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特許7512974車両制御装置、車両、電力供給システム、プログラムおよび電力供給方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両、電力供給システム、プログラムおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 55/00 20190101AFI20240702BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20240702BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60L55/00
B60L53/16
H02J7/00 P
H02J7/00 J
H02J7/00 301B
H02J7/00 302A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021132280
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2023026864
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012697(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03744553(EP,A1)
【文献】特開2018-019453(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111081(WO,A1)
【文献】特開2018-207587(JP,A)
【文献】特許第4380776(JP,B1)
【文献】特許第5735050(JP,B2)
【文献】特許第5123419(JP,B1)
【文献】特開2017-229230(JP,A)
【文献】国際公開第2013/057775(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/059988(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/052963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0048485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両は、
電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、
前記放電コネクタが接続された場合に前記電力変換装置から出力された電力を前記放電コネクタに放電する接続部とを含み、
前記放電コネクタは、前記接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチを含み、
前記接続部は、前記放電開始スイッチに対する前記ユーザ操作に応じて電圧レベルが変化する識別端子を有し、
前記識別端子の電圧には、第1範囲と、前記第1範囲と異なる第2範囲と、前記第1範囲とも前記第2範囲とも異なる第3範囲とが存在し、
前記車両制御装置は、前記電力変換装置から出力される電力の電圧を選択するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記識別端子の電圧が前記第1範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する一方で、
前記識別端子の電圧が前記第2範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、前記第1電圧とは異なる第2電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する、車両制御装置。
【請求項2】
前記識別端子の電圧レベルは、前記放電コネクタと前記接続部との接続状況に応じて変化する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第3範囲は、互いに重複しない第4範囲と第5範囲とを含み、
前記プロセッサは、
前記識別端子の電圧が前記第1範囲と前記第4範囲との間で変化した場合、前記第1電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する一方で、
前記識別端子の電圧が前記第2範囲と前記第5範囲との間で変化した場合、前記第2電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する、請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記識別端子の電圧の前記第1範囲と前記第3範囲との間での変化が複数回検出された場合に、前記第1電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する一方で、
前記識別端子の電圧の前記第2範囲と前記第3範囲との間での変化が複数回検出された場合に、前記第2電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記識別端子は、IEC(International Electrotechnical Commission)61851-1に定義されたプロキシミティ・ディテクション(Proximity Detection)信号が伝送されるCS端子であり、
前記第1範囲および前記第2範囲の各々は、IEC61851-1において前記CS端子の電圧としては未定義の電圧範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両は、
電力の電圧を調整可能に構成された車載インバータと、
前記放電コネクタが接続された場合に前記車載インバータから出力された電力を前記放電コネクタに放電する車両インレットとを含み、
前記車両インレットは、前記放電コネクタと前記車両インレットとの接続状況に応じて電圧レベルが変化するプロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子を有し、
前記プロキシミティ・ディテクション信号には、第1範囲と、前記第1範囲と異なる第2範囲と、前記第1範囲とも前記第2範囲とも異なる第3範囲とが存在し、
前記車両制御装置は、前記車載インバータから出力される電力の電圧を選択するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記プロキシミティ・ディテクション信号が前記第1範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の出力を開始するように前記車載インバータを制御する一方で、
前記プロキシミティ・ディテクション信号が前記第2範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、前記第1電圧とは異なる第2電圧の電力の出力を開始するように前記車載インバータを制御する、車両制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両制御装置を備える、車両。
【請求項8】
請求項に記載の車両と、
前記放電コネクタとを備える、電力供給システム。
【請求項9】
車両に搭載されたコンピュータのプロセッサによって実行されると前記コンピュータに動作を行わせるプログラムであって、
前記車両は、
電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、
放電コネクタが接続された場合に前記電力変換装置から出力された電力を前記放電コネクタに放電する接続部とを含み、
前記放電コネクタは、前記接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチを含み、
前記接続部は、前記放電開始スイッチに対する前記ユーザ操作に応じて電圧レベルが変化する識別端子を有し、
前記識別端子の電圧には、第1範囲と、前記第1範囲と異なる第2範囲と、前記第1範囲とも前記第2範囲とも異なる第3範囲とが存在し、
前記動作は、
前記識別端子の電圧が前記第1範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御するステップと、
前記識別端子の電圧が前記第2範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、前記第1電圧とは異なる第2電圧の電力の出力を開始するように前記電力変換装置を制御するステップとを含む、プログラム。
【請求項10】
車両から外部に放電コネクタを介して電力を供給する電力供給方法であって、
前記車両は、前記放電コネクタが接続される接続部を含み、前記接続部から放電される電力の電圧を調整可能に構成され、
前記放電コネクタは、前記接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチを含み、
前記接続部は、前記放電開始スイッチに対する前記ユーザ操作に応じて電圧レベルが変化する識別端子を有し、
前記識別端子の電圧には、第1範囲と、前記第1範囲と異なる第2範囲と、前記第1範囲とも前記第2範囲とも異なる第3範囲とが存在し、
前記電力供給方法は、
前記識別端子の電圧が前記第1範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の放電を開始するステップと、
