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特許7512961表示制御装置、表示方法及び表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示方法及び表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240702BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0969
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104425
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003322
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】張 玉テイ
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067515(JP,A)
【文献】特開2020-112542(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両の走行経路を取得し、
走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、
前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ
前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する
表示制御装置。
【請求項2】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両の走行経路を取得し、
走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、
前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ、
前記他の走行路が見通せない場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が見通せる場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する
表示制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
走行車線及び対向車線を有する前記走行路において前記走行車線側に前記他の走行路が存在する場合、前記誘導表示の表示位置を前記走行路及び前記他の走行路の交差点における手前側に設定し、
前記対向車線側に前記他の走行路が存在する場合、前記誘導表示の表示位置を前記交差点における奥側に設定する請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記誘導表示をアニメ―ションにより変化させながら前記表示領域に対して表示させる請求項1~の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項5】
車両の走行経路を取得し、
走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、
前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ
前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する
処理をコンピュータが実行する表示方法。
【請求項6】
車両の走行経路を取得し、
走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、
前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ
前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する
処理をコンピュータに実行させる表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示方法及び表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、HUDの表示を制御する表示制御装置が開示されている。当該表示制御装置は、車両の前景に存在する特定の重畳対象に重畳コンテンツを表示させる。例えば、同文献の図8には、左折する道路に沿って略三角形状の進行方向ガイドが車両の前景に重畳して表示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-132137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の表示制御装置は、これから進行する走行路に対して進行方向ガイドが重なるため、運転者が当該ガイドの表示を煩わしいと感じる虞がある。
【0005】
