(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両、電力供給システム、プログラム、放電コネクタおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20240702BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60L1/00 L
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
(21)【出願番号】P 2021132278
(22)【出願日】2021-08-16
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野村 茂樹
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03744553(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/111081(WO,A1)
【文献】特開2018-207587(JP,A)
【文献】特許第4380776(JP,B1)
【文献】特許第5735050(JP,B2)
【文献】特許第5123419(JP,B1)
【文献】特開2017-229230(JP,A)
【文献】国際公開第2013/057775(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/059988(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/052963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0048485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両は、
電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、
前記放電コネクタが接続された場合に前記電力変換装置から出力された電力を前記放電コネクタに放電する接続部とを含み、
前記接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有し、
前記車両制御装置は、
前記電力変換装置を制御するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記CP端子の電圧に基づいて
決定される電圧の電力を出力するように前記電力変換装置を制御する、車両制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記CP端子の電圧が所定電圧よりも低い場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧に決定する一方で、
前記CP端子の電圧が前記所定電圧よりも高い場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を前記第1電圧とは異なる第2電圧に決定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記CP端子の電圧が所定電圧よりも低い場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧に決定する一方で、
前記CP端子の電圧が前記所定電圧よりも高い場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を、前記第1電圧よりも高い第2電圧に決定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記CP端子の電圧が開放電圧である場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧に決定する一方で、
前記CP端子の電圧が前記開放電圧とは異なる電圧である場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を前記第1電圧とは異なる第2電圧に決定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記接続部は、プロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子をさらに有し、
前記プロセッサは、前記CP端子の電圧が前記CS端子の電圧に依存する電圧である場、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を前記第2電圧に決定する、請求項
4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記CP端子の電圧と前記CS端子の電圧とが等しい場合、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を前記第2電圧に決定する、請求項
5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の車両制御装置を備える、車両。
【請求項8】
請求項
7に記載の車両と、
前記放電コネクタとを備える、電力供給システム。
【請求項9】
車両に搭載されたコンピュータのプロセッサによって実行されると前記コンピュータに動作を行わせるプログラムであって、
前記車両は、
電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、
放電コネクタが接続された場合に前記電力変換装置から出力された電力を前記放電コネクタに放電する接続部とを含み、
前記接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有し、
前記動作は、前記CP端子の電圧に基づいて
