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特許7512916電力管理システム、サーバおよび電力需給の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電力管理システム、サーバおよび電力需給の調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240702BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240702BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20240702BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240702BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240702BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240702BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240702BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14 130
H02J3/28
H02J3/38 130
H02J3/46
H02J15/00 D
H02J15/00 G
H02J15/00 H
H02J15/00 J
H02J7/35 K
F24F11/47
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021011919
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115359
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 成孝
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 遥
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中村 達
(72)【発明者】
【氏名】佐野 隆章
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118725(JP,A)
【文献】特開2014-215844(JP,A)
【文献】特開2020-167815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
H02J 15/00
F24F 11/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網の電力需給を管理する電力管理システムであって、
電力系統から前記電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースと、
所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量が達成されるように、前記複数の電力調整リソースへのデマンドレスポンス要請を出力する制御装置とを備え、
前記複数の電力調整リソースは、
電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で前記供給電力を蓄電する蓄電型DER(Distributed Energy Resources)と、
空調および照明のうちの少なくとも一方により前記供給電力を消費する消費型DERとを含み、
前記制御装置は、前記所定期間の終了時に前記実電力量が前記計画電力量を超過することが前記所定期間の途中で予想された場合、当該予想前との比較において、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させることで前記実電力量の超過を解消できるときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力する一方で、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERには出力せず、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは前記実電力量の超過を解消できないときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERにも出力する、電力管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記所定期間の終了時に前記計画電力量に対して前記実電力量が不足することが前記所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前よりも前記実電力量を増大させるための前記デマンドレスポンス要請を、前記蓄電型DERよりも前記消費型DERに優先的に出力する、請求項に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定期間の終了時に前記計画電力量に対して前記実電力量が不足することが前記所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前との比較において、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させることで前記実電力量の不足を解消できるときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力する一方で、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERには出力せず、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させるだけでは前記実電力量の不足を解消できないときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERにも出力する、請求項に記載の電力管理システム。
【請求項4】
電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースを管理するサーバであって、
前記複数の電力調整リソースは、
電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で前記供給電力を貯蔵する蓄電型DERと、
ユーザの生活環境における空調および照明のうちの少なくとも一方により前記供給電力を消費する消費型DERとを含み、
前記サーバは、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶するメモリとを備え、
前記プロセッサは、
所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量が達成されるように、前記複数の電力調整リソースへのデマンドレスポンス要請を出力するように構成され、
