IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図1
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図2
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図3
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図4
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図5
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図6
  • 特許-材料評価方法および金属部材の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】材料評価方法および金属部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/24 20060101AFI20240702BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20240702BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N3/24
G01N3/08
B21D22/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021049660
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148114
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 利郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 欣吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寧
(72)【発明者】
【氏名】丹治 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤本 誠
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-039552(JP,B1)
【文献】特開2020-106378(JP,A)
【文献】特開2016-070911(JP,A)
【文献】特開2021-028601(JP,A)
【文献】特開昭60-110850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0103049(US,A1)
【文献】Kunio Miyauchi,A Proposal of a Planar Simple Shear Test in Sheet Metals,Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research,Vol.78, No.3,1972年09月,p.27-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/24
G01N 3/08
B21D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、
前記せん断応力曲線から求められる0.2%耐力を、せん断降伏応力τとするとともに、
前記試験材の引張試験によって0.2%耐力として得られる引張降伏応力をσとして、
τ/σとして算出される降伏応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時にしわを生じにくいと判定する、材料評価方法。
【請求項2】
前記降伏応力比τ/σが、所定の降伏応力比閾値以上である場合に、前記試験材が、十分な耐しわ性を有していると判定する、請求項1に記載の材料評価方法。
【請求項3】
前記試験材が銅または銅合金であり、前記試験材の面内におけるせん断試験を行う場合に、前記降伏応力比閾値を0.48とする、請求項2に記載の材料評価方法。
【請求項4】
記せん断応力曲線において、前記試験材が破断した際の前記せん断応力を、最大せん断応力τmaxとするとともに、
前記試験材の引張試験によって得られる引張強度をσmaxとして、
τmax/σmaxとして算出される最大応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時に割れを生じにくいと判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の材料評価方法。
【請求項5】
前記最大応力比τmax/σmaxが、所定の最大応力比閾値以上である場合に、前記試験材が、十分な耐割れ性を有していると判定する、請求項4に記載の材料評価方法。
【請求項6】
前記試験材が銅または銅合金であり、前記試験材の面内におけるせん断試験を行う場合に、前記最大応力比閾値を0.60とする、請求項5に記載の材料評価方法。
【請求項7】
前記せん断応力曲線の取得に際し、前記試験材を撮影した画像に基づく画像相関法によって、前記せん断ひずみを評価する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の材料評価方法。
【請求項8】
前記試験材として、矩形の板材において、相互に対向する1対の辺から、相互に対向して延びるスリットを2組設けたものを用いて、
前記1対の辺に沿って、前記2組のスリットの外側の領域を、それぞれ端部域とし、前記2組のスリットに挟まれた領域を内部域として、
前記せん断試験において、前記試験材の面内で、2つの前記端部域と前記内部域とで、相互に反対の方向にせん断力を印加して、前記試験材の面内のせん断変形について、前記せん断応力曲線を取得する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の材料評価方法。
【請求項9】
前記試験材において、各組を構成する前記スリットの相互間の距離をa、前記スリットのそれぞれの先端部における幅をbとし、
前記試験材の板厚をt、前記試験材のヤング率をE、引張りにおける0.2%耐力をσとして、
2t≦b≦(E/σ0.5・t、かつ
3mm≦a≦(E/σ)・(t/b)
である、請求項8に記載の材料評価方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の材料評価方法による評価を経て、原料として選定した金属材料を用い、
前記金属材料の曲げ加工を経て、金属部材を製造する、金属部材の製造方法。
【請求項11】
請求項2または請求項3に記載の材料評価方法において十分な耐しわ性を有していると判定された金属材料を、前記原料として選定する、請求項10に記載の金属部材の製造方法。
【請求項12】
請求項5または請求項6に記載の材料評価方法において十分な耐割れ性を有していると判定された金属材料を、前記原料として選定する、請求項10または請求項11に記載の金属部材の製造方法。
【請求項13】
