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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】塗型剤試験装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 3/00 20060101AFI20240702BHJP
   B22C 9/00 20060101ALI20240702BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20240702BHJP
   G01N 19/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B22C3/00 Z
B22C9/00 E
B22D17/20 D
G01N19/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021039099
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138933
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 啓丞
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237078(JP,A)
【文献】特開2018-103237(JP,A)
【文献】特開2010-184253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 3/00,9/00
B22D 17/20
G01N 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ブロックの表面に塗型剤を塗布し、筒状の金属型枠を前記金属型枠の一端部を塞ぐように前記金属ブロックに載置し、前記金属型枠内に溶湯を流し込み凝固させた後に、前記金属型枠に対して前記金属ブロックから離れるように引っ張りまたは押し出しの力を加えることにより、前記塗型剤の性能を試験する塗型剤試験装置であって、
前記金属型枠が前記金属ブロックに載置される際に、前記金属型枠における枠部が予め定められた位置に配置されるように、前記枠部を位置決めする枠位置決め部と、
前記金属型枠が前記金属ブロックに載置される際に、前記枠部に設けられた部位であって前記力を付与する駆動部が連結される連結部が予め定められた位置に配置されるように、前記連結部を位置決めする連結位置決め部と、
前記枠位置決め部と前記連結位置決め部とを有する型枠位置決め部材と、
備える塗型剤試験装置。
【請求項2】
前記枠位置決め部は、前記枠部の外周面における全周のうちの一部に前記枠部の外側から接し、前記枠部の形状に沿う形状をなす枠接触部を有する、請求項1に記載の塗型剤試験装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記枠部の外周面から突出して形成されており、
前記連結位置決め部は、前記連結部に接することによって前記枠部の前記金属ブロックに対する相対回転を規制する連結接触部を有する、請求項1または請求項2に記載の塗型剤試験装置。
【請求項4】
前記型枠位置決め部材を前記金属ブロックに対して移動可能とする移動機構部をさらに有する請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の塗型剤試験装置。
【請求項5】
前記表面と対面し、前記金属ブロックが前記金属型枠側へ向かう方向へ移動することを規制する移動規制部をさらに有する請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の塗型剤試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗型剤試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイカスト鋳造方法では、溶湯による金型の焼付けを防止すると共に、製品成形後に金型からの剥離を容易にするために、金型の内面に予め塗型剤が塗布される。この塗型剤における密着性や強度といった性能を調べる試験方法が知られている。例えば、特許文献1に記載の方法では、板状の金属ブロック(以下、「板状ブロック」という)に塗型剤を塗布し、筒状の金属ブロック(以下、「筒状ブロック」という)の下端部を塞ぐように板状ブロック上に載置し、溶湯を筒状ブロック内に注湯し、溶湯を固化させて鋳物を成形する。