前記所定期間の終了時に前記実電力量が前記計画電力量を超過することが前記所定期間の途中で予想された場合、当該予想前との比較において、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させることで前記実電力量の超過を解消できるときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力する一方で、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERには出力せず、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは前記実電力量の超過を解消できないときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERにも出力する、サーバ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記所定期間の終了時に前記計画電力量に対して前記実電力量が不足することが前記所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前よりも前記実電力量を増大させるための前記デマンドレスポンス要請を、前記蓄電型DERよりも前記消費型DERに優先的に出力する、請求項に記載のサーバ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記所定期間の終了時に前記計画電力量に対して前記実電力量が不足することが前記所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前との比較において、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させることで前記実電力量の不足を解消できるときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力する一方で、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERには出力せず、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させるだけでは前記実電力量の不足を解消できないときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERにも出力する、請求項に記載のサーバ。
【請求項7】
電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースを管理する、電力需給の調整方法であって、
前記複数の電力調整リソースは、
所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量を達成するためのデマンドレスポンス要請を受けるように構成され、
電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で前記供給電力を貯蔵する蓄電型DERと、
ユーザの生活環境における空調および照明のうちの少なくとも一方により前記供給電力を消費する消費型DERとを含み、
前記電力需給の調整方法は、
前記所定期間の終了時に前記実電力量が前記計画電力量を超過するかどうかを前記所定期間の途中で予想するステップと、
前記蓄電型DERを前記消費型DERよりも優先的に用いるステップは、前記実電力量が前記計画電力量を超過すると予想された場合、当該予想前との比較において、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させることで前記実電力量の超過を解消できるときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力する一方で、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERには出力しないステップと、
前記蓄電型DERによる前記供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは前記実電力量の超過を解消できないときには、前記供給電力の貯蔵を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の消費を抑制させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERにも出力するステップとを含む、電力需給の調整方法。
【請求項8】
前記所定期間の終了時に前記計画電力量に対して前記実電力量が不足することが前記所定期間の途中で予想するステップと、
前記計画電力量に対して前記実電力量が不足すると予想された場合には、当該予想前よりも前記実電力量を増大させるための前記デマンドレスポンス要請を、前記蓄電型DERよりも前記消費型DERに優先的に出力するステップとをさらに含む、請求項に記載の電力需給の調整方法。
【請求項9】
前記消費型DERを前記蓄電型DERよりも優先的に用いるステップは、前記計画電力量に対して前記実電力量が不足すると予想された場合には、当該予想前との比較において、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させることで前記実電力量の不足を解消できるときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力する一方で、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERには出力しないステップと、
前記消費型DERによる前記供給電力の消費を促進させるだけでは前記実電力量の不足を解消できないときには、前記供給電力の消費を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記消費型DERに出力するのに加えて、前記供給電力の貯蔵を促進させるための前記デマンドレスポンス要請を前記蓄電型DERにも出力するステップとを含む、請求項に記載の電力需給の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理システム、サーバおよび電力需給の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力網の電力需給を管理する電力管理システムにおいては、電力網による電力需要量と、電力系統から電力網への電力供給量とを略一致させることが要求される。しかしながら、実際には、電力の需要予測が外れるなどして電力需要量と電力供給量とが一致せず、その結果、電力のインバランスが発生する場合がある。特開2019-082935号公報(特許文献1)には、そのようなインバランスに関するヒストグラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-082935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力会社により構築された電力系統から電力供給を受けるマイクログリッドでは、電力会社との間で事前に締結された契約に従い、所定期間毎(たとえば30分間毎)のマイクログリッドへの供給電力量が計画される。電力系統の電力を安定化するためには、計画された供給電力量(以下、「計画電力量」とも記載する)と実際の供給電力量(以下、「実電力量」とも記載する)とを略一致させることが求められる。そのための制御は「同時同量」とも呼ばれる。
【0005】
一般に、電力管理システムには、電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な「電力調整リソース」が複数設けられている。電力調整リソースの具体例としては、発電機、電力貯蔵システム、蓄熱システム、空調設備、照明器具などが挙げられる。詳細については後述するが、同時同量を達成することを重視するあまり電力調整リソースを適切に制御しなかった場合、ユーザの利便性および快適性が損なわれる可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の第1の局面に係る電力管理システムは、電力網の電力需給を管理する。電力管理システムは、電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースと、所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量が達成されるように、複数の電力調整リソースへのデマンドレスポンス(DR:Demand Response)要請を出力する制御装置とを備える。複数の電力調整リソースは、電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で供給電力を貯蔵する蓄電型DER(Distributed Energy Resource)と、空調および照明のうちの少なくとも一方により供給電力を消費する消費型DERとを含む。制御装置は、所定期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過することが所定期間の途中で予想された場合、当該予想前よりも実電力量を低減させるためのDR要請を、消費型DERよりも蓄電型DERに優先的に出力する。
【0008】
