IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特許7512842自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム
<>
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図1
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図2
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図3
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図4
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図5
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図6
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図7
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図8
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図9
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図10
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図11
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図12
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図13
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図14
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図15
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図16
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図17
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図18
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図19
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図20
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図21
  • 特許-自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】自動運転方法、装置、プログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240702BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 V
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020180647
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071597
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 諭史
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185293(JP,A)
【文献】特開2020-159844(JP,A)
【文献】特開2019-185280(JP,A)
【文献】特開2020-205037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両(30)に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲、及び遠隔支援の要求に対して前記自動運転車両に行動変容を指示する制御情報を送信する方法又はオペレータを呼び出す方法である対処方法を含む地点情報を登録し(118、218)、
登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記地点情報に含まれる前記対処方法に応じた内容の遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両に予め設定された自動運転制御を継続して実施させる(114、114A、116、116A、216)
ことを含む処理をコンピュータ(110、110A、210、130、130A)が実行する自動運転方法。
【請求項2】
前記影響範囲は、遠隔支援の要因に応じて予め定めた値、又は対応する地点周辺の過去の交通に関する統計情報に基づいて決定される(118、218)請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項3】
前記影響範囲は、遠隔支援が実施される時間帯、及び対応する地点における道路特性の少なくとも一つに基づいて補正される(118、218)請求項に記載の自動運転方法。
【請求項4】
前記影響範囲は、前記距離に加え、前記遠隔支援の要因が生じている時間により定まる請求項1~請求項のいずれか1項に記載の自動運転方法。
【請求項5】
前記時間が経過した場合に、前記影響範囲を含む前記地点情報が削除される(118、218)請求項に記載の自動運転方法。
【請求項6】
前記地点情報として、さらに、対応する地点周辺の状況をセンシングしたセンシングデータに基づく特徴量を登録し(118、218)、
前記遠隔支援の実施が保留された自動運転車両周辺のセンシングデータを逐次取得し、取得したセンシングデータに基づく特徴量と、対応する地点について登録された特徴量との類似度が所定値以上となった場合に、保留していた前記遠隔支援を実施する(116、116A、216)
ことをさらに含む処理を前記コンピュータが実行する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の自動運転方法。
【請求項7】
前記特徴量は、前記自動運転車両について、予め設定された自動運転制御による走行経路を閉塞する障害物を示す特徴量である請求項に記載の自動運転方法。
【請求項8】
前記遠隔支援の実施が保留された状態で、前記影響範囲内に所定時間以上停車している場合、又は、自動運転車両周辺のセンシングデータを逐次取得し、取得したセンシングデータに基づく特徴量と、前回取得したセンシングデータに基づく特徴量との非類似度が所定値以上となった場合に、新たな遠隔支援を実施する(216)
ことをさらに含む処理を前記コンピュータが実行する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の自動運転方法。
【請求項9】
前記影響範囲内において、前記新たな遠隔支援を実施した場合、前記影響範囲内で最初に遠隔支援を実施した位置、前記新たな遠隔支援を実施した位置、及び前記新たな遠隔支援で実施した遠隔支援の内容に基づいて、登録済みの地点情報を更新する(218)請求項に記載の自動運転方法。
【請求項10】
前記新たな遠隔支援は、オペレータの呼び出しの実施である請求項又は請求項に記載の自動運転方法。
【請求項11】
地点情報が登録された地点を、自動運転車両が遠隔支援を要求することなく通過した場合、前記地点情報を削除する(118、218)請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の自動運転方法。
【請求項12】
自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲、及び遠隔支援の要求に対して前記自動運転車両に行動変容を指示する制御情報を送信する方法又はオペレータを呼び出す方法である対処方法を含む地点情報を登録する登録部(118、218)と、
登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記地点情報に含まれる前記対処方法に応じた内容の遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両に予め設定された自動運転制御を継続して実施させる実施部(114、114A、116、116A、216)と、
を含む自動運転装置(110、110A、210、130、130A)。
【請求項13】
自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲、及び遠隔支援の要求に対して前記自動運転車両に行動変容を指示する制御情報を送信する方法又はオペレータを呼び出す方法である対処方法を含む地点情報を登録し、
登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記地点情報に含まれる前記対処方法に応じた内容の遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両に予め設定された自動運転制御を継続して実施させる
