(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240702BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240702BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303F
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020189119
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 裕真
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137466(JP,A)
【文献】特開2018-005941(JP,A)
【文献】特開2020-103110(JP,A)
【文献】特開2020-028259(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業車両(1)と、
各作業車両(1)の位置情報を取得する測位装置(3)と、
各作業車両(1)に設けられ、作業車両(1)の周辺に存在する障害物を検出する障害物センサ(2)と、
第1の作業車両(1A)の走行中に前記障害物センサ(2)が障害物を検出すると前記第1の作業車両(1A)の走行を停止させるとともに、前記第1の作業車両(1A)の位置情報に基づいて、前記第1の作業車両(1A)が圃場(21A)の出入り口(31)から予め定められた距離内に停車した場合に、第2の作業車両(1B)のその圃場(21A)への移動を規制する制御手段(Cb)と、
を備えたことを特徴とする作業車両の制御システム(S)。
【請求項2】
前記第1の作業車両(1A)が、圃場(21A)の出入り口(31)から前記予め定められた距離外にある場合に、第2の作業車両(1B)がその圃場(21A)に移動すると、前記第2の作業車両(1B)は、前記出入り口(31)から予め定められた距離離れた待機場所(24)で停車して待機させる前記制御手段(Cb)、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の制御システム(S)。
【請求項3】
前記第1の作業車両(1A)の障害物センサ(2)が障害物を検出しなくなり、且つ、前記第1の作業車両(1A)が進入している圃場に第2の作業車両(1B)が進入する予定の場合には第2の作業車両(1B)が圃場(21A)の出入り口(31)から予め定められた距離離れた待機場所(24)で待機する状態となるまで、前記第1の作業車両(1A)を待機させる前記制御手段(Cb)、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の制御システム(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両を制御する作業車両の制御システムに関し、特に、複数の作業車両を制御する作業車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタやコンバイン等の作業車両の位置をGPS:Global Positioning System等の測位装置を利用して測位しながら、作業車両を圃場内で無人で自律走行させながら作業させる技術に関し、以下の特許文献1に記載された技術が知られている。
特許文献1(国際公開2016/129671号公報)には、複数ある圃場ごとに担当する無人トラクタと作業領域と作業内容が予め設定され、無人トラクタに、担当の圃場における作業領域と作業内容を送信して、作業領域内で作業を行わせるとともに、作動状態を監視(モニタリング)する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2016/129671号公報(WO-A1-2016/129671)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、作業対象となる圃場まで作業車両が移動する場合には、手動で作業車両を運転する必要があり、手間がかかる問題があった。
作業車両の圃場間の移動を無人で自律的に行わせることも考えられるが、その場合、圃場内に複数の作業車両が進入する状況も発生しうる。複数の作業車両が同じ圃場に進入すると事故の可能性が高まり、他の作業車両との衝突を回避する際に自身の作業内容が中断するとなると、目的の作業内容ができなくなる恐れもある。特に、作業車両が圃場内で作業中に異常が発生して停止しているような場合に、他の車両が進入しようとすると、異常の解消を行っている作業者が事故にあう可能性が高まる問題がある。
【0005】
この発明は、複数の作業車両を自律的に作業させつつ安全性を確保することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、
複数の作業車両(1)と、
