(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電極積層装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240702BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240702BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2021081038
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信平
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183313(JP,A)
【文献】特開2020-145185(JP,A)
【文献】特開2020-140892(JP,A)
【文献】特開2020-024816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状電極を積層するための電極積層装置において、
平板状のステータと、該ステータの平坦表面上において該平坦表面から磁気浮上した状態で該平坦表面に沿う任意の方向に移動可能でかつ該平坦表面の垂直軸線回りに回転可能な複数の可動子とにより構成される平面モータ装置と、
該平面モータ装置の上方に配置されかつ搬送経路に沿ってシート状電極を保持しつつ搬送する電極搬送装置と、
該平面モータ装置および該電極搬送装置を制御するための制御装置とを具備しており、
積層されるシート状電極を保持するための積層電極保持具が該平面モータ装置の各可動子上に取付けられていて、順次積層されるシート状電極が該積層電極保持具により該積層電極保持具上のシート状電極積層位置に保持され、
該制御装置は、電極搬送装置により保持された新たなシート状電極を該可動子の積層電極保持具上に積層する際には、新たなシート状電極が該積層電極保持具上のシート状電極積層位置に対面し続けるように該新たなシート状電極の移動に同期して該可動子を移動させる電極積層装置。
【請求項2】
該電極搬送装置による新たなシート状電極の保持位置として、該新たなシート状電極を該積層電極保持具上のシート状電極積層位置と整列させるのに必要な正規の保持位置が予め設定されており、該正規の保持位置に対する該新たなシート状電極の保持位置のずれ量を検出するためのずれ量検出装置を具備しており、該制御装置は、該ずれ量にも基づいて、該新たなシート状電極が該積層電極保持具上のシート状電極積層位置に整列して該積層電極保持具上に積層するように各可動子の移動位置および回転角度位置を制御する請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項3】
該ずれ量検出装置が、該電極搬送装置により保持された新たなシート状電極を撮影するためのカメラを具備しており、カメラにより撮影された画像に基づいて該ずれ量が検出される請求項2に記載の電極積層装置。
【請求項4】
該電極搬送装置が、搬送経路に沿い移動せしめられる複数個の可動子を有するリニアモータ装置からなり、該リニアモータ
装置の各可動子に取り付けられた搬送プレート上において該新たなシート状電極がクランプにより保持される請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項5】
該平面モータ装置の可動子の積層電極保持具がクランプを備えており、該平面モータ装置の可動子が該新たなシート状電極の移動に同期して移動せしめられているときに、搬送プレート上において保持された新たなシート状電極が、新たなシート状電極の周辺部を該搬送プレートのクランプおよび該積層電極保持具のクランプのいずれか一方のクランプにより保持しつつ、該積層電極保持具上に積層される請求項4に記載の電極積層装置。
【請求項6】
シート状電極が、複数個の該平面モータ装置の可動子によって保持される請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項7】
該制御装置は、シート状電極を保持した該平面モータ装置の可動子を曲線走行経路に沿って走行させるときには、該平面モータ装置の可動子が自転しないように可動子の移動位置および回転角度位置を制御する請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項8】
該電極搬送装置が、搬送方向の両側に互いに間隔を隔てて配置された第1の電極搬送装置と第2の電極搬送装置から構成されると共に、該第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置によって、搬送方向に対して両側に位置する新たなシート状電極の両端部が夫々保持され、該第1の電極搬送装置の下方に、シート状電極の一方の端部を保持するために該平面モータ装置の複数個の第1の可動子が搬送方向に整列配置されると共に、該第2の電極搬送装置の下方に、シート状電極の他方の端部を保持するために該平面モータ装置の複数個の第2の可動子が搬送方向に整列配置されていて、順次積層されるシート状電極が該第1の可動子の積層電極保持具および第2の可動子の積層電極保持具により該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上のシート状電極積層位置に保持され、該制御装置は、第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置により保持された新たなシート状電極を該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上に積層する際には、新たなシート状電極が該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上のシート状電極積層位置に対面し続けるように該新たなシート状電極の移動に同期して該第1の可動子および第2の可動子を移動させる請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項9】
該制御装置は、該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上への新たなシート状電極の積層作業が終了すると、次の新たなシート状電極を該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上に積層するために、該第1の可動子および第2の可動子を積層開始位置まで搬送方向と反対方向に戻させる請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項10】
該第1の可動子の積層電極保持具および第2の可動子の積層電極保持具により保持されたシート状電極を、該第1の可動子と第2の可動子との間で下方から支える支持台を備えた支持用可動子を具備しており、該制御装置は、該支持用可動子を、積層時に、該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上に積層されたシート状電極の移動に同期させて移動させる請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項11】
第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置が、搬送経路に沿い移動せしめられる複数個の可動子を有するリニアモータ装置からなり、該リニアモータ装置の各可動子が該新たなシート状電極を保持するためのクランプを具備しており、該平面モータ装置の第1の可動子の積層電極保持具および第2の可動子の積層電極保持具がクランプを備えており、該平面モータ装置の第1の可動子および第2の可動子が該新たなシート状電極の移動に同期して移動せしめられているときに、搬送方向前方に位置する各リニアモータ装置の可動子から順に、該リニアモータ装置の可動子のクランプによるシート状電極の保持作用が解除されると共に該リニアモータ装置の可動子に対応した第1の可動子の積層電極保持具および第2の可動子の積層電極保持具のクランプによるシート状電極の保持作用が行われ、それにより、新たなシート状電極が、第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上に積層される請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項12】
第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置がシート状電極を保持するためのクランプを備えていると共に第1の可動子および第2の可動子の積層電極保持具がシート状電極を保持するためのクランプを備えており、これらのクランプによるシート状電極の保持作用および保持作用の解除がカムにより行われ、該制御装置は、該第1の可動子の積層電極保持具上および第2の可動子の積層電極保持具上への新たなシート状電極の積層作業を行うときに、これらのクランプと係合するカムを備えたカム用可動子を搬送方向と反対方向に移動させる請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項13】
第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置が、搬送経路に沿い移動せしめられる複数個の可動子を有するリニアモータ装置からなり、該リニアモータ装置の各可動子が該新たなシート状電極を保持するためのクランプを具備しており、該リニアモータ
装置の各可動子
の各クランプは、新たなシート状電極を保持したしたときに、新たなシート状電極が垂れ下がるのを阻止するために、新たなシート状電極に張力を生じさせる請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項14】
該第1の電極搬送装置および第2の電極搬送装置による新たなシート状電極の保持位置として、該新たなシート状電極を該積層電極保持具上のシート状電極積層位置と整列させるのに必要な正規の保持位置が予め設定されており、該正規の保持位置に対する該新たなシート状電極の保持位置のずれ量を検出するためのずれ量検出装置を具備しており、該制御装置は、該ずれ量にも基づいて、該新たなシート状電極が該積層電極保持具上のシート状電極積層位置に整列して該積層電極保持具上に積層するように該第1の可動子および第2の可動子の移動位置および回転角度位置を制御する請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項15】
該ずれ量検出装置が、該電極搬送装置により保持された新たなシート状電極を撮影するためのカメラを具備しており、カメラにより撮影された画像に基づいて該ずれ量が検出される請求項14に記載の電極積層装置。
【請求項16】
該第1の可動子および第2の可動子の積層電極保持具がクランプを備えていて、シート状電極が該第1の可動子の積層電極保持具のクランプおよび第2の可動子の積層電極保持具のクランプにより保持されており、該制御装置は、シート状電極が垂れ下がるのを阻止するのに必要な位置に、該第1の可動子および第2の可動子の移動位置を制御する請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項17】
該第1の可動子のうちで搬送方向の先端部に位置する第1の可動子のクランプ力を最大にすると共に、残りの第1の可動子のクランプ力を該最大クランプ力に比べて低くし、第2の可動子のクランプ力を更に低くする請求項16に記載の電極積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長円形の走行レール上を走行する複数個の可動子を有するリニアモータからなるシート状電極搬送装置と、長円形の走行レール上を走行する複数個の可動子を有するリニアモータからなる積層治具搬送装置とが用いられており、積層治具搬送装置の長円形の走行レールの直線レール部分がシート状電極搬送装置の直線レール部分の下方において同一方向に延びるように、シート状電極搬送装置の長円形走行レールが垂直面内に配置されると共に積層治具搬送装置の長円形走行レールが水平面内に配置されている電極積層装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。この電極積層装置では、直線レール部分において、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極の移動に同期して積層治具搬送装置の可動子により支持された積層治具が移動せしめられ、シート状電極と積層治具とが同期して移動せしめられている間に、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極が積層治具内に積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなリニアモータからなる搬送装置では、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極の保持位置を調整することはできず、その結果、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極の保持位置が、積層治具内に既に積層されているシート状電極上に整列して積層可能な位置からずれている場合には、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極を、積層治具内に既に積層されているシート状電極上に整列して積層させることができないという問題がある。このような問題は、上述のようなリニアモータからなる一対の搬送装置を用いている限り解決するのは困難であり、このような問題を解決するには、発想の転換が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明によれば、シート状電極を積層するための電極積層装置において、
平板状のステータと、ステータの平坦表面上において平坦表面から磁気浮上した状態で平坦表面に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面の垂直軸線回りに回転可能な複数の可動子とにより構成される平面モータ装置と、
平面モータ装置の上方に配置されかつ搬送経路に沿ってシート状電極を保持しつつ搬送する電極搬送装置と、
平面モータ装置および電極搬送装置を制御するための制御装置とを具備しており、
積層されるシート状電極を保持するための積層電極保持具が該平面モータ装置の各可動子上に取付けられていて、順次積層されるシート状電極が積層電極保持具により積層電極保持具上のシート状電極積層位置に保持され、
