(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】透明導電膜の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20240702BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240702BHJP
【FI】
H01B13/00 503B
C01B32/168
(21)【出願番号】P 2021062596
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宜裕
(72)【発明者】
【氏名】左右田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】西改 健太
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177967(WO,A1)
【文献】特開2008-177165(JP,A)
【文献】特開2008-204872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
C01B 32/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜の製造装置において、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口(11)を有し、前記供給口から供給されるカーボンナノチューブを含むガスが流れる流路を構成する供給通路(10)と、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、前記多孔質膜のうち前記供給口側の面にカーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を前記供給通路の下流側で支持する支持部(21)と、を備え、
前記供給通路は、前記供給口から前記捕集部材に向かうガスの流れ方向が、前記緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行になるように構成された傾斜部(13)を有している、透明導電膜の製造装置。
【請求項2】
前記捕集部材のうち前記供給口側の捕集面(25)の中心を含み前記捕集面に垂直な仮想線(VL)に対し、前記供給口の中心(111)は、前記緻密膜の有する前記溝の長手方向の一方側にずれた位置にある、請求項1に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記捕集部材のうち前記供給口側の捕集面の直上近傍において、前記捕集面に対するガスの流速ベクトルの仰角(θ1)が90°より小さく、0°以上の範囲になるように構成されている、請求項1または2に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記捕集部材のうち前記供給口側の捕集面の直上近傍の平面視において、前記緻密膜の有する前記溝の長手方向に対するガスの流速ベクトルの入射角(θ2)が90°より小さく、-90°より大きい範囲になるように構成されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項5】
前記傾斜部に設けられ、前記供給口から前記捕集部材に向かうガスの流れ方向を、前記緻密膜の有する前記溝の長手方向に対して斜め又は平行にするガイド板(14)を備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項6】
前記ガイド板は、前記捕集部材のうち前記供給口側の捕集面に対する仰角が90°より小さく、0°以上の範囲となるように設けられており、且つ、前記ガイド板のうち前記捕集部材側の端部と前記捕集部材との間には1mm以上の隙間が設けられている、請求項5に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項7】
前記ガイド板は、前記傾斜部の流路中心線(CL)に対して平行を含む任意の角度に変更可能に構成されている、請求項5または6に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項8】
前記捕集部材に対して前記供給通路とは反対側に設けられ、前記捕集部材を通過したガスを排出する複数の排気通路(30)を備え、
複数の前記排気通路は、前記捕集部材を複数の領域に分割した分割領域ごとに設けられている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項9】
複数の前記排気通路の途中に、各排気通路を流れるガスの流量を調整可能な流量制御弁(32)を備える、請求項8に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項10】
複数の前記排気通路の下流側に、複数の前記排気通路をそれぞれ流れたガスを集合させる集合空間(33)を備える、請求項8または9に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項11】
複数の前記排気通路同士の間に設けられる仕切板(31)を備え、
前記仕切板は、前記傾斜部の流路中心線に対して実質的に平行に設けられており、且つ、前記仕切板のうち前記捕集部材側の端部と前記捕集部材との間には1mm以上の隙間が設けられている、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項12】
前記仕切板のうち前記傾斜部の流路中心線に対して実質的に平行に設けられている部位は、150mm以上の長さを有している、請求項11に記載の透明導電膜の製造装置。
【請求項13】
透明導電膜の製造装置において、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口(11)を有し、前記供給口から供給されるカーボンナノチューブを含むガスが流れる流路を構成する供給通路(10)と、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、前記多孔質膜のうち前記供給口側の面にカーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を前記供給通路の下流側で支持する支持部(21)と、
前記供給通路の内側に設けられ、前記供給口から前記捕集部材に向かうガスの流れ方向を、前記緻密膜の有する前記溝の長手方向に対して斜め又は平行にするガイド板(14)と、を備える透明導電膜の製造装置。
【請求項14】
透明導電膜の製造装置において、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口を有し、前記供給口から供給されるカーボンナノチューブを含むガスが流れる流路を構成する供給通路(10)と、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、前記多孔質膜のうち前記供給口側の面にカーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を前記供給通路の下流側で支持する支持部(21)と、
