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特許7512938皺除去方法およびエンボス処理方法ならびに皺除去装置およびエンボス処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】皺除去方法およびエンボス処理方法ならびに皺除去装置およびエンボス処理装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20240702BHJP
   B31F 1/07 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A47K10/16 D
B31F1/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021057433
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154406
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198093(JP,A)
【文献】特開2013-070884(JP,A)
【文献】特許第6844741(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
B31F 1/00 - 7/02
D21H 11/00 - 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造方法において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する皺除去方法であって、
前記積層原紙が巻回されている原反ロールから前記積層原紙を繰り出す繰出工程と、
前記繰出工程で繰り出された前記積層原紙において重ね合わせられていた前記プライ原紙どうしを離間させる分離工程と、
互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンド工程と、
前記エキスパンド工程で前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シングルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流工程と、を備え
前記エキスパンド工程は、前記分離工程で離間させられた前記プライ原紙のそれぞれに対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする皺除去方法。
【請求項2】
複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造方法において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する皺除去方法であって、
一枚の前記プライ原紙が巻回されているとともに前記積層原紙において重ね合わせられる前記プライ原紙の枚数に対応するロール数が設けられた原反ロールのそれぞれから前記プライ原紙を繰り出す繰出工程と、
互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンド工程と、
前記エキスパンド工程で前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シングルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流工程と、を備え
前記エキスパンド工程は、前記繰出工程で前記原反ロールのそれぞれから繰り出された前記プライ原紙どうしが互いに離間した状態で前記プライ原紙のそれぞれに対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする皺除去方法
【請求項3】
前記繰出工程で繰り出された前記プライ原紙どうしを重ね合わせて前記積層原紙をなす積層工程と、
前記積層工程で前記プライ原紙が重ね合わせられた前記積層原紙の前記プライ原紙どうしを離間させる分離工程と、を備え、
前記エキスパンド工程は、前記分離工程で離間させられた前記プライ原紙のそれぞれに対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする請求項に記載の皺除去方法。
【請求項4】
前記繰出工程で繰り出された前記プライ原紙どうしを離間させたまま前記エキスパンド工程へ搬送する維持工程を備えた
ことを特徴とする請求項に記載の皺除去方法。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の皺除去方法の後に前記シングルエンボス加工を前記重合状態の前記積層原紙に対して全面に施すエンボス工程を備えた
ことを特徴とするエンボス処理方法。
【請求項6】
複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造装置において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する皺除去装置であって、
