(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両骨格構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240702BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B62D25/06 Z
B60R11/02 W
(21)【出願番号】P 2021202039
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 博幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一郎
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133826(JP,A)
【文献】特開2003-124719(JP,A)
【文献】特開平01-314676(JP,A)
【文献】特開2003-291742(JP,A)
【文献】特開2003-309409(JP,A)
【文献】中国実用新案第212968021(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0058988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を構成し、当該車体のルーフ部の意匠面に対して車両下方側に配置されると共に車両下方側から通信機器を支持可能とされた支持面部と、
前記支持面部の車両下方側に配置されると共に、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造部の少なくとも一部を構成するルーフリインフォースメントと、
前記意匠面の一部を構成すると共に、前記通信機器の車両上方側と車両後方側とを覆いかつ当該通信機器の車両下方側を覆わないように配置された樹脂ルーフパネルと、
を有する車両骨格構造。
【請求項2】
前記樹脂ルーフパネルは、前記車体に設けられた被係止部に対して取り外し可能とされた係止部が車両上方側から当該被係止部に係止されることで当該車体に取り付けられている、
請求項
1に記載の車両骨格構造。
【請求項3】
前記ルーフ部は、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部を備えており、
前記支持面部は、前記ルーフパネル本体部と一体に設けられている、
請求項1
又は請求項
2に記載の車両骨格構造。
【請求項4】
前記ルーフ部は、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部を備えており、
前記支持面部は、金属製とされると共に、車両前方側の周縁部が前記ルーフパネル本体部の車両後方側の周縁部に接合されている、
請求項1
又は請求項
2に記載の車両骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用埋め込みアンテナの搭載構造に関する発明が開示されている。この車両用埋め込みアンテナの搭載構造では、車体のルーフ部等に凹部を形成し、この凹部にアンテナ(通信機器)が収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車体のルーフ部に単純に凹部を形成すると車両のロールオーバ等に対する車体の剛性が不足することが考えられる。つまり、上記先行技術では、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保することができる車両骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体の一部を構成し、当該車体のルーフ部の意匠面に対して車両下方側に配置されると共に車両下方側から通信機器を支持可能とされた支持面部と、前記支持面部の車両下方側に配置されると共に、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造部の少なくとも一部を構成するルーフリインフォースメントと、前記意匠面の一部を構成すると共に、前記通信機器の車両上方側と車両後方側とを覆いかつ当該通信機器の車両下方側を覆わないように配置された樹脂ルーフパネルと、を有している。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、車体の一部が支持面部で構成されており、当該支持面部は、当該車体のルーフ部の意匠面に対して車両下方側に配置されている。そして、この支持面部は、通信機器を車両下方側から支持している。このため、本発明では、車体のルーフ部の意匠面に対して車両下方側に通信機器を配置することができる。
【0008】
一方、支持面部の車両下方側には、ルーフリインフォースメントが配置されており、このルーフリインフォースメントは、車両幅方向に延在すると共に車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた閉断面構造部の少なくとも一部を構成している。このため、本発明では、ルーフリインフォースメントを含む閉断面構造部によって、車体のルーフ部をロールオーバ等に起因する荷重に対して補強することができる。
