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特許7512934走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240702BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021051295
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149236
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聡一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓央
(72)【発明者】
【氏名】近藤 鈴華
(72)【発明者】
【氏名】北川 栄来
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/065892(WO,A1)
【文献】特開2020-080167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更において前記車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを前記車線変更の状況に応じて設定する設定部と、
前記確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求し、前記確認レベルが前記レベル閾値よりも低い場合、前記車線変更における周辺確認のためであって前記第1車線変更前動作よりも前記運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を前記運転者に前記通知装置を介して要求する要求部と、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御する制御部と、を備え
前記設定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合よりも低い前記確認レベルを設定す
走行制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合であって、前記他の車線の所定区間における他車両の有無を判定し、他車両があると判定された場合、他車両があると判定されない場合よりも高い前記確認レベルを設定する、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合であって、前記他の車線を走行していた前記車両が前記他の車線における前方を走行する被追越車両を追い越すために前記走行中の車線に車線変更した後に、前記他の車線における前記被追越車両の前方に車線変更する場合であって、前記被追越車両から所定距離前方までの前記所定区間に前記他車両が検出されない場合、前記レベル閾値よりも低い前記確認レベルを設定する、請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更において前記車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを前記車線変更の状況に応じて設定し、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合よりも低い前記確認レベルを設定し、
前記確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求し、前記確認レベルが前記レベル閾値よりも低い場合、前記車線変更における周辺確認のためであって前記第1車線変更前動作よりも前記運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を前記運転者に前記通知装置を介して要求し、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御する、
ことを含む走行制御方法。
【請求項5】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更において前記車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを前記車線変更の状況に応じて設定し、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合よりも低い前記確認レベルを設定することと、
前記確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求し、前記確認レベルが前記レベル閾値よりも低い場合、前記車線変更における周辺確認のためであって前記第1車線変更前動作よりも前記運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を前記運転者に前記通知装置を介して要求することと、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御することと、
をコンピュータに実行させる走行制御用コンピュータプログラム。
【請求項6】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更が前記車両の運転者の指示に基づくか否かに応じて、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作または前記第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作のいずれを前記運転者に要求するかを決定する決定部と、
前記決定に応じて、前記第1車線変更前動作または前記第2車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求する要求部と、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御する制御部と、を備え
前記決定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記第2車線変更前動作を要求することを決定す