本発明は、煩わしさを軽減しつつ進路変更を誘導する表示を行う表示制御装置、表示方法及び表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の表示制御装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、車両の走行経路を取得し、走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路がとの位置関係に基づいて設定し、前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ、前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する。
【0007】
請求項1に記載の表示制御装置は、表示部の表示領域に対して進行方向を誘導する誘導表示を車両の前景に重畳させて表示させるように構成されている。当該表示制御装置では、プロセッサが取得した走行経路に基づいて、例えば、走行路を走行する車両が他の走行路に進路変更するかを判定する。そして、他の走行路に進路を変更する場合、プロセッサは、表示部の表示領域に対する誘導表示の表示位置を、表示領域と他の走行路との位置関係に基づいて設定する。これにより、例えば、これから走行する他の走行路が運転者の視線の正面に存在する場合には、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳されることを回避できるため、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳される煩わしさを軽減させることができる。
また、請求項1に記載の表示制御装置では、プロセッサは、他の走行路が表示領域の外側に存在する場合の誘導表示の表示位置を表示領域における他の走行路側に設定する。他の走行路は運転者の視線の正面にはないため、誘導表示が当該他の走行路に重畳して表示されても煩わしさを感じることは少ない。一方、プロセッサは、他の走行路が表示領域の内側に存在する場合の誘導表示の表示位置を表示領域における走行路側に設定する。これにより、他の走行路の風景に誘導表示が重畳される煩わしさを軽減させることができる。
【0010】
請求項に記載の表示制御装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、車両の走行経路を取得し、走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ、前記他の走行路が見通せない場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が見通せる場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する。
【0011】
請求項に記載の表示制御装置では、プロセッサは、他の走行路が見通せない場合の誘導表示の表示位置を表示領域における他の走行路側に設定する。他の走行路は見通せないため、誘導表示が当該他の走行路に重畳して表示されても煩わしさを感じることは少ない。一方、プロセッサは、他の走行路が見通せる場合の誘導表示の表示位置を表示領域における走行路側に設定する。これにより、他の走行路の風景に誘導表示が重畳される煩わしさを軽減させることができる。
【0012】
請求項に記載の表示制御装置は、請求項1又は2に記載の表示制御装置において、前記プロセッサは、走行車線及び対向車線を有する前記走行路において前記走行車線側に前記他の走行路が存在する場合、前記誘導表示の表示位置を前記走行路及び前記他の走行路の交差点における手前側に設定し、前記対向車線側に前記他の走行路が存在する場合、前記誘導表示の表示位置を前記交差点における奥側に設定する。
【0013】
請求項に記載の表示制御装置では、プロセッサは、走行車線側に他の走行路が存在する場合、誘導表示の表示位置を交差点における手前側に設定する。例えば、走行路の左側が走行車線である場合、交差点の左手前側に誘導表示を設定する。一方、プロセッサは、対向車線側に他の走行路が存在する場合、誘導表示の表示位置を交差点における奥側に設定する。例えば、右側が対向車線である場合、交差点の右奥側に誘導表示を設定する。当該表示制御装置によれば、他の走行路の走行車線側に誘導表示を設定することができ、これにより、運転者の視線をこれから走行する方向に誘導させることができる。
【0014】
請求項に記載の表示制御装置は、請求項1~の何れか1項に記載の表示制御装置において、前記プロセッサは、前記誘導表示をアニメ―ションにより変化させながら前記表示領域に対して表示させる。
【0015】
請求項に記載の表示制御装置によれば、誘導表示の変化に対する違和感を軽減させることができる。
【0016】
請求項に記載の表示方法は、車両の走行経路を取得し、走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ、前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する処理をコンピュータが実行する。
【0017】