(2)制御装置は、所定期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過することが所定期間の途中で予想された場合、当該予想前との比較において、(a)蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させることで実電力量の超過を解消できるときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力する一方で、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERには出力せず、(b)蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは実電力量の超過を解消できないときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力するのに加えて、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERにも出力する。
【0009】
上記(1),(2)の構成においては、所定期間の途中で電力網への供給電力を低減させることが求められる場合に、蓄電型DER(たとえば、後述する電力貯蔵システム、充電設備、車両または蓄熱システム)を用いた電力調整を、消費型DER(空調設備または照明機器)を用いた電力調整よりも優先的に実行する。このことは、電力網への供給電力を低減させる場合、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい蓄電型DERによる電力調整が、ユーザの利便性または快適性に影響し得る消費型DERによる電力調整よりも優先されることを意味する。たとえば、空調設備の冷房温度を上げたり暖房温度を下げたりした場合、空調の効きが悪くなったとユーザが感じ、ユーザの快適性が低下する可能性がある。また、照明機器が暗くなった場合にもユーザの利便性および快適性が低下し得る。上記(1),(2)の構成によれば、そのような状況が起こりにくくなるため、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0010】
(3)制御装置は、所定期間の終了時に計画電力量に対して実電力量が不足することが所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前よりも実電力量を増大させるためのDR要請を、蓄電型DERよりも消費型DERに優先的に出力する。
【0011】
(4)制御装置は、所定期間の終了時に計画電力量に対して実電力量が不足することが所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前との比較において、(c)消費型DERによる供給電力の消費を促進させることで実電力量の不足を解消できるときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力する一方で、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERには出力せず、(d)消費型DERによる供給電力の消費を促進させるだけでは実電力量の不足を解消できないときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力するのに加えて、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERにも出力する。
【0012】
上記(3),(4)の構成においては、所定期間の途中で電力網への供給電力を増大させることが求められる場合に、消費型DERを用いた電力調整を、蓄電型DERを用いた電力調整よりも優先的に実行する。このことは、電力網への供給電力を増大させる場合には、ユーザの利便性または快適性に影響し得る消費型DERによる電力調整が、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい蓄電型DERによる電力調整よりも優先されることを意味する。たとえば、空調設備の冷房温度を下げたり暖房温度を上げたりしたとしても空調の効きが良くなったとユーザが感じるだけであってユーザの快適性は低下しにくく、照明機器がわずかに明るくなったとしてもユーザの利便性は低下しにくい。よって、上記(3),(4)の構成によれば、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0013】
(5)本開示の第2の局面に係るサーバは、電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースを管理する。複数の電力調整リソースは、電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で供給電力を貯蔵する蓄電型DERと、空調および照明のうちの少なくとも一方により供給電力を消費する消費型DERとを含む。サーバは、プロセッサと、プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶するメモリとを備える。プロセッサは、所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量が達成されるように、複数の電力調整リソースへのDR要請を出力するように構成されている。プロセッサは、所定期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過することが所定期間の途中で予想された場合、当該予想前よりも実電力量を低減させるためのDR要請を、消費型DERよりも蓄電型DERに優先的に出力する。
【0014】
(6)プロセッサは、所定期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過することが所定期間の途中で予想された場合、当該予想前との比較において、(a)蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させることで実電力量の超過を解消できるときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力する一方で、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERには出力せず、(b)蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは実電力量の超過を解消できないときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力するのに加えて、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERにも出力する。
【0015】
上記(5),(6)の構成によれば、上記(1),(2)の構成と同様に、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0016】
(7)プロセッサは、所定期間の終了時に計画電力量に対して実電力量が不足することが所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前よりも実電力量を増大させるためのDR要請を、蓄電型DERよりも消費型DERに優先的に出力する。
【0017】
(8)プロセッサは、所定期間の終了時に計画電力量に対して実電力量が不足することが所定期間の途中で予想された場合には、当該予想前との比較において、(c)消費型DERによる供給電力の消費を促進させることで実電力量の不足を解消できるときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力する一方で、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERには出力せず、(d)消費型DERによる供給電力の消費を促進させるだけでは実電力量の不足を解消できないときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力するのに加えて、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERにも出力する。
【0018】
上記(7),(8)の構成によれば、上記(3),(4)の構成と同様に、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0019】
