中心軸に対して傾斜する傾斜面72bである。
この構成によれば、吸入ポート71の径方向外側を向く面と、吐出ポート72の径方向外側を向く面が軸方向に沿ってまっすぐに延びる面である場合と比較して、吸入ポート71の径方向幅および吐出ポート72の径方向幅を小さくしやすい。したがって、径方向から見て吸入ポート71および吐出ポート72と重なる位置に電動オイルポンプ200の構成部品を配置しやすくなる。電動オイルポンプ200を軸方向に小型化しやすくなる。
【0044】
本実施形態では、吸入ポート71および吐出ポート72の両方が、傾斜面71b、72bを有する構成としたが、吸入ポート71および吐出ポート72のいずれか一方が軸方向に対して傾斜する傾斜面を有する構成であってもよい。
本実施形態では、傾斜面71b、72bは、いずれもポートにおいて径方向外側を向く面であるが、ポートにおいて径方向内側を向く面が傾斜面である構成としてもよい。あるいは、吸入ポート71および吐出ポート72の少なくとも一方において、径方向の外側を向く面とおよび径方向内側を向く面の両方が傾斜面である構成としてもよい。
【0045】
本実施形態では、図2に示すように、傾斜面71b、72bの径方向内側に、オイルシール15が配置される。すなわち、シャフト21の周囲に配置される構成部品のうち少なくとも1つの構成部品が、径方向から見て、傾斜面71b、72bと重なる位置に配置される。
この構成によれば、吸入ポート71および吐出ポート72がシャフト21周囲の部材と距離を保ちつつ径方向に配置されるため、ポンプハウジング212の強度を維持しつつ、ポンプ機構30とモータ220が軸方向に短縮でき、小型化となる。モータ220からポンプ機構30までのシャフト21の長さが短くできるので、ポンプ機構30での振れが小さくなり、ポンプの油圧脈動が小さくなり、振動、騒音が低減が可能となる。吸入ポート71および吐出ポート72が発熱要因となるモータ220側へ近づくことになり、放熱効果が高くなる。そのためより小型、高出力化が可能となる。
【0046】
さらに、傾斜面71b、72bの径方向内側に第2ベアリング28が配置されていてもよい。この構成によれば、ポンプ機構30の近くに第2ベアリング28が配置されることになるので、第2ベアリング28からインナーロータ31までの距離が短くなる。これにより、インナーロータ31の位置でのシャフト21の振れが小さく抑えられ、ポンプの油圧脈動が小さくなる。電動オイルポンプ200の振動、騒音を低減できる。
【0047】
本実施形態の場合、ポンプカバー212bは、ポンプ機構30と対向するリア側を向く面からフロント側へ凹む吸入側カバー凹部91と、吐出側カバー凹部92とを有する。吸入側カバー凹部91は、軸方向において吸入ポート71と対向する。吸入側カバー凹部91は、軸方向から見て、吸入ポート71に概ね一致する平面形状を有する。吐出側カバー凹部92は、軸方向から見て、吐出ポート72に概ね一致する平面形状を有する。
【0048】
吸入側カバー凹部91および吐出側カバー凹部92は、必要に応じて設けられていればよい。すなわち、ポンプカバー212bは、吸入側カバー凹部91および吐出側カバー凹部92を有しない構成であってもよい。
【0049】
図1に示すように、基板ユニット240は、制御基板40と、制御基板40を径方向外側から覆う基板カバー241と、制御基板40に固定されるバスバーユニット250と、を備える。
【0050】
基板カバー241は、基板ハウジング213側(+Z側)に向かって開口する箱形の部材である。制御基板40は、基板カバー241の図示上側を向く開口部に固定される。基板カバー241は、本実施形態の場合、樹脂製である。基板カバー241は、複数の金属端子241aがインサート成形されたコネクタ241bを有する。
【0051】
バスバーユニット250は、制御基板40のリア側の端部に固定される。バスバーユニット250は、モータ220と制御基板40とを接続する。バスバーユニット250は、第3収容凹部213aと第1収容凹部211aとを繋ぐ第2貫通孔210bの内部に収容される。
【0052】
バスバーユニット250は、複数のジョイントバスバー251と、複数のジョイントバスバー251を支持するジョイントバスバーホルダ252とを有する。複数のジョイントバスバー251の一方の端部は、ジョイントバスバーホルダ252からモータ220に向かって延び、バスバー224aと電気的に接続される。複数のジョイントバスバー251の他方の端部は、制御基板40に接続される。制御基板40とモータ220とは、バスバーユニット250を介して電気的に接続される。