【0010】
また、本発明によれば、ルーフ部の意匠面の一部が樹脂ルーフパネルで構成されており、当該樹脂ルーフパネルによって、通信機器の車両上方側と車両後方側とが覆われている。このため、本発明では、通信機器の車両上方側及び車両後方側において当該通信機器による電波の送受信を可能としつつ、樹脂ルーフパネルで通信機器を隠すことができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1に記載の発明において、前記樹脂ルーフパネルは、前記車体に設けられた被係止部に対して取り外し可能とされた係止部が車両上方側から当該被係止部に係止されることで当該車体に取り付けられている。
【0012】
請求項2に記載の本発明によれば、車体に被係止部が設けられており、樹脂ルーフパネルは、当該被係止部に係止部が係止されることで当該車体に取り付けられている。また、係止部は、被係止部に対して取り外し可能とされており、本発明では、樹脂ルーフパネルが車体に対して着脱可能とされている。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ルーフ部は、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部を備えており、前記支持面部は、前記ルーフパネル本体部と一体に設けられている。
【0016】
請求項3に記載の本発明によれば、ルーフ部が、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレールと、ルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部とを備えている。そして、支持面部は、ルーフパネル本体部と一体に設けられている。このため、本発明では、ルーフパネル本体部と、支持面部とをプレス加工等によって一体の部品として形成することができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る車両骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ルーフ部は、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部を備えており、前記支持面部は、金属製とされると共に、車両前方側の周縁部が前記ルーフパネル本体部の車両後方側の周縁部に接合されている。
【0018】
請求項5に記載の本発明によれば、ルーフ部が、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレールと、ルーフサイドレール間に配置された金属製のルーフパネル本体部とを備えている。そして、支持面部は、金属製とされており、当該支持面部の車両前方側の周縁部は、ルーフパネル本体部の車両後方側の周縁部に接合されている。このため、本発明では、ルーフパネル本体部と、支持面部とをプレス加工等によって別々の部品として形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体に通信機器を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体の剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0020】
また、本発明に係る車両骨格構造は、通信機器による通信を円滑に行うことができると共に、車両の意匠性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項2に記載の本発明に係る車両骨格構造は、通信機器のメンテナンス作業の作業効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項3に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体の製造工程の簡略化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項4に記載の本発明に係る車両骨格構造は、車体の製造工程において歩留まりの向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図(
図3の1-1線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図2】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す平面図(
図3の2方向矢視図)である。
【
図3】第1実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の構成を模式的に示す車両後方左側から見た斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の構成を模式的に示す車両前方左側から見た斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図(
