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  • 特許-リアクトルとその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】リアクトルとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 S
H01F37/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021115116
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011318
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 浩二
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050286(JP,A)
【文献】特開2016-171099(JP,A)
【文献】特開2015-201491(JP,A)
【文献】特開2016-092313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08-27/22
H01F 27/28
H01F 27/29-27/30
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う巻線の間に隙間が確保されているコイルと、
前記コイルに挿通されているコアと、
前記コイルの側面に接している放熱材と、
を備えており、
前記放熱材は、前記コイルの隣り合う前記巻線の間に入り込んでおり、前記コイルの軸線方向のコイル外側における前記放熱材の厚みが、前記巻線の間における前記放熱材の厚みよりも薄く、
前記コイルの前記放熱材が接している側において、隣り合う前記巻線の間隔が前記コアから遠ざかるにつれて広くなっている、
リアクトル。
【請求項2】
前記コイルの軸線と前記放熱材を通る平面でカットした断面において前記放熱材が前記巻線を囲んでいる、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記放熱材が前記コアに接している、請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
隣り合う巻線の間に隙間を有するコイルと、前記コイルに挿通されたコアを金型にセットする第1工程と、
前記コイルを側面視したときに前記隙間の一方の端が他方の端よりも広くなるように、前記コイルの軸線の片側に前記軸線に平行な方向の力を加えつつ、前記一方の側で前記コイルが露出するように前記コイルと前記コアを覆う樹脂カバーを形成する第2工程と、
前記コイルの前記樹脂カバーから露出している部位にて前記コイルの側面に接するとともに前記隙間に入り込む放熱材を形成する第3工程と、
を備えている、リアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、コイルにコアが挿通されているリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示されたリアクトルは、コイルの側面に接する放熱材(放熱シート)を備えている。放熱材は、コイルの熱を吸収する。別言すれば、放熱材はコイルを冷却する。コイルを効果的に冷却するために、放熱材は、コイルの隣り合う巻線の間に入り込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-050286号公報
【文献】特開2016-092313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、さらに改善されたリアクトルと、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するリアクトルは、隣り合う巻線の間に隙間が確保されているコイルと、コイルに挿通されているコアと、放熱材を備える。放熱材は、コイルの側面に接している。放熱材は、コイルの隣り合う巻線の間に入り込んでいる。さらに、コイルの軸線方向のコイル外側における放熱材の厚みが、巻線の間における放熱材の厚みよりも薄い。コイル冷却への寄与が小さいコイル外側で放熱材を薄くすることで、コイルに対する冷却性能を下げることなく、放熱材の量を抑えることができる。
