(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】運搬システム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240702BHJP
B25J 9/04 20060101ALI20240702BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B25J9/04 B
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2021022028
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕太郎
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-501731(JP,A)
【文献】特開平11-059815(JP,A)
【文献】特開2015-178141(JP,A)
【文献】特開平06-144509(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006673(WO,A1)
【文献】特表2018-513822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 1/00
B65G 35/00
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動ロボットにより物体を運搬する運搬システムであって、前記自律移動ロボットが、
前記物体を載せるための載置部と、
前記載置部の高さを変更する制御部と、
前記載置部の高さの変更にともなって高さが移動するアームと
を有
し、
前記制御部は、
ラッチボルトを備えたドアのレバーハンドルの上方に前記アームが位置する状態で、前記載置部を下方に移動させることにより、前記アームで前記レバーハンドルを押し下げて前記ラッチボルトを前記ドアの内部に引き込ませ、
前記アームを前記レバーハンドルに引っ掛けた状態で、前記自律移動ロボットを走行させることにより、前記ドアを開ける
運搬システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記アームの高さが操作対象に対応する高さになるよう前記載置部の高さを変更する
請求項1に記載の運搬システム。
【請求項3】
前記制御部はさらに前記自律移動ロボットに対する前記アームの先端の水平方向の相対位置を制御する
請求項1又は2に記載の運搬システム。
【請求項4】
前記アームは、水平方向に延びる軸部と、当該軸部の先端で当該軸部と垂直な方向に延びる突起部とを有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運搬システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記軸部を回転軸として、前記突起部を回転させる
請求項4に記載の運搬システム。
【請求項6】
前記アームは、前記載置部に設けられている
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の運搬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は運搬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アームを備えたロボットが知られている。例えば、特許文献1は、走行部を備えた荷台と、荷物をハンドリングするためのアーム機構とを有するロボットについて開示している。このロボットのアーム機構は、荷物ハンドリング部と、関節部と、アーム連結ブロックと、アーム保持部とを含む。そして、アームの先端である荷物ハンドリング部の高さは、アーム保持部に上下移動可能に連結されたアーム連結ブロックの高さの変更と、関節部の回転とによって、調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたロボットでは、荷物ハンドリング部の高さを調整するために専用の複雑な構造を備えたアームが採用されており、アームのコストが増大してしまう。
【0005】
本開示は、上記した事情を背景としてなされたものであり、ロボットのアームのコストを抑制しつつ、アームの位置を変更することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本開示の一態様は、自律移動ロボットにより物体を運搬する運搬システムであって、前記自律移動ロボットが、前記物体を載せるための載置部と、前記載置部の高さを変更する制御部と、前記載置部の高さの変更にともなって高さが移動するアームとを有する運搬システムである。
この運搬システムによれば、載置部の高さを制御するための構成が、アームの高さの変更にも利用される。このため、アーム自体は、高さを変えるための構成を備える必要がなく、簡易な構成とすることができる。このため、ロボットのアームのコストを抑制しつつ、アームの位置を変更することができる。