図4の5-5線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図6】第3実施形態に係る車両骨格構造が適用された車体の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図3を用いて、本発明に係る車両骨格構造の第1実施形態について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは、本実施形態に係る車両骨格構造が適用された「車両10」の車両前方側を示しており、矢印UPは車両10の車両上方側を示しており、矢印LHは車両10の車両幅方向左側を示している。
【0027】
まず、
図3を用いて、車両10の車室の主な部分を構成する「車体12」の概略構成について説明する。車体12は、その車両幅方向外側に、左右一対のフロントピラー14(
図4参照)、左右一対のセンタピラー16(
図4参照)、左右一対のリヤピラー18を備えている。そして、フロントピラー14、センタピラー16及びリヤピラー18のそれぞれの上端部は、車体12の「ルーフ部20」の一部を構成する一対の「ルーフサイドレール22」で連結されている。なお、車体12は、車両前後方向に延びる中心線CL(
図2参照)対して対称な構成とされている。
【0028】
ルーフサイドレール22は、互いに対して車両幅方向に間隔をあけて配置されると共に、車両前後方向に延在しており、その車両幅方向外側の部分を構成するアウタパネルと、その車両幅方向内側の部分を構成するインナパネルとを含んで構成されている。このルーフサイドレール22は、アウタパネルとインナパネルとがスポット溶接等による図示しない接合部で接合されることで、車両前後方向から見た断面が閉断面とされた閉断面構造とされている。
【0029】
一方、ルーフサイドレール22間には、ルーフパネル24が架け渡されており、このルーフパネル24は、
図1に示されるように、鋼板がプレス加工されることで形成されると共に、その主な部分を構成する「ルーフパネル本体部24A」、前側縦壁部24B、「下壁部24C」、後側縦壁部24D及び延出壁部24Eを含んで構成されている。
【0030】
詳しくは、ルーフパネル本体部24Aは、板厚方向を車両上下方向とされて車両前後方向及び車両幅方向に延在すると共に、その上面がルーフ部20の車両上方側の「意匠面20A」の一部を構成している。
【0031】
前側縦壁部24Bは、ルーフパネル本体部24Aの車両後方側の周縁部から車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、前側縦壁部24Bの車両下方側の周縁部からは、下壁部24Cが、車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。
【0032】
下壁部24Cは、車両前後方向及び車両幅方向に延在すると共に、意匠面20Aに対して車両下方側に配置されている。そして、下壁部24Cの車両前方側の部分は、後述する通信機器としての「アンテナユニット26」及び「アンテナユニット28」を車両下方側から支持しており、下壁部24Cの車両後方側の部分には、後述する「樹脂ルーフパネル64」が取り付けられている。つまり、本実施形態では、下壁部24Cの車両前方側の部分が、支持面部として機能している。
【0033】
一方、後側縦壁部24Dは、下壁部24Cの車両後方側の周縁部から車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、後側縦壁部24Dの車両下方側の周縁部からは、延出壁部24Eが車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。なお、延出壁部24Eの車両後方側の部分は、車両上方側に延びており、この部分には図示しないウェザーストリップが取り付けられている。このウェザーストリップは、バックドア開口部32の上縁部32A(
図3参照)に沿うように配置されている。
【0034】
ここで、本実施形態では、ルーフパネル24の下壁部24Cが、下壁部24Cの車両下方側に配置されたルーフリインフォースメントとしての「リアヘッダリインフォースメント34」で補強されている点に特徴がある。以下、リアヘッダリインフォースメント34及びその周辺部の構成について詳細に説明することとする。
【0035】
リアヘッダリインフォースメント34は、車両幅方向に延在すると共に一対のルーフサイドレール22を車両幅方向に連結している。そして、リアヘッダリインフォースメント34は、前側下壁部34A、前側傾斜壁部34B、前側延出壁部34C、後側傾斜壁部34D、中央延出壁部34E、後側縦壁部34F、後側下壁部34G及び後側延出壁部Hを含んで構成されている。なお、リアヘッダリインフォースメント34は、鋼板がプレス加工されることで形成されている。
【0036】
前側下壁部34Aは、リアヘッダリインフォースメント34における車両前方側の部分を構成しており、板厚方向を車両上下方向とされると共に車両上下方向から見て車両幅方向を長手方向とされた矩形状とされている。この前側下壁部34Aは、車両上下方向から見て、その大部分がルーフパネル24の下壁部24Cと重なるように配置されている。
【0037】