決定される電圧の電力を前記電力変換装置から出力
させるステップを含む、プログラム。
【請求項10】
車両に設けられた接続部に接続されるように構成された放電コネクタであって、
プロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子と、
前記車両の外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送される前記車両のCP端子に接続されるように構成され
た信号端子と
、
前記CS端子と前記信号端子とを電気的に常時接続する配線と、
前記車両の外部への放電時には前記CP端子の電圧に基づいて決定される電圧の交流電力が伝送されるL1端子およびL2端子とを備える、放電コネクタ。
【請求項11】
車両に設けられた接続部に接続されるように構成された放電コネクタであって、
プロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子と、
前記車両の外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送される前記車両のCP端子に接続されるように構成された信号端子と、
前記車両の外部への放電時には前記CP端子の電圧に基づいて決定される電圧の交流電力が伝送されるL1端子およびL2端子と、
前記接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチと、
前記放電開始スイッチがオンされた場合に前記CS端子と前記信号端子とを電気的に接続するスイッチと
を備える
、放電コネクタ。
【請求項12】
車両から外部に放電コネクタを介して電力を供給する電力供給方法であって、
前記車両は、前記放電コネクタが接続される接続部を含み、前記接続部から放電される電力の電圧を調整可能に構成され、
前記接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有し、
前記電力供給方法は、
前記CP端子の電圧を取得するステップと、
前記CP端子の電圧に基づいて、前記接続部から出力される電力の電圧を切り替えるステップとを含む、電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両、電力供給システム、プログラム、放電コネクタおよび電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部への電力供給が可能な車両が知られている。車両から電気機器への電力供給はV2L(Vehicle to Load)とも呼ばれる。V2Lに関する様々な技術が提案されている。たとえば特許第5123419号公報(特許文献1)は、電力供給を受ける電気機器と車両とを接続するコネクタを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5123419号公報
【文献】特許第4380776号公報
【文献】特許第5735050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な電気機器を利用するために、電気機器の動作電圧に応じた適切な電圧の電力を供給する要望が存在する。特に、できるだけ簡易な構成によって、適切な電圧の電力を供給可能であることが望ましい。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、簡易な構成で適切な電圧の電力を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る車両制御装置は、放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する。車両は、電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、放電コネクタが接続された場合に電力変換装置から出力された電力を放電コネクタに放電する接続部とを含む。接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有する。車両制御装置は、プロセッサを備える。プロセッサは、CP端子の電圧に基づいて、電力変換装置から出力される電力の電圧を決定する。
【0007】
(2)プロセッサは、CP端子の電圧が所定電圧よりも低い場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧に決定する一方で、CP端子の電圧が所定電圧よりも高い場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧とは異なる第2電圧に決定する。
【0008】
(3)プロセッサは、CP端子の電圧が開放電圧である場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧に決定する一方で、CP端子の電圧が開放電圧とは異なる電圧である場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第1電圧とは異なる第2電圧に決定する。
【0009】
(4)接続部は、プロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子をさらに有する。プロセッサは、CP端子の電圧がCS端子の電圧に依存する電圧である場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第2電圧に決定する。
【0010】
(5)プロセッサは、CP端子の電圧とCS端子の電圧とが等しい場合、電力変換装置から出力される電力の電圧を第2電圧に決定する。
【0011】
(6)本開示の他の局面に係る車両は、上記の車両制御装置を備える。
【0012】
(7)本開示のさらに他の局面に係る電力供給システムは、上記の車両と、放電コネクタとを備える。
【0013】
