(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240702BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240702BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240702BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20240702BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240702BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 H
B60W50/14
B60W30/16
B60W30/09
(21)【出願番号】P 2020212719
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 克宏
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-250510(JP,A)
【文献】特開2005-010937(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050048(WO,A1)
【文献】特開2009-140327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/09
B60W 50/14
B60W 30/16
B60W 30/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される情報処理装置であって、
前記車両が、前記車両に先行する車両である先行車両に対する追従制御を行っている場合に、前記先行車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起が行われていることを判定することと、
前記先行車両において前記注意喚起が行われている
と判定され、かつ所定の期間内に前記先行車両が減速しない場合に、
前記車両が前記先行車両に対する追従制御を停止することと、
を実行する制御部を有する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記先行車両から送信されたデータに基づいて、前記先行車両において前記注意喚起が行われていることを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記データは、当該データを送信した車両の位置情報を含み、
前記制御部は、前記データに含まれる前記位置情報に基づいて、前記先行車両から送信された前記データを判別する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記データは、当該データを送信した車両の位置情報および進行方向を含み、
前記制御部は、前記データに含まれる前記位置情報および進行方向に基づいて、前記先行車両から送信された前記データを判別する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
車両によって実行される情報処理方法であって、
前記車両が、前記車両に先行する車両である先行車両に対する追従制御を行っている場合に、前記先行車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起が行われていることを判定するステップと、
前記先行車両において前記注意喚起が行われている
と判定され、かつ所定の期間内に前記先行車両が減速しない場合に、
前記車両が前記先行車両に対する追従制御を停止するス
テップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項6】
前記先行車両から送信されたデータに基づいて、前記先行車両において前記注意喚起が行われていることを判定する、
請求項
5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記データは、当該データを送信した車両の位置情報を含み、
前記データに含まれる前記位置情報に基づいて、前記先行車両から送信された前記データを判別する、
請求項
6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
請求項
5から
7のいずれか1項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両同士の追突事故を防止するシステムがある。例えば、特許文献1には、追突に関する注意喚起を行うシステムが開示されている。当該システムにおいては、先行車両が減速操作を行う可能性に基づいて、後続車両に注意喚起を行うタイミングを変更している。例えば、車両が減速する可能性が高い場合に、ブレーキランプを早めに点灯させることによって、後続車両に対する注意喚起を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車両走行時の安全を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の態様に係る情報処理装置は、
