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特許7512985通信方法、通信システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】通信方法、通信システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/04 20090101AFI20240702BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240702BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20240702BHJP
   H04W 72/04 20230101ALI20240702BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240702BHJP
   G16Y 10/75 20200101ALI20240702BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20240702BHJP
   H04W 72/566 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
H04W16/04
G08G1/09 V
H04W4/44
H04W72/04
G16Y10/40
G16Y10/75
H04W72/54
H04W72/566
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021141087
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034727
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴広
(72)【発明者】
【氏名】只熊 憲治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 啓介
(72)【発明者】
【氏名】玉川 周一
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】太田 峻
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕己
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/240238(WO,A1)
【文献】特開2006-311520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G08G 1/09
G16Y 10/40
G16Y 10/75
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔運転される第1車両に搭載された遠隔運転用の第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、
前記スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、
遠隔運転されない第2車両に搭載された第2通信端末と前記第1通信端末との間で通信リソースが共有されている場合、前記第2通信端末の通信速度を低下させ、
遠隔運転される前記第1車両よりも通信優先度が低い第3車両に搭載された遠隔運転用の第3通信端末と前記第1通信端末との間で前記通信リソースが共有され、前記第1通信端末と前記第2通信端末との間では前記通信リソースが共有されていない場合、前記第3通信端末の通信速度を低下させることと、を含む
ことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通信方法において、
前記第2通信端末の通信速度を低下させることは、前記第2通信端末の通信を停止させることを含む
ことを特徴とする通信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の通信方法において、
前記第1車両と前記第3車両との間で前記通信優先度に応じて前記通信リソースを分配する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の通信方法において、
前記通信優先度は、車両の使用用途の社会的重要度が高いほど高い
ことを特徴とする通信方法。
【請求項5】
請求項1又は3に記載の通信方法において、
前記通信優先度は、車両の使用用途の遅刻許容度が低いほど高い
ことを特徴とする通信方法。
【請求項6】
請求項1又は3に記載の通信方法において、
前記通信優先度は、車両の課金クラスが高いほど高い
ことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
請求項1又は3に記載の通信方法において、