(8)本開示のさらに他の局面に係るプログラムは、車両に搭載されたコンピュータのプロセッサによって実行されるとコンピュータに動作を行わせる。車両は、電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、放電コネクタが接続された場合に電力変換装置から出力された電力を放電コネクタに放電する接続部とを含む。接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有する。動作は、CP端子の電圧に基づいて、電力変換装置から出力される電力の電圧を決定するステップを含む。
【0014】
(9)本開示のさらに他の局面に係る放電コネクタは、車両に設けられた接続部に接続されるように構成されている。放電コネクタは、プロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子と、信号端子とを備える。信号端子は、車両の外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送される車両のCP端子に接続されるように構成され、かつ、CS端子に電気的に接続されている。
【0015】
(10)放電コネクタは、接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチと、放電開始スイッチがオンされた場合にCP端子とCS端子とを電気的に接続するスイッチとをさらに備える。
【0016】
(11)本開示のさらに他の局面に係る電力供給方法は、車両から外部に放電コネクタを介して電力を供給する。車両は、放電コネクタが接続される接続部を含み、接続部から放電される電力の電圧を調整可能に構成されている。接続部は、外部からの充電時にはコントロールパイロット信号が伝送されるCP端子を有する。電力供給方法は、CP端子の電圧を取得するステップと、CP端子の電圧に基づいて、接続部から出力される電力の電圧を切り替えるステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、簡易な構成で適切な電圧の電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】車両1、放電コネクタおよび電気機器の構成例を示す図である。
【
図3】放電コネクタのプラグに設けられた端子の一例を示す図である。
【
図4】国際標準規格(IEC61851-1)に定義されたプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲を説明するための図である。
【
図5】充電時における典型的なCPLT信号の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】本実施の形態におけるAC100V用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【
図7】本実施の形態におけるAC200V用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【
図8】本実施の形態における、AC100V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図9】本実施の形態における、AC200V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図10】本実施の形態においてECUにより実行される処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態の変形例におけるAC200V用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【
図12】実施の形態の変形例における、AC200V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0020】
[本実施の形態]
<システム構成>
図1は、本実施の形態に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。電力供給システム10は、車両1と、放電コネクタ2と、電気機器3と、サーバ9とを備える。
【0021】
車両1は、V2Lを実施可能な車両である。本実施の形態における車両1は、電気機器3に交流(AC:Alternating Current)電力を放電可能に構成されている。より具体的には、車両1は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等である。
【0022】
放電コネクタ2は、VPC(Vehicle Power Connector)とも呼ばれ、車両1の車両インレット17に接続される。車両1からの放電電力は、放電コネクタ2と、電気機器3の電源ケーブル31とを介して機器本体32に供給される。本実施の形態に係る放電コネクタ2の詳細な構成については
図2、
図3、
図6、
図7にて説明する。
【0023】
電気機器3は、この例ではAC電力を消費することで動作する機器である。電気機器3の種類は特に限定されない。電気機器3は、家庭用電気機器(民生機器)に限らず、産業用電気機器(重電機器)であってもよい。電気機器3の動作電圧は、この例ではAC100V(本開示に係る「第1電圧」に相当)またはAC200V(本開示に係る「第2電圧」に相当)である。ただし、電気機器3の動作電圧は電気機器3の販売地域等に応じて異なり得る。電気機器3の動作電圧は、たとえばAC120VまたはAC240Vであってもよい。また、電気機器3は、直流(DC:Direct Current)電力を消費することで動作する機器であってもよい。
【0024】