車両に搭載される情報処理装置であって、自車両に先行する車両である先行車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起が行われていることを判定することと、前記先行車両において前記注意喚起が行われている場合に、危険回避に関する所定の処理を行うことと、を実行する制御部を有する。
【0006】
また、本開示の第二の態様に係る情報処理装置は、
車両に搭載される情報処理装置であって、外部装置から受信した第一のデータに基づいて、自車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起を行うことと、前記注意喚起が行われた場合に、その旨を示す第二のデータを外部に送信することと、前記自車両に先行する車両である先行車両から前記第二のデータを受信した場合に、危険回避に関する所定の処理を行うことと、を実行する制御部を有する。
【0007】
また、本開示の第三の態様に係る情報処理方法は、
車両によって実行される情報処理方法であって、自車両に先行する車両である先行車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起が行われていることを判定するステップと、前記先行車両において前記注意喚起が行われている場合に、危険回避に関する所定の処理を行うステップと、を含む。
【0008】
また、他の態様として、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両走行時の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】路側装置の一例を概略的に示したブロック図。
【
図3】システムが管理する交差点の一例を示す概要図。
【
図5】車載端末の一例を概略的に示したブロック図。
【
図7】車載端末が実行する処理のフローチャート図。
【
図8】車載端末が実行する処理のフローチャート図。
【
図9】ステップS22における処理を示すフローチャート図。
【
図12】車載端末が実行する処理のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る車両システムは、路側装置と、複数の車両にそれぞれ搭載された複数の車載装置と、を含むシステムである。
【0012】
本開示の第一の態様は、車両に搭載される情報処理装置である。
具体的には、自車両に先行する車両である先行車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起が行われていることを判定することと、前記先行車両において前記注意喚起が行われている場合に、危険回避に関する所定の処理を行うことと、を実行する制御部を有する。
【0013】
制御部は、先行車両の運転者に対して減速(または停止)すべき旨の注意喚起が行われていることを判定する。注意喚起は、例えば、赤信号を予告するものであってもよいし、信号無視のおそれを警告するものであってもよい。
先行車両において注意喚起がなされている場合、当該車両がただちに減速を開始する可能性が高いと言える。そこで、制御部は、このような場合に、自車両において、追突を防止するための措置を講ずる。所定の処理として、例えば、先行車両が急減速するおそれがある旨を運転者に通知する処理や、車両のブレーキを自動的にかける処理が挙げられる。
【0014】
また、前記制御部は、前記先行車両から送信されたデータに基づいて、前記先行車両において前記注意喚起が行われていることを判定することを特徴としてもよい。
当該データは、例えば、車々間通信によってブロードキャスト送信されてもよい。
【0015】
また、前記データは、当該データを送信した車両の位置情報を含み、前記制御部は、前記データに含まれる前記位置情報に基づいて、前記先行車両から送信された前記データを判別することを特徴としてもよい。
また、前記データは、当該データを送信した車両の位置情報および進行方向を含み、前記制御部は、前記データに含まれる前記位置情報および進行方向に基づいて、前記先行車両から送信された前記データを判別することを特徴としてもよい。
データを送信した車両の位置情報(および進行方向)を、自車両の位置情報(および進行方向)と比較することで、当該データを送信した車両が自車両に先行する車両であるか否かを判定することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記所定の処理として、前記自車両の運転者に対して、前記先行車両が減速を開始しうる旨を通知することを特徴としてもよい。
また、前記自車両が、前記先行車両に対する追従制御を行っている場合に、前記制御部は、前記所定の処理として、前記自車両を減速させる処理を行うことを特徴としてもよい。
かかる構成によると、先行車両の急な減速に備えさせることができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記所定の処理を開始してから所定の期間内に前記先行車両が減速を開始しない場合に、前記追従制御を停止することを特徴としてもよい。
先行車両に対して注意喚起が行われた場合、追従している車両も、減速または停止すべき状況となることが予測される。よって、追従制御を停止することが好ましい。
【0018】
本開示の第二の様態は、車両に搭載される情報処理装置である。