【0007】
上記の一態様において、前記制御部は、前記アームの高さが操作対象に対応する高さになるよう前記載置部の高さを変更してもよい。
このようにすることで、アームの高さを、操作対象を操作するために適切な高さに調整することができる。
【0008】
上記の一態様において、前記制御部はさらに前記自律移動ロボットに対する前記アームの先端の水平方向の相対位置を制御してもよい。
このようにすることで、自律移動ロボット自体の位置を移動させなくても、アームの先端の水平方向の位置を調整することができる。
【0009】
上記の一態様において、前記アームは、水平方向に延びる軸部と、当該軸部の先端で当該軸部と垂直な方向に延びる突起部とを有してもよい。
このようにすることで、取っ手などの操作対象にアームを容易に引っ掛けることができる。
【0010】
上記の一態様において、前記制御部は、前記軸部を回転軸として、前記突起部を回転させてもよい。
このようにすることで、突起部を任意の向きに向けることができる。
【0011】
上記の一態様において、前記アームは、前記載置部に設けられてもよい。
このようにすることで、載置部の高さの変動範囲と同じ範囲でアームの高さを変動させることができる。
【0012】
上記の一態様において、前記操作対象はドアの取っ手であってもよい。
この場合、自律移動ロボットは、ドアの開閉を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ロボットのアームのコストを抑制しつつ、アームの位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る自律移動ロボットの概略的構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る自律移動ロボットの概略的構成を示す側面図である。
【
図3】実施形態に係る自律移動ロボットの概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【
図4A】アームの先端が載置部の水平方向の外側に突き出た状態の載置部の平面図である。
【
図4B】アームの先端が載置部側に引き込まれた状態の載置部の平面図である。
【
図5】実施の形態に係る自律移動ロボットの制御装置の機能構成の一例を示したブロック図である。
【
図6】実施の形態に係る自律移動ロボットによるアームを用いた操作対象の操作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係る自律移動ロボットのアームの位置が操作対象の高さに対応する位置となっている様子の一例を示す模式図である。
【
図8A】開き戸であるドアを開ける様子を上から見た模式図である。
【
図8B】開き戸であるドアを開ける様子を上から見た模式図である。
【
図9A】引き戸であるドアを開ける様子を上から見た模式図である。
【
図9B】引き戸であるドアを開ける様子を上から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る自律移動ロボット10の概略的構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る自律移動ロボット10の概略的構成を示す側面図である。
図3は、本実施形態に係る自律移動ロボット10の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施形態に係る自律移動ロボット10は、例えば、住宅、施設、倉庫、工場、屋外などの移動環境内を自律的に移動するロボットであり、自律移動ロボット10により物体を支持して運搬する運搬システムに属してもよい。本実施形態に係る自律移動ロボット10は、移動可能な移動部110と、上下方向へ伸縮する伸縮部120と、載置された物体を支持するための載置部130と、アーム140と、アーム駆動機構150と、移動部110、伸縮部120、及びアーム140の制御を含む、自律移動ロボット10の制御を行う制御装置100と、センサ160と、無線通信部170とを備えている。
【0017】
移動部110は、ロボット本体111と、ロボット本体111に回転可能に設けられた左右一対の駆動車輪112及び前後一対の従動車輪113、各駆動車輪112を回転駆動する一対のモータ114と、を有している。各モータ114は減速機などを介して、各駆動車輪112を回転させる。各モータ114は、制御装置100からの制御信号に応じて、各駆動車輪112を回転させることで、ロボット本体111の前進移動、後進移動、及び回転を可能にする。これにより、ロボット本体111は、任意の位置に移動することができる。なお、上記移動部110の構成は一例であり、これに限定されない。例えば、移動部110の駆動車輪112及び従動車輪113の数は任意でよく、ロボット本体111を任意の位置に移動させることができれば任意の構成が適用可能である。