前記識別端子の電圧が前記第2範囲と前記第3範囲との間で変化した場合、前記第1電圧とは異なる第2電圧の電力の放電を開始するステップとを含む、電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両、電力供給システム、プログラムおよび電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部への電力供給が可能な車両が知られている。車両から屋内設備への電力供給はV2H(Vehicle to Home)とも呼ばれ、車両から電気機器への電力供給はV2L(Vehicle to Load)とも呼ばれる。V2HおよびV2Lに関する様々な技術が提案されている。たとえば特許第5123419号公報(特許文献1)は、電力供給を受ける電気機器と車両とを接続するコネクタを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5123419号公報
【文献】特許第4380776号公報
【文献】特許第5735050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な屋内設備または電気機器等を利用するために、屋内設備の使用電圧または電気機器の動作電圧に応じた適切な電圧の電力を供給する要望が存在する。特に、できるだけ簡易な構成によって、適切な電圧の電力を供給可能であることが望ましい。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、簡易な構成で適切な電圧の電力を供給可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る車両制御装置は、放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する。車両は、電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、放電コネクタが接続された場合に電力変換装置から出力された電力を放電コネクタに放電する接続部とを含む。接続部は、識別端子を有する。車両制御装置は、電力変換装置から出力される電力の電圧を選択するプロセッサを備える。プロセッサは、識別端子の電圧が第1範囲内である場合、第1電圧を選択する一方で、識別端子の電圧が第1範囲と異なる第2範囲内である場合、第1電圧とは異なる第2電圧を選択する。
【0007】
(2)識別端子の電圧レベルは、放電コネクタと接続部との接続状況に応じて変化する。
【0008】
(3)放電コネクタは、接続部からの放電を開始させるためのユーザ操作を受け付ける放電開始スイッチを含む。識別端子の電圧レベルは、放電開始スイッチに対するユーザ操作に応じて変化する。第1範囲とも第2範囲とも異なる第3範囲が存在する。プロセッサは、識別端子の電圧が第1範囲と第3範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する一方で、識別端子の電圧が第2範囲と第3範囲との間で変化した場合、第2電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する。
【0009】
(4)第3範囲は、互いに重複しない第4範囲と第5範囲とを含む。プロセッサは、識別端子の電圧が第1範囲と第4範囲との間で変化した場合、第1電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する一方で、識別端子の電圧が第2範囲と第5範囲との間で変化した場合、第2電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する。
【0010】
(5)プロセッサは、識別端子の電圧の第1範囲と第3範囲との間での変化が複数回検出された場合に、第1電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する一方で、識別端子の電圧の第2範囲と第3範囲との間での変化が複数回検出された場合に、第2電圧の電力の出力を開始するように電力変換装置を制御する。
【0011】
(6)識別端子は、たとえばIEC(International Electrotechnical Commission)61851-1に定義されたプロキシミティ・ディテクション(Proximity Detection)信号が伝送されるCS端子である。第1範囲および第2範囲の各々は、たとえばIEC61851-1においてCS端子の電圧としては未定義の電圧範囲である。
【0012】
(7)本開示の他の局面に係る車両制御装置は、放電コネクタを介して外部への放電が可能に構成された車両を制御する。車両は、電力の電圧を調整可能に構成された車載インバータと、放電コネクタが接続された場合に車載インバータから出力された電力を放電コネクタに放電する車両インレットとを含む。車両インレットは、放電コネクタと接続部との接続状況に応じて電圧レベルが変化するプロキシミティ・ディテクション信号が伝送されるCS端子を有する。車両制御装置は、車載インバータから出力される電力の電圧を選択するプロセッサを備える。プロセッサは、プロキシミティ・ディテクション信号が第1範囲内である場合、第1電圧を選択する一方で、プロキシミティ・ディテクション信号が第1範囲と異なる第2範囲内である場合、第1電圧とは異なる第2電圧を選択する。
【0013】
(8)本開示のさらに他の局面に係る車両は、上記の車両制御装置を備える。
【0014】
(9)本開示のさらに他の局面に係る電力供給システムは、上記の車両と、放電コネクタとを備える。
【0015】
(10)本開示のさらに他の局面に係るプログラムは、車両に搭載されたコンピュータのプロセッサによって実行されるとコンピュータに動作を行わせる。車両は、電力の電圧を調整可能に構成された電力変換装置と、放電コネクタが接続された場合に電力変換装置から出力された電力を放電コネクタに放電する接続部とを含む。接続部は、識別端子を有する。動作は、識別端子の電圧が第1範囲内である場合、第1電圧を選択するステップと、識別端子の電圧が第1範囲と異なる第2範囲内である場合、第1電圧とは異なる第2電圧を選択するステップとを含む。
【0016】
(11)本開示のさらに他の局面に係る放電コネクタは、車両に設けられた接続部に接続されるように構成されている。放電コネクタは、識別端子と、放電コネクタと接続部とが接続された場合、識別端子の電圧が第1範囲内になるように構成された第1回路と、放電コネクタと接続部とが接続された場合、識別端子の電圧が第1範囲と異なる第2範囲内になるように構成された第2回路と、第1回路および第2回路のうちの一方を識別端子に選択的に接続するように構成されたスイッチとを備える。
【0017】
(12)本開示のさらに他の局面に係る電力設備は、車両からの電力供給を受けることが可能に構成されている。車両は、接続部から出力される電力の電圧を調整可能に構成されている。電力設備は、識別端子を含み、接続部に接続可能に構成された放電コネクタと、制御装置とを備える。制御装置は、識別端子の電圧が第1範囲内である場合、接続部から第1電圧の電力を放電させるための指令を車両に送信する一方で、識別端子の電圧が第1範囲と異なる第2範囲内である場合、接続部から第1電圧とは異なる第2電圧の電力を放電させるための指令を車両に送信する。
【0018】
(13)本開示のさらに他の局面に係る電力供給方法は、車両から外部に放電コネクタを介して電力を供給する。車両は、放電コネクタが接続される接続部を含み、接続部から放電される電力の電圧を調整可能に構成されている。接続部は、識別端子を有する。電力供給方法は、識別端子の電圧が第1範囲内である場合、車両が接続部から第1電圧の電力を放電するステップと、識別端子の電圧が第1範囲と異なる第2範囲内である場合、車両が接続部から第1電圧とは異なる第2電圧の電力を放電するステップとを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、簡易な構成で適切な電圧の電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】車両、放電コネクタおよび電気機器の構成例を示す図である。
図3】放電コネクタの接続部に設けられた端子の一例を示す図である。
図4】国際規格(IEC61851-1)に定義されたプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲を説明するための図である。
図5】実施の形態1の実施例2におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。
図6】実施の形態1の実施例1におけるAC100V用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図7】実施の形態1の実施例1におけるAC200V出力用の放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図8】実施の形態1の実施例1における、AC100V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図9】実施の形態1の実施例1における、AC200V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図10】実施の形態1の実施例1においてECUにより実行される処理を示すフローチャートである。
図11】実施の形態1の実施例2におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。
図12】実施の形態1の実施例2における、AC100V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図13】実施の形態1の実施例2における、AC200V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図14】実施の形態1の実施例2においてECUにより実行される処理を示すフローチャートである。
図15】実施の形態1の実施例3におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。
図16】実施の形態1の実施例3における、AC100V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図17】実施の形態1の実施例3における、AC200V用の放電コネクタが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