請求項に記載の表示方法は、表示部の表示領域に対して進行方向を誘導する誘導表示を車両の前景に重畳させて表示させる方法である。当該表示方法では、コンピュータが取得した走行経路に基づいて、例えば、走行路を走行する車両が他の走行路に進路変更するかを判定する。そして、他の走行路に進路を変更する場合、コンピュータは、表示部の表示領域に対する誘導表示の表示位置を、表示領域と他の走行路との位置関係に基づいて設定する。これにより、例えば、これから走行する他の走行路が運転者の視線の正面に存在する場合には、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳されることを回避できるため、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳される煩わしさを軽減させることができる。
【0018】
請求項に記載の表示プログラムは、車両の走行経路を取得し、走行路を走行する前記車両が進行方向を他の走行路に変更する場合に、表示部の表示領域に対する進行方向を誘導する誘導表示の表示位置を、前記表示領域と前記他の走行路との位置関係に基づいて設定し、前記車両の前景に対して表示位置が設定された前記誘導表示を前記表示領域に重畳させて表示させ、前記他の走行路が前記表示領域の外側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記他の走行路側に設定し、前記他の走行路が前記表示領域の内側に存在する場合の前記誘導表示の表示位置を前記表示領域における前記走行路側に設定する処理をコンピュータに実行させる。
【0019】
請求項に記載の表示プログラムは、表示部の表示領域に対して進行方向を誘導する誘導表示を車両の前景に重畳させて表示させるプログラムである。当該プログラムでは、コンピュータが取得した走行経路に基づいて、例えば、走行路を走行する車両が他の走行路に進路変更するかを判定する。そして、他の走行路に進路を変更する場合、コンピュータは、表示部の表示領域に対する誘導表示の表示位置を、表示領域と他の走行路との位置関係に基づいて設定する。これにより、例えば、これから走行する他の走行路が運転者の視線の正面に存在する場合には、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳されることを回避できるため、当該他の走行路の風景に誘導表示が重畳される煩わしさを軽減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、煩わしさを軽減しつつ進路変更を誘導する表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の表示制御装置におけるROMの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態の表示制御装置におけるCPUの機能構成を示すブロック図である。
図5】実施形態におけるマーカMの表示例を示す図である。
図6】実施形態におけるマーカMの表示例を示す図である。
図7】実施形態におけるマーカMの表示例を示す図である。
図8】実施形態の表示制御装置における重畳処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施形態の表示制御装置における座標設定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態である表示装置10について説明する。図1に示されるように、本実施形態の表示装置10は車両12に搭載されている。表示装置10は、表示制御装置20、複数のECU(Electronic Control Unit)22、及びヘッドアップディスプレイ24を少なくとも含む。表示制御装置20及びECU22は、ダッシュボード14の内部に収容されている。ヘッドアップディスプレイ24は、フロントウインドウ16に所定の領域の投影面16Aを有し、投影装置26(図2参照)から投影された画像が表示される。この投影面16Aは、ヘッドアップディスプレイ24の表示領域に相当する。
【0023】
図2に示されるように、各ECU22及びヘッドアップディスプレイ24は、表示制御装置20に対して接続されている。ECU22は、カーナビゲーションECU22A、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22B、及びボデーECU22Cを含む。
【0024】
カーナビゲーションECU22Aは、カーナビゲーションシステムを制御する。カーナビゲーションECU22Aには、GPS装置30及びセンタディスプレイ32が接続されている。GPS装置30は車両12の現在位置を測定する装置である。GPS装置30は、GPS衛星からの信号を受信する図示しないアンテナを含んでいる。なお、GPS装置30は、表示制御装置20に対して直接接続されていてもよい。センタディスプレイ32は、地図及び車両12の現在位置を示すマーカを表示する液晶ディスプレイである。センタディスプレイ32は、ダッシュボード14の車幅方向中央部に設けられている。
【0025】
ADAS-ECU22Bは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Bには、少なくとも車両12の前方を撮像する外部カメラ40が接続されている。また、ADAS-ECU22Bには、ブレーキ及びアクセルの各々を駆動させる図示しないアクチュエータが接続されている。なお、外部カメラ40は、表示制御装置20に対して直接接続されていてもよい。
【0026】