前記捕集部材に対して前記供給通路とは反対側に設けられ、前記捕集部材を通過したガスを排出する複数の排気通路(30)と、を備え、
複数の前記排気通路は、前記捕集部材を複数の領域に分割した分割領域ごとに設けられている、透明導電膜の製造装置。
【請求項15】
透明導電膜の製造方法において、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、カーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を用意すること(S10)と、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に前記捕集部材を設置すること(S20)と、
前記供給口から前記捕集部材に向かうガスの流れ方向が前記緻密膜の有する前記溝の長手方向に対して斜め又は平行になるように構成されている傾斜部(13)に対し、前記供給口からカーボンナノチューブを含むガスを供給すること(S30)と、
前記捕集部材により捕集されたカーボンナノチューブを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)を含む透明導電膜の製造方法。
【請求項16】
透明導電膜の製造方法において、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、カーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を用意すること(S10)と、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に前記捕集部材を設置すること(S20)と、
前記捕集部材のうち前記供給口側の捕集面に対するガスの入射角を、前記緻密膜の有する前記溝の長手方向に対して平行又は斜めにするように前記供給通路に設けられたガイド板(14)に沿って、前記供給口からカーボンナノチューブを含むガスを供給すること(S30)と、
前記捕集部材により捕集されたカーボンナノチューブを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)を含む透明導電膜の製造方法。
【請求項17】
透明導電膜の製造方法において、
ガスに含まれるカーボンナノチューブを捕集する多孔質膜(22)、および、カーボンナノチューブによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を用意すること(S10)と、
カーボンナノチューブを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に前記捕集部材を設置すること(S20)と、
前記供給口からカーボンナノチューブを含むガスを供給すること(S30)と、
前記捕集部材を複数の領域に分割した分割領域ごとに前記捕集部材に対して前記供給通路とは反対側に設けられた複数の排気通路(30)から、前記捕集部材を通過したガスを排出すること(S35)と、
前記捕集部材により捕集されたカーボンナノチューブを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)を含む透明導電膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンナノチューブを用いた透明導電膜が知られている。透明導電膜は、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波などを用いた車用センサの機能またはフロントガラスの機能を確保するための透明ヒータとして使用することが可能である。具体的には、透明ヒータとして使用される透明導電膜は、車用センサまたはフロントガラスに着氷や曇り等が発生する場合、その車用センサまたはフロントガラスを温めることで、着氷や曇りを除去する役割を果たすものである。なお、以下の説明では、カーボンナノチューブを「CNT」と表記する。
【0003】
特許文献1には、CNTによる格子状の配線パターンを透明基材に設けることで構成される透明導電膜の製造方法が開示されている。この製造方法は、まず、CNTによる配線パターンを形成するための溝(特許文献1では開口部)を有する感光性レジスト膜を多孔質フィルタ上に設けることで捕集部材を形成する。次に、化学気相成長法などにより気相中で合成したCNTを、その捕集部材により捕集する。そして、捕集部材で捕集したCNTを、透明フィルムなどの透明基材に転写し、透明導電膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、配線パターンを構成するCNTが、配線パターンの延びる方向に対してランダムな方向を向くか、または、その配線パターンの延びる方向に対して垂直方向を向くことが発明者らの検討により明らかとなっている。そのため、特許文献1に記載の製造方法で製造された透明導電膜は、電気抵抗値が高く、用途が限られてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、CNTを用いた透明導電膜の電気抵抗値を下げることを可能とした製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、透明導電膜の製造装置において、供給通路(10)および支持部(21)を備える。供給通路は、CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有し、前記供給口から供給されるカーボンナノチューブを含むガスが流れる流路を構成する。支持部は、ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、その多孔質膜のうち供給口側の面にCNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を供給通路の下流側で支持する。供給通路は、供給口から捕集部材に向かうガスの流れ方向が、緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行になるように構成された傾斜部(13)を有している。
【0008】
これによれば、ガスに含まれるCNTは、その配向がガスの流れ方向に揃った状態で流れる。そのため、傾斜部を流れるガスの流れ方向を緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行にすることで、その溝に捕集されるCNTにおいて溝の長手方向の配向度を高くすることができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点が少なくなり接点抵抗が小さくなるので、電気抵抗値を下げることができる。
【0009】
