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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】膝装具及び脚装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/058 20060101AFI20240702BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20240702BHJP
   A61F 2/64 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61F5/058
A61F5/02 N
A61F2/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021021467
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123975
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 英祐
(72)【発明者】
【氏名】小田島 正
(72)【発明者】
【氏名】竹田 貴博
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/098733(WO,A1)
【文献】特許第5189714(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100265(US,A1)
【文献】特開2012-085756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-6/24
A61F 2/02-2/80;3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着部と、
前記ユーザーの下腿に装着される下腿装着部と、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の外側側に配置される外側ユニットと、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の内側側に配置される内側ユニットと、
を備えた膝装具であって、
前記外側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿外側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿外側リンクと、
を有し、
前記大腿外側リンク及び前記下腿外側リンクは、前記ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されており、
前記内側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿内側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿内側リンクと、
を有し、
前記大腿内側リンク及び前記下腿内側リンクは、前記ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されており、
前記外側ユニット及び前記内側ユニットは、前記ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、前記下腿外側リンクが前記下腿外側リンクの長手方向において前記大腿外側リンクから遠ざかると共に、前記下腿外側リンクが前記大腿外側リンクに対して相対的に前記下腿外側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出され、かつ、前記下腿内側リンクが前記下腿内側リンクの長手方向において前記大腿内側リンクから遠ざかると共に、前記下腿内側リンクが前記大腿内側リンクに対して相対的に前記下腿内側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されており、
前記大腿外側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿外側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿外側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿外側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、
前記下腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
膝装具。
【請求項2】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着部と、
前記ユーザーの下腿に装着される下腿装着部と、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の外側側に配置される外側ユニットと、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の内側側に配置される内側ユニットと、
を備えた膝装具であって、
前記外側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿外側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿外側リンクと、
を有し、
前記大腿外側リンク及び前記下腿外側リンクは、前記ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されており、
前記内側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿内側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿内側リンクと、
を有し、
前記大腿内側リンク及び前記下腿内側リンクは、前記ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されており、
前記外側ユニット及び前記内側ユニットは、前記ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、前記下腿外側リンクが前記下腿外側リンクの長手方向において前記大腿外側リンクから遠ざかると共に、前記下腿外側リンクが前記大腿外側リンクに対して相対的に前記下腿外側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出され、かつ、前記下腿内側リンクが前記下腿内側リンクの長手方向において前記大腿内側リンクから遠ざかると共に、前記下腿内側リンクが前記大腿内側リンクに対して相対的に前記下腿内側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されており、
前記大腿内側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿内側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿内側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿内側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、
前記下腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
膝装具。
【請求項3】
膝関節が伸展状態にあるときの膝関節角度を0度とし、膝関節が屈曲するに従って膝関節角度が増加すると定義すると、
前記下腿カムは、膝関節角度が90度から0度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
請求項1又は2に記載の膝装具。
【請求項4】
前記下腿カムは、膝関節角度が60度から30度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