具体的には、外部装置から受信した第一のデータに基づいて、自車両の運転者に対して、減速すべき旨の注意喚起を行うことと、前記注意喚起が行われた場合に、その旨を示す第二のデータを外部に送信することと、前記自車両に先行する車両である先行車両から前記第二のデータを受信した場合に、危険回避に関する所定の処理を行うことと、を実行する制御部を有する。
このように、同一の情報処理装置が、先行車両と後続車両の双方に搭載されていてもよい。
【0019】
前記制御部は、前記先行車両から前記第二のデータを受信した場合に、前記第一のデータの内容にかかわらず、前記所定の処理を行うことを特徴としてもよい。
すなわち、外部装置から受信したデータよりも、先行車両から受信したデータを優先して危険回避のための動作を行う。これにより、追突のおそれを低減することができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記第一のデータと、前記自車両の走行状況と、に基づいて、危険度を算出し、前記危険度が所定値以上である場合に、前記注意喚起を行うことを特徴としてもよい。
例えば、信号無視をはじめとする交通違反が発生する確率や、交通違反が発生した際の危険の度合いに基づいて、注意喚起を行うか否かを決定することができる。
【0021】
また、前記外部装置は、信号機に関連付いた路側装置であり、前記第一のデータは、停止信号を予告するデータであることを特徴としてもよい。
かかる構成によると、漫然運転等による信号無視の発生を防止することができる。
【0022】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0023】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る車両システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態に係るシステムは、路側装置100と、少なくとも二台の車両10に搭載された車載端末200と、を含んで構成される。
【0024】
路側装置100は、道路上を走行する車両10に対して情報提供を行う装置である。本実施形態では、路側装置100は、交差点に設置された交通信号機の制御装置を兼ねており、信号機の灯火の状態を、交差点の近傍(例えば、半径100メートル)に位置する車両10に対して無線によって送信する。路側装置100が車両10に対して送信するデータを、路側データと称する。
【0025】
車載端末200は、複数の車両10に搭載されるコンピュータである。車載端末200は、路側装置100から受信した路側データに基づいて危険度を判定し、判定した危険度に応じて警報を出力する機能を有する。例えば、車両10が赤信号に向かって走行しており、速度が落ちていない(すなわち、信号無視をするおそれがある)場合、車載端末200は、警報音などによって、ドライバーに対する警告を行う。
また、車載端末200は、車内で警報を出力した場合に、警報を出力中である旨を周辺
の車両に向けて通知する。
さらに、車載端末200は、他の車両に搭載された車載端末200から当該通知を受けた場合に、ドライバーに対して、当該他の車両の挙動(例えば、急減速)に注意すべき旨の通知を出力する。
【0026】
以降の説明においては、二台の車両が前後に続いて走行している例を挙げる。先を走る車両10を「先行車両」と称し、先行車両の直後を走行する車両10を「後続車両」と称する。
実施形態の説明では、先行車両が、路側装置100から受信した路側データに基づいて警報を出力し、後続車両が、これに関する通知を受信する。本実施形態では、先行車両と後続車両は、共に同一の車載端末200を搭載している。
【0027】
路側装置100から受信したデータに基づいて、車両が警報を行うシステムにおいては、警報に気付いたドライバーが急ブレーキをかけることがあり、後続車両の走行の安全を脅かす原因となりうる。一方、本実施形態に係る車両システムでは、先行車両が警報を出力した段階で、後続車両のドライバーに注意喚起を行うため、後続車両のドライバーは、先行車両の挙動に備えることができる。
【0028】
システムの構成要素について、詳しく説明する。
路側装置100は、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、路側装置100は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0029】
図2は、
図1に示した路側装置100の構成の一例を概略的に示したブロック図である。路側装置100は、制御部101、記憶部102、通信部103、および、信号機インタフェース104を有して構成される。
【0030】
制御部101は、路側装置100の制御を司る手段である。制御部101は、例えば、CPUによって構成される。
制御部101は、機能モジュールとして、信号制御部1011および状態通知部1012を有している。各機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0031】
信号制御部1011は、信号機の灯火を制御する。具体的には、信号サイクルを演算し、所定のサイクルごとに灯火を切り替える指令を出力する。灯火の制御は、後述する信号機インタフェース104を介して行うことができる。