制御装置は、電極搬送装置により保持された新たなシート状電極を可動子の積層電極保持具上に積層する際には、新たなシート状電極が積層電極保持具上のシート状電極積層位置に対面し続けるように新たなシート状電極の移動に同期して可動子を移動させる電極積層装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極の保持位置が、既に積層されているシート状電極上に整列して積層可能な位置からずれていたときには、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極の保持位置を調整するのではなく、既に積層されているシート状電極の位置を調整することにより、シート状電極搬送装置の可動子により保持されたシート状電極を、積層されているシート状電極上に整列して積層させることが可能となる。この場合、このような既に積層されているシート状電極の位置を調整は、ステータの平坦表面から磁気浮上した状態で平坦表面に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面の垂直軸線回りに回転可能な複数の可動子を備えた平面モータ装置を用いることにより可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2A、2Bおよび2Cは、シート状電極を説明するための図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される電極搬送装置の一部の拡大側面図である。
【
図9】
図9は、平面モータ装置の可動子の制御方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、積層電極保持具のクランプの作動を説明するための図である。
【
図12】
図12は、平面モータ装置の可動子の制御方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、シート状電極の積層作業を説明するための図である。
【
図14】
図14Aおよび
図14Bは、シート状電極の保持位置のずれ量と、ずれ量の調整方法を説明するための図である。
【
図15】
図15Aおよび
図15Bは、シート状電極の保持位置のずれ量と、ずれ量の調整方法を説明するための図である。
【
図16】
図16は、可動子を制御するためのフローチャートである。
【
図17】
図17は、位置ずれを検出するためのフローチャートである。
【
図18】
図18は、積層処理を行うためのフローチャートである。
【
図19】
図19は、電極積層装置の別の実施例の全体図である。
【
図22】
図22は、平面モータ装置の可動子の配置状態を示す図である。
【
図24】
図24は、シート状電極の積層作業を説明するための図である。
【
図25】
図25は、可動子を制御するためのフローチャートである。
【
図26】
図26は、積層処理を行うためのフローチャートである。
【
図27】
図27は、積層処理を行うためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、シート状電極を積層するための電極積層装置に関する。本発明による実施例では、この電極積層装置により積層されたシート状電極により電極積層体が形成され、形成された複数個の電極積層体を直列或いは並列に電気的に接続することによって、例えば、車両に搭載される電池が形成される。そこで、まず初めに、この電極積層装置において積層されるシート状電極について説明する。
図2Aは、本発明による実施例において用いられているシート状電極1の平面図を示しており、
図2Bおよび
図2Cは、
図2AのX-X線に沿って見たシート状電極1の代表的な二つの例の断面を図解的に示している。なお、シート状電極1の厚みは1mm以下であり、従って、
図2Bおよび
図2Cでは、各層の厚みがかなり誇張して示されている。
【0009】
本発明による実施例では、シート状電極1として全固体リチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用いることもできるし、電解液又はゲルポリマー電解質を用いたリチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用いることができる。シート状電極1として全固体リチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用いた場合には、シート状電極1は、
図2Bに示されるように、正極集電体層2、正極活物質層3、固体電解質層4、
負極活物質層5および負極集電体層6を有する。この場合、正極集電体層2は導電性材料から形成されており、本発明による実施例では、この正極集電体層2は集電用金属箔、例えば、アルミニウム箔から形成されている。また、正極活物質層3は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンを、放電の際に吸蔵させ、充電の際に放出させることのできる正極活物質から形成されている。また、固体電解質層4は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンに対して伝導性を有し、全固体電池の材料として利用可能な材料から形成されている。
【0010】
一方、負極活物質層5は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンを、放電の際に放出させ、充電の際に吸蔵させることのできる負極活物質から形成されている。また、負極集電体層6は導電性材料から形成されており、本発明による実施例では、この負極集電体層2は集電用金属箔、例えば、銅箔から形成されている。一方、
図2Cに示される例では、シート状電極1は、上から順に、正極集電体層2、正極活物質層3、固体電解質層4、
負極活物質層5、負極集電体層6、負極活物質層5、固体電解質層4および正極活物質層3の8層構造からなる。
【0011】
一方、シート状電極1として電解液又はゲルポリマー電解質を用いたリチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用いた場合には、
図2Bおよび
図2Cにおいて、固体電解質層4の代わりにセパレータ4が用いられ、この場合には、例えば、本発明による電極積層装置によるシート状電極の積層作業が完了した後に、積層されたシート状電極の正極活物質層3、セパレータ4および極活物質層5に、電解液又はゲルポリマー電解質が注入される。なお、以上、代表的なシート状電極1について説明したが、その他の種々の形式のシート状電極1を用いることができる。
【0012】
図1を参照すると、
図1には、電極搬送装置A、平面モータ装置B、および、これら電極搬送装置Aおよび平面モータ装置Bを制御するための制御装置Cが示されている。最初に、この電極搬送装置Aについて説明する。
図3は、
図1に示される電極搬送装置Aの一部の拡大側面図を示している。
図1および
図3を参照すると、電極搬送装置Aは、垂直面内において上下方向に間隔を隔てた水平直線部分10aおよび一対の半円形部分10bからなる長円形のレール10と、このレール10上を走行可能な複数個の可動子12を具備している。
図4には、
図3のY-Y線に沿って見た可動子12の断面図が示されている。
図4に示されるように、この可動子12は、可動子12に軸線13a回りで回転可能に取り付けられてレール10上を転動する一対のガイドローラ13(進行方向に対し前と後ろに配置されている)と、可動子12に軸線14a回りで回転可能に取り付けられてレール10上を転動する一対のガイドローラ14(進行方向に対し前と後ろに配置されている)と、可動子12に軸線15a回りで回転可能に取り付けられてレール10上を転動するガイドローラ15と、可動子12に軸線16a回りで回転可能に取り付けられてレール10上を転動するガイドローラ16とを備えている。
【0013】
一方、この可動子12は、一対の永久磁石17,18を備えており、これら永久磁石17,18に挟まれた電極搬送装置A内には、コイルの巻設されたステータ11が配置されている。このステータ11と永久磁石17,18によって、即ち、ステータ11と可動子12によってリニアモータが形成されている。従って、電極搬送装置Aでは、リニアモータの可動子12がレール10上を
図3に示される搬送方向に走行せしめられていることになる。この可動子12の走行速度等は、制御装置Cによって制御される。
【0014】
図3、
図4、および
図4の側面図を示す
図5を参照すると、可動子12上には矩形状をなす搬送プレート20が取り付けられており、
図1に示される実施例では、この搬送プレート20上にシート状電極1が保持される。搬送プレート20には、搬送プレート20上にシート状電極1を保持するための複数のクランプ21,22が取り付けられている。
図4および
図5に示される実施例では、進行方向に対し前方に位置する搬送プレート20の前端部に間隔を隔てて一対のクランプ21が取り付けられており、進行方向に対し後方に位置する搬送プレート20の後端部に間隔を隔てて一対のクランプ22が取り付けられている。なお、これらのクランプ21、22に加えて、更に多くのクランプ22を搬送プレート20に取り付けることができる。
【0015】
図5のクランプ21は、シート状電極1を搬送プレート20上に保持するためのシート状電極保持位置に位置しているときを示しており、
図5のクランプ22は、シート状電極1の保持作用を解放するための解放位置に位置しているときを示している。これらクランプ21,22は同一構造を有するので、クランプ21のみの構造を説明すると、クランプ21は、概略的にいうとL字型をなすクランプアーム23を具備しており、このクランプアーム23の中央部が、支持ピン24によって、搬送プレート20に固定された支持板25に回動可能に取り付けられている。クランプアーム23の一端には搬送プレート20の表面上まで延びる押え付け部23aが形成されており、クランプアーム23の他端にはローラ26が取り付けられている。クランプアーム23は、クランプアーム23と支持板25間に取り付けられた引張りばね27によって常時反時計回りに付勢されている。
【0016】
可動子12の走行経路には、クランプアーム23のローラ26と係合可能な固定カム(図示せず)が設けられている。クランプアーム23のローラ26は、通常、この固定カムと係合しておらず、このときには、クランプ21,22は、引張りばね27のばね力により、
図5のクランプ21で示されるようなシート状電極保持位置に位置している。一方、クランプアーム23のローラ26が固定カムと係合すると、クランプ21,22は、
図5のクランプ22で示されるような解放位置まで回動せしめられる。
【0017】
本発明による実施例では、シート状電極1は、前工程において予め製造されている
図2B又は
図2Cに示される断面構造を有する長い帯状の電極シートを、設定された長さに切断することによって作成される。
図1および
図3には、この長い帯状の電極シート30と、切断装置31とが図解的に示されている。
図3において矢印Fで示されるように、電極シート30が、電極搬送装置Aのレール10の下方水平直線部分10aの少し下方に向けて連続的に送給され、この電極シート30が切断装置31により設定された長さに切断され、それによりシート状電極1が作成される。この場合、例えば、電極シート30の進行方向先端部が切断装置31を越えて前方に進むと、電極シート30の進行方向先端部の位置がクランプ21により保持しうる位置に維持されるように、電極シート30の進行方向先端部の移動に同期して、可動子12が走行制御される。
【0018】
即ち、可動子12は、クランプ21,22が
図5のクランプ22で示されるような解放位置とされた状態で電極搬送装置Aのレール10の半円形部分10bを下降し、電極シート30の進行方向先端部の位置がクランプ21により保持しうる位置に到達すると、クランプ21がシート状電極保持位置まで回動せしめられて、電極シート30の進行方向先端部の位置がクランプ21により保持される。電極シート30の進行方向先端部の位置がクランプ21により保持されると、電極シート30が切断装置31により設定された長さに切断され、それによりシート状電極1が作成される。次いで、クランプ22がシート状電極保持位置まで回動せしめられ、シート状電極1の後端部がクランプ22により保持される。このようにして、シート状電極1が、クランプ21,22により搬送プレート20上に保持される。なお、シート状電極1が、クランプ21,22により搬送プレート20上に保持される間に、シート状電極1が落下しないように、シート状電極1を案内するガイドローラ32を設けることもできる。この場合、ガイドローラ32は、例えば、間隔を隔てた複数個のローラから構成され、クランプ21,22がローラ間を通り抜け可能とされる。なお、
図3からわかるように、本発明による実施例では、矢印Fの方向を搬送方向と称している。
【0019】
次に、
図1に示される平面モータ装置Bの概要について、
図6から
図9を参照しつつ説明する。
図6は、平面モータ装置Bの全体を図解的に示している。
図6を参照すると、平面モータ装置Bは、平板状のステータ50と、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面51の垂直軸線回りに回転可能な可動子40とにより構成される。
図6に示されるように、この可動子40は、平板状をなす。また、
図6に示されるように、ステータ50は、複数個に分割されたステータ要素52の集合体により形成されている。
【0020】
図7Aは、
図6に示される可動子40の背面図を示しており、
図7Bは、
図7AのZ-Z線に沿ってみた可動子40の縦断面図を示している。
図7Aおよび
図7Bにおいて、41は断面矩形の細長い永久磁石片を示しており、42Aから42Dは、夫々、これら複数個の永久磁石片41を並列配置した磁石領域を示している。
図7Aからわかるように、各磁石領域42Aから42Dは、可動子40の中心に対して点対象に配置されている。
図7Cは、各磁石領域42Aから42Dにおいて並列配置された永久磁石片41内における代表的な磁化方向(矢印はS極からN極の方向を示す)を示している。一方、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、各磁石領域42Aから42Dにより包囲された可動子40の中央部には、導電体43が配置されている。
【0021】
一方、
図8Aには、ステータ50の各ステータ要素52の縦断面図が示されている。