前記通信優先度は、車両の車速が高いほど高い
ことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
通信システムであって、
少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、
前記少なくとも1つのメモリと結合された少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
遠隔運転される第1車両に搭載された遠隔運転用の第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、
前記スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、
遠隔運転されない第2車両に搭載された第2通信端末と前記第1通信端末との間で通信リソースが共有されている場合、前記第2通信端末の通信速度を低下させ、
遠隔運転される前記第1車両よりも通信優先度が低い第3車両に搭載された遠隔運転用の第3通信端末と前記第1通信端末との間で前記通信リソースが共有され、前記第1通信端末と前記第2通信端末との間では前記通信リソースが共有されていない場合、前記第3通信端末の通信速度を低下させることと、を実行させるように構成された
ことを特徴とする通信システム。
【請求項9】
プログラムであって、
遠隔運転される第1車両に搭載された遠隔運転用の第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、
前記スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、
遠隔運転されない第2車両に搭載された第2通信端末と前記第1通信端末との間で通信リソースが共有されている場合、前記第2通信端末の通信速度を低下させ、
遠隔運転される前記第1車両よりも通信優先度が低い第3車両に搭載された遠隔運転用の第3通信端末と前記第1通信端末との間で前記通信リソースが共有され、前記第1通信端末と前記第2通信端末との間では前記通信リソースが共有されていない場合、前記第3通信端末の通信速度を低下させることと、をコンピュータに実行させるように構成された
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔運転車両が遠隔運転される環境での移動体通信に用いて好適な通信方法、通信システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人車両などの移動体の遠隔運転に関する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術は、高い移動速度においても、移動体の遠隔操作を直感的にかつ的確に行えるようにすることを課題とする。この課題に対する解決手段として、特許文献1に記載の技術では、まず、移動体と遠隔操作装置との間の通信遅延時間が推定される。次に、移動領域の画像が取得されてから所要時間が経過するまでの移動体の移動経路、及び推定遅延時間に基づいて、遠隔操作装置により移動体を制御する時刻における移動体位置が推定される。そして、推定された移動体位置に対応する旋回操作基準点が表示部に表示される。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の技術は、移動体と遠隔操作装置との間に通信遅延があることを前提とした技術であって、通信遅延そのものを抑制するものではない。また、特許文献1には、遠隔運転において通信遅延とともに重要な性能であるスループットの低下を抑制することについても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-061346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、車両の遠隔運転時のスループットの低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は通信方法を提供する。本開示の通信方法は、遠隔運転される第1車両に搭載された第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、第1通信端末と通信リソースを共有する第2通信端末の通信速度を低下させることとを含む。
【0007】
本開示は通信方法において、第2通信端末の通信速度を低下させることは、第2通信端末の通信を停止させることを含んでもよい。
【0008】
本開示の通信方法において、第2通信端末は、遠隔運転されない車両に搭載された通信端末であってもよい。
【0009】
また、本開示の通信方法において、第2通信端末は、遠隔運転される第2車両に搭載された通信端末であり、第1車両は、第2車両よりも通信優先度が高い車両であってもよい。この場合、第1車両と第2車両との間で通信優先度に応じて通信リソースを分配してもよい。通信優先度は、車両の使用用途の遅刻許容度が低いほど高くしてもよいし、車両の課金クラスが高いほど高くしてもよいし、車両の車速が高いほど高くしてもよい。