(9)本開示の第3の局面に係る電力需給の調整方法は、電力系統から電力網への供給電力の調整に使用可能な複数の電力調整リソースを管理する。複数の電力調整リソースは、所定期間毎に実電力量を計画電力量に一致させる同時同量を達成するためのDR要請を受けるように構成され、電気、熱および気体燃料のうちの少なくとも1つのエネルギー形態で供給電力を貯蔵する蓄電型DERと、空調および照明のうちの少なくとも一方により供給電力を消費する消費型DERとを含む。電力需給の調整方法は、第1および第2のステップを含む。第1のステップは、所定期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過するかどうかを所定期間の途中で予想するステップである。第2のステップは、実電力量が計画電力量を超過すると予想された場合、当該予想前よりも実電力量を低減させるためのDR要請を、消費型DERよりも蓄電型DERに優先的に出力するステップである。
【0020】
(10)第2のステップは、実電力量が計画電力量を超過すると予想された場合、当該予想前との比較において以下のような処理を行う第3および第4のステップを含む。第3のステップは、蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させることで実電力量の超過を解消できるときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力する一方で、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERには出力しないステップである。第4のステップは、蓄電型DERによる供給電力の貯蔵を抑制させるだけでは実電力量の超過を解消できないときには、供給電力の貯蔵を抑制させるためのDR要請を蓄電型DERに出力するのに加えて、供給電力の消費を抑制させるためのDR要請を消費型DERにも出力するステップである。
【0021】
上記(9),(10)の方法によれば、上記(1),(2)の構成と同様に、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0022】
(11)電力需給の調整方法は、第5および第6のステップをさらに含む。第5のステップは、所定期間の終了時に計画電力量に対して実電力量が不足することが所定期間の途中で予想するステップである。第6のステップは、場計画電力量に対して実電力量が不足すると予想された場合には、当該予想前よりも実電力量を増大させるためのDR要請を、蓄電型DERよりも消費型DERに優先的に出力するステップである。
【0023】
(12)第6のステップは、計画電力量に対して実電力量が不足すると予想された場合には、当該予想前との比較において以下のような処理を行う第7および第8のステップを含む。第7のステップは、消費型DERによる供給電力の消費を促進させることで実電力量の不足を解消できるときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力する一方で、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERには出力しないステップである。第8のステップは、消費型DERによる供給電力の消費を促進させるだけでは実電力量の不足を解消できないときには、供給電力の消費を促進させるためのDR要請を消費型DERに出力するのに加えて、供給電力の貯蔵を促進させるためのDR要請を蓄電型DERにも出力するステップである。
【0024】
上記(11),(12)の方法によれば、上記(3),(4)の構成と同様に、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、ユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制しつつ、同時同量を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施の形態1に係る電力管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】実施の形態1における30分同時同量の一例を説明するためのタイムチャートである。
図3】実施の形態1における同時同量処理に関するCEMSサーバの機能ブロック図である。
図4】実施の形態1における同時同量処理を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2における30分同時同量の一例を説明するためのタイムチャートである。
図6】実施の形態2における同時同量処理に関するCEMSサーバの機能ブロック図である。
図7】実施の形態2における同時同量処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0028】
[実施の形態1]
<電力管理システムの全体構成>
図1は、本開示の実施の形態1に係る電力管理システムの概略的な構成を示す図である。電力管理システム100は、CEMS1と、CEMSサーバ2と、受変電設備3と、電力系統4と、送配電事業者サーバ5とを備える。CEMSとは、コミュニティエネルギー管理システム(Community Energy Management System)または街エネルギー管理システム(City Energy Management System)を意味する。
【0029】
CEMS1は、工場エネルギー管理システム(FEMS:Factory Energy Management System)11と、ビルエネルギー管理システム(BEMS:Building Energy Management System)12と、ホームエネルギー管理システム(HEMS:Home Energy Management System)13と、発電機14と、自然変動電源15と、電力貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)16と、充電設備(EVSE:Electric Vehicle Supply Equipment)17と、車両18と、蓄熱システム19とを含む。CEMS1では、これらの構成要素によってマイクログリッドMGが構築されている。なお、マイクログリッドMGは、本開示に係る「電力網」の一例に相当する。
【0030】
FEMS11は、工場で使用される電力の需給を管理するシステムである。FEMS11は、マイクログリッドMGから供給される電力によって動作する工場建屋(空調設備および照明器具等を含む)、産業設備(生産ライン等)などを含む。図示しないが、FEMS11は、工場に設置された発電設備(発電機、太陽光パネル等)を含み得る。これらの発電設備により発電された電力がマイクログリッドMGに供給される場合もある。また、FEMS11は、発電設備(太陽光パネル等)を含んでもよいし、冷熱源システム(廃熱回収システム、蓄熱システム等)を含んでもよい。FEMS11は、CEMSサーバ2と双方向通信が可能なFEMSサーバ110をさらに含む。
【0031】
BEMS12は、オフィスまたは商業施設等のビルで使用される電力の需給を管理するシステムである。BEMS12は、ビルに設置された空調設備および照明器具を含む。BEMS12は、発電設備および/または冷熱源システムを含んでもよい。BEMS12は、CEMSサーバ2と双方向通信が可能なBEMSサーバ120をさらに含む。
【0032】
HEMS13は、家庭で使用される電力の需給を管理するシステムである。HEMS13は、マイクログリッドMGから供給される電力によって動作する家庭用機器(空調設備、照明器具、他の電化製品等)を含む。また、HEMS13は、太陽光パネル、家庭用ヒートポンプシステム、家庭用コージェネレーションシステム、家庭用蓄電池などを含んでもよい。HEMS11は、CEMSサーバ2と双方向通信が可能なHEMSサーバ130をさらに含む。
【0033】
発電機14は、気象条件に依存しない発電設備であり、発電された電力をマイクログリッドMGに出力する。発電機14は、蒸気タービン発電機、ガスタービン発電機、ディーゼルエンジン発電機、ガスエンジン発電機、バイオマス発電機、定置式の燃料電池などを含み得る。発電機14は、発電時に発生する熱を活用するコージェネレーションシステムを含んでもよい。
【0034】
自然変動電源15は、気象条件によって発電出力が変動する発電設備であり、発電された電力をマイクログリッドMGに出力する。図1には太陽光発電設備(太陽光パネル)が例示されているが、自然変動電源15は、太陽光発電設備に代えてまたは加えて、風力発電設備を含んでもよい。