走行制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合であって、前記車線変更の目標車線が前記車両の現在位置の前方で開始される状況では、前記第2車線変更前動作を前記運転者に要求すると決定する、請求項に記載の走行制御装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記車線変更が前記運転者の指示に基づかない場合であって、前記他の車線を走行していた前記車両が前記他の車線における前方を走行する被追越車両を追い越すために前記走行中の車線に車線変更した後に、前記他の車線における前記被追越車両の前方に車線変更する場合であって、前記被追越車両から所定距離前方までの所定区間に他車両が検出されない場合、前記第2車線変更前動作を前記運転者に要求すると決定する、請求項に記載の走行制御装置。
【請求項9】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更が前記車両の運転者の指示に基づくか否かに応じて、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作または前記第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作のいずれを前記運転者に要求するかを決定し、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記第2車線変更前動作を要求することを決定し、
前記決定に応じて、前記第1車線変更前動作または前記第2車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求し、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御する、
ことを含む走行制御方法。
【請求項10】
車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、前記車線変更が前記車両の運転者の指示に基づくか否かに応じて、前記車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作または前記第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作のいずれを前記運転者に要求するかを決定し、前記車線変更が前記運転者の指示に基づく場合、前記第2車線変更前動作を要求することを決定することと、
前記決定に応じて、前記第1車線変更前動作または前記第2車線変更前動作を前記運転者に通知装置を介して要求することと、
前記運転者が要求された前記第1車線変更前動作または要求された前記第2車線変更前動作を行い、かつ、前記車線変更において前記車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を前記車両の周辺の状況が満たした場合、前記車線変更を実行するよう前記車両の走行を制御することと、
をコンピュータに実行させる走行制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行を制御する走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者は、車両が走行制御装置の制御による車線変更をより安全に行うために、周辺状況の確認のための所定の動作を要求される場合がある。
【0003】
特許文献1には、自動で車両の車線変更を行わせる場合に、運転者による安全確認の実施を促す運転支援装置が記載されている。特許文献1に記載の運転支援装置は、検出された運転者の状態に基づいて、運転者が車線変更時における安全確認のための所定の動作を実施したと判定された場合に自動での車線変更を許可し、所定の動作を実施していないと判定された場合には自動での車線変更を許可しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-033013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者の状態または車線変更時の周辺の状況によっては、運転者による所定の動作を行わなくても、車両の周辺が車線変更可能な状況であると判定できる場合がある。例えば、現在の車線から新たに分岐する分岐車線への車線変更では、車線変更先の車線に他車両が存在する可能性は低いため、走行制御装置は、周辺状況の確認を運転者に要求することなく車線変更可能な状況と判定することができる。また、運転者の要求に基づいて車線変更を実行する場合、運転者は周辺状況を確認した後に車線変更の要求を行っていると考えられるため、走行制御装置は、周辺状況の確認を運転者に要求することなく車線変更可能な状況と判定することができる。このような状況においても一律に運転者に周辺状況の確認を要求する走行制御装置は、運転者にわずらわしさを感じさせる。
【0006】
本開示は、運転者にわずらわしさを感じさせないように適切に車線変更を実行することができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる走行制御装置は、車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを車線変更の状況に応じて設定する設定部と、確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求し、確認レベルがレベル閾値よりも低い場合、車線変更における周辺確認のためであって第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求する要求部と、運転者が要求された第1車線変更前動作または要求された第2車線変更前動作を行い、かつ、車線変更において車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を車両の周辺の状況が満たした場合、車線変更を実行するよう車両の走行を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本開示にかかる走行制御装置において、設定部は、他の車線の所定区間における他車両の有無を判定し、他車両があると判定された場合、他車両があると判定されない場合よりも高い確認レベルを設定することが好ましい。