前側傾斜壁部34Bは、前側下壁部34Aの車両前方側の周縁部から車両前方上側に延出されており、前側傾斜壁部34Bの車両前方側の周縁部からは、前側延出壁部34Cが車両前方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。そして、前側延出壁部34Cは、下壁部24Cとスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0038】
一方、後側傾斜壁部34Dは、前側下壁部34Aの車両後方側の周縁部から車両後方上側に延出されており、後側傾斜壁部34Dの車両後方側の周縁部からは、中央延出壁部34Eが車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。なお、中央延出壁部34Eは、下壁部24Cとスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0039】
後側縦壁部34Fは、中央延出壁部34Eの車両後方側の周縁部から車両下方側に板厚方向を車両前後方向とされて延出されており、後側縦壁部34Fの車両下方側の周縁部からは、後側下壁部34Gが車両後方側に板厚方向を車両上下方向とされて延出されている。
【0040】
そして、後側下壁部34Gの車両後方側の周縁部からは、後側延出壁部34Hが車両後方下側に延出されており、後側延出壁部34Hは、延出壁部24Eの車両前方側の部分とスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0041】
本実施形態では、上記のようにルーフパネル24及びリアヘッダリインフォースメント34が構成されることで、ルーフパネル24の下壁部24C、リアヘッダリインフォースメント34の前側下壁部34A、前側傾斜壁部34B及び後側傾斜壁部34Dで閉断面構造部としての「第1閉断面構造部36」が構成されている。また、ルーフパネル24の下壁部24C、後側縦壁部24D、リアヘッダリインフォースメント34の後側縦壁部34F及び後側下壁部34Gで、第2閉断面構造部38が構成されている。
【0042】
詳しくは、第1閉断面構造部36は、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされており、第1閉断面構造部36によってルーフ部20の車両後方側の部分が補強されている。また、第1閉断面構造部36の車両前方下側には、後部座席40が配置されている。
【0043】
一方、第2閉断面構造部38は、車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が第1閉断面構造部36の断面よりも小さい閉断面形状とされており、第2閉断面構造部38によってバックドア開口部32の上縁部32Aが補強されている。
【0044】
また、ルーフパネル24の車両下方側には、天井材42が配置されており、この天井材42は、車両幅方向から見て車両上方側に凸となるように湾曲している湾曲部42Aと、湾曲部42Aから車両後方側に延出された一般部42Bとを備えている。また、一般部42Bの後端部には、延出壁部24Eの後端部に取り付けられたウェザーストリップに係止されている。
【0045】
なお、後部座席40は、車両上下方向から見て湾曲部42Aと重なる位置に配置されると共に、後部座席40と湾曲部42Aとの間には、所定のクリアランスが確保されている。
【0046】
一方、アンテナユニット26は、
図2にも示されるように、その外殻を構成すると共に電波を透過可能な樹脂等の材質で構成されたケース44と、ケース44に格納された電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な複数のアンテナ46とを備えている。
【0047】
詳しくは、ケース44は、アンテナ46を格納するケース本体部44Aと、4つの脚部44Bとを備えている。脚部44Bは、ケース本体部44Aの車両幅方向一方側と他方側とのそれぞれに車両前後方向に間隔をあけて一対となって設けられている。また、脚部44Bには、図示しない貫通部が形成されており、ルーフパネル24の下壁部24Cには、当該貫通部に対応するウエルドボルト48が、軸部48Aを車両上方側とされた状態で取り付けられている。
【0048】
そして、アンテナユニット26は、脚部44Bの貫通部に車両下方側から軸部48Aが挿通されて、軸部48Aに車両上方側からナット50が締結されることで、下壁部24Cに対して固定されている。
【0049】
一方、アンテナユニット28は、その外殻を構成すると共に電波を透過可能な樹脂等の材質で構成されたケース52と、ケース52に格納された電波の送信及び受信の少なくとも一方が可能な複数のアンテナ54とを備えている。
【0050】
ケース52は、ケース44と同様に、ケース本体部52Aと、4つの脚部52Bとを含んで構成されると共に、ウエルドボルト48及びナット50を介して下壁部24Cに対して固定されている。
【0051】
なお、アンテナ46及びアンテナ54の種類としては、例えば、DCM(Data Communication Module)用アンテナ、GPS(Global Positioning System)用アンテナ、無線LAN(Local Area Network)用アンテナ及びETC(Electronic Toll Collection)用アンテナ等が挙げられる。
【0052】