【0006】
本明細書が開示するリアクトルでは、コイルの軸線と放熱材を通る平面でカットした断面において放熱材が巻線を囲んでいるとよい。放熱材が巻線を囲んでいることで、放熱材が巻線から剥がれ難くなる。また、放熱材がコアに接していてもよい。放熱材がコアの冷却にも寄与することができる。
【0007】
本明細書が開示するリアクトルでは、コイルの放熱材が接している側において、隣り合う巻線の間隔がコアから遠ざかるにつれて広くなっているとよい。発明者の検討によると、巻線の間の間隔がコアから遠ざかるにつれて広くなっていると、巻線の間に充填された放熱材が剥がれ難くなる。
【0008】
本明細書は、隣り合う巻線の間隔がコアから遠ざかるにつれて広くなっているリアクトルに適した製造方法も提供する。その製造方法は、第1~第3工程を備える。第1工程では、隣り合う巻線の間に隙間を有するコイルと、コイルに挿通されたコアを金型にセットする。第2工程では、コイルを側面視したときに隙間の一方の端が他方の端よりも広くなるように、コイルの軸線の片側に軸線に平行な方向の力を加えつつ、一方の側でコイルが露出するようにコイルとコアを覆う樹脂カバーを形成する。第3工程では、コイルの樹脂カバーから露出している部位にてコイルの側面に接するとともに巻線の隙間に入り込む放熱材を形成する。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施例のリアクトルの平面図である。
図2】第1実施例のリアクトルの正面図である。
図3】第1実施例のリアクトルの側面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】第2実施例のリアクトルの断面図である。
図6】第3実施例のリアクトルの断面図である。
図7】リアクトルの製造方法の第1工程を説明する図である。
図8】リアクトルの製造方法の第2工程を説明する図である。
図9】リアクトルの製造方法の第2工程を説明する図である。
図10】リアクトルの製造方法の第3工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例のリアクトル2を説明する。図1図3は、それぞれ、リアクトル2の平面図、正面図、側面図である。コア3とコイル4、5の一部が樹脂カバー6に覆われているが、理解を助けるため、樹脂カバー6は仮想線で描いてある。
【0012】
リアクトル2は、リング状のコア3、2個のコイル4、5、土台7、樹脂カバー6、放熱材9を備える。放熱材9は、図1図3では見えず、断面図の図4で示される。コア3は、2個のコイル4、5に挿通されている。コア3は、コイル4(コイル5)の軸線方向においてコイル4(コイル5)よりも外側まで延びている。2個のコイル4、5は、1本の巻線8で作られており、電気的には1個のコイルを形成する。コイル4、5の引き出し線は図示を省略してある。
【0013】
コイル4、5は、隣り合う巻線8の間に隙間を有している。コア3とコイル4、5のアセンブリは、土台7に固定されている。土台7にスペーサ11が固定されており、スペーサ11の上面にコア3が固定されている。図では示していないが、樹脂カバー6にタブが設けられており、タブが土台7に固定されていてもよい。
【0014】
仮想線で示してある樹脂カバー6は、コイル4、5の下部と、コア3の下面を露出させつつ、コイル4、5の残部とコア3の残部を覆っている。
【0015】
図1のVI-IV線に沿った断面図を図4に示す。図4では、リアクトル2の断面の一部を省略してある。図4の一点鎖線ALは、コイル4の軸線(軸線AL)を示している。図4では、いくつかの巻線には符号8を省略した。また、それぞれの巻線8を個別に示すときには、符号8a、8bを用いる。図4に示されているように、巻線8は、断面が扁平な平角線である。コイル4(コイル5)では、平角の巻線8がエッジワイズに巻回されている。エッジワイズ巻きとは、平角線の幅広面が軸線ALの方向を向くように巻回することを意味する。
【0016】
コイル4の下面に、放熱材9が接している。図4は、コイル4の軸線ALと放熱材9を通る平面でカットしたリアクトル2の断面である。図には示されていないが、放熱材9は、コイル5の下面にも接している。放熱材9とコイル5の構造的関係は、放熱材9とコイル4の構造的関係と同じである。それゆえ、以下では、放熱材9とコイル4の関係についてのみ説明する。