サーバ9は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ91と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ92と、通信装置93とを含む。プロセッサ91は、車両1から電気機器3への放電制御に関する演算処理を実行するように構成されている。メモリ92は、プロセッサ91によって実行可能なプログラムを記憶する。サーバ9は、通信装置93を用いて車両1と双方向の無線通信を行うように構成されている。サーバ9は、車両1に対して指令を送信することにより、車両1の放電動作を制御可能である。
【0025】
図2は、車両1、放電コネクタ2および電気機器3の構成例を示す図である。車両1は、この例では電気自動車であって、モータジェネレータ11と、PCU(Power Control Unit)12と、車載バッテリ13と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)14と、放電リレー15と、車載インバータ16と、車両インレット17と、通信モジュール18と、ECU(Electronic Control Unit)19とを備える。
【0026】
モータジェネレータ11は、たとえば三相交流回転電機である。モータジェネレータ11は、車載バッテリ13から放電されたAC電力を用いて駆動軸を回転させる。また、モータジェネレータ11は回生制動によって発電することも可能である。モータジェネレータ11によって発電されたAC電力は、PCU12により直流(DC:Direct Current)電力に変換されて車載バッテリ13に充電される。
【0027】
PCU12は、モータジェネレータ11に電気的に接続されている。PCU12は、図示しないコンバータおよびインバータを含む。PCU12は、ECU19からの指令に従って、車載バッテリ13とモータジェネレータ11との間で双方向の電力変換を実行する。
【0028】
車載バッテリ13は、SMR14に電気的に接続されている。車載バッテリ13は、複数のセル(図示せず)を含む組電池である。各セルは、代表的にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池である。車載バッテリ13は、外部充電器(図示せず)から供給された電力またはモータジェネレータ11により発電された電力を蓄える。そして、車載バッテリ13は、車両1の走行時には、車両1の駆動力を発生させるためのDC電力をモータジェネレータ11に供給する。また、車載バッテリ13は、車両1の停車時には、AC/DC変換させるためのDC電力を車載インバータ16に供給する。なお、車載バッテリ13に代えて、電気二重層キャパシタなどのキャパシタが採用されてもよい。
【0029】
SMR14の一方端は、車載バッテリ13に電気的に接続されている。SMR14の他方端は、PCU12および放電リレー15を結ぶ電力線との間に電気的に接続されている。SMR14は、ECU19からの指令に応じて閉成/開放される。
【0030】
放電リレー15は、PCU12と車載インバータ16との間に電気的に接続されている。放電リレー15は、SMR14と同様に、ECU19からの指令に応じて閉成/開放される。SMR14が閉成され、かつ、放電リレー15が閉成された場合に、車載バッテリ13から車載インバータ16へのDC電力の供給が可能になる。
【0031】
車載インバータ16は、放電リレー15と車両インレット17との間に電気的に接続されている。車載インバータ16は、この例では双方向充電器であって、AC電力をDC電力に変換可能であるとともに、DC電力をAC電力に変換可能に構成されている。ただし、車載インバータ16は、AC電力をDC電力に変換する片方向充電器と、DC電力をAC電力に変換するACインバータ(いずれも図示せず)とを別々に含んでもよい。
【0032】
本実施の形態において、車載インバータ16は、ECU19からの指令に従って、AC電力の電圧を調整可能に構成されている。より具体的には、車載インバータ16は、100VのAC電力(より詳細には単相3線100VのAC電力)を出力したり、AC200VのAC電力(より詳細には単相3線200VのAC電力)を出力したりすることが可能に構成されている。車載インバータ16は、本開示に係る「電力変換装置」の一例である。車両1からの給電電力はDC電力であってもよい。この場合、本開示に係る「電力変換装置」は、DC/DCコンバータであってもよい。
【0033】
車両インレット17は、車載インバータ16に電気的に接続されている。車両インレット17は、外部充電器の充電ケーブルから延びる充電コネクタ(図示せず)を挿入可能に構成されているとともに、放電コネクタ2を挿入可能に構成されている。放電コネクタ2が車両インレット17に挿入された場合、車両インレット17は、放電コネクタ2に放電電力を出力するのに加えて、放電コネクタ2から後述するプロキシミティ・ディテクション信号信号を受けることも可能に構成されている。
【0034】
なお、車両インレット17が放電に用いられる場合には、「インレット」に代えて「アウトレット」と記載することも考えられるが、ここでは車両カプラに関する国際標準規格(IEC62196-2:2011)に準拠して「インレット」と記載する。車両インレット17は、本開示に係る「接続部」に相当する。
【0035】
通信モジュール18は、サーバ9(
図1参照)との無線通信が可能に構成されたDCM(Digital Communication Module)である。車両1は、通信モジュール18による通信により、各種データをサーバ9に送信したり、サーバ9から指令を受信したりできる。
【0036】
ECU19は、CPUなどのプロセッサ191と、ROMおよびRAMなどのメモリ192と、入出力ポート(図示せず)とを含む。ECU19は、様々なセンサ等からの信号に応じて、車両1が所望の状態となるように車載の機器類を制御する。本実施の形態においてECU19により実行される主要な制御としては、車両1から放電コネクタ2を介して電気機器3に放電する放電制御が挙げられる。なお、ECU19は、機能毎に2以上のECU(たとえば、車両1の充放電を制御する充放電ECU、車載バッテリ13を管理する電池ECU、車両1の走行制御を行うMGECUなど)に分割して構成されていてもよい。