各作業車両(1)の位置情報を取得する測位装置(3)と、
各作業車両(1)に設けられ、作業車両(1)の周辺に存在する障害物を検出する障害物センサ(2)と、
第1の作業車両(1A)の走行中に前記障害物センサ(2)が障害物を検出すると前記第1の作業車両(1A)の走行を停止させるとともに、前記第1の作業車両(1A)の位置情報に基づいて、前記第1の作業車両(1A)が圃場(21A)の出入り口(31)から予め定められた距離内に停車した場合に、第2の作業車両(1B)のその圃場(21A)への移動を規制する制御手段(Cb)と、
を備えたことを特徴とする作業車両の制御システム(S)である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
前記第1の作業車両(1A)が、圃場(21A)の出入り口(31)から前記予め定められた距離外にある場合に、第2の作業車両(1B)がその圃場(21A)に移動すると、前記第2の作業車両(1B)は、前記出入り口(31)から予め定められた距離離れた待機場所(24)で停車して待機させる前記制御手段(Cb)、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の制御システム(S)である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
前記第1の作業車両(1A)の障害物センサ(2)が障害物を検出しなくなり、且つ、前記第1の作業車両(1A)が進入している圃場に第2の作業車両(1B)が進入する予定の場合には第2の作業車両(1B)が圃場(21A)の出入り口(31)から予め定められた距離離れた待機場所(24)で待機する状態となるまで、前記第1の作業車両(1A)を待機させる前記制御手段(Cb)、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の制御システム(S)である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第1の作業車両(1A)が障害物の検出で出入り口(31)の近くに停車した場合に、第2の作業車両(1B)の当該圃場(21A)への進入が規制されることで、複数の作業車両(1)を自律的に作業させつつ安全性を確保することができる。
請求項2に記載の発明によれば、第1の作業車両(1A)が障害物の検出で出入り口(31)から離れた位置に停車した場合に、第2の作業車両(1B)を待機場所(24)で待機させることで、復帰後の第1の作業車両(1A)と第2の作業車両(1B)との入れ替えを円滑に行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、第1の作業車両(1A)の復帰時に第2の作業車両(1B)が待機場所(24)に到達していない場合に、第1の作業車両(1A)を待機させることで、作業車両(1)どうしの接触事故を抑制できるとともに、両方の作業車両(1)が停車して作業効率が低下することも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の作業車両の制御システムの説明図である。
【
図2】
図2は実施の形態の作業車両の制御システムの制御部の説明図である。
【
図3】
図3は実施の形態の作業車両の制御システムで作業が行われる圃場の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の作業車両の制御システムの説明図である。
図1において、本発明の実施の形態の作業車両の制御システムSは、作業車両の一例としてのトラクタ1を有する。トラクタ1には、後部の作業機を付け替えることで、耕うんやプラウ、整地、播種、施肥等が可能な作業車両である。
トラクタ1には、周囲の障害物を検出する障害物センサ2が設置されている。障害物センサ2は、トラクタ1に複数設置されており、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能に構成されている。なお、障害物センサ2は、光の反射を使用するものや音波を使用するもの、カメラを使用して画像解析で障害物を検出するもの等、従来公知の任意のものを採用可能である。
【0013】
また、トラクタ1には、測位装置の一例としてのGPS装置3が設置されている。GPS装置3は、GPS衛星4との間での通信で、自身の位置を測位可能である。なお、本実施の形態の作業車両の制御システムSでは、複数台のトラクタ1を有するが、各トラクタ1に障害物センサ2やGPS装置3を搭載されている。
トラクタ1は、携帯電話回線やインターネット回線等の通信回線を介して、情報処理装置の一例としてのサーバ6に接続されている。
また、サーバ6は、通信回線を介して、情報処理装置の一例としてのタブレット端末7に接続されている。タブレット端末7は、作業者が表示された情報を閲覧したり、入力を行うことが可能に構成されている。
【0014】
(制御部の説明)
図2は実施の形態の作業車両の制御システムの制御部の説明図である。