その後、筒状ブロックに対して引っ張りまたは押し出しの力を加え、そのときの荷重や、筒状ブロックおよび鋳物を除去した後の板状ブロックの表面の状態により、塗型剤の性能評価を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-9971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような塗型剤の性能評価においては、正確な評価を行うために、筒状ブロックに対して力を加える位置および方向が所定の位置および方向であることが望ましい。しかし、上記特許文献1に記載の方法では、力を加える位置や方向を調整するのは作業者の熟練度に依存しており、特に複数回の試験を繰り返し行い評価する場合には、評価精度が低くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、塗型剤試験装置が提供される。この塗型剤試験装置は、金属ブロックの表面に塗型剤を塗布し、筒状の金属型枠を前記金属型枠の一端部を塞ぐように前記金属ブロックに載置し、前記金属型枠内に溶湯を流し込み凝固させた後に、前記金属型枠に対して前記金属ブロックから離れるように引っ張りまたは押し出しの力を加えることにより、前記塗型剤の性能を試験する。
塗型剤試験装置は、前記金属型枠が前記金属ブロックに載置される際に、前記金属型枠の枠部が予め定められた位置に配置されるように、前記枠部を位置決めする枠位置決め部と、前記金属型枠が前記金属ブロックに載置される際に、前記枠部に設けられた部位であって前記力を付与する駆動部が連結される連結部が予め定められた位置に配置されるように、前記連結部を位置決めする連結位置決め部と、前記枠位置決め部と前記連結位置決め部とを有する型枠位置決め部材と、を備える。
上記形態の塗型剤試験装置は、枠位置決め部と連結位置決め部とを有しており、枠部と連結部との両方が金属ブロック上の予め定められた位置に配置されるように、金属型枠全体を金属ブロック上に設置することができる。これにより、特に複数回の試験を繰り返し行い評価する場合に、金属型枠に対して引っ張りまたは押し出しの力を加える際に、力を加える位置や方向を、作業者の熟練度に依存することなく正確かつほぼ一定にできるので、測定誤差が抑制されて評価精度を向上させることができる。また、枠位置決め部と連結位置決め部とを別部材で構成する場合と比較して、装置構成を簡単かつ小型化することができる。
(2)上記形態において、前記枠位置決め部は、前記枠部の外周面における全周のうちの一部に前記枠部の外側から接し、前記枠部の形状に沿う形状をなす枠接触部を有してもよい。この形態によれば、枠接触部は枠部の形状に沿う形状をなしているため、枠接触部が、枠部の外周面における全周のうちの少なくとも一部に枠部の外側から接することで、容易に枠部を設置位置に位置決めすることができる。
(3)上記形態において、前記連結部は、前記枠部の外周面から突出して形成されており、前記連結位置決め部は、前記連結部に接することによって前記枠部の前記金属ブロックに対する相対回転を規制する連結接触部を有してもよい。この形態によれば、連結接触部が連結部に対して周方向に接することによって枠部の金属ブロックに対する相対回転が規制される。したがって、容易に連結部を設置位置に位置決めすることができる
)上記形態において、前記型枠位置決め部材を前記金属ブロックに対して移動可能とする移動機構部をさらに有してもよい。この形態によれば、型枠位置決め部材を金属ブロックの表面に近づけたり遠ざけたりできるので、作業性を向上させることができる。例えば、金属型枠に力を加える際に、型枠位置決め部材を遠ざけておくことで、駆動部との干渉を抑制できる。
)上記形態において、前記表面と対面し、前記金属ブロックが前記金属型枠側へ向かう方向へ移動することを規制する移動規制部をさらに有してもよい。この形態によれば、移動規制部により、金属ブロックの金属型枠側へ向かう方向への移動が規制される。このため、駆動部によって金属型枠に力が作用したとき、金属ブロックが金属型枠側へ動いて傾いてしまうことを抑制でき、正確な試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態における塗型剤試験装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態における塗型剤試験装置の概略構成を示す側面図である。
図3】塗型剤の性能試験手順を示すフローチャートである。
図4】塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。