図8Aに示される例では、各ステータ要素52内に、可動子40の磁石領域42Aの永久磁石片41による磁場と相互作用を行うコイル層53Aと、可動子40の磁石領域42Bの永久磁石片41による磁場と相互作用を行うコイル層53Bと、可動子40の磁石領域42Cの永久磁石片41による磁場と相互作用を行うコイル層53Cと、可動子40の磁石領域42Dの永久磁石片41による磁場と相互作用を行うコイル層53Dが形成されている。また、
図8Bには、コイル層53Bおよびコイル層53Dの平面図が示されており、
図8Cには、コイル層53Aおよびコイル層53Cの平面図が示されている。
図8Bおよび
図8Cに示される例では、少しずつずれて一部重なるように配置された3個のコイル54A,54B,54Cが一つのコイル群とされており、各コイル層53A、53B、53C、53D内には、このようなコイル群が並列配置されている。
【0022】
各コイル群の各コイル54A,54B,54Cには電流が供給され、各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量は、制御装置Cにより制御される。コイル54A,54B,54Cに電流が供給されると、磁場が生成され、この磁場と、可動子40の永久磁石片41による磁場との相互作用により、可動子40に作用する力が発生する。この場合、
図8Aから
図8Cに示される例では、コイル層53Aのコイル54A,54B,54Cにより生成される磁場と可動子40の磁石領域42Aの永久磁石片41による磁場との相互作用により可動子40の磁石領域42Aに作用する力が発生し、コイル層53Bのコイル54A,54B,54Cにより生成される磁場と可動子40の磁石領域42Bの永久磁石片41による磁場との相互作用により可動子40の磁石領域42Bに作用する力が発生し、コイル層53Cのコイル54A,54B,54Cにより生成される磁場と可動子40の磁石領域42Cの永久磁石片41による磁場との相互作用により可動子40の磁石領域42Cに作用する力が発生し、コイル層53Dのコイル54A,54B,54Cにより生成される磁場と可動子40の磁石領域42Dの永久磁石片41による磁場との相互作用により可動子40の磁石領域42Dに作用する力が発生する。
【0023】
この場合、各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量を制御して可動子40の各磁石領域42A、42B、42C、42Dに作用する力を調整することにより、可動子40を、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51に沿う任意の方向に移動させることができるし、可動子40を、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51の垂直軸線回りに回転させることができるし、可動子40を、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51上の目的とする任意の位置に保持しておくこともできる。
【0024】
一方、
図6から
図8Cに示される例では、ステータ50の平坦表面51内に、平坦表面51の全体に亘って多数の磁気センサが分散配置されており、これらの磁気センサの出力に基づいて可動子40の位置検出が行われる。即ち、可動子40の下面に導電体43が配置されていると、この導電体43内には磁気回路が生成され、導電体43の下方において磁界が大きく変化する。この磁界の変化が磁気センサの出力に表れる。従って、
図6から
図8Cに示される例では、磁気センサの出力に基づいて可動子40の位置検出が行われている。なお、可動子40の位置を検出する方法は種々の方法があり、例えば、可動子40の下面に発光体を取り付け、ステータ50の平坦表面51内に多数の光センサを分散配置
することにより、可動子40の位置を検出することもできる。
【0025】
さて、平面モータ装置Bでは、可動子40を、ステータ50の平坦表面51上において、目標とする任意の平面位置に目標とする任意の角度位置でもって保持しておくこともできる。この場合、可動子40を目標平面位置に目標角度位置でもって保持しておくために各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給すべき電流量は予め分かっている。従って、ステータ50の平坦表面51上における可動子40の目標平面位置と目標角度位置が定まった場合、各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給すべき電流量を、可動子40を目標平面位置に目標角度位置でもって保持しておくために必要な電流量に制御すると、可動子40を目標平面位置に目標角度位置でもって保持しておくことが可能となる。
【0026】
本発明による実施例では、このことを利用して、可動子40の移動および回転制御が行われる。次に、この可動子40の移動および回転制御について
図9を参照しつつ説明する。なお、
図9に示されるように、ステータ50の平坦表面51上における位置Pはx-y座標でもって設定され、可動子40の回転角度Θがx軸を基準として設定される。
図9において、可動子40の初期位置がP
1(x
1、y
1)であったとすると、最初に、目標移動経路に沿った一定時間毎の目標平面位置P
1(x
1、y
1)
、P
2(x
2、y
2)
、P
3(x
3、y
3)
、P
4(x
4、y
4)
、P
5(x
5、y
5)
、と各目標平面位置P
1(x
1、y
1)
、P
2(x
2、y
2)
、P
3(x
3、y
3)
、P
4(x
4、y
4)
、P
5(x
5、y
5)における目標回転角度位置Θ
1、Θ
2、Θ
3、Θ
4、Θ
5が設定される。これらの目標平面位置P
1、P
2、P
3、P
4、P
5および目標回転角度位置Θ
1、Θ
2、Θ
3、Θ
4、Θ
5が設定されると、設定された目標平面位置P
1、P
2、P
3、P
4、P
5および目標回転角度位置Θ
1、Θ
2、Θ
3、Θ
4、Θ
5に基づいて、一定時間毎に、可動子40が目標平面位置P
1、P
2、P
3、P
4、P
5に目標回転角度位置Θ
1、Θ
2、Θ
3、Θ
4、Θ
5でもって保持されるように各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。このように各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御されると、可動子40が目標回転角度位置Θ
1、Θ
2、Θ
3、Θ
4、Θ
5に回転しつつ目標平面位置P
1、P
2、P
3、P
4、P
5に沿って移動せしめられる。
【0027】
平面モータ装置Bの可動子40上には、積層されるシート状電極1を保持するための積層電極保持具60が載置されている。そこで、次に、この積層電極保持具60について
図10Aおよび
図10Bを参照しつつ説明する。
図10Aには、図解的に表した積層電極保持具60の斜視図が示されている。
図10Aを参照すると、積層電極保持具60は、基台61と、基台61上に取り付けられたパンダグラフ式昇降機構62と、パンダグラフ式昇降機構62により支持されている底板63と、底板63の一側に設けられたクランプ64を作動させるためのクランプ機構65と、底板63の他側に設けられたクランプ66を作動させるためのクランプ機構67とを具備する。パンダグラフ式昇降機構62は底板63を上方に押し上げるためのばね(図示せず)を具備しており、このパンダグラフ式昇降機構62のばねのばね力によって、底板63は、常時上方に付勢される。この底板63上にシート状電極1が積層される。
【0028】
一方、クランプ機構65とクランプ機構67は、底板63の短手軸線に関して対称的な形状を有している。従って、以下、
図10Aおよび
図11を参照しつつ、クランプ64を作動させるためのクランプ機構65の構造のみについて説明し、クランプ66を作動させるためのクランプ機構67の構造についての説明は省略する。なお、
図11の(A)から(C)は、クランプ64を作動させるためのクランプ機構65の作動を図解的に示しており、
図11の(A)から(C)には、底板63の一部と、底板63上に積層された複数枚のシート状電極1の一部が描かれている。
【0029】
図11の(A)を参照すると、積層電極保持具60のクランプ機構65は、クランプ64を傾けるためのチルト機構68と、チルド機構68を上下動させるためのスライド機構69とを有する。スライド機構69は、積層電極保持具60内において上下方向に摺動可能に支持されているスライダ70と、スライダ70の下端部に回転可能に取り付けられたローラ71と、スライダ70を上方に向けて付勢する圧縮ばね72と、積層電極保持具60内において回動可能に支持されているカム軸73と、カム軸73に固定されてローラ71と係合するカム74と、カム軸73の外端部に固定されたアーム75と、アーム75の先端部に回転可能に取り付けられたローラ76とを具備する。カム軸73は、コイルばね(図示せず)のばね力によって常時反時計回りに付勢されている。
図11の(A)においてカム軸73が時計回りに回動せしめられると、
図11の(B)に示されるようにスライダ70が圧縮ばね72のばね力により上昇する。即ち、スライド機構69では、カム軸73を回動させることによりスライダ70が上下動せしめられる。
【0030】
一方、
図11の(A)に示されるように、チルト機構68は、クランプ64を支持しかつ回動軸77によりスライダ70に回動可能に取り付けられたチルトヘッド78と、チルトヘッド78に回転可能に取り付けられたローラ79と、スライダ70に回動可能に支持されているカム軸80と、カム軸80に固定されてローラ79と係合するカム81と、カム軸80の外端部に固定されたアーム82と、アーム82の先端部に回転可能に取り付けられたローラ83と、チルトヘッド78を反時計回りに付勢するコイルばね84とを具備する。カム軸80は、コイルばね(図示せず)のばね力によって常時時計回りに付勢されている。なお、
図11の(A)或いは
図11の(C)に示されるように、クランプ64が底板63上に載置されたシート状電極1の上方に位置しているときのチルトヘッド78の位置を、以下、直立位置と称する。
図11の(A)においてカム軸80が反時計回りに回動せしめられると、
図11の(B)に示されるように、クランプ64が底板63上に載置されたシート状電極1の上方領域から外れる方向に、チルトヘッド78が傾けられる。
【0031】
図11の(A)は、チルトヘッド78が直立位置にあり、底板63上に積層されたシート状電極1が、クランプ64により押え付けられているときを示している。即ち、このとき、底板63上に積層されたシート状電極1は、パンダグラフ式昇降機構62により上方に付勢されており、このとき、上昇しようとするシート状電極1が、クランプ64により押え付けられている。底板63上に積層されたシート状電極1のクランプ64による押え付け作用を解除するときには、カム軸73が時計回りに回動されると共にカム軸80が反時計回りに回動され、それによって、
図11の(B)に示されるように、チルトヘッド78が上昇せしめられると共に、クランプ64が底板63上に積層されたシート状電極1の上方領域から外れる方向に、チルトヘッド78が傾けられる(このとき、新たなシート状電極1が底板83上に積層されたシート状電極1上に積層される)。次いで、
図11の(C)に示されるように、チルトヘッド78が直立位置に戻され、次いで、チルトヘッド78が下降せしめられることによって、底板83上に積層されたシート状電極1がクランプ64により押え付けられる。カム軸73およびカム軸80の回動作業は、可動子12が移動せしめられているときに、ローラ76およびローラ83が、固定カムと係合することにより実行される。
【0032】
図10Bには、積層電極保持具60の変形例が示されている。この変形例では、クランプ64を作動させるためのクランプ機構65のみが設けられており、
図10Aに示されるクランプ66を作動させるためのクランプ機構67は設けられていない。この変形例においても、クランプ機構65は、
図10Aに示されるクランプ機構65と同じ
図11の(A)から(C)に示される作動を行う。
【0033】
次に、
図12を参照しつつ、本発明の第1実施例において実行される平面モータ装置Bの可動子40の制御方法について説明する。
図12は、
図1に示される電極積層装置を上方からみた平面図を示しており、
図12には、ステータ50の平坦表面51上を移動する複数個の可動子40と、各可動子40上に固定された
図10Aに示される積層電極保持具60と、積層電極保持具60により保持されたシート状電極1とが示されている。更に、
図12には、電極搬送装置Aの位置が一点鎖線で示されている。
図12に示されるように、この第1実施例では、各シート状電極1が、並列配置された一対の可動子40上に固定された一対の積層電極保持具60により保持されている。
【0034】
この第1実施例では、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1が、電極搬送装置Aの真下において、搬送方向に(
図12において上方から下方に向かう方向)並列配置状態でもって移動する一対の可動子40上に固定された一対の積層電極保持具60上に積層される。なお、以下、電極搬送装置Aの長手方向軸線がステータ50の平坦表面51上における位置座標のy軸方向とされており、電極搬送装置Aの短手方向軸線がステータ50の平坦表面51上における位置座標のx軸方向とされている場合を例にとって、可動子40の移動制御について説明する。この場合、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1が、電極搬送装置Aの下方において、一対の積層電極保持具60上に積層されるときには、一対の可動子40は、y軸のマイナス方向に向けて移動することになる。
【0035】
さて、本発明による実施例では、ステータ50の平坦表面51上において基準とされる
可動子40の走行軌道が予めx-y座標でもって設定されており、この予め設定された基準とされる可動子40の走行軌道を基準走行軌道と称す。本発明による実施例では、この基準走行軌道は、可動子40の中心に対して設定されており、各可動子40は、各可動子40の中心が、この基準走行軌道に沿って移動するように制御装置Cによって制御される。
図12には、複数本の基準走行軌道が一点鎖線で示されている。
【0036】