【0018】
伸縮部120は、上下方向へ伸縮する伸縮機構である。伸縮部120は、テレスコピック型の伸縮機構として構成されていてもよい。伸縮部120の上端部には、載置部130が設けられており、伸縮部120の動作により、載置部130が上昇又は下降する。伸縮部120は、モータなどの駆動装置121を備えており、駆動装置121の駆動により伸縮する。すなわち、駆動装置121の駆動により、載置部130が上昇又は下降する。駆動装置121は、制御装置100からの制御信号に応じて駆動する。なお、自律移動ロボット10において、伸縮部120の代わりに、ロボット本体111の上側に設けられた載置部130の高さを制御する公知の任意の機構が用いられてもよい。
【0019】
載置部130は、伸縮部120の上部(先端)に設けられている。載置部130は、モータなどの駆動装置121により昇降し、本実施の形態では、載置部130は、自律移動ロボット10により運搬される物体を載せたり、当該物体を支持して持ち上げたりするために使用される。運搬のため、自律移動ロボット10は、物体を載置部130で支持したまま、物体とともに移動する。これにより、自律移動ロボット10は、物体を運搬する。自律移動ロボット10は、下部に空間がある物体(例えば、脚が付いたタンス、椅子、テーブル、脚が付いた棚などの家具)の当該空間に入り込み、下から載置部130により物体を持ち上げ、物体を載置部130で支持したまま、物体とともに移動してもよい。なお、自律移動ロボット10による運搬中に、自律移動ロボット10の移動が行われなくてもよい。すなわち、運搬は、載置部130の昇降による上下方向の物体の移動であってもよい。
【0020】
載置部130は、例えば、上面となる板材と下面となる板材とで構成されており、上面と下面との間に、アーム140及びアーム駆動機構150を収める空間を有している。本実施の形態では、この板材の形状、すなわち、載置部130の形状は、例えば平らな円盤状であるが、他の任意の形状であってもよい。なお、より詳細には、本実施の形態では、アーム140の移動の際に、アーム140の突起部142が載置部130にぶつからないように、載置部130にはアーム140の動線に沿って切り欠き131が設けられている。なお、切り欠き131は、少なくとも載置部130の上面に設けられている。
【0021】
載置部130には、載置部130から水平方向に出し入れされるアーム140が設けられている。アーム140は、関節を有さない棒状のアームである。具体的には、アーム140は、水平方向に延びる軸部141と、当該軸部141の先端で当該軸部141と垂直な方向に延びる突起部142とを有する。すなわち、本実施の形態では、アーム140は、L字形状を有している。また、載置部130には、制御装置100からの制御信号に応じて、アーム140の水平方向(すなわち、軸部141に沿った方向、さらに換言するとアーム140の長手方向)の移動及び軸部141の回転を行うアーム駆動機構150が設けられている。アーム駆動機構150は、例えば、モータ及びリニアガイドを含み、アーム140の水平方向の移動及び軸部141の回転を行うが、アーム駆動機構150として、これらの動作を行うための公知の任意の機構が用いられてもよい。
【0022】
このように、アーム140は、水平方向に移動可能であるとともに、軸部141の回転に伴い突起部142が回転可能である。すなわち、軸部141を回転軸として、突起部142が回転可能である。
なお、本実施の形態では、載置部130の高さを制御するための構成をアーム140の高さの変更にも用いているため、アーム140自体は、アーム140の先端の高さを変更する構成を備えていない。
【0023】
ここで、アーム140の水平方向の移動について図に示す。
図4Aは、アーム140の先端が載置部130の水平方向の外側に突き出た状態の載置部130の平面図である。また、
図4Bは、アーム140の先端が載置部130側に引き込まれた状態の載置部130の平面図である。なお、載置部130の切り欠き131は、図に示されるように、載置部130の外周端からアーム140の軸に沿って延びた所定の長さの切り欠きである。切り欠き131の終端の位置は、具体的には、例えば、
図4Bに示されるように、アーム140が載置部130側に最も引き込まれた際のアーム140の先端(突起部142)の位置に相当する位置である。このように、載置部130に切り欠き131があるため、アーム140の突起部142を載置部130の外周の内側まで引き込むことができる。
【0024】
なお、本実施形態では、突起部142が上側を向いた場合、切り欠き131がないとアーム140の動作に支障があるため、切り欠き131が設けられているが、アーム140の動作に支障がない場合には、切り欠き131が設けられていなくてもよい。
【0025】
センサ160は、自律移動ロボット10の任意の位置に設置されており、アーム140による操作対象を検出するセンサである。例えば、センサ160は、カメラであってもよい。センサ160の出力は、制御装置100に入力される。