図5】塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。
図6】塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。
図7】塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。
図8】塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。
図9】塗型剤試験装置とモータとの連結状態を模式的に示す平面図である。
図10】塗型剤試験装置とモータとの連結状態を模式的に示す側面図である。
図11】筒状ブロックの位置決め手順の各工程を説明するための平面図である。
図12】筒状ブロックの位置決め手順の各工程を説明するための平面図である。
図13】筒状ブロックの位置決め手順の各工程を説明するための平面図である。
図14】筒状ブロックが筒状ブロック位置決め部材に位置決めされた状態における連結部周辺を示す斜視図である。
図15】筒状ブロックの位置決め手順の各工程を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.塗型剤試験装置101の構成:
本開示の第1実施形態における塗型剤試験装置101について、図1図15を参照して説明する。ダイカスト鋳造方法において、溶湯による金型の焼付けを防止すると共に、製品成形後に金型からの剥離を容易にするために、金型の内面には予め塗型剤(離型剤または潤滑剤ともいわれる)が塗布される。第1実施形態における塗型剤試験装置101は、塗型剤における、金型を繰り返し使用する際の金型への密着性や強度、適度な離型抵抗であるか等の性能を調べる試験(以下、単に「性能試験」ともいう)において用いられる。離型抵抗は、成形した鋳物(以下、成形品という)が金型に密着して残存しようとする力であり、離型抵抗が小さいほど成形品を離型しやすい。成形品を金型から安定して取り出すために、離型抵抗がどのぐらいの力となるのかを把握する必要がある。
【0009】
まず、第1実施形態の性能試験の概略と、試験で用いる金属ブロックについて簡単に説明する。第1実施形態の性能試験では、板状ブロック40の表面に試験対象となる塗型剤が塗布され、筒状ブロック50(図5参照)が筒状ブロック50の一端部を塞ぐように板状ブロック40に載置され、筒状ブロック50内に溶湯が流し込まれて凝固した後に、筒状ブロック50に対して引っ張りまたは押し出しの力が加えられることにより、塗型剤の性能が試験される。塗型剤試験装置101の詳細動作については、性能試験の詳細手順と併せて後述する。
【0010】
この性能試験は、板状ブロック40上の予め定められた位置(以下、「設置位置」ともいう)に筒状ブロック50を載置した状態で実施される。なお、板状ブロック40は、金属材料からなる平板であり、「金属ブロック」に相当する。筒状ブロック50は、金属材料からなる円筒体であり、「金属型枠」に相当する。
【0011】
筒状ブロック50の構成について、図14を参照して簡単に説明する。図14は、筒状ブロック50が筒状ブロック位置決め部材30により板状ブロック40上に位置決めされた状態における連結部52周辺を模式的に示す斜視図である。図14に示すように、筒状ブロック50は、円筒状をなす枠部51と、連結部52とを有している。連結部52は、枠部51の外周から径方向の外側に突出して枠部51と一体に設けられている。連結部52は、円柱部53と、円環フック部54とで構成されている。円柱部53は、その軸方向が枠部51の径方向に一致する向きで枠部51から径方向の外側に突出して設けられている。円環フック部54は、円柱部53からさらに径方向の外側に突出している。
【0012】
図1は、本開示の第1実施形態における塗型剤試験装置101の概略構成を示す斜視図である。図2は、本開示の第1実施形態における塗型剤試験装置101の概略構成を示す側面図であって、後述する筒状ブロック位置決め部材30が定位置である初期位置(=後退位置)にある状態を示している。図1図2において、試験時に塗型剤試験装置101に載置される板状ブロック40を併せて図示している。
【0013】
図1図2に示すように、塗型剤試験装置101は、板状ブロックセット部10と、筒状ブロック位置決め機構部20とを備えている。以下、図2における左方向であって後述する操作ハンドル21および筒状ブロック位置決め部材30の前進方向を「前」とし、図2における右方向であって操作ハンドル21および筒状ブロック位置決め部材30の後退方向を「後ろ」とする。また、前後方向に直交する方向を左右方向とし、図2において、紙面奥側を「右」とし、紙面手前側を「左」とする。