ボデーECU22Cは、ワイパーやライト類を制御する。ボデーECU22Cには、例えば、前照灯、ウィンカ等のスイッチが接続されている。
【0027】
ヘッドアップディスプレイ24は、投影装置26及びアクチュエータ28を含んで構成されている。アクチュエータ28は、投影装置26から投影された画像を反射するミラーの角度、及び当該ミラーと投影装置26との距離を調整するための駆動装置である。
【0028】
表示制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、通信I/F(Interface)20E及び入出力I/F20Fを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、通信I/F20E及び入出力I/F20Fは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0030】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。図3に示されるように、本実施形態のROM20Bは、処理プログラム100及び画像データ110を記憶している。なお、処理プログラム100及び画像データ110は、ストレージ20Dに記憶されていてもよい。
【0031】
表示プログラムとしての処理プログラム100は、後述する重畳処理を行うためのプログラムである。画像データ110は、ヘッドアップディスプレイ24に表示させるアニメーション画像を記憶したデータである。
【0032】
図2に示されるように、RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0033】
ストレージ20Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。
【0034】
通信I/F20Eは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられている。通信I/F20Eは、外部バス20Hを介して各ECU22に接続されている。
【0035】
入出力I/F20Fは、ヘッドアップディスプレイ24を構成する投影装置26及びアクチュエータ28と通信するためのインタフェースである。
【0036】
図4に示されるように本実施形態の表示制御装置20では、CPU20Aが、処理プログラム100を実行することで、取得部200、判定部210、設定部220、及び制御部230として機能する。
【0037】
取得部200は、車両12の走行経路の情報、及び外部カメラ40の撮像画像に係る画像情報を取得する。走行経路の情報はカーナビゲーションECU22Aから取得する。また、外部カメラ40の撮像画像に係る画像情報は、ADAS-ECU22Bから取得する。
【0038】
判定部210は、走行経路に基づいて、車両12が走行中の第一走行路T1から任意の第二走行路T2に進路変更を行う必要があるか、換言すると右左折をする必要があるか否かを判定する。ここで、第一走行路T1は車両12が現在走行している道路であって走行路の一例であり、第二走行路T2は、車両12が走行経路に沿って進行方向を変更する道路であって他の走行路の一例である。
【0039】
また、判定部210は、第一走行路T1から進行方向を変更する第二走行路T2が表示領域としての投影面16Aの内側に存在するか、投影面16Aの外側に存在するかを判定する。ここで、第二走行路T2が投影面16Aの内側に存在するか、投影面16Aの外側に存在するかは、投影面16Aの運転者の視点における前景に第二走行路T2の主要部分が含まれるか否かで判定する。また、主要部分とは、交差点Cから進路変更が完了するまで(例えば、ウィンカが消灯するまで)の距離の範囲、予め設定された距離の範囲等を含む。
【0040】
運転者の視点における前景に第二走行路T2の主要部分が含まれるか否かの判定部210による判定は、運転者の視線カメラに基づいて行ってもよいし、後述する仮想空間上の三次元座標に基づいて行ってもよい。
【0041】
また、投影面16Aがフロントウインドウ16に対して大きい場合、進路変更の遥か手前から、運転者の視点における前景に第二走行路T2が常に含まれる可能性がある。この場合、投影面16Aに対して所定の判定領域を設け、判定部210は当該判定領域において第二走行路T2が含まれるか否かで判定してもよい。
【0042】
設定部220は、進路変更を促すためのマーカM(図5図7参照)を三次元座標上に設定する機能を有している。具体的に、設定部220は、撮像画像に基づいて走行中の走行路、他の車両及び歩行者を仮想空間上に配置すると共に、仮想空間における所定の位置に誘導表示であるマーカMが配置されるように三次元座標を設定する。これにより、設定部220は、第一走行路T1を走行する車両12が進行方向を第二走行路T2に変更する場合に、車両12の前景に重畳させるマーカMの表示位置を設定する。
【0043】
設定部220は、第二走行路T2が投影面16Aの外側に存在する場合のマーカMの表示位置を投影面16Aにおける第二走行路T2側に設定する。マーカMの表示位置を投影面16Aにおける第二走行路T2側に設定する場合、設定部220は以下の設定を行う。
【0044】