【0053】
基板ユニット240は、制御基板40をモータ220側に向けた状態で、ポンプボディ210の基板ハウジング213に固定される。本実施形態の場合、基板ユニット240の基板カバー241が、基板ハウジング213にねじ止めされる。制御基板40は、ポンプボディ210と基板カバー241との間に封入される。
【0054】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0055】
[第2実施形態]
以下、電動ポンプの一実施形態として、電動オイルポンプについて説明する。
一実施形態の電動オイルポンプは、車両等に搭載される機器のオイル(流体)の供給に用いられる。
【0056】
以下で参照する各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
XYZ座標系において、X軸方向は、図1に示される中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。中心軸Jは、後述するモータ220のシャフト21の中心軸線である。Y軸方向は、X軸と直交する方向のうち、図1の奥行き方向と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向であり、図1の上下方向と平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0057】
以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と称する。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と称する。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と称する。
【0058】
また、X軸方向の正の側(+X側)を「フロント側」と称する場合がある。同様に、X軸方向の負の側(-X側)を「リア側」と称する場合がある。フロント側(+X側)は、本発明における軸方向一方側に相当する。リア側(-X側)は、本発明における軸方向他方側に相当する。
【0059】
電動オイルポンプ(電動ポンプ)300は、図1に示すように、ポンプボディ210と、モータ220と、ポンプ機構30と、制御基板40と、を備える。
ポンプボディ210は、モータ220を収容するモータハウジング211と、ポンプ機構30を収容するポンプハウジング212と、制御基板40を収容する基板ハウジング213と、を有する。本実施形態の場合、モータハウジング211と、ポンプハウジング212と、基板ハウジング213とは、単一の部材の一部である。
【0060】
モータハウジング211は、ポンプボディ210のリア側(-X側)に位置する。モータハウジング211は、軸方向に延びる円筒状である。モータハウジング211は、リア側に開口する凹部からなる第1収容凹部211aを有する。第1収容凹部211aは、後述するモータカバー226によりリア側から塞がれる。
【0061】
ポンプハウジング212は、ポンプボディ210のフロント側(+X側)に位置する。
ポンプハウジング212は、フロント側に開口する凹部からなる第2収容凹部(ポンプ収容部)212aを有する。第2収容凹部212aにポンプ機構30が収容される。電動オイルポンプ300は、第2収容凹部212aをフロント側から塞ぐポンプカバー212bを有する。
【0062】
基板ハウジング213は、モータハウジング211およびポンプハウジング212の側面に位置する。基板ハウジング213は、モータハウジング211およびポンプハウジング212の図示下側(-Z側)に位置する。基板ハウジング213は、径方向外側から見て概略矩形状である。基板ハウジング213は、ポンプボディ210の図示下側に向かって開口する第3収容凹部213aを有する。基板ハウジング213には、後述する基板ユニット240が図示下側から装着される。
【0063】
ポンプボディ210は、モータハウジング211の第1収容凹部211aと、ポンプハウジング212の第2収容凹部212aとを軸方向に繋ぐ第1貫通孔210aを有する。
ポンプボディ210は、第1収容凹部211aと、基板ハウジング213の第3収容凹部213aとを径方向に繋ぐ第2貫通孔210bを有する。