請求項13に係る発明は、透明導電膜の製造装置において、供給通路(10)、支持部(21)およびガイド板(14)を備える。供給通路は、CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有し、供給口から供給されるCNTを含むガスが流れる流路を構成する。支持部は、ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、多孔質膜のうち供給口側の面にCNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を供給通路の下流側で支持する。ガイド板は、供給通路に設けられ、供給口から捕集部材に向かうガスの流れ方向を、緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行にする。
【0010】
これによれば、供給通路に設けられたガイド板により、緻密膜の有する溝に捕集されるCNTにおいて溝の長手方向の配向度を高くすると共に、捕集部材の捕集面においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、電気抵抗値を下げることができる。
なお、請求項13に係る発明に対し、請求項1~4、6~12に記載の発明を従属させることが可能である。
【0011】
請求項14に係る発明は、透明導電膜の製造装置において、供給通路(10)、支持部(21)および複数の排気通路(30)を備える。供給通路は、CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有し、供給口から供給されるCNTを含むガスが流れる流路を構成する。支持部は、ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、多孔質膜のうち供給口側の面にCNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を供給通路の下流側で支持する。複数の排気通路は、捕集部材に対して供給通路とは反対側に設けられ、捕集部材を通過したガスを排出する。そして、複数の排気通路は、捕集部材を複数の領域に分割した分割領域ごとに設けられている。
【0012】
これによれば、捕集部材の捕集面においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNTの量のばらつきが低減され、電気抵抗値を下げることができる。
なお、請求項14に係る発明に対し、請求項1~7、9~12に記載の発明を従属させることが可能である。
【0013】
請求項15に係る発明は、透明導電膜の製造方法に関する発明である。この製造方法は、次の工程を含む。ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、CNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材を用意すること(S10)。CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に捕集部材を設置すること(S20)。供給口から捕集部材に向かうガスの流れ方向が緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行になるように構成されている傾斜部(13)に対し、供給口からCNTを含むガスを供給すること(S30)。捕集部材により捕集されたCNTを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)。
【0014】
これによれば、傾斜部を流れるガスの流れ方向を緻密膜の有する溝の長手方向に対して斜め又は平行にすることで、その溝に捕集されるCNTにおいて溝の長手方向の配向度を高くすることができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点が少なくなり接点抵抗が小さくなるので、電気抵抗値を下げることができる。
【0015】
請求項16に係る発明も、透明導電膜の製造方法に関する発明である。この製造方法は、次の工程を含む。ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、CNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を用意すること。CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に捕集部材を設置すること(S20)。捕集部材のうち供給口側の捕集面に対するガスの入射角を、緻密膜の有する溝の長手方向に対して平行又は斜めにするように供給通路に設けられたガイド板(14)に沿って、供給口からCNTを含むガスを供給すること(S30)。捕集部材により捕集されたCNTを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)。
【0016】
これによれば、供給通路に設けられたガイド板により、緻密膜の有する溝に捕集されるCNTにおいて溝の長手方向の配向度を高くすると共に、捕集部材の捕集面においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、電気抵抗値を下げることができる。
【0017】
請求項17に係る発明も、透明導電膜の製造方法に関する発明である。この製造方法は、次の工程を含む。ガスに含まれるCNTを捕集する多孔質膜(22)、および、CNTによる配線パターンを形成するための溝(24)が設けられた緻密膜(23)を有する捕集部材(20)を用意すること(S10)。CNTを含むガスが供給される供給口(11)を有する供給通路(10)の下流側に設けられた支持部(21)に捕集部材を設置すること(S20)。供給口からCNTを含むガスを供給すること(S30)。捕集部材を複数の領域に分割した分割領域ごとに捕集部材に対して供給通路とは反対側に設けられた複数の排気通路(30)から、捕集部材を通過したガスを排出すること(S35)。捕集部材により捕集されたCNTを透明基材に転写し、透明導電膜を形成すること(S50)。
【0018】
これによれば、捕集部材の捕集面においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材に捕集されたCNTを透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNTの量のばらつきが低減され、電気抵抗値を下げることができる。
【0019】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る透明導電膜の製造装置の断面構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る透明導電膜の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】比較例の透明導電膜の製造装置の断面構成を示す図である。
【
図5A】比較例の透明導電膜の製造装置において捕集部材の溝にCNTが捕集される様子を説明するための説明図である。
【
図5B】第1実施形態の透明導電膜の製造装置において捕集部材の溝にCNTが捕集される様子を説明するための説明図である。
【
図6A】比較例の透明導電膜の製造装置により製造された透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの模式図である。