前記積層原紙が巻回されている原反ロールから前記積層原紙を繰り出す繰出パートと、
前記繰出パートで繰り出された前記積層原紙において重ね合わせられていた前記プライ原紙どうしを離間させる分離パートと、
互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンドパートと、
前記エキスパンドパートで前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シング
ルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流パートと、を備え
前記エキスパンドパートは、前記分離パートで離間させられた前記プライ原紙のそれぞれに対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする皺除去装置。
【請求項7】
複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造装置において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する皺除去装置であって、
一枚の前記プライ原紙が巻回されているとともに前記積層原紙において重ね合わせられる前記プライ原紙の枚数に対応するロール数が設けられた原反ロールのそれぞれから前記プライ原紙を繰り出す繰出パートと、
互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンドパートと、
前記エキスパンドパートで前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シング
ルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流パートと、を備え
前記エキスパンドパートは、前記繰出パートで前記原反ロールのそれぞれから繰り出された前記プライ原紙どうしが互いに離間した状態で前記プライ原紙に対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする皺除去装置
【請求項8】
前記繰出パートで繰り出された前記プライ原紙どうしを重ね合わせて前記積層原紙をなす積層パートと、
前記積層パートで前記プライ原紙が重ね合わせられた前記積層原紙の前記プライ原紙どうしを離間させる分離パートと、を備え、
前記エキスパンドパートは、前記分離パートで離間させられた前記プライ原紙のそれぞれに対して前記除去処理を施す
ことを特徴とする請求項に記載の皺除去装置。
【請求項9】
前記繰出パートで繰り出された前記プライ原紙どうしを離間させたまま前記エキスパンドパートへ搬送する維持パートを備えた
ことを特徴とする請求項に記載の皺除去装置。
【請求項10】
請求項7~の何れか一項に記載の皺除去装置と、前記皺除去装置による前記除去処理の後に前記シングルエンボス加工を前記重合状態の前記積層原紙に対して全面に施すエンボスパートと、を備えた
ことを特徴とするエンボス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚で一組をなす原紙にシングルエンボス加工の施されるトイレットロールの製造過程において皺を除去する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールの一つとして、複数枚で一組の原紙が巻回された製品(いわゆる二枚重ねや三枚重ねのトイレットペーパ)や、エンボス加工によって全体的に凹凸の設けられた製品が知られている。
このようなトイレットロールを製造する技術の一つとして、二枚の原紙を重ね合わせて二枚で一組の原紙を積層した後、積層されたままの一組の原紙に対して凹凸を全体的に付与するエンボス加工(すなわちシングルエンボス加工)を施す技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-170659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにシングルエンボス加工の施される一組の原紙には、一部の原紙にのみ皺が生じている場合がある。二枚で一組をなす原紙の具体例を挙げれば、図7に示すように、一方の原紙10に皺Xがあるものの他方の原紙20には皺が存在しない場合がある。二枚で一組の原紙120において一方の原紙10だけに存在する皺Xは、ロール状あるいはバー状のエキスパンダ50によって皺Xの除去を図ったとしても、皺Xのある一方の原紙10の伸長が皺のない他方の原紙20によって制限される。そのため、一方の原紙10に存在する皺を除去できないおそれがある。よって、皺を除去するうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、皺の除去を目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する皺除去方法は、複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造方法において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する方法である。本皺除去方法は、互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンド工程と、前記エキスパンド工程で前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シングルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流工程と、を備えている。