図18】実施の形態1の実施例3においてECUにより実行される処理を示すフローチャートである。
図19】実施の形態1の変形例における放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図20】実施の形態2に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。
図21】車両およびEVPSの構成例を示す図である。
図22】実施の形態2における放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図23】V2Hにおける放電制御全体の流れを示す制御シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0022】
[実施の形態1]
実施の形態1においては、本開示の実施の形態に係る電力供給システムによりV2Lを実施する構成について説明する。
【0023】
<システム構成>
図1は、実施の形態1に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。電力供給システム10は、車両1と、放電コネクタ2と、電気機器3と、サーバ9とを備える。
【0024】
車両1は、V2Lを実施可能な車両である。本実施の形態における車両1は、電気機器3に交流(AC:Alternating Current)電力を放電可能に構成されている。より具体的には、車両1は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等である。
【0025】
放電コネクタ2は、VPC(Vehicle Power Connector)とも呼ばれ、車両1の車両インレット17に接続される。車両1からの放電電力は、放電コネクタ2と、電気機器3の電源ケーブル31とを介して機器本体32に供給される。本実施の形態に係る放電コネクタ2の詳細な構成については図2図3図7図8等にて説明する。
【0026】
電気機器3は、AC電力を消費することで動作する機器である。電気機器3の種類は特に限定されない。電気機器3は、家庭用電気機器(民生機器)に限らず、産業用電気機器(重電機器)であってもよい。電気機器3の動作電圧は、この例ではAC100V(本開示に係る「第1電圧」に相当)またはAC200V(本開示に係る「第2電圧」に相当)である。ただし、電気機器3の動作電圧は電気機器3の販売地域等に応じて異なり得る。電気機器3の動作電圧は、たとえばAC120VまたはAC240Vであってもよい。
【0027】
サーバ9は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ91と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ92と、通信装置93とを含む。プロセッサ91は、車両1から電気機器3への放電制御に関する演算処理を実行するように構成されている。メモリ92は、プロセッサ91によって実行可能なプログラムを記憶する。サーバ9は、通信装置93を用いて車両1と双方向の無線通信を行うように構成されている。サーバ9は、車両1に対して指令を送信することにより、車両1の放電動作を制御可能である。
【0028】
図2は、車両1、放電コネクタ2および電気機器3の構成例を示す図である。車両1は、この例では電気自動車であって、モータジェネレータ11と、PCU(Power Control Unit)12と、車載バッテリ13と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)14と、放電リレー15と、車載インバータ16と、車両インレット17と、通信モジュール18と、ECU(Electronic Control Unit)19とを備える。
【0029】
モータジェネレータ11は、たとえば三相交流回転電機である。モータジェネレータ11は、車載バッテリ13から放電されたAC電力を用いて駆動軸を回転させる。また、モータジェネレータ11は回生制動によって発電することも可能である。モータジェネレータ11によって発電されたAC電力は、PCU12により直流(DC:Direct Current)電力に変換されて車載バッテリ13に充電される。
【0030】
PCU12は、モータジェネレータ11に電気的に接続されている。PCU12は、図示しないコンバータおよびインバータを含む。PCU12は、ECU19からの指令に従って、車載バッテリ13とモータジェネレータ11との間で双方向の電力変換を実行する。
【0031】
車載バッテリ13は、SMR14に電気的に接続されている。車載バッテリ13は、複数のセル(図示せず)を含む組電池である。各セルは、代表的にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池である。車載バッテリ13は、外部充電器(図示せず)から供給された電力またはモータジェネレータ11により発電された電力を蓄える。そして、車載バッテリ13は、車両1の走行時には、車両1の駆動力を発生させるためのDC電力をモータジェネレータ11に供給する。また、車載バッテリ13は、車両1の停車時には、AC/DC変換させるためのDC電力を車載インバータ16に供給する。なお、車載バッテリ13に代えて、電気二重層キャパシタなどのキャパシタが採用されてもよい。
【0032】
SMR14の一方端は、車載バッテリ13に電気的に接続されている。SMR14の他方端は、PCU12および放電リレー15を結ぶ電力線との間に電気的に接続されている。SMR14は、ECU19からの指令に応じて閉成/開放される。
【0033】
放電リレー15は、PCU12と車載インバータ16との間に電気的に接続されている。放電リレー15は、SMR14と同様に、ECU19からの指令に応じて閉成/開放される。SMR14が閉成され、かつ、放電リレー15が閉成された場合に、車載バッテリ13から車載インバータ16へのDC電力の供給が可能になる。
【0034】
車載インバータ16は、放電リレー15と車両インレット17との間に電気的に接続されている。車載インバータ16は、この例では双方向充電器であって、AC電力をDC電力に変換可能であるとともに、DC電力をAC電力に変換可能に構成されている。ただし、車載インバータ16は、AC電力をDC電力に変換する片方向充電器と、DC電力をAC電力に変換するACインバータ(いずれも図示せず)とを別々に含んでもよい。
【0035】
本実施の形態において、車載インバータ16は、ECU19からの指令に従って、AC電力の電圧を調整可能に構成されている。より具体的には、車載インバータ16は、100VのAC電力(より詳細には単相3線100VのAC電力)を出力したり、AC200VのAC電力(より詳細には単相3線200VのAC電力)を出力したりすることが可能に構成されている。車載インバータ16は、本開示に係る「電力変換装置」の一例である。後述するように、車両1からの給電電力はDC電力であってもよい。この場合、本開示に係る「電力変換装置」は、DC/DCコンバータであってもよい。
【0036】
車両インレット17は、車載インバータ16に電気的に接続されている。車両インレット17は、外部充電器の充電ケーブルから延びる充電コネクタ(図示せず)を挿入可能に構成されているとともに、放電コネクタ2を挿入可能に構成されている。放電コネクタ2が車両インレット17に挿入された場合、車両インレット17は、放電コネクタ2に放電電力を出力するのに加えて、放電コネクタ2から後述するプロキシミティ・ディテクション信号信号を受けることも可能に構成されている。
【0037】
なお、車両インレット17が放電に用いられる場合には、「インレット」に代えて「アウトレット」と記載することも考えられるが、ここでは車両カプラに関する国際規格(IEC62196-2:2011)に準拠して「インレット」と記載する。車両インレット17は、本開示に係る「接続部」に相当する。
【0038】
通信モジュール18は、サーバ9(図1参照)との無線通信が可能に構成されたDCM(Digital Communication Module)である。車両1は、通信モジュール18による通信により、各種データをサーバ9に送信したり、サーバ9から指令を受信したりできる。
【0039】
ECU19は、CPUなどのプロセッサ191と、ROMおよびRAMなどのメモリ192と、入出力ポート(図示せず)とを含む。ECU19は、様々なセンサ等からの信号に応じて、車両1が所望の状態となるように車載の機器類を制御する。本実施の形態においてECU19により実行される主要な制御としては、車両1から放電コネクタ2を介して電気機器3に放電する放電制御が挙げられる。なお、ECU19は、機能毎に2以上のECU(たとえば、車両1の充放電を制御する充放電ECU、車載バッテリ13を管理する電池ECU、車両1の走行制御を行うMGECUなど)に分割して構成されていてもよい。
【0040】
放電コネクタ2は、プラグ(車両接合部)21と、コンセント22と、放電コネクタ回路23とを含む。放電コネクタ回路23は、ラッチ解除ボタン24と、放電開始スイッチ25とを含む。
【0041】
プラグ21は、車両インレット17への挿入が可能に構成されている。プラグ21は、たとえば以下に説明する5つの端子を含む。
【0042】
図3は、放電コネクタ2のプラグ21に設けられた端子の一例を示す図である。プラグ21は、L1端子211と、L2端子212と、PE端子213と、CP端子214と、CS端子215とを含む。
【0043】
L1端子211およびL2端子212は、交流電力を伝送するための1対の交流端子である。PE端子213は、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続された場合に車両1のボディグランドに接続されるグランド端子である。CP端子214は、CPLT(Control Pilot)信号が伝送される信号端子である。CS端子215は、プロキシミティ・ディテクション(Proximity Detection)信号が伝送される端子である。CS端子215は、本開示に係る「識別端子」に相当する。プロキシミティ・ディテクション信号については図4にて詳細に説明する。