【0035】
電力貯蔵システム16は、自然変動電源15などにより発電された電力を蓄える定置式の蓄電装置である。この蓄電装置は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池であり、たとえば過去に車両に搭載されていた走行用バッテリ(リサイクル品)を用いることができる。ただし、電力貯蔵システム16は、二次電池に限られず、余剰電力を用いて気体燃料(水素、メタン等)を製造するパワー・ツー・ガス(Power to Gas)機器であってもよい。
【0036】
充電設備17は、車両18を充電するように構成された充電スタンドである。充電設備17は家庭用充電器であってよい。充電設備17は、マイクログリッドMGに電気的に接続され、マイクログリッドMGへの放電(給電)するように構成されていてもよい。
【0037】
車両18は、具体的には、プラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)などである。車両18は、充電設備17から延びる充電ケーブルが車両18のインレット(図示せず)に接続されることによって、マイクログリッドMGからの電力を受けるように構成されている(外部充電)。車両18は、充電ケーブルが車両18のアウトレット(図示せず)に接続されることによって、マイクログリッドMGへと電力を供給するように構成されていてもよい(外部給電)。
【0038】
蓄熱システム19は、蓄熱システム19は、熱源機と負荷(空調設備等)との間に設けられた蓄熱槽を含み、蓄熱槽内の液媒体を保温状態で一時的に蓄えるように構成されている。蓄熱システム19を用いることで熱の発生と消費とを時間的にずらすことができる。たとえば、夜間に電力を消費して熱源機を運転することで発生した熱を蓄熱槽に蓄えておき、昼間にその熱を消費して空調することが可能である。
【0039】
なお、図1に示す例では、CEMS1に含まれるFEMS11、BEMS12、HEMS13、発電機14、自然変動電源15、電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19の台数が1台ずつであるが、これらのシステムまたは設備の含有数は任意である。CEMS1は、これらのシステムまたは設備を複数含んでもよい、また、CEMS1に含まれないシステムまたは設備があってもよい。FEMS11、BEMS12および/またはHEMS13が発電機等の設備を含んでいてもよいし、充電設備および車両を含んでいてもよい。これらのシステムまたは設備の各々は、本開示に係る「複数の電力調整リソース」の一例に相当する。
【0040】
電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19は、本開示に係る「蓄電型DER」に相当する。DERとは分散型エネルギーリソース(Distributed Energy Resource)を意味する。「蓄電型DER」は、FEMS11またはBEMS12に設けられた発電設備および冷熱源システムを含んでもよいし、HEMS13に設けられた家庭用コージェネレーションシステムおよび家庭用蓄電池などを含んでもよい。FEMS11内の工場建屋に設置された空調設備および照明器具と、BEMS12内のビルに設置された空調設備および照明器具、HEMS13内の家庭用ヒートポンプシステム、ならびに、家庭用機器の空調設備および照明器具は、本開示に係る「消費型DER」に相当する。なお、発電機14および自然変動電源15を「発電型DER」と呼ぶことができる。
【0041】
CEMSサーバ2は、CEMS1内の電力調整リソースを管理するコンピュータである。CEMSサーバ2は、制御装置201と、記憶装置202と、通信装置203とを含む。制御装置201は、プロセッサを含み、所定の演算処理を実行するように構成されている。記憶装置202は、制御装置201により実行されるプログラムを記憶するメモリを含み、そのプログラムで使用される各種情報(マップ、関係式、パラメータ等)を記憶している。また、記憶装置202は、データベースを含み、CEMS1に含まれるシステムまたは設備の電力に関連するデータ(発電履歴、電力消費履歴等)を記憶している。通信装置203は、通信インターフェースを含み、外部(他のサーバ等)と通信するように構成されている。
【0042】
CEMSサーバ2は、アグリゲータサーバであってもよい。アグリゲータとは、複数の電力調整リソースを束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者である。CEMSサーバ2は、本開示に係る「制御装置」または「サーバ」の一例に相当する。また、FEMS11、BEMS12およびHEMS13の各システムに含まれるサーバ(110,120,130)を本開示に係る「制御装置」または「サーバ」とすることもできる。
【0043】
受変電設備3は、マイクログリッドMGの受電点(連系点)に設けられ、マイクログリッドMGと電力系統4との並列(接続)/解列(切り離し)を切り替え可能に構成されている。受変電設備3は、いずれも図示しないが、高圧側(一次側)の開閉装置、変圧器、保護リレー、計測機器および制御装置を含む。マイクログリッドMGが電力系統4と連系しているときに、受変電設備3は、電力系統4から、たとえば特別高圧(7000Vを超える電圧)の交流電力を受電し、受電した電力を降圧してマイクログリッドMGに供給する。
【0044】
電力系統4は、発電所および送配電設備によって構築された電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者と送配電事業者とを兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当するとともに、電力系統4の管理者に相当し、電力系統4を保守および管理する。
【0045】
送配電事業者サーバ5は、電力会社に帰属し、電力系統4の電力需給を管理するコンピュータである。送配電事業者サーバ5もCEMSサーバ2と双方向通信が可能に構成されている。
【0046】
<同時同量>
CEMS1の管理者と、電力系統4を保守および管理する電力会社との間では、所定期間毎(たとえば30分間毎)に電力系統4からマイクログリッドMGに供給される電力量に関する契約が締結されている。この契約に従い、CEMサーバ2には、電力系統4からマイクログリッドMGへの実際の供給電力量(実電力量)が事前に計画された供給電力量(計画電力量)に略一致するように、実電力量を調整することが求められる。この調整のための制御は「同時同量」と呼ばれ、特に、期間が30分間である場合には「30分同時同量」と呼ばれる。
【0047】
なお、同時同量の対象期間は30分間に限定されない。同時同量の対象期間は、30分間よりも短時間(たとえば10分間)であってもよいし、30分間よりも長時間(たとえば1時間)であってもよい。同時同量の対象期間は契約により任意に定めることができる。
【0048】
図2は、実施の形態1における30分同時同量の一例を説明するためのタイムチャートである。図2(および後述する図5)において、横軸は経過時間(単位:分)を表す。初期時刻(時刻=0)は30分同時同量の開始時刻である。縦軸は、電力系統4からマイクログリッドMGへの供給電力(単位:kW)を表す。
【0049】
一例として、30分間に電力系統4からマイクログリッドMGに供給される電力量が100kWhに定められている状況を想定する。この場合、供給電力が常に一定であるとすると、供給電力は200kWである。図中、この供給電力を「計画電力」と記載している(1点鎖線参照)。
【0050】
この例では、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間のうちの前半の15分間が経過した時点で、電力系統4からマイクログリッドMGへの供給電力量を確認する。簡単のため、実際の供給電力(実電力)が220kWで一定であったとする(太い実線参照)。このような場合、そのまま成り行きに任せると同時同量の期間の終了時に実電力量が計画電力量を超過することが予想されるため、残り15分間、供給電力の平均を180kWにすることが考えられる。したがって、CEMSサーバ2は、供給電力が220kWから180kWに低減されるように、CEMS1内の様々な電力調整リソースにデマンドレスポンス(DR)要請を出力して電力調整リソースをフィードバック制御する。これにより、CEMS1内の各種電力(発電電力、蓄電電力、消費電力など)を適宜低減でき、上記契約を順守することが可能になる。