図2において、制御手段の一例としてのトラクタ1の制御部Caや、サーバ6の制御部Cb、タブレット端末7の制御部Ccは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Ca~Ccは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Ca~Ccは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Ca~Ccは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部Ca~Ccは、情報処理装置、いわゆるコンピュータにより構成されている。よって、制御部Ca~Ccは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0015】
(トラクタ1の制御部Caに接続された信号入力要素)
図2において、トラクタ1の制御部Caには、障害物センサ2やGPS装置3、その他の図示しない信号入力部材からの信号が入力される。
障害物センサ2は、トラクタ1の周囲の障害物を検出する。
GPS装置3は、トラクタ1の位置を測位する。
【0016】
(トラクタ1の制御部Caに接続された被制御要素)
トラクタ1の制御部Caは、トラクタ1のエンジン11やハンドル12、ブレーキ13、作業機14、その他、図示しない被制御要素に制御信号を出力する。
【0017】
(トラクタ1の制御部Caの説明)
トラクタ1の制御部Caは、以下の機能(機能手段、プログラムモジュール)を有する。
障害物検出手段C1は、障害物センサ2の検知結果に基づいて、障害物の検知を行う。
測位手段C2は、GPS装置3の測位結果に基づいて、トラクタ1の位置を測定する。
通信手段C3は、サーバ6との間で情報の送受信、すなわち、通信を行う。実施の形態の通信手段C3は、サーバ6に対して、障害物の検知結果やトラクタ1の位置情報、トラクタ1の状況(作業中や移動中、停車中等)を送信したり、サーバ6から次に作業を行う圃場の位置情報や、圃場での作業領域や作業内容、移動や停車の指示情報等を受信する。
【0018】
図3は実施の形態の作業車両の制御システムで作業が行われる圃場の一例の説明図である。
走行制御手段C4は、トラクタ1のエンジン11やハンドル12、ブレーキ13等を制御して、トラクタ1の走行を制御する。実施の形態の走行制御手段C4は、サーバ6から目的の圃場21に移動する指示がされた場合には、サーバ6から送信された移動経路22に沿って目的の圃場21に移動するようにトラクタ1を走行させる(圃場間移動モード)。また、サーバ6から圃場21内で作業する指示がされた場合には、サーバ6から送信された作業経路23に沿って走行するようにトラクタ1を制御する(作業モード)。サーバ6から停車して待機するように指示がされた場合には、トラクタ1を停止させる(待機モード)。なお、サーバ6から特定の待機場所24に移動して待機するように指示がされた場合には、待機場所24にトラクタ1を移動させた後に停車させる。なお、実施の形態の走行制御手段C4は、障害物検出手段C1が障害物を検出した場合には、トラクタ1を停止(異常停止、緊急停止)させて、その場で待機させる(異常停止モード)。
【0019】
作業機制御手段C5は、作業機を制御して圃場21での作業を行う。実施の形態の作業機制御手段C5は、サーバ6から送信された作業領域25内にトラクタ1が進入した場合は作業機を作動させて作業を行う。そして、作業領域25の外部にトラクタ1が移動した場合は作業機を停止させる。なお、作業機が耕うんやプラウ等の場合は、作業時に作業機を下降させ、非作業時には作業機を上昇させる。なお、実施の形態の作業機制御手段C5は、障害物検出手段C1が障害物を検出した場合には、作業機を停止(異常停止、緊急停止)させる。
【0020】
(タブレット端末7の制御部Ccに接続された信号入力要素)
図2において、タブレット端末7の制御部Ccには、表示部の一例であって入力部の一例としてのタッチパネル7a、その他の図示しない信号入力部材からの信号が入力される。
タッチパネル7aは作業者が指で触れた位置を検出する。
【0021】
(タブレット端末7の制御部Ccに接続された被制御要素)
タブレット端末7の制御部Ccは、タッチパネル7a、その他、図示しない被制御要素に制御信号を出力する。
タッチパネル7aは、サーバ6や制御部Ccから送信された制御信号に応じて画像を表示する。
【0022】
(タブレット端末7の制御部Ccの説明)
表示制御手段C11は、タッチパネル7aを制御して画像を表示する。タッチパネル7aには、トラクタ1の作業状況を示す画像を表示したり、トラクタ1の作業計画(作業する圃場や作業する内容、作業範囲、作業経路等)を設定するための画像を表示したり、トラクタ1の異常停止等の異常事態を通知する画像を表示したりすることが可能である。
【0023】
入力検出手段C12は、タッチパネル7aの指の触れた位置の検知結果と表示されている画像とに基づいて、入力内容を検出する。