図3は、路側装置100に対応する信号機が設置された交差点の一例を示す見取り図である。本実施形態では、上下方向の交通流と、左右方向の交通流を制御するため、信号制御部1011は、信号機301Aおよび302B、信号機301Cおよび302Dの各ペアに対してそれぞれ制御を行う。
【0032】
状態通知部1012は、信号機(灯火)の現在の状態を車両10に通知するためのデータ(路側データ)を生成し、無線信号によってブロードキャスト送信する。
図3の点線で囲まれた領域は、無線信号が届く範囲を表す。
図4は、
図3で示した交差点に対応する路側装置100から送信される路側データの例
である。路側データには、交差点(ないし路側装置100)の識別子、交差点の位置情報、複数の信号機の識別子、各信号機に接続する道路の方位、信号機のサイクルに関する情報、現在の灯火の状態、状態が変わるまでの残り時間などに関する情報が含まれる。
これらの情報を送信することで、路側装置100から車載端末200に対して、信号の状態(または、信号が変わるタイミング)を通知することができる。
なお、本例では、道路が接続されている方位を数値によって表したが、道路の接続関係を示すデータ(地図情報)を路側データに含ませてもよい。
【0033】
記憶部102は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部102には、制御部101にて実行される各種プログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。また、記憶部102には、前述した信号機を制御するためのデータ(信号サイクルやタイムテーブルに関するデータ等)が記憶される。
【0034】
通信部103は、無線によって車載端末200と路車間通信を行うためのインタフェースである。通信部103は、例えば、車載端末200との間で、5.8GHz帯の電波を利用したDSRC通信を行う。
信号機インタフェース104は、路側装置100と複数の信号機(例えば、301A~301D)を接続するためのインタフェースユニットである。制御部101は、信号機インタフェース104にコマンドを送信することで、複数の信号機の灯火の状態を切り替えることができる。
【0035】
次に、
図5を参照して、車載端末200について説明する。
車載端末200は、車両10に搭載される小型のコンピュータである。車載端末200は、制御部201、記憶部202、路車間通信部203、入出力部204、車々間通信部205、車両通信部206、および、GPSモジュール207を有して構成される。
【0036】
制御部201は、車載端末200の制御を司る手段である。制御部201は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。制御部201は、後述する記憶部202に記憶されたプログラムをCPUによって実行することでこれらの機能を実現してもよい。
【0037】
制御部201は、機能モジュールとして状態報知部2011、警報部2012、および、先行車監視部2013を有している。各機能モジュールは、記憶手段(ROM等)に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0038】
状態報知部2011は、自車両の走行に関するデータ(以下、車両データ)を取得し、当該車両データを、後述する車々間通信部205を介して、無線によってブロードキャスト送信する。自車両の走行に関する情報として、例えば、車両の識別子、位置情報、進行方向、速度などが挙げられるが、これらに限られない。
図6に、車両データの例を示す。警報フラグについては後述する。
自車両の位置情報や進行方向は、後述するGPSモジュール207から取得することができる。また、自車両の速度は、後述する車両プラットフォーム300から取得することができる。
【0039】
車両データは、所定の周期で(例えば、100ミリ秒おきに)送信される。送信された車両データは、他の車両によって、交通の安全のために利用される。複数の車両が車両データをブロードキャスト送信し、他の車両がこれを受信して利用することで、例えば、出合い頭事故の防止、接触事故の防止などに活用することができる。
【0040】
警報部2012は、路側装置100から受信した路側データに基づいて、ドライバーに
対して警報を出力する。具体的には、(1)路側装置100に関連付いた信号機と、自車両との位置関係を判定し、(2)進行方向の前方に赤信号がある場合であって、所定の停止位置までに車両が安全に停止できない速度が出ている場合に、ドライバーに対して警報を行う。
なお、本例では、ドライバーが赤信号を見落としていると推定される場合に警報を出力する例を挙げるが、出力されるのは、赤信号の見落としを防止するための予備的な警報であってもよい。また、危険度に基づいて、複数段階の警報を出力してもよい。
【0041】
警報部2012は、状態報知部2011が生成した車両データに、警報の出力有無を通知するフラグ(警報フラグ。符号601)を設定する。警報フラグには、警報が出力されている期間において真値(1)が設定され、警報が出力されていない期間において偽値(0)が設定される。なお、警報が複数段階ある場合、いずれの段階において警報フラグをセットしてもよい。警報フラグに真値がセットされた車両データが、本開示における「第二のデータ」に対応する。
【0042】
