(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バッテリ異常検出装置、バッテリ異常検出方法、及びバッテリ異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240702BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20240702BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20240702BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/3835
G01R31/50
(21)【出願番号】P 2021081816
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 嵩将
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-74687(JP,A)
【文献】特開2020-136247(JP,A)
【文献】特開2015-102336(JP,A)
【文献】特表2012-515354(JP,A)
【文献】特開2016-50870(JP,A)
【文献】特開2015-33283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
G01R 31/50
G01R 19/00
G01R 31/00
H01M 10/48
H02J 7/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定する判定部と、
を含むバッテリ異常検出装置。
【請求項2】
前記均等化回路は、直列接続された複数の前記バッテリセルとの間から、共通の回路を介して接続され、
前記取得部は、複数の前記バッテリセルのうち、隣接しない複数の前記バッテリセルに対応する前記スイッチをオンにして前記複数のバッテリセルのそれぞれの前記第2電圧を前記検出部から取得する請求項1に記載のバッテリ異常検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記異常の判定を複数回行い、前記検出値と前記推定値との差が予め定めた閾値上となる回数が、予め定めた回数以上の場合に、前記均等化回路に異常があると判定する請求項1又は請求項2に記載のバッテリ異常検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記均等化回路の異常が検出された場合に、前記バッテリセルからの負荷への電力供給をオンオフ可能なメインスイッチをオフする請求項1~3の何れか1項に記載のバッテリ異常検出装置。
【請求項5】
コンピュータが実行するバッテリ異常検出方法であって、
スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得し、
取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、
前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定するバッテリ異常検出方法。
【請求項6】
コンピュータを、
スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定する判定部と、として機能させるためのバッテリ異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ異常検出装置、バッテリ異常検出方法、及びバッテリ異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池の電圧を検出する電圧検出部と、電池を放電させる放電回路と、電圧検出部及び放電回路と前記電池との間に設けられる保護回路とを備えて、放電回路が非作動状態のときに電圧検出部で検出される第1の電圧と放電回路が作動状態のときに電圧検出部で検出される第2の電圧とに基づいて保護回路の内部抵抗を推定し、当該推定の結果に基づいて保護回路の半断線状態を判定する電圧検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、放電回路の動作時及び停止時の電圧差を確認することで保護回路の断線や半断線を見つけることができるが、素子のハーフショートやリークといった異常を見つけることができないため改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、素子の故障やリークを含めて異常を検出可能なバッテリ異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載のバッテリ異常検出装置は、スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定する判定部と、を含む。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、均等化回路は、放電回路と、検出部とを含む。放電回路は、スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させ、検出部は、放電回路とバッテリセルに対して並列に接続されてバッテリセルの電圧を検出する。