【0010】
本開示は通信システムを提供する。本開示の通信システムは、少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのメモリと結合された少なくとも1つのプロセッサとを備える。上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、遠隔運転される第1車両に搭載された第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、第1通信端末と通信リソースを共有する第2通信端末の通信速度を低下させることとを実行させるように構成されている。
【0011】
さらに、本開示はプログラムを提供する。本開示のプログラムは、遠隔運転される第1車両に搭載された第1通信端末のスループットの低下を検知或いは推定することと、スループットの低下が検知或いは推定されたことを受けて、第1通信端末と通信リソースを共有する第2通信端末の通信速度を低下させることとをコンピュータに実行させるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示の通信方法、通信システム、及びプログラムによれば、遠隔運転される第1車両に搭載された第1通信端末にスループットの低下が生じた場合、第1通信端末と通信リソースを共有する第2通信端末の通信速度を低下させる。第2通信端末の通信速度を低下させることで通信リソースに余裕が生じ、第1通信端末のスループットの低下は解消されるか緩和される。つまり、本開示の技術によれば、車両の遠隔運転時のスループットの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る通信方法を説明する図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る通信方法を説明する図である。
図4】本開示の第2実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る通信方法を説明する図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る通信方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。
【0015】
1.第1実施形態
1-1.通信システムの構成
図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図である。通信システム2は、遠隔運転車両10の遠隔運転のための通信に利用される無線通信システムである。遠隔運転車両10は通信端末を備え、基地局32との間で無線通信を行う。基地局32は、遠隔運転車両10だけでなく、基地局32の電波が届く通信エリア34内であれば、通信端末を備えた通常の車両(遠隔運転車両ではない車両)20やスマートフォン22のような携帯型の通信端末とも通信することができる。本実施形態では、遠隔運転車両10は第1車両に該当し、遠隔運転車両10が備える通信端末は第1通信端末に該当する。また、車両20が備える通信端末とスマートフォン22は第2通信端末に該当する。
【0016】
基地局32は無線通信サービスを提供する通信事業者30に接続されている。通信事業者30によって提供される無線通信サービスは、例えば、4G、LTE、5Gなどである。無線通信を利用してユーザにサービスを提供する各種のサービス事業者は、通信事業者30を介して情報の送受信を行う。図1には、サービス事業者として、遠隔運転サービスを提供する遠隔運転センタ40の他に、コネクティッドサービスセンタ50及び動画配信事業者52が例示されている。
【0017】
遠隔運転センタ40は、遠隔コクピット42とユーザである遠隔運転車両10とを接続する。遠隔オペレータ44は、遠隔コクピット42から遠隔運転車両10を遠隔運転する。遠隔運転車両10から遠隔コクピット42への上りの通信では、車載カメラで撮像された遠隔運転車両10の周囲のカメラ画像、車載マイクで集音された遠隔運転車両10の周囲の音声、及び、遠隔運転車両10の車両状態(車速、故障の有無など)を含む各種の情報が送信される。遠隔コクピット42から遠隔運転車両10への下りの通信では、ハンドル角、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ウィンカなどの操作情報が送信される。遠隔コクピット42と遠隔運転車両10との通信では、上りの通信のほうが下りの通信よりもトラフィック量が多い。特に、カメラ画像のトラフィック量は上りの通信において支配的である。
【0018】