請求項3に記載の膝装具。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載の膝装具を備えた、脚装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝装具及び脚装具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、大腿部から下腿部に及ぶ構造を有し、膝関節の動きを制御することで、膝関節の変形を予防する膝装具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平5-29707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変形性膝関節症を患った患脚の多くは膝関節屈曲拘縮を抱えている。膝関節屈曲拘縮とは、膝関節の伸展側の関節可動域が狭い症状であって、膝関節を伸展させようとすると膝関節に痛みが生じるとされている。
【0005】
図1には、健常な膝関節の側面図を示している。図1に示すように、大腿骨の大腿骨顆部と脛骨の上関節面は上下に対向する関係にある。図1において、前方とは患者を基準とした前方を意味し、後方とは、患者を基準とした後方である。
【0006】
図2には、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の側面図を示している。図2に示すように、膝関節が膝関節屈曲拘縮を抱えている場合、脛骨の上関節面が大腿骨の大腿骨顆部に対して相対的に後方にずれている。この状態で、膝関節を伸展させると、脛骨の上関節面と大腿骨の大腿骨顆部の間の適切な滑りが阻害され、膝関節に痛みが生じる。この伸展時の痛みが主たる原因となって、膝関節の伸展側の可動域拡張を目的としたリハビリが患者に受け入れ難いものとなっていた。
【0007】
本発明の目的は、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に発生する痛みを緩和する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の観点によれば、ユーザーの大腿に装着される大腿装着部と、前記ユーザーの下腿に装着される下腿装着部と、前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の外側(lateral)側に配置される外側ユニットと、前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の内側(medial)側に配置される内側ユニットと、を備えた膝装具であって、前記外側ユニットは、前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿外側リンクと、前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿外側リンクと、を有し、前記大腿外側リンク及び前記下腿外側リンクは、前記ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されており、前記内側ユニットは、前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿内側リンクと、前記下腿に沿って延びて前記下腿装着部によって前記下腿に固定される下腿内側リンクと、を有し、前記大腿内側リンク及び前記下腿内側リンクは、前記ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されており、前記外側ユニット及び前記内側ユニットは、前記ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、前記下腿外側リンクが前記下腿外側リンクの長手方向において前記大腿外側リンクから遠ざかると共に、前記下腿外側リンクが前記大腿外側リンクに対して相対的に前記下腿外側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出され、かつ、前記下腿内側リンクが前記下腿内側リンクの長手方向において前記大腿内側リンクから遠ざかると共に、前記下腿内側リンクが前記大腿内側リンクに対して相対的に前記下腿内側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されている、膝装具が提供される。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に発生する痛みを緩和できる。
好ましくは、前記大腿外側リンクには、大腿カムが形成されており、前記下腿外側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、前記下腿外側リンクには、下腿カムが形成されており、前記大腿外側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、前記下腿カムは、前記下腿装着部から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びており、前記大腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンクの大腿外側リンクに対する相対的な動きが実現される。
好ましくは、前記大腿内側リンクには、大腿カムが形成されており、前記下腿内側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、前記下腿内側リンクには、下腿カムが形成されており、前記大腿内側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、前記下腿カムは、前記下腿装着部から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びており、前記大腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンクの大腿外側リンクに対する相対的な動きが実現される。
好ましくは、膝関節が伸展状態にあるときの膝関節角度を0度とし、膝関節が屈曲するに従って膝関節角度が増加すると定義すると、前記大腿カムは、膝関節角度が90度から0度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで当該痛みを効果的に緩和できる。
好ましくは、前記大腿カムは、膝関節角度が60度から30度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで当該痛みを効果的に緩和できる。
好ましくは、前記大腿外側リンクには、大腿カムが形成されており、前記下腿外側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、前記下腿外側リンクには、下腿カムが形成されており、前記大腿外側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、前記下腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンクの大腿外側リンクに対する相対的な動きが実現される。
好ましくは、前記大腿内側リンクには、大腿カムが形成されており、前記下腿内側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、前記下腿内側リンクには、下腿カムが形成されており、前記大腿内側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、前記下腿カムは、膝関節が伸展するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンクの大腿外側リンクに対する相対的な動きが実現される。
好ましくは、膝関節が伸展状態にあるときの膝関節角度を0度とし、膝関節が屈曲するに従って膝関節角度が増加すると定義すると、前記下腿カムは、膝関節角度が90度から0度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで当該痛みを効果的に緩和できる。
好ましくは、前記下腿カムは、膝関節角度が60度から30度に向かって変化する間に、前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで当該痛みを効果的に緩和できる。