【0014】
板状ブロックセット部10は、ベース板11と、2つの係止部12,13とを有している。ベース板11は、直方体の板状部材である。前係止部12は、ベース板11の前端部に設けられている。後係止部13は、ベース板11の後端部に設けられている。各係止部12,13は、互いに同じ形状であり、前後方向において対向して設けられている。各係止部12,13は、共に板状をなす立設部14と水平部15とで構成され、側面視L字形状をなしている。立設部14は、ベース板11に固定され、ベース板11から鉛直に立設されている。水平部15は、立設部14の上端に接続され、水平方向に延びて形成されている。前係止部12の水平部15は、後方へ延びて形成されている。後係止部13の水平部15は、前方へ延びて形成されている。
【0015】
ベース板11の上面から各水平部15の下面までの高さは、ベース板11の上面と各水平部15の下面との間に板状ブロック40を差し込むことができる程度に、板状ブロック40の厚みより僅かに大きくなっている。2つの係止部12,13により、板状ブロック40の上方向への移動が規制される。すなわち、係止部12,13は、板状ブロック40の上方への浮き防止として機能する。係止部12,13は、「移動規制部」に相当する。
【0016】
筒状ブロック位置決め機構部20は、操作ハンドル21、ロックハンドル22、リニアブッシュ23、リニアシャフト24、2つのサイドレール25、および筒状ブロック位置決め部材30(以下、単に「位置決め部材30」ともいう)を備えている。
【0017】
リニアブッシュ23は、直方体をなしており、脚部26により所定高さに設けられている。リニアブッシュ23は、内蔵された図示しないボールベアリングにより、転がりを用いてリニアシャフト24の直線運動部をガイドする。リニアシャフト24とリニアブッシュ23とで、周知のリニアガイド機構が構成されている。リニアシャフト24は、水平方向である前後方向に直線運動が可能である。リニアシャフト24およびリニアブッシュ23は、「移動機構部」に相当する。
【0018】
操作ハンドル21は、リニアシャフト24の後端に、連結部材27を介して接続されている。操作ハンドル21は、棒状部材であり、連結部材27から鉛直方向上向きに立設されている。作業者は、操作ハンドル21を握って、操作ハンドル21を前後方向に操作することで、リニアシャフト24および位置決め部材30を水平方向に前進および後退させることができる。
【0019】
ロックハンドル22は、リニアシャフト24の前後方向への直進動作を、ロックおよびアンロックするためのハンドルである。ロックハンドル22は、リニアブッシュ23内に設けられる周知のネジマウントロック機構を構成するネジである。ネジとしてのロックハンドル22を締めることで、リニアブッシュ23内に設けられる図示しないマウント内の側面とロックハンドル22の端面とでリニアシャフト24を挟み込むことでリニアシャフト24の動作をロックする。つまり、ロックハンドル22を締めることで、リニアシャフト24は直線運動不能なロック状態とされ、ロックハンドル22を緩めることで、リニアシャフト24は直線運動可能なアンロック状態とされる。
【0020】
位置決め部材30は、リニアシャフト24の前端に、固定部材28を介して一体に設けられている。位置決め部材30は、板状部材である。位置決め部材30の前端において左右方向の略中間には、平面視半円形状をなす凹部31が、板状部材の前端から後ろ側へ切り欠かれて形成されている。凹部31の内周面32は、枠部51の外周面における全周のうちの略半分に枠部51の外側から接することが可能に、筒状ブロック50の枠部51の外周形状に沿う形状をなしている(図5参照)。凹部31の内周面32は、筒状ブロック50における枠部51が予め定められた位置に配置されるように枠部51を位置決めする「枠接触部」に相当する。
【0021】
位置決め部材30の前右端部33は、上下方向になだらかに湾曲し側面視4分の1程度の円弧形状をなす曲面34を有している。この曲面形状は、筒状ブロック50の連結部52(円柱部53)の外周面の一部に沿う形状となっている(図14参照)。この曲面34が、連結部52に対して周方向に接することによって、枠部51の板状ブロック40に対する相対回転が規制される。曲面34は、連結部52が予め定められた位置に配置されるように連結部52を位置決めする「連結接触部」に相当する。なお、位置決め部材30は、「型枠位置決め部材」、「枠位置決め部」、および「連結位置決め部」に相当する。
【0022】