【
図6B】第1実施形態の透明導電膜の製造装置により製造された透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの模式図である。
【
図7】溝の長手方向の一方側からCNTを含むガスを供給した場合に、捕集部材の溝にCNTが捕集される様子を説明するための説明図である。
【
図8】透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの配向度の算出方法の説明図である。
【
図9】透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの配向度と透明導電膜の抵抗減少率との関係に関する実験結果を示したグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る透明導電膜の製造装置の断面構成を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る透明導電膜の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る透明導電膜の製造装置および製造方法について、図面を参照しつつ説明する。第1実施形態の製造装置および製造方法により形成される透明導電膜は、薄膜状の透明基材の一方の面に、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)により構成される所定の配線パターンを備えたものである。透明導電膜は、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波などを用いた車用センサの機能またはフロントガラスの機能を確保するための透明ヒータとして使用することが可能である。
【0023】
図1および
図2に示すように、第1実施形態の製造装置1は、CNTを含むガスが流れる流路を構成する供給通路10、および、その供給通路10の下流側で捕集部材20を支持する支持部21などを備えている。
【0024】
供給通路10のうち支持部21から上方に離れた場所に供給口11が設けられている。
図1の矢印Aに示すように、供給口11から供給通路10の内側に、例えば浮遊触媒法などにより気相中で合成されたCNTを含むガスが供給される。供給通路10は、供給口11から供給されるCNTを含むガスが流れる流路を構成する。供給通路10を流れるCNTを含むガスは、供給通路10の下流側に設けられた支持部21に配置される捕集部材20を通過する際、そのガスに含まれるCNTが捕集部材20により捕集される。
【0025】
捕集部材20は、多孔質膜22と、その多孔質膜22のうち供給口11側を向く面に設けられる緻密膜23とを有している。多孔質膜22は、ガスを通過させると共に、そのガスに含まれるCNTを捕集することが可能な多孔質フィルタである。緻密膜23は、CNTおよびガスを殆ど通過させることの無いマスクであり、例えば感光性レジストまたは金属製の薄板などで構成されている。緻密膜23には、CNTによる所定の配線パターンを形成するための複数の溝24が設けられている。複数の溝24は、緻密膜23の厚み方向に貫通している。複数の溝24の開口幅は、例えば数μm~数十μmに設定されており、複数の溝24のピッチは、例えば数十μm~数百μmに設定されている。なお、
図2では、複数の溝24の延びる向き(すなわち、溝24の長手方向)をわかり易く示すため、実際のものよりも太く、且つ、広いピッチで記載している。また、本実施形態では、所定の配線パターンをストライプ状として説明するが、これに限らず、配線パターンは、複数の溝が平行に延びる部位を有していればよく、例えば、格子状、ハッチング状、クロスハッチング状など、種々の形状を採用することができる。
以下の説明では、捕集部材20の有する緻密膜23のうち供給口11側の面を「捕集部材20の捕集面25」といい、緻密膜23に設けられた複数の溝24を「捕集部材20の溝24」といい、緻密膜23のうち溝24を除く部位を「マスク部26」という。
【0026】
図1に示すように、供給通路10は、上述した供給口11と、その供給口11から下流側に向かい流路面積が次第に拡大する拡大部12と、その拡大部12の下流側に設けられた傾斜部13とを有している。傾斜部13は、供給口11から捕集部材20に向かうガスの流れ方向が、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行になるように構成されている。
【0027】
図1に示すように、捕集部材20の捕集面25の中心を含み捕集面25に垂直な仮想線VLに対し、供給口11の中心111は、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側にずれた位置にある。なお、
図2は、
図1のII-II線の断面図であるが、供給口11の位置を二点鎖線で示している。詳細には、供給口11の中心111は、捕集部材20の外縁27よりも、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側にずれた位置にある。そのため、
図1に示した仮想線VLに対し、傾斜部13の流路中心線CLは、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側に傾斜している。これにより、傾斜部13のガスの流れ方向は、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行となる。
【0028】
具体的には、
図1に示すように、傾斜部13は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1が90°より小さく、0°以上の範囲になるように構成されている。なお、傾斜部13は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1が25°以下から0°以上の範囲となるように構成されていることがより好ましい。これにより、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTにおいて溝24の長手方向に対する配向度をより大きくすることが可能となる。なお、捕集部材20の捕集面25の直上近傍とは、例えば、捕集部材20の捕集面25から供給口11側に1mm程度離れた位置に設定される。
【0029】
また、
図2に示すように、傾斜部13は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍の平面視において、捕集部材20の溝24の長手方向に対するガスの流速ベクトルの入射角θ2が90°より小さく、-90°より大きい範囲になるように構成されている。なお、傾斜部13は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍の平面視において、捕集部材20の溝24の長手方向に対するガスの流速ベクトルの入射角θ2が15°以下から-15°以上の範囲となるように構成されていることがより好ましい。これにより、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTにおいて溝24の長手方向に対する配向度をより大きくすることが可能となる。なお、本明細書において平面視とは、捕集面25に対して垂直方向供給口11側から捕集面25を視た状態をいう。