好ましくは、上記の膝装具を備えた脚装具が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に発生する痛みを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】健常な膝関節の側面図である。
図2】膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の側面図である。
図3】膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節を伸展する際に痛みを緩和する方法を示す側面図である。
図4】脚装具の斜視図である。(第1実施形態)
図5】外側ユニットの分解側面図である。(第1実施形態)
図6】膝関節角度が0度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第1実施形態)
図7】膝関節角度が30度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第1実施形態)
図8】膝関節角度が60度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第1実施形態)
図9】膝関節角度が90度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第1実施形態)
図10】膝関節角度が120度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第1実施形態)
図11】下腿外側リンクの側面図である。(第1実施形態)
図12】膝関節角度と変位量との関係を示すグラフである。
図13】外側ユニットの分解側面図である。(第2実施形態)
図14】膝関節角度が0度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第2実施形態)
図15】膝関節角度が30度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第2実施形態)
図16】膝関節角度が60度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第2実施形態)
図17】膝関節角度が90度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第2実施形態)
図18】膝関節角度が120度であるときの外側ユニットの部分側面図である。(第2実施形態)
図19】大腿外側リンクの側面図である。(第2実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の発明者らは、鋭意研究の末、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展側の可動域拡張を目的としたリハビリを実施するに際し、図3に示すように、膝関節の伸展時に脛骨を意図的に下方及び前方に引っ張ると、リハビリ時に発生する膝関節の痛みを緩和できるという知見を得た。
【0012】
即ち、図3に示すように、膝関節の伸展時に脛骨を下方に引っ張ることで、大腿骨の大腿骨顆部と脛骨の上関節面との間の隙間が拡張される。ここで、「膝関節の伸展時に脛骨を下方に引っ張る」とは、膝関節の伸展時に脛骨を脛骨の長手方向において足側に引っ張ることを意味する。
【0013】
また、膝関節の伸展時に脛骨を前方に引っ張ることで、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節にとって典型的な脛骨の上関節面の大腿骨顆部に対する不適切な位置関係が適切な位置関係に一時的に戻る。ここで、「膝関節の伸展時に脛骨を前方に引っ張る」とは、膝関節の伸展時に脛骨を脛骨の長手方向に対して直交する方向において前方に引っ張ることを意味する。
【0014】
このように、膝関節の伸展時に脛骨を意図的に下方及び前方に引っ張ることで、大腿骨の大腿骨顆部と脛骨の上関節面との間に適度な隙間が形成されると共に、腿骨の大腿骨顆部に対して脛骨の上関節面の位置関係が改善されて両者が物理的に干渉することもなくなり、結果として、膝関節の伸展側の可動域拡張を目的としたリハビリ時に発生する膝関節の痛みを緩和することができる。
【0015】
しかしながら、上記の知見は膝関節の伸展時に脛骨を下方及び前方に引っ張ることを前提としており、これら3つの動きを同時に行うことは困難であり、徒手療法では到底実現困難である。
【0016】
そこで、本願発明の発明者らは、上記3つの動きを誰でも簡単に、更に言えば患者自身が単独でも実現できる膝装具を発明した。
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0018】
(第1実施形態)
まず、図4を参照して、第1実施形態の脚装具1を説明する。
【0019】
図4には、ユーザーの左脚Lに装着した脚装具1を示している。図4において、ユーザーの左脚Lを二点鎖線で示し、ユーザーが装着している靴を一点鎖線で示している。
【0020】
図4に示すように、脚装具1は、膝装具2と下腿補助具3を備えている。膝装具2は、変形性膝関節症を患った左脚Lに装着され、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に発生する痛みを緩和する装具である。膝装具2は、左脚Lに装着された状態で膝関節の屈伸に追従して屈伸する。下腿補助具3は、ユーザーの膝関節のスラストを抑制する。下腿補助具3については説明を省略する。なお、下腿補助具3は、膝装具2に対して着脱可能に構成されている。従って、下腿補助具3を膝装具2から取り外し、膝装具2を単独で使用できるようになっている。
【0021】
膝装具2は、大腿装着部4、下腿装着部5、外側ユニット6、内側ユニット7を含む。
【0022】
大腿装着部4は、ユーザーの左脚Lの大腿L1に装着される。大腿装着部4は、大腿カフ4aと大腿ベルト4bを含む。
【0023】
大腿カフ4aは、ユーザーの大腿L1の前面に対向するように配置される。大腿カフ4aは、平面視で前方に凸となるように湾曲している。大腿ベルト4bは、ユーザーの大腿L1と大腿カフ4aを同時に巻き込むようにユーザーの大腿L1に巻き付けられることで、大腿カフ4aをユーザーの大腿L1に固定する。
【0024】
下腿装着部5は、ユーザーの左脚Lの下腿L2に装着される。下腿装着部5は、下腿カフ5aと下腿ベルト5bを含む。
【0025】
下腿カフ5aは、ユーザーの下腿L2の前面に対向するように配置される。下腿カフ5aは、平面視で前方に凸となるように湾曲している。下腿ベルト5bは、ユーザーの下腿L2と下腿カフ5aを同時に巻き込むようにユーザーの下腿L2に巻き付けられることで、下腿カフ5aをユーザーの下腿L2に固定する。
【0026】
外側ユニット6は、大腿装着部4と下腿装着部5を連結すると共にユーザーの左脚L(下肢)の外側(lateral)側に配置される。
【0027】
外側ユニット6は、大腿L1に沿って延びて大腿装着部4によって大腿L1に固定される大腿外側リンク6aと、下腿L2に沿って延びて下腿装着部5によって下腿L2に固定される下腿外側リンク6bと、を有する。大腿外側リンク6a及び下腿外側リンク6bは、ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されている。
【0028】
内側ユニット7は、大腿装着部4と下腿装着部5を連結すると共にユーザーの左脚L(下肢)の内側(medial)側に配置される。
【0029】
内側ユニット7は、大腿L1に沿って延びて大腿装着部4によって大腿L1に固定される大腿内側リンク7aと、下腿L2に沿って延びて下腿装着部5によって下腿L2に固定される下腿内側リンク7bと、を有する。大腿内側リンク7a及び下腿内側リンク7bは、ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されている。
【0030】