ことを含む処理をコンピュータ(110、110A、210、130、130A)に実行させるための自動運転プログラム。
【請求項14】
自動運転車両に搭載され、前記自動運転車両の自動運転を制御する車載装置(130、130A)と、前記自動運転車両の自動運転の遠隔支援を実施する遠隔支援装置(110、110A、210)とを含む自動運転システムであって、
前記遠隔支援装置は、自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲、及び遠隔支援の要求に対して前記自動運転車両に行動変容を指示する制御情報を送信する方法又はオペレータを呼び出す方法である対処方法を含む地点情報を登録する登録部を含み、
前記遠隔支援装置又は前記車載装置は、登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記地点情報に含まれる前記対処方法に応じた内容の遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両に予め設定された自動運転制御を継続して実施させる実施部を含む、
自動運転システム(100、200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転方法、自動運転装置、自動運転プログラム、及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行車両の自律走行時の安全を確保する遠隔監視技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、自律走行車両は、カメラで撮影した車両の周辺のカメラ映像を遠隔監視センターに送信する。また、カメラを含む自律センサから得られる情報に基づいて障害物が検知された場合、自律走行車両は自動停止する。遠隔監視センターは、自律走行車両が自動停止した場合、受信したカメラ映像に基づいて自律走行車両の走行を再開させてよいかどうか判断する。そして、遠隔監視センターは、自律走行車両の走行を再開させてよいと判断した場合には、自律走行車両に発進信号を送信する。遠隔監視センターから発進信号を受信した場合、自律走行車両は走行を再開する。
【0003】
また、安全性を保ったままオペレータの作業負荷を軽減する管制装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の管制装置は、遠隔制御を実施した場合、位置情報及びセンシングデータを地点データとして登録し、さらに遠隔制御情報を紐付けて記録する。管制装置は、対象車である自動運転車に対して遠隔制御を実施する場合、対象車から取得した現在の地点データと、管制装置に登録済みの地点データとを比較し、類似する地点データが存在するかを判定する。対象車の現在の地点データと類似する地点データが登録されている場合、管制装置は、オペレータが介入しない第1の遠隔制御を実行する。類似する地点データが無い場合、管制装置は、オペレータが介入する第2の遠隔制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-87015号公報
【文献】特開2019-185280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、障害物が検知され、自律走行車両が自動停止する度に監視員が呼び出される。そのため、同一の要因において、障害物が検知される都度、何度も監視員が呼び出される、という問題がある。例えば、自律走行車両が走行する経路上で道路工事が行われている場合、工事によって停車した先行車両、車線変更等を促す誘導員などがそれぞれ障害物として検知される可能性があり、これらが検知される都度、監視員が呼び出されることが想定される。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、遠隔制御を実施するか否かを、地点データに含まれる位置情報を用いて判定しているため、オペレータの介入の有無や、オペレータ介入有りの場合に、オペレータを呼び出すタイミングを適切に判断できない場合がある。その結果、不必要なオペレータ呼び出しが発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、自動運転車の遠隔支援が必要な場面において、不必要なオペレータ呼び出しの発生、及び不適切な遠隔指示の実施を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動運転方法は、自動運転車両(30)に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲を含む地点情報を登録し(118、218)、登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両による自動運転を実施させる(114、114A、116、116A、216)ことを含む処理をコンピュータ(110、110A、210、130、130A)が実行する方法である。
【0009】
また、本発明に係る自動運転装置は、自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲を含む地点情報を登録する登録部(118、218)と、登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両による自動運転を実施させる実施部(114、114A、116、116A、216)と、を含んで構成される。
【0010】
また、本発明に係る自動運転プログラムは、自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲を含む地点情報を登録し、登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両による自動運転を実施させることを含む処理をコンピュータ(110、110A、210、130、130A)に実行させるためのプログラムである。
【0011】
また、本発明に係る自動運転システムは、自動運転車両に搭載され、前記自動運転車両の自動運転を制御する車載装置(130、130A)と、前記自動運転車両の自動運転の遠隔支援を実施する遠隔支援装置(110、110A、210)とを含む自動運転システム(100、200)であって、前記遠隔支援装置は、自動運転車両に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、位置、及び少なくとも前記位置からの距離で定まる影響範囲を含む地点情報を登録する登録部を含み、前記遠隔支援装置又は前記車載装置は、登録された前記地点情報に含まれる影響範囲内の自動運転車両から遠隔支援の要求が発生した場合、前記遠隔支援の実施を保留し、前記自動運転車両による自動運転を実施させる実施部を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自動運転方法、装置、プログラム、及びシステムによれば、自動運転車の遠隔制御が必要な場面において、不必要なオペレータ呼び出しの発生、及び不適切な遠隔指示の実施を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】登録済みの地点情報に基づいて遠隔支援を実施する場合の問題点を説明するための図である。
図2】登録済みの地点情報に基づいて遠隔支援を実施する場合の問題点を説明するための図である。
図3】自動運転システムの概略構成を示す図である。
図4】遠隔支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】車載装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】第1及び第2実施形態における遠隔支援装置の機能ブロック図である。
図7】車両情報DBの一例を示す図である。
図8】地点情報DBの一例を示す図である。
図9】センサ特徴と登録特徴との比較を説明するための図である。
図10】センサ特徴と登録特徴との比較を説明するための図である。
図11】影響範囲DBの一例を示す図である。
図12】影響範囲の決定方法を説明するための図である。
図13】影響範囲の決定方法の他の例を説明するための図である。
図14】第1及び第2実施形態における車載装置の機能ブロック図である。
図15】第1実施形態におけるAD車側自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態における遠隔支援装置側自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
図17】第1実施形態の変形例における遠隔支援装置の機能ブロック図である。
図18】第1実施形態の変形例における車載装置の機能ブロック図である。
図19】第1実施形態の変形例におけるAD車側自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
図20】第1実施形態の変形例における遠隔支援装置側自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