【0064】
モータ220は、シャフト21を有するロータ22と、ステータ23と、バスバーアッシー224と、バスバーカバー225と、モータカバー226と、第1ベアリング27(ベアリング)および第2ベアリング(ベアリング)28と、を備える。第1ベアリング27および第2ベアリング28は、本実施形態では転がり軸受である。第1ベアリング27および第2ベアリング28のいずれか一方または両方が、滑り軸受であってもよい。シャフト21のフロント側の端部は、ポンプ機構30に連結される。
【0065】
バスバーアッシー224は、複数のバスバー224aと、複数のバスバー224aを保持する樹脂製のバスバーホルダとを有する。バスバーアッシー224は、軸方向から見て円環状である。複数のバスバー224aは、バスバーホルダにねじ止めされる。バスバー224aの固定方法は、圧入、スナップフィット、インサート成形などであってもよい。
【0066】
バスバーアッシー224は、ステータ23のリア側に位置する。バスバーアッシー224は、モータハウジング211の第1収容凹部211aに、リア側から挿入される。
バスバー224aの一方側の端部は、コイル23cからリア側へ延びるコイル線23dと接続される。バスバー224aは、コイル線23dとの接続位置から、基板ハウジング213側へ延びる。バスバー224aの他方側の端部は、バスバーアッシー224の端部において、ジョイントバスバー251に接続される。
【0067】
バスバーカバー225は、バスバーアッシー224のリア側に位置する。バスバーカバー225は、第1収容凹部211aに、リア側から挿入される。バスバーカバー225は、軸方向から見て円環状である。バスバーカバー225は、バスバーアッシー224をリア側から覆う。バスバーカバー225のリア側からモータカバー226が被せられる。モータカバー226は、第1収容凹部211aをリア側から塞ぐ。
【0068】
バスバーカバー225は、リア側を向く面の外周端に、段差部225aを有する。段差部225aは、リア側を向く面と、径方向外側を向く面とを有する。段差部225aの内部に、Oリングからなる弾性部材225bが配置される。弾性部材225bは、モータカバー226とバスバーカバー225とによって軸方向に挟まれる。モータカバー226は、弾性部材225bを介して、バスバーカバー225をフロント側へ押す。
【0069】
モータカバー226は、バスバーカバー225をリア側から覆う円板状の部材である。
モータカバー226は、中心軸Jに沿って延びる円筒部226aと、円筒部226aの外周面から径方向外側に広がる円環状のカバー本体226bとを有する。円筒部226aは、モータカバー226の軸方向の両側に開口する。円筒部226aのフロント側の開口部に第1ベアリング27がフロント側から挿入される。第1ベアリング27は、円筒部226aの内部に位置するベアリング保持部226cに支持される。
【0070】
モータカバー226は、径方向において、バスバーカバー225の外側まで広がる。モータカバー226は、バスバーカバー225よりも径方向外側に位置する部位において、モータハウジング211にねじ止めされる。
【0071】
円筒部226aのリア側の端部に、ブリーザ60が装着される。ブリーザ60は、内部にフィルタを内蔵する。ブリーザ60のフィルタは、例えば、気体を通し液体を遮断する気液分離フィルタである。
【0072】
図1に示すように、第2ベアリング28は、第1収容凹部211aと第2収容凹部212aとを接続する第1貫通孔210aに、リア側から挿入される。第1貫通孔210aの内部には、オイルシール15と、固定リング16と、ウェーブワッシャ17と、第2ベアリング28とが、フロント側から順に配置される。
【0073】
シャフト21は、第2ベアリング28、ウェーブワッシャ17、固定リング16、およびオイルシール15の内孔に通される。シャフト21のフロント側の端部に、ポンプ機構30が連結される。
【0074】
ポンプ機構30は、図2に示すように、シャフト21のフロント側の端部に連結されるインナーロータ31と、インナーロータ31の径方向外側に位置するアウターロータ32と、を有する。本実施形態のポンプ機構30は、例えばトロコイド式ポンプである。インナーロータ31およびアウターロータ32は、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ31およびアウターロータ32は、それぞれトロコイド歯形を有する。モータ220は、インナーロータ31を回転させてポンプ機構30を駆動する。