【0009】
本開示にかかる走行制御装置において、設定部は、他の車線を走行していた車両が他の車線における前方を走行する被追越車両を追い越すために走行中の車線に車線変更した後に、他の車線における被追越車両の前方に車線変更する場合であって、被追越車両から所定距離前方までの所定区間に他車両が検出されない場合、レベル閾値よりも低い確認レベルを設定することが好ましい。
【0010】
本開示にかかる走行制御装置において、設定部は、車線変更が運転者の指示に基づく場合、車線変更が運転者の指示に基づかない場合よりも低い確認レベルを設定することが好ましい。
【0011】
本開示にかかる走行制御方法は、車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを車線変更の状況に応じて設定し、確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求し、確認レベルがレベル閾値よりも低い場合、車線変更における周辺確認のためであって第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求し、運転者が要求された第1車線変更前動作または要求された第2車線変更前動作を行い、かつ、車線変更において車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を車両の周辺の状況が満たした場合、車線変更を実行するよう車両の走行を制御する、ことを含む。
【0012】
本開示にかかる走行制御用コンピュータプログラムは、車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを車線変更の状況に応じて設定することと、確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求し、確認レベルがレベル閾値よりも低い場合、車線変更における周辺確認のためであって第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求することと、運転者が要求された第1車線変更前動作または要求された第2車線変更前動作を行い、かつ、車線変更において車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を車両の周辺の状況が満たした場合、車線変更を実行するよう車両の走行を制御することと、をコンピュータに実行させる。
【0013】
本開示にかかる走行制御装置は、運転者にわずらわしさを感じさせないように適切に車線変更を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
図2】走行制御装置のハードウェア模式図である。
図3】走行制御装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
図4】車線変更の第1の状況を説明する図である。
図5】車線変更の第2の状況を説明する図である。
図6】走行制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、運転者にわずらわしさを感じさせないように適切に車線変更を実行することができる走行制御装置について詳細に説明する。走行制御装置は、車両が走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを車線変更の状況に応じて設定する。そして、走行制御装置は、設定された確認レベルに応じて特定された、車線変更における周辺確認のための車線変更前動作を運転者に通知装置を介して要求する。走行制御装置は、設定された確認レベルが高いほど運転者の負担が大きい車線変更前動作を運転者に要求する。走行制御装置は、確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を運転者に要求する。また、走行制御装置は、確認レベルがレベル閾値よりも低い場合、車線変更における周辺確認のためであって第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい第2車線変更前動作を運転者に要求する。そして、走行制御装置は、運転者が要求された第1車線変更前動作または第2車線変更前動作を行い、かつ、車線変更において車両の周辺の状況が満たすべき周辺条件を車両の周辺の状況が満たした場合、車線変更を実行するよう車両の走行を制御する。
【0016】
図1は、走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【0017】
車両1は、周辺カメラ2と、ドライバモニタカメラ3と、メーターディスプレイ4と、GNSS受信機5と、ストレージ装置6と、走行制御装置7とを有する。周辺カメラ2、ドライバモニタカメラ3、メーターディスプレイ4、GNSS受信機5、およびストレージ装置6と、走行制御装置7とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0018】
周辺カメラ2は、車両の周辺が表された周辺画像を生成するための周辺撮影部の一例である。周辺カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ2は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置され、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、周辺の状況が表された周辺画像を出力する。
【0019】