前記金属部材は電気接続端子である、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の金属部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料評価方法および金属部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の板材に対して、曲げを伴う加工を行って、電気接続端子等の金属部材を製造する場合に、所定の曲げを経た際に、金属材料に、割れやしわ等、せん断変形に伴う損傷が生じないように、使用する材料が選定される。適切な材料を選定するための基礎として、材料に加えられる応力と、損傷の発生との関係を、試験によって把握することが重要である。そのために、金属材料に対して、どの程度の応力が生じた際に、どの程度の損傷が発生するのかを調べる試験が行われる。
【0003】
その種の試験の方法は、例えば、下記非特許文献1に掲載された日本伸銅協会の規格「JBMA T307:1999」に定められている。この規格においては、図7Aに示すように、2つの凸部92,92を有する上型91と、それら凸部92,92を収容できる2つの凹部96,96を備えた下型95との組を備えた治具90を用いて、金属の板材として構成された試験材S’に曲げを加える。つまり、図7Bのように、試験材S’を上型91と下型95の間に挟み込み、W型に曲げる。そして、曲げによって山となった試験材S’の曲げ加工部S’1を光学顕微鏡で観察し、形成された「しわ」および「割れ」の程度を評価する。ここで、「しわ」とは、「曲げ加工によって現れた段差状のくぼみ又はすじが観察できる状態」と定義され、「割れ」とは、「割れの底が真上から観察できない、せん断帯に沿って割れた状態」と定義されている。「しわ無し」「しわ小」「しわ大」「割れ小」「割れ大」の5つの水準に、試験材S’が分類される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「日本伸銅協会技術標準 銅および銅合金薄板条の材料評価方法 JBMA T307:1999」日本伸銅協会 電子部品用銅合金標準化委員会 1999年
【文献】Kunio MIYAUCHI,”A Proposal of a Planar Simple Shear Test in Sheet Metals”,Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research,1972年,78巻,3号,27-40頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属の板材に曲げを加える際に発生するせん断応力の影響を評価する方法として、非特許文献1に掲載された規格のように、曲げ加工部を顕微鏡観察して、割れやしわの程度を評価する場合には、評価指標が定性的なものとなってしまう。すると、異なる材料の間で曲げ加工性を定量的に比較することが難しくなる。試験者の違い等によって、評価結果が変化してしまう可能性もある。また、異なる材料の間で曲げ加工性の高低を比較するためには、治具90の上型91の凸部92,92の頂部、および下型95の2つの凹部96,96の間の接合部97の頂部における曲面形状の曲率半径Rと、試験材S’の板厚tとの比率R/tを変化させながら、多数の試験材S’に対して評価を行う必要があり、試験に大きな労力を要する。
【0006】
また、金属部材の曲げ加工時に生じるひずみは、対象とする材料種が同じであっても、部材の寸法、特に曲げ方向に交差する幅方向の寸法に依存する場合がある。例えば、非特許文献1に掲載された規格では、試験材の幅が、10mmとなっているが、電気接続端子において、曲げ加工によって形成されるバネ部の幅は、10mmよりもかなり小さい場合も多く、非特許文献1に掲載された規格の評価方法では、曲げ加工時のひずみの影響を、適切に評価できない可能性がある。この場合には、上記の比率R/tに加えて、試験材の幅も、可変のパラメータとみなす必要があり、材料の評価に要する労力がさらに大きくなる。また、解釈も複雑になる可能性がある。
【0007】
そこで、金属の板材に対して曲げ加工を行う際の曲げ加工性を、定量的に評価することができる材料評価方法、および定量的に曲げ加工性を評価して原料を選定することができる金属部材の製造方法を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の材料評価方法は、金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、前記せん断応力曲線から求められる0.2%耐力を、せん断降伏応力τとするとともに、前記試験材の引張試験によって0.2%耐力として得られる引張降伏応力をσとして、τ/σとして算出される降伏応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時にしわを生じにくいと判定するものである。あるいは、金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、前記せん断応力曲線において、前記試験材が破断した際の前記せん断応力を、最大せん断応力τmaxとするとともに、前記試験材の引張試験によって得られる引張強度をσmaxとして、τmax/σmaxとして算出される最大応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時に割れを生じにくいと判定するものである。
【0009】
本開示の金属部材の製造方法は、前記材料評価方法による評価を経て、原料として選定した金属材料を用い、前記金属材料の曲げ加工を経て、金属部材を製造するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかる材料評価方法は、金属の板材に対して曲げ加工を行う際の曲げ加工性を、定量的に評価することができる。また、本開示にかかる金属部材の製造方法は、定量的に曲げ加工性を評価して原料を選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、機械的測定によるせん断試験の方法を説明する側面図である。
図2図2A,2Bは、上記せん断試験に用いる試験材を示す平面図である。図2Aは全体図であり、図2Bはスリットの先端部近傍を示す拡大図である。
図3図3は、機械的測定によるせん断試験で得られるせん断応力曲線の一例である。
図4図4A,4Bは、画像相関法によるせん断試験を説明する画像である。図4Aは荷重印加前、図4Bは荷重印加中の状態を示している。
図5図5A,5Bは、画像相関法によるせん断試験で得られるせん断応力曲線の例である。図5Aは全体図であり、図5Bは低ひずみ領域を示す拡大図である。
図6図6Aは、金属材の曲げ変形において発生する応力の方向を説明する図である。図6Bは、σxx-σzx降伏曲面を説明する図である。
図7図7A,7Bは、従来の材料評価方法を説明する図である。図7Aは曲げを加える前、図7Bは曲げを加えた後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0013】
本開示の第一の実施形態にかかる材料評価方法は、金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、前記せん断応力曲線から求められる0.2%耐力を、せん断降伏応力τとするとともに、前記試験材の引張試験によって0.2%耐力として得られる引張降伏応力をσとして、τ/σとして算出される降伏応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時にしわを生じにくいと判定するものである。