設定部220は、走行車線DLと対向車線OLを有する第一走行路T1において走行車線DL側に第二走行路T2が存在する場合、マーカMの表示位置を第一走行路T1及び第二走行路T2の交差点Cにおける手前側に設定する。これにより、図5に例示されるように、車両12が走行車線DL側に進路変更する場合、すなわち左側通行において左折する場合、投影面16Aでは交差点Cの左側かつ手前側のコーナにマーカMが配置される。
【0045】
また、設定部220は、対向車線OL側に第二走行路T2が存在する場合、マーカMの表示位置を交差点Cにおける奥側に設定する。これにより、図6に例示されるように、車両12が対向車線OL側に進路変更する場合、すなわち左側通行において右折する場合、投影面16Aでは交差点Cの右側かつ奥側のコーナにマーカMが配置される。
【0046】
また、設定部220は、第二走行路T2が投影面16Aの内側に存在する場合のマーカMの表示位置を投影面16Aにおける第一走行路T1側に設定する。これにより、図7に例示されるように、ランナバウトである第一走行路T1を右旋回中の車両12が左折する必要がある場合、投影面16Aでは第一走行路T1側にマーカMが配置される。
【0047】
制御部230は、車両12の前景に対して表示位置が設定されたマーカMを投影面16Aに重畳させて表示させる。このマーカMは、例えばアニメーション動画として画像データ110に格納されている。
【0048】
(制御の流れ)
本実施形態の表示制御装置20において実行される重畳処理及び座標設定処理の流れについて、図8及び図9を用いて説明する。重畳処理及び座標設定処理は、CPU20Aが、取得部200、判定部210、設定部220及び制御部230として機能することにより実行される。
【0049】
図8のステップS100において、CPU20AはカーナビゲーションECU22Aから車両12の走行経路を取得する。
【0050】
ステップS101において、CPU20Aは外部カメラ40が撮像した撮像画像に係る画像情報を取得する。
【0051】
ステップS102において、CPU20Aは進路変更があるか否かを判定する。具体的に、CPU20Aは交差点Cにおいて第一走行路T1から第二走行路T2に進路変更があるか否かの判定を行う。CPU20Aは進路変更があると判定した場合(ステップS102でYESの場合)、ステップS103に進む。一方、CPU20Aは進路変更がないと判定した場合(ステップS102でNOの場合)、ステップS104に進む。
【0052】
ステップS103において、CPU20Aは座標設定処理を実行する。詳細は後述する。
【0053】
ステップS104において、CPU20Aは通常表示を実行する。すなわち、CPU20Aは投影面16Aに対して、通常のナビゲーション画像等を表示させる。そして、ステップS100に戻る。
【0054】
ステップS105において、CPU20Aは投影面16Aに対してマーカMを表示させる。このマーカMはアニメーション動画により表示される。例えば、図7においてマーカMを構成する略三角形状の表示が、進行方向に向けて順番に拡大したり、進行方向に向けて順番に明るくしたりさせるアニメーションが実行される。
【0055】
ステップS106において、CPU20Aは進路変更が完了したか否かを判定する。CPU20Aは進路変更が完了したと判定した場合(ステップS106でYESの場合)、ステップS107に進む。一方、CPU20Aは進路変更が完了していないと判定した場合(ステップS106でNOの場合)、ステップS100に戻る。
【0056】
ステップS107において、CPU20AはマーカMの表示を終了させる。そして、ステップS100に戻る。
【0057】
次に、ステップS103の座標設定処理の流れについて、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
図9のステップS200において、CPU20Aは第二走行路T2が投影面16Aの外側に存在するか否かの判定を行う。CPU20Aは第二走行路T2が投影面16Aの外側に存在すると判定した場合(ステップS200でYESの場合)、ステップS201に進む。一方、CPU20Aは第二走行路T2が投影面16Aの外側に存在しない、すなわち、投影面16Aの内側に存在すると判定した場合(ステップS200でNOの場合)、ステップS204に進む。
【0059】
ステップS201において、CPU20Aは進路変更が左折か否かの判定を行う。CPU20Aは進路変更が左折であると判定した場合(ステップS201でYESの場合)、ステップS202に進む。一方、CPU20Aは進路変更が左折ではない、すなわち右折であると判定した場合(ステップS201でNOの場合)、ステップS203に進む。
【0060】
ステップS202において、CPU20Aは交差点Cの左手前のコーナにマーカMを設定する。そして、CPU20Aは座標設定処理を終了して重畳処理に戻る。
【0061】
ステップS203において、CPU20Aは交差点Cの右奥のコーナにマーカMを設定する。そして、CPU20Aは座標設定処理を終了して重畳処理に戻る。
【0062】
ステップS204において、CPU20Aは現在走行中の第一走行路T1側にマーカMを設定する。そして、CPU20Aは座標設定処理を終了して重畳処理に戻る。
【0063】
(まとめ)
本実施形態の表示制御装置20は、ヘッドアップディスプレイ24の投影面16Aに対して進行方向を誘導する誘導表示であるマーカMを車両12の前景に重畳させて表示させるように構成されている。