通信手段C13は、サーバ6との間で通信を行う。実施の形態の通信手段C13は、タッチパネル7aで入力された作業計画の情報をサーバ6に送信したり、サーバ6から送信された作業状況の情報や異常事態の情報を受信したりする。
【0024】
(サーバ6の制御部Cbの説明)
サーバ6の制御部Cbは、以下の機能(機能手段、プログラムモジュール)を有する。
圃場情報記憶手段C21は、圃場の情報を記憶する。実施の形態の圃場情報記憶手段C21は、圃場の位置情報と、圃場の形状の情報と、圃場の出入り口の位置情報と、を含む圃場情報を記憶する。
作業計画記憶手段C22は、トラクタ1での圃場の作業計画を記憶する。実施の形態の作業計画記憶手段C22は、作業計画として、圃場で行われる作業の内容、作業範囲、作業経路が記憶される。作業内容としては、圃場21で行われる耕うん、整地、播種等の作業が記憶されている。また、作業領域25として、タブレット端末7で設定された圃場21内の特定の領域(全域の場合も含む)が記憶される。さらに、作業経路23として、トラクタ1が通過する経路が記憶される。作業経路23は、作業者がタブレット端末7から手動で入力することも可能であるし、設定された作業領域25の広さと形状に応じて作業領域25の全域を作業機14が通過する作業経路23をソフトウェアで自動作成する構成とすることも可能である。
【0025】
したがって、一例として、ある圃場21(21A)において、耕うん、整地、播種の作業が行われる場合には、耕うん用の作業機14を備えたトラクタ1(1A)、整地用の作業機14を備えたトラクタ1(1B)、播種用の作業機14を備えたトラクタ1(1C)が順に圃場に進入して、それぞれの作業内容に対して設定された作業領域25と作業経路23に応じて作業を行うことが作業計画として記憶されている。
【0026】
通信手段C23は、トラクタ1やタブレット端末7と通信を行う。通信手段C23は、トラクタ1からトラクタ1の現在位置や現在の作業状況(作業モードや待機モード等)の情報を受信したり、トラクタ1に対して次に向かう圃場21の情報や待機等の指示の情報を送信したりする。また、通信手段C23は、タブレット端末7から作業計画の入力情報を受信したり、タブレット端末7に作業状況の情報を送信したりする。
【0027】
作業車両の位置取得手段C24は、トラクタ1から送信された位置情報に基づいて各トラクタ1の位置の情報を取得する。
作業指示手段C25は、各トラクタ1が備えている作業機14と、各圃場で行われる作業計画とに基づいて、各トラクタ1に対して、次に作業を行う目標の圃場21と圃場21までの移動経路22、および、その圃場21で行われる作業(作業領域25、作業経路23)の情報を送信して、作業を実行するように指示する。
【0028】
作業車両の状況取得手段(異常停止検出手段)C26は、各トラクタ1から送信された位置情報と作業状況(作業モード等)の情報に基づいて、各トラクタ1の作業状況を取得する。例えば、あるトラクタ1Aは圃場21で作業モードで、別のトラクタ1Bは圃場間移動モードで現在位置はGPS装置3で検出された位置にいる、更に別のトラクタ1CはGPS装置3で検出された位置で待機している、といった作業状況を取得する。なお、実施の形態の作業車両の状況取得手段C26は、例えば、トラクタ1Aから異常停止モードとの情報を受信した場合には、トラクタ1Aが異常停止している状況と判別して、通信手段C23を介してトラクタ1Aが異常停止している旨の情報をタブレット端末7に送信させる。
【0029】
異常時の車両制御手段C27は、異常発生車両の位置判別手段C27aと、異常発生圃場への進入車両の検出手段C27bと、進入車両の走行指示手段C27cと、異常発生車両への走行指示手段C27dとを有し、異常停止した作業車両(トラクタ1A)を含むすべてのトラクタ(1A~1C)の移動を制御する。
異常発生車両の位置判別手段C27aは、異常停止モードのトラクタ1(1A)から送信された位置情報に基づいて、異常停止したトラクタ1(1A)の位置を特定する。また、実施の形態の異常発生車両の位置判別手段C27aは、異常停止したトラクタ1(1A)の現在位置から、トラクタ1(1A)が現在いる圃場21(21A)を判別して特定するとともに、圃場21(21A)の出入り口31とトラクタ1(1A)との距離を演算する。
【0030】
異常発生圃場への進入車両の検出手段C27bは、異常停止したトラクタ1(1A)がいる圃場21(21A)に、次に進入する予定のトラクタ1(1B)を検出する。実施の形態の異常発生圃場への進入車両の検出手段C27bは、作業計画に基づいて、異常停止したトラクタ1(1A)が作業を行った後に、当該圃場21(21A)で作業を行うことになっているトラクタ1(1B)の有無を検出する。
【0031】