【0075】
ポンプ機構30は、第2収容凹部212aに収容される。すなわち、ポンプハウジング212は、ポンプ機構30を収容するポンプ収容部として、第2収容凹部212aを有する。第2収容凹部212aは、フロント側から見て円形状の凹部である。ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aに収容されるポンプ機構30をフロント側から覆う。
【0076】
ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aよりも径方向外側へ広がる。ポンプカバー212bは、第2収容凹部212aよりも径方向外側の位置で、ポンプハウジング212のフロント側を向く端面に、複数のねじ215を用いて締結される。ポンプハウジング212のフロント側を向く端面には、第2収容凹部212aの開口部を径方向外側から囲む環状の弾性部材214が配置される。ポンプハウジング212とポンプカバー212bとの接続面は、弾性部材214により封止される。
【0077】
ポンプハウジング212は、第2収容凹部212aのリア側の端部に、フロント側を向くポート設置面212cを有する。ポート設置面212cは、ポンプ機構30と軸方向に対向する。
図2および図3に示すように、ポンプハウジング212は、ポート設置面212cからリア側に凹む吸入ポート71および吐出ポート72を有する。吸入ポート71および吐出ポート72は、軸方向から見て、周方向に沿って延びる弧状の溝である。吸入ポート71の外周部に位置する径方向内側を向く面71aに、吸入側流路81が開口する。吐出ポート72の外周部に位置する径方向内側を向く面72aに、吐出側流路82が開口する。
【0078】
吸入側流路81は、図4および図8に示すように、吸入ポート71との接続位置から径方向外側に延びる第1吸入流路81aと、第1吸入流路81aの径方向外側の端部からリア側へ延びる第2吸入流路(リリーフ流路)81bと、第2吸入流路81bのリア側の端部から径方向外側へ延びる第3吸入流路81cとを有する。第3吸入流路81cの径方向外側の端部は、ポンプハウジング212の外周面に開口する吸入口51に繋がる。すなわち、吸入側流路81は、ポンプハウジング212の径方向外側を向く面に開口する吸入口51と、第2収容凹部212aとを接続する流路である。
【0079】
第1吸入流路81aと第2吸入流路81bとの交差部には、ポンプハウジング212の外周面からキャップ85が嵌め込まれる。第2吸入流路81bのフロント側の端部に、ポンプハウジング212のフロント側の端面からキャップ86が嵌め込まれる。キャップ85、86は、第1吸入流路81a、81bを形成するドリル穴の開口を塞ぐ。第1吸入流路81aと第2吸入流路81bとの交差部からキャップ86まで延びる流路は、第2吸入流路81bをドリル加工により形成する過程で形成される孔であり、流路としての機能面からは吸入側流路81に必須な部位ではない。
【0080】
ポンプハウジング212は、図8に示すように、オイルシール15を収容する空間と吸入ポート71とを繋ぐ貫通孔73を有する。貫通孔73は、オイルシール15のフロント側に溜まるオイルを吸入ポート71に排出する流路である。
【0081】
吐出側流路82は、図4および図9に示すように、吐出ポート72側から径方向外側へ延びて吐出口52側へ延びる第1吐出流路82aを有する。第1吐出流路82aの外周側の端部は、ポンプハウジング212の外周面に開口する吐出口52に繋がる。吐出側流路82は、第1吐出流路82aから分岐して中心軸Jに沿ってリア側へ延びる分岐流路(リリーフ流路)82bを有する。分岐流路82bのリア側の端部は、ポンプボディ210のリア側の端部に達する。ここで中心軸Jに沿うとは、中心軸Jと、分岐流路(リリーフ流路)82bとの間隔が、軸方向に亘って変化していてもよい。例えば、分岐流路(リリーフ流路)82bはX軸方向とZ軸方向で成す面で中心軸Jに対して傾きがあってもよい。
【0082】
分岐流路82b内には、図8及び図9に示すような、吐出側流路82内の流体の圧力に応じて動作するリリーフバルブ95が配置される。