ここで開示するエンボス処理方法は、上記の皺除去方法の後に前記シングルエンボス加工を前記重合状態の前記積層原紙に対して全面に施すエンボス工程を備えている。
【0007】
ここで開示する皺除去装置は、複数枚のプライ原紙が重ね合わせられて一組をなす重合状態の積層原紙に対して凹凸を付与するシングルエンボス加工を施して製造されるトイレットロールの製造装置において、前記シングルエンボス加工が施される前に前記プライ原紙から皺を除去する装置である。本皺除去装置は、互いに離間した前記プライ原紙のそれぞれに対してエキスパンダで皺の除去処理を施すエキスパンドパートと、前記エキスパンドパートで前記除去処理が施された前記プライ原紙どうしを前記シングルエンボス加工の対象となる前記積層原紙として重ね合わせる合流パートと、を備えている。
ここで開示するエンボス処理装置は、上記の皺除去装置と、前記皺除去装置による前記除去処理の後に前記シングルエンボス加工を前記重合状態の前記積層原紙に対して全面に施すエンボスパートと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、積層原紙において重ね合わせられる各プライ原紙の皺を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】皺除去装置(エンボス処理装置)を示す模式図である。
図2】皺除去方法(エンボス処理方法)を説明するフローチャートである。
図3】皺除去装置(エンボス処理装置)の第一変形例を示す模式図である。
図4】皺除去方法(エンボス処理方法)の第一変形例を説明するフローチャートである。
図5】皺除去装置(エンボス処理装置)の第二変形例を示す模式図である。
図6】皺除去方法(エンボス処理方法)の第二変形例を説明するフローチャートである。
図7】重ね合わせられた原紙の一部に皺が生じている例を模式的に示す課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、皺除去方法およびエンボス処理方法ならびに皺除去装置およびエンボス処理装置を実施するための形態を説明する。
本実施形態の皺除去方法はエンボス処理方法の一部で実施され、エンボス処理方法はトイレットロールの製造方法の一部で実施される。同様に、本実施形態の皺除去装置はエンボス処理装置の一部であり、エンボス処理装置はトイレットロールの製造装置の一部である。
【0011】
これらの方法および装置による皺の除去対象は、トイレットロールとして製造される原紙(仕掛品)であり、複数枚で一組をなす原紙である。本方法および本装置によって皺の除去処理が施された原紙は、シングルエンボス加工が全面に施される。
下記の実施形態では、二枚(複数枚)で一組の原紙を皺の除去対象として例示する。また、一枚の原紙を「プライ原紙」と称し、プライ原紙どうしが重ね合わせられた原紙(積層された原紙)を「積層原紙」と称して、枚数によって原紙の名称を区別する。
【0012】
[I.一実施形態]
一実施形態に係るトイレットロールの製造方法および製造装置では、下記の工程a1,a2およびa3が実施される。
・工程a1:抄造したプライ原紙を一次原反ロールとして巻回する工程
・工程a2:一次原反ロールから繰り出されたプライ原紙どうしを重ね合わせて二次原
反ロールを巻回する工程
・工程a3:二次原反ロールから繰り出された原紙にシングルエンボス加工を施す工程
【0013】
工程a1では、抄紙機(「ペーパーマシン」とも称される)において抄造されたプライ原紙が一次原反ロール(「ジャンボロール」とも称される)として巻回される。この工程a1は、抄紙工程やペーパー工程とも称される。
工程a2では、プライマシンにおいて二つの一次原反ロールから繰り出されたプライ原紙どうしが重ね合わせられた二枚で一組の積層原紙が二次原反ロール(以下、単に「原反ロール」と称する)として巻回される。この工程a2は、プライ工程や積層工程とも称される。
【0014】
一般的に、工程a1で巻回された一次原反ロールから複数の二次原反ロールが工程a2で小分けにされて巻回される。このことから、仮に工程a2で一枚のプライ原紙が巻回される場合には、二次原反ロールの切り替えにかかる作業時間を確保するために、工程a2よりも工程a1の製造速度を抑える必要がある。この場合には、工程a1の製造速度が工程a2の製造速度に対して等速あるいは高速に設定可能であったとしても、工程a1の製造速度として設定可能な速度を上限速度から低下させざるを得ない。
【0015】
そこで、工程a2において二つの一次原反ロールのそれぞれから繰り出されたプライ原紙を重ね合わせることにより、一枚のプライ原紙のみが二次原反ロールとして巻回する場合と比較して二次原反ロールの切り替え作業回数を半分(1/積層枚数)に抑えている。