ドライバモニタカメラ3は、車両の運転者の顔領域を表す顔画像を生成するための運転者撮影部の一例である。ドライバモニタカメラ3は、CCDあるいはC-MOSなど、赤外光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。また、ドライバモニタカメラ3は、赤外光を発する光源を有する。ドライバモニタカメラ3は、例えば車室内の前方に、運転者シートに着座する運転者の顔に向けて取り付けられる。ドライバモニタカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに運転者に赤外光を照射し、運転者の顔が写った画像を時系列に出力する。
【0020】
メーターディスプレイ4は、通知装置の一例であり、例えば液晶ディスプレイを有する。メーターディスプレイ4は、車内ネットワークを介して走行制御装置7から受け取った信号に従って、周辺状況の確認のための所定の動作を運転者に要求する画面を表示する。
【0021】
GNSS受信機5は、所定の周期ごとにGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機5は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して走行制御装置7へ出力する。
【0022】
ストレージ装置6は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置6は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての無車線区間および車線区画線を表す情報が含まれる。
【0023】
走行制御装置7は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを備えるECU(Electronic Control Unit)である。走行制御装置7は、車線変更の実行前に、車線変更の状況に応じて設定される確認レベルに応じた車線変更前動作を運転者にメーターディスプレイ4を介して要求する。そして、走行制御装置7は、通信インタフェースを介して周辺カメラ2およびドライバモニタカメラ3から受信する周辺画像および顔画像を用いて、運転者が要求された車線変更前動作を行い、かつ、車両1の周辺の状況が周辺条件を満足したか否かを判定し、判定結果に基づいて車線変更を実行する。
【0024】
図4は、走行制御装置7のハードウェア模式図である。
【0025】
通信インタフェース71は、通信部の一例であり、走行制御装置7を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース71は、受信したデータをプロセッサ73に供給する。また、通信インタフェース71は、プロセッサ73から供給されたデータを外部に出力する。
【0026】
メモリ72は、記憶部の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ72は、プロセッサ73による処理に用いられる各種データ、例えば、現在車線から目標車線への車線変更において、目標車線の後方から他車両が接近してこないと考えられる状況を特定する状況条件と、当該車線変更において運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルとを関連づける状況テーブルを保存する。また、メモリ72は、プロセッサ73による処理に用いられる各種データとして、確認レベルに応じて要求すべき車線変更前動作を判定するためのレベル閾値、車線変更前動作を運転者に要求するために通知される要求メッセージ、車線変更を実行するために周辺の状況が満たすべき周辺条件等を保存する。また、メモリ72は、所定時間範囲内に実行された車線変更の状況を一時保存する。また、メモリ72は、各種アプリケーションプログラム、例えば走行制御処理を実行する走行制御用コンピュータプログラム等を保存する。
【0027】
プロセッサ73は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ73は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0028】
図5は、走行制御装置7が有するプロセッサ73の機能ブロック図である。
【0029】
走行制御装置7のプロセッサ73は、機能ブロックとして、計画部731と、設定部732と、要求部733と、制御部734とを有する。プロセッサ73が有するこれらの各部は、プロセッサ73上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ73の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ73が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして走行制御装置7に実装されてもよい。
【0030】
計画部731は、車両1が走行する車線を現在の車線から他の車線に変更する車線変更を計画する。
【0031】
計画部731は、車線変更が必要な状況であるか否かを判定し、車線変更が必要な状況であると判定された場合に車線変更を計画する。例えば、計画部731は、通信インタフェース71を介して周辺カメラ2から受信する周辺画像から、車両1が走行する道路に設けられた車線区画線および車両1の周囲を走行する他車両を検出する。計画部731は、例えば車両1が走行する車線の前方を走行する他車両との間隔が逓減して間隔閾値よりも小さくなった場合、他の車線への車線変更を計画する。
【0032】
また、計画部731は、予め定められた走行経路に従った走行(例えば側道への分岐)のために車線変更が必要となる位置の手前で、車線変更を計画する。
【0033】
設定部732は、走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、当該車線変更の状況がメモリ72に保存された状況テーブルにおいて車線変更の状況を特定する複数の状況条件のうちいずれかの状況条件を満足するかを判定する。そして、設定部732は、状況テーブルにおいて当該車線変更の状況が満足する状況条件に関連付けられた確認レベルを、当該車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルとして設定する。
【0034】
図4は、車線変更の第1の状況を説明する図である。
【0035】