そして、外側ユニット6は、ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかると共に、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されている。同様に、内側ユニット7は、ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、下腿内側リンク7bが下腿内側リンク7bの長手方向において大腿内側リンク7aから遠ざかると共に、下腿内側リンク7bが大腿内側リンク7aに対して相対的に下腿内側リンク7bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されている。具体的には以下の通りである。
【0031】
(外側ユニット6)
以下、図5から図11を参照して、大腿外側リンク6aと下腿外側リンク6bの連結部分を詳細に説明する。
【0032】
図5には、大腿外側リンク6aから下腿外側リンク6bを取り外した状態を示している。図6には、大腿外側リンク6aに下腿外側リンク6bを取り付けた状態を示している。
【0033】
図5及び図6に示すように、大腿外側リンク6aには、大腿カム10が形成されている。下腿外側リンク6bには、大腿カム10に沿って移動するように大腿カム10と係合する下腿ピン11が形成されている。下腿外側リンク6bには、下腿カム12が形成されている。大腿外側リンク6aには、下腿カム12に沿って移動するように下腿カム12と係合する大腿ピン13が形成されている。
【0034】
図6に示すように、下腿外側リンク6bは、大腿外側リンク6aの外側側に(紙面に向かって手前側に)配置されている。しかし、下腿外側リンク6bは、大腿外側リンク6aの内側側に(紙面に向かって奥側に)配置してもよい。
【0035】
図5に示すように、下腿ピン11は内側側に向かって突出しており、大腿ピン13は外側側に向かって突出している。
【0036】
大腿カム10は、大腿外側リンク6aを大腿外側リンク6aの板厚方向で貫通しない溝状に形成されている。しかし、大腿カム10は、大腿外側リンク6aを大腿外側リンク6aの板厚方向で貫通するスリット状に形成してもよい。
【0037】
下腿カム12は、下腿外側リンク6bを下腿外側リンク6bの板厚方向で貫通するスリット状に形成されている。しかし、下腿カム12は、下腿外側リンク6bを下腿外側リンク6bの板厚方向で貫通しない溝状に形成してもよい。
【0038】
この構成で、図6から図10に示すように、下腿外側リンク6bを大腿外側リンク6aに対して回転させると、大腿ピン13が下腿カム12に沿って移動すると共に、下腿ピン11が大腿カム10に沿って移動する。即ち、大腿カム10、下腿ピン11、下腿カム12、大腿ピン13の協働により、外側ユニット6は、膝関節の屈伸に追従して屈伸可能に構成されている。
【0039】
以下、大腿カム10、下腿ピン11、下腿カム12、大腿ピン13の配置又は形状を説明するに際し、図5に示すように、大腿外側リンク6a及び下腿外側リンク6bが何れも上下方向に沿って延びる姿勢であるものとする。
【0040】
図5に示すように、下腿カム12は、下腿装着部5から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びている。下腿カム12は、上方に向かうにつれて後方に向かうように延びている。下腿カム12は、下腿カム12の長手方向に対して傾斜している。下腿カム12は、直線的に延びている。しかし、下腿カム12は、前方に凸となるように湾曲してもよく、後方に凸となるように湾曲してもよい。下腿カム12は、伸展側端部12exと屈曲側端部12bnを有する。伸展側端部12exは、膝関節が伸展して膝関節角度が0度となったときに大腿ピン13が位置する端部である。屈曲側端部12bnは、膝関節が屈曲して膝関節角度が120度となったときに大腿ピン13が位置する端部である。従って、膝関節を伸展させると、大腿ピン13は、屈曲側端部12bnから伸展側端部12exに向かって移動する。反対に、膝関節を屈曲させると、大腿ピン13は、伸展側端部12exから屈曲側端部12bnに向かって移動する。
【0041】
下腿ピン11は、下腿カム12よりも下方に配置されている。下腿ピン11は、下腿カム12によりも下腿装着部5の近くに配置されている。従って、大腿ピン13が下腿カム12の屈曲側端部12bnに位置するとき、大腿ピン13は下腿ピン11に最も接近する。反対に、大腿ピン13が下腿カム12の伸展側端部12exに位置するとき、大腿ピン13は下腿ピン11から最も遠ざかる。
【0042】
引き続き図5に示すように、大腿カム10は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5が大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。換言すれば、大腿カム10は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5を大腿ピン13から遠ざける機能を発揮するように形成されている。
【0043】
具体的には、大腿カム10は、大腿ピン13を取り囲むように湾曲して延びている。大腿カム10は、前方に向かって開口するU字状に湾曲している。大腿カム10は、伸展側端部10exと屈曲側端部10bnを有する。伸展側端部10exは、膝関節が伸展して膝関節角度が0度となったときに下腿ピン11が位置する端部である。屈曲側端部10bnは、膝関節が屈曲して膝関節角度が120度となったときに下腿ピン11が位置する端部である。従って、膝関節を伸展させると、下腿ピン11は、屈曲側端部10bnから伸展側端部10exに向かって移動する。反対に、膝関節を屈曲させると、下腿ピン11は、伸展側端部10exから屈曲側端部10bnに向かって移動する。大腿カム10は、屈曲カム部10aと、遷移直線カム部10bと、遷移湾曲カム部10cと、伸展カム部10dと、を含む。屈曲カム部10aは、屈曲側端部10bnを含む。伸展カム部10dは、伸展側端部10exを含む。屈曲カム部10aと遷移直線カム部10b、遷移湾曲カム部10c、伸展カム部10dは、この記載順に連なっている。従って、屈曲カム部10aと遷移直線カム部10b、遷移湾曲カム部10c、伸展カム部10dは、屈曲側端部10bnから伸展側端部10exに向かってこの記載順で連なっている。図5において、屈曲カム部10aと遷移直線カム部10bの境界、遷移直線カム部10bと遷移湾曲カム部10cの境界、遷移湾曲カム部10cと伸展カム部10dの境界を二点鎖線で示している。
【0044】
屈曲カム部10aは、大腿ピン13の上方に配置され、大腿ピン13を中心とする円弧状に延びている。即ち、屈曲カム部10aは、上方に向かって凸となるように湾曲している。
【0045】
遷移直線カム部10bは、大腿ピン13の後方に配置され、直線的に延びている。遷移直線カム部10bは、下方に向かうにつれて後方に向かうように延びている。従って、遷移直線カム部10bは、屈曲側端部10bn側から伸展側端部10ex側に向かうにつれて大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。
【0046】
遷移湾曲カム部10cは、大腿ピン13の下方及び後方に配置され、大腿ピン13よりも下方に位置する湾曲中心10ccを中心とする円弧状に延びている。即ち、遷移湾曲カム部10cは、大腿ピン13から遠ざかる方向に凸となるように、換言すれば、下方及び後方に向かって凸となるように湾曲している。従って、遷移湾曲カム部10cは、屈曲側端部10bn側から伸展側端部10ex側に向かうにつれて大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。
【0047】
伸展カム部10dは、大腿ピン13の下方に配置され、直線的に延びている。伸展カム部10dは、前後方向に延びている。従って、伸展カム部10dは、屈曲側端部10bn側から伸展側端部10ex側に向かうにつれて大腿ピン13に若干近づき、その後大腿ピン13から若干遠ざかる。
【0048】
次に、図6から図10を参照して、膝関節角度に応じて大腿カム10、下腿ピン11、下腿カム12、大腿ピン13がどのように連動するか説明する。
【0049】
(膝関節角度:0度)
図6に示すように、膝関節角度が0度のとき、即ち、膝関節及び外側ユニット6が伸展状態にあるとき、大腿ピン13は下腿カム12の伸展側端部12exに位置しており、下腿ピン11は大腿カム10の伸展カム部10dの伸展側端部10exに位置している。
【0050】