【0017】
放熱材9は、耐熱性が高く、熱伝導率が高く、柔軟な素材で作られている。放熱材9は、例えば、シリコンゴムで作られている。土台7に窪み7aが設けられており、窪み7aに放熱材9が配置されている。放熱材9は、コイル4の側面(下面)に接しているとともに、隣り合う巻線(例えば、巻線8a、8b)の間にも入り込んでいる。放熱材9は、コイル4に接するとともに土台7にも接している。土台7は、熱伝導率の高いアルミニウムで作られている。コイル4に電流が流れると、コイル4が発熱する。コイル4の熱は、放熱材9を介して土台7に伝わる。コイル4の熱は、放熱材9と土台7を介して放出される。土台7の下に、水冷の冷却器が取り付けられていてもよい。
【0018】
放熱材9は、軸線ALの方向にてコイル外側まで拡がっている。図4に示されているように、軸線ALの方向のコイル外側における放熱材9の厚みT1は、隣り合う巻線(例えば巻線8a、8b)の間における放熱材9の厚みT2よりも薄い。別言すれば、軸線ALの方向のコイル外側における放熱材9の表面S1は、巻線(例えば巻線8a、8b)の間の放熱材9の表面S2よりも、コア3から離れている。
【0019】
巻線8の間に充填される放熱材9は、両側の巻線(例えば巻線8a、8b)の熱を吸収する。一方、軸線AL方向のコイル外側における放熱材9は、片側でのみ、巻線8(軸線ALの方向における最外側の巻線)のみに接する。コイル4の軸線ALの方向のコイル外側の放熱材9は、隣り合う巻線8の間における放熱材9よりもコイル冷却への寄与が小さい。コイル冷却への寄与が小さい部位で放熱材9の厚みを薄くすることで、コイル4に対する冷却性能を下げることなく、放熱材9の量を抑えることができる。
【0020】
(第2実施例)図5に、第2実施例のリアクトル2aの断面図を示す。図5の断面は、図4の断面に対応する。リアクトル2aでは、コイル4の軸線ALと放熱材9aを通る平面でカットした断面において、放熱材9aがコイル4の巻線(例えば巻線8a、8b)を囲んでいる。別言すれば、軸線ALの方向で巻線の両側に位置する放熱材9aが、巻線とコア3の間でつながっている。さらに別言すれば、図5の断面において、放熱材9aは、軸線ALの方向で端に位置する巻線8cを除き、他の巻線8の周囲に充填されている。放熱材9aが巻線8(端の巻線8cを除く)を囲んでいることで、放熱材9aが巻線8から剥がれ難くなる。
【0021】
また、放熱材9aは、コア3に接している。放熱材9aがコア3に接していることで、放熱材9aはコア3の熱も吸収することができる。なお、第2実施例のリアクトル2aでも、軸線ALの方向のコイル外側における放熱材9aの厚みT1は、巻線8の間における放熱材9の厚みT2よりも薄い。
【0022】
(第3実施例)図6に、第3実施例のリアクトル2bの断面図を示す。図6の断面は、図4の断面に対応する。リアクトル2bでは、放熱材9が接している側において、隣り合う巻線8の間隔が、コア3から遠ざかるにつれて広くなっている。例えば、巻線8aと巻線8cにおいて、コア3から遠い側の間隔G2は、コア3に近い側の間隔G1よりも広くなっている。巻線8aと巻線8bの間の隙間も、コア3から離れるにつれて広くなっている。その他の巻線についても同じである。巻線8の間の間隔がコア3から遠ざかるにつれて広くなっていると、巻線8の間に充填された放熱材9が剥がれ難くなる。なお、少なくとも一対の巻線の隙間において、コア3から離れるにつれて隙間が広くなっていればよい。いくつかの隙間では、間隔が一定であってもよい。なお、第3実施例のリアクトル2bでも、軸線ALの方向のコイル外側における放熱材9の厚みT1は、巻線8の間における放熱材9の厚みT2よりも薄い。
【0023】
次に、図7から図10を参照しつつ、リアクトル12の製造方法を説明する。リアクトル12は、直線状のコア13と、1個のコイル14と、樹脂カバー16と、放熱材19を備えている(図10参照)。
【0024】
(第1工程)まず、隣り合う巻線の間に隙間を有するコイル14と、コイル14に挿通されたコア13を金型20にセットする(図7)。金型20は、第1型21と、第2型22で構成される。図7は、コイル14とコア13のアセンブリを第1型21にセットした状態を示している。コイル14の下端は、第1金型21に覆われている。第1型21には、後にコイル14を軸線AL(コイル14の軸線AL)の方向に押圧する加圧ピン23が設けられている。第2型22には、加圧ピン23とともにコイル14を挟み込む受けピン24が設けられている。また、第2型22には、溶融樹脂を蓄えるプランジャ25が取り付けられている。金型20が閉じる前は、プランジャ25のゲート26は閉じられている。