設定部732は、通信インタフェース71を介してGNSS受信機5から受信する測位信号に表される車両1の現在位置の周辺に存在する車線区画線の情報を、高精度地図を記憶するストレージ装置6から取得する。
【0036】
車線変更の第1の状況において、車両1は、車線区画線LL11およびLL12により区画された現在車線L11から、車線区画線LL14およびLL12により区画された目標車線L13に車線変更する。
【0037】
車線変更の目標車線が車両の現在位置の前方で開始される状況は、目標車線の後方から他車両が接近してこないと考えられる状況に該当する。そのため、メモリ72に記憶される状況テーブルには、状況条件「目標車線が現在位置の前方で開始される」が記憶され、レベル閾値よりも低い確認レベルL1が関連付けられている。
【0038】
設定部732は、車線変更の第1の状況において、高精度地図における車線区画線の情報から、目標車線L13が車両1の現在位置の前方で開始されることを検出する。車線変更の第1の状況は、状況条件「目標車線が現在位置の前方で開始される」を満足する。したがって、設定部732は、状況条件「目標車線が現在位置の前方で開始される」に関連付けられた確認レベルL1を、車線変更の第1の状況における確認レベルとして設定する。
【0039】
図5は、車線変更の第2の状況を説明する図である。
【0040】
車線変更の第2の状況では、車両1は、車線区画線LL21、LL22により区画された車線L21から車線区画線LL22、LL23により区画された車線L22に車線変更し、さらに、車線L21を走行する被追越車両20の前方で車線L21に車線変更する。
【0041】
他車両を追い越す車線変更から所定時間範囲内に元の車線に戻るための車線変更を行う状況は、最初の車線変更を行う時点から大きく状況が変化しておらず、目標車線の後方から他車両が接近してこないと考えられる状況に該当する。そのためメモリ72に記憶される状況テーブルには、状況条件「他車両を追い越す車線変更から所定時間範囲内に元の車線に戻る」が記憶され、レベル閾値よりも低い確認レベルL2が関連付けられている。
【0042】
設定部732は、車線変更の第2の状況において、メモリ72から被追越車両20を追い越す車線変更が所定時間範囲内に行なわれた情報を取得する。車線変更の第2の状況は、状況条件「他車両を追い越す車線変更から所定時間範囲内に元の車線に戻る」を満足する。したがって、設定部732は、状況条件「他車両を追い越す車線変更から所定時間範囲内に元の車線に戻る」に関連付けられた確認レベルL2を、車線変更の第2の状況における確認レベルとして設定する。
【0043】
設定部732は、車線変更の状況がメモリ72に記憶された状況条件のいずれも満足しない場合、レベル閾値よりも高い確認レベルL0を、当該車線変更の状況における確認レベルとして設定する。
【0044】
要求部733は、確認レベルとメモリ72に記憶されたレベル閾値とを比較する。そして、確認レベルがレベル閾値よりも高い場合、要求部733は、車線変更における周辺確認のための第1車線変更前動作を運転者にメーターディスプレイ4を介して要求する。
【0045】
第1車線変更前動作は、例えば車線変更先の監視、および、ステアリングホイールの保持である。要求部733は、「車線変更先を監視してください」「ステアリングホイールを保持してください」といった文字列を表示させる表示情報をメーターディスプレイ4に送信することにより、第1車線変更前動作を運転者に要求する。
【0046】
確認レベルがレベル閾値よりも低い場合、要求部733は、車線変更における周辺確認のための第2車線変更前動作を運転者にメーターディスプレイ4を介して要求する。第2車線変更前動作は、第1車線変更前動作よりも運転者の負担が小さい動作である。
【0047】
第2車線変更前動作は、例えば前方の監視、および、ステアリングホイールの保持である。要求部733は、「前方を監視してください」「ステアリングホイールを保持してください」といった文字列を表示させる表示情報をメーターディスプレイ4に送信することにより、第2車線変更前動作を運転者に要求する。
【0048】
要求部733は、不図示のヘッドアップディスプレイ、スピーカといったメーターディスプレイ4以外の出力装置を介して第1および第2車線変更前動作を運転者に要求してもよい。ヘッドアップディスプレイを介して車線変更前動作を運転者に要求する場合、要求部733は、所定の表示情報をヘッドアップディスプレイに送信する。スピーカを介して車線変更前動作を運転者に要求する場合、要求部733は、所定の音声情報をスピーカに送信する。
【0049】
制御部734は、運転者が要求された第1車線変更前動作または第2車線変更前動作を行ったか否かを判定する。
【0050】
制御部734は、通信インタフェース71を介してドライバモニタカメラ3から受信する顔画像から、運転者の視線方向を検出する。制御部734は、例えば瞳孔および光源の角膜反射像が表されたテンプレートと顔画像との間でテンプレートマッチングを行うことで瞳孔および光源の角膜反射像を検出し、それらの位置関係に基づいて視線方向を検出する。視線方向は、車両1の進行方向と運転者の視線との間の水平方向の角度により表される。制御部734は、運転者の視線方向が車両1の車線変更先(例えば車線変更方向を中心とする30度の範囲)、または前方(例えば進行方向を中心とする60度の範囲)に含まれるか否かを判定する。
【0051】
制御部734は、通信インタフェース71を介して受信する、ステアリングホイールを保持しているか否かに応じた信号を出力する不図示のステアリングホイールセンサからの信号に基づいて、運転者がステアリングホイールを保持しているか否かを判定する。ステアリングホイールセンサは、例えば、ステアリングホイールに設けられる静電容量センサであり、運転者がステアリングホイールを保持しているときと保持していないときで異なる静電容量に応じた信号を出力する。
【0052】
制御部734は、メモリ72に記憶された車線変更において車両の周辺の状況が満たすべき条件である周辺条件を、車両1の周辺の状況が満たすか否かを判定する。
【0053】
周辺条件は、例えば車両の周辺を走行する他車両の位置および自車両との相対速度、車両の現在位置よりも前方の所定範囲におけるカーブの曲率半径、分岐または合流車線の有無等を定める。