このように膝関節角度が0度であるとき下腿ピン11が伸展カム部10dに位置しており、伸展カム部10dが前後方向に延びているので、膝装具2を装着した患脚が着地したときに受ける地面反力で下腿ピン11が大腿カム10の遷移湾曲カム部10cに向かって移動してしまうことがない。従って、膝装具2を装着した患脚が着地したとき、膝関節及び外側ユニット6の伸展状態は維持される。
【0051】
(膝関節角度:30度)
図7に示すように、膝関節角度が30度であるとき、大腿ピン13は下腿カム12の伸展側端部12exに位置しており、下腿ピン11は大腿カム10の遷移湾曲カム部10cに位置している。
【0052】
(膝関節角度:60度)
図8に示すように、膝関節角度が60度であるとき、大腿ピン13は下腿カム12の屈曲側端部12bnに位置しており、下腿ピン11は大腿カム10の屈曲カム部10aと遷移直線カム部10bの境界に位置している。
【0053】
(膝関節角度:90度)
図9に示すように、膝関節角度が90度であるとき、大腿ピン13は下腿カム12の屈曲側端部12bnに位置しており、下腿ピン11は大腿カム10の屈曲カム部10aに位置している。
【0054】
(膝関節角度:120度)
図10に示すように、膝関節角度が120度であるとき、大腿ピン13は下腿カム12の屈曲側端部12bnに位置しており、下腿ピン11は大腿カム10の屈曲カム部10aの屈曲側端部10bnに位置している。
【0055】
(膝関節角度:120度→60度)
図8から図10に示すように、膝関節が伸展して膝関節角度が120度から60度に変化する間、下腿ピン11は、大腿カム10の屈曲カム部10aに沿って屈曲側端部10bnから遠ざかるように移動する。一方、大腿カム10の屈曲カム部10aは、大腿ピン13を中心とする円弧状に延びている。従って、図8から図10に示すように、膝関節を伸展させて膝関節角度が120度から60度に変化する間、大腿ピン13は、下腿カム12の屈曲側端部12bnに拘束された状態を維持する。即ち、下腿外側リンク6bは、大腿ピン13を中心として60度回転することになる。
【0056】
(膝関節角度:60度→30度)
図7及び図8に示すように、膝関節が伸展して膝関節角度が60度から30度に変化する間、下腿ピン11は、大腿カム10の遷移直線カム部10b及び遷移湾曲カム部10cに沿って屈曲側端部10bnから遠ざかるように移動する。一方、大腿カム10の遷移直線カム部10bから遷移湾曲カム部10cに向かうにつれて大腿カム10は、大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。従って、図7及び図8に示すように、膝関節を伸展させて膝関節が60度から30度に変化する間、大腿ピン13は、下腿カム12の屈曲側端部12bnから伸展側端部12exへと移動する。この結果、下腿外側リンク6bは、大腿ピン13を中心として単純に30度回転するのではなく、この回転に加えて、膝関節を伸展させて膝関節が60度から30度に変化する間、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかると共に、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出される。ここで、「前方に」とは、「左脚Lが立脚状態から遊脚状態となったときに左脚Lの下腿L2が振り出される方向に」や「つま先側に」と換言できる。
【0057】
図11には、膝関節を伸展させて膝関節が60度から30度に変化する間、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかる変位量Δyと、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出される変位量Δxを示している。
【0058】
変位量Δyは、下腿外側リンク6bの長手方向における、大腿ピン13が屈曲側端部12bnに位置するときの大腿ピン13の中心点13bnと、大腿ピン13が伸展側端部12exに位置するときの大腿ピン13の中心点13exと、の差分に相当している。
【0059】
これに対し、変位量Δxは、下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向における、大腿ピン13が屈曲側端部12bnに位置するときの大腿ピン13の中心点13bnと、大腿ピン13が伸展側端部12exに位置するときの大腿ピン13の中心点13exと、の差分に相当している。
【0060】
図11によれば、下腿外側リンク6bの長手方向に対する下腿カム12の傾斜角度を調整することにより、変位量Δxと変位量Δyの比率を調整することができる。また、下腿カム12の長さを調整することで、変位量Δxと変位量Δyの比率を維持したまま変位量Δxと変位量Δyを増減することができる。
【0061】
図12には、膝関節角度と、変位量Δx及び変位量Δyと、の関係を例示するグラフを示している。図12に示すように、膝関節を伸展させると、変位量Δx及び変位量Δyは、膝関節角度が60度から30度に変化する間に増加する。具体的には、上記区間において、変位量Δxは8.5mmとなり、変位量Δyは23.5mmとなる。また、図12の例では、膝関節角度が90度であるとき、典型的にはユーザーが椅子に着席した状態で脚装具1をユーザーの左脚Lに装着することが好ましい。図12に示した変位量Δx及び変位量Δyが特に変化する膝関節角度の区間やその変位量、脚装具1をユーザーの左脚Lに装着するときの上述した膝関節角度はあくまで一例であり、これらに限定されない。
【0062】
(膝関節角度:30度→0度)
図6及び図7に示すように、膝関節が伸展して膝関節角度が30度から0度に変化する間、下腿ピン11は、大腿カム10の伸展カム部10dに沿って伸展側端部10exに近づくように移動する。一方、大腿カム10の伸展カム部10dと大腿ピン13との間の距離は、伸展カム部10dの全域にわたってほとんど変化しない。従って、図6及び図7に示すように、膝関節を伸展させて膝関節が30度から0度に変化する間、大腿ピン13は、下腿カム12の伸展側端部12exに実質的に拘束された状態を維持する。即ち、下腿外側リンク6bは、大腿ピン13を中心として30度回転することになる。
【0063】
(内側ユニット7)
図4に示す内側ユニット7の構成は、左脚Lの正中に対して外側ユニット6の構成と対称であるから、その詳細な説明を省略する。
【0064】
内側ユニット7は、要するに、以下のように構成されている。大腿内側リンク7aには、大腿カムが形成されている。下腿内側リンク7bには、大腿カムに沿って移動するように大腿カムと係合する下腿ピンが形成されている。下腿内側リンク7bには、下腿カムが形成されている。大腿内側リンク7aには、下腿カムに沿って移動するように下腿カムと係合する大腿ピンが形成されている。下腿カムは、下腿装着部5から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びている。大腿カムは、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部が大腿ピンから遠ざかるように形成されている。
【0065】
以上の構成により、脚装具1を患脚に装着するだけで、膝関節の伸展時に脛骨を意図的に下方及び前方に引っ張る動きが実現され、図3に示すように、大腿骨の大腿骨顆部と脛骨の上関節面との間に適度な隙間が形成されると共に、腿骨の大腿骨顆部に対して脛骨の上関節面が物理的に干渉することもなく、結果として、リハビリ時に発生する膝関節の痛みが緩和される。
【0066】
以上に、第1実施形態を説明したが、上記実施形態は、以下の特徴を有する。
【0067】