【0026】
無線通信部170は、必要に応じてサーバ又は他のロボットなどと通信するために、無線通信する回路であり、例えば、無線送受信回路及びアンテナを含む。なお、自律移動ロボット10が他の機器と通信を行わない場合には、無線通信部170が省略されてもよい。
【0027】
制御装置100は、自律移動ロボット10を制御する装置であり、プロセッサ101、メモリ102、及びインタフェース103を備える。プロセッサ101、メモリ102、及びインタフェース103は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0028】
インタフェース103は、移動部110、伸縮部120、アーム駆動機構150、無線通信部170などの他の装置と通信するために使用される入出力回路である。
【0029】
メモリ102は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ102は、プロセッサ101により実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び自律移動ロボット10の各種処理に用いるデータなどを格納するために使用される。
【0030】
プロセッサ101は、メモリ102からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、後述する
図5に示す各構成要素の処理を行う。具体的には、プロセッサ101は、操作対象認識部180及び動作制御部181の処理を行う。
【0031】
プロセッサ101は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。
このように、制御装置100は、コンピュータとして機能する装置である。
【0032】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0033】
図5は、自律移動ロボット10の制御装置100の機能構成の一例を示したブロック図である。
図5に示すように、制御装置100は、操作対象認識部180と動作制御部181とを有する。
【0034】
操作対象認識部180は、アーム140による操作対象を認識する。操作対象認識部180は、センサ160からの出力データを解析し、操作対象を認識する。例えば、操作対象認識部180は、センサ160から出力された画像データに対し、画像認識処理を行うことにより、操作対象を認識する。操作対象認識部180は、操作対象を認識することにより、具体的には、例えば、操作対象の種類及び操作対象の位置などを特定する。
【0035】
動作制御部181は、自律移動ロボット10の動作を制御する。すなわち、動作制御部181は、移動部110、伸縮部120、及びアーム140の動作を制御する。動作制御部181は、移動部110の各モータ114に制御信号を送信することで、各駆動車輪112の回転を制御し、ロボット本体111を任意の位置に移動させることができる。また、動作制御部181は、伸縮部120の駆動装置121に対して制御信号を送信することで、載置部130の高さを制御することができる。また、動作制御部181は、アーム駆動機構150に対して制御信号を送信することで、アーム140の水平方向の移動及び突起部142の回転を制御することができる。すなわち、動作制御部181は、自律移動ロボット10に対するアーム140の先端(突起部142)の水平方向の相対位置を制御することができ、また、突起部142の向きを制御することができる。
【0036】
動作制御部181は、駆動車輪112に設けられた回転センサにより検出された駆動車輪112の回転情報などに基づいて、フィードバック制御、ロバスト制御等の周知の制御を行うことで、自律移動ロボット10の移動を制御してもよい。また、動作制御部181は、自律移動ロボット10に設けられたカメラや超音波センサなどの距離センサにより検出された距離情報、移動環境の地図情報などの情報に基づいて、移動部110を制御することで、自律移動ロボット10を自律的に移動させてもよい。なお、アーム140による操作対象を検出するためのセンサ160は、自律移動ロボット10の移動の際に移動環境をセンシングするために用いられるものであってもよい。
【0037】
また、動作制御部181は、操作対象認識部180による認識結果に基づいて、自律移動ロボット10の動作を制御する。例えば、動作制御部181は、アーム140の先端の位置が操作対象の位置になるように自律移動ロボット10を制御する。ここで、アーム140の先端は、自律移動ロボット10自体の移動により水平面の任意の位置に移動する。また、アーム140の先端は、載置部130の高さの変更により、垂直方向の任意の位置に移動する。そして、アーム140の先端は、アーム140の水平方向の移動、すなわち、アーム140の出し入れにより、この水平方向の任意の位置に移動する。このため、動作制御部181は、移動部110、伸縮部120、及びアーム140のうちのいずれか1つ以上の動作を制御することにより、アーム140の先端の位置が操作対象の位置になるようにする。なお、上述の通り、自律移動ロボット10自体の移動により、アーム140の先端は水平面の任意の位置に移動可能であるため、アーム140のアーム140の水平方向の移動、すなわち、アーム140の出し入れは、作業において必要とされない場合には省略されてもよい。