【0030】
具体的に、第1実施形態の製造装置1において、傾斜部13は、その流路中心線CLが、捕集部材20の捕集面25に対して仰角θ1が25°以下から0°以上の範囲となるように構成されている。また、第1実施形態の製造装置1において、傾斜部13は、その流路中心線CLが、捕集部材20の捕集面25に垂直且つ溝24の長手方向に平行な仮想平面VSに対して実質的に平行となるように構成されている。なお、実質的に平行とは、傾斜部13の流路中心線CLと仮想平面VSとが平行な状態に加え、製造公差などによる所定範囲(例えば±5°程度)の位置ずれを含むものである。
【0031】
次に、第1実施形態の製造装置1を用いた透明導電膜の製造方法について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
まず、ステップS10で、上述した多孔質膜22および緻密膜23を有する捕集部材20を用意する。
次に、ステップS20で、製造装置1の支持部21に捕集部材20を設置する。このとき、支持部21に捕集部材20を設置する向きは、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側に供給通路10の供給口11があるようにする。
【0033】
続いて、ステップS30で、供給口11から供給通路10の内側にCNTを含むガスを供給する。そうすると、CNTを含むガスは、拡大部12および傾斜部13を流れて捕集部材20を通過する。CNTを含むガスが捕集部材20を通過する際、ガスに含まれるCNTが捕集部材20により捕集される。本実施形態では、傾斜部13において供給口11から捕集部材20に向かうガスの流れ方向が捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行となるので、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTは、溝24の長手方向に対する配向度が大きいものとなる。
【0034】
次に、ステップS40で、CNTを含むガスの供給開始から所定時間が経過した後、支持部21から捕集部材20を取り外す。
続いて、ステップS50で、捕集部材20のうちCNTが捕集された緻密膜23側の面に図示しない透明基材を配置し、透明基材を捕集部材20に押し当てる。なお、透明基材として、PET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂材料または石英ガラスなどの無機材料を用いることが可能である。その後、その透明基材から捕集部材20を取り外すことで、透明基材にCNTが転写される。これにより、透明基材の一方の面にCNTによる配線パターンが形成される。
【0035】
次に、ステップS60で、CNTによる配線パターンが形成された透明基材を、ドーパント物質を含む溶液にディッピングするか、或いは、その透明基材にドーパント物質を含む溶液を塗布し、その後、乾燥させることで透明導電膜が完成する。
【0036】
続いて、比較例の透明導電膜の製造装置100と、第1実施形態の透明導電膜の製造装置1とを比較しつつ、透明導電膜におけるCNTの配向度と電気抵抗値との関係について説明する。
【0037】
図4に示すように、比較例の透明導電膜の製造装置100は、供給通路10が供給口11と拡大部12を有しており、傾斜部13を有していない。供給口11の中心111は、捕集部材20の捕集面25の中心を含み捕集面25に垂直な仮想線VL上に位置している。そのため、比較例の製造装置100では、供給口11から捕集部材20に向かい拡大部12を流れるガスの流れ方向が、捕集部材20の捕集面25に対して略垂直になる。
【0038】
図5Aは、比較例の製造装置100において、捕集部材20の捕集面25の直上近傍の平面視を示したものである。
図5Aでは、マスク部26の直上近傍から溝24に流れ込む気流の方向と、その気流に追従して移動するCNTを示している。比較例の製造装置100では、マスク部26から溝24に向かう気流は、溝24の長手方向に対して垂直な方向から溝24に流れ込み、その溝24に露出する多孔質膜22を通過する。このとき、その気流に追従して移動するCNTは、気流と同様に溝24の長手方向に対して垂直な方向から溝24に入り込み、その溝24に露出する多孔質膜22に捕集される。そのため、比較例の製造装置100では、捕集部材20の溝24に露出する多孔質膜22に捕集されるCNTの配向はランダムな状態となる。
【0039】
それに対し、
図5Bは、第1実施形態の製造装置1において、捕集部材20の捕集面25の直上近傍の平面視を示したものである。
図5Bでも、マスク部26の直上近傍から溝24に流れ込む気流の方向と、その気流に追従して移動するCNTを示している。第1実施形態の製造装置1では、マスク部26から溝24に向かう気流は、溝24の長手方向に対して斜め方向から溝24に流れ込み、その溝24に露出する多孔質膜22を通過する。このとき、その気流に追従して移動するCNTは、気流と同様に溝24の長手方向に対して斜め方向から溝24に入り込み、その溝24に露出する多孔質膜22に捕集される。そのため、第1実施形態の製造装置1では、捕集部材20の溝24に露出する多孔質膜22に捕集されるCNTの配向が溝24の長手方向に比較的揃った状態(すなわち、CNTの配向度が比較例に比べて高い状態)となる。
【0040】
図6Aは、比較例の製造装置100により捕集されたCNTを転写した透明導電膜の配線パターンを構成するCNTを模式的に示したものである。
図6Aに示すように、比較例の製造装置100を使用した場合、透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの配向はランダムな状態となる。そのため、この透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点の数が多くなり、接点抵抗が大きくなるので、電気抵抗値が高くなるといった問題がある。
【0041】
それに対し、
図6Bは、第1実施形態の製造装置1により捕集されたCNTを転写した透明導電膜の配線パターンを構成するCNTを模式的に示したものである。
図6Bに示すように、第1実施形態の製造装置1を使用した場合、透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの配向は、配線パターンの長手方向に比較的揃った状態となる。そのため、この透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点の数が少なく、接点抵抗が小さくなるので、電気抵抗値を下げることができる。
【0042】
また、
図7は、第1実施形態の製造装置1のように、溝24の長手方向の一方側からCNTを含むガスを供給した場合に、捕集部材20の溝24にCNTが捕集される様子を説明するための説明図である。なお、
図7も、
図5Bと同じく、捕集部材20の捕集面25の直上近傍の平面視を示したものである。