膝装具2は、ユーザーの大腿L1に装着される大腿装着部4と、ユーザーの下腿L2に装着される下腿装着部5と、大腿装着部4と下腿装着部5を連結すると共にユーザーの左脚L(下肢)の外側(lateral)側に配置される外側ユニット6と、大腿装着部4と下腿装着部5を連結すると共にユーザーの左脚Lの内側(medial)側に配置される内側ユニット7と、を備える。外側ユニット6は、大腿L1に沿って延びて大腿装着部4によって大腿L1に固定される大腿外側リンク6aと、下腿L2に沿って延びて下腿装着部5によって下腿L2に固定される下腿外側リンク6bと、を有する。大腿外側リンク6a及び下腿外側リンク6bは、ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されている。内側ユニット7は、大腿L1に沿って延びて大腿装着部4によって大腿L1に固定される大腿内側リンク7aと、下腿L2に沿って延びて下腿装着部5によって下腿L2に固定される下腿内側リンク7bと、を有する。大腿内側リンク7a及び下腿内側リンク7bは、ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されている。外側ユニット6は、ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかると共に、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されている。内側ユニット7は、ユーザーの膝関節が伸展するにつれて、下腿内側リンク7bが下腿内側リンク7bの長手方向において大腿内側リンク7aから遠ざかると共に、下腿内側リンク7bが大腿内側リンク7aに対して相対的に下腿内側リンク7bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出されるように構成されている。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に発生する痛みを緩和することができる。
【0068】
また、図5に示すように、大腿外側リンク6aには、大腿カム10が形成されている。下腿外側リンク6bには、大腿カム10に沿って移動するように大腿カム10と係合する下腿ピン11が形成されている。下腿外側リンク6bには、下腿カム12が形成されている。大腿外側リンク6aには、下腿カム12に沿って移動するように下腿カム12と係合する大腿ピン13が形成されている。下腿カム12は、下腿装着部5から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びている。大腿カム10は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5が大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンク6bの大腿外側リンク6aに対する相対的な動きが実現される。
【0069】
また、図12に示すように、膝関節が伸展状態にあるときの膝関節角度を0度とし、膝関節が屈曲するに従って膝関節角度が増加すると定義すると、大腿カム10は、膝関節角度が90度から0度に向かって変化する間に、下腿装着部5が大腿ピン13から遠ざかるように形成されていることが好ましい。更に具体的には、大腿カム10は、膝関節角度が60度から30度に向かって変化する間に、下腿装着部5が大腿ピン13から遠ざかるように形成されていることが好ましい。一例として、図12の変位量Δyに着目されたい。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで変位量Δyが増加するので、当該痛みを効果的に緩和することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、図13から図19を参照して、第2実施形態の脚装具1を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0071】
本実施形態は、上記第1実施形態に対して、大腿外側リンク6aと下腿外側リンク6bの連結部分が異なっている。
【0072】
図13には、大腿外側リンク6aから下腿外側リンク6bを取り外した状態を示している。図14には、大腿外側リンク6aに下腿外側リンク6bを取り付けた状態を示している。
【0073】
図13及び図14に示すように、大腿外側リンク6aには、大腿カム20が形成されている。下腿外側リンク6bには、大腿カム20に沿って移動するように大腿カム20と係合する下腿ピン21が形成されている。下腿外側リンク6bには、下腿カム22が形成されている。大腿外側リンク6aには、下腿カム22に沿って移動するように下腿カム22と係合する大腿ピン23が形成されている。
【0074】
図14に示すように、下腿外側リンク6bは、大腿外側リンク6aの内側側(紙面に向かって奥側に)に配置されている。しかし、下腿外側リンク6bは、大腿外側リンク6aの外側側(紙面に向かって手前側に)に配置してもよい。
【0075】
図13に示すように、下腿ピン21は外側側に向かって突出しており、大腿ピン13は内側側に向かって突出している。
【0076】
大腿カム20は、大腿外側リンク6aを大腿外側リンク6aの板厚方向で貫通するスリット状に形成されている。しかし、大腿カム20は、大腿外側リンク6aを大腿外側リンク6aの板厚方向で貫通しない溝状に形成してもよい。
【0077】
下腿カム22は、下腿外側リンク6bを下腿外側リンク6bの板厚方向で貫通しない溝状に形成されている。しかし、下腿カム22は、下腿外側リンク6bを下腿外側リンク6bの板厚方向で貫通するスリット状に形成してもよい。
【0078】
この構成で、図14から図18に示すように、下腿外側リンク6bを大腿外側リンク6aに対して回転させると、大腿ピン23が下腿カム22に沿って移動すると共に、下腿ピン21が大腿カム20に沿って移動する。即ち、大腿カム20、下腿ピン21、下腿カム22、大腿ピン23の協働により、外側ユニット6は、膝関節の屈伸に追従して屈伸可能に構成されている。
【0079】
以下、大腿カム20、下腿ピン21、下腿カム22、大腿ピン23の配置又は形状を説明するに際し、図13に示すように、大腿外側リンク6a及び下腿外側リンク6bが何れも上下方向に沿って延びる姿勢であるものとする。
【0080】
図13に示すように、大腿カム20は、大腿装着部4から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びている。大腿カム20は、上方に向かうにつれて後方に向かうように延びている。大腿カム20は、大腿カム20の長手方向に対して傾斜している。大腿カム20は、直線的に延びている。しかし、大腿カム20は、前方に凸となるように湾曲してもよく、後方に凸となるように湾曲してもよい。大腿カム20は、伸展側端部20exと屈曲側端部20bnを有する。伸展側端部20exは、膝関節が伸展して膝関節角度が0度となったときに大腿ピン23が位置する端部である。屈曲側端部20bnは、膝関節が屈曲して膝関節角度が120度となったときに大腿ピン23が位置する端部である。従って、膝関節を伸展させると、下腿ピン21は、屈曲側端部20bnから伸展側端部20exに向かって移動する。反対に、膝関節を屈曲させると、下腿ピン21は、伸展側端部20exから屈曲側端部20bnに向かって移動する。
【0081】
大腿ピン23は、大腿カム20よりも上方に配置されている。大腿ピン23は、大腿カム20によりも大腿装着部4の近くに配置されている。従って、下腿ピン21が大腿カム20の屈曲側端部20bnに位置するとき、下腿ピン21は大腿ピン23に最も接近する。反対に、下腿ピン21が大腿カム20の伸展側端部20exに位置するとき、下腿ピン21は大腿ピン23から最も遠ざかる。
【0082】
引き続き図13に示すように、下腿カム22は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5が大腿ピン23から遠ざかるように形成されている。換言すれば、下腿カム22は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5を大腿ピン23から遠ざける機能を発揮するように形成されている。
【0083】
具体的には、下腿カム22は、下腿ピン21を取り囲むように湾曲して延びている。下腿カム22は、前方に向かって開口するU字状に湾曲している。下腿カム22は、伸展側端部22exと屈曲側端部22bnを有する。伸展側端部22exは、膝関節が伸展して膝関節角度が0度となったときに大腿ピン23が位置する端部である。屈曲側端部22bnは、膝関節が屈曲して膝関節角度が120度となったときに大腿ピン23が位置する端部である。従って、膝関節を伸展させると、大腿ピン23は、屈曲側端部22bnから伸展側端部22exに向かって移動する。反対に、膝関節を屈曲させると、大腿ピン23は、伸展側端部22exから屈曲側端部22bnに向かって移動する。下腿カム22は、屈曲カム部22aと、湾曲カム部22bと、伸展カム部22cと、を含む。屈曲カム部22aは、屈曲側端部22bnを含む。伸展カム部22cは、伸展側端部22exを含む。屈曲カム部22aと湾曲カム部22b、伸展カム部22cは、この記載順に連なっている。従って、屈曲カム部22aと湾曲カム部22b、伸展カム部22cは、屈曲側端部22bnから伸展側端部22exに向かってこの記載順で連なっている。図13において、屈曲カム部22aと湾曲カム部22bの境界、湾曲カム部22bと伸展カム部22cの境界を二点鎖線で示している。