【0038】
また、動作制御部181は、アーム140を用いて操作対象を操作するための自律移動ロボット10の動作を制御する。例えば、動作制御部181は、ドアの開閉を行うために、ドアの取っ手(操作対象)にアーム140の先端(突起部142)を引っ掛ける動作を行うよう制御してもよいし、ドアの取っ手にアーム140の先端を引っ掛けた状態で移動部110により走行するよう制御してもよい。また、動作制御部181は、他の機器を操作するためのボタン(例えば、エレベータのボタンなど)をアーム140の先端で押す動作を行うよう制御してもよい。また、動作制御部181は、アーム140の突起部142を運搬対象の物体の底面にひっかけて、載置部130とラック等との間で当該物体を受け渡すよう制御してもよい。
【0039】
このように、本実施形態では、アーム140自体を3次元に動かすことなく、アーム140の位置を任意の位置に変更することができる。特に、本実施形態では、載置部130の高さを制御するための構成をアーム140の高さの変更のために流用している。すなわち、動作制御部181は、載置部130上の物体を昇降させるために伸縮部120を制御してもよいし、アーム140の高さを変更するために、伸縮部120を制御してもよい。このため、本実施形態によれば、アーム140自体は、高さを変えるための構成を備える必要がない。すなわち、関節を備えた高度なマニピュレータを用いずとも、簡易な構成であるアーム140によって、任意の位置にある操作対象を操作することができる。
【0040】
次に、自律移動ロボット10によるアーム140を用いた操作対象の操作の流れの例について、具体例を参照しながら、フローチャートを用いて説明する。
図6は、自律移動ロボット10によるアーム140を用いた操作対象の操作の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、操作対象は、ドアの取っ手であり、自律移動ロボット10がドアを開ける動作の流れについて説明する。
【0041】
ステップS100において、操作対象認識部180が、アーム140による操作対象を認識する処理を行う。ここでは、操作対象認識部180は、ドア90の取っ手91(
図7参照)の位置を特定する。なお、操作対象認識部180は、さらに、操作対象が、開き戸の取っ手であるか、引き戸の取っ手であるかを識別してもよい。
【0042】
次に、ステップS101において、動作制御部181は、アーム140の先端の位置がドア90の取っ手91に対応する位置になるよう、自律移動ロボット10を制御する。特に、動作制御部181は、
図7に示すように、アーム140の高さ(アーム140の先端の高さ)が、ドア90の取っ手91に対応する高さとなるように、載置部130の高さを制御する。すなわち、動作制御部181は、アーム140の高さが、ドア90の取っ手91に対応する高さとなるように、伸縮部120を制御する。なお、動作制御部181は、伸縮部120の制御に限らず、アーム140の先端の位置がドア90の取っ手91に対応する位置になるよう、移動部110又はアーム140の制御を行ってもよい。
【0043】
次に、ステップS102において、動作制御部181は、アーム140の先端(突起部142)をドア90の取っ手91に引っ掛けるよう自律移動ロボット10を制御する。例えば、動作制御部181は、突起部142を回転させることにより、突起部142を取っ手91に引っ掛けてもよいし、アーム140の高さを変更することによりアーム140の先端を取っ手91に引っ掛けてもよいし、水平面におけるアーム140の位置を移動させることによりアーム140の先端を取っ手91に引っ掛けてもよい。
【0044】
なお、
図7に示した例では、取っ手91は、水平方向に延在するバーであるが、取っ手91の形状はこれに限られない。例えば、取っ手91は、垂直方向に延在するバーであってもよい。また、ドアが引き戸である場合などには、取っ手91は、ドアに設けられた穴であってもよい(
図9A及び
図9B参照)。
【0045】
また、
図7に示すように、ドア90がラッチボルト92を備える場合には、動作制御部181は、レバーハンドルである取っ手91を押し下げることにより、ラッチボルト92をドア90内部に引き込ませてもよい。この場合、動作制御部181は、例えば、レバーハンドルの上方に位置するアーム140を、伸縮部120に対する制御により、下方に移動させることにより、レバーハンドルを押し下げてもよい。
【0046】
次に、ステップS103において、動作制御部181は、自律移動ロボット10がドア90の移動方向に沿って移動するよう移動部110を制御する。