このようにして二次原反ロールの切り替え作業にかかる律速の抑制を図ることで、工程a1の製造速度を抑えることなく設定することが可能である。具体例を挙げれば、工程a2よりも工程a1の製造速度を高く設定することが可能である。
【0016】
上記のようにトイレットロールの製品に設定された積層数のプライ原紙が工程a2で重ね合わせた二次原反ロールを用いることにより、工程a2での二次原反ロールの切り替え作業にかかる律速が抑えられ、生産性の向上に資する。
よって、つぎに説明する工程a3では、トイレットロールの製品に設定された積層数のプライ原紙(積層原紙)の巻回された二次原反ロールを繰り出すことが好ましい。
【0017】
工程a3では、シングルエンボス加工を施すエンボス処理方法が実施される前に、本実施形態で詳述する皺除去方法が皺除去装置で実施される。この工程a3では、シングルエンボス処理加工を施すエンボス工程の前に皺除去工程を実施する。
なお、工程a1~a3の後にその他の工程が実施されることで、トイレットロールが製造される。
下記の本実施形態では、皺除去装置の構成を項目[1]で説明し、その後に皺除去方法の構成を項目[2]で説明する。そして、項目[1]および項目[2]の構成による作用および効果を項目[3]で述べる。
【0018】
[1.皺除去装置の構成]
図1に示すように、皺除去装置9は、エンボス処理装置8の一部に設けられている。
エンボス処理装置8には、以下に示す五つのパートP1~P5が設けられている。皺除去装置9には、五つのパートP1~P5からエンボスパートP5を除いた四つのパートP1~P4が設けられている。換言すれば、エンボス処理装置8は、皺除去装置9による皺の除去処理の後にシングルエンボス加工を施すエンボスパートP5を備えている。
・繰出パートP1 :積層原紙を繰り出すパート
・分離パートP2 :プライ原紙どうしを離間させるパート
・エキスパンドパートP3:プライ原紙のそれぞれに対して皺の除去処理を施すパート
・合流パートP4 :プライ原紙を重ね合わせるパート
・エンボスパートP5 :積層原紙に対してシングルエンボス加工を施すパート
【0019】
==繰出パートP1==
繰出パートP1には、積層原紙12の巻回された一つの原反ロール3が設けられている。原反ロール3で巻回されている積層原紙12は、二枚(複数枚)のプライ原紙1,2が重ね合わせられて一組の重合状態をなす。
積層原紙12をなすプライ原紙1,2のうち、原反ロール3において内周側の一方には第一プライ原紙1(いわば「内プライ原紙」)が積層され、原反ロール3において外周側の他方には第二プライ原紙2(いわば「外プライ原紙」)が積層されている。
【0020】
この繰出パートP1では、プライ原紙1,2どうしが重ね合わせられた重合状態の積層原紙12が原反ロール3から繰り出される。
図1には、原反ロール3からの積層原紙12の繰り出しを案内するガイドロール4が設けられた例を示す。原反ロール3から繰り出された積層原紙12は、ガイドロール4までプライ原紙1,2どうしが重ね合わせられたまま搬送され、つぎに説明する分離パートP2へ搬送される。
【0021】
==分離パートP2,エキスパンドパートP3==
分離パートP2ではプライ原紙1,2が互いに離間させられ、その後のエキスパンドパートP3でプライ原紙1,2のそれぞれに対して皺の除去処理が施される。これらの分離パートP2およびエキスパンドパートP3は、ガイドロール4に対して下流側に配置されている。
【0022】
エキスパンドパートP3には、プライ原紙1,2のそれぞれに対して皺の除去処理を施すエキスパンダ5が設けられている。
エキスパンダ5は、積層原紙12で重ね合わせられていたプライ原紙1,2の枚数と同数が配備されている。具体的には、第一プライ原紙1に対応する第一エキスパンダ51と第二プライ原紙2に対応する第二エキスパンダ52との二つのエキスパンダ5が配置されている。
【0023】
エキスパンダ51,52は、プライ原紙1,2をCD方向(プライ原紙1,2の延在面において搬送方向に直交する方向)に伸長することにより、プライ原紙1,2に対して皺の除去処理を施す機器である。
これらのエキスパンダ51,52には、ロール状の機構(いわゆるエキスパンダーロール)やバー状の部材(いわゆるエキスパンダーバー)などを用いることができる。たとえば、ロール状あるいはバー状のエキスパンダ51,52は、湾曲した筒軸をもつロール体あるいは丸棒体をなす。このような形態をなすエキスパンダ51の外周面は、筒軸方向断面において湾曲している。このように湾曲した外周面を搬送中のプライ原紙1,2に対してCD方向に沿う姿勢で圧接するようにして、エキスパンダ51,52が設置される。
【0024】
上記のエキスパンダ51,52は互いに離間して配置されており、第一プライ原紙1に対する第一エキスパンダ51の第一圧接箇所S1と第二プライ原紙2に対する第二エキスパンダ52の第二圧接箇所S2とが互いに離間している。