リリーフバルブ95は、軸方向に沿って移動可能な弁体95aと、弁体95aをフロント側へ押すコイルスプリング95bと、コイルスプリング95bのリア側の端部を支持する固定部95cとを有する。固定部95cは、雄ねじ状であり、図9及び図10に示すように、分岐流路82bのリア側の端部に締め込まれる。固定部95cは、分岐流路82bのリア側の端部の開口を塞ぐ。
【0083】
弁体95aは、図10に示すように、フロント側に位置する部位に、外周面に開口する一対の第1環状溝96b及び第2環状溝96cを有するとともに、リア側に位置する部位に、コイルスプリング95bを保持するための収容凹部96dを有する。第1環状溝96b及び第2環状溝96cは、弁体95aの外周面から径方向内側に凹むとともに、弁体95aの軸回り全体に形成された環状の溝である。これら第1環状溝96b及び第2環状溝96cにより、リリーフバルブ95が配置された分岐流路82bの内壁面との間に隙間が生じる。
【0084】
第1環状溝96bと第2環状溝96cとは、弁体95aの長さ方向に互いに所定の間隔をあけて位置し、互いの間に封止部99が存在する。封止部99の直径は、分岐流路82bのうち、弁体95aが配置される部位の直径に略等しい。封止部99は、その外周面が分岐流路82bの内壁面にほぼ接する直径を有することから、分岐流路82bと後述の排出流路82cとの間を封止可能とする。
【0085】
弁体95aは、軸方向から見た中心に長さ方向に沿って延びる第1中心穴97aと第2中心穴97bとを有する。第1中心穴97a及び第2中心穴97bは、上記封止部99によって長さ方向に分離されている。
【0086】
弁体95aは、弁体95aを径方向に貫通する4つの貫通孔を有する。具体的に、4つの貫通孔は、一対の第1貫通孔98a及び一対の第2貫通孔98bである。各第1貫通孔98aは、径方向に見て第1環状溝96bと重なる。各第1貫通孔98aのそれぞれは、第1環状溝96bに開口する。一方、各第2貫通孔98bは、軸方向で第2環状溝96cに一致し、それぞれが第2環状溝96cに開口する。
【0087】
一対の第1貫通孔98aは、互いに直交した径方向に延びる貫通孔である。一対の第1貫通孔98aは、互いが交差する位置において第1中心穴97aのリア側の部分に繋がっている。すなわち、第1中心穴97aは、一端側がフロント側端面の中央に開口し、他端側が一対の第1貫通孔98aどうしが交差する位置に開口する。これにより、分岐流路82b内に収容された弁体95aの第1中心穴97a及び一対の第1貫通孔98aが、ポンプ機構30に接続された第1吐出流路82a側と繋がる。
【0088】
一対の第2貫通孔98bは、互いに直交した径方向に延びる貫通孔である。一対の第2貫通孔98bは、互いが交差する位置において第2中心穴97bのフロント側の部分に繋がっている。すなわち、第2中心穴97bは、一端側が一対の第2貫通孔98bどうしが交差する位置に開口するとともに、他端側が収容凹部96dに開口する。これにより、弁体95aの第2中心穴97b及び第2貫通孔98bが、後述の排出流路82c側と繋がる。
【0089】
リリーフバルブ95が収容される分岐流路82bは、フロント側からリア側へ向かうにしたがって流路の内径が段階的に大きくなっている。分岐流路82bは、第1吐出流路82aに繋がる第1孔821と、第1孔821のリア側に繋がる第2孔822と、第2孔822のリア側に繋がる螺子孔823と、を有する。リリーフバルブ95のうち、弁体95aは第2孔822内に収容される。リリーフバルブ95の固定部95cは、外周面に雄ねじ部を有しており、螺子孔823の雌ねじ部に締め込まれて固定される。
【0090】
コイルスプリング95bの力によってフロント側へ押された弁体95aは、その先端が、第1孔821と第2孔822との間の段差部824に突き当たることで停止する。弁体95aは、第2孔822よりも短い長さを有する。そのため、弁体95aが段差部824に突き当たった状態のとき、螺子孔823に嵌め込まれた固定部95cとの間には軸方向に隙間があり、この隙間によって弁体95aのリア側への後退が可能とされている。
【0091】
吐出側流路82は、図10に示すように、分岐流路82bから軸方向に交差する方向であって図示下側となる方向へ延びる排出流路82cをさらに有する。
【0092】
排出流路82cは、分岐流路82b内の弁体95aが軸方向に進退する領域から分岐して、中心軸Jに交差する方向に延びる。排出流路82cの一端側は、分岐流路82bのうち弁体95aが収容される第2孔822に繋がる。排出流路82cの図示下側の他端側は、接続流路82dに繋がる。