図12を参照すると、ループ状をなしかつx軸方向に一定間隔を隔てた一対の積層用基準走行軌道K1,K2と、これらの積層用基準走行軌道K1,K2から夫々分岐して直線状に延びる一対の排出用基準走行軌道K3,K4が描かれている。新たなシート状電極1を一対の積層電極保持具60上に積層させる積層作業を行うときには、夫々積層電極保持具60を担持している並列配置された対をなす可動子40が、各可動子40が自転することなく対をなした状態で積層用基準走行軌道K1,K2に沿って移動せしめられる。この場合、積層作業の行われる電極搬送装置Aの下方領域では、積層用基準走行軌道K1,K2が、電極搬送装置Aの長手軸線から互いに反対側に等しい距離を隔ててy軸方向に直線状に延びるように設定されており、積層作業が行われるときには、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1が、積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように、新たなシート状電極1の移動に同期して対をなす可動子40が移動せしめられる。
【0037】
積層作業の行われる電極搬送装置Aの下方領域では、複数個の対をなす可動子40がy軸方向に等間隔を隔てて移動せしめられ、積層電極保持具60上への新たなシート状電極1の積層作業が次から次へと行われる。新たなシート状電極1の積層作業が完了した積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40は、次の新たなシート状電極1の積層作業を行うために、前方を走行する対をなす可動子40の背後まで、積層用基準走行軌道K1,K2に沿って、高速度で移動せしめられる。対をなす可動子40が、前方を走行する対をなす可動子40の背後に到達すると、その後、対をなす可動子40は、前方を走行する対をなす可動子40に追従して移動せしめられる。
【0038】
予め設定された枚数の新たなシート状電極1の積層作業が完了すると、予め設定された枚数の積層済みのシート状電極1を保持した積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40は、積層作業の行われる電極搬送装置Aの下方領域から、対応する排出用基準走行軌道K3,K4に沿って、電極搬送装置Aから排出される。シート状電極1として全固体リチウムイオン二次電池用のシート状電極1が用いられている場合には、電極搬送装置Aから積層済みのシート状電極1が排出されると、次の工程では、積層電極保持具60により保持された積層済みのシート状電極1はプレス装置により圧縮され、圧縮された積層済みのシート状電極1の側面部が互いに樹脂により固着される。次いで、その他の行程を経て、シート状電極1の積層体が作成される。シート状電極1の積層体が作成されると、シート状電極1の積層体は、積層電極保持具60から取り出され、空になった積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40は、待機領域Qに移動せしめられる。
【0039】
一方、シート状電極1として電解液又はゲルポリマー電解質を用いたリチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用いられている場合には、電極搬送装置Aから積層済みのシート状電極1が排出されると、次の工程では、圧縮された積層済みのシート状電極1の一側面部が互いに樹脂により固着された後、樹脂により固着されていない積層済みのシート状電極1の周辺部分から、正極活物質層3、セパレータ4および極活物質層5に電解液又はゲルポリマー電解質が注入される。次いで、その他の行程を経て、シート状電極1の積層体が作成される。シート状電極1の積層体が作成されると、シート状電極1の積層体は、積層電極保持具60から取り出され、空になった積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40は、待機領域Qに移動せしめられる。
【0040】
一方、電極搬送装置Aから積層済みのシート状電極1が排出されると、待機領域Qに待機している空の積層電極保持具60を担持する一対の可動子40が、積層用基準走行軌道K1,K2に沿って走行する前方の対をなす可動子40の背後まで、高速度で移動せしめられる。次いで、空になった積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40が、前方を走行する対をなす可動子40の背後に到達すると、その後、空になった積層電極保持具60を担持する対をなす可動子40は、前方を走行する対をなす可動子40に追従して移動せしめられる。
【0041】
このように、第1実施例では、可動子40が予め設定された積層用基準走行軌道K1,K2および排出用基準走行軌道K3,K4に沿って移動せしめられる。この場合、本発明による実施例では、可動子40の移動要求に応じた積層用基準走行軌道K1,K2および排出用基準走行軌道K3,K4上における一定時間毎のx-y座標が可動子40の目標平面位置として設定され、このx-y座標のx軸に対する可動子40の回転角度位置が目標回転角度位置として設定される。この場合、制御装置Cにより、一定時間毎に、可動子40が目標平面位置に目標回転角度位置でもって保持されるように、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。
【0042】
次に、
図13を参照しつつ、電極搬送装置Aの下方領域において行われる積層電極保持具60上への新たなシート状電極1の積層作業について説明する。なお、
図13には、電極搬送装置Aの搬送プレート20に取り付けられたクランプ21,22によるシート状電極1のクランプ作用、および平面モータ装置Bの可動子40により担持された積層電極保持具60のクランプ64,66によるシート状電極1のクランプ作用が図解的に示されている。更に、
図13には、積層電極保持具60の底板63を上方に付勢するパンダグラフ式昇降機構62が、ばねで描かれている。なお、
図13は、底板64上に、既に、シート状電極1が積層されている場合を示している。
【0043】
積層作業が行われるときには、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1が、積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように、新たなシート状電極1の移動に同期して対をなす可動子40が移動せしめられる。
図13の(A)は、
積層作業の開始時を示しており、このときには、新たなシート状電極1がクランプ21,22により搬送プレート20上に保持されており、積層済みシート状電極1がクランプ64,66により底板63上に保持されている。次いで、
図13の(B)に示されるように、クランプ22により新たなシート状電極1の一側周辺部を搬送プレート20上に保持すると共に対をなす可動子40の各クランプ66により積層済みシート状電極1の一側端部を底板63上に保持した状態で、クランプ21およびクランプ64の保持作用が解除される。このとき、新たなシート状電極1の他側端部が積層済みシート状電極1上に落下する。
【0044】
次いで、
図13の(C)に示されるように、積層済みシート状電極1上に落下した新たなシート状電極1の他側端部が、クランプ64により、積層済みシート状電極1上に保持される。次いで、
図13の(D)に示されるように、積層済みシート状電極1上に落下した新たなシート状電極1の他側端部が、クランプ64により、積層済みシート状電極1上に保持した状態で、クランプ22およびクランプ65の保持作用が解除される。このとき、新たなシート状電極1の全体が積層済みシート状電極1上に落下する。次いで、
図13の(E)に示されるように、積層済みシート状電極1がクランプ64,66により底板63上に保持される。なお、
図13の(A)から(E)において、搬送プレート20に取り付けられたクランプ21,22によるクランプ作用およびクランプの解除作用は、搬送プレート20の移動中にローラ26が固定カムと係合することにより行われ、積層電極保持具60のクランプクランプ64,66によるクランプ作用およびクランプの解除作用は、可動子40の移動中に積層電極保持具60のローラ76、83が固定カムと係合することにより行われる。
【0045】
このように、本発明による実施例では、シート状電極1の積層作業中、新たなシート状電極1は、積層電極保持具60に積層されるまでの間、搬送プレート20に取り付けられたクランプ21,22か、或いは、積層電極保持具60のクランプ64,66のうちの少なくともいずれか一つのクランプにより保持されていることがわかる。
【0046】
ところで、新たなシート状電極1が搬送プレート20上においてクランプ21,22により正規の保持位置に保持されていないと、新たなシート状電極1を、積層電極保持具60により保持されている積層済みシート状電極1上に積層したときに、新たなシート状電極1の積層位置が積層済みシート状電極1の積層位置に対してずれを生じ、新たなシート状電極1を積層済みシート状電極1上に整列して積層できなくなる。そこで、本発明による実施例では、新たなシート状電極1を積層電極保持具60により保持されている積層済みシート状電極1上に積層したときに、新たなシート状電極1の積層位置が積層済みシート状電極1の積層位置に対してずれを生じたときには、新たなシート状電極1を積層済みシート状電極1上に整列して積層できるように、平面モータ装置Bの可動子40の移動位置および回転角度位置を制御するようにしている。
【0047】
次に、この平面モータ装置Bの可動子40の移動位置および回転角度位置の制御について、
図14Aから
図15Bを参照しつつ説明する。
図14Aは、電極搬送装置Aの可動子12がレール10の下方の水平直線部分10a上に位置しているときの搬送プレート20の底面図を示している。
図14Aには、搬送プレート20上においてクランプ21,22により保持されている新たなシート状電極1が示されており、また、
図14Aにおいて矢印方向は搬送プレート20の進行方向を示している。一方、
図14Bは、
図14Aに示される搬送プレート20の移動に同期して移動せしめられている対をなす可動子40の平面図を示している。
図14Bには、各可動子40により担持された積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に、クランプクランプ64,66により保持されている積層済みシート状電極1が示されている。
【0048】
一方、
図14Aには、新たなシート状電極1を積層電極保持具60上のシート状電極積層位置と整列させるのに必要な正規の保持位置が一点鎖線Rで示されている。新たなシート状電極1が搬送プレート20上において、この正規の保持位置Rに保持されている場合には、新たなシート状電極1を積層電極保持具60により保持されている積層済みシート状電極1上に積層したときに、新たなシート状電極1が積層電極保持具60により保持されている積層済みシート状電極1上に整列して積層される。本発明による実施例では、この正規の保持位置Rは予め設定されている。
【0049】
さて、
図14Aは、搬送プレート20上において保持された新たなシート状電極1の中心が、正規の保持位置Rの中心O
0から矢印で示されるようにOcまでずれており、新たなシート状電極1の回転角度位置が、正規の保持位置に対して、角度αだけずれた場合を示している。なお、これらのずれ量は、分かりやすくするために誇張して示している。この場合、本発明による実施例では、新たなシート状電極1が積層電極保持具60により保持されている積層済みシート状電極1上に整列して積層されるように、
図14Bに示されるように、一方の可動子40の位置が積層用基準走行軌道K1上の設定位置O
1から位置O
dに変更されると共に一方の可動子40が基準回転角度位置から角度αだけ回転され、他方の可動子40の位置が積層用基準走行軌道K2上の設定位置O
2から位置O
eに変更されると共に他方の可動子40も基準回転角度位置から角度αだけ回転される。
【0050】
この場合の一方の可動子40の変更後の設定位置O
dの座標(x
d、y
d)の算出方法およびこの場合の他方の可動子40の変更後の設定位置O
eの座標(x
e、y
e)の算出方法が
図15Aおよび
図15Bに示されている。即ち、
図15Aに示されるように、搬送プレート20上において保持された新たなシート状電極1の中心が、正規の保持位置Rの中心O
0からOcまでずれたときのx軸方向およびy軸方向のずれ量をΔxおよびΔyとし、
図15Bに示されるように、一方の可動子40の積層用基準走行軌道K1上の設定された基準位置O
1の座標を(x
1、y
1)とし、他方の可動子40の積層用基準走行軌道K2上の設定された基準位置O
2の座標を(x
2、y
2)とすると、
図15Bの下方に示されるように、ずれ量Δx、Δy、回転角度α、基準位置O
1の座標の値x
1、y
1、基準位置O
2の座標の値x
2、y
2を用いて、一方の可動子40の変更後の設定位置O
dの座標(x
d、y
d)および他方の可動子40の変更後の設定位置O
eの座標(x
e、y
e)を算出することができる。なお、
図15Bにおいて、O
mの座標(x
0、y
0)は、基準位置O
1(x
1、y
1)と基準位置O
2(x
2、y
2)との中間点、即ち、積層済みシート状電極1の中心を示しており、Sは、中心座標O
m(x
0、y
0)から、基準位置O
1(x
1、y
1)および基準位置O
2(x
2、y
2)までの距離を示している。
【0051】
図1に示される第1実施例では、
図14Aに示されるような、搬送プレート20上における新たなシート状電極1の正規の保持位置Rに対するずれの発生を検出するために、搬送プレート20上において保持された新たなシート状電極1を撮影するためのカメラ33が設置されており、カメラ33により撮影された画像に基づいて
図15Aに示されるようなずれ量Δx、Δy、αが検出される。これらのずれ量Δx、Δy、αが検出されると、
これらのずれ量Δx、Δy、αから、
図15Bの下方に示される算出式を用いて、一方の可動子40の変更後の設定位置O
dの座標(x
d、y
d)および他方の可動子40の変更後の設定位置O
eの座標(x
e、y
e)が算出される。これらの座標(x
d、y
d)および座標(x
e、y
e)が算出されると、各可動子40がこれらの座標(x
d、y
d)および座標(x
e、y
e)を通るように制御装置Cによって、可動子40の移動が制御される。
【0052】
図16は、第1実施例において各対をなす可動子の移動を制御するための可動子制御ルーチンを示している。この可動子制御ルーチンにより、電極積層装置内に存在する全ての可動子40の移動制御が可動子毎に繰り返し実行される。