【0043】
図7の破線F1~F8は、マスク部26の直上近傍から溝24に流れ込む気流を示している。破線F1~F8に示すように、溝24から遠い場所から溝24に流れ込む気流の入射角は、溝24に近い場所から溝24に流れ込む気流の入射角に比べて、溝24の長手方向に対する角度が大きくなる。そのため、溝24から遠い場所から溝24に流れ込む気流に追従して移動するCNTは、溝24に近い場所から溝24に流れ込む気流に追従して移動するCNTに比べて、溝24に捕集されたときのCNTの角度が溝24の長手方向に対して大きいものとなる。その反対に、溝24に近い場所から溝24に流れ込む気流に追従して移動するCNTは、溝24から遠い場所から溝24に流れ込む気流に追従して移動するCNTに比べて、溝24に捕集されたときのCNTの角度が溝24の長手方向に対して小さいものとなる。このことから、捕集部材20の複数の溝24のピッチを出来るだけ狭くすることで、溝24に近い場所から溝24に流れ込む気流を増やし、溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすることが可能である。
【0044】
ここで、CNTの配向度の算出方法を、
図8を参照しつつ説明する。
まず、走査電子顕微鏡を用いて、CNTにより構成された配線パターンの膜の様子を観察し、画像解析を行う。具体的には、走査電子顕微鏡により得られた画像を2値化し、フーリエ変換することで、
図8に示すようなパワースペクトルのグラフをつくる。そして、そのグラフの半値幅Wを用いて下記の式(1)から配向度を算出する。
【数1】
【0045】
図9は、透明導電膜の配線パターンを構成するCNTの配向度と、透明導電膜の電気抵抗減少率との関係に関し、発明者らが行った実験の結果を示すグラフである。
図9に示すように、配向度を約7%(すなわち無配向)から約24%に高めることで、透明導電膜の抵抗減少率が20%以上となることがわかる。したがって、第1実施形態の製造装置1を用いて製造した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNTの配向度を高めることで、電気抵抗値を下げることが可能である。
【0046】
以上説明した第1実施形態に係る透明導電膜の製造装置1および製造方法は、次の作用効果を奏するものである。
【0047】
(1)透明導電膜の製造装置1において、供給通路10が有する傾斜部13は、供給口11から捕集部材20に向かうガスの流れ方向を、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にするように構成されている。
これによれば、ガスに含まれるCNTは、その配向がガスの流れ方向に揃った状態で流れる。そのため、供給通路10に傾斜部13を設けたことで、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすることが可能となる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点が少なくなり、接点抵抗が小さくなるので、電気抵抗値を下げることができる。
【0048】
(2)透明導電膜の製造装置1において、捕集部材20の捕集面25の中心を含み捕集面25に垂直な仮想線VLに対し、供給口11の中心111は、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側にずれた位置にある。
これによれば、供給通路10のガスの流れ方向を、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にすることが可能である。
【0049】
(3)透明導電膜の製造装置1において、傾斜部13は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1が90°より小さく、0°以上の範囲になるように構成されている。
これによれば、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすることができる。なお、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1は25°以下から0°以上の範囲がより好ましい。
【0050】
(4)透明導電膜の製造装置において、傾斜部は、捕集部材の捕集面の直上近傍の平面視において、捕集部材の溝の長手方向に対するガスの流速ベクトルの入射角が90°より小さく、-90°より大きい範囲になるように構成されている。
これによれば、捕集部材の溝に捕集されるCNTの配向度を高くすることができる。なお、捕集部材の捕集面の直上近傍の平面視において、捕集部材の溝の長手方向に対するガスの流速ベクトルの入射角は15°以下から-15°以上の範囲がより好ましい。
【0051】
(5)第1実施形態に係る透明導電膜の製造方法によれば、傾斜部13を流れるガスの流れ方向を捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にすることで、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすることができる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNT同士の接点が少なくなり接点抵抗が小さくなるので、電気抵抗値を下げることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る透明導電膜の製造装置1および製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0053】
図10および
図11に示すように、第2実施形態の製造装置1は、供給通路10、支持部21、ガイド板14、排気通路30、仕切板31、流量制御弁32、集合空間33などを備えている。
なお、
図10では、断面で示された複数の仕切板31の符号の末尾にa~cのアルファベットを付している。また、
図11は、
図10のXI-XI線の断面図であるが、ガイド板14を省略している。また、
図11では、捕集部材20の下流側に配置される複数の仕切板31のうち捕集部材20側の端部の位置を、符号31a~31dを付した破線または一点鎖線で示している。以下の説明では、説明の便宜上、複数の仕切板31の符号の末尾にa~dのアルファベット付すことがある。
【0054】
第2実施形態の製造装置1において、供給通路10、支持部21、およびその支持部21に支持される捕集部材20の構成は、第1実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0055】
図10に示すように、ガイド板14は、供給通路10の内側に複数個設けられている。ガイド板14は、供給口11から捕集部材20に向かうガスの流れ方向を、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にするように構成されている。また、ガイド板14のうち捕集部材20側の端部と、捕集部材20の捕集面25との間には、所定の隙間S1が設けられている。その所定の隙間S1は、例えば1mm以上に設定されている。