【0044】
図2に戻り、コンセント22は、電気機器3の電源プラグ311を差し込み可能に構成されている。放電コネクタ回路23は、CPLT信号およびプロキシミティ・ディテクション信号を生成するための回路である。
【0045】
ラッチ解除ボタン24は、放電コネクタ2(プラグ21)と車両インレット17とのラッチ(固定)を解除するためのユーザ操作を受け付ける。より詳細には、ユーザがプラグ21を車両インレット17に挿入すると、車両インレット17とプラグ21とがラッチ機構により自動的にラッチされる。ユーザがラッチ解除ボタン24を操作した場合にラッチが解除され、プラグ21を車両インレット17から取り外すことが可能になる。
【0046】
放電開始スイッチ25は、車両インレット17から放電コネクタ2への放電を開始するためのスイッチである。ユーザが放電開始スイッチ25を操作すると、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧が変化する(詳細は後述)。この電圧変化を検出することで、ECU19は、ユーザ操作を検知する。ECU19は、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が2回連続して検知された場合に、車両インレット17から放電コネクタ2への放電を開始する。
【0047】
<プロキシミティ・ディテクション信号>
図4は、国際規格(IEC61851-1)に定義されたプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲を説明するための図である。放電コネクタ2と車両インレット17との接続状況は、接続状態、嵌合状態または未嵌合状態に分類される。
【0048】
接続状態とは、放電コネクタ2(プラグ21)が車両インレット17に挿入され、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17との間ですべての端子(図3参照)が電気的に接続されており、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17とがラッチされている状態を意味する。嵌合状態とは、放電コネクタ2が車両インレット17に挿入され、かつ、放電コネクタ2と車両インレット17との間ですべての端子が電気的に接続されているが、放電コネクタ2と車両インレット17とがラッチされていない状態を意味する。未嵌合状態とは、接続状態および嵌合状態以外の状態である。
【0049】
IEC61851-1では、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲として、接続状態を示す電圧範囲と、嵌合状態を示す電圧範囲と、未嵌合状態を示す電圧範囲とが定義されている。さらに、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲には、上記3つの定義済みの電圧範囲以外に、未定義の電圧範囲が存在する。具体的には、0Vから1.359Vまでの電圧範囲、1.639Vから2.553Vまでの電圧範囲、2.944Vから4.301Vまでの電圧範囲、および、4.567Vよりも高い電圧範囲は、いずれも未定義である。
【0050】
様々な電気機器3を利用可能とするために、電気機器3の動作電圧に応じた適切な電圧のAC電力を車両1から供給する要望が存在する。このような適切な電圧の電力供給を、できるだけ簡易な構成によって実現することが望ましい。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、電気機器3への電力供給に使用される放電コネクタ2が電気機器3の動作電圧に応じて準備される。より具体的には、AC100Vで動作する電気機器3への電力供給には、ある放電コネクタ2Aが使用される。AC200Vで動作する電気機器3への電力供給には、他の放電コネクタ2Bが用いられる。そして、図4に示した未定義の電圧範囲をプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲に新たに割り当てることによって、放電コネクタ2A,2Bのうちのどちらの放電コネクタが車両インレット17に接続されているかをECU19が識別する。これにより、電気機器3に供給すべき電圧をECU19が決定し、適切な電圧のAC電力を電気機器3に供給することが可能になる。未定義の電圧範囲の割り当て手法には様々なバリエーションが考えられる。以下、代表的な3つの実施例について順に説明する。
【0052】
[実施の形態1の実施例1]
図5は、実施の形態1の実施例1におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。実施例1では、プロキシミティ・ディテクション信号が6つの電圧範囲に区分される。6つの電圧範囲を高い順に「第1レンジ」~「第6レンジ」と記載する。なお、以下の具体的な電圧値は例示に過ぎないことを確認的に記載する。
【0053】
第1レンジとは、3.5Vから4.7Vまでの電圧範囲であって、放電コネクタ2と車両インレット17とが未嵌合状態であることを示す。第2レンジとは、2.0Vから3.5Vまでの電圧範囲であって、放電コネクタ2と車両インレット17とが嵌合状態であることを示す。第3レンジとは、1.2Vから2.0Vまでの電圧範囲であって、充電時に使用される。第4レンジ~第6レンジがIEC61851-1では未定義の0Vから1.359Vまでの電圧範囲に新たに定義された電圧範囲である。
【0054】
第4レンジとは、0.7Vから1.2Vまでの電圧範囲である。第4レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2Aであることを示す。さらに、第4レンジは、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていないことを示す。
【0055】
第5レンジとは、0.4Vから0.7Vまでの電圧範囲である。第5レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていることを示す。
【0056】
第6レンジとは、0.0Vから0.4Vまでの電圧範囲である。第6レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC200V用の放電コネクタ2Bであることを示す。さらに、第6レンジは、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていないことを示す。
【0057】
なお、実施例1において、第4レンジは、本開示に係る「第1範囲」に相当する。第6レンジは、本開示に係る「第2範囲」に相当する。第5レンジは、本開示に係る「第3範囲」に相当する。
【0058】
図6は、実施の形態1の実施例1におけるAC100V用の放電コネクタ2Aの構成の一例を示す回路ブロック図である。図7は、実施の形態1の実施例1におけるAC200V用の放電コネクタ2Bの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0059】
図6を参照して、AC100V用の放電コネクタ2Aは、放電コネクタ回路231を含む。放電コネクタ回路231は、ラッチ解除ボタン24と、放電開始スイッチ251と、抵抗R61,R71,Re1とを含む。
【0060】
抵抗R71と抵抗Re1とは並列接続されている。抵抗R61は、抵抗R71と抵抗Re1との並列回路に直列接続されている。ラッチ解除ボタン24は、抵抗Re1に直列接続されている。放電開始スイッチ251は、抵抗Re1に並列接続されている。放電開始スイッチ251は、非操作時にはオープン(開放)であり、操作時にショート(短絡)するノーマリオフ型スイッチである。
【0061】
放電コネクタ2Aと車両インレット17とが接続状態である場合、車両インレット17の5V電源およびプルアップ抵抗R1によってCS端子215の電圧がプルアップされる。この例では、抵抗R61=39Ωであり、抵抗R71=430Ωであり、抵抗Re1=51Ωである。このように各抵抗値を設定することで、プロキシミティ・ディテクション信号が放電開始スイッチ251の非操作時(オープン時)には第4レンジ内になり、放電開始スイッチ251の操作時(ショート時)には第5レンジ内になる。
【0062】
図7を参照して、AC200V出力用の放電コネクタ2Bは、放電コネクタ回路231に代えて放電コネクタ回路232を含む。放電コネクタ回路232は、ラッチ解除ボタン24と、放電開始スイッチ252と、抵抗R62,R72,Re2とを含む。
【0063】
放電コネクタ回路232の構成要素の接続関係は、放電コネクタ回路231の対応する構成要素の接続関係と同等である。すなわち、抵抗R72と抵抗Re2とは並列接続されている。抵抗R62は、抵抗R72と抵抗Re2との並列回路に直列接続されている。ラッチ解除ボタン24は、抵抗Re2に直列接続されている。放電開始スイッチ252は、抵抗Re2に並列接続されている。
【0064】
一方で、AC100V用の放電開始スイッチ251がノーマリオフ型スイッチであるのに対し、AC200V用の放電開始スイッチ252は、ノーマリオン型スイッチである。放電開始スイッチ252は、非操作時にはショートしており、操作時にオープンになる。
【0065】
この例では、抵抗R62=20Ωであり、抵抗R72=460Ωであり、抵抗Re2=20Ωである。このように各抵抗値を設定することで、放電コネクタ2Bと車両インレット17との接続状態におけるプロキシミティ・ディテクション信号が、放電開始スイッチ252の非操作時(ショート時)には第6レンジ内になり、放電開始スイッチ252の操作時(オープン時)には第5レンジ内になる。
【0066】