車両データに含まれる警報フラグが真値であることは、当該車両データを送信した車両の車室内において、減速または停止を促す警報が出力されていることを意味する。このような車両データを送信した車両は、急減速するなど、不安定な挙動を示す可能性が高い。警報フラグを含む車両データをブロードキャスト送信することで、例えば、後続車両に対して、「先行車両の挙動に注意すべき」旨の注意喚起をすることができる。
【0043】
先行車監視部2013は、他車両から受信した車両データに含まれる警報フラグに基づいて、ドライバーに対する注意喚起を行う。具体的には、他車両から車両データを受信した場合に、当該車両と自車両との位置関係を判定し、自車両の直前を走行している車両から送信された車両データに警報フラグが設定されている場合に、「先行車両の挙動に注意すべき」旨の通知を出力する。
【0044】
記憶部202は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部202には、制御部201にて実行される各種プログラム、データ等が記憶される。
【0045】
路車間通信部203は、路側装置100との間で無線通信を行うための通信手段である。路車間通信部203は、通信部103と同様の手段によって、無線通信を行う。
【0046】
入出力部204は、ユーザが行った入力操作を受け付け、ユーザに対して情報を提示する手段である。具体的には、タッチパネルとその制御手段、液晶ディスプレイとその制御手段から構成される。タッチパネルおよび液晶ディスプレイは、本実施形態では一つのタッチパネルディスプレイからなる。また、入出力部204は、音声を出力するためのスピーカ等を有していてもよい。
【0047】
車々間通信部205は、他の車両に搭載された車載端末200と無線通信を行うためのインタフェースである。車々間通信部205は、例えば、他の車両に搭載された車載端末200との間で、5.8GHz帯の電波を利用したDSRC通信を行う。
【0048】
車両通信部206は、車両プラットフォーム300と通信を行うためのインタフェースユニットである。車両通信部206は、車両プラットフォーム300が有するECU301と、車載ネットワーク経由で通信可能に構成される。
GPSモジュール207は、人工衛星から送信された電波を受信し、位置情報を算出するモジュールである。
【0049】
車両プラットフォーム300は、車両10を制御するコンピュータを含むプラットフォームである。車両プラットフォーム300は、例えば、エンジンECU、ボディECU、自動運転ECUといった、車両を制御する一つ以上のコンピュータ(ECU301)を含む。
【0050】
次に、システムに含まれる各構成要素が実行する処理の詳細について説明する。
図7は、車載端末200が、車両データをブロードキャスト送信する処理を示したフローチャートである。図示した処理は、制御部201(状態報知部2011)によって、所定の周期ごとに実行される。
【0051】
まず、ステップS11で、車両通信部206を介して車両プラットフォーム300と通信を行い、車両の状態に関するデータを取得する。このようなデータとして、例えば、位置情報、進行方向、速度などが挙げられる。
次に、ステップS12で、車両データを送信する周期が到来したか否かを判定する。車両データを送信する周期は、例えば、100ミリ秒おきとすることができる。周期が到来していない場合、処理は初期状態に戻る。周期が到来した場合、処理はステップS13に遷移し、取得したデータを含む車両データを生成し、車々間通信部205を介してブロードキャスト送信する。
【0052】
図8は、車載端末200が、路側装置100から路側データを受信し、受信した路側データに基づいて警報を行う処理を示したフローチャートである。図示した処理は、制御部201(警報部2012)によって、所定の周期ごとに実行される。
【0053】
まず、ステップS21で、路車間通信部203を介して、路側装置100から路側データを受信する。
次に、ステップS22で、受信した路側データに基づいて、警報の出力是非を判定する。
【0054】
図9は、ステップS22における処理を詳細に示したフローチャートである。
まず、ステップS221で、路側データに基づいて、自車両に対面する信号機の状態を取得する。例えば、
図3の例において、自車両が、信号機301Aに対面する方向に走行しているものとする。すなわち、進行方向の方位は0度である。この場合において、車載端末200が、
図4に示した路側データを受信したものとする。図示した例の場合、自車両の進行方向に対応する信号機のIDは「S001」であり、現在の状態は「青」となる。一方、自車両が、信号機301Cに対面する方向に走行している場合、進行方向の方位は90度となり、対応する信号機の現在の状態は「赤」となる。
なお、本例では、車両の進行方向によって、自車両に対面する信号機を特定したが、路側データに地図情報が含まれている場合、当該地図情報に基づいて、自車両に対面する信号機を特定してもよい。
【0055】
次に、ステップS222で、自車両が停止すべきであるか否かを判定する。本ステップでは、自車両が所定の停止位置(停止線)に到達するまでに、信号が赤に変わることが予測される場合に、肯定判定となる。なお、所定の停止位置は、路側データに含まれる位置情報によって判定することができる。また、赤信号に変わるタイミングは、路側データに含まれる「残り時間」によって判定することができる。自車両が停止位置に到達するまでに、信号が赤に変わらないと予測される場合、本ステップは否定判定となる。