図21】新たな遠隔支援が必要な状態を説明するための図である。
図22】第2実施形態における遠隔支援装置側自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、各実施形態の詳細を説明する前に、上述した特許文献2に記載の技術のように、遠隔支援が実施された地点の地点情報を登録しておき、登録済みの地点情報に基づいて、遠隔支援を実施する場合の問題点について、より具体的に説明する。
【0015】
特許文献2に記載の技術では、対象車の地点情報と、登録済みの地点情報とが類似するか否かを判定して、オペレータの介入の有無を判定している。例えば、地点情報に含まれる位置同士の距離が近いかどうかが判定される。この地点情報の類似度の判定基準を厳しくした場合、対象車の地点情報と類似する登録済みの地点情報が存在しない可能性が高まり、登録のない障害物等であると判断されて、オペレータが呼び出される確率が高まる。
【0016】
より具体的な例で説明する。例えば、図1に示すように、路上駐車を要因とする地点情報が登録されているとする。この地点情報には、路上駐車している車両の位置情報、及びその車両を回避して走行するための遠隔制御情報(オペレータ呼び出し無し)が含まれるとする。この場合において、その路上駐車に起因して渋滞、一時停止、徐行等(以下、「渋滞等」という)が発生している場合、先行車の停止又は減速などにより渋滞等を検知した時点で、自動運転車から遠隔支援が要求されることが想定される。しかし、図1の例では、遠隔支援が要求された位置と、登録済みの地点情報に含まれる位置とには隔たりがあるため、地点情報が登録されていない地点における遠隔支援の要求であると判断され、オペレータが呼び出されることになる。
【0017】
また、同様に、図1の例で、地点情報の類似度の判定基準を緩くした場合、対象車の地点情報が、登録済みの地点情報に類似すると判定され、その地点情報に含まれる遠隔制御情報に基づいて、対象車の自動運転が制御される。この場合、不適切な遠隔指示が対象車へ通知されてしまう可能性がある。例えば、遠隔制御情報として、路上駐車している車両を追い越して走行するような遠隔指示が対象車に通知されるとする。この場合、先行車と対象車とが同時に追い越しを開始してしまい、他の交通参加者に迷惑が及ぶ場合がある。
【0018】
また、例えば、図2に示すように、道路工事を要因とする地点情報が登録されているとする。この地点情報には、道路工事が行われている位置情報、オペレータを呼び出す旨の遠隔支援の情報が含まれるとする。この場合の遠隔支援では、例えば、オペレータが対象車周辺の状況を撮影したカメラ映像を確認して、道路工事現場の誘導員の手旗を認識し、ゴーサインが出た場合に、工事現場を回避するような走行経路で走行するように、対象車が遠隔制御される。この場合において、その道路工事に起因して渋滞等が発生している場合、図1の場合と同様に、渋滞等を検知した時点で、自動運転車両から遠隔支援が要求されることが想定される。地点情報の類似度の判定基準を厳しくした場合、図1の場合と同様に、地点情報が登録されていない地点における遠隔支援の要求であると判断され、オペレータが呼び出されることになる。また、地点情報の類似度の判定基準を緩くした場合、誘導員までの距離がまだ遠い段階で、オペレータが呼び出されることになる。その結果、呼び出されたオペレータは、遠隔支援を行うために、対象車が誘導員の前に到達するまで待つ必要があり、オペレータが長時間拘束されることになる。
【0019】
そこで、以下の各実施形態では、地点情報に影響範囲(詳細は後述)を含めて登録しておく。そして、自動運転車からの遠隔支援要求が影響範囲内で行われた場合には、地点情報が登録されることとなった本来の要因(路上駐車、道路工事等)に起因する渋滞等により遠隔支援要求が発生したと判断する。この場合、遠隔支援要求に対して、追い越し等の行動変容の指示や、オペレータの呼び出し等の遠隔支援を一旦保留する。そして、自動運転車が、本来遠隔支援を必要とする地点に到達したタイミングで、自動運転車への遠隔支援を実施する。
【0020】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図3に示すように、第1実施形態に係る自動運転システム100は、管制センター等に設置、又はクラウド上に配備される遠隔支援装置110と、車両に搭載された車載装置130と、オペレータ50により操作されるオペレータ端末150とを含む。なお、自動運転システム100に含まれる車載装置130及びオペレータ端末150の数は、図3に示す例に限定されない。
【0022】
自動運転システム100では、例えば、自家用車、バス、タクシー、ライドシェア等として利用される車両が、車載装置130により制御され自動運転する。以下では、車載装置130が搭載され、自動運転する車両をAD(Autonomous Driving)車30という。車載装置130の各々は、インターネット等のネットワークを介して遠隔支援装置110と接続される。また、オペレータ端末150の各々もネットワークを介して遠隔支援装置110と接続される。これにより、車載装置130の各々と、オペレータ端末150の各々とが、遠隔支援装置110を介して接続される。なお、オペレータ端末150は、遠隔支援装置110と同様に管制センターに配置されて、遠隔支援装置110とイントラネットで接続されてもよいし、管制センターの外部に配置されて、遠隔支援装置110とインターネットで接続されてもよい。
【0023】
遠隔支援装置110は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ装置等の情報処理装置により実現される。図4に、遠隔支援装置110のハードウェア構成を示す。図4に示すように、遠隔支援装置110は、CPU(Central Processing Unit)12、メモリ14、記憶装置16、入力装置18、出力装置20、記憶媒体読取装置22、及び通信I/F(Interface)24を有する。各構成は、バス26を介して相互に通信可能に接続されている。
【0024】
記憶装置16には、後述する遠隔支援装置側自動運転処理を実行するための自動運転プログラムが格納されている。CPU12は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU12は、記憶装置16からプログラムを読み出し、メモリ14を作業領域としてプログラムを実行する。CPU12は、記憶装置16に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0025】
メモリ14は、RAM(Random Access Memory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶装置16は、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0026】
入力装置18は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための装置である。出力装置20は、例えば、ディスプレイやプリンタ等の、各種の情報を出力するための装置である。出力装置20として、タッチパネルディスプレイを採用することにより、入力装置18として機能させてもよい。
【0027】
記憶媒体読取装置22は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの各種の記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。
【0028】
通信I/F24は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0029】
車載装置130は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により実現される。図5に、車載装置130のハードウェア構成を示す。図5に示すように、車載装置130は、遠隔支援装置110と同様に、CPU32、メモリ34、記憶装置36、入出力I/F38、記憶媒体読取装置42、及び通信I/F44を有する。記憶装置36には、後述するAD車側自動運転処理を実行するための自動運転プログラムが格納されている。各構成は、バス49を介して相互に通信可能に接続されている。入出力I/F38には、GPS46、センシング装置48、及び他のECU等の各種車両構成が接続される。
【0030】
GPS46は、車載装置130の位置、すなわちAD車30の位置を測位し、測位時刻毎の位置情報を出力する。位置情報は、例えば、緯度及び経度である。センシング装置48は、例えば、カメラやレーザレーダ等であり、車両周辺の状況をセンシングしたセンシングデータを出力する。各種車両構成からは、車速、方位角等のAD車30の車両状態を示す情報が車載装置130へ入力される。
【0031】
オペレータ端末150は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の情報処理装置により実現される。オペレータ端末150のハードウェア構成は、図4に示す遠隔支援装置110のハードウェア構成と概ね同様であるため、説明を省略する。
【0032】