図8は、実施の形態1の実施例1における、AC100V用の放電コネクタ2Aが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。図9は、実施の形態1の実施例1における、AC200V用の放電コネクタ2Bが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。横軸は経過時間を表す。縦軸は、上から順に、放電開始スイッチ251,252に対するユーザ操作の有無(オン操作/オフ操作)、放電開始スイッチ251,252のショート/オープン、プロキシミティ・ディテクション信号、および、車載インバータ16から出力されるAC電力の電圧を表す。後述する図12図13等についても同様である。
【0067】
図8を参照して、ユーザがAC100V用の放電コネクタ2Aを車両インレット17に挿入すると、放電コネクタ2Aと車両インレット17とは自動的にラッチされる。このとき、放電コネクタ2Aと車両インレット17とは、未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第2レンジ、第4レンジの順に変化する。
【0068】
続いてユーザは、車両1から電気機器3への電力供給を開始させるため、放電開始スイッチ251を2回続けてオン操作する。2回のオン操作を要求するのは誤操作防止のためである。このとき、ノーマリオフ型の放電開始スイッチ251の接点は、ショート、オープン、ショート、オープンと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第5レンジ、第4レンジ、第5レンジ、第4レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0069】
図9を参照して、ユーザがAC200V用の放電コネクタ2Bを車両インレット17に挿入すると、放電コネクタ2Bと車両インレット17とは、図8と同様に、未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第2レンジ、第6レンジの順に変化する。
【0070】
続いて、ユーザが放電開始スイッチ252を2回続けてオン操作すると、ノーマリオン型の放電開始スイッチ251の接点は、オープン、ショート、オープン、ショートと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第5レンジ、第6レンジ、第5レンジ、第6レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0071】
図10は、実施の形態1の実施例1においてECU19により実行される処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、たとえば予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。このフローチャートの実行時には、SMR14および放電リレー15は、いずれも閉成されている。各ステップは、ECU19によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU19内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。後述する図14等のフローチャートについても同様である。
【0072】
S11において、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内であるかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内である場合(S11においてYES)、ECU19は、AC100V用の放電コネクタ2Aが車両インレット17に接続状態であると判定する(S12)。
【0073】
S13において、ECU19は、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。すなわち、ECU19は、図8に示したようなプロキシミティ・ディテクション信号の第4レンジから第5レンジへの切り替えが2回検出されたかどうかを判定する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化が検出された場合(S13においてYES)、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S14)。
【0074】
S11にてプロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内でない場合(S11においてNO)、ECU19は、処理をS15に進め、プロキシミティ・ディテクション信号が第6レンジ内であるかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号が第6レンジ内でない場合(S15においてNO)には、ECU19は処理をメインルーチンに戻す。プロキシミティ・ディテクション信号が第6レンジ内である場合(S15においてYES)、AC200V用の放電コネクタ2Bが車両インレット17に接続状態であると判定する(S16)。
【0075】
S17において、ECU19は、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。すなわち、ECU19は、図9に示したようにプロキシミティ・ディテクション信号の第6レンジから第5レンジへの切り替えが2回検出されたかどうかを判定する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化が検出された場合(S17においてYES)、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S18)。
【0076】
以上のように、実施例1において、ECU19は、国際規格IEC61851-1では未定義の電圧範囲内におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の仕方に基づいて、車両インレット17に接続された放電コネクタ2の種別(放電コネクタ2がAC100V用の放電コネクタ2AかAC200V用の放電コネクタ2Bか)を識別する。これにより、ECU19は、電気機器3の動作に適切な電圧のAC電力を放電コネクタ2を介して電気機器3に供給できる。プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の違いは、放電コネクタ回路23に含まれる3つの抵抗の抵抗値が異なることで生じる。よって、本実施例によれば、簡易な構成で適切な電圧のAC電力を供給できる。
【0077】
なお、図8図10では、車両1のECU19がプロキシミティ・ディテクション信号に基づいて放電コネクタ2の種別を識別すると説明した。しかし、当該識別の実行主体はECU19に限定されるものではなく、たとえばサーバ9であってもよい。車両1は、サーバ9にプロキシミティ・ディテクション信号の電圧をサーバ9に送信する。サーバ9は、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧に基づいて放電コネクタ2の種別を識別し、その識別結果を車両1に送信する。これにより、AC100V/AC200Vのどちらで車載インバータ16を制御すべきかをサーバ9がECU19に指令できる。
【0078】
また、ユーザによる放電開始スイッチ25の操作が2回検出された場合に車載インバータ16からのAC電力の出力が開始されると説明した。しかし、ECU19は、放電開始スイッチ25の操作が1回だけ検出されたことを条件に車載インバータ16にAC電力の出力を開始させてもよい。
【0079】
さらに、放電開始にユーザによる放電開始スイッチ25の操作は必須ではない。放電コネクタ2に放電開始スイッチ25が設けられていなくてもよい。たとえば、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態になってから(放電コネクタ2が車両インレット17にラッチされてから)規定時間が経過した場合に車載インバータ16からのAC電力の出力が開始されてもよい。
【0080】
[実施の形態1の実施例2]
実施例2においては、実施例1とは逆に、AC100V用の放電コネクタ2Aに設けられた放電開始スイッチ251がノーマリオン型であり、AC200V用の放電コネクタ2Bに設けられた放電開始スイッチ252がノーマリオフ型である構成例について説明する。放電コネクタ2A,2Bの回路構成は、放電開始スイッチ251,252の属性以外は図6および図7の回路ブロック図に示した構成と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0081】
図11は、実施の形態1の実施例2におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。実施例2においても実施例1と同様に、プロキシミティ・ディテクション信号が「第1レンジ」~「第6レンジ」に区分される。第1レンジ~第3レンジは、実施例1における第1レンジ~第3レンジ(図5参照)とそれぞれ同等である。また、第4レンジ~第6レンジの各々の電圧範囲の数値も、実施例1における対応するレンジの電圧範囲の数値と同等である。第4レンジ~第6レンジは、放電コネクタと車両インレット17との接続状態を示す点においても実施例1における第4レンジ~第6レンジと同等である。
【0082】
その一方で、実施例2における第4レンジは、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていることを示す点において、実施例1における第4レンジと異なる。実施例2における第5レンジは、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていないことを示す点において、実施例1における第4レンジと異なる。実施例2における第6レンジは、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われていることを示す点において、実施例1における第6レンジと異なる。
【0083】
実施例2においても実施例1と同様に、第4レンジが本開示に係る「第1範囲」に相当する。第6レンジが本開示に係る「第2範囲」に相当する。第5レンジが本開示に係る「第3範囲」に相当する。