【0014】
上記材料評価方法においては、せん断試験によってせん断応力曲線を取得したうえで、そのせん断応力曲線から得られるせん断降伏応力τと、引張試験によって得られる引張降伏応力σとから、降伏応力比τ/σを定量的に求める。この降伏応力比τ/σの値は、曲げ加工を行う際のしわの生じにくさ、つまり耐しわ性をよく反映する指標となる。よって、降伏応力比を指標として用い、その値が大きい材料ほど、曲げ加工を行った際に、しわを生じにくいと判定することにより、曲げ加工時のしわの発生の可能性を、定量的に評価することができる。
【0015】
ここで、前記降伏応力比τ/σが、所定の降伏応力比閾値以上である場合に、前記試験材が、十分な耐しわ性を有していると判定するとよい。すると、高い耐しわ性を有し、曲げ加工を行ってもしわを生じにくい材料を、定量的な指標に基づいて弁別し、曲げ加工等を施す原料として選択することができる。
【0016】
この際、前記試験材が銅または銅合金であり、前記試験材の面内におけるせん断試験を行う場合に、前記降伏応力比閾値を0.48とするとよい。すると、高い耐しわ性を有する銅または銅合金を、高い精度で弁別することが可能となる。
【0017】
本開示の第二の実施形態にかかる材料評価方法は、金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、前記せん断応力曲線において、前記試験材が破断した際の前記せん断応力を、最大せん断応力τmaxとするとともに、前記試験材の引張試験によって得られる引張強度をσmaxとして、τmax/σmaxとして算出される最大応力比が大きいほど、前記試験材が、曲げ加工時に割れを生じにくいと判定するものである。
【0018】
上記材料評価方法においてはせん断試験によってせん断応力曲線を取得したうえで、そのせん断試験曲線から得られる最大せん断応力τmaxと、引張試験によって得られる引張強度σmaxとから、最大応力比τmax/σmaxを定量的に求める。この最大応力比τmax/σmaxの値は、曲げ加工を行う際の割れの生じにくさ、つまり耐割れ性をよく反映する指標となる。よって、最大応力比を指標として用い、その値が大きい材料ほど、曲げ加工を行った際に、割れを生じにくいと判定することにより、曲げ加工時の割れの発生の可能性を、定量的に評価することができる。
【0019】
ここで、前記最大応力比τmax/σmaxが、所定の最大応力比閾値以上である場合に、前記試験材が、十分な耐割れ性を有していると判定するとよい。すると、高い耐割れ性を有し、曲げ加工を行っても割れを生じにくい材料を、定量的な指標に基づいて弁別し、曲げ加工等を施す原料として選択することができる。
【0020】
この際、前記試験材が銅または銅合金であり、前記試験材の面内におけるせん断試験を行う場合に、前記最大応力比閾値を0.60とするとよい。すると、高い耐割れ性を有する銅または銅合金を、高い精度で弁別することが可能となる。
【0021】
前記せん断応力曲線の取得に際し、前記試験材を撮影した画像に基づく画像相関法によって、前記せん断ひずみを評価するとよい。この場合には、せん断ひずみの大きさの評価を、画像解析によって行うため、取得されるせん断応力曲線に、治具等、せん断試験に用いる部材の影響による本質的でない寄与が発生しにくい。例えば、治具を介して試験材にせん断応力を印加しながら、その治具の移動量に基づいてせん断ひずみの大きさを評価する場合には、治具の変形やずれ等の影響で、せん断ひずみの大きさの見積もりを正確に行えない可能性がある。画像相関法によって、本質的でない影響を低減しながら、せん断ひずみとせん断応力の関係を見積もることができれば、材料の曲げ加工性を、正確に評価しやすくなる。特に、低ひずみ領域でのせん断ひずみの計測の精度が高くなるため、せん断降伏応力を正確に評価しやすくなる。
【0022】
前記試験材として、矩形の板材において、相互に対向する1対の辺から、相互に対向して延びるスリットを2組設けたものを用いて、前記1対の辺に沿って、前記2組のスリットの外側の領域を、それぞれ端部域とし、前記2組のスリットに挟まれた領域を内部域として、前記せん断試験において、前記試験材の面内で、2つの前記端部域と前記内部域とで、相互に反対の方向にせん断力を印加して、前記試験材の面内のせん断変形について、前記せん断応力曲線を取得するとよい。すると、各組のスリットの間の箇所に相当する2か所の変形部において、対称にせん断変形が起こるため、せん断方向への回転の影響を低減して、正確性の高いせん断応力曲線を得ることができる。
【0023】
この際、前記試験材において、各組を構成する前記スリットの相互間の距離をa、前記スリットのそれぞれの先端部における幅をbとし、前記試験材の板厚をt、前記試験材のヤング率をE、引張りにおける0.2%耐力をσとして、2t≦b≦(E/σ0.5・t、かつ3mm≦a≦(E/σ)・(t/b)であるとよい。すると、せん断ひずみの測定精度をさらに高めやすい。
【0024】
本開示の実施形態にかかる金属部材の製造方法は、前記材料評価方法による評価を経て、原料として選定した金属材料を用い、前記金属材料の曲げ加工を経て、金属部材を製造するものである。
【0025】
曲げ加工を経て、金属部材を製造する場合には、曲げを加えた部位に、割れ等、せん断に伴う損傷が生じると、所定の性能や強度を有する金属部材を製造することが難しくなる。そこで、上記材料評価方法によって、せん断試験から得られるせん断応力曲線に基づいて、原料となる金属材の曲げ加工性を評価しておくことで、高い曲げ加工性を有する原料を、定量的な指標に基づいて選択することができる。その結果、曲げ加工等を経て、所定の強度や性能を有する金属部材を、高い信頼性で製造することが可能となる。曲げ加工性を定量的に評価したうえで、金属部材の製造の指標として用いることができるため、金属部材として、寸法や形状の異なるものを複数種製造する場合等にも、多数の試験材に対する試験や、多数の試作品の製造を行わなくても済む。
【0026】
ここで、前記材料評価方法において十分な耐しわ性を有していると判定された金属材料を、前記原料として選定するとよい。すると、曲げ加工を行う際に、しわの発生を抑制しながら、金属部材を製造することが可能となる。
【0027】
あるいは、前記材料評価方法において十分な耐割れ性を有していると判定された金属材料を、前記原料として選定するとよい。すると、曲げ加工を行う際に、割れの発生を抑制しながら、金属部材を製造することが可能となる。
【0028】
前記金属部材は電気接続端子であるとよい。電気接続端子は、金属の板材を原料として、曲げ加工等を経て、所定の形状に加工して製造される。急な角度での曲げ加工が加えられる場合も多い。それらの曲げ加工の際に、割れやしわ等の損傷が生じると、電気接続端子の機械的強度や電気的特性に、影響が生じうる。そこで、上記材料評価方法によって、十分な曲げ加工性を有していると判定された原料を用いて、電気接続端子を製造することで、所望の特性および強度を有する電気接続端子を、高い生産性をもって製造することが可能となる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を用いて、本開示の実施形態にかかる材料評価方法および金属部材の製造方法について、詳細に説明する。本開示にかかる材料評価方法による評価の結果に基づいて、本開示にかかる金属部材の製造方法を実行することができる。以下、本明細書において、各種測定値は、特記しない限り、室温、大気中にて測定されるものとする。また面内、面外、垂直等、部材の形状や配置を表す概念、また寸法値には、幾何的に厳密な概念のみならず、金属の板材に対する評価において許容される範囲のずれを含むものとする。