図16を参照すると、ステップ100では、今回の処理サイクルにおいて制御対象となっている可動子40が、この可動子40上の積層電極保持具60上に、搬送プレート20上に保持された新たなシート状電極1を積層するための積層処理中であるか否かが判別される。制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理中であると判別されたときには、ステップ101に進んで、積層処理が続行される。この積層処理は、
図18に示される積層処理ルーチンにより実行される。
【0053】
次いで、ステップ102では、制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理が完了したか否かが判別される。制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理が完了していないと判別されたときには、ステップ103に進んで、制御対象となっている可動子40を積層用基準走行軌道K1、K2に沿って積層開始位置に戻すための戻り処理が行われる。一方、ステップ102において、制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理が完了したと判別されたときには、ステップ104に進んで、制御対象となっている可動子40を排出用基準走行軌道K3、K4に沿って次の工程に進ませるための排出処理が行われる。
【0054】
一方、ステップ100において、制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理中でないと判別されたときには、ステップ105に進んで、制御対象となっている可動子40が、積層用基準走行軌道K1、K2上において前方を移動する一対の可動子40を追従している追従中であるか否かが判別される。制御対象となっている可動子40が、前方を移動する一対の可動子40の追従中であると判別されたときには、ステップ106に進んで、制御対象となっている可動子40が、積層開始位置に到達したか否かが判別される。制御対象となっている可動子40が、積層開始位置に到達したと判別されたときには、ステップ107に進んで、制御対象となっている可動子40上の積層電極保持具60上への積層処理が開始される。
【0055】
一方、ステップ105において、制御対象となっている可動子40が、前方を移動する一対の可動子40の追従中でないと判別されたときには、ステップ108に進んで、制御対象となっている可動子40が、前方を移動する一対の可動子40に後ろに近づくまで、前方を移動する一対の可動子40に向けて高速度で移動せしめられる。この可動子40の高速走行は、ステップ103において戻り処理が開始されたとき、および、空の積層電極保持具60を担持した一対の可動子40を積層用基準走行軌道K1、K2内に送り込むときに行われる。次いで、ステップ109では、制御対象となっている可動子40が、積層用基準走行軌道K1、K2上において前方を移動する一対の可動子40まで一定距離となる追従位置に到達したか否かが判別され、制御対象となっている可動子40が、この追従位置に到達したと判別されたときには、ステップ110に進んで、制御対象となっている可動子40を、前方を移動する一対の可動子40に追従して移動させる追従処理が行われる。
【0056】
図17は、搬送プレート20上における新たなシート状電極1の正規の保持位置に対するずれの発生を検出するための位置ずれ検出ルーチンを示している。この検出ルーチンは繰り返し実行される。
図17を参照すると、ステップ120では、検出タイミングであるか否かが判別される。検出タイミングであると判別されたときにはステップ121に進んで、カメラ33により搬送プレート20上におけて保持された新たなシート状電極1の画像が撮影される。次いで、ステップ122では、この撮影された画像から、例えば、物体検出の手法を用いて
シート状電極1の形状およびシート状電極1の保持位置を認識するための画像処理が行われる。
【0057】
次いで、ステップ123では、画像処理の結果に基づいて、搬送プレート20上における新たなシート状電極1が正規の保持位置Rに対してずれを生じているか否かが判別される。搬送プレート20上における新たなシート状電極1が正規の保持位置Rに対してずれを生じていると判別されたときには、ステップ124に進んで、
図15Aに示されるようなずれ量Δx、Δy、α、即ち、可動子40の設定位置の補正に用いられる補正値Δx、Δy、αが算出される。次いで、ステップ125では、補正値Δx、Δy、αが制御装置C内に記憶される。次いで、ステップ126では、可動子40の設定位置を補正すべきであることを示す補正要求が発せられる。
【0058】
図18は、
図16に示される可動子制御ルーチンのステップ101において実行される積層処理ルーチンを示している。この
積層処理ルーチンは繰り返し実行される。
図18を参照すると、ステップ140では、制御対象である一方の可動子40に対する積層用基準走行軌道K1上の次の基準位置O
1(x
1、y
1)の座標の値と、制御対象である他方の可動子40に対する積層用基準走行軌道K2上の次の基準位置O
2(x
2、y
2)の座標の値が算出される。次いで、ステップ141では、
図17に示される位置ずれ検出ルーチンにおいて、補正要求が発せられているかあるか否かが判別される。補正要求が発せられていると判別されたときには、ステップ142に進む。
【0059】
ステップ142では、制御装置C内に記憶された補正値Δx、Δy、αが読み込まれる。次いで、ステップ143では、
図15Bに示される如く、これらの補正値Δx、Δy、αに基づいて、一方の可動子40の変更後の設定位置O
d(x
d、y
d)の座標の値および他方の可動子40の変更後の設定位置O
e(x
e、y
e)の座標の値が算出される。次いで、ステップ144に進む。一方、ステップ141において、補正要求が発せられていないと判別されたときには、ステップ144にジャンプする。ステップ144では、補正要求が発せられていないときには、各可動子40の移動位置が夫々、積層用基準走行軌道K1上の次の基準位置O
1(x
1、y
1)および積層用基準走行軌道K2上の次の基準位置O
2(x
2、y
2)となるように、制御装置Cによって、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御され、補正要求が発せられているときには、各可動子40の移動位置が夫々、変更後の設定位置O
d(x
d、y
d)および変更後の設定位置O
e(x
e、y
e)となるように、制御装置Cによって、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。
【0060】
次いで、ステップ145では、予め設定された一定時間が経過するまで待つ。一定時間が経過すると、ステップ146に進んで、一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了したか否かが判別される。一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了していないと判別されたときには、ステップ140に戻って、各可動子40の移動制御が続行される。一方、ステップ146において、一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了したと判別されたときには、ステップ147に進んで、新たなシート状電極1の積層作業が終了する。次いで、
図16に示される可動子制御ルーチンのステップ102に進む。
【0061】
このように、本発明による第1実施例では、シート状電極1を積層するための電極積層装置が、平板状のステータ50と、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面51の垂直軸線回りに回転可能な複数の可動子40とにより構成される平面モータ装置Bと、平面モータ装置Bの上方に配置されかつ搬送経路に沿ってシート状電極1を保持しつつ搬送する電極搬送装置Aと、平面モータ装置Bおよび電極搬送装置Aを制御するための制御装置Cとを具備しており、積層されるシート状電極1を保持するための積層電極保持具60が平面モータ装置Bの各可動子40上に取付けられていて、順次積層されるシート状電極1が積層電極保持具60により積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に保持され、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1を可動子40の積層電極保持具60上に積層する際には、制御装置Cにより、新たなシート状電極1が積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように新たなシート状電極1の移動に同期して可動子40が移動せしめられる。
【0062】
この場合、本発明による実施例では、電極搬送装置Aによる新たなシート状電極1の保持位置として、新たなシート状電極1を積層電極保持具60上のシート状電極積層位置と整列させるのに必要な正規の保持位置Rが予め設定されており、正規の保持位置Rに対する新たなシート状電極1の保持位置のずれ量を検出するためのずれ量検出装置を具備しており、このずれ量にも基づいて、新たなシート状電極1が積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に整列して積層電極保持具60上に積層するように、制御装置Cにより、各可動子60の移動位置および回転角度位置が制御される。この場合、本発明による実施例では、上述のずれ量検出装置が、電極搬送装置Aにより保持された新たなシート状電極1を撮影するためのカメラ33を具備しており、カメラ33により撮影された画像に基づいてずれ量が検出される。
【0063】
一方、本発明による実施例では、電極搬送装置Aが、搬送経路に沿い移動せしめられる複数個の可動子12を有するリニアモータ装置からなり、リニアモータの各可動子12に取り付けられた搬送プレート20上において新たなシート状電極1がクランプ21,22により保持されている。この場合、本発明による実施例では、平面モータ装置Bの可動子40の積層電極保持具60がクランプ64,66を備えており、平面モータ装置Bの可動子40が新たなシート状電極1の移動に同期して移動せしめられているときに、搬送プレート20上において保持された新たなシート状電極1が、新たなシート状電極1の周辺部を搬送プレートのクランプ21,22および積層電極保持具の,66のいずれか一方のクランプにより保持しつつ、積層電極保持具60上に積層される。
【0064】
更に、本発明による実施例では、シート状電極1が、複数個の平面モータ装置Bの可動子40によって保持されている。また、本発明による実施例では、シート状電極1を保持した平面モータ装置Bの可動子40を曲線走行経路に沿って走行させるときには、平面モータ装置Bの可動子40が自転しないように、制御装置Cによって、可動子40の移動位置および回転位置が制御される。
【0065】
次に、
図19から
図27を参照しつつ本発明による第2実施例について説明する。この第2実施例は、シート状電極1として電解液又はゲルポリマー電解質を用いたリチウムイオン二次電池用のシート状電極1を用い、積層されるシート状電極1のサイズが大きい場合に適している。なお、この第2実施例において、第1実施例と同様な構成要素については第1実施例と同じ符号を用いると共に説明を省略する。
【0066】
図19を参照すると、この第2実施例では、第1実施例と異なって、一対の電極搬送装置、即ち、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2が用いられており、これら第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2は、対称軸線I―Iに関し対称的に、互いに間隔を隔てて並列配置されている。従って、この第2実施例では、第1実施例に比べて、平面モータ装置Bの平坦表面51のサイズが大きくされている。また、この第2実施例では、第1実施例に比べて、シート状電極1のサイズが大きく、従って、長い帯状の電極シート30の横幅および切断装置31の横幅も大きくなっている。また、この第2実施例でも、制御装置Cおよびカメラ33が設けられている。ただし、この第2実施例では、カメラ33がシート状電極1の上方に配置されている。
【0067】
第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2は、
図1の電極搬送装置Aと同じ全体形状を有し、
図1の電極搬送装置Aと同様に、ステータ11と可動子12を有するリニアモータからなる。
図20Aは,
図19のXX-XX線に沿ってみた第1の電極搬送装置A1の可動子12の断面図を示している。
図20Aから、可動子12は第1実施例の可動子12と同じ構造を有していることがわかる。一方、
図20Aに示されるように、この第2実施例では、第1実施例と異なって、可動子12上に取り付けられた搬送プレート20が、可動子12上に固定された下側プレート20aと下側プレート20a上において摺動可能に支承された上側プレート20bから構成される。上側プレート20bの外端部には下側プレート20aの外端面と係合可能な肉厚部20cが形成されている。
【0068】
図20Aに示されるように、上側プレート20bの外端部にはクランプ19が取り付けられている。このクランプ19は、概略的にいうとL字型をなすクランプアーム23を具備しており、このクランプアーム23の中央部が、支持ピン24によって、上側プレート20bに固定された支持板25に回動可能に取り付けられている。クランプアーム23の一端には搬送プレート20の表面上まで延びる押え付け部23aが形成されており、クランプアーム23の他端にはローラ26が取り付けられている。クランプアーム23は、下側プレート20aに固定された支持板28とクランプアーム23間に取り付けられた圧縮ばね29のばね力によって常時時計回りに付勢されている。なお、可動子12の走行経路には、クランプアーム23のローラ26と係合可能なカムが配置されている。
【0069】
図20Aにおいて、ローラ26がカムにより右方に向けて押圧されると、上側プレート20bの肉厚部20cが下側プレート20aの外端面と係合し、クランプアーム23が、
図20Bの(A)で示されるように反時計回りに回動してクランプ19が解放状態となる。次いで、上側プレート20b上にシート状電極1が載置され、この状態でローラ26とカムとの係合が解除されると、圧縮ばね29のばね力によって、クランプアーム23が時計回りに回動される。このとき、最初に、
図20Bの(B)で示されるように、シート状電極1がクランプアーム23により上側プレート20b上に押え付けられ、次いで、このような状態で、シート状電極1には、