【0008】
取得部では、検出部によって検出された、スイッチをオフしている場合の第1電圧及びスイッチをオンしている場合の第2電圧の各々が取得される。
【0009】
そして、判定部では、取得部が取得した第1電圧及び第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値が推定され、検出値と推定値とに基づいて、均等化回路の異常が判定される。これにより、均等化回路に含まれるスイッチやコンデンサ等の素子の故障やリークを含めて異常を検出することが可能となる。
【0010】
なお、前記均等化回路は、直列接続された複数の前記バッテリセルとの間から、共通の回路を介して接続され、前記取得部は、複数の前記バッテリセルのうち、隣接しない複数の前記バッテリセルに対応する前記スイッチをオンにして前記複数のバッテリセルのそれぞれの前記第2電圧を前記検出部から取得してもよい。これにより、各バッテリセルについて第2電圧を順次取得する場合に比べて処理時間を短縮することが可能となる。
【0011】
また、前記判定部は、前記異常の判定を複数回行い、前記検出値と前記推定値との差が予め定めた閾値上となる回数が、予め定めた回数以上の場合に、前記均等化回路に異常があると判定してもよい。これにより、異常の誤判定を抑制することが可能となる。
【0012】
また、バッテリ異常検出装置は、前記判定部は、前記均等化回路の異常が検出された場合に、前記バッテリセルからの負荷への電力供給をオンオフ可能なメインスイッチをオフしてもよい。これにより、異常が発生した場合に電力供給を停止して異常時のフェールセーフが可能となる。
【0013】
なお、コンピュータが実行するバッテリ異常検出方法であって、スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得し、取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定するバッテリ異常検出方法としてもよい。
【0014】
また、コンピュータを、スイッチを備えてスイッチをオンすることでバッテリセルを放電させる放電回路と、前記放電回路と前記バッテリセルに対して並列に接続され、前記バッテリセルの電圧を検出する検出部と、を含む均等化回路における前記検出部によって検出された、前記スイッチをオフしている場合の第1電圧及び前記スイッチをオンしている場合の第2電圧の各々を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記第1電圧及び前記第2電圧のうち一方の電圧の検出値から、他方の電圧の推定値を推定し、前記検出値と前記推定値とに基づいて、前記均等化回路の異常を判定する判定部と、として機能させるためのバッテリ異常検出プログラムとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、素子の故障やリークを含めて異常を検出可能なバッテリ異常検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る電力供給装置の概略構成を示す図である。
【
図2】1つのバッテリセルに注目した電力供給装置の詳細な構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る電力供給装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る電力供給装置の制御部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】隣接する2つのバッテリセルに注目した電力供給装置の詳細な構成を示す図である。
【
図6】隣接しないバッテリセルについて同時に異常検出を行う場合に、本実施形態に係る電力供給装置の制御部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】AD変換器と均等化FETをそれぞれ別のICとした例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電力供給装置の概略構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る電力供給装置10は、バッテリ12、均等化回路としての電圧検出均等化部18、制御部20、及び負荷22を含んで構成され、バッテリ12から負荷22に電力を供給する。なお、電力供給装置10の構成のうち、制御部20がバッテリ異常検出装置に対応する。
【0019】
バッテリ12は、複数のバッテリセル14が直列に複数連結したバッテリスタックとされ、一例として、リチウムイオンバッテリスタックが適用される。一方、負荷22の一例としては、ハイブリッド自動車や、電気自動車等に搭載される電動モータが適用され、バッテリ12の電力により電動モータが駆動される。また、電源供給装置10は、12V系のシステムとしてもよいし、48V系のシステムとしてもよいし、他の電圧のシステムとしてもよい。48V系のシステムの場合の負荷の一例としては、ACインバータや、冷蔵庫等が適用される。また、各電圧のシステムにおける負荷22の例としてはこれらに限るものではなく、他の種々の負荷を適用してもよい。
【0020】