【0051】
本発明者らは、上記のように同時同量を達成しようとした場合に以下のような課題が生じ得る点に着目した。CEMSサーバ2は、同時同量の達成のみが求められているのであれば、様々な電力調整リソースに対して自由にDR要請を出力すればよい。しかしながら、CEM1内のユーザの生活環境を重視する視点に立った場合、どのような電力調整リソースを用いて、どのように電力調整を行うかが課題となり得る。CEMSサーバ2からのDR要請に従って電力調整を行う結果、電力調整リソースの運転が制限されたり、電力調整リソースがユーザの意図通りに運転できなかったりすることで、ユーザの利便性または快適性が損なわれる可能性があるためである。
【0052】
そこで、本実施の形態においては、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい電力調整リソースによる電力調整を優先する構成を採用する。そのような電力調整だけでは同時同量を達成できない場合には、ユーザの利便性または快適性に影響し得る電力調整リソースによる電力調整も併せて行う。
【0053】
より具体的には、ユーザの利便性または快適性に影響し得る電力調整リソースとしては、消費型DER(空調設備および照明器具)が挙げられる。一方、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい電力調整リソースとしては、蓄電型DER(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19)が挙げられる。以下では、消費型DERの代表例として空調設備を用い、蓄電型DERの代表例として電力貯蔵システム16を用いて説明する。
【0054】
実電力を低減するため、CEMSサーバ2が空調温度を15分経過時の前後で変更し、空調設備の消費電力を低減することも考えられる。より具体的には、CEMSサーバ2が冷房温度をユーザ設定温度よりも高くしたり、暖房温度をユーザ設定温度よりも低くしたりすることができる。空調温度の変更幅が数度(たとえば1~3℃°)だけであれば、ユーザも空調温度の変更に気付きにくいと考えられる。しかし、ユーザの快適性が低下する可能性も否定できない。また、空調の効きが悪くなったとユーザが感じ、空調温度を再設定する手間によりユーザの利便性が低下する可能性もある。
【0055】
本実施の形態において、CEMSサーバ2は、まず、電力貯蔵システム16への蓄電電力を低減させ、それによりマイクログリッドMGへの供給電力を180kWに低減することが可能かどうかを判断する。電力貯蔵システム16への蓄電電力を低減させるだけであれば、ユーザの利便性および快適性を何ら損なうことなく、マイクログリッドMGへの供給電力を低減できる。一方、電力貯蔵システム16への蓄電電力の低減だけでは供給電力を180kWまで低減できない場合、CEMSサーバ2は、空調設備を用いた電力調整を必要な範囲内で行う。その場合であっても、電力貯蔵システム16への蓄電電力を低減しない場合と比べて、空調温度の変更幅を小さくできるため、ユーザの利便性または快適性の低下を最小限に抑制できる。
【0056】
図3は、実施の形態1における同時同量処理に関するCEMSサーバ2の機能ブロック図である。図2および図3を参照して、CEMSサーバ2は、CEMS1内の様々な電力調整リソースから各種電力のフィードバックを受けながら、同時同量を達成するために使用する電力調整リソースを決定する。CEMSサーバ2は、実電力量算出部21と、計画電力量算出部22と、全体調整量算出部23と、候補選定部24と、個別調整量算出部25と、リソース決定部26と、変換演算部27と、DR要請生成部28とを含む。
【0057】
実電力量算出部21は、同時同量の対象期間である30分間の初期時刻から現在(たとえば15分経過時点)までの間に電力系統4からマイクログリッドMGへと実際に供給された電力量(実電力量)を算出する。実電力量算出部21は、マイクログリッドMGの受電点に設けられた受変電設備3において検出された供給電力を積算することで、実電力量を算出できる。算出された実電力量は全体調整量算出部23へと出力される。
【0058】
計画電力量算出部22は、上記30分間に電力系統4からマイクログリッドMGへと供給されることが計画された電力量(計画電力量)を算出する。計画電力量は、CEMS1の管理者と電力会社との間で締結された契約に従って算出される。計画電力量の値は、事前に算出されてCEMSサーバ2の記憶装置202に格納されていてもよい。算出された計画電力量は全体調整量算出部23へと出力される。
【0059】
全体調整量算出部23は、上記30分間の初期時刻から現在までの計画電力量に対する実電力量の差に基づいて、CEMS1内の電力調整リソースを用いた電力調整を要する電力量を算出する。図2の例では、このまま同時同量の対象期間が過ぎると実電力量が計画電力量を超過してしまう可能性が高いため、実電力量を低減することが求められる。この電力量はCEMS1全体に関するものであるため、以下、「全体調整量kWh(total)」とも記載する。全体調整量kWh(total)の例が図2に斜線を付して示されている。算出された全体調整量kWh(total)はリソース決定部26へと出力される。
【0060】
候補選定部24は、CEMS1内の様々な電力調整リソース(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18、蓄熱システム19、空調設備、照明機器など)の中から、電力調整に使用可能な電力調整リソースの候補を選定する。たとえば、候補選定部24は、複数の電力調整リソースの各々の運転状態を各電力調整リソースとの通信により取得する。そして、候補選定部24は、電力の変更が禁止されている電力調整リソース(たとえば一定電力で運転することが要求されている電力調整リソース)は候補から外し、電力の変更が許可されている電力調整リソースを候補として選定する。選定された電力調整リソースに関する情報は個別調整量算出部25へと出力される。
【0061】
個別調整量算出部25は、候補選定部24により選定された電力調整リソースの各々について、その電力調整リソースを用いて調整可能な電力量を算出する。この調整電力量は、電力調整リソース毎に個別に算出されるものであるため、CEM1全体に関する全体調整量kWh(total)と区別するために「個別調整量」と呼ぶ。個別調整量算出部25は、電力貯蔵算出部251と、充電算出部252と、蓄熱算出部253と、空調算出部254と、照明算出部255とを含む。
【0062】
電力貯蔵算出部251は、電力貯蔵システム16への貯蔵電力を現時点から低減した場合の貯蔵電力量の低減分を「個別調整量kWh1」として算出する。個別調整量kWh1は、電力貯蔵システム16の蓄電装置に貯蔵可能な電力量の上限値(たとえば蓄電装置の仕様上の上限値)と、電力貯蔵システム16の蓄電装置に現時点で既に貯蔵されている電力量(現在値)との差などに基づいて算出できる。また、蓄電装置によっては過度に急速には電力を貯蔵できないため、電力貯蔵算出部251は、電力貯蔵システム16の受電能力(単位時間当たりに受け入れ可能な電力)についても考慮することが好ましい。
【0063】
充電算出部252は、充電設備17から車両18への充電電力を現時点から低減した場合の充電電力量の低減分を「個別調整量kWh2」として算出する。個別調整量kWh2は、充電設備17に接続された車両18のバッテリの空き容量に基づいて算出できる。個別調整量kWh2については、充電設備17の送電能力(充電設備17が単位時間当たりに出力可能な電力)および車両18の受電能力(車両18のバッテリが単位時間当たりに受け入れ可能な電力)を考慮することが好ましい。
【0064】
蓄熱算出部253は、蓄熱システム19への蓄熱を現時点から低減した場合の消費電力量の低減分を「個別調整量kWh3」として算出する。個別調整量kWh3は、蓄熱システム19の蓄熱槽の空き容量と、蓄熱システム19の電熱変換能力(単位時間当たりに電気エネルギーを熱エネルギーに変換可能な電力)とに基づいて算出できる。
【0065】