【0054】
制御部734は、通信ネットワークを介して周辺カメラ2から受信する周辺画像を、地物を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、周辺画像に含まれる他車両の位置を特定する。識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有す畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。他車両を含む周辺画像を教師データとして用いてCNNに入力して予め学習を行うことにより、CNNは他車両の位置を特定する識別器として動作する。
【0055】
制御部734は、異なる時刻に取得された周辺画像からそれぞれ検出された他車両の位置を比較することで、自車両を基準とした他車両の相対速度を算出する。
【0056】
制御部734は、通信インタフェース71を介してGNSS受信機5から受信する測位信号に表される車両1の現在位置の周辺に存在するカーブおよび分岐車線ないし合流車線の情報を、高精度地図を記憶するストレージ装置6から取得する。
【0057】
制御部734は、運転者が要求された第1車線変更前動作または第2車線変更前動作を行い、かつ、周辺条件を車両1の周辺の状況が満たした場合、車線変更を実行するよう車両の走行を制御する。制御部734は、車線変更を実行するように、通信インタフェース71を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両1に動力を供給するエンジン、車両1の走行速度を減少させるブレーキ、および車両1を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0058】
図6は、走行制御処理のフローチャートである。走行制御装置7は、車両1が走行する間、図6に示す走行制御処理を、所定の時間間隔(例えば1/10秒間隔)で繰り返し実行する。
【0059】
走行制御装置7の計画部731は、車両1が走行する車線を現在の車線から他の車線に変更する車線変更を計画する(ステップS1)。
【0060】
次に、走行制御装置7の設定部732は、走行中の車線から他の車線への車線変更の実行前に、車線変更において車両の運転者が行うべき周辺確認の程度を示す確認レベルを車線変更の状況に応じて設定する(ステップS2)。
【0061】
続いて、走行制御装置7の要求部733は、設定された確認レベルがレベル閾値よりも高いか否かを判定する(ステップS3)。
【0062】
確認レベルがレベル閾値よりも高いと判定された場合(ステップS3:Y)、要求部733は、車線変更における周辺確認のための第1車線変更(LC)前動作を運転者にメーターディスプレイ4を介して要求する(ステップS4)。そして、制御部734は、運転者が要求された第1車線変更(LC)前動作を行ったか否かを判定する(ステップS5)。運転者が第1車線変更(LC)前動作を行っていないと判定された場合(ステップS5:N)、制御部734の処理はステップS4に戻る。
【0063】
確認レベルがレベル閾値よりも低いと判定された場合(ステップS3:N)、要求部733は、車線変更における周辺確認のための第2車線変更(LC)前動作を運転者にメーターディスプレイ4を介して要求する(ステップS6)。第2車線変更(LC)前動作は、第1車線変更(LC)前動作よりも運転者の負担が小さい動作である。そして、制御部734は、運転者が要求された第2車線変更(LC)前動作を行ったか否かを判定する(ステップS7)。運転者が第2車線変更(LC)前動作を行っていないと判定された場合(ステップS7:N)、制御部734の処理はステップS6に戻る。
【0064】
運転者が要求された第1車線変更(LC)前動作または第2車線変更(LC)前動作を行ったと判定された場合(ステップS5:YまたはステップS7:Y)、制御部734は、周辺条件を車両の周辺の状況が満たしているか否かを判定する(ステップS8)。周辺条件は、車線変更において車両1の周辺の状況が満たすべき条件である。
【0065】
周辺条件を車両の周辺の状況が満たしていないと判定された場合(ステップS8:N)、制御部734の処理はステップS8に戻る。周辺条件を車両の周辺の状況が満たしていると判定された場合(ステップS8:Y)、制御部734は、車線変更を実行するよう車両1の走行を制御し(ステップS9)、走行制御処理を終了する。
【0066】
このように走行制御処理を実行することにより、走行制御装置7は、運転者にわずらわしさを感じさせないように適切に車線変更を実行することができる。
【0067】
変形例によれば、メモリ72に保存される状況テーブルに、状況条件「車線変更の実行を要求する運転者の操作を受け付けた」が含まれる。走行制御装置7は、車線変更の実行を要求する運転者の操作を受け付けた場合、計画部731による車線変更計画の有無にかかわらず、図6に示すフローチャートのステップS2以降の処理を実行する。
【0068】
変形例によると、図6に示すフローチャートのステップS2において設定部732は、状況条件「車線変更の実行を要求する運転者の操作を受け付けた」に関連付けられた確認レベルL3を、車線変更の状況における確認レベルとして設定する。確認レベルL3は、レベル閾値よりも低いレベルである。
【0069】
車線変更の実行を要求する運転者の操作は、例えば不図示のウィンカレバーの操作である。ウィンカレバーは車内ネットワークに接続され、運転者の操作に応じた信号を走行制御装置7に出力する。また、車線変更の実行を要求する運転者の操作は、例えばタッチパネルが重畳されたメーターディスプレイ4における、車線変更要求ボタンの表示された領域へのタッチである。タッチパネルは車内ネットワークに接続され、運転者のタッチに応じた信号を走行制御装置7に出力する。
【0070】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
7 走行制御装置
731 計画部
732 設定部
733 要求部
734 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6