次に、図6を参照して、第1実施形態に係る遠隔支援装置110の機能的な構成を説明する。図6に示すように、遠隔支援装置110は、車両状態監視部112と、支援方法決定部114と、遠隔支援実施部116と、地点情報登録部118とを含む。各機能部は、図4に示すCPU12によって実現される。また、遠隔支援装置110の所定の記憶領域には、車両情報DB(database)120と、地点情報DB122と、地図DB124と、影響範囲DB126とが記憶される。
【0033】
車両状態監視部112は、車載装置130から送信される車両情報、遠隔支援要求、及びセンシングデータの各々を取得する。車両情報は、AD車30(車載装置130)の識別情報である車両ID、AD車30の各種車両構成により検知される車速、方位角等の情報、及びGPS46で計測されるAD車30の位置情報を含む。車両状態監視部112は、車両情報を取得すると、取得した車両情報に、車両情報を取得した日時を付与し、例えば図7に示すような車両情報DB120に記憶する。
【0034】
遠隔支援要求は、AD車30において遠隔支援が必要となった場合(詳細は後述)に車載装置130から送信される情報である。車両状態監視部112は、車両情報と共に、遠隔支援要求を取得すると、取得した遠隔支援要求及び車両情報を支援方法決定部114へ受け渡す。また、車両状態監視部112は、センシングデータを取得すると、取得したセンシングデータを遠隔支援実施部116へ受け渡す。
【0035】
地点情報DB122には、AD車30に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、遠隔支援を実施した位置、及び少なくともその位置からの距離で定まる影響範囲の情報を含む地点情報が登録されている。図8に地点情報DB122の一例を示す。図8の例では、各行(各レコード)が1つの地点についての地点情報に相当する。各地点情報には、地点の識別情報である「地点ID」、地点の位置情報である「位置」、遠隔支援要求を発生させた本来の「要因」、「影響範囲(距離)」、「影響範囲(時間)」、「対処方法」、「特徴量」等の情報が含まれる。
【0036】
影響範囲とは、本来の「要因」に起因して生じる渋滞等により、予め設定された行動計画に従ったAD車30の自動運転に支障が生じる可能性のある範囲である。「影響範囲(距離)」は、この影響範囲を、「位置」からの距離で規定したものであり、「影響範囲(時間)」は、この影響範囲を、「要因」が生じている時間で規定したものである。影響範囲の詳細な決定方法については後述する。
【0037】
「対処方法」は、遠隔支援装置110からの遠隔支援の方法であり、本実施形態では、追い越し、車線変更等の行動変容の内容を自動で遠隔指示する方法と、オペレータ50を呼び出して対処する方法とがある。対処方法の詳細については後述する。また、「要因」が渋滞の場合のように、要因の自然解消を待つ必要がある場合は、遠隔支援による対処を行わないため、「対処方法」が「無し(図8では「-」で表記)」の場合もある。
【0038】
「特徴量」は、該当の地点において遠隔支援が実施された際の、地点周辺の状況をセンシングしたセンシングデータから抽出される特徴量である。以下では、地点情報に含まれる特徴量を「登録特徴」ともいう。特徴量の詳細については後述する。
【0039】
支援方法決定部114は、遠隔支援要求及び車両情報を受け取ると、地点情報DB122に登録されたいずれかの地点情報に含まれる影響範囲内で遠隔支援要求が発生したか否かを判定する。具体的には、支援方法決定部114は、地点情報DB122から、車両情報に含まれる位置情報が示すAD車30の位置との距離が所定範囲内となる「位置」を持つ地点情報を検索する。複数の地点情報が検索された場合、支援方法決定部114は、地図DB124を参照して、例えば、AD車30の走行経路上の前方で、かつ最も近い「位置」を持つ地点情報を選択することができる。地図DB124には、車線数や信号の情報等の交通環境の情報を含む地図データが記憶されている。支援方法決定部114は、車両情報DB120に記憶した日時毎の位置情報の時系列で表されるAD車30の走行軌跡を地図データにマッピングすることにより、AD車30の進行方向や走行車線を判断することができる。また、支援方法決定部114は、走行予定ルートや走行車線の情報を含む車両情報をAD車30から取得するようにしてもよい。
【0040】
そして、支援方法決定部114は、検索した地点情報に含まれる「影響範囲(距離)」及び「影響範囲(時間)」に基づいて、影響範囲内で遠隔支援要求が発生したか否かを判定する。より具体的には、支援方法決定部114は、「影響範囲(時間)」に基づいて、検索された地点情報が示す地点での「要因」がまだ生じており、かつ、「影響範囲(距離)」で特定される範囲内にAD車30が存在する場合に、影響範囲内で遠隔支援要求が発生したと判定する。
【0041】
支援方法決定部114は、影響範囲内で遠隔支援要求が発生したと判定した場合、地点情報に基づく遠隔支援を実施することを決定し、車両情報及び該当の地点情報を遠隔支援実施部116へ受け渡す。また、支援方法決定部114は、遠隔支援要求の発生が影響範囲内ではないと判定した場合、オペレータ50による遠隔支援を実施することを決定し、車両情報を遠隔支援実施部116へ受け渡すと共に、オペレータ50の呼び出しを指示する。
【0042】
遠隔支援実施部116は、支援方法決定部114からオペレータ50の呼び出しが指示されると、空き状態のオペレータ50を検索する。また、遠隔支援実施部116は、AD車30からセンシングデータを取得する。そして、遠隔支援実施部116は、検索したオペレータ50に対応するオペレータ端末150に、取得したセンシングデータを画像化した画面を表示すると共に、遠隔支援を指示する。遠隔支援実施部116は、オペレータ端末150に対するオペレータ50の操作に基づいて生成された遠隔制御情報を車載装置130へ送信する。
【0043】
遠隔支援実施部116は、車両情報及び地点情報を受け取った場合、地点情報に対処方法が登録されているか否かを判定する。具体的には、遠隔支援実施部116は、地点情報の「対処方法」が「無し」以外の場合には、対処方法が登録されていると判定し、「対処方法」が「無し」の場合には、対処方法が登録されていないと判定する。対処方法が登録されていない場合、遠隔支援実施部116は、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続を指示する。この指示として、明示的に先行車の追従を指示してもよいし、行動変容が不要であることをAD車30へ通知してもよい。
【0044】
また、対処方法が登録されている場合、遠隔支援実施部116は、車載装置130にセンシングデータの送信を指示し、現在のAD車30周辺の状況を示すセンシングデータを取得する。遠隔支援実施部116は、取得したセンシングデータから特徴量(以下、「センサ特徴」という)を抽出し、センサ特徴と、受け取った地点情報に含まれる登録特徴とが一致するか否かを判定する。例えば、遠隔支援実施部116は、特徴量間の類似度が所定値以上の場合に、両特徴量が一致すると判定することができる。両特徴量が一致しない場合、遠隔支援実施部116は、対処方法が登録されていない場合と同様に、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続を指示すると共に、センシングデータの送信を指示する。
【0045】
一方、両特徴量が一致した場合、遠隔支援実施部116は、地点情報に含まれる対処方法に従った遠隔支援を実施する。具体的には、遠隔支援実施部116は、対処方法として、行動変容が登録されている場合、その行動変容の内容に基づいた遠隔制御情報を生成して車載装置130へ送信する。例えば、遠隔制御情報として、行動変容時に実施する行動、又は行動変容時に走行する走行軌跡等を生成する。また、遠隔支援実施部116は、対処方法として、オペレータ呼び出しが登録されている場合、上述した、支援方法決定部114からオペレータ50の呼び出しが指示された場合と同様の遠隔支援を実施する。
【0046】
例えば、図9に示す路上駐車(図9左図の破線楕円部)を示す登録特徴を含む地点情報が登録されている場合において、図9左図に示すAD車30の位置で遠隔支援要求が発生したとする。この時点では、遠隔支援実施部116は、登録特徴とセンサ特徴とが一致しないため、路上駐車に起因する渋滞等により遠隔支援要求が発生したと判断し、行動計画に基づく自動運転の継続を指示する。そして、行動計画に基づく自動運転により、AD車30が徐々に進行し、図9右図に示す位置に到達し、登録特徴とセンサ特徴とが一致したとする。これにより、遠隔支援実施部116は、本来遠隔支援を実施する地点に到達したと判断し、地点情報に含まれる対処方法に従って、例えば、追い越しの行動変容を示す走行軌跡(図9中の実線矢印)を遠隔制御情報として生成し、車載装置130へ送信する。
【0047】
また、例えば、図10に示す道路工事(図10左図の破線楕円部)を示す登録特徴を含む地点情報が登録されている場合において、図10左図に示すAD車30の位置で遠隔支援要求が発生したとする。この時点では、遠隔支援実施部116は、登録特徴とセンサ特徴とが一致しないため、道路工事に起因する渋滞等により遠隔支援要求が発生したと判断し、行動計画に基づく自動運転の継続を指示する。そして、行動計画に基づく自動運転により、AD車30が徐々に進行し、図10右図に示す位置に到達し、登録特徴とセンサ特徴とが一致すると、遠隔支援実施部116は、地点情報に含まれる対処方法に従って、例えば、オペレータ50を呼び出す。遠隔支援実施部116は、オペレータ50がオペレータ端末150を操作して生成した、道路工事部分を回避する走行軌跡(図10中の実線矢印)を受け付ける。そして、遠隔支援実施部116は、誘導員の手旗信号がゴーサインとなったことをオペレータ50が確認したタイミングで、受け付けた走行軌跡を走行するような遠隔制御情報を生成して車載装置130へ送信する。
