(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両骨格構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240702BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240702BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20240702BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20240702BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B60R11/02 A
B62D29/04 Z
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 B
(21)【出願番号】P 2021193591
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 博幸
(72)【発明者】
【氏名】北方 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一郎
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212968021(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0058988(US,A1)
【文献】特開2003-124719(JP,A)
【文献】特開2003-133826(JP,A)
【文献】特開2018-149912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B60R 11/02
B62D 29/04
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフ部の一部を構成し、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされると共に、内側に電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な通信機器を配置可能とされ、車両上方側の部分に貫通部が形成されたルーフリインフォースメントと、
前記貫通部を塞ぐと共に電波を透過可能な材質で構成された蓋部材と、
を有
し、
前記貫通部の周縁部には、当該貫通部から車両下方側に向かって延出されかつ先端側が折れ曲がっていない筒部が前記ルーフリインフォースメントと一体に設けられている、
車両骨格構造。
【請求項2】
前記貫通部は、前記通信機器が通過可能な大きさとされ、
前記貫通部の車両上方側には、前記ルーフ部の車両上方側の意匠面の一部を構成する前記蓋部材としての樹脂ルーフパネルが配置されている、
請求項1に記載の車両骨格構造。
【請求項3】
前記ルーフリインフォースメントにおける車両上方側の部分には、前記通信機器が通過不可能な複数の前記貫通部が形成され、当該ルーフリインフォースメントにおける車両下方側の部分には、前記通信機器が通過可能な取付孔部が形成されている、
請求項1に記載の車両骨格構造。
【請求項4】
前記ルーフリインフォースメントは、前記ルーフ部における車両後方側の一部を構成している、
請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の車両骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用埋め込みアンテナの搭載構造に関する発明が開示されている。この車両用埋め込みアンテナの搭載構造では、車体のルーフ部等に凹部を形成し、この凹部にアンテナ(通信機器)が収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車体のルーフ部に単純に凹部を形成すると車両のロールオーバ等に対する車体の剛性が不足することが考えられる。つまり、上記先行技術では、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保することができる車両骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体のルーフ部の一部を構成し、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされると共に、内側に電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な通信機器を配置可能とされ、車両上方側の部分に貫通部が形成されたルーフリインフォースメントと、前記貫通部を塞ぐと共に電波を透過可能な材質で構成された蓋部材と、を有し、前記貫通部の周縁部には、当該貫通部から車両下方側に向かって延出されかつ先端側が折れ曲がっていない筒部が前記ルーフリインフォースメントと一体に設けられている。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、車体のルーフ部の一部がルーフリインフォースメントで構成されている。このルーフリインフォースメントは、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造とされている。このため、本発明では、ルーフリインフォースメントによって、車体のルーフ部をロールオーバ等に起因する荷重に対して補強することができる。