コネクティッドサービスセンタ50は、ユーザである車両20に対して安全な運転や快適な運転のための様々なサービスを提供する。例えば、通信による車両20の状態の遠隔管理、車両20のナビゲーションシステムの地図情報の更新、リアルタイム情報によるナビゲーションなどのサービスが提供される。コネクティッドサービスセンタ50と車両20との通信では、地図情報のダウンロードなどが行われる下りの通信のほうが上りの通信よりもトラフィック量が多い。
【0019】
動画配信事業者52は、ユーザであるスマートフォン22に対して動画コンテンツや画像を含む様々な情報を配信する。動画コンテンツや画像の配信はスマートフォン22からの要求に応じて行われる。また、スマートフォン22から動画配信事業者52へ動画や画像がアップロードされる場合もある。ただし、動画配信事業者52とスマートフォン22との通信では、大容量の動画コンテンツや画像を含む下りの通信のほうが上りの通信よりもトラフィック量が多い。なお、動画配信事業者52からの動画コンテンツや画像の配信は、車両20の通信端末に対しても行うことができるし、遠隔運転車両10の通信端末に対しても行うことができる。
【0020】
ユーザ10,20,22とサービス事業者40,50,52との間の通信は、通信事業者30が有する通信制御サーバ310によって制御される。通信制御サーバ310は通信事業者30の施設に設けられていてもよいし、クラウドに設けられていてもよい。一例として、通信制御サーバ310は、プロセッサ312とプロセッサ312に結合されたメモリ314とを備えている。メモリ314には、プロセッサ312で実行可能なプログラム316とそれに関連する種々の情報とが記憶されている。プログラム316がプロセッサ312で実行されることで、通信システム2を管理し通信状態を制御するための種々の機能が通信制御サーバ310において実現される。
【0021】
1-2.通信方法
上記構成を有する通信システム2では、遠隔運転車両10は通常の車両20やスマートフォン22などの他の通信端末と通信リソースを共有する。詳しくは、遠隔運転車両10と通常の車両20とスマートフォン22が同一の通信エリア34に入っている場合、その通信エリア34を形成する基地局32の通信容量が遠隔運転車両10と通常の車両20とスマートフォン22との間で共有される。
【0022】
しかし、基地局32の通信容量は有限である。伝送される情報のトラフィック量が基地局32の通信容量を越えた場合、通信リソースのひっ迫によって通信エリア34内の通信環境は悪化する。その結果、遠隔運転車両10の遠隔運転に必要な情報に遅延が生じ、遠隔運転が困難になる場合がある。例えば、車載カメラのカメラ画像が遠隔コクピット42に伝わるまでの時間遅延が大きいほど、遠隔運転車両10の挙動とそれに対する遠隔オペレータ44の判断のタイミングとにずれが生じてしまう。また、遠隔コクピット42のハンドル操作の情報が遠隔運転車両10に伝わるまでの時間遅延が大きいほど、遠隔運転による遠隔運転車両10の運動の制御は難しくなる。
【0023】
通信環境の悪化によって遠隔運転の困難性が増大した場合、遠隔コクピット42では遠隔運転車両10の車速を下げて運転せざるを得ない。さらに、通信環境の悪化の状況次第ではそもそも遠隔運転を続けること自体が困難になり、遠隔運転車両10を停車せざるを得なくなる場合もある。ゆえに、遠隔運転車両10が参加する通信エリア34では、遠隔運転車両10に対して良好な通信環境を与えることが望まれている。
【0024】
本実施形態に係る通信方法は、上記のように構成された通信システム2で実行される通信方法であって、遠隔運転車両10の遠隔運転時のスループットの低下を抑制することを目的として実行される。以下、本実施形態に係る通信方法について図2及び図3を用いて具体的に説明する。
【0025】
本実施形態に係る通信方法では、まず、遠隔運転車両10のスループットの低下を検知することが行われる。遠隔運転車両10のスループットの低下とは、詳しくは、遠隔運転車両10に搭載された通信端末のスループットの低下を意味する。図2に示す例では、ステップS11Aにおいて、スループットの低下が遠隔運転車両10に搭載された通信端末によって検知される。スループットの計算方法には限定は無い。例えばRTTの測定結果を用いてスループットを計算してもよい。ステップS12Aでは、スループットの低下の検知を受けて遠隔運転車両10から遠隔運転センタ40へ検知結果が伝達される。そして、ステップS13Aでは、スループットの低下が遠隔運転センタ40から通信事業者30へ伝達される。
【0026】
本実施形態に係る通信方法では、遠隔運転車両10のスループットの低下を推定することも行われる。遠隔運転車両10でスループットが低下した場合、遠隔運転車両10と通信している遠隔コクピット42でもスループットの低下は起きる。また、遠隔運転車両10でスループットが低下した場合、遠隔運転車両10と通信リソースを共有している通常の車両20やスマートフォン22でもスループットの低下は起きる。つまり、遠隔コクピット42や通信エリア34の他の通信端末でスループットの低下を検知することで、遠隔運転車両10のスループットの低下を推定することができる。
【0027】