各サイドレール25は、リニアシャフト24の左右側方に配置されて、前後方向に延びて形成されている。各サイドレール25は、その前端が位置決め部材30の後端に接続し、その後端が連結部材27に接続している。各サイドレール25は、いわば補強部材であって、板状の位置決め部材30が水平に安定して維持されるように補強している。
【0023】
A2.塗型剤試験装置101による試験手順:
次に、上記塗型剤試験装置101を用いた塗型剤の試験手順について、図3図8を参照しつつ説明する。図3は、塗型剤の性能試験手順を示すフローチャートである。図4図8は、塗型剤の性能試験手順の各工程を説明するための模式図である。図3に示すように、まず、板状ブロック40の上面に対して、所定濃度に希釈したダイカスト塗型剤を、所定の塗布方法により塗布する(工程S1)。ダイカスト塗型剤としては、例えばハイプレッシャーダイカストで主に用いられる液体の離型剤や、ロープレッシャーダイカストで主に用いられる液体ではない塗型剤であって、水、骨材、および水ガラス等を攪拌させたものなどがある。なお、塗布方法としては、単純にホースを用いてダイカスト塗型剤をかける方法や、泡状にして塗布する方法等、実際のダイカスト成形時に用いられる塗型剤の塗布方法を用いることができる。
【0024】
次に、塗型剤試験装置101のベース板11上に塗型剤を塗布済みの板状ブロック40をセットする(工程S2)。図4は、試験手順の各工程のうち、板状ブロック40をセットする工程を模式的に説明する図である。図4に示すように、ベース板11の上面と、ベース板11の前後に設けられる係止部12の各水平部15の下面との間に、板状ブロック40を矢印A2に示すように水平方向の左から右方向へ差し込むようにしてセットする。このとき、板状ブロック40は、ベース板11の前後端部に設けられた係止ブロック16に当たり所定位置にセットされる。
【0025】
次に、筒状ブロック50を板状ブロック40の上にセットする(工程S3)。図5は、試験手順の各工程のうち、筒状ブロック50を板状ブロック40の上にセットする工程を模式的に説明する図である。図5に示すように、この工程S3では、筒状ブロック50の下端部を板状ブロック40の上面で塞ぐように、筒状ブロック50を板状ブロック40上に載置する。このとき、位置決め部材30の位置決め機能により、筒状ブロック50は予め定められた設置位置に載置される。なお、この工程S3における塗型剤試験装置101の位置決め動作についての詳細は後述する。
【0026】
筒状ブロック50を板状ブロック40上に載置した後は、筒状ブロック50の筒内部に、アルミニウム溶湯を注湯する(工程S4)。図6は、試験手順の各工程のうち、アルミニウム溶湯を注湯する工程を模式的に説明する図である。工程S4では、図6に示すように、筒状ブロック50の筒内部に、アルミニウム溶湯を矢印A3に示すように上方から注湯する。
【0027】
アルミニウム溶湯の鋳込み後、室温にて凝固を確認するまで放置し、固化させる。アルミニウム溶湯が固化したら、錘61を載せる(工程S5)。図7は、試験手順の各工程のうち、錘61を載せる工程を模式的に説明する図である。工程S5では、図7に示すように、固化したアルミニウム鋳物64および筒状ブロック50の上に、矢印A4に示すようにして錘61を上方から載せる。
【0028】
次に、錘61を載せた状態で、モータ62により連結部52を引っ張る(工程S6)。図8は、試験手順の各工程のうち、モータ62により筒状ブロック50を引っ張る工程を模式的に説明する図である。図8に示すように、モータ62は、モータ62に連結される連結部材63の端部を連結部52の円環に上方から引っかけることで、筒状ブロック50に右方向から連結される。モータ62は、金属型枠としての筒状ブロック50に力を付与する「駆動部」に相当する。モータ62は、図示しないクランク機構を介して、筒状ブロック50に右方向への引っ張りの力を付与する。なお、このとき、板状ブロック40は係止ブロック16により引っ張り方向(右方向)へ移動しないように固定されているため、引っ張り力は、筒状ブロック50に対して、板状ブロック40の表面から右方向へスライドするように作用する。また、連結部材63は円柱形状をなす部材であり、鎖状のチェーン等ではないため、モータ62と筒状ブロック50との連結部分において撓みやねじれが生じることがなく、モータ62の駆動力を安定して筒状ブロック50に伝達することができる。
【0029】