空調算出部254は、CEMS1内に設置された空調設備による消費電力を現時点から低減した場合の消費電力量の低減分を「個別調整量kWh4」として算出する。より具体的には、個別調整量kWh4とは、現在から同時同量の対象期間(30分)が終了するまでの間、空調設備の冷房温度をユーザ設定温度よりも数度だけ高くしたり、空調設備の暖房温度をユーザ設定温度よりも数度だけ低くしたりした場合に節電可能な電力量である。個別調整量kWh4は、たとえば、空調設備の消費電力に関する仕様値、現時点の室内温度(温度センサの検出値)、外気温(たとえば天気予報に基づく推定値)、日射量(天気予報に基づく推定値)、建物の熱貫流率などに基づいて算出できる。
【0066】
照明算出部255は、CEMS1内に設置された照明機器による消費電力を現時点から低減した場合の消費電力量の低減分を「個別調整量kWh5」として算出する。個別調整量kWh5とは、照明機器の光束をユーザ設定値よりもわずかに暗くした場合に節電可能な電力量である。個別調整量kWh5は、照明機器のランプ効率(単位:lm/W)に関する仕様値などに基づいて算出できる。
【0067】
個別調整量算出部25により算出された個別調整量kWh1~kWh3はリソース決定部26に出力される。また、個別調整量kWh1~kWh5は変換演算部27に出力される。
【0068】
リソース決定部26は、全体調整量算出部23からの全体調整量kWh(total)と、個別調整量算出部25からの個別調整量とを比較することで、同時同量を達成するために使用する電力調整リソースを決定する。より詳細には、リソース決定部26は、上記5つの個別調整量kWh1~kWh5のうち蓄電型DERに関する個別調整量kWh1~kWh3の合計が全体調整量kWh(total)以上であるかどうかを判定する。言い換えると、リソース決定部26は、電力貯蔵システム16、充電設備17および車両18ならびに蓄熱システム19により調整可能な電力量の合計(kWh1+kWh2+kWh3)によって全体調整量kWh(total)を補償できるかどうかを判定する。
【0069】
下記式(1)のように、蓄電型DERに関する個別調整量の和(kWh1+kWh2+kWh3)と全体調整量kWh(total)との差分をΔkWhと記載する。
ΔkWh=kWh1+kWh2+kWh3-kWh(total) ・・・(1)
【0070】
ΔkWh≧0である場合、リソース決定部26は、蓄電型DERのみを用いて電力調整を行うことを決定する。これに対し、ΔkWh<0である場合、リソース決定部26は、蓄電型DERに加えて消費型DERを用いて電力調整を行うことを決定する。使用する電力調整リソースに関する決定は変換演算部27へと出力される。
【0071】
変換演算部27は、リソース決定部26により決定された電力調整リソース毎に個別調整量に対する演算処理を行い、その電力調整リソースの制御に用いられる電力を算出する。より具体的には、変換演算部27は、電力調整リソース毎に、同時同量の対象期間の残り時間を用いて、個別調整量を電力量(単位:kWh)から電力(単位:kW)へと換算する。一例として、個別調整量が10kWhであり、残り時間が15分である場合、10kWh×(60分/15分)=40kWと算出できる。変換演算部27による演算処理の結果はDR要請生成部28へと出力される。
【0072】
DR要請生成部28は、リソース決定部26により決定された各電力調整リソースを用いて電力調整を行うためのDR要請を生成する。生成されたDR要請は、対象とする電力調整リソースに出力される。
【0073】
<制御フロー>
図4は、実施の形態1における同時同量処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件成立時(たとえば予め定められた時間が経過する度)に実行される。各ステップは、CEMSサーバ2によるソフトウェア処理により実現されるが、CEMSサーバ2内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0074】
S101において、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間の前半(たとえば15分)が経過したかどうかを判定する。現在、まだ同時同量の対象期間の前半である場合(S101においてNO)には、CEMSサーバ2は処理を終了する。同時同量の対象期間の後半になると(S101においてYES)、CEMSサーバ2は処理をS102に進める。なお、同時同量の対象期間を前半/後半に分けることは例示に過ぎず、たとえば前の10分と後の20分とに分けてもよい。
【0075】
S102において、CEMSサーバ2は、予め定められた調整周期(たとえば1分間)が経過したかどうかを判定する。CEMSサーバ2は、調整周期が経過するまで待機し(S102においてNO)、調整周期が経過すると(S102においてYES)、処理をS103に進める。
【0076】
S103において、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間の前半に電力系統4からマイクログリッドMGへと供給されることが計画された電力量(計画電力量)を算出する。計画電力量は、電力会社との間で事前に締結された契約に従って算出される。
【0077】
S104において、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間の前半に電力系統4からマイクログリッドMGへと実際に供給された電力量(実電力量)を算出する。前述のように、マイクログリッドMGの受電点に設けられた受変電設備3において検出された供給電力を積算することで実電力量を算出できる。
【0078】
S105において、CEMSサーバ2は、S103にて算出された計画電力量と、S104にて算出された実電力量とを比較することで、全体調整量kWh(total)を算出する。実施の形態1では、実電力量の方が計画電力量よりも大きいため、(実電力量-計画電力量)を全体調整量kWh(total)とすることができる。
【0079】
S106において、CEMSサーバ2は、CEMS1内の各電力調整リソースの現在の使用状態(使用は発電、蓄電、消費、供給を含む)に関するデータを取得する。このデータは、各電力調整リソースの現在の使用電力に関するデータと、使用電力の変更の可否(変更の許可/禁止)に関するデータとを含む。CEMSサーバ2は、取得したデータに基づいて、全体調整量kWh(total)を補償するのに使用可能な電力調整リソースの候補を決定する。
【0080】
S107において、CEMSサーバ2は、S106にて決定された各候補について、個別調整量(kW1~kW5)を算出する。この算出手法については図3にて詳細に説明したため、ここでの説明は繰り返さない。
【0081】
S108において、CEMSサーバ2は、電力調整リソースによる電力貯蔵、充電および蓄熱の度合いを低減させる電力調整によって、全体調整量kWhを補償できるかどうかを判定する。具体的には、CEMSサーバ2は、蓄電型DER(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19)による個別調整量の合計(kWh1+kWh2+kWh3)が全体調整量kWh(total)以上であるかどうか(ΔkWh≧0であるかどうか)を判定する。
【0082】
ΔkWh≧0である場合(S108においてYES)、CEMSサーバ2は、蓄電型DERを用いた電力調整によって同時同量が達成されるようにDR要請を生成する(S109)。これに対し、ΔkWh<0である場合(S108においてNO)、CEMSサーバ2は、蓄電型DERに加えて消費型DERを用いた電力調整によって同時同量が達成されるようにDR要請を生成する(S110)。S109またはS110の処理後、CEMSサーバ2は、処理をS111に進める。
【0083】
S111において、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間(30分間)のすべてが経過したかどうかを判定する。同時同量の対象期間が経過していない場合(S111においてNO)、CEMSサーバ2は、処理をS102に戻す。これにより、次の調整期間にかおいて同様の処理が実行される。同時同量の対象期間が経過すると(S111においてYES)、CEMSサーバ2は一連の処理を終了する。
【0084】