図2に示す例では、ステップS11Bにおいて、スループットの低下が遠隔コクピット42によって検知される。ステップS12Bでは、スループットの低下の検知を受けて遠隔コクピット42から遠隔運転センタ40へ検知結果が伝達される。そして、ステップS13Bでは、スループットの低下が遠隔運転センタ40から通信事業者30の通信制御サーバ310へ伝達される。また、図2に示す例では、ステップS11Cにおいて、スループットの低下が通信エリア34内のスマートフォン22によって検知される。ステップS12Cでは、スループットの低下の検知を受けてスマートフォン22から動画配信事業者52へ検知結果が伝達される。そして、ステップS13Bでは、スループットの低下が動画配信事業者52から通信制御サーバ310へ伝達される。
【0028】
このように本実施形態では、遠隔運転車両10のスループットの低下が検知或いは推定されたことが通信制御サーバ310へ伝達される。低下した遠隔運転車両10のスループットを再び上昇させるためには、通信エリア34内において遠隔運転車両10以外のトラフィック量を低減させることが効果的である。トラフィック量を低減させれば通信リソースに余裕が生じ、遠隔運転車両10のスループットの低下か解消されるか少なくとも緩和される。そこで、通信制御サーバ310は、遠隔運転センタ40以外のサービス事業者に対し、遠隔運転車両10に対して通信リソースを譲るよう協力を要請する。
【0029】
図3に示す例では、ステップS14Xにおいて、通信制御サーバ310から動画配信事業者52に対して協力要請が出される。ステップS15Xでは、通信制御サーバ310からの協力要請を受けて、動画配信事業者52はスマートフォン22との間の通信速度を低下させる。具体的には、スマートフォン22からの要求を受けて配信していた動画ストリームの速度を低下させたり圧縮率を増大させたりする。また、図3に示す例では、ステップS14Yにおいて、通信制御サーバ310からコネクティッドサービスセンタ50に対して協力要請が出される。ステップS15Yでは、通信制御サーバ310からの協力要請を受けて、コネクティッドサービスセンタ50は車両20との通信を一時停止する。例えば、ナビゲーションシステムへの地図情報のダウンロードを一時停止させる。
【0030】
以上の処理が行われることで通信リソースに余裕が生じ、遠隔運転車両10のスループットの低下は解消されるか緩和される。つまり、本実施形態に係る通信方法によれば、遠隔運転車両10の遠隔運転時のスループットの低下を抑制することができる。なお、通信制御サーバ310がどのサービス事業者に対してどのような協力要請を行うかは、現に生じている遠隔運転車両10のスループットの低下の程度によって決めてよい。図3に示す例では、スループットの低下があまり大きくない場合には、コネクティッドサービスセンタ50への協力要請はなくしてもよいし、スループットの低下が非常に大きい場合には、動画配信事業者52に動画の配信を停止するよう要請してもよい。
【0031】
2.第2実施形態
2-1.通信システムの構成
図4は、第2実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図である。本実施形態に係る通信システム4を構成する要素のうち、第1実施形態に係る通信システム2と共通する要素には同一の符号を付している。本実施形態に係る通信システム4と第1実施形態に係る通信システム2との違いは、通信エリア34において通信リソースを共有する通信端末にある。
【0032】
本実施形態では、複数の遠隔運転車両10A,10B,10Cが通信エリア34内に存在し、それ以外の通信端末は通信エリア34内に存在しない。つまり、本実施形態では、基地局32の通信リソースは遠隔運転車両10A,10B,10Cのみで共有される。遠隔運転車両10A,10B,10Cはそれぞれ遠隔運転センタ40を介して遠隔コクピット42A,42B,42Cに接続され、遠隔オペレータ44A,44B,44Cによって遠隔運転される。なお、基地局32と遠隔運転センタ40との間には第1実施形態と同様に通信会社が存在するが、図4には示されていない。
【0033】
遠隔運転センタ40は遠隔運転サーバ410を備える。ただし、遠隔運転サーバ410は遠隔運転センタ40の施設に設けられていてもよいし、クラウドに設けられていてもよい。一例として、遠隔運転サーバ410は、プロセッサ412とプロセッサ412に結合されたメモリ414とを備えている。メモリ414には、プロセッサ412で実行可能なプログラム416とそれに関連する種々の情報とが記憶されている。プログラム416がプロセッサ412で実行されることで、種々の機能が遠隔運転サーバ410において実現される。
【0034】
遠隔運転サーバ410は、遠隔コクピット42A,42B,42Cを管理する。個々の遠隔運転車両10A,10B,10Cの運転状態は個々の遠隔コクピット42A,42B,42Cから制御される。遠隔運転サーバ410は、遠隔運転車両10A,10B,10Cの運転状態が全体として最適化されるように、遠隔コクピット42A,42B,42Cから出される要求を調整、調停する機能を備える。