【0048】
上記のように、遠隔支援要求の本来の要因に起因する渋滞等の影響範囲内で遠隔支援要求が発生した場合、本来遠隔支援が実施されるべき地点にAD車30が到達するまで遠隔支援が一旦保留される。これにより、不必要なオペレータ50の呼び出しの発生、及び不適切な遠隔指示の実施を抑制することができる。
【0049】
地点情報登録部118は、遠隔支援要求の発生が影響範囲内ではないと判定され、オペレータ50による遠隔支援が実施された場合、実施された遠隔支援に関する地点情報を生成して、地点情報DB122に登録する。具体的には、地点情報登録部118は、オペレータ50から、オペレータ端末150を介して、遠隔支援要求が発生した要因と、その要因となった障害物の位置に関する情報と、行動変容等の対処方法の内容とを受け付ける。
【0050】
より具体的には、オペレータ50は、オペレータ端末150に表示された、AD車30周辺のカメラ映像や、レーザレーダによる三次元点群データ等において、要因となった障害物の領域を指定する。例えば、要因が路上駐車の場合、その路上駐車している車両の、カメラ映像や三次元点群データ上での領域が指定される。要因及び対処方法の内容については、オペレータ50により、オペレータ端末150に直接入力、又はプルダウンメニューから選択するなどされて入力される。オペレータ端末150で指定及び入力された情報が遠隔支援装置110へ送信される。
【0051】
地点情報登録部118は、受け付けた要因となった障害物の、カメラ映像や三次元点群データ上での領域の位置と、AD車30の位置とに基づいて、世界座標系における障害物の位置を特定し、この位置を地点情報に登録する「位置」(以下、「地点の位置」ともいう)とする。又は、遠隔支援を実施した時点では、障害物とAD車30とは近接した位置に存在するため、AD車30の位置を地点の位置としてもよい。なお、要因が渋滞の場合などのように、遠隔支援要求の要因となる特定の障害物が存在しない場合も、AD車30の位置を地点の位置とすればよい。さらに、地点情報登録部118は、要因となった障害物の、カメラ映像や三次元点群データ上での領域から、登録特徴となる特徴量を抽出する。
【0052】
また、地点情報登録部118は、遠隔支援要求の要因に基づいて、影響範囲を決定する。例えば、地点情報登録部118は、要因毎の影響範囲のデフォルト値を規定した影響範囲DB126を参照して、地点情報として登録する影響範囲を決定する。図11に、影響範囲DB126の一例を示す。図11の例において、「影響範囲(距離)」は、地点の位置からの距離である。図12に示すように、要因が道路工事や路上駐車等の場合、地点の位置である、要因となった障害物から、車両進行方向の下流側への距離として、影響範囲が規定される。また、要因が渋滞等の場合のように、要因となった障害物等の位置が時間と共に変化することが予測される場合、地点の位置から、車両進行方向の上流側及び下流側への距離として、影響範囲が規定される。
【0053】
「影響範囲(時間)」は、要因に応じて、その要因が発生してから解消するまでの継続時間の予測値である。図11の例では、要因が道路工事の場合、地点情報を登録する際に、外部機関等から工事情報を取得して、道路工事が行われる日時を、地点情報として登録する「影響範囲(時間)」として決定することを表している。
【0054】
なお、影響範囲の決定方法は、上記の影響範囲DB126を用いた例に限定されない。例えば、地点情報登録部118は、地点周辺の過去の交通に関する統計情報に基づいて、地点情報として登録する影響範囲を決定してもよい。図13を参照して、路上駐車の場合を例により具体的に説明する。過去に路上駐車が発生した地点毎に、その路上駐車に起因して発生した渋滞の継続時間及び距離の各々を集計し、継続時間の確率分布P(x)、及び距離の確率分布P(y)を求めておく。そして、該当の地点のP(x)の最大値を「影響範囲(時間)」、P(y)の最大値を「影響範囲(距離)」として決定することができる。また、継続時間と距離との同時確率P(x,y)が最大となるときの継続時間及び距離を、「影響範囲(時間)」及び「影響範囲(距離)」として決定してもよい。なお、確率分布を求める場合に限らず、過去に路上駐車が発生した地点毎に、その路上駐車に起因して発生した渋滞の継続時間及び距離の各々を集計し、平均値、中央値等の統計値を求め、その統計値を「影響範囲(時間)」及び「影響範囲(距離)」として決定してもよい。
【0055】
また、地点情報登録部118は、上記のように決定した影響範囲を、遠隔支援を実施する時間帯、及び対応する地点における道路特性の少なくとも一つに基づいて補正してもよい。例えば、ラッシュアワーの時間帯を予め定めておき、地点情報登録部118は、遠隔支援を実施した時間がこの時間帯に含まれる場合、上記のように決定した影響範囲をn(n>1、例えば1.5)倍にする。また、地点情報登録部118は、遠隔支援を実施した地点の道路特性を地図DB124から取得し、例えば、該当の地点の道路が片道1車線の場合、上記のように決定した影響範囲をn(n>1、例えば1.5)倍にする。これにより、時間帯及び道路特性の少なくとも一方に基づいて、影響範囲を最適化することできる。
【0056】
また、地点情報登録部118は、地点情報DB122に登録された地点情報のうち、「影響範囲(時間)」で規定される時間が経過した地点情報を削除する。例えば、「影響範囲(時間)」が「30分」等の時間で登録されている地点情報については、地点情報登録部118は、その地点情報を地点情報DB122に登録してから30分が経過した場合に、その地点情報を削除する。また、例えば、「影響範囲(時間)」が日時を指定した期間で登録されている地点情報については、地点情報登録部118は、登録されている期間の終了後に、その地点情報を削除する。さらに、地点情報登録部118は、車両情報DB120から得られる各AD車30の走行軌跡に基づいて、地点情報DB122に登録された地点情報が示す地点を、いずれかのAD車30が遠隔支援を要求することなく通過したか否かを判定する。いずれかのAD車30が遠隔支援を要求することなく通過している場合、地点情報登録部118は、その地点の地点情報を地点情報DB122から削除する。
【0057】
次に、図14を参照して、第1実施形態に係る車載装置130の機能的な構成を説明する。図14に示すように、車載装置130は、車両情報取得部132と、周辺状況監視部134と、送受信部136と、走行制御部138とを含む。各機能部は、図5に示すCPU32によって実現される。
【0058】
車両情報取得部132は、AD車30の各種車両構成により検知される車速、方位角等の情報、及びGPS46で計測されるAD車30の位置情報を含む車両情報を取得し、送受信部136へ受け渡す。
【0059】
周辺状況監視部134は、センシング装置48から出力された、車両周辺の状況をセンシングしたセンシングデータを取得する。上述したように、センシング装置48は、例えば、カメラやレーザレーダ等であり、センシングデータは、カメラで撮影されたAD車30周辺の映像や、レーザレーダで計測されたAD車30周辺の他車両や建物等の三次元座標を示す三次元点群データ等である。周辺状況監視部134は、取得したセンシングデータに基づいて、予め定めた行動計画に基づく走行経路が閉塞されたか否かを判定する。
【0060】
具体的には、周辺状況監視部134は、カメラ映像又は三次元点群データから、走行経路を閉塞する障害物の有無を判定する。障害物は、静止物、又は所定速度以下で移動する移動物とする。これにより、渋滞等で一時停止又は徐行している先行車も障害物と判定される。周辺状況監視部134は、走行経路が閉塞されたか否かの判定結果を送受信部136へ通知すると共に、取得したセンシングデータを送受信部136及び走行制御部138へ受け渡す。
【0061】
送受信部136は、車両情報取得部132から受け渡された車両情報に、AD車30の車両IDを付加して、定期的なタイミングで遠隔支援装置110へ送信する。また、送受信部136は、遠隔支援装置110から、遠隔支援に関する指示を受信する。遠隔支援に関する指示には、地点情報に登録された対処方法又はオペレータ50の操作に基づく遠隔制御情報、予め設定された行動計画に基づく自動運転を継続する指示、及びセンシングデータの送信指示が含まれる。送受信部136は、遠隔支援装置110からセンシングデータの送信指示を受信した場合、周辺状況監視部134から受け渡されたセンシングデータを遠隔支援装置110へ送信する。また、送受信部136は、周辺状況監視部134から、走行経路が閉塞された旨を示す判定結果が通知され、かつ遠隔支援装置110から遠隔支援に関する指示を受信していない場合、車両情報と共に、遠隔支援要求を遠隔支援装置110へ送信する。また、送受信部136は、遠隔支援装置110から遠隔制御情報を受信した場合、受信した遠隔制御情報を走行制御部138へ受け渡す。
【0062】