【0030】
<材料評価方法の概略>
本開示の一実施形態にかかる材料評価方法について説明する。本実施形態にかかる材料評価方法は、金属の板材として構成された試験材に対してせん断試験を行って、せん断応力をせん断ひずみの関数として記録したせん断応力曲線を取得し、そのせん断応力曲線を利用して、金属材の曲げ加工性を評価するものである。ここで、曲げ加工性とは、金属材に曲げ加工を施した際に、曲げの箇所に、割れやしわ等の損傷が発生する程度を示すものであり、それらの損傷が発生しにくいほど、曲げ加工性が高いとみなされる。せん断試験は、金属の板材より構成される試験材の面内のせん断変形について行っても、面外のせん断変形について行ってもよい。
【0031】
発明者らの研究により、銅合金等の金属材に曲げを加えた箇所において、電子線後方散乱回折(EBSD)によって、結晶方位の解析を行ったところ、曲げに伴う割れおよびしわが、せん断帯の形成に伴って発生することが、明らかになった。さらに、曲げ変形中にせん断変形が起き、せん断変形の進行に伴って、結晶組織内に、所定の方位を有する結晶粒群が生成することが確認された。よって、材料評価方法によって得られるせん断応力曲線を、曲げ加工を行った際の割れやしわの発生しやすさに、対応づけることができる。
【0032】
特に、せん断応力曲線において得られる応力の代表値として、最大せん断応力τmaxおよびせん断降伏応力τを、材料のせん断変形に対する耐性を示す指標として、好適に用いることができる。最大せん断応力τmaxは、試験材が破断する際の応力に対応しており、後の実施例において示すように、試験材における割れの発生と、高い相関性を有している。よって、最大せん断応力τmaxが大きな値を示すほど、その材料において、せん断変形による割れが起こりにくいと言える。一方、せん断降伏応力τは、試験材において、せん断帯が発生しはじめる応力に対応しており、後の実施例に示すように、試験材におけるしわの発生と関連を有している。よって、せん断降伏応力τが大きな値を示すほど、その材料において、せん断変形によるしわの発生が起こりにくいと言える。
【0033】
このように、せん断試験において、試験材が破断した際のせん断応力として得られた最大せん断応力τmaxを、曲げ加工時の割れの発生の程度に対応づけることができる。最大せん断応力τmaxが大きいほど、曲げ加工時に割れが発生しにくいとみなすことができる。異なる材料間で、最大せん断応力τmaxの値を、そのまま比較してもよいが、最大せん断応力τmaxを、材料の引張強度σmaxで除して、最大応力比τmax/σmaxとすることで、材料の曲げ加工性を、より正確に評価することができる。最大応力比τmax/σmaxの値が大きいほど、曲げ加工時に、割れが発生しにくい、つまり耐割れ性が高いと評価することができる。
【0034】
さらに、せん断試験で得られたせん断降伏応力τを、曲げ加工時のしわの発生の程度に対応づけることができる。せん断降伏応力τが大きいほど、曲げ加工時にしわが発生しにくいとみなすことができる。ここで、せん断降伏応力τとしては、せん断試験において得られる0.2%耐力の値を用いることができる。異なる材料間で、せん断降伏応力τの値を、そのまま比較してもよいが、せん断降伏応力τを、材料の引張降伏応力σで除して、降伏応力比τ/σとすることで、材料の曲げ加工性を、より正確に評価することができる。降伏応力比τ/σの値が大きいほど、曲げ加工時に、しわが発生しにくい、つまり耐しわ性が高いと評価することができる。
【0035】
ここで、材料の引張強度σmaxとは、材料を引張って破断させた際に、試料に印加される引張応力であり、例えば、JIS Z 2241に準拠した引張試験によって評価することができる。また、材料の引張降伏応力σは、その引張試験における0.2%耐力として得ることができる。
【0036】
金属材料の曲げに伴う変形は、平面ひずみとせん断ひずみの両方を伴って進行する可能性があるが、このうち、平面ひずみは引張応力と、せん断ひずみはせん断応力と関係していると考えられる。せん断ひずみは、上記のように、曲げ加工時に、割れやしわ等を発生させる原因となるが、平面ひずみは、割れやしわを生じさせるものとはなりにくい。よって、材料の引張強度σmaxや引張降伏応力σが小さく、平面ひずみを伴う曲げを起こしやすいものであれば、ある程度せん断応力が小さい材料でも、曲げ加工を行った際に、せん断ひずみに伴う割れやしわを発生しにくいと言える。よって、最大せん断応力τmaxおよびせん断降伏応力τの値そのものを曲げ加工性に対応づけるのではなく、それぞれ引張強度σmaxおよび引張降伏応力σで除した値である最大応力比τmax/σmaxおよび降伏応力比τ/σを指標として用いることで、曲げ加工時に、割れやしわが発生しやすいかどうかを、より正確に評価することができる。
【0037】
最大応力比τmax/σmaxや降伏応力比τ/σを、異なる材料間で相互に比較することで、材料間で、耐割れ性や耐しわ性を比較することができる。また、最大応力比τmax/σmaxおよび降伏応力比τ/σについて、それ以上の値を取れば、材料に割れやしわが生じないという閾値として、それぞれ、最大応力比閾値および降伏応力比閾値を見積もっておけばよい。閾値の見積もりは、例えば、事前の試験として、顕微鏡観察によって、曲げに伴う割れやしわの発生の程度を見積もった結果と、せん断試験の結果とを対照することで、行いうる。そして、評価対象となる材料において、最大応力比τmax/σmaxが、所定の最大応力比閾値以上であれば、その材料が十分な耐割れ性を有していると評価すればよい。また、降伏応力比τ/σが、所定の降伏応力比閾値以上であれば、その材料が十分な耐しわ性を有していると評価すればよい。
【0038】
金属材料の曲げ加工性を評価する場合に、非特許文献1に記載されるように、実際に曲げ加工を施した箇所を顕微鏡観察し、割れやしわの有無を判定する場合には、曲げ加工性を定量的に評価し、材料間での比較等に用いることは難しい。しかし、本実施形態にかかる材料評価方法においては、せん断試験を行い、最大せん断応力τmaxやせん断降伏応力τを、数値として計測したうえで、閾値との比較等により、曲げ加工性を定量的に評価することができる。よって、評価者ごとのばらつき等、定性評価に伴う影響を排除して、曲げ加工性を客観的な数値として見積もることができ、また、異なる材料間での定量的な比較も、簡便に行うことができる。
【0039】
<せん断試験>
上記材料評価方法において、せん断応力曲線を取得するためのせん断試験について説明する。せん断試験においては、試験材にせん断応力を印加し、せん断応力を、せん断ひずみの関数として記録することで、せん断応力曲線が得られる。せん断試験において、せん断応力を印加する方法、およびせん断ひずみを評価する方法は、特に限定されるものではない。例えば、以下に例示する機械的測定によるせん断試験、または画像解析を用いたせん断試験を利用することができる。せん断試験は、金属の板材より構成される試験材の面内のせん断変形について行っても、面外のせん断変形について行ってもよいが、以下では、面内のせん断試験について説明する。