【0037】
放電コネクタ2は、プラグ(車両接合部)21と、コンセント22と、放電コネクタ回路23とを含む。放電コネクタ回路23は、ラッチ解除ボタン24と、放電開始スイッチ25とを含む。
【0038】
プラグ21は、車両インレット17への挿入が可能に構成されている。プラグ21は、たとえば以下に説明する5つの端子を含む。
【0039】
図3は、放電コネクタ2のプラグ21に設けられた端子の一例を示す図である。プラグ21は、L1端子211と、L2端子212と、PE端子213と、CP端子214と、CS端子215とを含む。
【0040】
L1端子211およびL2端子212は、AC電力を伝送するための1対の交流端子である。PE端子213は、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続された場合に車両1のボディグランドに接続されるグランド端子である。CP端子214は、外部からの充電時にはコントロールパイロット(CPLT:Control Pilot)信号が伝送される信号端子である。CP端子214は、本開示に係る「信号端子」に相当する。CS端子215は、プロキシミティ・ディテクション(Proximity Detection)信号が伝送される端子である。プロキシミティ・ディテクション信号については
図4にて詳細に説明する。
【0041】
図2に戻り、コンセント22は、電気機器3の電源プラグ311を差し込み可能に構成されている。放電コネクタ回路23は、CPLT信号およびプロキシミティ・ディテクション信号を生成するための回路である。
【0042】
ラッチ解除ボタン24は、放電コネクタ2(プラグ21)と車両インレット17とのラッチ(固定)を解除するためのユーザ操作を受け付ける。より詳細には、ユーザがプラグ21を車両インレット17に挿入すると、車両インレット17とプラグ21とがラッチ機構により自動的にラッチされる。ユーザがラッチ解除ボタン24を操作した場合にラッチが解除され、プラグ21を車両インレット17から取り外すことが可能になる。
【0043】
放電開始スイッチ25は、車両インレット17から放電コネクタ2への放電を開始するためのスイッチである。ユーザが放電開始スイッチ25を操作すると、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧が変化する(詳細は後述)。この電圧変化を検出することで、ECU19は、ユーザ操作を検知する。ECU19は、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が2回連続して検知された場合に、車両インレット17から放電コネクタ2への放電を開始する。
【0044】
<プロキシミティ・ディテクション信号>
図4は、国際標準規格(IEC61851-1)に定義されたプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲を説明するための図である。放電コネクタ2と車両インレット17との接続状況は、接続状態、嵌合状態または未嵌合状態に分類される。たとえばIEC61851-1では、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲として、接続状態を示す電圧範囲と、嵌合状態を示す電圧範囲と、未嵌合状態を示す電圧範囲とが定義されている。
【0045】
接続状態とは、放電コネクタ2(プラグ21)が車両インレット17に挿入され、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17との間ですべての端子(
図3参照)が電気的に接続されており、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17とがラッチされている状態を意味する。嵌合状態とは、放電コネクタ2が車両インレット17に挿入され、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17との間ですべての端子が電気的に接続されているが、放電コネクタ2と車両インレット17とがラッチされていない状態を意味する。未嵌合状態とは、接続状態および嵌合状態以外の状態である。
【0046】
<コントロールパイロット信号>
図5は、充電時における典型的なCPLT信号の制御の一例を示すタイミングチャートである。ここでは、いずれも図示しないが、充電設備から車両1にAC電力を供給すべく、充電ケーブルの先端に設けられた充電コネクタが車両インレット17に接続される状況を例に説明する。横軸は経過時間を表す。縦軸は、CPLT信号が伝送される端子(
CP端子
214)の電圧を表す。
【0047】
初期時刻t0では、充電コネクタが車両インレット17に接続されていない。CPLT信号の電圧はV0である。充電ケーブル内に設置されたCCIDリレー(Charging Circuit Interrupt Device)は非導通状態である。
【0048】
時刻t1において充電コネクタが車両インレット17に接続されると、CPLT信号の電圧がV0からV1に低下する。これにより、充電ケーブル内のコントローラは、充電コネクタが車両インレット17に接続されたことを検知する。
【0049】
時刻t2において、コントローラは、上限電圧をV1として、所定の周波数およびデューティ比でCPLT信号が発振するように、充電ケーブル内の発振回路を制御する。車両1のECU19は、CPLT信号のデューティ比を検出することによって、充電ケーブルの定格電流を取得する。
【0050】