【0064】
本実施形態においてCPU20Aは、第二走行路T2が投影面16Aの外側に存在する場合のマーカMの表示位置を投影面16Aにおける第二走行路T2側に設定する。図5及び図6に示されるように、車両12が交差点Cの手前を走行している場合、第二走行路T2が運転者の視線の正面に存在しないため、マーカMが第二走行路T2の風景に重畳して表示されても煩わしさを感じることは少ない。一方、CPU20Aは、第二走行路T2が投影面16Aの内側に存在する場合のマーカMの表示位置を投影面16Aにおける第一走行路T1側に設定する。これにより、図7に示されるように、第二走行路T2の風景にはマーカMが重畳されないため、運転者の視線において第二走行路T2を遮ることなく、表示の煩わしさを軽減させることができる。
【0065】
また、本実施形態の表示制御装置20において、CPU20Aは、走行車線DL側に第二走行路T2が存在する場合、マーカMの表示位置を交差点Cにおける手前側に設定する。例えば、左側が走行車線DLである場合、交差点Cの左手前側にマーカMを設定する(図5参照)。一方、CPU20Aは、対向車線OL側に第二走行路T2が存在する場合、マーカMの表示位置を交差点Cにおける奥側に設定する。例えば、右側が対向車線OLである場合、交差点Cの右奥側にマーカMを設定する。本実施形態によれば、第二走行路T2の走行車線DL側にマーカMを設定することができ、これにより、運転者の視線をこれから走行する方向に誘導させることができる。
【0066】
さらに、本実施形態によれば、マーカMをアニメーション表示させることで、走行中におけるマーカMの表示の変化に対する違和感を軽減させることができる。
【0067】
(他の実施形態)
上記実施形態では、判定部210は、第一走行路T1から進行方向を変更する第二走行路T2が表示領域としての投影面16Aの内側に存在するか外側に存在するかを判定し、当該判定に基づいて設定部220がマーカMの表示位置を設定していた。しかしこれに限らず、他の実施形態として、判定部210は、第一走行路T1から進行方向を変更する第二走行路T2が見通せるか否かを判定し、当該判定に基づいて設定部220がマーカMの表示位置を設定するように構成してもよい。
【0068】
ここで、「見通せる」とは、現在走行中の第一走行路T1からこれから走行する第二走行路T2の交通状況、路面状況、障害物等を確認可能とする状態を意味する。したがって、「見通せない」とは、第二走行路T2の交通状況、路面状況、障害物等を確認できない状態を意味する。
【0069】
他の実施形態では、図9のステップS200において、第二走行路T2を見通せないか否かを判定する処理を行う以外は、上記の実施形態と同様の作用と効果を奏する。すなわち、これから走行する第二走行路T2が運転者の視線の正面に存在する場合には、第二走行路T2の風景にはマーカMが重畳されないため、表示の煩わしさを軽減させることができる。
【0070】
[備考]
本実施形態では、フロントウインドウ16を通して視認される車両12の前景に対してマーカMが重畳して表示されるように構成したが、この限りではなく、車両12の前景の撮像画像に対して、マーカMを重畳して表示してもよい。例えば、センタディスプレイ32に対して、外部カメラ40の撮像画像を表示可能に構成した場合、車両12の前景の撮像画像に対してマーカMを重畳して表示させることができる。この場合においても、センタディスプレイ32を視認する運転者に対する煩わしさを軽減させつつ、進路変更を誘導することができる。
【0071】
また、AR(Augmented Reality:拡張現実)グラス、ヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブルデバイスに対して、マーカMを重畳して表示してもよい。この場合、ウェアラブルデバイスを装着した運転者は、眼前のスクリーン等を通して視認される車両12の前景に対して重畳されたマーカMを確認することができる。この場合においても、運転者に対する煩わしさを軽減させつつ、進路変更を誘導することができる。
【0072】
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0073】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、表示制御装置20における処理プログラム100は、ROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0074】
上記各実施形態における処理は、1つのプロセッサによって実行されるのみならず、複数のプロセッサが協働して実行されるものであってもよい。上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
12 車両
16A 投影面(表示領域)
20 表示制御装置
20A CPU(プロセッサ)
24 ヘッドアップディスプレイ(表示部)
100 処理プログラム(表示プログラム)
T1 第一走行路(走行路)
T2 第二走行路(他の走行路)
C 交差点
DL 走行車線
OL 対向車線
M マーカ(誘導表示)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9