【0008】
ところで、省スペース化等の観点において、電波の送受信を行う通信機器は、車体のルーフ部に内蔵できることが好ましい。一方で、ルーフ部の補強の観点においては、ルーフリインフォースメント等のルーフ部の構成要素を鋼材等で構成することが好ましいが、鋼材は、通信機器が送受信する電波を透過させることができない。
【0009】
ここで、本発明では、ルーフリインフォースメントの内側に通信機器を配置可能とされると共に、ルーフリインフォースメントの車両上方側の部分に貫通部が形成されており、当該貫通部が電波を透過可能な材質で構成された蓋部材で塞がれている。
【0010】
このため、本発明では、車体のルーフ部に通信機器を内蔵させることができる。また、ルーフリインフォースメントを鋼材等で構成しても、貫通部及び蓋部材に電波を透過させ
ることで通信機器による電波の送受信を可能としつつ、当該蓋部材によって当該貫通部からルーフリインフォースメント内に雨水等が浸入することを抑制することができる。
また、本発明によれば、ルーフリインフォースメントにおける貫通部の周縁部に当該ルーフリインフォースメントと一体に当該貫通部から車両下方側に向かって延出された筒部が設けられている。このため、本発明では、車体の組立時や通信機器の取付時等に作業者の指等が貫通部の周縁部によって傷付けられることを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1に記載の発明において、前記貫通部は、前記通信機器が通過可能な大きさとされ、前記貫通部の車両上方側には、前記ルーフ部の車両上方側の意匠面の一部を構成する前記蓋部材としての樹脂ルーフパネルが配置されている。
【0012】
請求項2に記載の本発明によれば、ルーフリインフォースメントに設けられた貫通部は、通信機器が通過可能な大きさとされており、当該貫通部から通信機器をルーフリインフォースメント内に配置することができる。
【0013】
また、貫通部の車両上方側には、ルーフ部の車両上方側の意匠面の一部を構成する樹脂ルーフパネルが配置されており、通信機器による電波の送受信を可能としつつルーフリインフォースメントに設けられた貫通部を車両上方側から隠すことができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1に記載の発明において、前記ルーフリインフォースメントにおける車両上方側の部分には、前記通信機器が通過不可能な複数の前記貫通部が形成され、当該ルーフリインフォースメントにおける車両下方側の部分には、前記通信機器が通過可能な取付孔部が形成されている。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、ルーフリインフォースメントにおける車両上方側の部分に通信機器が通過不可能な複数の貫通部が形成されており、これらの貫通部に電波を透過させることで通信機器による電波の送受信を行うことができる。
【0016】
また、ルーフリインフォースメントにおける車両上方側の部分に通信機器が通過可能な大きさの貫通部を形成するような構成に比し、ルーフリインフォースメントにおける車両上方側の部分において、貫通部が設けられていない箇所に局所的に荷重が作用することを抑制することができる。
【0017】
一方、ルーフリインフォースメントにおける車両下方側の部分には、通信機器が通過可能な取付孔部が形成されており、当該取付孔部から通信機器をルーフリインフォースメント内に配置することができる。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記ルーフリインフォースメントは、前記ルーフ部における車両後方側の一部を構成している。
【0021】
請求項4に記載の本発明によれば、ルーフリインフォースメントが、車体のルーフ部における車両後方側の一部を構成しているため、当該ルーフ部における車両前方側の部分等にサンルーフ等を配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
また、本発明に係る車両骨格構造は、車両の組立作業の効率化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項2に記載の本発明に係る車両骨格構造は、通信機器の設置作業を簡略化しつつ車両の意匠性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項3に記載の本発明に係る車両骨格構造は、ルーフ部における車両上方側の部分において応力集中部が発生することを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項4に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体設計の自由度を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図(