すなわち、ガイドロール4まで重ね合わせられていたプライ原紙1,2(すなわち重合状態の積層原紙12)は、第一プライ原紙1が第一圧接箇所S1へ搬送されるのと並行して第二プライ原紙2が第二圧接箇所S2へ搬送される。このようにプライ原紙1,2のそれぞれが別の経路を搬送されることで、ガイドロール4からエキスパンダ51,52までの搬送中にプライ原紙1,2が互いに離間させられる。そのため、エキスパンダ51,52は、プライ原紙1,2の皺を除去する部材であるだけでなく、積層原紙12のプライ原紙1,2どうしを互いに離間させる部材も兼ねている。
【0025】
分離パートP2は、上記のようにしてガイドロール4からエキスパンダ51,52までの間に積層原紙12において重ね合わせられていたプライ原紙1,2どうしを離間(分離)させるパートとして設けられている。
エキスパンドパートP3は、分離パートP2で互いに離間させられたプライ原紙1,2のそれぞれに対してエキスパンダ51,52で皺の除去処理を施すパートとして設けられている。
【0026】
なお、エキスパンダ51,52にエキスパンダーロールが用いられる場合には、エキスパンダーロールによる皺の除去処理(いわばエクスパンド処理)やエンボスパートP5におけるシングルエンボス加工を安定させるために、エキスパンダーロールを駆動させて回転速度を制御することが好ましい。
エキスパンダ51,52で皺の除去処理を施されたプライ原紙1,2は、つぎに説明する合流パートP4へ搬送される。
【0027】
==合流パートP4,エンボスパートP5==
合流パートP4では離間させられたプライ原紙1,2どうしが再び重ね合わせられて積層原紙12をなし、その後のエンボスパートP5では積層原紙12にシングルエンボス加工が施される。これらの合流パートP4およびエンボスパートP5は、エキスパンダ51,52に対して下流側に配置されている。
【0028】
合流パートP4では、エキスパンドパートP3で皺の除去処理が施されたプライ原紙1,2どうしを積層原紙12として再び重ね合わせる。このように重ね合わせられた積層原紙12は、つぎに説明するエンボスパートP5でシングルエンボス加工の対象となる。
エンボスパートP5には、積層原紙12に対してシングルエンボス加工を施す一対のロール6,7が設けられている。
【0029】
シングルエンボス加工とは、プライ原紙1,2が重ね合わせられた状態の積層原紙12に凹凸を形成(付与)する加工を意味する。このシングルエンボス加工では、積層原紙12に対して一方の面(オモテ面およびウラ面の一方)から凹凸を形成せずに、他方の面(オモテ面およびウラ面の他方)のみから凹凸を形成する。
なお、プライ原紙1,2のそれぞれに対して凹凸を形成する加工はダブルエンボス加工と称される。
【0030】
ロール6,7は、プライ原紙1,2が重ね合わせられた重合状態の積層原紙12に対して全面に凹凸を形成する加工(すなわちシングルエンボス加工)を施す形成ロールである。ここでいう「全面」とは、積層原紙12における表面(ひょうめん)において、全領域を意味するのに限らず、少なくとも面状に延在する領域を意味する。この「全面」は、プライ原紙どうしを係合させるコンタクタエンボス(「エッジエンボス」とも称される)のように積層原紙において加工される領域が部分的なエンボス加工と区別する主旨の用語である。
【0031】
一対のロール6,7のうち、一方は外周面に凹凸の形成されたエンボスロール6であり、他方はエンボスロール6との間に積層原紙12を挟むニップロール7である。
このエンボスパートP5では、エンボスロール6における外周の一部に積層原紙12が巻き付けられた後、ロール6,7どうしの間で積層原紙12が圧接(いわゆるニップ)される。それから、ニップロール7における外周の一部に積層原紙12が巻き付けられる。そして、更に下流側へ積層原紙12が搬送される。
【0032】
これらのロール6,7は、二つのエキスパンダ51,52に対して下流側に一対だけが配置されている。すなわち、エキスパンダ51,52の圧接箇所S1,S2では互いに離間していたプライ原紙1,2がエンボスロール6で再び重ね合わせられて積層原紙12となる。このようにプライ原紙1,2の合流した積層原紙12に対してエンボスロール6およびニップロール7がシングルエンボス加工を施す。そのため、エンボスロール6は、積層原紙12にシングルエンボス加工を施す部材であるだけでなく、プライ原紙1,2どうしを再び重ね合わせる部材も兼ねている。
【0033】
合流パートP4は、上記のようにエキスパンダ51,52からエンボスロール6において互いに離間していたプライ原紙1,2どうしを積層原紙12として再び重ね合わせるパートとして設けられている。この合流パートP4で重ね合わせられた積層原紙12は、シングルエンボス加工の対象となる。
エンボスパートP5は、合流パートP4で再び重ね合わせられた重合状態の積層原紙に対して、エンボスロール6およびニップロール7によってシングルエンボス加工を施すパートとして設けられている。
【0034】
[2.皺除去方法の構成]
つぎに、皺除去方法の構成を説明する。
皺除去方法は、上述のようにエンボス処理方法の一部で実施される。
エンボス処理方法では、エンボス処理装置8の構成として上述の各パートP1~P5において、その名称のうち「パート」を「工程」に置換した工程を実施する。
【0035】