図9は、工程S6における塗型剤試験装置101とモータ62との連結状態を模式的に示す平面図であり、図10は、工程S6における塗型剤試験装置101とモータ62との連結状態を模式的に示す側面図である。図9に示すように、連結部材63が水平方向に延びる方向に延長した仮想線Cは、平面視において連結部52および枠部51の中心軸線を通る。つまり、枠部51、連結部52、および連結部材63は、平面視および側面視において、仮想線Cが傾くことなく一直線上となるように並んでいる。換言すると、位置決め時に、仮想線Cが一直線となるように、モータ62に対する連結部52の位置が調整されており、また、連結部52および枠部51の板状ブロック40上での予め定められた設置位置が調整されている。
【0030】
再び、図3を参照する。上記のようにモータ62の駆動により筒状ブロック50を引っ張りつつ筒状ブロック50の動作を観察し、筒状ブロック50およびアルミニウム鋳物64が板状ブロック40の表面の上を動いているときの荷重を測定する(工程S7)。この荷重は、離型抵抗に相当する。その後、筒状ブロック50およびアルミニウム鋳物64を板状ブロック40から除去し、板状ブロック40表面の塗型剤の膜厚を測定する(工程S8)。このとき測定した膜厚が、工程S1後の初期の膜厚と変化がなければ、摩耗していないと判断できる。
【0031】
以上説明した、工程S2~工程S8を複数回(例えば5回)繰り返し行い、複数データを基にして最終的に離型抵抗および摩耗のしやすさ等の性能を決定する。膜厚により評価される摩耗のしやすさは、換言すると、塗型剤の型への密着性または金型を繰り返し使用する際の強度ともいえる。
【0032】
A3.塗型剤試験装置101による筒状ブロック50の位置決め手順:
次に、筒状ブロック50を板状ブロック40の上にセットする上記工程S3における塗型剤試験装置101の位置決め動作の詳細について、図11図15を参照して説明する。図11図13図15は、筒状ブロック50の位置決め手順の各工程を説明するための平面図である。図11は、位置決め部材30が初期位置にある状態を示しており、図2に示す図に対応している。図12は、位置決め部材30が予め定められた設置位置に前進した後の状態を示しており、図1に示す図に対応している。
【0033】
作業者により筒状ブロック50を板状ブロック40に載せる際には、作業者は、まず、ロックハンドル22を緩めて位置決め部材30(リニアシャフト24)をアンロックする。そして、図11から図12の状態となるように、操作ハンドル21を図11において矢印A5に示す前方向に操作してリニアシャフト24を介して位置決め部材30を最前進位置まで水平に前進させる。位置決め部材30が最前進位置まできたとき、連結部材27の前面がリニアブッシュ23の後面に当たる。なお、位置決め部材30を最前進位置まで移動させたときの位置が、すなわち上記設置位置と一致するように、板状ブロックセット部および筒状ブロック位置決め機構部20における各部材の位置や大きさ等が予め設定されている。位置決め部材30を設置位置まで前進させた後には、ロックハンドル22を締めて位置決め部材30(リニアシャフト24)をロックする。
【0034】
図13は、位置決め部材30に筒状ブロック50が位置決めされた状態を示している。図13に示すように、次いで、作業者は筒状ブロック50を板状ブロック40上に載せる。このとき、筒状ブロック50の枠部51を、位置決め部材30の凹部31の内周面32に沿わせるようにして設置する。
【0035】
図14は、筒状ブロック50が位置決め部材30に位置決めされた状態における連結部52周辺を模式的に示す斜視図である。枠部51を内周面32に沿わせるのと併せて、連結部52(円柱部53)の側面に対して、位置決め部材30の曲面34が前側から密着するように筒状ブロック50を設置する。すなわち、枠部51は位置決め部材30の凹部31内に位置するように、かつ、連結部52は曲面34に位置するように、筒状ブロック50を設置すればよく、筒状ブロック50全体の設置位置を作業者は目視にて確認しながら筒状ブロック50を載置できる。このため、枠部51および連結部52が所望の設置位置となるように、筒状ブロック50を容易に設置できる。
【0036】
その後、作業者は、ロックハンドル22を再び緩めて位置決め部材30(リニアシャフト24)をアンロックする。図15は、筒状ブロック50の載置後、位置決め部材30を後退させた状態を示す図である。図13から図15の状態となるように、作業者は、操作ハンドル21を図15において矢印A6に示す後方向に操作してリニアシャフト24を介して位置決め部材30を初期位置まで水平に後退移動させる。位置決め部材30を後退させても、筒状ブロック50はその自重により位置決めされた位置に維持される。
【0037】
(1)上記実施形態の塗型剤試験装置101によれば、枠位置決め部(位置決め部材30)と連結位置決め部(位置決め部材30)とを有しており、枠部51と連結部52との両方が板状ブロック40上の予め定められた設置位置にくるように、筒状ブロック50全体を設置することができる。