【0035】
2-2.通信方法
上記構成を有する通信システム4では、遠隔運転車両10A,10B,10C同士が通信リソースを共有する。本実施形態でも基地局32の通信容量と伝送される情報のトラフィック量との関係によっては、通信リソースのひっ迫によって通信エリア34内の通信環境が悪化する場合がある。その場合、遠隔運転車両10A,10B,10Cの遠隔運転に必要な情報に遅延が生じ、遠隔運転が困難になる可能性がある。
【0036】
第1実施形態では、遠隔運転車両のスループットの低下が検知或いは推定された場合、遠隔運転車両以外の通信端末の通信速度を低下させることによって、通信リソースに余裕を生させている。しかし、本実施形態では、通信エリア34には遠隔運転車両10A,10B,10Cしか存在しないため、他の通信端末に通信リソースを譲らせることはできない。
【0037】
そこで、本実施形態に係る通信方法は、遠隔運転車両10A,10B,10Cの中で通信優先度を決定し、通信優先度が高い遠隔運転車両に優先的に通信リソースを割り当てる。本実施形態では、通信優先度が最も高い遠隔運転車両が第1車両に該当し、通信優先度が最も高い遠隔運転車両以外の遠隔運転車両が遠隔運転される第2車両に該当する。通信優先度は、以下のように様々な観点から決定することができる。
【0038】
通信優先度を決定する第1の観点は、車両の使用用途の社会的重要度である。例えば、救急車のような緊急車両と、バスのような公共交通車両と、プライベート車両とで社会的重要度を比較した場合、最も社会的重要度が高い車両は緊急車両であり、次に社会的重要度が高い車両は公共交通車両である。社会的重要度が高い車両ほど通信優先度は高く設定される。各遠隔運転車両10A,10B,10Cの使用用途及びその社会的重要度は遠隔運転サーバ410に予め登録されている。
【0039】
通信優先度を決定する第2の観点は、車両使用用途の遅刻許容度、つまり、定刻或いは予約時刻に対する遅れが許される度合いである。例えば、通勤・通学用の車両は日常使用の車両よりも遅刻許容度は低い。また、公共交通車両や観光用の車両も日常使用の車両より遅刻許容度は低い。遅刻許容度が低い車両ほど通信優先度は高く設定される。各遠隔運転車両10A,10B,10Cの使用用途及びその遅刻許容度は遠隔運転サーバ410に予め登録されている。
【0040】
通信優先度を決定する第3の観点は、車両の課金クラスである。遠隔運転サービスを受けるためにユーザはサービス利用料金を支払っている。サービス利用料金にはいくつかのクラスが設けられ、支払う利用料金が高額であるほど通信優先度は高く設定される。つまり、本実施形態に係る通信方法では、ユーザが常に安定した遠隔運転サービスを受けたいのであれば、より高いサービス利用料金が課金されるクラスに入れば良いということになる。各遠隔運転車両10A,10B,10Cの課金クラスは遠隔運転サーバ410に予め登録されている。
【0041】
通信優先度を決定する第4の観点は、車両の車速である。車速が高いほど通信遅れが遠隔運転時の車両の挙動に与える影響は大きく、また、遠隔運転の難易度も上昇する。ゆえに、車速が高い車両ほど通信優先度は高く設定される。なお、各遠隔運転車両10A,10B,10Cの車速は、遠隔コクピット42A,42B,42Cに送信される車両状態情報に含まれている。
【0042】
本実施形態に係る通信方法は、通信優先度が高い遠隔運転車両に優先的に通信リソースを割り当てるため、通信優先度が相対的に低い遠隔運転車両の通信速度を低下させる。通信速度を低下させる具体的な方法としては、カメラ画像のデータ量を減らすことが行われる。カメラ画像のデータ量は、1フレーム当たりのデータ量にフレームレートを乗算して得られる値である。ゆえに、通信優先度が相対的に低い遠隔運転車両に対しては、1フレーム当たりの画素数を減らしたり、フレームレートを低下させたりすることが行われる。
【0043】
以下、本実施形態に係る通信方法について図5及び図6を用いて具体的に説明する。
【0044】
本実施形態に係る通信方法では、まず、通信エリア34内のいずれかの遠隔運転車両10A,10B,10Cのスループットの低下を検知することが行われる。図5に示す例では、ステップS21Aにおいて、スループットの低下が遠隔運転車両10Aに搭載された通信端末によって検知される。ステップS22Aでは、スループットの低下の検知を受けて遠隔運転車両10Aから遠隔運転センタ40の遠隔運転サーバ410へ検知結果が伝達される。遠隔運転車両10Aでスループットの低下が検知された場合、遠隔運転車両10Aと通信リソースを共有している遠隔運転車両10B,10Cでもスループットの低下が起きていると推定することができる。
【0045】