【0093】
接続流路82dは、排出流路82cから吸入側流路81へ接続される。具体的に、接続流路82dは、吸入側流路81のうち、吸入口51に繋がる第3吸入流路81cと第2吸入流路81bとが交差する位置に接続される。
【0094】
第2吸入流路81bは、分岐流路82bに平行し、接続流路82dとの接続位置からフロント側へ向かって軸方向に沿って延びる流路である。
【0095】
本実施形態では、互いに接続される分岐流路82b、排出流路82c及び接続流路82dによって構成される流路を、本実施形態の「リリーフ流路」としている。リリーフ流路80は、ポンプ機構30から吐出された流体の一部を吸入側流路81へ還流する流路である。リリーフ流路80の少なくとも一部がモータ220の径方向外側に配置されている。本実施形態では、リリーフ流路80を構成する分岐流路82b、排出流路82c、および接続流路82dが、モータ220の径方向外側にそれぞれ配置されている。
なお、モータ220の径方向外側に配置される「リリーフ流路80の少なくとも一部」が、「分岐流路82b」であることが好ましい。すなわち、リリーフ流路80のうち、少なくとも、モータ220の中心軸Jに沿って延びる分岐流路82bが、径方向外側に配置されていることが好ましい。
【0096】
分岐流路82b内に配置されたリリーフバルブ95は、第1吐出流路82aの圧力により動作する。
第1吐出流路82a内に吐出されたオイル圧力がリリーフ圧に達していないとき、すなわちリリーフバルブ95が動作する圧力に至っていないとき、リリーフバルブ95の弁体95aは、コイルスプリング95bによってフロント側に押された状態で分岐流路82bの段差部824に突き当たっている。このとき、弁体95aの封止部99が第2孔822内に位置することで、分岐流路82bのリア側が閉塞され、分岐流路82bと排出流路82cとが分断される。
【0097】
オイル圧力によって弁体95aが所定の長さ以上リア側へ後退すると、分岐流路82bと排出流路82cとが繋がり、吐出側流路82内のオイルの一部が吸入側流路81に戻される。すなわち、弁体95aがリア側へ後退して、第1環状溝96bの部位が排出流路82cとの接続位置まで進入すると、第1中心穴97a及び一対の第1環状溝96bを通じて第1吐出流路82aと排出流路82cとが繋がる。第1吐出流路82aから分岐流路82b内に流入したオイルの一部は、弁体95aの第1中心穴97a、一対の第1貫通孔98a及び一対の第1環状溝96bを通じて排出流路82cへと排出され、接続流路82dを経て第2吸入流路81b内に流入することで、過剰なオイル圧がさらにリリーフされる。
【0098】
リリーフ流路80を通じて排出されたオイルと、吸入口51から吸入されたオイルとは、第2吸入流路81b内において混合され、ポンプ機構30に通じる第1吸入流路81aへと誘導される。
【0099】
これにより、電動オイルポンプ300の吐出圧力を制限値以下に維持できる。また、リリーフ流路80内にリリーフバルブ95を設置することにより、吐出オイルの一部がリリーフ流路80へ流入した後に、吸入側流路81内へ流入することで、異常な圧力による配管や機器の破損をより効果的に抑制できる。このように、ポンプ機構30から吐出されたオイルが、分岐流路82bを通じてリリーフバルブ95側に流れ込むことでオイル圧をリリーフさせることができ、ポンプ機構30の負荷を低減させることができる。
【0100】
第1吐出流路82a内に吐出されたオイル圧力がリリーフ圧に達して、リリーフバルブ95が動作(移動)することで分岐流路82b内へオイルがリリーフされる場合、ポンプ機構30に高圧がかかることでポンプ機構30への負荷が増加した状態になり、モータ220に流れる電流が大きくなってモータ220の発熱が大きくなる。本実施形態の構成によれば、発熱源となるモータ220に対してその径方向外側にリリーフ流路80が配置されているため、リリーフ圧に達した際にポンプ機構30への負荷が増加しても、ステータ23側から排出されたオイルが上記リリーフ流路80内を流れることによってモータ220の熱が放熱される。本実施形態では、モータ220の軸方向全体に亘ってその径方向外側にリリーフ流路80が存在しているため、モータ220の発熱に対する放熱効果をより効果的に得ることができる。
【0101】