【0040】
ここで、面内のせん断試験に好適に用いることができる試験材の形状について説明する。図2Aに試験材Sの形状を示す。試験材Sは、矩形の外形を有する板材として形成されている。ここでは、試験材Sの外形は正方形となっている。そして、試験材Sの相互に対向する1対の辺S3,S3から、相互に対向して延びる1対のスリットS1,S1が2組、つまり計4つのスリットS1が設けられている。4つのスリットS1は、全て同じ形状および寸法を有している。辺S3に沿って、試験材Sが3つの領域に区画されており、2組のスリットS1に挟まれた領域を内部域R1とし、2組のスリットS1の外側の領域をそれぞれ端部域R2,R2とする。
【0041】
せん断試験においては、試験材Sに対して、試験材Sの面内で、荷重F1,F2を印加する。この際、2つの端部域R2,R2に対しては、同じ方向の荷重F2を印加するとともに、間の内部域R1には、それら端部域R2,R2とは反対の方向に、荷重F1を印加する。これらの荷重F1,F2の印加により、各組のスリットS1,S1の間の領域にあたる変形部R3,R3に、せん断応力が印加され、せん断変形が起こる。図2Aで変形部R3,R3の中に矢印で示すように、2か所の変形部R3,R3に、対称にせん断応力が働くので、変形部R3,R3に生じる回転モーメントが低減される。よって、せん断応力とせん断ひずみの関係を、回転モーメントの影響を低減して評価することができる。
【0042】
4つのスリットで3つの領域に区画された形状の試験材は、非特許文献2に開示されるせん断試験においても採用されているが、本実施形態にかかる材料評価方法において好適に用いられる試験材Sにおいては、スリットS1の寸法が、非特許文献2に開示されているものと異なっている。本実施形態において、図2Bに拡大図にて示すように、各組を構成するスリットS1,S1の相互間の距離、つまり変形部R3の長さをaとする。また、スリットS1のそれぞれの先端部S2における幅、つまり変形部R3の幅をbとする。図示した形態では、スリットS1の先端の角部に丸み形状(角R形状)を形成しているが、それらの丸み形状の内側の寸法がbとなる。そして、試験材Sの板厚をt、ヤング率をE、引張りにおける0.2%耐力をσとする。なお、σは、上記の引張降伏応力σと同じものを指している。この場合に、寸法aおよびbは以下の式(1)、(2)によって表される。
【数1】
【0043】
このように、寸法a,bを設定することで、非特許文献2の形態と比較して、板厚tが、0.25mm以下、また0.15mm以下のように非常に薄い試験片においても、圧縮座屈を抑制する効果に優れる。さらに、せん断ひずみの測定における精度を高めるために、以下の式(3)および(4)を満たすように、a,bを定めておくことが好ましい。
b≧2t (3)
a≧3mm (4)
【0044】
スリットS1全体としての幅b’は、特に限定されるものではないが、bをb’に置き換えて、上記式(1)および式(3)を満たすように、幅b’も定めておくことが好ましい。試験材Sが銅または銅合金より構成される場合に、板厚tが0.15~0.25mmであれば、例えば以下のように各部の寸法を定めておくことが好ましい。
・試験材Sの外形:30mm×30mm
・変形部R3の長さa:5.0mm
・変形部R3の幅b:式(1)と式(3)によって定まる任意の幅
・スリットS1全体としての幅b’:0.4mm
【0045】
<機械的測定によるせん断試験>
次に、上記のような試験材Sに対してせん断荷重を印加し、せん断応力曲線を得るための具体的な方法として、機械的測定による面内のせん断試験について説明する。図1に、せん断試験に用いることができる試験装置の概略を側面図にて表示する。
【0046】
試験装置1は、支持枠10と、ホルダ20とを有している。ホルダ20は、一対の固定治具21,21を備えるとともに、それらの間に可動治具22を備えている。これらの治具21,22は、それぞれ、前後方向(紙面垂直方向)に2つのブロックに分割されており、間に試験材Sの板面を挟み込むことができる。ここでは、試験材Sの2つの端部域R2,R2をそれぞれ固定治具21で挟み込み、内部域R1を可動治具22で挟み込む。試験材Sを挟み込んだ状態で、試験材Sよりも外側に配置された、2つのブロックを貫通するネジ24を締め込むことで、試験材Sをホルダ20で保持することができる。
【0047】
試験材Sを保持したホルダ20は、支持枠10に収容して保持される。この際、スリットS1の方向が縦になるように、試験材Sの板面を鉛直方向に立てて、ホルダ20が配置される。ホルダ20の固定治具21は、支持枠10に載置して支持されるが、可動治具22は、支持枠10には接触しない。この状態で、押圧具30の押圧部材31を可動治具22に接触させて配置したうえで、押圧部材31を下方に移動させる。押圧部材31の移動に伴って、ホルダ20に保持された試験材Sが、押圧具30と支持枠10の間に挟み込まれることにより、試験材Sの内部域R1に、下向きの荷重F1が印加されるとともに、両側の端部域R2,R2に、上向きの荷重F2が印加されることになる。
【0048】
押圧具30には、ロードセル(不図示)が取り付けられており、押圧部材31によって試験材Sに印加した荷重F1の大きさを、計測することができる。そして、押圧部材31の変位量と荷重F1との関係を、記録することができる。荷重F1を印加しながら変位量を計測、記録できる装置として、金属材料に対して引張試験や圧縮試験等を行うことができる公知の材料試験機を用いて、押圧部材31による押圧を行うことができる。押圧部材31の変位量をひずみに変換して横軸にとり、押圧部材31から印加した荷重F1をせん断応力として縦軸にとることで、せん断応力曲線を得ることができる。
【0049】
このように、試験材Sに荷重F1を印加してせん断応力を発生させ、機械的手段によって計測されるせん断ひずみと、せん断応力との関係から得られるせん断応力曲線に基づいて、本実施形態にかかる材料評価方法を実行し、耐割れ性や耐しわ性の観点から曲げ加工性を評価することができる。しかし、せん断ひずみを、押圧部材31の移動量という機械的パラメータによって評価していることに起因して、せん断ひずみとせん断応力の関係性の評価に不正確性が生じる可能性がある。具体的には、押圧部材31から印加される荷重F1が、試験材Sのせん断変形以外の変位を引き起こす可能性がある。例えば、支持枠10や各治具21,22等、試験装置1の構成部材に変形が生じる場合や、それらの部材間の遊隙においてずれが発生する場合がある。それら変形やずれは、試験材Sのせん断変形の他に、押圧部材31に変位を与えるものとなる。この場合に、押圧部材31の移動量に基づいて、せん断ひずみを取得して、せん断応力曲線とすると、そのせん断応力曲線に、せん断変形において本質的でない現象の寄与が混ざることになる。
【0050】
試験装置1の構成部材の変形やずれの寄与は、せん断ひずみが大きい領域では顕著な問題を生じにくい。よって、試験材Sがせん断によって破断する際のせん断応力に対応する最大せん断応力τmaxを見積もる際には、上記のように機械的方法によって取得したせん断応力曲線を用いても、ある程度正確に見積もりを行うことができる。その最大せん断応力τmaxに基づいて、最大応力比τmax/σmaxを算出し、最大応力比閾値との比較等により、材料の耐割れ性の評価に用いればよい。