【0084】
図12は、実施の形態1の実施例2における、AC100V用の放電コネクタ2Aが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。図13は、実施の形態1の実施例2における、AC200V用の放電コネクタ2Bが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。
【0085】
図12を参照して、AC100V用の放電コネクタ2Aと車両インレット17とは、未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第2レンジ、第5レンジの順に変化する。
【0086】
続いて、放電コネクタ2Aに設けられた放電開始スイッチ251をユーザが2回続けてオン操作すると、ノーマリオン型の放電開始スイッチ251の接点は、オープン、ショート、オープン、ショートと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第4レンジ、第5レンジ、第4レンジ、第5レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0087】
図13を参照して、AC200V用の放電コネクタ2Bと車両インレット17とも未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移する。これに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第2レンジ、第6レンジの順に変化する。
【0088】
続いて、放電コネクタ2Bに設けられた放電開始スイッチ252をユーザが2回続けてオン操作すると、ノーマリオフ型の放電開始スイッチ251の接点は、ショート、オープン、ショート、オープンと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第6レンジ、第5レンジ、第6レンジ、第5レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0089】
図14は、実施の形態1の実施例2においてECU19により実行される処理を示すフローチャートである。S21において、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号が第5レンジ内であるかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号が第5レンジ内でない場合(S21においてNO)には、ECU19は処理をメインルーチンに戻す。
【0090】
プロキシミティ・ディテクション信号が第5レンジ内である場合(S21においてYES)、ECU19は、これだけでは車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2AなのかAC200V用の放電コネクタ2Bなのかを識別できないものの、いずれかの放電コネクタが車両インレット17に接続状態であると判定する(S22)。
【0091】
S23において、ECU19は、放電開始スイッチ25(放電開始スイッチ251または252)に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号の第5レンジから第4レンジへの切り替えが2回検出された場合(図12参照)、ECU19は、車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2Aと判定し、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S24)。一方、プロキシミティ・ディテクション信号の第5レンジから第6レンジへの切り替えが2回検出された場合(図13参照)、ECU19は、車両インレット17に接続されているのがAC200V用の放電コネクタ2Bと判定し、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S25)。
【0092】
以上のように、実施例2においても、ECU19は、IEC61851-1では未定義の電圧範囲内におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の仕方に基づいて、車両インレット17に接続された放電コネクタ2の種別を識別する。これにより、ECU19は、電気機器3の動作に適切な電圧のAC電力を放電コネクタ2を介して供給できる。プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の違いは、放電コネクタ回路23に含まれる3つの抵抗の抵抗値が異なることで生じる。よって、本実施例によれば、簡易な構成で適切な電圧のAC電力を供給できる。
【0093】
実施例2では、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態に遷移した時点ではなく、放電開始スイッチ25に対するユーザ操作が行われた時点で、放電コネクタ2の種別が識別される。このように、放電コネクタ2の種別の識別タイミングは、放電コネクタ2と車両インレット17との接続状態への遷移以降の任意のタイミングとすることができる。
【0094】
[実施の形態1の実施例3]
実施例1,2では、IEC61851-1では未定義の0Vから1.359Vまでの電圧範囲をプロキシミティ・ディテクション信号に新たに割り当てる構成について説明した。実施例3においては、上記の電圧範囲に加えて別の未定義の電圧範囲をプロキシミティ・ディテクション信号に割り当てる構成について説明する。
【0095】
図15は、実施の形態1の実施例3におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧範囲の割り当てを説明するための図である。実施例3においては、プロキシミティ・ディテクション信号が「第1レンジ」~「第7レンジ」に区分される。以下の具体的な電圧値も例示である。
【0096】
第1レンジとは、3.7Vから4.7Vまでの電圧範囲であって、未嵌合状態を示す。第3レンジとは、2.2Vから3.2Vまでの電圧範囲であって、嵌合状態を示す。第5レンジとは、1.2Vから1.8Vまでの電圧範囲であって、充電時に使用される。これに対し、第2レンジ、第4レンジ、第6レンジおよび第7レンジが新たに定義された電圧範囲である。
【0097】
第2レンジとは、3.2Vから3.7Vまでの電圧範囲である。第2レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2Aであることを示す。さらに、第2レンジは、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われていないことを示す。
【0098】
第4レンジとは、1.8Vから2.2Vまでの電圧範囲である。第4レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC200V用の放電コネクタ2Bであることを示す。さらに、第4レンジは、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われていないことを示す。
【0099】
第6レンジとは、0.6Vから1.2Vまでの電圧範囲である。第6レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC100V用の放電コネクタ2Aであることを示す。さらに、第6レンジは、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われていることを示す。
【0100】
第7レンジとは、0.0Vから0.6Vまでの電圧範囲である。第7レンジは、放電コネクタ2と車両インレット17とが接続状態であることを示すとともに、車両インレット17に接続されているのがAC200V用の放電コネクタ2Bであることを示す。さらに、第7レンジは、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われていることを示す。
【0101】
実施例3において、第6レンジは、本開示に係る「第1範囲」に相当する。第7レンジは、本開示に係る「第2範囲」に相当する。第2レンジおよび第4レンジは、本開示に係る「第3範囲」に相当する。特に、第2レンジは、本開示に係る「第4範囲」に相当する。第4レンジは、本開示に係る「第5範囲」に相当する。
【0102】
図16は、実施の形態1の実施例3における、AC100V用の放電コネクタ2Aが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。図17は、実施の形態1の実施例3における、AC200V用の放電コネクタ2Bが使用される場合のプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を示すタイムチャートである。ここでは一例として、2つの放電開始スイッチ251,252が、いずれもノーマリオフ型とするが、任意の属性(ノーマリオン型/ノーマリオフ型)の放電開始スイッチ251,252を採用可能である。
【0103】
図16を参照して、AC100V用の放電コネクタ2Aと車両1とが未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移するのに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第3レンジ、第2レンジの順に変化する。
【0104】
続いて、放電コネクタ2Aに設けられた放電開始スイッチ251をユーザが2回続けてオン操作すると、ノーマリオフ型の放電開始スイッチ251の接点は、ショート、オープン、ショート、オープンと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第6レンジ、第2レンジ、第6レンジ、第2レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0105】