また、バッテリ12には、メインスイッチとしてのメインリレー16が設けられており、制御部20によりオンオフが制御されることで、バッテリ12から負荷22への電力供給がオンオフされる。本実施形態では、バッテリ12の各バッテリセル14が格納されるバッテリパック内にメインリレー16が設けられた例を示すが、メインリレー16は、バッテリパック外に設けてもよい。また、本実施形態では、バッテリ12のプラス側及びマイナス側の双方にメインリレー16を設ける例を示すが、何れか一方のみとしてもよい。
【0021】
電圧検出均等化部18は 、各バッテリセル14の電圧を検出する機能と、各バッテリセルを放電して電圧を均等化させる機能とを備えている。例えば、本実施形態では、バッテリセル14の電圧を検出する機能と、バッテリセル14を放電させる機能を備えたIC(Integrated Circuit)が適用される。
【0022】
制御部20は、メインリレー16のオンオフ制御を行うと共に、電圧検出均等化部18の均等化FET24のオンオフ制御を行う。また、制御部20は、バッテリ12の異常を検出する処理を行う。
【0023】
ここで、バッテリ12の各バッテリセルと電圧検出均等化部18の詳細な構成について説明する。
図2は、1つのバッテリセル14に注目した電力供給装置10の詳細な構成を示す図である。
【0024】
バッテリセル14のプラス側には、電流を制限する抵抗Rsnの一端が接続され、抵抗Rsnの他端には、電圧検出均等化部18の電圧を均等化する均等化FET24が接続されている。また、バッテリセル14のマイナス側には、抵抗Rcn-1の一端が接続され、抵抗Rcn-1の他端が均等化FET24に接続されている。均等化FET24はスイッチとして機能し、制御部20によってオンオフが制御される。均等化FET24がオンされることによりバッテリセル14の電力が放電される。すなわち、抵抗Rsn、均等化FET24、抵抗Rcn-1は放電回路に対応する。
【0025】
また、バッテリセル14のプラス側には、抵抗Rcnの一端が接続され、抵抗Rcnの他端には電圧検出均等化部18のAD変換器26の一端が接続されている。また、バッテリセル14のマイナス側には、抵抗Rcn-1の一端が接続され、抵抗Rcn-1の他端にはAD変換器26の他端が接続されている。すなわち、AD変換器26は、均等化FET24とバッテリセル14に対して並列に接続されている。AD変換器26は、検出部に対応し、バッテリセル14の電圧を検出してAD(アナログ-デジタル)変換を行い、バッテリセル14の電圧の検出結果を制御部20に出力する。また、AD変換器26は、マルチプレクサ等の切り替え回路を使って1つのAD変換器26で複数の電圧を測定してもよい。なお、抵抗Rcn、Rcn-1は隣接するバッテリセル14と共通する回路となっている。また、各抵抗Rsn、Rcn、Rcn-1は、電流制限抵抗として機能する。
【0026】
また、抵抗RcnとAD変換器26との間に、コンデンサCの一端が接続され、抵抗Rcn-1とAD変換器26との間に、コンデンサCの他端が接続されている。抵抗RcnとコンデンサCでローパスフィルタが構成されている。
【0027】
続いて、制御部20の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20の構成を示すブロック図である。
【0028】
制御部20は、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、及びI/F(インタフェース)20Eを備えている。
【0029】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行することにより、装置の全体の動作を司る。ROM20Bは、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶される。RAM20Cは、CPU20Aによる各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる。ストレージ20Dは、フラッシュメモリや、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の各種記憶部により構成され、各種データやアプリケーションプログラム等が記憶される。I/F20Eは、電圧検出均等化部18及びメインリレー16に接続されている。以上の制御部20の各部はシステムバス20Fにより電気的に相互に接続されている。
【0030】
以上の構成により、制御部20は、CPU20Aにより、ROM20B、RAM20C、及びストレージ20Dに対するアクセス、I/F20Eに接続された電圧検出均等化部18及びメインリレー16の制御が可能とされている。
【0031】
本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20は、バッテリ12、及びコンデンサCや均等化FET24等の素子の異常を検出する機能を有する。
【0032】
詳細には、制御部20は、均等化FET24をオフした時の電圧Vaと、均等化FET24をオンした時の電圧VbをAD変換器26から取得する。
【0033】
また、制御部20は、AD変換器26によって計測した電圧Vbから電圧Vaを以下の(1)式により推定して、推定電圧Vacalcを算出する。
【0034】
【0035】
バッテリ12及び素子に異常が無ければ、推定電圧Vacalcは電圧Vaと等しくなるので、推定電圧Vacalcと計測した電圧Vaとを比較することにより、バッテリ12及び素子の異常を検出する。例えば、推定電圧Vacalcと電圧Vaが予め定めた閾値以上乖離している場合に、異常であると判定する。