詳細に言えば、繰出パートP1では繰出工程が実施され、分離パートP2では分離工程が実施され、エキスパンドパートP3ではエキスパンド工程が実施され、合流パートP4では合流工程が実施され、エンボスパートP5ではエンボス工程が実施される。
皺除去方法は、エンボス処理方法で実施される五工程からエンボス工程を除いた四工程を実施する。換言すれば、エンボス処理方法は、皺除去方法の後にエンボス工程を備えている。
【0036】
図2に示すように、エンボス処理方法および皺除去方法とも、繰出工程(ステップA1)を実施してから分離工程(ステップA2)を実施し、その後にエキスパンド工程(ステップA3)を実施して合流工程(ステップA4)を実施する。
エンボス処理方法では、上記の四工程に加えて、合流工程の後にエンボス工程(ステップA5)も実施する。
【0037】
繰出工程は、原反ロール3から積層原紙12を繰り出す。
分離工程は、繰出工程で繰り出された積層原紙12において重ね合わせられていたプライ原紙1,2どうしを離間させる。
エキスパンド工程は、分離工程で離間させられたプライ原紙1,2のそれぞれに対してエキスパンダ51,52で皺の除去処理を施す。
【0038】
合流工程は、エキスパンド工程で皺の除去処理が施されたプライ原紙1,2どうしを再び重ね合わせる。このように重ね合わせられた積層原紙12は、シングルエンボス加工の対象となる。
エンボス工程は、合流工程で再び重ね合わせられた重合状態の積層原紙12に対してシングルエンボス加工を施す。
【0039】
[3.作用および効果]
本実施形態は、上述のように構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)エンボスパートP5でエンボス工程が実施されることにより、プライ原紙1,2が重ね合わせられた重合状態の積層原紙12に対してシングルエンボス加工が施される。つまり、シングルエンボス加工が施されるときには、積層原紙12のプライ原紙1,2が重ね合わせられている。
【0040】
そもそも、シングルエンボス加工に対してダブルエンボス加工では、離間した状態の各プライ原紙に対して凹凸が付与される。そのため、ダブルエンボス加工はプライ原紙のそれぞれを加工対象とするのに対して、シングルエンボス加工はプライ原紙1,2をまとめて加工対象とする。
このような加工対象の相違するエンボス加工のうちシングルエンボス加工を前提とする本皺除去方法および本皺除去装置では、プライ原紙1,2をまとめて加工対象とするシングルエンボス加工を施すのにもかかわらず、シングルエンボス加工に先立って積層原紙12のプライ原紙1,2を互いにあえて離間した状態にしている。
【0041】
具体的には、シングルエンボス加工の前にエキスパンドパートP3でエキスパンド工程が実施されるときに、積層原紙12のプライ原紙1,2が互いに離間しており、各プライ原紙1,2に皺の除去処理が施される。互いに離間したプライ原紙1,2のそれぞれに皺の除去処理が施されるため、プライ原紙1,2のうち一方のみに皺が存在する場合であってもプライ原紙1,2の他方によって一方の伸長が制限されることなく、プライ原紙1,2の皺を除去することができる。
【0042】
皺の除去されたプライ原紙1,2は、合流パートP4の合流工程が実施されることによって互いに重ね合わせられる。このようにして互いに重ね合わせられたプライ原紙1,2は、シングルエンボス加工の対象となる積層原紙12となる。
よって、積層原紙12に対してシングルエンボス加工が施される前にプライ原紙1,2から皺を除去することができる。
【0043】
(2)本実施形態の皺除去方法および皺除去装置では、繰出パートP1で繰出工程が実施されることによって、原反ロール3から積層原紙12が繰り出される。分離パートP2で分離工程が実施されることによって、原反ロール3から繰り出された積層原紙12のプライ原紙1,2どうしが互いに離間させられる。そのため、プライ原紙1,2の重ね合わせられた積層原紙12が巻回された原反ロール3を用いたエンボス加工ライン(製造ライン)に適用することができる。
【0044】
(3)本実施形態のエンボス処理方法およびエンボス処理装置では、上述のようにして皺除去方法および皺除去装置で皺の除去処理の施されたプライ原紙1,2が再び重ね合わせられた積層原紙12に対し、シングルエンボス加工が全面に施される。そのため、皺の除去されたプライ原紙1,2が重ね合わせられた積層原紙12に対してシングルエンボス加工が施され、良好なエンボス処理に資する。
【0045】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、繰出工程の実施される繰出パートには、一つの原反ロールが設けられるのに限らず、一枚のプライ原紙が巻回された原反ロールが複数(積層原紙において重ね合わせられるプライ原紙の枚数に対応するロール数)設けられていてもよい。このように複数の原反ロールが設けられた例を、下記の第一変形例,第二変形例で説明する。
【0046】
[1.第一変形例]
第一変形例の皺除去装置9′(エンボス処理装置8′)は、図3に示すように、二つの原反ロール31′,32′が設けられた例である。原反ロール31′,32′のうち、一方は第一プライ原紙1′が巻回された第一原反ロール31′であり、他方は第二プライ原紙2′が巻回された第二原反ロール32′である。