図3の1-1線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図2】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す平面図(
図3の2方向矢視図)である。
【
図3】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の構成を模式的に示す車両後方左側から見た斜視図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る車両骨格構造が適用された車体の構成を模式的に示す車両前方左側から見た斜視図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図(
図4の5-5線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図6】第2実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図(
図7の6-6線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図7】第2実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図5を用いて、本発明に係る車両骨格構造の第1実施形態について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは、本実施形態に係る車両骨格構造が適用された「車両10」の車両前方側を示しており、矢印UPは車両10の車両上方側を示しており、矢印LHは車両10の車両幅方向左側を示している。
【0029】
まず、
図3を用いて、車両10の車室の主な部分を構成する「車体12」の概略構成について説明する。車体12は、その車両幅方向外側に、左右一対のフロントピラー14(
図4参照)、左右一対のセンタピラー16(
図4参照)、左右一対のリヤピラー18を備えている。そして、フロントピラー14、センタピラー16及びリヤピラー18のそれぞれの上端部は、車体12の「ルーフ部20」の一部を構成するルーフサイドレール22で連結されている。なお、車体12は、車両前後方向に延びる中心線CL(
図2参照)対して対称な構成とされている。
【0030】
ルーフサイドレール22は、車両前後方向に延在すると共に、その車両幅方向外側の部分を構成するアウタパネルと、その車両幅方向内側の部分を構成するインナパネルとを含んで構成されている。このルーフサイドレール22は、アウタパネルとインナパネルとがスポット溶接等による図示しない接合部で接合されることで、車両前後方向から見た断面が閉断面とされた閉断面構造とされている。
【0031】
また、一対のルーフサイドレール22における車両後方側の部分は、バックドア開口24の上縁部24Aに沿って車両幅方向に延在するルーフリインフォースメントとしての「リアヘッダリインフォースメント26」で連結されている。
【0032】
そして、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26及びその周辺部の構成に特徴がある。以下、リアヘッダリインフォースメント26及びその周辺部の構成について詳細に説明することとする。
【0033】
図1に示されるように、リアヘッダリインフォースメント26は、その車両上方側の部分を構成するアッパパネル28と、その車両下方側の部分を構成するロアパネル30とを含んで構成されており、これらは、鋼板がプレス加工されることで形成されている。
【0034】
アッパパネル28は、第1上壁部28A、第1上側延出壁部28B、第1上側縦壁部28C、第2上壁部28D、第2上側縦壁部28E及び第2上側延出壁部28Fを含んで構成されている。
【0035】
第1上壁部28Aは、アッパパネル28の主な部分を構成しており、板厚方向を車両上下方向とされて車両幅方向及び車両前後方向に延在している。そして、第1上壁部28Aには、
図2にも示されるように、一対の「貫通部32」と、「貫通部34」とが設けられている。貫通部32は、第1上壁部28Aの車両幅方向外側の部分に形成されており、車両上下方向から見て車両幅方向を長手方向とされた矩形状とされている。また、車両上下方向から見て貫通部32の内側には、後述する通信機器としての「アンテナユニット36」が収まっている。つまり、貫通部32の大きさは、アンテナユニット36が通過可能な大きさとされている。
【0036】
そして、貫通部32の周縁部には、バーリング加工が施されることで貫通部34から車両下方側に向かって延出された「筒部28A1」が第1上壁部28Aと一体に設けられている。
【0037】
一方、貫通部34は、第1上壁部28Aの車両幅方向中央部に形成されており、車両上下方向から見て車両前後方向を長手方向とされた矩形状とされている。なお、貫通部34は、車両前後方向の長さが貫通部32の車両前後方向の長さと同程度に設定され、車両幅方向の長さが貫通部32の車両幅方向の長さよりも短い長さに設定されている。
【0038】
そして、車両上下方向から見て貫通部34の内側には、後述する通信機器としての「アンテナユニット38」が収まっている。つまり、貫通部34の大きさは、アンテナユニット38が通過可能な大きさとされている。なお、貫通部34の周縁部は、貫通部32と同様にバーリング加工が施されており、当該周縁部には、貫通部32から車両下方側に向かって延出された図示しない筒部が第1上壁部28Aと一体に設けられている。