より具体的には、国際標準規格(IEC61851等)においては、CPLT信号の周波数として特定の固定値(1kHz)を用いることが規定されている。CPLT信号のデューティ比としては、10%から96%までの範囲内の値を用いることが規定されている。デューティ比が10%から85%までの範囲内である場合、定格電流は、デューティ比dに0.6Aを乗じた値により表される。一方、デューティ比が85%から96%までの範囲内である場合、定格電流は、デューティ比dから64%を差し引き、さらに2.5Aを乗じた値により表される。
【0051】
時刻t3において、電力供給開始に先立つ準備のための所定の処理(充電準備)が完了すると、ECU19は、CPLT信号の電圧をV1からV2に引き下げ、発振中のCPLT信号の上限電圧をV2にする。これに伴い、コントローラは、CCIDリレーを非導通状態から導通状態へと切り替える。その結果、充電設備から車両1へのAC電力の供給が可能になる。
【0052】
<放電コネクタの識別>
様々な電気機器3を利用可能とするために、電気機器3の動作電圧に応じた適切な電圧のAC電力を車両1から供給する要望が存在する。このような適切な電圧の電力供給を、できるだけ簡易な構成によって実現することが望ましい。
【0053】
そこで、本実施の形態において、電気機器3への電力供給に使用される放電コネクタ2が電気機器3の動作電圧に応じて準備される。より具体的には、AC100Vで動作する電気機器3への電力供給には、ある放電コネクタ2Aが使用される。AC200Vで動作する電気機器3への電力供給には、他の放電コネクタ2Bが用いられる。ECU19は、車両インレット17のCPLT信号の電圧に基づいて、放電コネクタ2A,2Bのうちのどちらの放電コネクタが車両インレット17に接続されているかをECU19が識別する。これにより、電気機器3に供給すべき電圧をECU19が決定し、適切な電圧のAC電力を電気機器3に供給することが可能になる。
【0054】
図6は、本実施の形態におけるAC100V用の放電コネクタ2Aの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図7は、本実施の形態におけるAC200V用の放電コネクタ2Bの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0055】
図6を参照して、AC100V用の放電コネクタ2Aは、AC100V用のコンセント22Aと、放電コネクタ回路23とを含む。放電コネクタ回路23は、ラッチ解除ボタン24と、放電開始スイッチ25と、抵抗R6,R7,Reとを含む。
【0056】
抵抗R7と抵抗Reとは並列接続されている。抵抗R6は、抵抗R7と抵抗Reとの並列回路に直列接続されている。ラッチ解除ボタン24は、抵抗Reに直列接続されている。放電開始スイッチ25は、抵抗Reに並列接続されている。放電開始スイッチ25は、たとえば、非操作時にはオープン(開放)であり、操作時にショート(短絡)するノーマリオフ型スイッチである。
【0057】
放電コネクタ2Aと車両インレット17とが接続状態である場合、車両インレット17の5V電源およびプルアップ抵抗R1によってCS端子215の電圧がプルアップされる。この例では、抵抗R6=39Ωであり、抵抗R7=430Ωであり、抵抗Re=51Ωである。このように各抵抗値を設定することで、未嵌合状態、嵌合状態および接続状態の各状態において、プロキシミティ・ディテクション信号を
図4に示した電圧範囲内で変化させることができる。
【0058】
一方、CP端子214は、オープンであり、他の回路は電気的に接続されていない。CP端子214の電圧レベル(=CPLT信号)は不定状態(ハイインピーダンス)である。
【0059】
図7を参照して、AC200V出力用の放電コネクタ2Bは、AC100V用のコンセント22Aに代えてAC200V用のコンセント22Bを含む。この例では、放電コネクタ回路23の構成は、AC100V用の放電コネクタ2Aにおける放電コネクタ回路23の構成と同等である。
【0060】
さらに、放電コネクタ2Bにおいては、CP端子214とCS端子215とが電気的に接続されている。したがって、CP端子214の電圧レベルは、CS端子215の電圧レベルと等しい。すなわち、CPLT信号は、プロキシミティ・ディテクション信号と同じように変化する。
【0061】
図8は、本実施の形態における、AC100V用の放電コネクタ2Aが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図9は、本実施の形態における、AC200V用の放電コネクタ2Bが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。横軸は経過時間を表す。縦軸は、上から順に、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作の有無(オン操作/オフ操作)、放電開始スイッチ25のショート/オープン、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧、CPLT信号の電圧、および、車載インバータ16から出力されるAC電力の電圧を表す。
【0062】
図8を参照して、ユーザがAC100V用の放電コネクタ2Aを車両インレット17に挿入すると、放電コネクタ2Aと車両インレット17とは自動的にラッチされる。このとき、放電コネクタ2Aと車両インレット17とは、未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、V1(
図4の例では未嵌合状態の電圧範囲を含む電圧範囲内の値)、V2、V3と変化する。V1は、
図4の例では未嵌合状態に対応する電圧範囲(4.301V~4.567V)を含む電圧範囲内の値である。V2は、嵌合状態に対応する電圧範囲(2.553V~2.944V)を含む電圧範囲内の値である。V3は、接続状態に対応する電圧範囲(1.359V~1.639V)を含む電圧範囲内の値である。
【0063】