【0036】
また、制御部20は、異常を検出した場合、フェールセーフとして、メインリレー16をオフすることにより、異常が検出されたバッテリセル14の使用を停止する。
【0037】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20で行われる具体的な処理について説明する。
図4は、本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図4の処理は、1つのバッテリセル14に対する処理として説明するが、各バッテリセル14について順番に行うものとする。
【0038】
ステップ100では、CPU20Aが、均等化FET24をオフしてAD変換器26によって計測された電圧Vaを取得してステップ102へ移行する。
【0039】
ステップ102では、CPU20Aが、均等化FET24をオンしてAD変換器26によって計測された電圧Vbを取得してステップ104へ移行する。なお、ステップ100~102は取得部に対応する。
【0040】
ステップ104では、CPU20Aが、電圧Vbから電圧Vaを算出してステップ106へ移行する。すなわち、上述の(1)式により、電圧Vbから推定電圧Vacalcを算出する。
【0041】
ステップ106では、CPU20Aが、推定電圧Vacalcと実測の電圧Vaを比較してステップ108へ移行する。
【0042】
ステップ108では、CPU20Aが、|Va-Vacalc|が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。すなわち、推定電圧Vacalcが実測の電圧Vaに対して閾値以上乖離しているか否かを判定する。該判定が否定された場合には一連の処理を終了し、判定が肯定された場合にはステップ110へ移行する。
【0043】
ステップ110では、CPU20Aが、閾値以上の回数が予め定めた回数以上であるか否かを判定する。該判定は、異常の誤判定を抑制するために、閾値以上の回数が予め定めた回数以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合には一連の処理を終了し、判定が肯定された場合にはステップ112へ移行する。なお、ステップ110の処理は省略してもよい。
【0044】
ステップ112では、CPU20Aが、異常と判定してメインリレー16をオフして一連の処理を終了する。これにより、異常と判定した場合に、負荷22への電力供給を停止して異常時のフェールセーフが可能となる。なお、ステップ104~112は判定部に対応する。
【0045】
このように、本実施形態に係る電力供給装置10では、均等化FET24オン時の電圧Vbから均等化FET24オフ時の電圧Vaを推定し、計測したVaと推定電圧Vacalcとを比較することで、バッテリセル14及びコンデンサC等の素子の異常を検出できる。
【0046】
上記の
図4の処理では、複数のバッテリセル14について順番に異常を検出するようにしたが、以下では、複数のバッテリセル14をまとめて異常を検出する例を説明する。
【0047】
本実施形態に係る電力供給装置10は、
図5に示すように、抵抗Rcn、Rcn-1が、隣接するバッテリセル14と共通する回路となっている。そのため、全ての均等化FET24をオンすると隣接するバッテリセル14の影響を受けるため、隣接するバッテリセル14を同時に異常検出できない。
図5は、隣接する2つのバッテリセル14に注目した電力供給装置10の詳細な構成を示す図である。
【0048】
そこで、隣接しないバッテリセル14について同時に異常検出を行うことで、
図4の処理よりも処理時間を短縮できる。
【0049】
具体的には、全てのバッテリセル14の均等化FET24をオフにして計測した各バッテリセル14の電圧Vaを取得する。続いて、奇数番のバッテリセル14の均等化FET24をオンにし、かつ偶数番のバッテリセル14の均等化FET24をオフにして計測した奇数番の各バッテリセル14の電圧Vbを取得する。続いて、偶数番のバッテリセル14の均等化FET24をオンにし、かつ奇数番のバッテリセル14の均等化FET24をオフにして計測した偶数番の各バッテリセル14の電圧Vbを取得する。そして、各バッテリセル14について推定電圧Va1calcを算出して、推定電圧Vacalcと計測した電圧Vaを比較して各バッテリセル14について異常検出を行う。これにより、各バッテリセル14について順番に異常検出を行う場合よりも処理時間を短縮できる。
【0050】
続いて、隣接しないバッテリセル14について同時に異常検出を行う場合に、本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20で行われる具体的な処理について説明する。
図6は、隣接しないバッテリセル14について同時に異常検出を行う場合に、本実施形態に係る電力供給装置10の制御部20で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6の処理は、例えば、予め定めた周期で周期的に実施する。
【0051】