【0039】
第1上側延出壁部28Bは、第1上壁部28Aの車両前方側の周縁部から車両前方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。
【0040】
一方、第1上側縦壁部28Cは、第1上壁部28Aの車両後方側の周縁部から車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、第1上側縦壁部28Cの車両下方側の周縁部からは、第2上壁部28Dが、車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。
【0041】
そして、第2上壁部28Dの車両後方側の周縁部からは、第2上側縦壁部28Eが車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、第2上側縦壁部28Eの車両下方側の周縁部からは、車両後方下側に第2上側延出壁部28Fが延出されている。なお、第2上側延出壁部28Fの車両後方側の部分は、車両上方側に延びており、この部分には図示しないウェザーストリップが取り付けられている。
【0042】
一方、ロアパネル30は、第1下壁部30A、第1下側縦壁部30B、第1下側延出壁部30C、第2下側縦壁部30D、第2下壁部30E及び第2下側延出壁部30Fを含んで構成されている。
【0043】
第1下壁部30Aは、ロアパネル30の主な部分を構成しており、板厚方向を車両上下方向とされて車両幅方向及び車両前後方向に延在している。この第1下壁部30Aは、車両上下方向から見てその大部分が第1上壁部28Aと重なるように配置されている。また、第1下壁部30Aの車両後方側の部分は、第2上壁部28Dの車両前方側の部分とスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。そして、第1下壁部30Aには、後述するように、アンテナユニット36及びアンテナユニット38が取り付けられている。
【0044】
第1下側縦壁部30Bは、第1下壁部30Aの車両前方側の周縁部から車両前方上側に延出されており、第1下側縦壁部30Bの車両上方側の周縁部からは、第1下側延出壁部30Cが車両前方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。そして、第1下側延出壁部30Cは、第1上側延出壁部28Bとスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0045】
一方、第2下側縦壁部30Dは、第1下壁部30Aの車両後方側の周縁部から車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、第2下側縦壁部30Dの車両下方側の周縁部からは、第2下壁部30Eが車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。
【0046】
そして、第2下壁部30Eの車両後方側の周縁部からは、第2下側延出壁部30Fが車両後方下側に延出されており、第2下側延出壁部30Fは、第2上側延出壁部28Fの車両前方側の部分とスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0047】
そして、上記のように構成されたリアヘッダリインフォースメント26は、第1上壁部28A、第1上側縦壁部28C、第1下壁部30A、第1下側縦壁部30Bによって構成された第1閉断面構造部40と、第2上壁部28D、第2上側縦壁部28E、第2下側縦壁部30D及び第2下壁部30Eによって構成された第2閉断面構造部42とを備えている。
【0048】
第1閉断面構造部40は、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされており、第1閉断面構造部40によってルーフ部20の車両後方側の部分が補強されている。また、第1閉断面構造部40の車両下方側には、後部座席44が配置されている。
【0049】
一方、第2閉断面構造部42は、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が第1閉断面構造部40の断面よりも小さい閉断面形状とされており、第2閉断面構造部42によってバックドア開口24の上縁部24Aが補強されている。
【0050】
また、第1閉断面構造部40の内側には、アンテナユニット36及びアンテナユニット38が配置されている。アンテナユニット36は、
図2にも示されるように、その外殻を構成すると共に電波を透過可能な樹脂等の材質で構成されたケース46と、ケース46に格納された電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な複数のアンテナ48とを備えている。
【0051】
そして、アンテナユニット36は、ロアパネル30の第1下壁部30A上に載置された状態で、第1下壁部30Aに図示しない取付部材で取り付けられている。
【0052】
一方、アンテナユニット38は、その外殻を構成すると共に電波を透過可能な樹脂等の材質で構成されたケース50と、ケース50に格納された電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な複数のアンテナ52とを備えている。