【0038】
その結果、図9に示すように、連結部材63が水平方向に延びる方向に延長した仮想線Cは、平面視において連結部52および枠部51の中心軸線を通る。例えば平面視において連結部52が仮想線Cからずれている場合には、引っ張り時に意図しないモーメントが発生し、正しい測定結果が得られない虞がある。しかし、上記第1実施形態では、筒状ブロック50に引っ張りまたは押し出しの力を加える際に、力を加える位置や方向を、作業者の熟練度に依存することなく所定の位置および方向となるように正確かつ一定にできるため、意図しないモーメントが生じることがない。特に複数回の試験を繰り返し行い評価する場合に、測定ごとにおける誤差が抑制されるので、評価精度を向上させることができる。
【0039】
(2)上記実施形態の塗型剤試験装置101において、位置決め部材30は、枠位置決め部および連結位置決め部の両方の機能を一体に有している。このため、装置構成を簡単かつ小型化することができる。
【0040】
(3)上記実施形態の塗型剤試験装置101において、位置決め部材30は、板状ブロックセット部10にセットされた板状ブロック40に対して水平方向に移動可能である。このため、筒状ブロック50を板状ブロック40上に位置決めして配置した後、位置決め部材30を板状ブロックセット部10から遠ざけることができるので、筒状ブロック50に力を加える際に、位置決め部材30がモータ62や連結部材63に干渉することを抑制でき、作業性を向上させることができる。
【0041】
(4)上記実施形態の塗型剤試験装置101は、ベース板11の前後端部に係止部12を有しており、板状ブロック40の、筒状ブロック50側である上方への移動が規制されている。このため、筒状ブロック50に力を加えたときに、例えば離型抵抗が大きく筒状ブロック50が板状ブロック40に張り付いたままになり板状ブロック40が浮き上がってしまうことを抑制できる。
【0042】
B.他の実施形態:
(B1)上記第1実施形態の塗型剤試験装置101では、位置決め部材30の前端に半円形状の凹部31が形成されるものとしたが、凹部31の内周面32が筒状ブロック50の外周面のうち少なくとも一部に外側から接することで枠部51を位置決めすることができれば、その形状は半円でなくてもよい。例えば4分の1円弧状でもよいし、複数の円弧に分割された形状をなしていてもよい。
【0043】
(B2)上記第1実施形態では、金属型枠として円筒体である筒状ブロック50を例示したが、円筒体に限られず、その他、四角筒体でもよい。なお、位置決め部材30の形状は、筒状ブロック50の外周面の形状に適宜対応する形状とすることで実施できる。
【0044】
(B3)上記第1実施形態の塗型剤試験装置101では、位置決め部材30は水平方向に板状の平面が延びる方向に設置されるものとした。すなわち、水平方向から筒状ブロック50を挟み込むような形態としたが、例えば、筒状ブロック50の上方から筒状ブロック50の外周面を挟み込むような形態としてもよい。
【0045】
(B4)上記第1実施形態では、筒状ブロック50に対して引っ張りの力を与えるものとして説明したが、押し出しの力を与えるものとしてもよい。
【0046】
(B5)上記第1実施形態の塗型剤試験装置101では、枠位置決め部と連結位置決め部を一体に有する位置決め部材30を備えるものとしたが、枠位置決め部の機能を有する部材と、当該部材とは別体として、連結位置決め部の機能を有する部材と、を備える構成としてもよい。
【0047】
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…板状ブロックセット部、11…ベース板、12…前係止部(移動規制部)、13…後係止部(移動規制部)、14…立設部、15…水平部、16…係止ブロック、20…筒状ブロック位置決め機構部、21…操作ハンドル、22…ロックハンドル、23…リニアブッシュ(移動機構部)、24…リニアシャフト(移動機構部)、25…サイドレール、26…脚部、27…連結部材、28…固定部材、30…筒状ブロック位置決め部材(枠位置決め部、連結位置決め部、型枠位置決め部材)、31…凹部、32…内周面(枠接触部)、33…端部、34…曲面(連結接触部)、40…板状ブロック(金属ブロック)、50…筒状ブロック(金属型枠)、51…枠部、52…連結部、53…円柱部、54…円環フック部、61…錘、62…モータ、63…連結部材、101…塗型剤試験装置
図1
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