ステップ200では、CPU20Aが、メインリレー16がオフしているか否かを判定する。該判定は、電圧計測を複数回行うため、バッテリに電流が流れていないことが担保される状況かを判定する。電流が流れてしまうことで電圧誤差が発生し誤判定となるため、本実施形態では、一例として、メインリレー16がオフであるか否かを判定するが、他の方法でバッテリ12に電流が流れていない状況かを判定してもよい。該判定が否定された場合は一連の処理を終了し、判定が肯定された場合にはステップ202へ移行する。
【0052】
ステップ202では、CPU20Aが、均等化FET24をオフしてAD変換器26によって計測した電圧Vaを取得してステップ204へ移行する。
【0053】
ステップ204では、CPU20Aが、奇数番のバッテリセル14の均等化FET24をオンしてAD変換器26によって計測した電圧Vbを取得してステップ206へ移行する。
【0054】
ステップ206では、CPU20Aが、偶数番のバッテリセル14の均等化FET24をオンしてAD変換器26によって計測した電圧Vbを取得してステップ208へ移行する。なお、ステップ202~206は取得部に対応する。
【0055】
ステップ208では、CPU20Aが、各バッテリセル14について電圧Vbから電圧Vaを算出してステップ210へ移行する。すなわち、上述の(1)式により、電圧Vbから推定電圧Vacalcを算出する。
【0056】
ステップ210では、CPU20Aが、各バッテリセル14について推定電圧Vacalcと実測の電圧Vaを比較してステップ212へ移行する。
【0057】
ステップ212では、CPU20Aが、|Va-Vacalc|が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。すなわち、推定電圧Vacalcが実測の電圧Vaに対して閾値以上乖離しているバッテリセル14があるか否かを判定する。該判定が否定された場合には一連の処理を終了し、判定が肯定された場合にはステップ214へ移行する。
【0058】
ステップ214では、CPU20Aが、閾値以上の回数が予め定めた回数以上であるか否かを判定する。該判定は、各バッテリセルのそれぞれについて、異常の誤判定を抑制するために、閾値以上の回数が予め定めた回数以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合には一連の処理を終了し、判定が肯定された場合にはステップ216へ移行する。なお、ステップ214野処理は省略してもよい。
【0059】
ステップ216では、CPU20Aが、異常と判定してメインリレー16をオフして一連の処理を終了する。これにより、異常と判定した場合に、負荷22への電力供給を停止して異常時のフェールセーフが可能となる。なお、ステップ208~216は判定部に対応する。
【0060】
このように、隣接しないバッテリセル14の均等化FET24オン時の電圧Vbを種等することで、複数のバッテリセル14の電圧Vbを取得できるので、
図4の処理のように各バッテリセル14について電圧Va、Vbを順次取得して異常を検出するよりも処理時間を短縮することが可能となる。
【0061】
なお、
図6の処理では、均等化FET24をオンして電圧Vbを取得する際に、奇数番と偶数番のバッテリセル14に分けて取得する例を説明したが、これに限るものではない。隣接しないバッテリセル14の均等化FET24をオンして電圧Vbを取得すればよく、奇数番と偶数番に限定されるものではない。
【0062】
また、上記の実施形態では、各バッテリの電圧を検出するAD変換器26と均等化FET24を1つのICに含む例を説明したが、これに限るものではない。例えば、
図7に示すように、AD変換器26を含む電圧検出用のIC28と、均等化FET24を含む電圧均等化用のIC30とでそれぞれ別のICとしてもよい。
図7は、AD変換器26と均等化FET24をそれぞれ別のICとした例を示す図である。また、AD変換器26及び均等化FET24を含むICは、複数のICとして所定数のバッテリセル14毎にICを備える形態としてもよい。また、同様に、AD変換器26用のICと均等化FET24用のICとした場合についても、所定数のバッテリセル毎にそれぞれのICを備える形態としてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、電圧Vbから電圧Vaを推定するようにしたが、これに限るものではなく、電圧Vaから電圧Vbを推定して、計測した電圧Vbと推定電圧Vbcalcを比較して異常を判定してもよい。この場合、制御部は、AD変換器26によって計測した電圧Vaから電圧Vbを以下の(2)式より推定して、推定電圧Vbcalcを算出する。
【0064】
【0065】
また、上記の各実施形態における制御部20で行われる処理は、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアの処理とした場合には、プログラムを各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0066】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10 電力供給装置
12 バッテリ
14 バッテリセル
16 メインリレー(メインスイッチ)
18 電圧検出均等化部(均等化回路)
20 制御部(バッテリ異常検出装置)
24 均等化FET(スイッチ)
26 AD変換器(検出部)
C コンデンサ
Rcn、Rsn、Rcn-1、Rsn-1 抵抗