【0053】
なお、アンテナ48及びアンテナ52の種類としては、例えば、DCM(Data Communication Module)用アンテナ、GPS(Global Positioning System)用アンテナ、無線LAN(Local Area Network)用アンテナ及びETC(Electronic Toll Collection)用アンテナ等が挙げられる。
【0054】
一方、第1閉断面構造部40の車両上方側には、蓋部材としての「樹脂ルーフパネル54」が配置されている。この樹脂ルーフパネル54は、電波を透過可能なポリカーボネート等の樹脂で構成されると共に、車両上下方向から見て第1閉断面構造部40を覆う板状とされている。そして、樹脂ルーフパネル54は、車両上下方向から見て貫通部32を囲むように設けられた接着剤等による接合部56でアッパパネル28に接合されている。なお、樹脂ルーフパネル54の上面は、塗料で塗装されており、ルーフ部20の車両上方側の意匠面の一部を構成している。
【0055】
また、樹脂ルーフパネル54の車両前方側には、鋼板がプレス加工されることで形成されたルーフパネル58が配置されており、ルーフパネル58は、樹脂ルーフパネル54と共にルーフ部20の車両上方側の意匠面の一部を構成している。なお、ルーフパネル58の車両後方側の周縁部は、アッパパネル28の第1上側延出壁部28Bにスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。また、樹脂ルーフパネル54とルーフパネル58との境界部には、図示しないシール部材が取り付けられている。
【0056】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0057】
本実施形態では、
図1に示されるように、車体12のルーフ部20の一部がリアヘッダリインフォースメント26で構成されている。このリアヘッダリインフォースメント26は、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造とされている。このため、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26によって、車体12のルーフ部20をロールオーバ等に起因する荷重に対して補強することができる。
【0058】
ところで、省スペース化等の観点において、電波の送受信を行う通信機器は、車体12のルーフ部20に内蔵できることが好ましい。一方で、ルーフ部20の補強の観点においては、リアヘッダリインフォースメント26等のルーフ部20の構成要素を鋼材等で構成することが好ましいが、鋼材は、通信機器が送受信する電波を透過させることができない。
【0059】
ここで、本実施形態では、
図2にも示されるように、リアヘッダリインフォースメント26の内側にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を配置可能とされると共に、リアヘッダリインフォースメント26の車両上方側の部分に貫通部32及び貫通部34が形成されており、これらが電波を透過可能な材質で構成された樹脂ルーフパネル54で塞がれている。
【0060】
このため、本実施形態では、車体12のルーフ部20にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を内蔵させることができる。また、リアヘッダリインフォースメント26を鋼材等で構成しても、貫通部32、貫通部34及び樹脂ルーフパネル54に電波を透過させることでアンテナユニット36及びアンテナユニット38による電波の送受信を可能としつつ、樹脂ルーフパネル54によって貫通部32及び貫通部34からリアヘッダリインフォースメント26内に雨水等が浸入することを抑制することができる。
【0061】
したがって、本実施形態では、車体12にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体12の剛性を確保することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上述したように、リアヘッダリインフォースメント26内にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を配置することができる。このため、アンテナユニット36及びアンテナユニット38をリアヘッダリインフォースメント26の車両下方側に配置するような構成に比し、後部座席44に着座する図示しない乗員の頭部からルーフ部20までのクリアランスの拡大を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26に設けられた貫通部32は、アンテナユニット36が通過可能な大きさとされており、貫通部34は、アンテナユニット38が通過可能な大きさとされている。このため、本実施形態では、貫通部32からアンテナユニット36を、貫通部34からアンテナユニット38を、それぞれリアヘッダリインフォースメント26内に配置することができる。
【0064】