ステップS222で肯定判定となった場合、処理はステップS223へ遷移する。
【0056】
ステップS223では、自車両の速度が、規定の速度を超過しているかを判定する。規定の速度は、
図10に示したように、停止位置までの残り距離と速度との関係を示したデ
ータ(速度パターン)によって定義することができる。図示した速度パターンは、例えば、規定の停止位置までに余裕を持って停止できる速度を表したものである。
自車両の速度が、このようなパターンによって示された速度を超過している場合、規定の停止位置までに余裕を持って停止できないことを意味する。例えば、符号1001で示したように、自車両の速度が、パターンによって示された速度を超過している場合、ステップS223で肯定判定となる。また、例えば、符号1002で示したように、自車両の速度が、パターンによって示された速度を超過していない場合、ステップS223で否定判定となる。
【0057】
なお、本例では、車両の速度に基づいて前記判定を行ったが、信号無視を行う危険があることを判定できれば、他の情報を利用してもよい。例えば、車両のブレーキペダルが踏まれていないことや、アクセルペダルが踏まれていることをステップS223で判定し、減速の兆候が無い場合に、肯定判定を行うようにしてもよい。
【0058】
ステップS223で肯定判定となった場合、処理はステップS24へ遷移し、車両のドライバーに対して警報を出力する。警報は、例えば、
図11(A)に示したように、画像によって出力してもよいし、警報音によって出力してもよい。また、これらを併用してもよい。
なお、本例では、ステップS22において警報出力の是非を判定したが、警報のレベルを複数設定し、レベルに応じた方法によって警報を出力するようにしてもよい。警報のレベルは、例えば、危険度に応じて決定してもよい。例えば、規定の停止位置で停止するために必要な減速度が高いほど、より危険であると判定し、より高レベルの警報を行うようにしてもよい。
【0059】
ステップS24で警報が出力されると、ステップS25で、車両データに含まれる警報フラグを真値に設定する。警報フラグを含む車両データは、次の送信周期においてブロードキャスト送信される。なお、ステップS25が実行されない場合、車両データに含まれる警報フラグは偽値のままとなる。
【0060】
図12は、車載端末200が、車両データを受信した際に実行する処理を示したフローチャートである。図示した処理は、制御部201(先行車監視部2013)によって、所定の周期ごとに実行される。
【0061】
まず、ステップS31で、他車両からブロードキャスト送信された車両データを受信する。
【0062】
次に、ステップS32で、車両データを送信した車両と、自車両との位置関係を算出する。具体的には、車両データに含まれる位置情報および進行方向と、車載端末200または車両プラットフォーム300が取得した位置情報および進行方向を取得し、車両同士の相対的な位置関係を取得する。ここで、以下の条件が満たされた場合、車両データを送信した車両は、自車両の直前を走行する車両であると判定することができる。
【0063】
(1)進行方向が同一である場合
例えば、互いの進行方向(方位)が閾値を下回る場合、双方の車両が同じ方向に進行していると判定することができる。
(2)同一の車線を走行中である場合
自車両の進行方向に沿った所定の範囲内に対象車両が存在する場合、双方の車両が同一の車線を走行していると判定することができる。
(3)車両同士の相対距離が所定値以下である場合
例えば、車両同士の相対距離が5メートル以下である場合、対象車両は、自車両の直前
を走行していると判定することができる。
【0064】
対象車両が自車両に先行する車両である場合(ステップS33-Yes)、処理はステップS34へ遷移する。対象車両が自車両に先行する車両でない場合(ステップS33-No)、処理はステップS36へ遷移する。
【0065】
ステップS34では、対象車両において警報が出力されているか否かを判定する。警報が出力中である(すなわち、車両データに含まれる警報フラグに真値が設定されている場合)、処理はステップS35へ遷移する。警報が出力されていない場合(すなわち、車両データに含まれる警報フラグに偽値が設定されている場合)、処理はステップS36へ遷移する。
【0066】
ステップS35では、自車両において、危険回避のための処理を実行する。先行車両において、減速すべき旨の警報が出力された場合、警報に気付いたドライバーが急ブレーキをかけるおそれがある。従って、本ステップでは、先行車両の急減速に備えるべき旨の通知を生成し、出力する。警報は、例えば、
図11(B)に示したように、画像によって出力してもよいし、警報音によって出力してもよい。また、これらを併用してもよい。
【0067】
さらに、危険回避を支援する他の処理を実行してもよい。例えば、車両10にブレーキをアシストする機能が搭載されている場合、自動でブレーキを動作させるか、または、その予備動作を行ってもよい。また、先行車両に追従して走行する機能が車両10に搭載されている場合、当該機能をアクティブにしてもよい。これにより、追突を回避することができる。
【0068】