【0056】
また、ガイド板14は、傾斜部13の流路中心線CLに対して平行を含む任意の角度に変更可能に構成されている。具体的には、
図10の破線141に示したように、ガイド板14は、そのガイド板14の捕集部材20側の端部付近に設けられた図示しない回転軸を中心として、任意の角度に変更可能である。また、ガイド板14は、捕集部材20の捕集面25に垂直且つ溝24の長手方向に平行な仮想平面VS(
図11参照)に対して実質的に垂直となるように設けられている。なお、実質的に垂直とは、ガイド板14と仮想平面VSとが垂直な状態に加え、製造公差などによる所定範囲(例えば±5°程度)の位置ずれを含むものである。
【0057】
ガイド板14は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1が90°より小さく、0°以上の範囲になるように構成されている。なお、ガイド板14は、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1が25°以下から0°以上の範囲となるように構成されていることがより好ましい。具体的に、第2実施形態では、ガイド板14は、捕集部材20の捕集面25に対して仰角θ1が25°以下から0°以上の範囲となるように構成されている。
【0058】
排気通路30は、捕集部材20に対して供給通路10とは反対側(すなわち捕集部材20の下流側)に設けられ、捕集部材20を通過したガスを排出する通路である。排気通路30には、複数の仕切板31が設けられている。そのため、捕集部材20の下流側には、複数の仕切板31で仕切られた複数の排気通路30が形成されている。
【0059】
複数の仕切板31は、傾斜部13の流路中心線CLに対して実質的に平行に設けられている。なお、実質的に平行とは、傾斜部13の流路中心線CLと仕切板31とが平行な状態に加え、製造公差などによる所定範囲(例えば±5°程度)の位置ずれを含むものである。また、
図10の断面視で示された複数の仕切板31a~31cは、捕集部材20の捕集面25に垂直且つ溝24の長手方向に平行な仮想平面VS(
図11参照)に対して実質的に垂直となるように構成されている。なお、実質的に垂直とは、仕切板31a~31cと仮想平面VSとが垂直な状態に加え、製造公差などによる所定範囲(例えば±5°程度)の位置ずれを含むものである。また、複数の仕切板31は、
図11に一点鎖線で示された仕切板31dのように、仮想平面VSに対して実質的に平行となるように配置されるものを含んでいてもよい。なお、
図11に一点鎖線で示された仕切板31dは、
図10において、その仕切板31dのうち捕集部材20側の端部に符号31dを付している。
【0060】
図10に示すように、仕切板31a~31cのうち傾斜部13の流路中心線CLに対して実質的に平行に設けられている部位の長さL1は、例えば150mm以上に設定されている。また、仕切板31a~31dのうち捕集部材20側の端部と、捕集部材20の下流側の面との間には、所定の隙間S2が設けられている。その所定の隙間S2は、例えば1mm以上に設定される。
【0061】
上述したように、
図11では、捕集部材20の下流側に配置される仕切板31のうち捕集部材20側の端部の位置を、符号31a~31dを付した破線または一点鎖線で示している。この破線および一点鎖線で分割された領域を、分割領域と呼ぶこととする。なお、第2実施形態では8個の分割領域が形成されている。
図10に示す複数の排気通路30は、捕集部材20を複数の領域に分割した分割領域ごとに設けられている。
【0062】
複数の排気通路30の下流側には、複数の排気通路30をそれぞれ流れたガスを集合させる集合空間33が設けられている。なお、集合空間33の下流側には、図示しないファンを設けてもよい。その場合、ファンの駆動により集合空間33および複数の排気通路30に負圧が発生する。その際、集合空間33は、複数の排気通路30の負圧を均一化することが可能である。
【0063】
また、複数の排気通路30の途中には、各排気通路30を流れるガスの流量を制御するための複数の流量制御弁32が設けられている。複数の流量制御弁32の開弁度を調整することで、複数の排気通路30を流れるガスの流量を制御できる。
【0064】
次に、第2実施形態の製造装置1を用いた透明導電膜の製造方法について、
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
まず、ステップS10で、多孔質膜22および緻密膜23を有する捕集部材20を用意する。
次に、ステップS20で、製造装置1の支持部21に捕集部材20を設置する。このとき、支持部21に捕集部材20を設置する向きは、捕集部材20の溝24の長手方向の一方側に供給通路10の供給口11があるようにする。
【0066】
続いて、ステップS25で、供給通路10の内側に設けられたガイド板14の角度を調整する。ガイド板14は、傾斜部13から捕集部材20に流れるガスの流速ベクトルの仰角θ1が適切な角度となるように調整される。また、このとき、各排気通路30に設けられた流量制御弁32の開弁度を調整してもよい。
【0067】
次に、ステップS30で、供給口11から供給通路10の内側にCNTを含むガスを供給する。そうすると、CNTを含むガスは、傾斜部13をガイド板14に沿って流れて捕集部材20を通過する。そして、CNTを含むガスが捕集部材20を通過する際、ガスに含まれるCNTが捕集部材20により捕集される。
【0068】
続いて、ステップS35で、捕集部材20を通過したガスを複数の排気通路30を経由して排出する。なお、上記ステップS30とステップS35は、同時に実行される。第2実施形態では、捕集部材20を通過したガスを複数の排気通路30を経由して排出することで、捕集部材20の捕集面25においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。
【0069】
次に、ステップS40で、CNTを含むガスの供給開始から所定時間が経過した後、支持部21から捕集部材20を取り外す。
続いて、ステップS50で、捕集部材20のうちCNTが捕集された緻密膜23側の面に図示しない透明基材を配置し、透明基材を捕集部材20に押し当てる。その後、その透明基材から捕集部材20を取り外すことで、透明基材にCNTが転写される。これにより、透明基材の一方の面にCNTによる配線パターンが形成される。
【0070】
次に、ステップS60で、CNTによる配線パターンが形成された透明基材を、ドーパント物質を含む溶液にディッピングするか、或いは、その透明基材にドーパント物質を含む溶液を塗布し、その後、乾燥させることで透明導電膜が完成する。
【0071】
以上説明した第2実施形態に係る透明導電膜の製造装置1および製造方法は、次の作用効果を奏するものである。
【0072】
(1)透明導電膜の製造装置1は、傾斜部13の内側にガイド板14を備えている。ガイド板14は、供給口11から捕集部材20に向かうガスの流れ方向を、緻密膜23の有する溝24の長手方向に対して斜め又は平行にすることが可能である。