以上のように、実施の形態1においては、同時同量を達成するためには同時同量の対象期間の途中でマイクログリッドMGへの供給電力を低減させることが求められる場合に、蓄電型DER(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19)を用いた電力調整を、消費型DER(空調設備および照明機器)を用いた電力調整よりも優先的に実行する。すなわち、ユーザの生活環境における電力消費を低減させる方向の電力調整を要する場合、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい蓄電型DERによる電力調整が、ユーザの利便性または快適性に影響し得る消費型DERによる電力調整よりも優先される。したがって、実施の形態1によれば、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0085】
なお、実施の形態1では、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい蓄電型DERとして、電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19を説明した。しかし、これらの電力調整リソースのすべてを用いることは必ずしも必要ではなく、これらのうちの少なくとも1つを用いればよい。後述する実施の形態2に関しても同様である。
【0086】
また、ユーザの利便性または快適性に影響し得る消費型DERとして、空調設備および照明機器を説明したが、いずれか一方のみを用いてもよい。空調設備を用いた電力調整の方が照明機器を用いた電力調整と比べて、ユーザが気付きにくい。また、多くの場合、空調設備の消費電力は照明機器の消費電力よりも大きいため、電力調整の効果も高い。したがって、いずれか一方のみを用いる場合には空調設備を用いた電力調整を優先することが望ましい。
【0087】
[実施の形態2]
実施の形態1では、同時同量の対象期間の途中でマイクログリッドMGへの供給電力を低減させることが求められる場合について説明した。実施の形態2においては、同時同量の対象期間の途中でマイクログリッドMGへの供給電力を増大させることが求められる場合について説明する。実施の形態2における電力管理システムの構成は、実施の形態1における電力管理システム100の構成(図1参照)と同等である。
【0088】
図5は、実施の形態2における30分同時同量の一例を説明するためのタイムチャートである。図5においても図2と同様に、同時同量の対象期間である30分間に電力系統4からマイクログリッドMGに供給される電力量(計画電力量)が契約により100kWhに定められるとする。供給電力が一定であるとすると、計画電力は200kWである。
【0089】
CEMSサーバ2は、前半の15分間が経過した時点で、電力系統4からマイクログリッドMGへの供給電力量を確認する。実施の形態2では、実際の供給電力が180kWで一定であったため、後半の15分間、供給電力の平均220kWにする状況を想定する。したがって、供給電力が180kWから220kWに増大されるように、CEMS1内の電力調整リソースに対してDR要請することが求められる。
【0090】
図6は、実施の形態2における同時同量処理に関するCEMSサーバ2Aの機能ブロック図である。実施の形態2におけるCEMSサーバ2Aは、リソース決定部26に代えてリソース決定部26Aを含む点において、実施の形態1におけるCEMSサーバ2(図3参照)と異なる。
【0091】
リソース決定部26Aは、リソース決定部26と同様に、全体調整量算出部23からの全体調整量kWh(total)と、個別調整量算出部25からの個別調整量とを比較することで、同時同量を達成するために使用する電力調整リソースを決定する。ただし、実施の形態2におけるリソース決定部26Aは、上記5つの個別調整量kWh1~kWh5のうちの消費型DERに関する個別調整量kWh4,kWh5の合計が全体調整量kWh(total)以上であるかどうかを判定する。言い換えると、リソース決定部26は、空調設備および照明機器により調整可能な電力量の合計(kWh4+kWh5)によって全体調整量kWh(total)を補償できるかどうかを判定する。
【0092】
実施の形態2では、消費型DERに関する個別調整量の和(kWh4+kWh5)と全体調整量kWh(total)との差分をΔkWhと記載する(下記式(2)参照)。
ΔkWh=kWh4+kWh5-kWh(total) ・・・(2)
【0093】
ΔkWh≧0である場合、リソース決定部26Aは、消費型DERのみを用いて電力調整を行うことを決定する。これに対し、ΔkWh<0である場合、リソース決定部26Aは、消費型DERに加えて蓄電型DER(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19)を用いて電力調整を行うことを決定する。他の機能ブロックは、図3に記載された対応する機能ブロックと同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0094】
図7は、実施の形態2における同時同量処理を示すフローチャートである。S201~S207の処理は、実施の形態1におけるS101~S107の処理(図4参照)と基本的に同様である。ただし、実施の形態1では、同時同量の対象期間の前半が経過した時点で実電力量の方が計画電力量よりも小さいため、(計画電力量-実電力量)を全体調整量kWh(total)とすることができる。
【0095】
S208において、CEMSサーバ2は、電力調整リソースによる空調および照明の度合いを増大させる電力調整によって、全体調整量kWhを補償できるかどうかを判定する。具体的には、CEMSサーバ2は、消費型DERによる個別調整量の合計(kWh4+kWh5)が全体調整量kWh(total)以上であるかどうか(ΔkWh≧0であるかどうか)を判定する。
【0096】
ΔkWh≧0である場合(S208においてYES)、CEMSサーバ2は、消費型DERを用いた電力調整によって同時同量が達成されるようにDR要請を生成する(S209)。具体的には、CEMSサーバ2は、同時同量の対象期間が終了するまでの間、空調設備の冷房温度をユーザ設定温度よりも数度だけ低くしたり、空調設備の暖房温度をユーザ設定温度よりも数度だけ高くしたりする。また、CEMSサーバ2は、照明機器の光束をユーザ設定値よりもわずかに明るくする。
【0097】
これに対し、ΔkWh<0である場合(S208においてNO)、CEMSサーバ2は、消費型DERに加えて蓄電型DERを用いた電力調整によって同時同量が達成されるようにDR要請を生成する(S210)。S209またはS210の処理後に実行されるS211の処理は、実施の形態1におけるS111の処理と同様である。
【0098】
以上のように、実施の形態2においては、同時同量を達成するためには同時同量の対象期間の途中でマイクログリッドMGへの供給電力を増大させることが求められる場合に、消費型DER(空調設備および照明機器)を用いた電力調整を、蓄電型DER(電力貯蔵システム16、充電設備17、車両18および蓄熱システム19)を用いた電力調整よりも優先的に実行する。すなわち、ユーザの生活環境における電力消費を増大させる方向の電力調整に関しては、ユーザの利便性または快適性に影響し得る消費型DERによる電力調整が、ユーザの利便性または快適性に影響しにくい蓄電型DERによる電力調整よりも優先される。空調設備の冷房温度を下げたり暖房温度を上げたりしたとしても、空調に要した時間が短縮されて空調の効きが良くなったとユーザが感じるだけであり、ユーザの快適性は低下しにくい。また、照明機器がわずかに明るくなったとしてもユーザの利便性は低下しにくい。したがって、実施の形態2によれば、同時同量を達成する際のユーザの利便性および快適性の低下をできるだけ抑制できる。
【0099】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
100 電力管理システム、 1 CEMS、 2,2A CEMSサーバ、3 受変電設備、4 電力系統、5 送配電事業者サーバ、11 FEMS、110 FEMSサーバ、12 BEMS、120 BEMSサーバ、13 HEMS、130 HEMSサーバ、14 発電機、15 自然変動電源、16 電力貯蔵システム、17 充電設備、18 車両、19 蓄熱システム、201 制御装置、202 記憶装置、203 通信装置、21 実電力量算出部、22 計画電力量算出部、23 全体調整量算出部、24 候補選定部、25 個別調整量算出部、251 電力貯蔵算出部、252 充電算出部、253 蓄熱算出部、254 空調算出部、255 照明算出部、26,26A リソース決定部、27 変換演算部、28 要請生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7