【0084】
屈曲カム部22aは、下腿ピン21の後方に配置され、直線的に延びている。屈曲カム部22aは、上方に向かうにつれて後方に向かうように延びている。従って、屈曲カム部22aは、屈曲側端部22bn側から伸展側端部22ex側に向かうにつれて下腿ピン21から遠ざかるように形成されている。
【0085】
湾曲カム部22bは、下腿ピン21の上方及び後方に配置され、下腿ピン21よりも上方に位置する湾曲中心22bcを中心とする円弧状に延びている。即ち、湾曲カム部22bは、下腿ピン21から遠ざかる方向に凸となるように、換言すれば、上方及び後方に向かって凸となるように湾曲している。従って、湾曲カム部22bは、屈曲側端部22bn側から伸展側端部22ex側に向かうにつれて下腿ピン21から遠ざかるように形成されている。
【0086】
伸展カム部22cは、下腿ピン21の上方に配置され、直線的に延びている。伸展カム部22cは、前後方向に延びている。従って、伸展カム部22cは、屈曲側端部22bn側から伸展側端部22ex側に向かうにつれて下腿ピン21に若干近づき、その後下腿ピン21から若干遠ざかる。
【0087】
次に、図14から図18を参照して、膝関節角度に応じて下腿カム22、大腿ピン23、大腿カム20、下腿ピン21がどのように連動するか説明する。
【0088】
(膝関節角度:0度)
図14に示すように、膝関節角度が0度のとき、即ち、膝関節及び外側ユニット6が伸展状態にあるとき、下腿ピン21は大腿カム20の伸展側端部20exに位置しており、大腿ピン23は下腿カム22の伸展カム部22cの伸展側端部22exに位置している。
【0089】
このように膝関節角度が0度であるとき大腿ピン23が伸展カム部22cに位置しており、伸展カム部22cが前後方向に延びているので、膝装具2を装着した患脚が着地したときに受ける地面反力で大腿ピン23が下腿カム22の湾曲カム部22bに向かって移動してしまうことがない。従って、膝装具2を装着した患脚が着地したとき、膝関節及び外側ユニット6の伸展状態は維持される。
【0090】
(膝関節角度:30度)
図15に示すように、膝関節角度が30度であるとき、下腿ピン21は大腿カム20の伸展側端部20exに位置しており、大腿ピン23は下腿カム22の湾曲カム部22bに位置している。
【0091】
(膝関節角度:60度)
図16に示すように、膝関節角度が60度であるとき、下腿ピン21は大腿カム20の伸展側端部20exから若干屈曲側端部20bn側に離れており、大腿ピン23は下腿カム22の湾曲カム部22bと屈曲カム部22aの境界に位置している。
【0092】
(膝関節角度:90度)
図17に示すように、膝関節角度が90度であるとき、下腿ピン21は大腿カム20の伸展側端部20exから更に屈曲側端部20bn側に離れており、大腿ピン23は下腿カム22の屈曲カム部22aに位置している。
【0093】
(膝関節角度:120度)
図18に示すように、膝関節角度が120度であるとき、下腿ピン21は大腿カム20の屈曲側端部20bnに位置しており、大腿ピン23は下腿カム22の屈曲カム部22aの屈曲側端部22bnの近傍に位置している。
【0094】
(膝関節角度:120度→30度)
図15から図18に示すように、膝関節が伸展して膝関節角度が120度から30度に変化する間、大腿ピン23は、下腿カム22の屈曲カム部22a及び湾曲カム部22bに沿って屈曲側端部22bnから遠ざかるように移動する。一方、下腿カム22の屈曲カム部22aから湾曲カム部22bに向かうにつれて下腿カム22は、下腿ピン21から遠ざかるように形成されている。従って、図15から図18に示すように、膝関節を伸展させて膝関節が120度から30度に変化する間、下腿ピン21は、大腿カム20の屈曲側端部20bnから伸展側端部20exへと移動する。この結果、下腿外側リンク6bは、下腿ピン21を中心として単純に30度回転するのではなく、この回転に加えて、膝関節を伸展させて膝関節が120度から30度に変化する間、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかると共に、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出される。ここで、「前方に」とは、「左脚Lが立脚状態から遊脚状態となったときに左脚Lの下腿L2が振り出される方向に」や「つま先側に」と換言できる。
【0095】
図19には、膝関節を伸展させて膝関節が120度から30度に変化する間、下腿外側リンク6bが下腿外側リンク6bの長手方向において大腿外側リンク6aから遠ざかる変位量Δyと、下腿外側リンク6bが大腿外側リンク6aに対して相対的に下腿外側リンク6bの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出される変位量Δxを示している。
【0096】
変位量Δyは、大腿外側リンク6aの長手方向における、下腿ピン21が屈曲側端部20bnに位置するときの下腿ピン21の中心点21bnと、下腿ピン21が伸展側端部20exに位置するときの下腿ピン21の中心点21exと、の差分に相当している。
【0097】
これに対し、変位量Δxは、大腿外側リンク6aの長手方向に対して直交する方向における、下腿ピン21が屈曲側端部20bnに位置するときの下腿ピン21の中心点21bnと、下腿ピン21が伸展側端部20exに位置するときの下腿ピン21の中心点21exと、の差分に相当している。
【0098】
図19によれば、大腿外側リンク6aの長手方向に対する大腿カム20の傾斜角度を調整することにより、変位量Δxと変位量Δyの比率を調整することができる。また、大腿カム20の長さを調整することで、変位量Δxと変位量Δyの比率を維持したまま変位量Δxと変位量Δyを増減することができる。
【0099】
(膝関節角度:30度→0度)
図14及び図15に示すように、膝関節が伸展して膝関節角度が30度から0度に変化する間、大腿ピン23は、下腿カム22の伸展カム部22cに沿って伸展側端部22exに近づくように移動する。一方、下腿カム22の伸展カム部22cと下腿ピン21との間の距離は、伸展カム部22cの全域にわたってほとんど変化しない。従って、図14及び図15に示すように、膝関節を伸展させて膝関節が30度から0度に変化する間、下腿ピン21は、大腿カム20の伸展側端部20exに実質的に拘束された状態を維持する。即ち、下腿外側リンク6bは、下腿ピン21を中心として30度回転することになる。
【0100】
(内側ユニット7)
図4に示す内側ユニット7の構成は、左脚Lの正中に対して外側ユニット6の構成と対称であるから、その詳細な説明を省略する。
【0101】
内側ユニット7は、要するに、以下のように構成されている。大腿内側リンク7aには、大腿カムが形成されている。下腿内側リンク7bには、大腿カムに沿って移動するように大腿カムと係合する下腿ピンが形成されている。下腿内側リンク7bには、下腿カムが形成されている。大腿内側リンク7aには、下腿カムに沿って移動するように下腿カムと係合する大腿ピンが形成されている。大腿カムは、大腿装着部4から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びている。下腿カムは、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部が大腿ピンから遠ざかるように形成されている。
【0102】
以上の構成により、脚装具1を患脚に装着するだけで、膝関節の伸展時に脛骨を意図的に下方及び前方に引っ張る動きが実現され、図3に示すように、大腿骨の大腿骨顆部と脛骨の上関節面との間に適度な隙間が形成されると共に、腿骨の大腿骨顆部に対して脛骨の上関節面が物理的に干渉することもなく、結果として、リハビリ時に発生する膝関節の痛みが緩和される。
【0103】
以上に、第2実施形態を説明したが、上記第2実施形態は以下の特徴を有する。
【0104】