これによれば、ガスの流れ方向をガイド板14により制御し、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすると共に、捕集部材20の捕集面25においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、電気抵抗値を下げることができる。
【0073】
(2)透明導電膜の製造装置1において、ガイド板14は、捕集部材20の捕集面25に対する仰角θ1が90°より小さく、0°以上の範囲となるように設けられており、且つ、捕集部材20の捕集面25から1mm以上の距離をあけて設けられている。
これによれば、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすることができる。なお、捕集部材20の捕集面25の直上近傍において、捕集面25に対するガスの流速ベクトルの仰角θ1は25°以下から0°以上の範囲がより好ましい。
また、ガイド板14と捕集面25との距離を1mm以上あけることで、捕集面25のうち、ガイド板14の下端に対応する箇所にもガスを流してCNTを捕集することができる。
【0074】
(3)透明導電膜の製造装置1において、ガイド板14は、傾斜部13の流路中心線CLに対して平行を含む任意の角度に変更可能に構成されている。
これによれば、傾斜部13を流れるガスの向きを調整することが可能である。そのため、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすると共に、捕集部材20の捕集面25においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。
【0075】
(4)透明導電膜の製造装置1は、捕集部材20の下流側に複数の排気通路30を備えている。複数の排気通路30は、捕集部材20の捕集面25を複数の領域に分割した分割領域ごとに設けられている。
これによれば、捕集部材20の捕集面25においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNTの量のばらつきが低減され、電気抵抗値を下げることができる。
【0076】
(5)透明導電膜の製造装置1は、各排気通路30の途中に流量制御弁32を備えている。
これによれば、流量制御弁32により各排気通路30を流れるガスの流量を制御することで、捕集部材20の捕集面25においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。
【0077】
(6)透明導電膜の製造装置1は、複数の排気通路30の下流側に、複数の排気通路30をそれぞれ流れたガスを集合させる集合空間33を備えている。
これによれば、集合空間33の下流側にファンを設けた場合、複数の排気通路30の負圧を均一化することが可能となり、捕集部材20の捕集面25においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。
【0078】
(7)透明導電膜の製造装置1は、複数の排気通路30同士の間に設けられる仕切板31を備える。仕切板31は、傾斜部13の流路中心線CLに対して実質的に平行に設けられており、且つ、捕集部材20から1mm以上の距離をあけて設けられている。
これによれば、供給通路10から捕集部材20を通過して複数の排気通路30を流れるガスの流れ方向を、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にすることが可能となる。そのため、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすると共に、捕集部材20の捕集面25においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。
また、捕集部材20と仕切板31との距離を1mm以上あけることで、捕集面25のうち、仕切板31の上端に対応する箇所にもガスを流してCNTを捕集することができる。
【0079】
(8)透明導電膜の製造装置1において、仕切板31のうち傾斜部13の流路中心線CLに対して実質的に平行に設けられている部位の長さL1は、例えば150mm以上に設定されている。
これによれば、供給通路10から捕集部材20を通過して複数の排気通路30を流れるガスの流れ方向を、捕集部材20の溝24の長手方向に対して斜め又は平行にすることが可能となる。そのため、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすると共に、捕集部材20の捕集面25においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。
【0080】
(9)第2実施形態に係る透明導電膜の製造方法によれば、CNTを含むガスをガイド板14に沿って捕集部材20へ流すことで、捕集部材20の溝24に捕集されるCNTの配向度を高くすると共に、捕集部材20の捕集面25においてCNTの配向の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、電気抵抗値を下げることができる。
【0081】
(10)また、第2実施形態に係る透明導電膜の製造方法によれば、捕集部材20を通過したガスを複数の排気通路30から排出することで、捕集部材20の捕集面25においてCNTの捕集量の面内均一性を向上することができる。したがって、この捕集部材20に捕集されたCNTを透明フィルムなどの透明基材に転写した透明導電膜は、配線パターンを構成するCNTの量のばらつきが低減され、電気抵抗値を下げることができる。
【0082】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態および比較例は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0083】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0084】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0085】
また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0086】
例えば、上記第2実施形態では、供給通路10の内側に複数のガイド板14を配置したが、これに限らず、ガイド板14は1個でもよい。或いは、上記第1実施形態または比較例で説明した製造装置1の供給通路10にガイド板14を設けてもよい。或いは、上記第2実施形態で説明した製造装置1からガイド板14を除いてもよい。
【0087】
また、例えば、上記第2実施形態では、捕集部材20の下流側に複数の排気通路30を設けたが、これに限らず、排気通路30は一つの通路としてもよい。或いは、上記第1実施形態または比較例で説明した製造装置1に一つまたは複数の排気通路30を設けてもよい。或いは、上記第2実施形態で説明した製造装置1から排気通路30を除いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 透明導電膜の製造装置
10 供給通路
11 供給口
13 傾斜部
20 捕集部材
21 支持部
22 多孔質膜
23 緻密膜
24 溝