図20Bの(C)で示されるように、上側プレート20bと共に
図20Aにおいて左方向に移動させようと力が作用する。
【0070】
一方、第2の電極搬送装置A2の可動子12上に取り付けられた搬送プレート20も、
図20Aに示されるような下側プレート20aと上側プレート20bから構成され、
図20Aに示されるようなクランプ19が上側プレート20bの外端部(
図19において右側の端部)に取り付けられている。即ち、クランプ19を有する第1の電極搬送装置A1の搬送プレート20の全体構造とクランプ19を有する第2の電極搬送装置A2の搬送プレート20の全体構造は、対称軸線I―Iに関し対称的な構造とされている。
【0071】
一方、この第2実施例でも、平面モータ装置Bは、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面51の垂直軸線回りに回転可能な複数個の可動子40を有している。
図21Aは,この第2実施例において可動子40上に取り付けられる積層電極保持具60の斜視図を示している。
図21Aと
図10Bとを比較するとわかるように、
図21Aに示される積層電極保持具60と
図10Bに示される積層電極保持具60とはほぼ同様な構造を有する。
図21Aに示される積層電極保持具60と
図10Bに示される積層電極保持具60との異なるところは、
図21Aに示される積層電極保持具60では、カム軸73を回転駆動するためのアーム75およびローラ76と、カム軸80を回転駆動するためのアーム82およびローラ83が、クランプ64側の端板85上に配置されており、カム軸73とアーム75とが、および、カム軸80とアーム82とがリンク機構を介して連結されていることだけである。
【0072】
図21Bは、カム軸80とアーム82とを連結するリンク機構に一例を図解的に示している。この例では、端板85内で回転可能に支承されたアーム軸86の一端部にアーム82が固定され、アーム軸86の他端部に固定されたリンクアーム87とカム軸80に固定されたリンクアーム88とがリンクロッド89を介して互いに連結されている。従って、アーム軸86が矢印方向に回動せしめられるとカム軸80が矢印方向に回動せしめられることになる。カム軸73とアーム75とを連結するリンク機構も
図21Bに示されるリンク機構と同様な構造を有する。カム軸73およびカム軸80が回動せしめられると、クランプ64は、
図11に示されるように作動せしめられる。なお、
図21Aに示される積層電極保持具60でも、カム軸73およびカム軸80の回動作業は、可動子40が移動せしめられているときに、ローラ76およびローラ83が、カムと係合することにより実行される。
【0073】
この第2実施例でも、シート状電極1は、前工程において予め製造されている
図2B又は
図2Cに示される断面構造を有する長い帯状の電極シート30を、切断装置31により、設定された長さに切断することによって作成される。
図19には、この長い帯状の電極シート30と、切断装置31とが図解的に示されている。この第2実施例でも、電極シート30が、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2のレール10の下方水平直線部分10aの少し下方に向けて連続的に送給され、この電極シート30が切断装置31により設定された長さに切断され、それによりシート状電極1が作成される。この場合、例えば、電極シート30の進行方向先端部が切断装置31を越えて前方に進むと、電極シート30の進行方向先端部の位置が各クランプ19により保持しうる位置に維持されるように、電極シート30の進行方向先端部の移動に同期して、第1の電極搬送装置A1の可動子12および第2の電極搬送装置A2の可動子12が走行制御される。なお、このとき、第1の電極搬送装置A1の可動子12および第2の電極搬送装置A2の可動子12は、並列した状態で走行せしめられている。
【0074】
即ち、第1の電極搬送装置A1の可動子12および第2の電極搬送装置A2の可動子12は、各クランプ19が
図20Bの(A)に示されるような解放位置とされた状態で、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2のレール10の半円形部分10bを下降し、電極シート30の進行方向先端部の位置がクランプ19により保持しうる位置に到達すると、クランプ19が
図20Bの(B)に示されるシート状電極保持位置まで回動せしめられて、電極シート30の進行方向先端部の両側部がクランプ19により保持される。電極シート30の進行方向先端部の両側部がクランプ19により保持されると、各クランプ19には、
図20Bの(C)に示されるように、圧縮ばね29のばね力によりクランプ19を外方に向けて移動させようとする力が作用し、その結果、電極シート30の進行方向先端部には電極シート30を横方向に引っ張る力が発生する。それにより、電極シート30の進行方向先端部の中央部が垂れ下がるのが防止される。
【0075】
次いで、電極シート30の進行方向先端部よりも若干後方の電極シート30の両側部が、後続するクランプ19により保持される。このようにして、電極シート30の両側部が、進行方向において等間隔を隔てて移動する複数個のクランプ19により保持される。
図19に示される例では、電極シート30の両側部が、最終的には、第1の電極搬送装置A1の5個の可動子12により支持されたクランプ19と、第2の電極搬送装置A2の5個の可動子12により支持されたクランプ19とによって保持される。電極シート30の両側部が、第1の電極搬送装置A1の5個の可動子12により支持されたクランプ19と、第2の電極搬送装置A2の5個の可動子12により支持されたクランプ19とによって保持されると、電極シート30が切断装置31により設定された長さに切断され、それによりシート状電極1が作成される。従って、
図19に示される例では、作成されたシート状電極1の両側部が、第1の電極搬送装置A1の5個の可動子12により支持されたクランプ19と、第2の電極搬送装置A2の5個の可動子12により支持されたクランプ19とによって保持されていることになる。
【0076】
一方、この第2実施例では、第1の電極搬送装置A1の下方には、作成されたシート状電極1を保持するために使用されている可動子12と同じ個数の第1の可動子40が搬送方向に整列配置されており、第2の電極搬送装置A2の下方には、作成されたシート状電極1を保持するために使用されている可動子12と同じ個数の第2の可動子40が搬送方向に整列配置されている。これらの第1の可動子40および第2の可動子40上には、夫々、
図21Aに示される積層電極保持具60が固定されており、第1の電極搬送装置A1のクランプ19および第2の電極搬送装置A2のクランプ19により保持された新たなシート状電極1は、第1の電極搬送装置A1の下方および第2の電極搬送装置A2の下方において整列配置されている第1の可動子40および第2の可動子40上に固定された積層電極保持具60上に積層される。
図19は、新たなシート状電極1が、第1の可動子40および第2の可動子40上に固定された積層電極保持具60上に積層されたところを示している。
【0077】
図22は、
図19において第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2を取り除いたところを示している。
図22からわかるように、新たなシート状電極1が積層電極保持具60上に積層されると、シート状電極1の一側が整列配置された5個の第1の可動子40上の積層電極保持具60によって保持され、シート状電極1の他側も整列配置された5個の第2の可動子40上の積層電極保持具60によって保持される。このようにシート状電極1をクランプ19により保持するために、各可動子40は、クランプ19が外側に位置するように配置されている。
【0078】
次に、
図19および
図22を参照しつつ、第1実施例と同様に、電極搬送装置A1、A2の長手方向軸線がステータ50の平坦表面51上における位置座標のy軸方向とされており、電極搬送装置A1、A2の短手方向軸線がステータ50の平坦表面51上における位置座標のx軸方向とされている場合を例にとって、可動子40の移動制御について説明する。この場合でも、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2により保持された新たなシート状電極1が、積層電極保持具60上に積層されるときには、第1の可動子40および第2の可動子40は、y軸のマイナス方向に向けて移動することになる。
【0079】
さて、この第2実施例でもステータ50の平坦表面51上において基準とされる第1の可動子40および第2の可動子40の基準走行軌道が予めx-y座標でもって設定されている。この場合、第2実施例でも、この基準走行軌道は、第1の可動子40および第2の可動子40の中心に対して設定されており、各可動子40は、各可動子40の中心が、この基準走行軌道に沿って移動するように制御装置Cによって制御される。
図22には、複数本の基準走行軌道が一点鎖線で示されている。
【0080】
図22を参照すると、U字状をなしかつx軸方向に間隔を隔てた一対の積層用基準走行軌道K5,K6と、これらの積層用基準走行軌道K5,K6の間で直線状に延びる積層補助用基準走行軌道K7が描かれている。新たなシート状電極1を積層電極保持具60上に積層させる積層作業を行うときには、第1の電極搬送装置A1の下方領域において積層電極保持具60を担持している第1の可動子40がy軸方向に等間隔を隔てて内側の積層用基準走行軌道K5に沿って移動せしめられると共に、第2の電極搬送装置A2の下方領域において積層電極保持具60を担持している第2の可動子40がy軸方向に等間隔を隔てて内側の積層用基準走行軌道K6に沿って移動せしめられる。この場合、積層作業が行われるときには、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2により保持された新たなシート状電極1が、積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように、新たなシート状電極1の移動に同期して第1の可動子40および第2の可動子40が移動せしめられる。
【0081】
この第2実施例では、シート状電極1の積層作業は、後述するように、第1の電極搬送装置A1の下方において積層電極保持具60を担持している第1の可動子40を内側の積層用基準走行軌道K5に沿い整列した状態で往復動させ、第2の電極搬送装置A2の下方において積層電極保持具60を担持している第2の可動子40を内側の積層用基準走行軌道K6に沿い整列した状態で往復動させることにより行われる。予め設定された枚数の新たなシート状電極1の積層作業が完了すると、予め設定された枚数の積層済みのシート状電極1を保持した積層電極保持具60を担持する第1の可動子40および第2の可動子40は、夫々内側の積層用基準走行軌道K5,K6に沿って、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2の下方領域から排出され、次の工程に進む。次の工程では、例えば、圧縮された積層済みのシート状電極1の一側面部が互いに樹脂により固着された後、樹脂により固着されていない積層済みのシート状電極1の周辺部分から、正極活物質層3、セパレータ4および極活物質層5に電解液又はゲルポリマー電解質が注入される。次いで、その他の行程を経て、シート状電極1の積層体が作成される。
【0082】
シート状電極1の積層体が作成されると、シート状電極1の積層体は、積層電極保持具60から取り出され、空になった積層電極保持具60を担持する可動子40は、外側の積層用基準走行軌道K5,K6に沿って待機領域Qに移動せしめられる。一方、予め設定された枚数の新たなシート状電極1の積層作業が完了し、予め設定された枚数の積層済みのシート状電極1を保持した積層電極保持具60を担持する可動子40が、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2の下方領域から排出されると、
図19に示されるように、待機領域Qにおいて待機している空の積層電極保持具60を担持した可動子40が、シート状電極1の積層作業を行うために、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2の下方領域に移動せしめられる。
【0083】
一方、この第2実施例では、
図22に示されるように、シート状電極1が垂れ下がるのを阻止するために、第1の可動子40と第2の可動子40との間でシート状電極1を下方から支える複数個の支持台90が設けられている。これらの支持台90は可動子40上に担持されており、支持台90を担持した可動子40は、積層補助用基準走行軌道K7に沿ってシート状電極1の移動に同期して移動せしめられる。この支持台90を担持した可動子40を支持用可動子40と称する、
【0084】
次に、
図23Aを参照しつつ、シート状電極1が垂れ下がるのを更に阻止するために、第2実施例において実行されているシート状電極の垂れ下がり阻止方法について説明する。
図23Aは、
図22と同様な斜視図を示している。なお、以下の説明では、必要に応じ、
図23Aに示されるように、第1の電極搬送装置A1の下方に整列配置されている第1の可動子40については、シート状電極1の搬送方向先端部、即ち、シート状電極1の積層作業実行時の進行方向先端部から順に可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5の称し、第2の電極搬送装置A2の下方に整列配置されている第2の可動子40については、シート状電極1の搬送方向先端部、即ち、シート状電極1の積層作業実行時の進行方向先端部から順に可動子B
1,可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 と称する。
【0085】
このように称した場合、
図23Aに表記したように、各可動子A
1,A
2,A
3,A
4,A
5, B
1,B
2,B
3,B
4,B
5 上に担持された積層電極保持具60のクランプ64によるシート状電極1のクランプ力は、シート状電極1の搬送方向先端部の可動子A
1 又は可動子B
1におけるクランプ力が最大とされる。なお、この場合、
図23Aに示される例では、シート状電極1の搬送方向先端部の可動子B
1におけるクランプ力が最大とされている。また、この場合、
図23Aに示される例では、第2の可動子40のうちで、可動子B