遠隔運転車両10Aでスループットが低下した場合、遠隔運転車両10Aと通信している遠隔コクピット42Aでもスループットの低下は起きる。よって、遠隔コクピット42Aでスループットの低下を検知することで、遠隔運転車両10Aのスループットの低下を推定することができる。また、同時に、遠隔運転車両10Aと通信リソースを共有している遠隔運転車両10B,10Cのスループットの低下を推定することもできる。同様に、他の遠隔コクピット42B,42Cでスループットの低下が検知された場合にも、遠隔運転車両10A,10B,10Cのスループットの低下を推定することができる。図5に示す例では、ステップS21Bにおいて、スループットの低下が遠隔コクピット42Aによって検知される。ステップS22Bでは、スループットの低下の検知を受けて遠隔コクピット42Aから遠隔運転サーバ410へ検知結果が伝達される。
【0046】
ステップS23では、遠隔運転サーバ410により、通信優先度に応じた通信リソースの配分が行われる。ここでは、遠隔運転車両10Aが最も通信優先度が高い車両であり、遠隔運転車両10Cが次に通信優先度が高い車両であり、遠隔運転車両10Bが最も通信優先度が低い車両であるとする。遠隔運転サーバ410は、最も通信優先度が高い遠隔運転車両10Aのカメラ画像に対しては規定の画素数とフレームレートを与える。そして、遠隔運転サーバ410は、全体のトラフィック量が通信容量に収まるように遠隔運転車両10B,10Cのカメラ画像に与える画素数及びフレームレートを調整する。
【0047】
例えば、遠隔運転サーバ410は、遠隔運転車両10Cのカメラ画像に与える画素数及びフレームレートの少なくとも一方を規定値よりも低下させる。そして、遠隔運転車両10Bのカメラ画像に与える画素数及びフレームレートを遠隔運転車両10Cに与えるもの以下にさらに低下させる。ただし、カメラ画像のデータ量が過度に小さくなると遠隔運転そのものが困難になる。そのような場合には、状況が許すのであれば、遠隔運転を中止して遠隔運転車両を一時停車させるようにしてもよい。ここでは、最も通信優先度が低い遠隔運転車両10Cを一時停車させ、その分の通信リソースをより通信優先度が高い遠隔運転車両10A,10Bに割り当てるものとする。
【0048】
図6に示す例では、ステップS24Xにおいて、遠隔運転サーバ410から遠隔コクピット42Bに対してカメラ画像の画素数又はフレームレートを調整するように指示を出す。ステップS25Xでは、遠隔運転サーバ410からの指示を受けて、遠隔コクピット42Bは遠隔運転車両10Bに対してカメラ画像の画素数又はフレームレートを低下させることを要求する。ステップS26Xでは、遠隔コクピット42Bからの要求を受けて、遠隔運転車両10Bは画素数又はフレームレートを低下させたカメラ画像を遠隔コクピット42Bに送信する。
【0049】
また、図6に示す例では、ステップS24Yにおいて、遠隔運転サーバ410から遠隔コクピット42Cに対して遠隔運転車両10Cの遠隔運転を一時停止するように指示を出す。ステップS25Yでは、遠隔運転サーバ410からの指示を受けて、遠隔コクピット42Cは遠隔運転車両10Cを一時停車させ、遠隔運転車両10Cから遠隔コクピット42Cへのカメラ画像の送信を停止させる。
【0050】
以上の処理が行われることで通信リソースに余裕が生じ、最も通信優先度が高い遠隔運転車両10Aのスループットの低下は解消されるか緩和される。つまり、本実施形態に係る通信方法によれば、遠隔運転車両10Aの遠隔運転時のスループットの低下を抑制することができる。なお、遠隔運転車両10Bも遠隔運転車両10Aと同等に通信優先度が高いのであれば、遠隔運転車両10Cのみカメラ画像のデータ量を低下させるか、遠隔運転車両10Cのみ一時停車させてカメラ画像の送信を停止させてもよい。それにより余裕ができた通信リソースを遠隔運転車両10A,10Bに分配することで、遠隔運転車両10A,10Bのスループットの低下を抑制することができる。
【0051】
3.その他の実施形態
上記実施形態では、第1通信端末と第2通信端末とで共有される通信リソースを基地局32の通信容量としているが、通信端末が複数の基地局(衛星基地局を含む)に接続されるのであれば、それら基地局で構成されるネットワークの通信容量としてもよい。
【0052】
複数の遠隔運転車両とスマートフォンとで通信リソースを共有する場合において、スマートフォンの通信速度を低下させることが困難な場合、複数の遠隔運転車両のうちで通信優先度の低い遠隔運転車両の通信速度を低下せるか一時停車させるようにしてもよい。つまり、通信優先度の高い遠隔運転車両のスループットの低下を抑制することができれば、通信速度を低下させる対象には限定はない。
【符号の説明】
【0053】
2,4 通信システム
10,10A,10B,10C 遠隔運転車両
20 通常の車両
22 スマートフォン
30 通信事業者
32 基地局
34 通信エリア
40 遠隔運転センタ
42,42A,42B,42C 遠隔コクピット
44,44A,44B,44C 遠隔オペレータ
310 通信制御サーバ
410 遠隔運転サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6