【0051】
しかし、試験装置1の構成部材の変形やずれの寄与は、せん断ひずみが小さい領域では特に顕著になる。例えば、図3に、上記のように、押圧部材31の移動量と、押圧部材31で印加した荷重F1との関係に基づいて取得したせん断応力曲線を例示する。なお、ここでは、横軸は、押圧部材31のストローク(移動量)としている。図3の曲線において、破線で囲んで表示するように、せん断ひずみが小さい領域で、顕著に下に凸になったカーブが見られている。金属材料においては、ひずみが小さい弾性域では、ひずみと荷重の関係が線形に近似できるはずであり、図3の下に凸のカーブは、金属材料のせん断変形における挙動を正確に反映したものとは言えない。押圧部材31の移動量に、試験材Sの変形に加えて、試験装置1の構成部材の変形やずれによる寄与が重畳され、実際の試験材Sの変形よりも変位量が大きく見積もられてしまうからである。このように、低ひずみ領域において、せん断応力曲線に本質的でない寄与が重畳されると、低ひずみ領域の情報に基づいて見積もられる量であるせん断降伏応力τを、正確に評価できない可能性がある。そこで、低ひずみ領域において、機械的測定によるせん断試験よりも、せん断応力とせん断ひずみとの関係を正確に評価しやすい手法として、次に画像解析を用いたせん断試験を挙げる。
【0052】
<画像解析によるせん断試験>
画像解析を用いる場合には、試験材Sにせん断荷重を印加した際のせん断ひずみの計測を、試験装置1の構成部材の移動量ではなく、試験材Sを撮影した画像に対する画像解析によって行う。この形態のせん断試験においても、図1に示した試験装置1を用いて、押圧部材31によって荷重F1を印加し、試験材Sにせん断応力を発生させる。この際、せん断応力の大きさは、押圧部材31に取り付けたロードセルによって計測される荷重F1から評価されるが、せん断ひずみの大きさは、押圧部材31の移動量ではなく、試験材Sを撮影した画像に基づいて評価する。そして、それらせん断応力とせん断ひずみの間の関係として、せん断応力曲線を取得する。
【0053】
具体的には、試験装置1の正面(紙面手前側)に、試験材Sの表面を撮影できるカメラを設けておき、せん断試験を行う前、およびせん断試験を行っている間、連続的または断続的に、試験材Sの表面を撮影する。試験材Sの表面の撮影は、適宜、顕微鏡を介して行うとよい。なお、試験材Sの表面の大部分は、治具21,22に挟まれており、外部から視認できないため、カメラによる撮影は、隣接する固定治具21と可動治具22の間の空隙25の箇所において行うことになる。
【0054】
試験材Sとしては、金属の板材に、適宜図2AのようにスリットS1を設けたものをそのまま用いてもよいが、表面を撮影した画像において、せん断変形を認識しやすいように、試験材Sの表面に、不規則なパターンを設けておくことが好ましい。すると、試験材Sがせん断変形した際に、パターンの変形や変位を指標として、変形量を簡便に、また正確に見積もりやすくなる。金属材の表面と異なる色を有する粉末材料を散布すること、および/または塗料をスプレー塗布することにより、多数の点状や島状の領域が分布したパターンを、簡便に形成することができる。複数の異なる色の物質を用いてパターンを形成することで、さらに試験材Sの変形を認識しやすくなる。図4Aに表面の撮影像を示すように、白色塗料のスプレー塗布と、黒鉛粉末の散布によって、パターンを形成する形態を、好適に例示することができる。
【0055】
せん断試験を行う試験材Sの画像に基づいて、試験材Sのせん断変形を定量的に評価するに際し、荷重F1の印加によって試験材Sを変化させる前の画像と、荷重F1を印加している途中の画像、あるいは荷重F1を印加している途中の複数の画像を相互に比較して、表面のパターンを指標として、試験材Sの表面の各部の変位量を見積もる。この際、画像解析の具体的な方法として、(デジタル)画像相関法を好適に用いることができる。図4A,4Bに、画像相関法による変位の解析を説明する。図4Aは、荷重印加前の初期状態における試験材Sの表面を撮影した画像であり、黒鉛粉末による濃色のパターンと、白色塗料による白色のパターンが混在している。図4Bは、試験材Sに対して、画像の上下方向に荷重F1を印加している途中の画像を示している。ここでは、図4Aの初期状態と比較して、表面のパターンの形状および位置が変化している。
【0056】
画像相関法においては、初期状態の画像を微小領域に分割し、その微小領域と同じ輝度分布を有する領域を、荷重印加中の画像全体から探索する。そして、対応する微小領域の座標の変化に基づいて、変位量を見積もる。図4Aにおいて、それぞれ長方形1,2,3で示した、座標(x,y)、(x,y)、(x,y)に重心を有する領域が、図4Bにおいて、それぞれ平行四辺形1’,2’,3’に変形するとともに、重心の座標が、(x’,y’)、(x’,y’)、(x’,y’)に変位している。このように、画像中の座標の変位から、試験材Sにおけるせん断ひずみを見積もることができる。
【0057】
画像解析に基づいて試験材Sのせん断ひずみを評価する場合には、上記の機械的測定を利用する場合と異なり、試験材Sの変形量を、非接触にて見積もる。そのため、試験材Sに接触して荷重F1を印加する試験装置1において、荷重F1の印加に伴って構成部材の変形やずれが生じたとしても、それら変形やずれの影響を受けずに、試験材Sのせん断ひずみを見積もることができる。よって、低ひずみ領域から、せん断応力とせん断ひずみとの関係を、高い正確性をもって評価することができる。
【0058】
図5A,5Bに、画像相関法を用いたせん断試験によって得られたせん断応力曲線を示す。図5Aは全体図であり、図5Bは、せん断ひずみが小さい領域を示す拡大図である。図では、後の実施例で用いている「Cu-Mg合金」についての、せん断応力曲線を示している。図では、金属材の圧延方向に平行な方向(GW)の計測結果を黒色で、圧延方向に垂直な方向(BW)の計測結果をグレーで表示している。図5Aに破線で囲んで示し、また図5Bの拡大図から明確に分かるように、せん断ひずみがおおむね0.004以下の小さい領域において、せん断応力とひずみがほぼ比例している。実線にて近似直線を表示している。この直線的な挙動は、図3の機械的測定によるせん断試験で得られたせん断応力曲線において、低ひずみ領域で、曲線が下に凸となっていたのと大きく異なっており、弾性域の理想的な挙動に合致している。これは、せん断ひずみの計測値が、試験装置1の構成部材の変形やずれ等、せん断ひずみ以外の非本質的な要因の寄与を含まないことによる。
【0059】
直線的な弾性域の挙動が得られていることで、せん断降伏応力τとして、0.2%耐力を高精度に見積もることができる。つまり、図5Bに示すように、せん断応力曲線の弾性域を近似した原点を通る近似直線(各色の実線で表示)を、せん断ひずみ0.002の点まで平行移動し(各色の破線で表示)、せん断応力曲線との交点におけるせん断応力の値を、0.2%耐力、つまりせん断降伏応力τとすればよい。そのせん断降伏応力τに基づいて、降伏応力比τ/σを算出し、降伏応力比閾値との比較等により、材料の耐しわ性の評価に用いればよい。
【0060】