続いてユーザは、車両1から電気機器3への電力供給を開始させるため、放電開始スイッチ25を2回続けてオン操作する。2回のオン操作を要求するのは誤操作防止のためである。このとき、ノーマリオフ型の放電開始スイッチ25の接点は、ショート、オープン、ショート、オープンと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、V3、V4、V3、V4と変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。この間、CPLT信号は常に不定状態である。
【0064】
図9を参照して、ユーザがAC200V用の放電コネクタ2Bを車両インレット17に挿入すると、放電コネクタ2Bと車両インレット17とは、図
8と同様に、未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、V1、V2、V3の順に変化する。
【0065】
続いて、ユーザが放電開始スイッチ25を2回続けてオン操作すると、放電開始スイッチ25の接点がショート、オープン、ショート、オープンと切り替わり、プロキシミティ・ディテクション信号がV3、V4、V3、V4と変化する。このとき、放電コネクタ2Bにおいては、CPLT信号は、プロキシミティ・ディテクション信号と同じようにV3、V4、V3、V4と変化する。このような電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0066】
図10は、本実施の形態においてECU19により実行される処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、たとえば予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。このフローチャートの実行時には、SMR14および放電リレー15は、いずれも閉成されている。各ステップは、ECU19によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU19内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0067】
S1において、ECU19は、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。より具体的には、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号が接続状態に対応する電圧範囲(
図4参照)内で2回変化したかどうかを判定する。放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が2回検出されていない場合(S1においてNO)、ECU19は、処理をメインルーチンに戻す。
【0068】
放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が2回検出された場合(S1においてYES)、ECU19は、CPLT信号がプロキシミティ・ディテクション信号と等しいかどうかを判定する(S2)。なお、CPLT信号がプロキシミティ・ディテクション信号と等しいとは、CPLT信号とプロキシミティ・ディテクション信号との間の電圧差が所定値以内であることを言う。プロキシミティ・ディテクション信号の電圧は、本開示に係る「基準電圧」の一例である。
【0069】
CPLT信号が
プロキシミティ・ディテクション信号と等しい場合(S2においてYES)、ECU19は、AC
100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S3)。これに対し、CPLT信号が
プロキシミティ・ディテクション信号と等しくない場合(S2においてYES)、より具体的に
図6の例では、CPLT信号が不定状態であり、CP端子214の電圧が開放電圧(ハイインピーダンス)である場合、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S4)。
【0070】
以上のように、本実施の形態において、ECU19は、CPLT信号に基づいて、車両インレット17に接続された放電コネクタ2の種別(放電コネクタ2がAC100V用の放電コネクタ2AかAC200V用の放電コネクタ2Bか)を識別する。より具体的には、ECU19は、CPLT信号とプロキシミティ・ディテクション信号とを比較する。CPLT信号がプロキシミティ・ディテクション信号と等しい場合、ECU19は、車両インレット17に接続されているのがAC200V用の放電コネクタ2Bであると判定する。CPLT信号が不定状態である場合(CP端子214の電圧が開放電圧)である場合、ECU19は、車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2Aであると判定する。この差は、CP端子214とCS端子215とが電気的に接続されているか否かという回路構成のシンプルな違いによって生じる。よって、本実施の形態によれば、簡易な構成で適切な電圧のAC電力を供給できる。
【0071】
なお、ECU19は、CP端子214の電圧を「所定電圧」と比較することで、AC100Vの出力を開始するかAC200Vの出力を開始するかを切り替えてもよい。所定電圧は、CPLT信号が不定状態である場合のCP端子の電圧(典型的には0V付近の低電圧)と、CPLT信号が
プロキシミティ・ディテクション信号に等しい場合の電圧(
図4参照)との間の値に定められる。ECU19は、CP端子214の電圧が所定電圧よりも低い場合、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する一方で、CP端子214の電圧が所定電圧よりも高い場合、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御できる。
【0072】