図13に示すように、大腿外側リンク6aには、大腿カム20が形成されている。下腿外側リンク6bには、大腿カム20に沿って移動するように大腿カム20と係合する下腿ピン21が形成されている。下腿外側リンク6bには、下腿カム22が形成されている。大腿外側リンク6aには、下腿カム22に沿って移動するように下腿カム22と係合する大腿ピン23が形成されている。大腿カム20は、大腿装着部4から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びている。下腿カム22は、膝関節が伸展するにつれて下腿装着部5が大腿ピン23から遠ざかるように形成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、上述した下腿外側リンク6bの大腿外側リンク6aに対する相対的な動きが実現される。
【0105】
また、膝関節が伸展状態にあるときの膝関節角度を0度とし、膝関節が屈曲するに従って膝関節角度が増加すると定義すると、下腿カム22は、膝関節角度が90度から0度に向かって変化する間に、下腿装着部5が大腿ピン23から遠ざかるように形成されていることが好ましい。更に具体的には、下腿カム22は、膝関節角度が60度から30度に向かって変化する間に、下腿装着部5が大腿ピン23から遠ざかるように形成されていることが好ましい。以上の構成によれば、膝関節屈曲拘縮を抱えた膝関節の伸展時に痛みが発生するタイミングで変位量Δyが増加するので、当該痛みを効果的に緩和することができる。
【0106】
なお、上記第1実施形態では、図5及び図12に示すように、大腿カム10は、膝関節を伸展させて膝関節角度が60度から30度に変化する狭い区間で、下腿装着部5が大腿ピン13から遠ざかるように形成されている。これに対し、本実施形態では、図15から図18に示すように、下腿カム22は、膝関節を伸展させて膝関節角度が120度から30度に変化する広い区間で、下腿装着部5が大腿ピン23から遠ざかるように形成されている。このように、膝関節を伸展させたときに下腿装着部5が大腿ピン23から徐々に遠ざかるように構成することで、脚装具1を初めて利用するユーザーの不安を抑える効果が期待される。
【0107】
(付記1)
ユーザーの大腿に装着される大腿装着部と、
前記ユーザーの下腿に装着される下腿装着部と、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の外側(lateral)側に配置される外側ユニットと、
前記大腿装着部と前記下腿装着部を連結すると共に前記ユーザーの下肢の内側(medial)側に配置される内側ユニットと、
を備えた膝装具であって、
前記外側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿外側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される下腿外側リンクと、
を有し、
前記大腿外側リンク及び前記下腿外側リンクは、前記ユーザーの膝関節の外側側で互いに回転可能に連結されており、
前記内側ユニットは、
前記大腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される大腿内側リンクと、
前記下腿に沿って延びて前記大腿装着部によって前記大腿に固定される下腿内側リンクと、
を有し、
前記大腿内側リンク及び前記下腿内側リンクは、前記ユーザーの膝関節の内側側で互いに回転可能に連結されており、
前記ユーザーの膝関節が屈曲するにつれて、前記下腿外側リンクが前記下腿外側リンクの長手方向において前記大腿外側リンクから遠ざかると共に、前記下腿外側リンクが前記大腿外側リンクに対して相対的に前記下腿外側リンクの長手方向に対して直交する方向で前方に引き出され、かつ、前記下腿内側リンクが前記下腿内側リンクの長手方向において前記大腿内側リンクから遠ざかると共に、前記下腿内側リンクが前記大腿内側リンクに対して相対的に前記下腿内側リンクの長手方向に対して直交する方向で後方に押し込まれるように構成されている、
膝装具。
【0108】
(付記2)
前記大腿外側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿外側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿外側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿外側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記下腿カムは、前記下腿装着部から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びており、
前記大腿カムは、膝関節が屈曲するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
付記1に記載の膝装具。
【0109】
(付記3)
前記大腿内側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿内側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿内側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿内側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記下腿カムは、前記下腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、
前記大腿カムは、膝関節が屈曲するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
付記1に記載の膝装具。
【0110】
(付記4)
前記大腿外側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿外側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿外側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿外側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて前方に向かうように延びており、
前記下腿カムは、膝関節が屈曲するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
付記1に記載の膝装具。
【0111】
(付記5)
前記大腿内側リンクには、大腿カムが形成されており、
前記下腿内側リンクには、前記大腿カムに沿って移動するように前記大腿カムと係合する下腿ピンが形成されており、
前記下腿内側リンクには、下腿カムが形成されており、
前記大腿内側リンクには、前記下腿カムに沿って移動するように前記下腿カムと係合する大腿ピンが形成されており、
前記大腿カムは、前記大腿装着部から遠ざかるにつれて後方に向かうように延びており、
前記下腿カムは、膝関節が屈曲するにつれて前記下腿装着部が前記大腿ピンから遠ざかるように形成されている、
付記1に記載の膝装具。
【符号の説明】
【0112】
1 脚装具
2 膝装具
3 下腿補助具
4 大腿装着部
4a 大腿カフ
4b 大腿ベルト
5 下腿装着部
5a 下腿カフ
5b 下腿ベルト
6 外側ユニット
6a 大腿外側リンク
6b 下腿外側リンク
7 内側ユニット
7a 大腿内側リンク
7b 下腿内側リンク
10 大腿カム
10a 屈曲カム部
10b 遷移直線カム部
10c 遷移湾曲カム部
10cc 湾曲中心
10d 伸展カム部
10bn 屈曲側端部
10ex 伸展側端部
11 下腿ピン
12 下腿カム
12bn 屈曲側端部
12ex 伸展側端部
13 大腿ピン
13bn 中心点
13ex 中心点
20 大腿カム
20bn 屈曲側端部
20ex 伸展側端部
21 下腿ピン
21bn 中心点
21ex 中心点
22 下腿カム
22a 屈曲カム部
22b 湾曲カム部
22bc 湾曲中心
22c 伸展カム部
22bn 屈曲側端部
22ex 伸展側端部
23 大腿ピン
L 左脚
L1 大腿
L2 下腿
Δx 変位量
Δy 変位量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19