【0025】
(第2工程)コイル14を側面視したときに巻線間の隙間の一方の端(図中の下端)が他方の端(図中の上端)よりも広くなるように、コイル14の軸線ALの片側に軸線ALに平行な方向の力を加えつつ、金型20のキャビティ29に溶融樹脂を射出し、一方の側(図中の下端)でコイル14が露出するようにコイル14とコア13を覆う樹脂カバー16を形成する。図8に示すように、加圧ピン23と受けピン24で、コイル14の軸線ALより上側に、軸線ALと平行な力を加える。図8の白矢印がコイル14に加える力を示している。別言すれば、軸線ALの上側にて、加圧ピン23と受けピン24でコイル14を挟み込む。そうすると、コイル14は、巻線の間隔が軸線ALよりも上側で狭まる。すなわち、コイル14の下端における巻線間隔は、コイル14の上端における巻線間隔よりも広くなる。その状態でゲート26を開き、溶融した樹脂をプランジャ25からキャビティ29に射出する。コイル14の下端は、第1型21で覆われているので、溶融樹脂から隔離される。樹脂が固まると、コイル14の下側が露出し、コイル14の残部とコア13が覆われた樹脂カバー16が形成される。金型20を開き、樹脂カバー16が形成されたサブアセンブリ12aを取り出す(図9参照)。
【0026】
(第3工程)コイル14の露出した部分に放熱材19を取り付ける(図10)。放熱材19は、コイル14の隣り合う巻線の間に入り込んでおり、軸線ALの方向のコイル外側における放熱材19の厚みT1が、巻線の間の放熱材19の厚みT2よりも薄くなるように、取り付けられる。図示は省略するが、最後に、リアクトル12を土台に取り付ける。こうして、リアクトル12が完成する。
【0027】
上記の製造方法により製造されるリアクトル12では、樹脂カバー16から露出している部位では、コイル14の隣り合う巻線間の隙間が、コア13から遠ざかるにつれて拡がっている。間隔が徐々に広がっている隙間に放熱材19が充填されている。放熱材19が巻線から剥がれ難い。
【0028】
コイル14の露出している部位に、放熱材19が取り付けられる。放熱材19は、軸線ALの方向のコイル外側における厚みT1が、巻線の間における厚みT2よりも薄くなっている。それゆえ、コイル14の冷却性能に影響を与えずに、放熱材19の使用量を抑えることができる。
【0029】
図7図9では、コイル13の軸線ALの片側を押圧するのに1本の加圧ピン23のみが描かれている。軸線ALの片側でコイル13を軸線方向に押すのに複数のピンを用いてもよい。あるいは、軸線ALの片側でコイル13を軸線方向に押すのに、幅広の1本のピンを用いてもよい。
【0030】
軸線ALの方向の最外側の巻線は、中央の巻線に対して1度以上傾いていることが好ましい。
【0031】
実施例の製造方法に用いる金型20は、従来の金型に加圧ピン23と受けピン24を追加するだけで実現できる。実施例の製造方法に用いる装置は低コストで実現可能である。
【0032】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例のリアクトルはリング状のコアと、2個のコイルを有している。本明細書が開示する技術は、直線状のコアと1個のコイルを備えるリアクトルに適用することもできる。
【0033】
放熱材は、シート状のものであってよい。放熱材は、最初はゲル状であり、空気に触れると(あるいは加熱すると)固化するポッティング材であってもよい。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
2、2a、2b、12:リアクトル 3、13:コア 4、5、14:コイル 6、16:樹脂カバー 7:土台 7a:窪み 8、8a、8b、8c:巻線 9、9a、19:放熱材 11:スペーサ 12a:サブアセンブリ 20:金型 21:第1型 22:第2型 23:加圧ピン 24:受けピン 25:プランジャ 26:ゲート 29:キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10