繰出パートP1′,P1′では、第一原反ロール31′から第一プライ原紙1′が繰り出されるとともに第二原反ロール32′から第二プライ原紙2′が繰り出される繰出工程が実施される。
【0047】
本変形例では、プライ原紙1′,2′を重ね合わせる積層パートP11が繰出パートP1′,P1′の下流側に設けられている。言い換えれば、原反ロール31′,32′から繰り出されたプライ原紙1′,2′が互いに重ね合わせられるように、プライ原紙1′,2′の搬送経路や原反ロール31′,32′の設置箇所が設定されている。
積層パートP11では、原反ロール31′,32′から繰り出されたプライ原紙1′,2′が互いに重ね合わせられた状態で搬送され、プライ原紙1′,2′どうしを重ね合わせて積層原紙12′をなす積層工程が実施される。
【0048】
この積層パートP11に対して下流には、一実施形態で上述したのと同様に、分離パートP2′,エキスパンドパートP3′,合流パートP4′,エンボスパートP5′が設けられている。これらのパートP2′~P5′には、エキスパンダ51′,52′(エキスパンダ5′)やロール6′,7′が設けられている。
上記のように第一変形例では、一枚のプライ原紙1′,2′をそれぞれに繰り出してから、積層パートP11(積層工程)でプライ原紙1′,2′をいったん重ね合わせた後に、分離パートP2′(分離工程)でプライ原紙1′,2′どうしを互いに離間させている。
【0049】
第一変形例の皺除去方法(エンボス処理方法)は、図2を参照して上述した一実施形態に係る皺除去方法(エンボス処理方法)に対して、図4に示すように繰出工程(ステップA1′,A1′)の内容が相違する点と積層工程(ステップA11)が追加された点とが相違する。その他の点は一実施形態と同様に、第一変形例においても分離工程(ステップA2′),エキスパンド工程(ステップA3′),合流工程(ステップA4′)が実施される。第一変形例のエンボス処理方法では、合流工程の後にエンボス工程(ステップA5′)も実施される。
【0050】
第一変形例の繰出工程では、一実施形態のように単独の繰出工程(いわば「シングル繰出工程」)が実施されるのではなく、二つの原反ロール31′,32′からプライ原紙1′,2′の繰り出しが並行して実施される(このことから第一変形例の繰出工程はマルチ繰出工程やパラレル繰出工程とも言える)。この繰出工程の後には、積層工程が実施される。
積層工程では、繰出工程で繰り出されたプライ原紙1′,2′どうしを重ね合わせて積層原紙12′をなす。
【0051】
上記のように構成される第一変形例によれば、一実施形態のように積層原紙12の巻回された原反ロール3を用意しなくとも、一枚のプライ原紙1′,2′が巻回された原反ロール31′,32′を用いて皺の除去処理やシングルエンボス加工を施すことができる。
さらに、繰出パートP1′,P1′に対して下流の積層パートP11で積層工程が実施されることから、分離パートP2′で分離工程が実施されるまでに搬送されるプライ原紙1′,2′の搬送経路が設定される範囲を抑えることができる。よって、製造ラインの省スペース化に資する。
【0052】
[2.第二変形例]
第二変形例の皺除去装置9″(エンボス処理装置8″)には、図5に示すように、第一変形例と同様に二つの原反ロール31″,32″が繰出パートP1″,P1″に設けられている。
この皺除去装置9″には、原反ロール31″,32″から繰り出されたプライ原紙1″,2″を離間させたままにする維持パートP12が設けられている。すなわち、第二変形例の皺除去装置9″には、第一変形例の積層パートP11および分離パートP2′に代えて維持パートP12が設けられている。
【0053】
本変形例の維持パートP12では、プライ原紙1″,2″どうしを離間させたまま下流側のエキスパンドパートP3″へ搬送する維持工程が実施される。言い換えれば、原反ロール31″,32″から繰り出されたプライ原紙1″,2″が互いに離間した状態が維持されるように、プライ原紙1″,2″の搬送経路や原反ロール31″,32″の設置箇所が設定されている。
上記のように第二変形例では、一枚のプライ原紙1″,2″をそれぞれに繰り出してから、維持パートP12(維持工程)で互いに離間したままのプライ原紙1″,2″がエキスパンドパートP3″へ搬送される。
【0054】
この維持パートP12に対して下流には、一実施形態で上述したのと同様のエキスパンドパートP3″,合流パートP4″,エンボスパートP5″が設けられている。ここで例示する皺除去装置9″には、一実施形態や第一変形例に設けられたガイドロール4,4′が省略されており、維持パートP12よりも下流のパートP3″~P5″にエキスパンダ51″,52″(エキスパンダ5″)やロール6″,7″が設けられている。
【0055】
第二変形例の皺除去方法(エンボス処理方法)は、図4を参照して上述した第一変形例に係る皺除去方法(エンボス処理方法)の積層工程(ステップA11)および分離工程(ステップA2′)に代えて、図6に示すように維持工程(ステップA12)が設けられた点が相違する。その他の点は第一変形例と同様に、第二変形例においてもエキスパンド工程(ステップA3″),合流工程(ステップA4″)が実施される。第二変形例のエンボス処理方法では、合流工程の後にエンボス工程(ステップA5″)も実施される。