走行制御部138は、遠隔支援を要求していない場合、又は、遠隔支援装置110から行動計画に基づく自動運転の継続を指示されている場合、行動計画に基づく自動運転の制御を実行する。この場合の自動運転は、予め設定された経路、AD車30の周辺状況を示すセンシングデータ、地図DB124の情報等に基づいて、例えばレベル4の自動運転に関する従来既知の手法により実現することができるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
また、走行制御部138は、送受信部136から遠隔制御情報を受け取ると、遠隔制御情報を反映した行動計画に基づいて、自動運転の制御を実行する。これにより、走行制御部138は、センシングデータに基づいて、周辺車両等の動向も考慮しつつ、例えば、図9又は図10中の実線矢印に示すように、遠隔支援要求の要因となった障害物を回避するような走行経路をAD車30が走行するように制御する。
【0064】
次に、第1実施形態に係る自動運転システム100の作用について説明する。AD車30において行動計画が設定され、車載装置130が、その行動計画に基づく自動運転の制御を開始する。そして、車両情報取得部132が、AD車30の各種車両構成及びGPS46から車両情報を取得し、送受信部136が車両IDを付加した車両情報を遠隔支援装置110へ送信する処理を定期的に実行する。遠隔支援装置110では、車両状態監視部112が、受信した車両情報を車両情報DB120に記憶する。
【0065】
また、上記処理と並行して、車載装置130において、図15に示すAD車側自動運転処理が実行される。そして、車載装置130から送信された遠隔支援要求を遠隔支援装置110が受信すると、遠隔支援装置110において、図16に示す遠隔支援装置側自動運転処理が実行される。以下、AD車側自動運転処理及び遠隔支援装置側自動運転処理の各々について詳述する。なお、AD車側自動運転処理及び遠隔支援装置側自動運転処理は、本発明の自動運転方法の一例である。
【0066】
まず、図15を参照して、AD車側自動運転処理の一例について説明する。
【0067】
ステップS112で、周辺状況監視部134が、センシング装置48から出力されたセンシングデータを取得する。そして、周辺状況監視部134が、取得したセンシングデータに基づいて、予め定めた行動計画に基づく走行経路が閉塞されたか否かを判定することにより、AD車30の周辺状況を監視する。
【0068】
次に、ステップS114で、送受信部136が、周辺状況監視部134による上記ステップS112での判定結果が、走行経路が閉塞されたことを示しているか否かを判定する。走行経路が閉塞されていない場合には、処理はステップS116へ移行し、閉塞された場合には、処理はステップS118へ移行する。
【0069】
ステップS116では、走行制御部138が、行動計画に基づく自動運転の制御を継続して実行し、処理はステップS112に戻る。
【0070】
一方、ステップS118では、送受信部136が、遠隔支援装置110から遠隔制御情報を受信済みか否か判定する。遠隔制御情報を受信済みの場合、すなわち、地点情報に登録されている行動変容の内容、又はオペレータにより入力された行動変容の内容に基づいて行動計画を変更する必要がある場合には、処理はステップS120へ移行し、まだ遠隔制御情報を受信していない場合には、処理はステップS122へ移行する。ステップS120では、走行制御部138が、受信した遠隔制御情報を反映した行動計画に基づいて、自動運転の制御を実行し、処理はステップS112に戻る。
【0071】
ステップS122では、送受信部136が、遠隔支援装置110から、行動計画に基づく自動運転を継続する指示を受信済みか否か判定する。行動計画に基づく自動運転を継続する指示を受信済みの場合には、処理はステップS124へ移行し、受信していない場合には、処理はステップS130へ移行する。ステップS124では、走行制御部138が、行動計画に基づく自動運転を継続する。
【0072】
次に、ステップS126で、送受信部136が、遠隔支援装置110から、センシングデータの送信指示を受信済みか否か判定する。センシングデータの送信指示を受信済みの場合には、処理はステップS128へ移行し、送受信部136が、センシングデータを遠隔支援装置110へ送信し、処理はステップS112に戻る。センシングデータの送信指示を受信していない場合には、ステップS128をスキップして、処理はステップS112に戻る。
【0073】
ステップS130では、送受信部136が、車両情報と共に、遠隔支援要求を遠隔支援装置110へ送信し、処理はステップS112に戻る。
【0074】
次に、図16を参照して、遠隔支援装置側自動運転処理の一例について説明する。
【0075】
ステップS162で、車両状態監視部112が、車載装置130から送信された遠隔支援要求を車両情報と共に取得する。次に、ステップS164で、支援方法決定部114が、地点情報DB122から、取得された車両情報に含まれる位置情報が示すAD車30の位置との距離が所定範囲内となる「位置」を持つ地点情報を検索する。すなわち、AD車30近傍の登録済みの地点についての地点情報が検索される。
【0076】
次に、ステップS166で、支援方法決定部114が、検索した地点情報に含まれる「影響範囲(距離)」及び「影響範囲(時間)」に基づいて、登録済みの地点の影響範囲内で遠隔支援要求が発生したか否かを判定する。影響範囲内の場合には、処理はステップS172へ移行し、影響範囲内ではない場合には、処理はステップS168へ移行する。なお、上記ステップS164において、AD車30近傍の登録済みの地点についての地点情報が地点情報DB122に存在しなかった場合も、処理はステップS168へ移行する。
【0077】
ステップS168では、支援方法決定部114が、オペレータ50による遠隔支援を実施することを決定し、遠隔支援実施部116が、オペレータ50を呼び出し、オペレータ50による遠隔支援を実施し、車載装置130へ遠隔制御情報を送信する。
【0078】
次に、ステップS170で、地点情報登録部118が、オペレータ50から、オペレータ端末150を介して、遠隔支援要求が発生した要因、その要因となった障害物の位置、行動変容等の対処方法の内容等の情報を受け付ける。そして、地点情報登録部118が、受け付けた情報に基づいて地点情報を生成して、地点情報DB122へ登録し、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0079】
一方、ステップS172では、遠隔支援実施部116が、上記ステップS164で検索された地点情報に、対処方法が登録されているか否かを判定する。対処方法が登録されている場合には、処理はステップS174へ移行し、登録されていない場合、すなわち、対処方法が「無し」の場合には、処理はステップS182へ移行する。
【0080】
ステップS174では、遠隔支援実施部116が、車載装置130にセンシングデータの送信を指示し、現在のAD車30周辺の状況を示すセンシングデータを取得する。次に、ステップS176で、遠隔支援実施部116が、取得したセンシングデータから抽出したセンサ特徴と、上記ステップS164で検索された地点情報に含まれる登録特徴とが一致するか否かを判定する。両特徴が一致する場合には、処理はステップS180へ移行し、一致しない場合には、処理はステップS178へ移行する。
【0081】
ステップS178では、遠隔支援の実施が一旦保留され、送受信部136が、車載装置130へ、予め設定された行動計画に基づく自動運転を継続する指示を送信し、処理はステップS174に戻る。
【0082】
ステップS180では、AD車30が遠隔支援要求の本来の要因となった障害物の目前に到達したため、遠隔支援実施部116が、上記ステップS164で検索された地点情報に含まれる対処方法に従った遠隔支援を実施する。そして、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0083】
ステップS182では、渋滞等の要因が自然解消するのを待つため、送受信部136が、車載装置130へ、予め設定された行動計画に基づく自動運転を継続する指示を送信し、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0084】
以上説明したように、第1実施形態に係る自動運転システムでは、AD車に対して、過去に遠隔支援を実施した地点の各々について、影響範囲の情報を含む地点情報を登録しておく。そして、登録された地点情報に含まれる影響範囲内のAD車から遠隔支援要求が発生した場合、遠隔支援の実施を一旦保留し、行動計画に基づく自動運転を継続させる。これにより、不必要なオペレータ呼び出しの発生を抑制することができる。
【0085】
また、第1実施形態に係る自動運転システムでは、登録特徴とセンサ特徴とが一致した場合、すなわち、AD車が、遠隔支援要求の本来の要因となる障害物の目前に到達した場合に、遠隔支援が実施される。これにより、適切なタイミングで遠隔支援が実施され、不適切な遠隔支援の実施を抑制することができる。
【0086】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、遠隔支援装置110側で、地点の影響範囲内か否かの判定、及びセンサ特徴と登録特徴との一致の判定等を行う場合について説明したが、変形例として、これらの処理をAD車30側で行うようにしてもよい。図17に、変形例における遠隔支援装置110Aの機能的構成を示し、図18に、変形例における車載装置130Aの機能的構成を示す。なお、第1実施形態の遠隔支援装置110及び車載装置130の各々と同様の部分については詳細な説明を省略する。