1を除く他の可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 におけるクランプ力を最大クランプ力に比べて低くされており、可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5におけるクランプ力が更に低くされている。なお、各可動子におけるクランプ力の調整は、各積層電極保持具60において底板63を上方に押し上げるためにパンダグラフ式昇降機構62が備えているばねのばね力を調整することによって行われる。
【0086】
また、
図23Aにおける各矢印fは、シート状電極1に張力を加えてシート状電極1の垂れ下がりを阻止するために、可動子B
1を除く他の可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 および可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5を、内側の積層用基準走行軌道K5,K6上において設定された基準位置に対して少し移動させる方向を示している。このときシート状電極1の垂れ下がりを阻止するのに必要となる基準位置に対するx軸およびy軸方向の調整移動量は、可動子B
1を除く他の可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 および可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5に対して予め設定されている。
【0087】
このように、第2の可動子40のうちで搬送方向の先端部に位置する第2の可動子40におけるクランプ力を最大にすると共に、残りの第2の可動子40におけるクランプ力を最大クランプ力に比べて低くし、第1の可動子40におけるクランプ力を更に低くし、更に、シート状電極1が垂れ下がるのを阻止するのに必要な位置に、第1の可動子40および第2の可動子40の移動位置を制御することによって、シート状電極1が垂れ下がるのを適切に阻止することができる。
【0088】
次に、
図23Bを参照しつつ、第1の可動子40および第2の可動子40に担持された各積層電極保持具60のカム軸73,80を駆動するためにローラ76,83にカムを係合させ、かつ、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2の搬送プレート20に取り付けられたクランプ19のローラ26にカムを係合させるための移動カム装置について説明する。なお、
図23Bは、
図22と同様な斜視図を示している。この第2実施例では、この移動カム装置91は、カム92を備えたカム用可動子40から構成される。
図23Bに示される例では、移動カム装置91が二つ設けられており、
図23Bには、これら移動カム装置91に対する一対のループ状のカム用基準走行軌道K8,K9が示されている。カム用基準走行軌道K8の内側の軌道は、カム92が第1の可動子40に担持された各積層電極保持具60のローラ76,83および第1の電極搬送装置A1の搬送プレート20に取り付けられたクランプ19のローラ26と係合するように、
図23Bにおいて第1の可動子40の外側に沿って直線状に延びており、カム用基準走行軌道K9の内側の軌道は、カム92が第2の可動子40に担持された各積層電極保持具60のローラ76,83および第2の電極搬送装置A2の搬送プレート20に取り付けられたクランプ19のローラ26と係合するように、
図23Bにおいて第2の可動子40の外側に沿って直線状に延びている。一方、カム用基準走行軌道K8、K9の外側の軌道はこれらローラ76,83、26と係合させないようにするための移動カム装置91の戻り用軌道である。
【0089】
この第2実施例でも、各可動子40の移動要求に応じた積層用基準走行軌道K5,K6、積層補助用基準走行軌道K7およびカム用基準走行軌道K8,K9上における一定時間毎のx-y座標が可動子40の目標平面位置として設定され、このx-y座標のx軸に対する可動子40の回転角度位置が目標回転角度位置として設定される。この場合、この第2実施例でも、制御装置Cにより、一定時間毎に、可動子40が目標平面位置に目標回転角度位置でもって保持されるように、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。
【0090】
図24は、第2実施例におけるシート状電極1の積層作業を説明するための図である。この
図24には、電極搬送装置A1および電極搬送装置A2の搬送プレート20と、
図23Aに示される可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5と、移動カム装置91と、切断装置31と、長い帯状の電極シート30と、シート状電極1とが図解的に示されている。なお、電極シート30又はシート状電極1が搬送プレート20上にクランプ19により保持されているときには、
図24において、電極シート30又はシート状電極1が搬送プレート20に接触しているように示されており、シート状電極1が可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5に固定された積層電極保持具60上にクランプ64より保持されているときには、
図24において、
シート状電極1が可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5上に載置されているように示されている。
【0091】
図24の(A)は、シート状電極1の積層作業の開始時を示している。このとき、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5は、積層開始位置で停止しており、移動カム装置91は待機位置で停止している。電極シート30が搬送方向に送り出されると、電極シート30は、搬送方向に等間隔を隔てて、順次、クランプ19により搬送プレート20上に保持され、予め設定された長さの電極シート30が切断装置31を通過すると、電極シート30が切断装置31により切断される。それにより、シート状電極1が生成される。次いで、
図24の(B)に示されるように、生成されたシート状電極1を保持している複数個の搬送プレート20が、夫々対応する可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5と垂直方向において整列する位置まで移動する。
【0092】
次いで、
図24の(B)から
図24の(E)に示されるように、シート状電極1を保持している複数個の搬送プレート20が搬送方向に等間隔を隔てたまま移動し、このとき、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 は、対応する搬送プレート20と垂直方向において整列しつつ、搬送プレート20の移動に同期して移動せしめられる。即ち、シート状電極1が第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるようにシート状電極1の移動に同期して第1の可動子40および第2の可動子40が移動せしめられる。この間、移動カム装置91が搬送方向と反対方向に移動せしめられ、移動カム装置91の到達した可動子40と、この可動子40と垂直方向において整列する搬送プレート20との間で、シート状電極1の受け渡しが行われる。
【0093】
この場合、搬送プレート20から対応する積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡しは次のようにして行われる。即ち、最初に、搬送プレート20のクランプ19によるシート状電極1の保持作用が移動カム装置91により解除されると共に、この搬送プレート20と垂直方向において整列する可動子40により担持された積層電極保持具60のクランプ64が移動カム装置91により解除位置へ移動される。このとき、クランプ19による保持されていたシート状電極1の部分が可動子40により担持された積層電極保持具60上に落下する。クランプ19による保持されていたシート状電極1の部分が可動子40により担持された積層電極保持具60上に落下すると、積層電極保持具60のクランプ64が落下したシート状電極1上に回動せしめられ、落下したシート状電極1がクランプ64により積層電極保持具60上に保持される。
【0094】
このようなシート状電極1の受け渡し作業は、移動カム装置91が、可動子A1,B1、可動子A2,B2、可動子A3,B3、可動子A4,B4、可動子A5、B5 に到着する毎に順に行われる。即ち、最初に、可動子A1,B1と整列している搬送プレート20から可動子A1,B1の積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡し作業が行われ、次いで、可動子A2,B2と整列している搬送プレート20から可動子A2,B2の積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡し作業が行われ、次いで、可動子A3,B3と整列している搬送プレート20から可動子A3,B3の積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡し作業が行われ、次いで、可動子A4,B4と整列している搬送プレート20から可動子A4,B4の積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡し作業が行われ、次いで、可動子A5、B5と整列している搬送プレート20から可動子A5、B5の積層電極保持具60上へのシート状電極1の受け渡し作業が行われる。このようなシート状電極1の受け渡し作業が行われている間も、電極シート30は搬送方向に送り出され続け、順次移動してくる搬送プレート20のクランプ19により、搬送方向に等間隔を隔てて搬送プレート20上に保持される。
【0095】
図24の(E)は、搬送プレート20により保持されていたシート状電極1の全体が、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 の積層電極保持具60上に受け渡されたときを示している。搬送プレート20により保持されていたシート状電極1の全体が、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 の積層電極保持具60上に受け渡されると、積層電極保持具60上においてシート状電極1を保持した可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 は、保持しているシート状電極1上に新たなシート状電極1を積層するために、
図24の(E)から
図24の(H)に示されるように、
図24の(A)に示される積層開始位置まで、搬送方向に反対方向に戻される。このとき、移動カム装置91は待機位置まで戻される。
【0096】
このように、第2実施例では、可動子A1,B1、可動子A2,B2、可動子A3,B3、可動子A4,B4、可動子A5、B5 を往復動させることによって、シート状電極1の積層作業が行われる。この場合、各積層電極保持具60のローラ76,83および各搬送プレート20に取り付けられたクランプ19のローラ26と係合するカムとして移動カム装置91を用いると、固定カムを用いた場合に比べて、可動子A1,B1、可動子A2,B2、可動子A3,B3、可動子A4,B4、可動子A5、B5 が復動しなければならない距離が短くなり、従って、シート状電極1の積層作業に要する時間を短くすることができる。また、この第2実施例でも、カメラ33により撮影された画面に基づいて、可動子A1,B1、可動子A2,B2、可動子A3,B3、可動子A4,B4、可動子A5、B5 の位置調整が行われる。
【0097】
図25は、第2実施例において各可動子40の移動を制御するための可動子制御ルーチンを示している。この可動子制御ルーチンにより、電極積層装置内に存在する全ての可動子40の移動制御が可動子毎に繰り返し実行される。
図25を参照すると、ステップ200では、搬送プレート20上に保持された新たなシート状電極1を、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 に担持された積層電極保持具60に積層する積層処理の開始時であるか否かが判別される。可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 に担持された積層電極保持具60への積層処理の開始時であると判別されたときには、ステップ201に進んで、空の積層電極保持具60を担持した可動子40が待機位置から積層開始位置に移動せしめられる。この場合、第2実施例では、空の積層電極保持具60を担持した5個の可動子40が待機位置から積層開始位置に移動せしめられ、このときの可動子40が、
図24の(A)において、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 で示されている。
【0098】
次いで、ステップ202では、空の積層電極保持具60を担持した
他の可動子40が待機位置へ移動せしめられる。次いで、ステップ203では、搬送プレート20上に保持された新たなシート状電極1を、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5 に担持された積層電極保持具60上に積層する積層処理が行われる。一方、ステップ200において、シート状電極1の積層処理の開始時でないと判別されたときにはステップ203にジャンプして、シート状電極1の積層処理が行われる。この積層処理は、
図16および
図27に示される積層処理ルーチンにより実行される。
【0099】
次いで、ステップ204では、シート状電極1の積層処理が完了したか否かが判別される。シート状電極1の積層処理が完了したと判別されたときには、ステップ205に進んで、可動子A1,B1、可動子A2,B2、可動子A3,B3、可動子A4,B4、可動子A5、B5 を次の工程に進ませるための排出処理が行われる。次いで、ステップ204では、次の新たなシート状電極1の積層処理が開始される。
【0100】
一方、第2実施例においても、
図17に示される位置ずれ検出ルーチンが用いられ、カメラ33により撮影された画像に基づいて、搬送プレート20上における新たなシート状電極1が正規の保持位置Rに対してずれを生じていると判別された場合には、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5の設定位置の補正に用いられる補正値Δx、Δy、αが算出される。次いで、これらの補正値Δx、Δy、αが制御装置C内に記憶され、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5の設定位置を補正すべきであることを示す補正要求が発せられる。