図17を参照して、AC200V用の放電コネクタ2Bと車両1とが未嵌合状態、嵌合状態、接続状態と遷移するのに伴い、プロキシミティ・ディテクション信号は、第1レンジ、第3レンジ、第4レンジの順に変化する。
【0106】
続いて、放電コネクタ2Bに設けられた放電開始スイッチ252をユーザが2回続けてオン操作すると、ノーマリオフ型の放電開始スイッチ251の接点は、ショート、オープン、ショート、オープンと切り替わる。そうすると、プロキシミティ・ディテクション信号は、第7レンジ、第4レンジ、第7レンジ、第4レンジと変化する。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化が検出された場合、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する。
【0107】
図18は、実施の形態1の実施例3においてECU19により実行される処理を示すフローチャートである。S31において、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号が第2レンジ内であるかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号が第2レンジ内である場合(S31においてYES)、ECU19は、AC100V用の放電コネクタ2Aが車両インレット17に接続状態であると判定する(S32)。
【0108】
S33において、ECU19は、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。すなわち、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号の第2レンジから第6レンジへの切り替えが2回検出されたかどうかを判定する(図16参照)。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化が検出された場合(S33においてYES)、ECU19は、AC100Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S34)。
【0109】
S31にてプロキシミティ・ディテクション信号が第2レンジ内でない場合(S31においてNO)、ECU19は、処理をS35に進め、プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内であるかどうかを判定する。プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内でない場合(S35においてNO)には、ECU19は処理をメインルーチンに戻す。プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内である場合(S35においてYES)、AC200V用の放電コネクタ2Bが車両インレット17に接続状態であると判定する(S36)。
【0110】
S37において、ECU19は、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が2回検出されたかどうかを判定する。すなわち、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号の第4レンジから第7レンジへの切り替えが2回検出されたかどうかを判定する(図17参照)。このようなプロキシミティ・ディテクション信号の時間変化が検出された場合(S37においてYES)、ECU19は、AC200Vの出力を開始するように車載インバータ16を制御する(S38)。
【0111】
以上のように、実施例3においても、ECU19は、IEC61851-1では未定義の電圧範囲内におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の仕方に基づいて、車両インレット17に接続された放電コネクタ2の種別を識別する。これにより、ECU19は、電気機器3の動作に適切な電圧のAC電力を放電コネクタ2を介して供給できる。プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の違いは、放電コネクタ回路23に含まれる3つの抵抗の抵抗値が異なることで生じる。よって、本実施例によれば、簡易な構成で適切な電圧のAC電力を供給できる。
【0112】
実施例1では、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われた場合の電圧範囲と、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われた場合の電圧範囲とが共通である(図5の第5レンジ参照)。また、実施例2では、放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われていない場合の電圧範囲と、放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われていない場合の電圧範囲とが共通である(図11の第5レンジ参照)。しかしながら、このように電圧範囲の一部を共通化することは必須ではない。実施例3のように、(1)放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われた場合、(2)放電開始スイッチ251に対するユーザ操作が行われていない場合、(3)放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われた場合、(4)放電開始スイッチ252に対するユーザ操作が行われていない場合の4通りの電圧範囲を別々に定義してもよい。ただし、電圧範囲の一部を共通化することで、将来の別の用途のために未定義の電圧範囲を広く残すことが可能になる。
【0113】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1の実施例1~3では、AC100V用の放電コネクタ2Aと、AC200V用の放電コネクタ2Bとが別々に準備される構成について説明した。本変形例においては、放電コネクタがAC100V出力/AC200V出力を切替可能に構成されている例について説明する。
【0114】
図19は、実施の形態1の変形例における放電コネクタの構成の一例を示す回路ブロック図である。放電コネクタ2Cは、AC100V用のコンセント22Aおよび放電コネクタ回路231と、AC200V用のコンセント22Bおよび放電コネクタ回路232と、出力切替ボタン261と、スイッチ262と、リレー263とを含む。コンセント22A,22Bおよび放電コネクタ回路231,232の構成は、図6および図7に示した構成と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0115】
出力切替ボタン261は、AC100V出力を選択するユーザ操作と、AC200V出力を選択するユーザ操作とを受け付ける。
【0116】
スイッチ262は、出力切替ボタン261に対するユーザ操作に応じて、CS端子215の接続先を放電コネクタ回路231と放電コネクタ回路232との間で切り替えるように構成されている。AC100V出力が選択された場合、スイッチ262は、CS端子215と放電コネクタ回路231とを電気的に接続する。一方、AC200V出力が選択された場合、スイッチ262は、CS端子215と放電コネクタ回路232とを電気的に接続する。
【0117】
リレー263は、出力切替ボタン261に対するユーザ操作に応じて、交流端子対(L1端子211およびL2端子212)の接続先をコンセント22Aとコンセント22Bとの間で切り替えるように構成されている。AC100V出力が選択された場合、リレー263は、交流端子対とコンセント22Aとを電気的に接続する。一方、AC200V出力が選択された場合、リレー263は、交流端子対とコンセント22Bとを電気的に接続する。
【0118】
変形例においても、プロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を、たとえば実施例1(図8および図9参照)のタイムチャートと同様に設定できる。あるいは、プロキシミティ・ディテクション信号の時間変化を、実施例2(図12および図13参照)または実施例3(図16および図17参照)のタイムチャートと同様に設定してもよい。また、ECU19により実行される処理としても、たとえば実施例1(図10参照)、実施例2(図14参照)または実施例3(図18参照)のフローチャートと同様に設定できる。よって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0119】
なお、放電コネクタ回路231は、本開示に係る「第1回路」に相当する。放電コネクタ回路232は、本開示に係る「第2回路」に相当する。スイッチ262は、本開示に係る「スイッチ」に相当する。
【0120】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、電力供給システムによりV2Hを実施する構成について説明する。
【0121】
図20は、実施の形態2に係る電力供給システムの全体構成を概略的に示す図である。電力供給システム20は、車両1と、EVPS(Electric Vehicle Power System)4と、サーバ9とを備える。
【0122】
車両1は、V2Hを実施可能な車両である。車両1の構成は、実施の形態1における車両1の構成と基本的に同等である。
【0123】
EVPS4は、車両1の外部充電設備であって、車両1との間で双方向の電力のやり取りが可能に構成されている。EVPS4は、家屋等の屋内配線5との間でも充放電の両方が可能に構成されている。車両1とEVPS4との間で充放電される電力の電圧は、この例ではAC100VまたはAC200Vであるが、たとえばAC120VまたはAC240Vであってもよい。EVPS4は、本開示に係る「電力設備」に相当する。
【0124】