ステップS36では、車両データに基づいたその他の処理を実行する。本ステップでは、例えば、出合い頭の衝突や、車線変更時の接触を回避するための処理など、V2V通信を利用した、安全に関する既知の処理を行う。
【0069】
以上説明したように、第一の実施形態に係る車両システムでは、先行車両において、減速すべき旨の警報が出力されている場合に、後続車両において、その旨をドライバーに通知する。
先行車両と後続車両が続いて走行している場合、後続車両において、路側データに基づいた警報が行われるタイミングは先行車両よりも遅くなる。しかし、本実施形態では、先行車両において警報が出力されるのとほぼ同じタイミングで、後続車両において注意喚起が行われるため、後続車両のドライバーは素早く減速行動に移ることができる。すなわち、先行車両が急減速等を行いうる状況下にあっても、後続車両のドライバーは、これに備えることができる。
【0070】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、先行車両において警報が出力されている場合に、後続車両のドライバーにこれを通知した。これに対し、第二の実施形態は、後続車両が、先行車両に追従して走行している場合に、後続車両を自動的に減速させる実施形態である。
【0071】
第二の実施形態では、車両プラットフォーム300は、追従制御を行うためのECUをさらに含んで構成される。追従制御とは、先行車両と一定の車間距離を維持して走行を行う制御である。追従制御は、アダプティブクルーズコントロールとも呼ばれる。
追従制御が有効になっている場合、車両10は、例えば、車々間通信や、カメラ、ミリ波レーダ等によって先行車両を検知し、車間距離が所定の値を下回らないよう、自動的に速度の制御を行う。
【0072】
第二の実施形態では、追従制御を実行中に、先行車両において警報が出力された場合に、ステップS35において、自車両を減速させる。例えば、目標となる巡航速度の設定値を小さくすることで、車両を減速させ、先行車両との車間距離を大きくすることができる。
このように、第二の実施形態によると、追従制御を行っている場合であっても、先行車両の急減速に備えることが可能になる。
【0073】
(第二の実施形態の変形例)
警報を受けた先行車両のドライバーが、警報に従わなかった場合が考えられる。すなわち、先行車両が信号無視をしてしまったような場合である。このような場合、後続車両を先行車両に追従させるべきではない。そこで、先行車両が警報に従って減速しなかった場合に、後続車両の追従制御を停止させるようにしてもよい。
例えば、ステップS35の処理を実行した後で、先行車両から送信される車両データを監視し、所定の期間内に先行車両が減速を開始しなかった場合、追従制御を停止するようにしてもよい。これにより、後続車両が先行車両に追従し続けることを防ぐことができる。
【0074】
(他の変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0075】
また、実施形態の説明では、路側データとして、交通信号機の灯火の状態に関するデータを送信したが、路側データは、これ以外の情報を通知するものであってもよい。例えば、一時停止箇所の存在、踏切の存在、対向車や障害物の存在、渋滞の存在などを通知するものであってもよい。
また、実施形態の説明では、車両の速度と、予め定義された速度パターンを比較することで、警報の出力是非を決定したが、他の方法によって警報の出力是非を決定してもよい。例えば、車両に対応する危険度を示す値を算出し、危険度が所定値を上回っている場合に警報を出力してもよい。
【0076】
また、実施形態の説明では、車両データを車々間通信によって送信する例を挙げたが、先行車両において警報が出力されている旨を後続車両に伝達することができれば、データの伝送方法は車々間通信に限られない。例えば、対象車両において警報が出力中である場合に、センタサーバが、対象車両の近傍に位置する他の車両に対して、対応する車両データを送信するようにしてもよい。
【0077】
また、実施形態の説明では、先行車両と後続車両に同一の車載端末200が搭載される例を挙げたが、先行車両に搭載される端末と、後続車両に搭載される端末は異なってもよい。この場合、先行車両に搭載された端末が、状態報知部2011および警報部2012の機能を有しており、後続車両に搭載された端末が、先行車監視部2013の機能を有していればよい。
さらに、実施形態の説明では、路側装置100が車載端末200にデータを提供する例を示したが、先行車両が、外部から与えられた何らかのデータに基づいて警報を出力することができれば、データを提供する装置は、必ずしも路側装置100である必要はない。
【0078】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハード
ウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0079】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0080】
100・・・路側装置
101,201・・・制御部
102,202・・・記憶部
103・・・通信部
104・・・信号機インタフェース
200・・・車載端末
203・・・路車間通信部
204・・・入出力部
205・・・車々間通信部
206・・・車両通信部
207・・・GPSモジュール
300・・・車両プラットフォーム
301・・・ECU