【0087】
図17に示すように、遠隔支援装置110Aは、車両状態監視部112Aと、遠隔支援実施部116Aと、地点情報登録部118とを含む。車両状態監視部112Aは、車載装置130Aから取得した車両情報に基づいて、車載装置130A(AD車30)の位置近傍の地点情報を地点情報DB122から検索し、車載装置130Aへ送信する。なお、車両状態監視部112Aは、AD車30から所定の範囲内に存在する地点情報を全て送信したり、AD車30から走行予定ルートを取得できる場合は、走行予定ルート上に存在する地点情報を全て送信したりしてもよい。遠隔支援実施部116Aは、第1実施形態における遠隔支援実施部116の機能のうち、オペレータ50による遠隔支援に関する処理を担う。
【0088】
図18に示すように、車載装置130Aは、車両情報取得部132と、周辺状況監視部134と、送受信部136Aと、支援方法決定部114Aと、支援実施部117Aと、走行制御部138と、地点情報DB122Aとを含む。送受信部136Aは、遠隔支援装置110Aから地点情報を受信し、受信した地点情報に基づいて地点情報DB122Aの内容を更新する。
【0089】
支援方法決定部114Aは、地点情報DB122Aに記憶された地点情報に基づいて、第1実施形態における支援方法決定部114と同様に、地点情報に含まれる影響範囲内で遠隔支援要求が発生したか否かを判定する。支援方法決定部114Aは、影響範囲内で遠隔支援要求が発生したと判定した場合、地点情報に基づく遠隔支援を実施することを決定し、地点情報を支援実施部117Aへ受け渡す。また、支援方法決定部114Aは、遠隔支援要求の発生が影響範囲内ではないと判定した場合、オペレータ50による遠隔支援を実施することを決定し、送受信部136Aを介して、遠隔支援装置110Aへオペレータ50の呼び出しを指示する。
【0090】
支援実施部117Aは、第1実施形態における遠隔支援実施部116の機能のうち、地点情報に基づく遠隔制御情報の生成と同様の処理により、AD車30で実施する行動内容を決定し、走行制御部138へ受け渡す。
【0091】
次に、変形例におけるAD車側自動運転処理及び遠隔支援装置側自動運転処理の一例について説明する。なお、第1実施形態におけるAD車側自動運転処理及び遠隔支援装置側自動運転処理の各々と同様の処理については、詳細な説明を省略する。遠隔支援装置110Aは、車載装置130Aから受信した車両情報に基づいて、AD車30の近傍に存在する地点情報を検索し車載装置130Aに送信する。また、車載装置130Aは、遠隔支援装置110Aから受信した地点情報に基づいて地点情報DB122Aの内容を更新する。
【0092】
上記処理と並行して、車載装置130Aにおいて、図19に示すAD車側自動運転処理が実行される。まず、図19を参照して、変形例のAD車側自動運転処理の一例について説明する。 ステップS112~S116は、第1実施形態におけるAD車側自動運転処理と同様であり、走行経路が閉塞されていない場合には、行動計画に基づく自動運転が継続される。
【0093】
ステップS114で、周辺状況監視部134により、走行経路が閉塞されたと判定された場合には、処理はステップS132へ移行する。ステップS132で、支援方法決定部114Aが、地点情報DB122Aから、車両情報に含まれる位置情報が示すAD車30の位置との距離が所定範囲内となる「位置」を持つ地点情報を検索する。
【0094】
次に、ステップS134で、支援方法決定部114Aが、検索した地点情報に含まれる「影響範囲(距離)」及び「影響範囲(時間)」に基づいて、登録済みの地点の影響範囲内で走行経路が閉塞されたか否かを判定する。影響範囲内の場合には、処理はステップS136へ移行し、影響範囲内ではない場合には、処理はステップS144へ移行する。なお、AD車30近傍の登録済みの地点についての地点情報が存在せず、上記S132で、地点情報DB122Aから地点情報が検索できなかった場合も、処理はステップS144へ移行する。
【0095】
ステップS136では、支援実施部117Aが、上記ステップS132で検索された地点情報に、対処方法が登録されているか否かを判定する。対処方法が登録されている場合には、処理はステップS140へ移行し、登録されていない場合、すなわち、対処方法が「無し」の場合には、処理はステップS124へ移行する。
【0096】
ステップS140では、支援実施部117Aが、周辺状況監視部134で取得されたセンシングデータを取得し、センシングデータから抽出したセンサ特徴と、上記ステップS132で検索された地点情報に含まれる登録特徴とが一致するか否かを判定する。両特徴が一致する場合には、処理はステップS142へ移行し、一致しない場合には、処理はステップS138へ移行する。
【0097】
ステップS138では、行動変容の実施が一旦保留され、走行制御部138が、予め設定された行動計画に基づく自動運転を継続し、処理はステップS140に戻る。ステップS142では、支援実施部117Aが、地点情報に含まれる対処方法が、オペレータ50を呼び出す方法か、自動で行動変容を実施する方法かを判定する。オペレータ呼び出しの場合には、処理はステップS144へ移行し、行動変容の場合には、処理はステップS146へ移行する。
【0098】
ステップS144では、送受信部136Aが、周辺状況監視部134で取得されたセンシングデータを遠隔支援装置110Aへ送信すると共に、オペレータ50を呼び出して遠隔支援を実施するように遠隔支援装置110Aへ遠隔支援要求を送信する。ステップS142からステップS146へ移行した場合には、ステップS146で、支援実施部117Aが、地点情報に含まれる対処方法が示す行動変容の内容に基づく制御情報を生成する。そして、走行制御部138が、制御情報を反映した行動計画に基づいて、自動運転の制御を実行し、処理はステップS112に戻る。また、ステップS144からステップS146へ移行した場合には、ステップS146で、走行制御部138が、遠隔支援装置110Aから受信された遠隔制御情報を反映した行動計画に基づいて、自動運転の制御を実行し、処理はステップS112に戻る。
【0099】
次に、図20を参照して、変形例の遠隔支援装置側自動運転処理の一例について説明する。
【0100】
ステップS162で、車両状態監視部112Aが、車載装置130Aから送信された車両情報を取得する。また、AD車30が遠隔支援を要求している場合は、車両情報と共に遠隔支援要求を取得する。次に、ステップS184で、車両状態監視部112Aが、地点情報DB122から、取得された車両情報に含まれる位置情報が示すAD車30の位置との距離が所定範囲内となる「位置」を持つ地点情報を検索する。すなわち、AD車30近傍の登録済みの地点についての地点情報が検索される。そして、車両状態監視部112Aが、検索した地点情報を車載装置130Aへ送信する。ステップS162及びステップS184を繰り返すことで、遠隔支援装置110Aは、AD車30の近傍に存在する地点情報を事前に車載装置130Aに送信することができる。
【0101】
次に、ステップS186で、遠隔支援実施部116Aが、車載装置130Aから、オペレータ50の呼び出しが指示されたか否かを判定する。オペレータ50が呼び出された場合、処理はステップS188へ移行し、呼び出されていない場合、つまり遠隔支援要求を受信しなかった場合には、遠隔支援装置側自動運転処理を終了する。送信した地点情報に基づいて、車載装置130A側で行動変容が可能な場合もあるためである。
【0102】
ステップS188では、遠隔支援実施部116Aが、オペレータ50を呼び出し、オペレータ50による遠隔支援を実施し、車載装置130Aへ遠隔制御情報を送信する。次に、ステップS170で、地点情報登録部118が、地点情報が未登録でオペレータ50による遠隔支援を実施した場合の地点情報を地点情報DB122へ登録し、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0103】
以上説明したように、第1実施形態の変形例においても、第1実施形態と同様に、不必要なオペレータ呼び出しの発生、及び不適切な遠隔支援の実施が抑制される。
【0104】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態に係る自動運転システムにおいて、第1実施形態に係る自動運転システム100と同様の部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第2実施形態に係る遠隔支援装置及び車載装置のハードウェア構成は、図4及び図5に示す、第1実施形態に係る遠隔支援装置110及び車載装置130のハードウェア構成と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
図3に示すように、第2実施形態に係る自動運転システム200は、遠隔支援装置210と、AD車30に搭載された車載装置130と、オペレータ50により操作されるオペレータ端末150とを含む。
【0106】