また、貫通部32及び貫通部34の車両上方側には、ルーフ部20の車両上方側の意匠面の一部を構成する樹脂ルーフパネル54が配置されており、アンテナユニット36及びアンテナユニット38による電波の送受信を可能としつつリアヘッダリインフォースメント26に設けられた貫通部32及び貫通部34を車両上方側から隠すことができる。したがって、本実施形態では、アンテナユニット36及びアンテナユニット38の設置作業を簡略化しつつ車両10の意匠性を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26における貫通部32の周縁部にリアヘッダリインフォースメント26と一体に貫通部32から車両下方側に向かって延出された筒部28A1が設けられている。また、貫通部34の周縁部にも貫通部32と同様に筒部が設けられている。
【0066】
このため、本実施形態では、車体12の組立時やアンテナユニット36及びアンテナユニット38の取付時等に作業者の指等が貫通部32及び貫通部34の周縁部によって傷付けられることを抑制することができ、その結果、車両10の組立作業の効率化を図ることができる。
【0067】
また、本実施形態では、アッパパネル28における貫通部の周縁部に筒部を設けることによって、車両幅方向から見たリアヘッダリインフォースメント26の断面の断面積の増加を図ることができる。また、筒部をバーリング加工によって形成することによって、当該筒部及びその周辺部に加工硬化が生じる。その結果、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26の強度並びにロールオーバ等に起因する荷重に対する剛性の向上を図ることができる。
【0068】
加えて、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26が、車体12のルーフ部20における車両後方側の一部を構成しているため、ルーフ部20における車両前方側の部分等にサンルーフ等を配置することができる。したがって、本実施形態では、車体設計の自由度を確保することができる。
【0069】
<第1実施形態の変形例>
次に、
図4及び
図5を用いて、第1実施形態の変形例について説明する。上述した第1実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26内にアンテナユニット36及びアンテナユニット38が配置されていたが、一対のルーフサイドレール22における車両前後方向中央部を連結するルーフリインフォースメントとしての「センタヘッダリインフォースメント60」内にアンテナユニット36及びアンテナユニット38が配置されていてもよい。
【0070】
詳しくは、センタヘッダリインフォースメント60は、その車両上方側の部分を構成するアッパパネル62と、その車両下方側の部分を構成するロアパネル64とを含んで構成されており、これらは、鋼板がプレス加工されることで形成されている。
【0071】
アッパパネル62は、板厚方向を車両上下方向とされて車両幅方向及び車両前後方向に延在すると共に、アッパパネル28と同様に貫通部32及び貫通部34が設けられている。
【0072】
一方、ロアパネル64は、車両幅方向から見た断面形状が車両上方側に開放されたハット状とされており、車両幅方向に延在している。そして、アッパパネル62とロアパネル64とがスポット溶接等による図示しない接合部で接合されることで、センタヘッダリインフォースメント60は、車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造となっている。
【0073】
なお、アンテナユニット36及びアンテナユニット38は、ロアパネル64に上に載置された状態で、ロアパネル64に図示しない取付部材で取り付けられている。また、センタヘッダリインフォースメント60の車両上方側には、上述した第1実施形態と同様に、樹脂ルーフパネル54が取り付けられている。
【0074】
このような構成によれば、車両10の仕様等によって、リアヘッダリインフォースメント26にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を配置することができない場合であっても、基本的に上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
また、リアヘッダリインフォースメント26にアンテナユニット36及びアンテナユニット38を配置することができる場合には、車体12に通信機器を配置可能なスペースをより多く確保し、より多くの通信機器を搭載することができる。
【0076】
<第2実施形態>
以下、
図6及び
図7を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両骨格構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0077】
本実施形態は、基本的に上述した第1実施形態と同様の構成とされているものの、ルーフリインフォースメントとしての「リアヘッダリインフォースメント70」の構成が第1実施形態と異なっている。
【0078】
詳しくは、リアヘッダリインフォースメント70は、その車両上方側の部分を構成するアッパパネル72と、その車両下方側の部分を構成するロアパネル74とを備えている。アッパパネル72は、アッパパネル28と同様に、第1上壁部72A、第1上側延出壁部72B、第1上側縦壁部72C、第2上壁部72D、第2上側縦壁部72E及び第2上側延出壁部72Fを含んで構成されている。