また、上記の所定電圧は、プロキシミティ・ディテクション信号に依存しなくてもよい。プロキシミティ・ディテクション信号以外の電圧源(たとえば3.3V電圧源、5V電圧源)から供給される電圧に応じた所定電圧を定めることができる。たとえば、AC100V用の放電コネクタ2AではCP端子214がオープンである一方で、AC200V用の放電コネクタではCP端子214に5V電圧が印加される場合には、所定電圧を、たとえば4Vに定めることができる。そして、ECU19は、CP端子214の電圧が所定電圧(4V)よりも高いか低いかを判定することで、車載インバータ16からのAC電力の電圧を切り替えることができる。
【0073】
[変形例]
図11は、実施の形態の変形例におけるAC200V用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。放電コネクタ2Cは、スイッチ26をさらに含む点において、実施の形態にて説明した放電コネクタ2B(
図7参照)と異なる。
【0074】
スイッチ26は、CP端子214とCS端子215との間に電気的に接続されている。スイッチ26は、放電開始スイッチ25と連動して動作するように構成されている。すなわち、放電開始スイッチ25がユーザによりオン操作されると、放電開始スイッチ25ともにスイッチ26もショートする。これにより、CP端子214とCS端子215とが等電位となる。一方、放電開始スイッチ25がユーザによりオン操作されていない場合には、スイッチ26はオープンである。
【0075】
図12は、実施の形態の変形例における、AC200V用の放電コネクタ2Cが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号およびCPLT信号の時間変化を示すタイムチャートである。実施の形態(
図9参照)では、CPLT信号がプロキシミティ・ディテクション信号と常に等しい状態で変化したのに対し、本変形例においては、放電開始スイッチ25がオン操作されている期間だけ、CPLT信号がプロキシミティ・ディテクション信号と等しくなる。それ以外の期間中はCPLT信号は不定状態である。
【0076】
放電開始スイッチ25がオン操作されていない場合、CP端子214は、放電コネクタ回路23からも車両インレット17側の回路(プルアップ回路等)からも電気的に遮断されている。したがって、これらの回路からCP端子214へのノイズの回り込みを抑制できる。その結果、放電開始スイッチ25がオン操作されていない期間中のCP端子214の電圧の誤検出に起因する不具合を防止できる。
【0077】
なお、
図7および
図11の回路構成では、CP端子214とCS端子215とが直接接続されているか、スイッチ26を介して接続されている例について説明した。しかし、CP端子214とCS端子215との間には他の回路が接続されていてもよい。たとえば、電圧レベルを変換する素子(分圧抵抗など)がCP端子214とCS端子215との間に接続されていてもよい。
【0078】
図9~
図11では、車両1のECU19がCPLT信号に基づいて放電コネクタ2の種別を識別すると説明した。しかし、当該識別の実行主体はECU19に限定されるものではなく、たとえばサーバ9であってもよい。車両1は、サーバ9にプロキシミティ・ディテクション信号の電圧およびCPLT信号の電圧をサーバ9に送信する。サーバ9は、CPLT信号の電圧とプロキシミティ・ディテクション信号の電圧とを比較することで放電コネクタ2の種別を識別し、その識別結果を車両1に送信する。これにより、AC100V/AC200Vのどちらで車載インバータ16を制御すべきかをサーバ9がECU19に指令できる。
【0079】
また、ユーザによる放電開始スイッチ25の操作が2回検出された場合に車載インバータ16からのAC電力の出力が開始されると説明した。しかし、ECU19は、放電開始スイッチ25の操作が1回だけ検出されたことを条件に車載インバータ16にAC電力の出力を開始させてもよい。
【0080】
さらに、放電開始にユーザによる放電開始スイッチ25の操作は必須ではない。放電コネクタ2に放電開始スイッチ25が設けられていなくてもよい。たとえば、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態になってから(放電コネクタ2が車両インレット17にラッチされてから)規定時間が経過した時点でのCPLT信号の電圧とプロキシミティ・ディテクション信号の電圧との比較結果に基づいて、車載インバータ16からのAC電力の出力が開始されてもよい。
【0081】
実施の形態1,2においては、車両1またはEVPS4からAC電力が給電される構成を例に説明した。しかし、車両1またはEVPS4からの給電電力はAC電力に限られず、DC電力であってもよい。
【0082】
本開示に係る電力供給技術は、車両に限らず、任意のエネルギー貯蔵管理システム(ESMS:Energy Storage and Management System)に対して適用可能である。たとえば移動可能な電池式の電源装置に本開示に係る電力供給技術を適用してもよい。
【0083】
今回開示された本実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した本実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10 電力供給システム、1 車両、11 モータジェネレータ、12 PCU、13 車載バッテリ、14 SMR、15 放電リレー、16 車載インバータ、17 車両インレット、18 通信モジュール、19 ECU、191 プロセッサ、192 メモリ、2,2A,2B,2C 放電コネクタ、21 プラグ、22,22A,22B コンセント、23 放電コネクタ回路、24 ラッチ解除ボタン、25 放電開始スイッチ、26 スイッチ、93 通信装置、211 L1端子、212 L2端子、213 PE端子、214 CP端子、215 CS端子、3 電気機器、31 電源ケーブル、311 電源プラグ、32 機器本体、9 サーバ、91 プロセッサ、92 メモリ、R1 プルアップ抵抗、R6,R7,Re 抵抗。