【0101】
図26および
図27は、
図25に示される可動子制御ルーチンのステップ203において実行される積層処理ルーチンを示している。この可動子制御ルーチンは繰り返し実行される。
図26および
図27を参照すると、ステップ220では、保持しているシート状電極1上に新たなシート状電極1を積層するために、
図24の(E)から
図24の(H)に示されるように、可動子A
1,B
1、可動子A
2,B
2、可動子A
3,B
3、可動子A
4,B
4、可動子A
5、B
5を、
図24の(A)に示される積層開始位置まで、搬送方向に反対方向に戻すための戻り処理が行われているか否かが判別される。戻り処理が行われていないと判別されたときには、ステップ221に進んで、制御対象である可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5に対する積層用基準走行軌道K5上の次の基準位置のx-y座標の値と、制御対象である可動子B
1、可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 に対する積層用基準走行軌道K6上の次の基準位置のx-y座標の値が算出される。
【0102】
次いで、ステップ222では、
図17に示される位置ずれ検出ルーチンにおいて、補正要求が発せられているかあるか否かが判別される。補正要求が発せられていると判別されたときには、ステップ223に進み、制御装置C内に記憶された補正値Δx、Δy、αが読み込まれる。次いで、ステップ224では、可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5、可動子B
1、可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 の中で、積層電極保持具60のクランプ64によりシート状電極1を保持している電極保持中の可動子が抽出される。次いで、ステップ225では、シート状電極1の垂れ下がりを阻止するために、可動子A
1,可動子A
2,可動子A
3,可動子A
4,可動子A
5、可動子B
1、可動子B
2,可動子B
3,可動子B
4,可動子B
5 に対して予め設定されているx軸およびy軸方向の調整移動量の中で、ステップ224において抽出された電極保持中の可動子のx軸およびy軸方向の調整移動量が読み込まれる。
【0103】
次いで、ステップ226では、これらの補正値Δx、Δy、αおよびx軸およびy軸方向の調整移動量に基づいて、電極保持用の可動子A1,可動子A2,可動子A3,可動子A4,可動子A5、可動子B1、可動子B2,可動子B3,可動子B4,可動子B5 の変更後の設定位置のx-y座標の値が算出される。このとき、例えば、補正値Δxにx軸方向の調整移動量を加算することによって変更後の設定位置のx座標の値が算出され、補正値Δyにy軸方向の調整移動量を加算することによって変更後の設定位置のy座標の値が算出される。次いで、ステップ227では、一対のカム用可動子40に対するカム用基準走行軌道K8、K9上の次の基準位置のx-y座標の値と、支持用可動子40に対する積層補助用基準走行軌道K7上の次の基準位置のx-y座標の値が算出される。
【0104】
次いで、ステップ228では、各可動子40の移動制御が行われる。このとき、電極保持用の可動子A1,可動子A2,可動子A3,可動子A4,可動子A5、可動子B1、可動子B2,可動子B3,可動子B4,可動子B5については、各可動子40の移動位置が夫々、変更後の設定位置となるように、制御装置Cによって、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御され、カム用可動子40および支持用可動子40については、各可動子40の移動位置が夫々、設定された基準位置となるように、制御装置Cによって、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。なお、この場合、カム用可動子40の設定位置を、上述の補正値Δx、Δy、αおよびx軸およびy軸方向の調整移動量に基づき基準位置に対して変更し、カム用可動子40を変更後の設定位置に沿って移動させることもできる。
【0105】
次いで、ステップ229では、予め設定された一定時間が経過するまで待つ。一定時間が経過すると、ステップ230に進んで、一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了したか否かが判別される。一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了していないと判別されたときには、ステップ220に戻って、各可動子40の移動制御が続行される。次いで、ステップ230において、一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了したと判別されたときには、ステップ231に進んで、設定された全枚数の新たなシート状電極1の積層作業が終了したか否かが判別される。設定された全枚数の新たなシート状電極1の積層作業が終了していないと判別されたときには、ステップ232に進んで、戻り処理が開始される。一方、設定された全枚数の新たなシート状電極1の積層作業が終了したと判別されたときには、ステップ233において、シート状電極1の積層作業が完了する。
【0106】
戻り処理が実行されると、ステップ220からステップ234に進んで、戻り処理時における電極保持用の可動子A1,可動子A2,可動子A3,可動子A4,可動子A5、可動子B1、可動子B2,可動子B3,可動子B4,可動子B5、カム用可動子40および支持用可動子40の次の設定位置のx-y座標の値が算出される。次いで、ステップ235では、
各可動子40の移動位置が夫々、設定位置となるように、制御装置Cによって、ステータ50の各コイル層53A、53B、53C、53D内の各コイル54A,54B,54Cに供給される電流量が制御される。
【0107】
次いで、ステップ236では、予め設定された一定時間が経過するまで待つ。一定時間が経過すると、ステップ237に進んで、全ての電極保持用の可動子A1,可動子A2,可動子A3,可動子A4,可動子A5、可動子B1、可動子B2,可動子B3,可動子B4,可動子B5が積層開始位置に戻ったか否かが判別される。全ての電極保持用の可動子が積層開始位置に戻っていないと判別されたときには、ステップ234に戻る。これに対し、全ての電極保持用の可動子が積層開始位置に戻ったと判別されたときには、ステップ238に進んで、全ての電極保持用の可動子の移動が停止される。次いで、ステップ239において戻り処理が終了される。戻り処理が終了されると、次の積層作業が開始される。
【0108】
このように、本発明による第2実施例においても、平板状のステータ50と、ステータ50の平坦表面51上において平坦表面51から磁気浮上した状態で平坦表面51に沿う任意の方向に移動可能でかつ平坦表面51の垂直軸線回りに回転可能な複数の可動子40とにより構成される平面モータ装置Bと、平面モータ装置Bの上方に配置されかつ搬送経路に沿ってシート状電極1を保持しつつ搬送する電極搬送装置A1、A2と、平面モータ装置Bおよび電極搬送装置A1、A2を制御するための制御装置Cとを具備しており、積層されるシート状電極1を保持するための積層電極保持具60が平面モータ装置Bの各可動子40上に取付けられていて、順次積層されるシート状電極1が積層電極保持具60により積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に保持され、電極搬送装置A1、A2により保持された新たなシート状電極1を可動子40の積層電極保持具60上に積層する際には、制御装置Cにより、新たなシート状電極1が積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように新たなシート状電極1の移動に同期して可動子40が移動せしめられる。
【0109】
この場合、この第2実施例では、電極搬送装置が、搬送方向の両側に互いに間隔を隔てて配置された第1の電極搬送装置A1と第2の電極搬送装置A2から構成されると共に、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2によって、搬送方向に対して両側に位置する新たなシート状電極1の両端部が夫々保持され、第1の電極搬送装置A1の下方に、シート状電極1の一方の端部を保持するために平面モータ装置Bの複数個の第1の可動子40が搬送方向に整列配置されると共に、第2の電極搬送装置A2の下方に、シート状電極1の他方の端部を保持するために平面モータ装置Bの複数個の第2の可動子40が搬送方向に整列配置されていて、順次積層されるシート状電極1が第1の可動子40の積層電極保持具60および第2の可動子40の積層電極保持具60により第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に保持され、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2により保持された新たなシート状電極1を第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上に積層する際には、制御装置Cにより、新たなシート状電極1が第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に対面し続けるように新たなシート状電極1の移動に同期して第1の可動子40および第2の可動子40が移動せしめられる。
【0110】
また、この第2実施例では、第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具積層60上への新たなシート状電極1の積層作業が終了すると、次の新たなシート状電極1を第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上に積層するために、制御装置Cによって、第1の可動子40および第2の可動子40が積層開始位置まで搬送方向と反対方向に戻される。また、この第2実施例では、第1の可動子40の積層電極保持具60および第2の可動子40の積層電極保持具60により保持されたシート状電極1を、第1の可動子40と第2の可動子40との間で下方から支える支持台90を備えた支持用可動子40を具備しており、制御装置Cによって、支持用可動子40が、積層時に、第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上に積層されたシート状電極1の移動に同期させて移動せしめられる。
【0111】
また、この第2実施例では、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2が、搬送経路に沿い移動せしめられる複数個の可動子12を有するリニアモータからなり、該リニアモータの各可動子12が新たなシート状電極1を保持するためのクランプ19を具備しており、平面モータ装置Bの第1の可動子40の積層電極保持具60および第2の可動子40の積層電極保持具60がクランプ64を備えており、平面モータ装置Bの第1の可動子40および第2の可動子40が新たなシート状電極の移動に同期して移動せしめられているときに、搬送方向前方に位置する各リニアモータの可動子12から順に、リニアモータの可動子12のクランプ19によるシート状電極1の保持作用が解除されると共にリニアモータの可動子12に対応した第1の可動子40の積層電極保持具60および第2の可動子40の積層電極保持具60のクランプ64によるシート状電極1の保持作用が行われ、それにより、新たなシート状電極1が、第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具60上に積層される。
【0112】
更に、第2実施例では、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2がシート状電極1を保持するためのクランプ19を備えていると共に第1の可動子40および第2の可動子40の積層電極保持具60がシート状電極1を保持するためのクランプ64を備えており、これらのクランプ19,64によるシート状電極1の保持作用および保持作用の解除がカムにより行われ、第1の可動子40の積層電極保持具60上および第2の可動子40の積層電極保持具積層60上への新たなシート状電極1の積層作業を行うときに、制御装置Cによって、これらのクランプ19,64と係合するカム92を備えたカム用可動子40が搬送方向と反対方向に移動せしめられる。また、第2実施例では、リニアモータの各可動子12が備えている各クランプ19は、新たなシート状電極1を保持したしたときに、新たなシート状電極1が垂れ下がるのを阻止するために、新たなシート状電極1に張力を生じさせる構造を有する。
【0113】
また、第2実施例では、第1の電極搬送装置A1および第2の電極搬送装置A2による新たなシート状電極1の保持位置として、新たなシート状電極1を積層電極保持具60上のシート状電極積層位置と整列させるのに必要な正規の保持位置Rが予め設定されており、正規の保持位置Rに対する新たなシート状電極1の保持位置のずれ量を検出するためのずれ量検出装置を具備しており、このずれ量にも基づいて、新たなシート状電極1が積層電極保持具60上のシート状電極積層位置に整列して積層電極保持具60上に積層するように、制御装置Cによって、第1の可動子40および第2の可動子40の移動位置および回転角度位置が制御される。この場合、ずれ量検出装置が、電極搬送装置A1、A2により保持された新たなシート状電極1を撮影するためのカメラ33を具備しており、カメラ33により撮影された画像に基づいてずれ量が検出される。
【0114】
また、この第2実施例では、第1の可動子40および第2の可動子40の積層電極保持具60がクランプ64を備えていて、シート状電極1が第1の可動子40の積層電極保持具60のクランプ64および第2の可動子40の積層電極保持具60のクランプ64により保持されており、制御装置Cにより、シート状電極1が垂れ下がるのを阻止するのに必要な位置に、第1の可動子40および第2の可動子40の移動位置が制御される。この場合、第1の可動子40のうちで搬送方向の先端部に位置する第1の可動子40のクランプ力を最大にすると共に、残りの第1の可動子40のクランプ力が最大クランプ力に比べて低くされ、第2の可動子40のクランプ力が更に低くされる。
【0115】
1 シート状電極
12,40 可動子
20 搬送プレート
21,22,64,66 クランプ
60 積層電極保持具
A、A1,A2 電極搬送装置
B 平面モータ装置
C 制御装置