【0079】
そして、本実施形態では、第1上壁部72Aにアンテナユニット36及びアンテナユニット38の何れも通過不可能な複数の「貫通部76」が形成されている。これらの貫通部76は、それぞれ車両上下方向から見て円形とされると共に、アンテナユニット36及びアンテナユニット38の少なくとも一方と重なるようにかつ車両幅方向及び車両前後方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0080】
また、貫通部76の周縁部には、バーリング加工が施されることで貫通部76から車両下方側に向かって延出された「筒部72A1」が第1上壁部72Aと一体に設けられている。
【0081】
一方、ロアパネル74は、ロアパネル30と同様に、第1下壁部74A、第1下側縦壁部74B、第1下側延出壁部74C、第2下側縦壁部74D、第2下壁部74E及び第2下側延出壁部74Fを含んで構成されている。
【0082】
そして、本実施形態では、第1下壁部74Aに、アンテナユニット36が通過可能な「取付孔部78」と、アンテナユニット38が通過可能な図示しない取付孔部とが設けられている。
【0083】
一方、アンテナユニット36の車両下方側には、ベースプレート80が取り付けられている。そして、アンテナユニット36は、アンテナユニット36が取付孔部78からリアヘッダリインフォースメント70の内側に挿入された状態で、ベースプレート80が車両下方側から図示しない取付部材で第1下壁部74Aに取り付けられることで、リアヘッダリインフォースメント70に対して固定された状態となっている。なお、アンテナユニット38もアンテナユニット36と同様にリアヘッダリインフォースメント70に対して固定されている。
【0084】
また、本実施形態では、樹脂ルーフパネル54をリアヘッダリインフォースメント70に接合する接合部56が、それぞれの貫通部76に対して、車両上下方向から見て貫通部76を囲むように設けられている。
【0085】
このように構成された本実施形態では、基本的に上述した第1実施形態と同様の構成とされているため、第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。
【0086】
また、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント70における車両上方側の部分にアンテナユニット36及びアンテナユニット38の何れも通過不可能な複数の貫通部76が形成されており、これらの貫通部76に電波を透過させることでアンテナユニット36及びアンテナユニット38による電波の送受信を行うことができる。
【0087】
また、リアヘッダリインフォースメント70における車両上方側の部分にアンテナユニット36やアンテナユニット38が通過可能な大きさの貫通部を形成するような構成に比し、リアヘッダリインフォースメント70における車両上方側の部分において、貫通部が設けられていない箇所に局所的に荷重が作用することを抑制することができる。
【0088】
一方、リアヘッダリインフォースメント70における車両下方側の部分には、アンテナユニット36が通過可能な取付孔部78と、アンテナユニット38が通過可能な取付孔部とが形成されており、これらの取付孔部からアンテナユニット36及びアンテナユニット38をリアヘッダリインフォースメント70内に配置することができる。したがって、本実施形態では、ルーフ部20における車両上方側の部分において応力集中部が発生することを抑制することができる。
【0089】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、リアヘッダリインフォースメント26、センタヘッダリインフォースメント60及びリアヘッダリインフォースメント70が、鋼板で構成されていたが、車両10の仕様等に応じて、これらを炭素繊維強化樹脂で構成してもよい。ま
【0090】
(2) また、上述した実施形態では、リアヘッダリインフォースメントの貫通部の周辺にバーリング加工によって筒部が形成されていたが、車両10の仕様等に応じて、貫通部の周辺に筒部を設けない構成としてもよい。
【0091】
(3) 加えて、上述した実施形態では、ルーフリインフォースメントの車両上方側の部分に設けられていた貫通部が、樹脂ルーフパネルで覆われていたが、貫通部を塞ぐ部材は、これに限らない。例えば、車両10の仕様等に応じて、電波を透過可能な材質でこれらの貫通部のみを塞ぐことが可能な形状の蓋部材を形成し、当該蓋部材をこれらの貫通部に嵌合するような構成としてもよい。また、ルーフリインフォースメントの車両上方側の部分に設けられた貫通部の大きさによっては、電波を透過可能な材質のシール材を当該貫通部に充填して、蓋部材として利用するような構成も採り得る。
【符号の説明】
【0092】
10 車両
12 車体
20 ルーフ部
26 リアヘッダリインフォースメント(ルーフリインフォースメント)
28A1 筒部
32 貫通部
34 貫通部
36 アンテナユニット(通信機器)
38 アンテナユニット(通信機器)
54 樹脂ルーフパネル(蓋部材)
60 センタヘッダリインフォースメント(ルーフリインフォースメント)
70 リアヘッダリインフォースメント(ルーフリインフォースメント)
72A1 筒部
76 貫通部
78 取付孔部