また、上述したように、リリーフ流路80のうち、少なくとも、第1吐出流路82aに近い分岐流路82bがモータ220の径方向外側に配置されていれば、ポンプ機構30の負荷が高くなった初期の段階、すなわち、モータ220の発熱が大きくなり始める初期の段階で、モータ220の熱を放熱することができる。このように、モータ220の熱が大きくなり始めた早い段階でモータ220の熱を放熱させることができるので、コイル23cを有するステータ23、第1ベアリング27、第2ベアリング28、基板ユニット240、シャフト21を有するロータ22などの温度が高くなり過ぎることがなく、高熱による悪影響を抑えられる。電動オイルポンプ300の品質信頼性を高くすることができる。
【0102】
また、リリーフ流路80のうち、分岐流路82b、排出流路82c、接続流路82dのそれぞれの少なくとも一部が、モータ220の径方向外側に配置されることで、モータ220の周方向で異なる位置において各流路が存在することになるため、モータ220の放熱効果を高めることができる。
【0103】
このように、本実施形態では、リリーフ圧に達した際に発生するポンプ機構30の負荷増加がある場合でも、モータ220の側方をオイルが流れることによってオイルの圧力をリリーフするのと同時に、発熱が大きくなったモータ220の冷却を効果的に行えるという2つの作用を得ることができる。モータ220の熱を放熱することに優れるため、モータ220及びポンプ機構30の効率が下がるのを抑制できる。
【0104】
さらに、本実施形態では、モータハウジング211と、リリーフ流路80を有するポンプハウジング212とが一体化されているため、モータ220の放熱効果をより高めることができる。
【0105】
(変形例)
図11は、リリーフ流路の変形例を示す部分断面図である。
図11に示すリリーフ流路90は、モータ220の径方向外側に、上述した分岐流路82bおよび排出流路82cと、モータ220の軸方向に沿って長く延びた接続流路82dとを有する。本例では、軸方向において、吸入口51がモータ220よりもポンプ機構30に近い位置にあり、このような吸入口51からリア側へ離れた所に排出流路82cが位置する。そのため、上述した実施形態に比べて接続流路82dが軸方向に沿って長く延びている。図11に示すように、例えば、接続流路82dは、モータ220の軸方向長さの半分以上の長さに亘って延びており、その全体がモータ220の径方向外側に位置している。
【0106】
接続流路82dがリア側へ長く延びているため、ポンプ機構30から吐出されたオイルが接続流路82d内を流動するうちに、ポンプ機構30によるオイルの脈動成分が緩和されて、ポンプ機構30から吐出されたオイルの吐出脈動を抑制することができる。
【0107】
このように、本例では、モータ220の径方向外側において、軸方向に沿って延びる流路が分岐流路だけでなく、接続流路82dも軸方向に沿って長く延びていることから、モータ220の周方向で異なる位置において、モータ220の熱をそれぞれ放熱させることができる。このようなリリーフ流路90により、オイルの吐出脈動を抑制できるとともに、モータ220の全体をより効率よく冷却することが可能である。
【0108】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0109】
例えば、上記実施形態では、モータハウジング211とポンプハウジング212とが一体となっているが、これらが別体に構成されていてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、吸入口51および吐出口52は、軸方向において、ポンプ機構30よりもモータ220側に位置しているが、これに限られず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0111】
15…オイルシール、21…シャフト、22…ロータ、30…ポンプ機構、31…インナーロータ、51…吸入口、52…吐出口、71…吸入ポート、71a,72a…径方向内側を向く面、71b,72b…傾斜面、72…吐出ポート、81…吸入側流路、82…吐出側流路、200,300…電動オイルポンプ(電動ポンプ)、211…モータハウジング、212…ポンプハウジング、212a…第2収容凹部(ポンプ収容部)、212c…ポート設置面、220…モータ、J…中心軸
図1
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図11