画像相関法を用いることで、低ひずみ領域において、正確性の高いせん断応力曲線が得られるため、せん断降伏応力τ以外にも、低ひずみ領域での挙動に基づいて得られる物性を、高精度に見積もることができる。例えば、弾性域を近似した直線(図5B中の実線)の傾きを、剛性率とすることができる。さらに、せん断応力曲線を両対数表示したうえで(図略)、塑性域に切り替わった後の領域を直線近似し、その近似直線の傾きを加工硬化指数(n値)とすることができる。
【0061】
正確性の高いせん断応力曲線を得る観点から、低ひずみ域から高ひずみ域に至る全域で、画像解析によってせん断ひずみを評価することができる。しかし、画像解析と、上で説明した機械的測定とを併用して、せん断ひずみを見積もり、せん断応力曲線を得てもよい。上記のように、せん断ひずみの大きい領域においては、機械的測定を用いる場合でも、せん断ひずみをある程度正確に評価することができる。そこで、例えば、弾性域を含む低ひずみ領域における評価を、画像解析によって行い、高ひずみ領域における評価を、機械的測定によって行ってもよい。
【0062】
<面内せん断試験と曲げ加工性>
上記のように、せん断試験を行って、最大せん断応力τmaxおよびせん断降伏応力τの値を得たうえで、最大応力比τmax/σmaxや降伏応力比τ/σを、異なる材料間で相互に比較することで、材料間で、耐割れ性や耐しわ性を定量的に比較することができる。また、最大応力比τmax/σmaxおよび降伏応力比τ/σに閾値を設け、それらの値が閾値以上となるようにすることで、金属材料を、高い耐割れ性や耐しわ性を有するものとすることができる。
【0063】
ここで、上記で説明したように、金属材に対して、面内のせん断試験を行って得られる最大せん断応力τmaxおよびせん断降伏応力τを、面外の変形である曲げ加工性の指標として用いることができる。多くの金属材において、面内のせん断変形と面外のせん断変形とで、せん断応力とせん断ひずみの関係に、類似性があり、面内のせん断ひずみが大きい材料は、面外のせん断ひずみも大きくなりやすいからである。つまり、面内のせん断試験で得られる最大応力比τmax/σmaxおよび降伏応力比τ/σが大きい場合には、面内の変形における耐割れ性および耐しわ性が高くなるが、同時に、曲げ変形等、面外の変形における耐割れ性および耐しわ性も高くなりやすい。なお、面内のせん断応力と面外のせん断応力の間に異方性が存在する場合には、面内のせん断試験によって見積もられる最大応力比τmax/σmaxおよび降伏応力比τ/σと、面外の変形における耐割れ性および耐しわ性との間の相関性が低くなる場合もあるが、そのような場合には、相関性の低さの影響を受けても、面外変形において高い耐割れ性および耐しわ性を示す材料を弁別できるように、最大応力比閾値および降伏応力比閾値を大きな値に設定しておくとよい。
【0064】
具体的な最大応力比閾値や、降伏応力比閾値は、合金の主成分等、材料の種類や、用途等に応じて、設定することができる。例えば、電気接続端子等の材料として用いられる銅や銅合金の場合に、後の実施例に示すように、面内のせん断試験で得られた最大応力比τmax/σmaxに対して適用される最大応力比閾値を、0.60としておけば、曲げ加工時に割れの発生しにくい材料を選別することができる。最大応力閾値を0.65とすると、さらに好ましい。また、面内のせん断試験で得られた降伏応力比τ/σに対して適用される降伏応力比閾値を、0.48としておけば、曲げ加工時にしわの発生しにくい材料を選別することができる。降伏応力比閾値を0.51とすると、さらに好ましい。
【0065】
上に説明したとおり、最大せん断応力τmaxやせん断降伏応力τを、引張強度σmaxおよび引張降伏応力σで除して、最大応力比τmax/σmaxや降伏応力比τ/σを指標として曲げ加工性を評価することにより、せん断ひずみが小さいことのみならず、平面ひずみの寄与割合が大きいことによる曲げ加工性の高さを考慮に入れることができる。ここで、面内のせん断試験で得られるせん断降伏応力τを、引張降伏応力σで除した降伏応力比τ/σを用いて、面外の曲げ加工性を評価することの意義は、降伏曲面とひずみとの関係に基づいて、さらに詳細に説明することができる。図6Aに示すように、xy平面に板面を有する板材を曲げ変形させた際に、ある程度曲げの量が大きくなると、面外方向の応力σzxが発生する。この際、図6Bに模式的に示すように、σxx-σzx降伏曲面に垂直な方向にひずみが発生する(dε)。このひずみのσzx方向の成分がせん断ひずみとなる。このような降伏曲面において、σzx側の傾き(σzx軸と降伏曲面がなす角;以下でも傾斜と称する場合に同じ)が大きいほど、せん断ひずみが大きくなり、せん断帯が形成されやすくなる。ここで、上記のせん断試験によって得られる降伏応力τは、面内のせん断応力σxyに対応付けることができ、引張試験によって得られる引張降伏応力σは、垂直応力σxxに対応付けることができるが、せん断の降伏曲面に異方性がなければ、σzx=σxyとなる。この場合に、σxx-σzx降伏曲面の傾きを、おおむね引張降伏応力σと面内のせん断における降伏応力τの比である降伏応力比τ/σに対応づけることができる。つまり、降伏応力比τ/σが小さいほど、σxx-σzx降伏曲面の傾きが大きくなり、せん断変形が進みやすい。そこで、面内のせん断試験によって評価されるせん断降伏応力τに基づいて降伏応力比τ/σを算出し、その降伏応力比τ/σ大きくすることを、板材を面外に曲げ変形させた際に、面外方向に発生するひずみを低減するための指針として採用することができる。
【0066】
以上では、金属材の曲げ加工性を、面内のせん断試験の結果に基づいて評価したが、面外のせん断試験の結果に基づいて評価することもできる。この場合には、例えば、試験材Sを矩形の板材として準備し、図1の試験装置1の各治具21,21,22で、その試験材Sを厚み方向上下から挟み込んで、板面に垂直に押圧部材31で荷重F1を印加すればよい。そして、上記と同様にせん断応力曲線を取得し、最大せん断応力τmaxおよびせん断降伏応力τに基づいて、曲げ加工性を評価すればよい。画像解析によってひずみを見積もる場合には、試験材Sの厚み方向の端面にパターンを形成し、その端面をカメラにて撮影することになる。上記面内せん断試験の場合と同様に、最大応力比τmax/σmaxが大きいほど、曲げ加工時の耐割れ性が高く、降伏応力比τ/σが大きいほど、曲げ加工時の耐しわ性が高いと評価することができる。
【0067】
<金属部材の製造方法>
最後に、本開示の一実施形態にかかる金属部材の製造方法について説明する。ここでは、板状の金属材料を原料として用いて、曲げ加工を経て、所定の形状を有する金属部材を製造する。この際、原料として用いる金属材料を選定するにあたり、上記で説明した本開示の実施形態にかかる材料評価方法を適用する。
【0068】
つまり、加工の原料となる金属材料に対して、上記で説明した材料評価方法による評価を実施する。例えば、候補とする金属材料が、所定の最大応力比閾値以上の最大応力比τmax/σmaxを有していることにより、十分な耐割れ性を有していると評価できるものであれば、その金属材料を、割れの起こりにくい加工原料として用いることができる。また、候補とする金属材料が、所定の降伏応力比閾値以上の降伏応力比τ/σを有していることにより、十分な耐しわ性を有していると評価できるものであれば、その金属材料を、しわの生じにくい加工原料として用いることができる。あるいは、複数の候補を比較して、それらの候補の中で、大きな最大応力比τmax/σmax、また大きな降伏応力比τ/σを示す金属材料を、加工の原料として選定すればよい。