進入車両の走行指示手段C27cは、異常停止したトラクタ1(1A)が発生した場合に、当該圃場21(21A)に次に、進入する予定のトラクタ1(1B)の走行について指示を行う。実施の形態の進入車両の走行指示手段C27cは、異常停止したトラクタ1(1A)の現在位置(異常停止した位置)が、出入り口31から予め定められた距離内にある場合には、進入予定のトラクタ1(1B)が当該圃場21(21A)に進入することを規制する。すなわち、進入予定のトラクタ1(1B)が圃場21(21A)に進入しないように指示する。なお、予め定められた距離は、一例として、トラクタ1どうしが十分にすれ違うことが可能な距離(車両の幅よりも広い距離)としているが、設計や仕様、圃場の出入り口の形状等に応じて任意に変更可能である。実施の形態の進入車両の走行指示手段C27cは、異常停止した位置が出入り口31の付近の場合は、進入予定のトラクタ1(1B)は、現在いる圃場21(21B)で待機するように指示をする。
【0032】
また、実施の形態の進入車両の走行指示手段C27cは、異常停止したトラクタ1(1A)の現在位置(異常停止した位置)が、出入り口31から予め定められた距離の外側にある場合には、進入予定のトラクタ1(1B)を当該圃場21(21A)に進入させるとともに、圃場21(21A)の出入り口31から予め定められた距離離れた待機場所24で停車させて待機するように指示する。
【0033】
異常発生車両への走行指示手段C27dは、異常停止したトラクタ1(1A)に対して走行の指示を行う。実施の形態の異常発生車両への走行指示手段C27dは、異常停止したトラクタ1(1A)が障害物を検出している間は、停止した状態で保持する。そして、作業者が障害物を取り除く等して、障害物を検出しなくなると、トラクタ1(1A)に停止を終了して走行を再開させる。この時、作業の途中で異常停止していた場合は、中断された作業を再開するようにトラクタ1(1A)に指示をする。
また、作業終了後に圃場21(21A)の出入り口31に向かっている途中で異常停止していた場合であって、当該圃場21(21A)で次に作業を行うトラクタ1(進入予定のトラクタ1B,1C)があり且つ進入予定のトラクタ1(1B)が待機場所24に停車している場合は、異常停止から復帰したトラクタ1(1A)は、出入り口31から圃場21(21A)の外に移動して、次の目的地に向かうように指示する。
【0034】
作業終了後に圃場21(21A)の出入り口31に向かっている途中で異常停止していた場合であって、当該圃場21(21A)で次に作業を行うトラクタ1(進入予定のトラクタ1B,1C)があり且つ進入予定のトラクタ1(1B)が待機場所24に到着していない場合は、異常停止から復帰したトラクタ1(1A)は、進入予定のトラクタ1(1B)が待機場所24に到達して停止するまで、現在の位置で停止した状態で待機する。
【0035】
前記構成を備えた実施の形態の作業車両の制御システムSでは、作業計画に応じて、各トラクタ1が自律的に移動したり作業する。自律的に動作しているトラクタ1の中で異常停止したトラクタ1(1A)があった場合に、異常停止した位置が出入り口31に近い場合は、当該圃場21(21A)に進入予定のトラクタ1(1B)はその圃場21(21A)への進入が規制される。したがって、トラクタ1どうしが衝突する事故が防止される。よって、複数の作業車両を自律的に作業させつつ安全性を確保することができる。
【0036】
また、異常停止した位置が出入り口31から十分に遠い場合は、進入予定のトラクタ1(1B)は圃場21内の待機場所24で待機する。進入予定のトラクタ1(1B)が圃場外の通路で駐車して他のトラクタ1の走行を妨げたり、進入予定のトラクタ1(1B)がそれまでいた圃場21(21B)で待機して、当該圃場21(21B)で次に作業を行う予定のトラクタ1の作業を妨げたりすることが抑制される。また、異常停止したトラクタ1(1A)が復帰後に、速やかに圃場21(21A)で次のトラクタ1(1B)が作業を行うことも可能である。
また、待機場所24が出入り口31から十分に離れた位置に設定されているため、異常停止から復帰したトラクタ1(1A)が圃場21(21A)から外に移動することを妨げず、トラクタ1どうしの接触事故の発生も抑制される。
【0037】
仮に、同じ圃場で2台のトラクタが走行すると事故になりやすく、逆に、作業経路23の重複で両方停車すると、移動効率、作業効率が低下する。これらに対して、実施の形態では、次に進入予定のトラクタ1(1B)が待機場所24に到達していない場合は、異常停止から復帰したトラクタ1(1A)は停止したままである。よって、事故の発生が抑制されるとともに、作業効率の低下も抑制される。
【0038】
なお、異常停止が発生した場合、障害物を除去するまでに相当程度の時間がかかる場合には、作業者がタブレット端末7を操作して、各トラクタ1のエンジン11を停止させるように制御することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…作業車両、
1A…第1の作業車両、
1B…第2の作業車両、
2…障害物センサ、
3…測位装置、
21A…圃場、
24…待機場所、
31…出入り口、
Cb…制御手段、
S…制御システム。