第二変形例の維持工程では、第一変形例のようにプライ原紙1′,2′どうしを重ね合わせることなく、繰出工程で繰り出されたプライ原紙1″,2″どうしを離間させたままエキスパンド工程へ搬送する。
【0056】
上記のように構成される第二変形例によれば、第一変形例と同様に、一枚のプライ原紙1″,2″が巻回された原反ロール31″,32″を用いて皺の除去処理やシングルエンボス加工を施すことができる。
さらに、繰出パートP1″に対して下流の維持パートP12で互いに離間させたままのプライ原紙1″,2″をエキスパンドパートP3″へ搬送する。そのため、エキスパンドパートP3″による皺の除去処理前にプライ原紙1″,2″どうしを重ね合わせるためのガイドロールや搬送経路設定を省略することができる。よって、プライ原紙1″,2″を搬送する経路の設計自由度を高めることができ、製造ラインの簡素化に資する。
【0057】
[3.その他]
上記のように皺の除去処理が施されてからシングルエンボス加工の施された原紙から製造されるトイレットロールは、各プライ原紙の細かい皺が除去されたうえで、プライ原紙間の空気層が抑えられる。そのため、同じ巻径(トイレットロールの直径)のダブルエンボス加工品と比較して、巻長の確保されたトイレットロール(いわゆる「長尺品」)を製造するのに好適である。また、同じ巻長のダブルエンボス加工品と比較して、巻径の抑えられたコンパクトなトイレットロールを製造するのにも好適である。たとえば、本実施形態の皺除去方法およびエンボス処理方法ならびに皺除去装置およびエンボス処理装置は、長尺品のトイレットロールを製造するラインに組み込まれる(長尺品をターゲットとして製造するラインに適用される)のが好適である。
上記のようなトイレットロールに好適な諸元の例としては、巻長が50~95[m]であり、坪量が11~17[g]であり、巻径が110~150[mm]であるものが挙げられる。
【0058】
第一変形例や第二変形例のように一枚のプライ原紙を複数の原反ロールから繰り出す場合には、一実施形態のようにプライ原紙どうしが予め重ね合わせられた積層原紙を一つの原反ロールから繰り出す場合と比較して、原反ロールを巻回する(一次原反ロールから二次原反ロールに巻き替える)速度が抑えられる。そのため、第一変形例や第二変形例のように複数の原反ロールから並列にプライ原紙を繰り出すよりも一実施形態のように一つの原反ロールからプライ原紙を繰り出したほうが、原反ロールを巻回する速度が律速となりにくく(原反ロールの準備に要する期間を抑えることができ)、製造効率の低下を抑えることができる。
【0059】
あるいは、エキスパンド工程の実施されるエキスパンドパートへプライ原紙を抄紙機から直接(原反ロールに巻回することなく)搬送してもよい。この場合には、繰出工程の実施される繰出工程を省略することができ、エキスパンドパートよりも上流でプライ原紙どうしが重ね合わせられなければ積層工程の実施される積層パートや分離工程の実施される分離パートも省略することが可能である。
【0060】
そのほか、一実施形態や第一変形例,第二変形例に例示した構成に限らず、設計しうる搬送経路に応じて複数のガイドロールを設けてもよい。具体例を挙げれば、原反ロールよりも下流かつエキスパンダよりも上流の搬送経路に複数のガイドロールが配置されてもよいし、エキスパンダよりも下流かつエンボスロールよりも上流の搬送経路に複数のガイドロールが配置されてもよい。
あるいは、積層原紙で重ね合わせられるプライ原紙の枚数は、二枚に限らず三枚以上であってもよい。この場合には、プライ原紙の枚数と同数のエキスパンダが設けられ、第一変形例および第二変形例のように一枚のプライ原紙を繰り出す原反ロールもプライ原紙の枚数と同ロール数が設けられる。
【0061】
なお、一実施形態のように重合状態の積層原紙が繰り出される場合に、積層原紙をなすプライ原紙のうち原反ロールの内周側および外周側の一方のみに皺が生じやすいのであれば、皺が生じやすいほうのプライ原紙だけに皺の除去処理を施してもよい。具体例を挙げれば、一実施形態の原反ロール3において第二プライ原紙2よりも第一プライ原紙1に皺が発生しやすい際には、エキスパンダ5(エキスパンドパートP3)から第二エキスパンダ52を省略してもよい。
このように構成することで、皺の除去処理を効率よく施しつつ装置構成を簡素にすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 第一プライ原紙
12 積層原紙
2 第二プライ原紙
3 原反ロール
4 ガイドロール
5 エキスパンダ
51 第一エキスパンダ
52 第二エキスパンダ
6 エンボスロール
7 ニップロール
8 エンボス処理装置
9 皺除去装置
P1 繰出パート
P2 分離パート
P3 エキスパンドパート
P4 合流パート
P5 エンボスパート
P11 積層パート
P12 維持パート
S1 第一圧接箇所
S2 第二圧接箇所
X 皺

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7