【0069】
製造される金属部材の種類は、特に限定されるものではないが、電気接続端子を、好適な例として挙げることができる。電気接続端子は、銅や銅合金に代表される金属の板材を、所定の形状に打ち抜いたうえで、曲げ加工を施し、製造されるものである。180°等、急な角度への曲げを伴うことも多い。曲げ加工を行う際に、板材に、割れやしわ等の損傷が発生すれば、製造される電気接続端子において、所定の電気的特性や、機械的強度を確保できなくなる可能性がある。上記材料評価方法により、材料の曲げ加工性を定量的に評価したうえで、十分に高い耐割れ性や耐しわ性を有する材料を原料として選定しておけば、所定の電気的特性および機械的強度を有する電気接続端子を、高い生産性をもって、製造することができる。
【実施例
【0070】
以下に実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。ここでは、種々の銅合金材について、面内のせん断試験を行って、せん断応力曲線を取得し、代表値と曲げ試験の結果との対比を行った。以下で、各評価は、室温(25℃)、大気中にて行った。
【0071】
[試験方法]
(試料の準備)
試料として、以下の各種銅合金の板材を準備した。
・Cu-Mg合金
・コルソン合金1,2:成分元素の含有量が相互に異なる。
・Cu-Ni-Sn合金
・7-3黄銅
・高強度黄銅
【0072】
(せん断応力曲線の取得)
図1に示した構造を有する試験装置を用い、上記で説明した画像相関法を用いた面内のせん断試験を行って、せん断応力曲線を取得した。印加荷重には、材料試験機(島津製作所製 「オートグラフ AG-10」)を用いた。変位速度は、2mm/minとした。ひずみの見積もりにおいては、顕微鏡を介して試験材の板面を撮影した画像に対して、画像相関法を適用した。画像相関法による解析には、ソフトウェアとしてGOM-Correlateを使用した。得られたせん断応力曲線から、破断時のせん断応力を読み取り、最大せん断応力τmaxとするとともに、0.2%耐力を読み取り、せん断降伏応力τとした。
【0073】
試験材としては、図2Aに示した形状のものを用いた。各部の寸法は、以下のとおりとした。
・試験材の外形:30mm×30mmの正方形
・変形部の長さa=5.0mm
・変形部の幅b=0.4mm
・スリットの幅b’=0.5mm
・板厚t=0.15mm
せん断試験としては、各試料について、圧延時に形成されるロール目に平行にスリットを形成した試験材を用いたGW方向の試験と、ロール目に垂直にスリットを形成した試験材を用いたBW方向の試験の両方を行った。試験材の表面には、白色塗料のスプレー塗布と、黒鉛粉末の散布によって、パターンを形成しておいた。
【0074】
(引張試験)
各試料に対して、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、引張強度σmaxおよび引張降伏応力をσを測定した。測定は、厚さ0.15mmの板状試料をJIS 13Bのダンベル形状に加工して、GWおよびBWのそれぞれの方向に、引張荷重を印加して行った。試験には、材料試験機(島津製作所製 「オートグラフ AG-10」)を用い、試験速度を2mm/min、標線間距離を25mmとした。
【0075】
(曲げ評価試験)
各試料に対して、曲げ加工を行い、曲げ加工性を評価した。具体的には、厚さ0.15mm、幅1.5mmとした試料に対して、GWおよびBWの2つの方向に、それぞれ曲げを加えた。この際、曲げの内側の曲率半径(内R)が0.3mmとなるように、180°曲げを行った。その後、曲げの外側に当たる部位を、光学顕微鏡にて観察し、割れおよびしわの有無を観察した。この際、非特許文献1に記載された規格と同様に、「割れ」は、「割れの底が真上から観察できない、せん断帯に沿って割れた状態」として判定し、「しわ」は、「曲げ加工によって現れた段差状のくぼみ又はすじが観察できる状態」として判定した。「しわ」の形成については、曲げ方向へのしわの幅が10μm未満の場合を「小」、10μm以上かつ50μm未満の場合を「中」、50μm以上の場合を「大」と評価した。
【0076】
[試験結果]
図5Aに、「Cu-Mg合金」について得られたせん断応力曲線を示す。黒色で示すものがGW、グレーで示すものがBWの計測結果である。上でも説明したとおり、せん断応力曲線が、破線で囲んだごく低ひずみの領域から、直線に近似できる挙動を示しており、弾性域における挙動を正確に評価できていると言える。このように、ひずみの見積もりに画像相関法を用いることで、せん断応力とひずみの関係を、正確に評価することができる。
【0077】
下の表1に、せん断試験および引張試験によって得られた測定値と、曲げ評価結果をまとめる。
【0078】
【表1】
【0079】
表1によると、おおむね、曲げ評価試験において割れが発生している場合に比べて、割れが発生していない場合の方が、最大応力比τmax/σmaxが大きい傾向が見られる。そして、最大応力比τmax/σmaxが0.60以上であれば、割れが発生していない。このことから、最大せん断応力τと割れの発生の間には相関性があり、最大せん断応力比τmax/σmaxを十分に大きくすることで、割れの発生を回避できることが示される。最大応力比τmax/σmaxに0.60との閾値を設け、その閾値以上の最大応力比τmax/σmaxを有する材料を選別することで、曲げ加工時に、割れの発生を回避することができる。閾値としては、試験方向(GWまたはBW)を問わず、同じ値を適用することができる。
【0080】
さらに、しわの発生に着目すると、降伏応力比τ/σが0.48以上であれば、「大」と評価される深刻なしわが発生していない。このことから、せん断降伏応力τとしわの発生の間には相関性があり、降伏応力比τ/σを十分に大きくすることで、深刻なしわの発生を回避できることが示される。降伏応力比τ/σに0.48との閾値を設け、その閾値以上の降伏応力比τ/σを有する材料を選別することで、曲げ加工時に、深刻なしわの発生を回避することができる。さらに、閾値を0.51とすれば、「中」と評価される中程度のしわの発生まで、回避することができる。なお、一部に、最大応力比τmax/σmaxと割れの有無の間、また降伏応力比τ/σとしわの程度の間の相関性が低くなっているデータ点があるが、これは、面内の応力と面外の応力の間に異方性が存在することによると考えられる。
【0081】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 試験装置
10 支持枠
20 ホルダ
21 固定治具
22 可動治具
24 ネジ
25 空隙
30 押圧具
31 押圧部材
90 従来の曲げ加工性試験用の治具
91 上型
92 凸部
95 下型
96 凹部
97 接合部
a 変形部の長さ
b 変形部の幅
b’ スリットの幅
F1,F2 荷重
R1 中央域
R2 端部域
R3 変形部
S,S’ 試験材
S1 スリット
S2 スリットの先端部
S3 スリットを設ける辺
S’1 曲げ加工部
t 板厚

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7