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る遠隔支援装置210の機能的な構成を説明する。図6に示すように、遠隔支援装置210は、車両状態監視部112と、支援方法決定部114と、遠隔支援実施部216と、地点情報登録部218とを含む。各機能部は、図4に示すCPU12によって実現される。
【0107】
遠隔支援実施部216は、第1実施形態における遠隔支援実施部116と同様に、地点情報に基づいて決定した遠隔支援、又はオペレータ50による遠隔支援を実施する。加えて、遠隔支援実施部216は、遠隔支援が保留された状態、すなわち、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続を指示している状態で、AD車30が新たな遠隔支援を必要としている状態か否かを判定する。新たな遠隔支援が必要とされている場合、遠隔支援実施部216は、オペレータ50による遠隔支援を実施する。
【0108】
例えば、図21の左図に示すように、AD車30が路上駐車に起因する渋滞にはまったことにより、遠隔支援要求が発生したとする。また、この例では、路上駐車を要因とする地点情報が地点情報DB122に登録されていない、又は、遠隔支援要求が発生した時点でのAD車30の位置が、登録されている地点情報の影響範囲外であるとする。この場合、オペレータ50が呼び出されて遠隔支援を実行し、地点情報DB122には、新たな地点情報が登録される。ただし、この時点では、オペレータ50は、AD車30の周辺状況から、本来の要因である路上駐車の存在を把握できないため、行動計画に基づく自動運転の継続が指示されると共に、渋滞を要因とする地点情報が登録される。
【0109】
そして、先行車が路上駐車している車両を追い越し、AD車30が先行車に続いて徐々に前進し、図21の中央の図に示すように、路上駐車している車両の目前まで到達する。しかし、AD車30は、行動計画に基づく自動運転の継続を指示されているため、動けなくなってしまう。第2実施形態では、このような状況を、新たな遠隔支援が必要な状態と判定し、さらなる遠隔支援を実施するものである。
【0110】
具体的には、遠隔支援実施部216は、車両情報DB120に記憶された車両情報が示すAD車30の状態、及び車載装置130から取得したセンシングデータの少なくとも一方に基づいて、AD車30が影響範囲内において新たな遠隔支援を必要としているかを判定する。遠隔支援実施部216は、AD車30が所定時間以上停車を継続している場合、行動計画に基づく自動運転を継続できない状態、すなわち、新たな遠隔支援が必要な状態であると判定する。また、遠隔支援実施部216は、センシングデータを逐次取得し、取得したセンシングデータに基づく特徴量と、前回取得したセンシングデータに基づく特徴量との非類似度が所定値以上となったか否かを判定する。特徴量の非類似度が所定値以上となった場合、先行車が路上駐車している車両を追い越すことで、AD車30の前方の障害物が先行車から路上駐車している車両となり、センシングデータがドラスティックに変化したことを表している。この場合も、遠隔支援実施部216は、新たな遠隔支援が必要な状態であると判定することができる。
【0111】
遠隔支援実施部216は、新たな遠隔支援が必要な状態であると判定すると、例えば、図21の右図に示すように、オペレータ50の操作により、路上駐車している車両を追い越すための走行軌跡(図21の右図中の実線矢印)を示す遠隔制御情報を生成する。
【0112】
地点情報登録部218は、遠隔支援実施部216により、新たな遠隔支援が必要であると判定され、オペレータ50による遠隔支援が実施された場合、登録済みの地点情報を更新する。具体的には、地点情報登録部218は、影響範囲内で最初に遠隔支援が要求されたAD車30の位置、遠隔支援を実施した際のAD車30の位置、及び実施した遠隔支援の内容に基づいて、登録済みの地点情報を更新する。
【0113】
例えば、図21の例では、図21の左図の段階で、「要因」を渋滞、「位置」を最初に遠隔支援要求が発生した際のAD車30の位置、「影響範囲」を渋滞に応じた影響範囲の値、「対処方法」を“無し”とする地点情報が登録されている。地点情報登録部218は、この地点情報の「要因」を路上駐車、「位置」を路上駐車している車両の位置、「影響範囲」を、地点の位置から最初に遠隔支援要求が発生した際のAD車30の位置、「対処方法」を行動変容(追い越し)に更新する。
【0114】
次に、第2実施形態に係る自動運転システム200の作用について説明する。第2実施形態では、遠隔支援装置210において、図22示す遠隔支援装置側自動運転処理が実行される。なお、第2実施形態に係る遠隔支援装置側自動運転処理において、第1実施形態に係る遠隔支援装置側自動運転処理(図16)と同一の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0115】
登録特徴とセンサ特徴とが一致しないことにより、ステップS178で、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続が指示されると、処理はステップS262へ移行する。ステップS262では、遠隔支援実施部216が、車両情報DB120及びセンシングデータの少なくとも一方を参照して、新たな遠隔支援が必要な状態か否かを判定する。新たな遠隔支援が必要な場合には、処理はステップS266へ移行し、必要ではない場合には、処理はステップS174に戻る。
【0116】
また、地点情報に対処方法が登録されていないことにより、ステップS182で、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続が指示されると、処理はステップS264へ移行する。ステップS264では、上記ステップS262と同様に、遠隔支援実施部216が、新たな遠隔支援が必要な状態か否かを判定する。新たな遠隔支援が必要な場合には、処理はステップS266へ移行し、必要ではない場合には、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0117】
ステップS266では、遠隔支援実施部216が、オペレータ50を呼び出して遠隔支援を実施する。次に、ステップS268で、地点情報登録部218が、影響範囲内で最初に遠隔支援が要求されたAD車30の位置、遠隔支援を実施した際のAD車30の位置、及び実施した遠隔支援の内容に基づいて、登録済みの地点情報を更新する。そして、遠隔支援装置側自動運転処理は終了する。
【0118】
以上説明したように、第2実施形態に係る自動運転システムでは、遠隔支援要求に対して、予め設定された行動計画に基づく自動運転の継続が指示されている場合において、新たな遠隔支援が必要な状態となったか否かを判定する。そして、新たな遠隔支援が必要な場合、オペレータによる遠隔支援を実施すると共に、実施した遠隔支援に基づいて、地点情報を更新する。これにより、当初の地点情報の登録に誤判断が発生している場合の修正が可能となる。
【0119】
<第2実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例と同様に、第2実施形態においても、変形例として、遠隔支援装置210の支援方法決定部114及び遠隔支援実施部216の一部の機能を、車載装置側に持たせることができる。
【0120】
この変形例では、図19に示すAD車側自動運転処理において、ステップS138の後に、車載装置において、取得した車両情報及びセンシングデータの少なくとも一方に基づいて、新たな遠隔支援を必要とする状態か否かを判定する。そして、新たな遠隔支援が必要な場合には、ステップS144へ移行し、必要ではない場合には、ステップS140に戻るようにすればよい。同様に、ステップS124の後に、車載装置において、新たな遠隔支援を必要とする状態か否かを判定し、新たな遠隔支援が必要な場合には、ステップS144へ移行し、必要ではない場合には、ステップS112に戻るようにすればよい。
【0121】
上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行したAD車側自動運転処理及び遠隔支援装置側自動運転処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、自動運転処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0122】
また、上記各実施形態では、プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0123】
12、32 CPU
14、34 メモリ
16、36 記憶装置
18 入力装置
20 出力装置
22、42 記憶媒体読取装置
24、44 通信I/F
26、49 バス
30 AD車
38 入出力I/F
48 センシング装置
50 オペレータ
100、200 自動運転システム
110、110A、210 遠隔支援装置
112、112A 車両状態監視部
114、114A 支援方法決定部
116、116A、216 遠隔支援実施部
117A 行動変容実施部
118、218 地点情報登録部
120 車両情報DB
122 地点情報DB
124 地図DB
126 影響範囲DB
130、130A 車載装置
132 車両情報取得部
134 周辺状況監視部
136、136A 送受信部
138 走行制御部
150 オペレータ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22