【0047】
図8A及び
図8Bは、自律移動ロボット10が開き戸であるドア90を開ける様子を上から見た模式図である。
図8Aは、ステップS102の処理が行われた時点の様子を示し、
図8Bは、ステップS103の処理が行われた時点の様子を示す。
図8A及び
図8Bに示すように、ドア90が開き戸である場合、動作制御部181は、円弧を描くように自律移動ロボット10が移動するよう制御する。これにより、開き戸であるドア90が開くこととなる。
【0048】
図9A及び
図9Bは、引き戸であるドア90を開ける様子を上から見た模式図である。
図9Aは、ステップS102の処理が行われた時点の様子を示し、
図9Bは、ステップS103の処理が行われた時点の様子を示す。
図9A及び
図9Bに示すように、ドア90が引き戸である場合、動作制御部181は、ドア90が開閉する方向と平行に自律移動ロボット10が移動するよう制御する。これにより、引き戸であるドア90が開くこととなる。
【0049】
以上述べたステップにより、自律移動ロボット10は、ドアを開けることができる。なお、自律移動ロボット10は、ドアを開けた後、ドアを通過するよう移動部110を制御してもよい。
【0050】
なお、上述した例では、ドア90を開く場合について説明したが、ステップS103において、動作制御部181は、ドア90を閉じるために移動部110を制御してもよい。また、動作制御部181は、操作対象認識部180による認識結果により、ステップS103における移動方向を決定してもよい。例えば、操作対象の取っ手が、閉じた状態の開き戸の取っ手であると操作対象認識部180により認識された場合、動作制御部181は、
図8A及び
図8Bに示すように、開き戸を開くための移動を行うよう制御してもよい。同様に、例えば、操作対象の取っ手が、閉じた状態の引き戸の取っ手であると操作対象認識部180により認識された場合、動作制御部181は、
図9A及び
図9Bに示すように、引き戸を開くための移動を行うよう制御してもよい。
【0051】
以上、実施の形態について説明した。本実施形態にかかる自律移動ロボット10は、上述した通り、物体を載せるための載置部130と、載置部130の高さを変更する動作制御部181と、載置部130の高さの変更にともなって高さが移動するアーム140とを有する。すなわち、本実施形態では、載置部130の高さを制御するための構成をアーム140の高さの変更にも利用することができる。このため、本実施形態によれば、アーム140自体は、高さを変えるための構成を備える必要がなく、簡易な構成とすることができる。したがって、ロボットのアームのコストを抑制しつつ、アームの位置を変更することができる。
【0052】
また、動作制御部181は、アーム140の高さが操作対象に対応する高さになるよう載置部130の高さを変更する。このため、アーム140の高さを、操作対象を操作するために適切な高さに調整することができる。また、動作制御部181は、自律移動ロボット10に対するアーム140の先端の水平方向の相対位置を制御する。このため、自律移動ロボット10自体の位置を移動させなくても、アーム140の先端の水平方向の位置を調整することができる。
【0053】
また、アーム140は、軸部141の先端に突起部142を有するため、取っ手などの操作対象にアーム140を容易に引っ掛けることができる。また、動作制御部181は、突起部142を回転させることができるため、突起部142を任意の向きに向けることができる。このため、例えば、取っ手にアーム140を引っ掛ける際に都合のよい向きに、突起部142の向きを調整することができる。また、アーム140は、載置部130に設けられているため、載置部130の高さの変動範囲と同じ範囲でアーム140の高さを変動させることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、アーム140は、載置部130の内部に設けられたが、アーム140は、載置部130の上面又は下面に設けられてもよいし、伸縮部120の外面であって、伸縮部120の動作により高さが変動する任意の部分に設けられてもよい。また、上述した実施の形態では、アーム140の先端には突起部142が設けられているが、アーム140の先端は、フックであってもよいし、グリッパであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 自律移動ロボット
90 ドア
91 手
92 ラッチボルト
100 制御装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 インタフェース
110 移動部
111 ロボット本体
112 駆動車輪
113 従動車輪
114 モータ
120 伸縮部
121 駆動装置
130 載置部
140 アーム
141 軸部
142 突起部
150 アーム駆動機構
160 センサ
170 無線通信部
180 操作対象認識部
181 動作制御部