図21は、車両1およびEVPS4の構成例を示す図である。EVPS4は、放電コネクタ2Dと、EVPS本体41とを含む。放電コネクタ2Dの構成は、コンセント22を含むない点において異なるものの、基本的には実施の形態1における放電コネクタ2A~2Cのうちのいずれかの構成(図6図7または図19参照)と同様である。
【0125】
EVPS本体41は、リレー411と、AC入力パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)412と、モード切替スイッチ413と、制御装置414とを含む。
【0126】
リレー411は、制御装置414からの指令に応じて、EV充電路とEV放電路とのうちの一方を放電コネクタ2Dのプラグ21に電気的に接続するように構成されている。EV充電路が選択された場合、リレー411は、EV充電路とプラグ21とを電気的に接続する一方で、EV放電路とプラグ21とを電気的に遮断する。EV放電路が選択された場合、リレー411は、EV放電路とプラグ21とを電気的に接続する一方で、EV充電路とプラグ21とを電気的に遮断する。
【0127】
AC入力パワーコンディショナ412は、制御装置414からの指令に従って、EV放電路を伝送される放電電力を系統電力に変換する。
【0128】
モード切替スイッチ413は、EVPS4の機能モードを選択するためのユーザ操作を受け付ける。EVPS4の機能モードは、「エネマネ用充電モード」と、「エネマネ用放電モード」と、「自立運転放電モード」とを含む。なお、エネマネとはエネルギーマネージメントの略である。
【0129】
エネマネ用充電モードとは、エネマネ機能により電力等が制御される充電モードである。エネマネ用充電モードでは、EVPS4(制御装置414)からの通信、具体的にはCPLT信号および/またはHLC(High Level Communication)に従って充電が行われる。エネマネ用放電モードとは、エネマネ機能により電力等が制御される放電モードである。エネマネ用放電モードでは、車載インバータ16から供給されるAC電力がEVPS4によって系統連系され、屋内配線5(家屋の負荷)に電力が供給される。エネマネ用放電モードでもEVPS4からの通信(CPLT信号およびHLC)に従って放電が行われる。エネマネ用充電モードとエネマネ用放電モードとを包括的に「常用モード」とも記載する。
【0130】
自立運転放電モードとは、自立専用コンセント(図示せず)に直接電力を供給するか、AC入力パワーコンディショナ412を介して分電盤の切替装置(図示せず)に直接電力を供給する放電モードである。自立運転放電モードでは、CPLT信号またはHLCによる通信制御が必要とされず、系統連系も行われない。以下に説明するように、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化に基づく放電コネクタ2Dの識別は、自立運転放電モードが選択されている場合に実施される。
【0131】
制御装置414は、CPUなどのプロセッサ414Aと、ROMおよびRAMなどのメモリ414Bと、通信インターフェース(図示せず)とを含む。制御装置414は、モード切替スイッチ413により選択された機能モードに応じて、リレー411およびAC入力パワーコンディショナ412を制御する。また、制御装置414は、通信インターフェースを介して、プロキシミティ・ディテクション信号および/またはCPLT信号を車両1のECU19との間でやり取りする。
【0132】
図22は、実施の形態2における放電コネクタ2Dの構成の一例を示す回路ブロック図である。放電コネクタ2Dは、放電コネクタ回路233を含む。放電コネクタ回路233は、自立運転放電モード選択時に使用される第1回路271と、常用モード選択時に使用される第2回路272とを含む。
【0133】
第1回路271の回路構成は、基本的には実施の形態1における放電コネクタ回路231(図6参照)または放電コネクタ回路232(図7参照)の回路構成と同等である。実施の形態2においても、第1回路271に含まれる各抵抗R6’R7’Reの抵抗値が国際規格IEC61851-1では未定義の電圧範囲内を考慮して適切な値に設計されている。これにより、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧が実施の形態1の実施例1~3と同様に調整されている。その結果、放電コネクタ2DがAC100V用かAC200V用かをECU19が識別可能になる。
【0134】
図23は、V2Hにおける放電制御全体の流れを示す制御シーケンス図である。本実施の形態における放電制御は、起動処理と、自立運転放電実行処理と、終了処理とを含む。
【0135】
起動処理では、ユーザにより車両1のイグニッションオフ(IG-OFF)操作が行われる。さらに、ユーザがモード切替スイッチ413を操作することで自立運転放電モードが選択された後、車両1とEVPS4とが放電コネクタ2を介して接続される。放電コネクタ2の接続に伴い、車両1のECU19が起動される。ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号に基づいて、放電コネクタ2の接続状況を判定する(プロキシミティ・ディテクション識別)。その後、ユーザによる車両1のイグニッションオン(IG-ON)操作が行われる。
【0136】
続く自立運転放電実行処理において、ECU19は、放電リレー15を閉成する。そして、ECU19は、プロキシミティ・ディテクション信号に基づいて、放電コネクタ2への出力電圧を決定し、車両インレット17および放電コネクタ2を介したEVPS4への放電が開始されるように車載インバータ16を制御する。この制御は、実施の形態1の実施例1~3にて説明した処理(図5図8図18)と同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。所定の条件が成立すると、ECU19は、放電を停止するように車載インバータ16を制御する。当該条件は、ユーザによりIG-OFF操作が行われたこと、ユーザにより車両インレット17から放電コネクタ2が取り外されたことなどを含み得る。
【0137】
最後に終了処理において、ECU19は、車載インバータ16からの出力電圧が規定値以下であることを確認した後に放電リレー15を開放する。ECU19は、放電リレー15の溶着診断を実施し、その後、その動作を停止する。
【0138】
以上のように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、ECU19は、国際規格IEC61851-1では未定義の電圧範囲内におけるプロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の仕方に基づいて、車両インレット17に接続された放電コネクタ2の種別を識別する。これにより、ECU19は、屋内配線5への電力供給に適切な電圧のAC電力を放電コネクタ2を介して供給できる。プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化の違いは、放電コネクタ回路23の抵抗値が異なることで生じる。よって、実施の形態2によれば、V2Hを実施する際にも簡易な構成で適切な電圧のAC電力を供給できる。
【0139】
なお、実施の形態2においては、プロキシミティ・ディテクション信号に基づいて放電コネクタ2への出力電圧を決定する主体は車両1に限定されず、EVPS4であってもよい。EVPS4の制御装置414は、車両1のECU19と同様に、プロキシミティ・ディテクション信号の電圧変化に基づいて放電コネクタ2の種別を識別できる。たとえば実施の形態1の実施例1と同様に、EVPS4の制御装置414は、プロキシミティ・ディテクション信号が第4レンジ内である場合、AC100Vを放電させるための指令を車両1に送信する一方で、プロキシミティ・ディテクション信号が第6レンジ内である場合、A2100Vを放電させるための指令を車両1に送信できる。制御装置414は、たとえばCPLT信号を用いることで、上記指令をECU19に送信可能である。
【0140】
また、実施の形態2においても実施の形態1の変形例(図19参照)にて説明したように、放電コネクタがAC100V出力/AC200V出力を切替可能に構成されていてもよい。
【0141】
実施の形態1,2においては、車両1またはEVPS4からAC電力が給電される構成を例に説明した。しかし、車両1またはEVPS4からの給電電力はAC電力に限られず、DC電力であってもよい。
【0142】
本開示に係る電力供給技術は、車両に限らず、任意のエネルギー貯蔵管理システム(ESMS:Energy Storage and Management System)に対して適用可能である。たとえば移動可能な電池式の電源装置に本開示に係る電力供給技術を適用してもよい。
【0143】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
10,20 電力供給システム、1 車両、2,2A,2B,2C,2D 放電コネクタ、11 モータジェネレータ、12 PCU、13 車載バッテリ、15 放電リレー、16 車載インバータ、17 車両インレット、18 通信モジュール、19 ECU、191 プロセッサ、192 メモリ、21 プラグ、211 L1端子、212 L2端子、213 PE端子、214 CP端子、215 CS端子、22,22A,22B コンセント、23,231,232,233 放電コネクタ回路、24 ラッチ解除ボタン、25,251,252 放電開始スイッチ、261 出力切替ボタン、262 スイッチ、263 リレー、271 第1回路、272 第2回路、3 電気機器、31 電源ケーブル、311 電源プラグ、4 EVPS、41 EVPS本体、411 リレー、412 入力パワーコンディショナ、413 モード切替スイッチ、414 制御装置、414A プロセッサ、414B メモリ、5 屋内配線、9 サーバ、91 プロセッサ、92 メモリ、93 通信装置、R6,R61,R62,R71,R72,Re1,Re2 抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23