また、アンテナユニット26からは、ワイヤーハーネス56が延出されており、下壁部24Cには、ワイヤーハーネス56が挿通可能な被挿通部58が形成されると共に、後側傾斜壁部34Dには、ワイヤーハーネス56が挿通可能な被挿通部60が形成されている。そして、ワイヤーハーネス56は、被挿通部58及び被挿通部60を経由して、車室内側に延びている。
【0053】
一方、アンテナユニット28からは、ワイヤーハーネス62が延出されており、ワイヤーハーネス62は、ワイヤーハーネス56と同様に、下壁部24Cに設けられた図示しない被挿通部と、後側傾斜壁部34Dに設けられた図示しない被挿通部とを経由して、車室内側に延びている。
【0054】
図1に戻り、アンテナユニット26及びアンテナユニット28の車両上方側には、樹脂ルーフパネル64が配置されている。この樹脂ルーフパネル64は、電波を透過可能なポリカーボネート等の樹脂で構成されると共に、上壁部64A、後壁部64B及び取付壁部64Cを含んで構成されている。
【0055】
上壁部64Aは、板厚方向を車両上下方向とされると共に車両上下方向から見て車両幅方向を長手方向とされた矩形状とされており、アンテナユニット26及びアンテナユニット28を車両上方側から覆っている。なお、上壁部64Aの上面は、塗料で塗装されており、当該上面によって、ルーフ部20の意匠面20Aの一部が構成されている。
【0056】
また、上壁部64Aの車両前方側の端部における車両下方側の面には、係止部としての複数の「クリップ66」が車両幅方向に所定の間隔をあけて配置されると共に、これらのクリップ66が上壁部64Aに接着されている。一方、ルーフパネル本体部24Aの車両後方側の周縁部には、クリップ66に対応する被係止部としての複数の「貫通部68」が形成されている。そして、貫通部68にクリップ66が嵌合されることで樹脂ルーフパネル64の車両前方側の部分が、車体12に取り付けられている。なお、クリップ66は、所定の操作によって貫通部68から取り外すことが可能とされている。
【0057】
一方、後壁部64Bは、板厚方向を車両前後方向とされて上壁部64Aの車両後方側の周縁部から車両下方側に延出されており、アンテナユニット26及びアンテナユニット28を車両後方側から覆っている。そして、後壁部64Bの車両下方側の周縁部からは、取付壁部64Cが車両後方側に延出されている。
【0058】
取付壁部64Cは、ルーフパネル24における下壁部24Cの上面に沿うように配置されており、取付壁部64Cには、車両幅方向に所定の間隔をあけて図示しない複数の貫通部が形成されている。一方、下壁部24C及び中央延出壁部34Eには、
図2に示されるように、取付壁部64Cの貫通部に対応する被係止部としての複数の「貫通部70」が形成されている。
【0059】
そして、係止部としての複数の「クリップ72」が、取付壁部64Cの貫通部及び貫通部70に嵌合されることで樹脂ルーフパネル64の車両後方側の部分が、車体12に取り付けられている。なお、クリップ72は、所定の操作によって貫通部70から取り外すことが可能とされている。また、樹脂ルーフパネル64の外周と車体12との隙間には、図示しないシール部材が取り付けられている。
【0060】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0061】
本実施形態では、
図1に示されるように、車体12の一部がルーフパネル24の下壁部24Cで構成されており、下壁部24Cは、車体12のルーフ部20の意匠面20Aに対して車両下方側に配置されている。そして、この下壁部24Cは、アンテナユニット26及びアンテナユニット28を車両下方側から支持している。このため、本実施形態では、車体12のルーフ部20の意匠面20Aに対して車両下方側にアンテナユニット26及びアンテナユニット28を配置することができる。
【0062】
一方、下壁部24Cの車両下方側には、リアヘッダリインフォースメント34が配置されており、このリアヘッダリインフォースメント34は、車両幅方向に延在すると共に車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた第1閉断面構造部36の一部を構成している。このため、本実施形態では、リアヘッダリインフォースメント34を含む第1閉断面構造部36によって、車体12のルーフ部20をロールオーバ等に起因する荷重に対して補強することができる。
【0063】
したがって、本実施形態では、車体12にアンテナユニット26及びアンテナユニット28を配置するスペースを確保しつつ、ロールオーバ等に対する車体12の剛性を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ルーフ部20の意匠面20Aの一部が樹脂ルーフパネル64で構成されており、樹脂ルーフパネル64によって、アンテナユニット26及びアンテナユニット28の車両上方側と車両後方側とが覆われている。このため、本実施形態では、アンテナユニット26及びアンテナユニット28の車両上方側及び車両後方側において、これらによる電波の送受信を可能としつつ、樹脂ルーフパネル64でアンテナユニット26及びアンテナユニット28を隠すことができる。したがって、本実施形態では、アンテナユニット26及びアンテナユニット28による通信を円滑に行うことができると共に、車両10の意匠性を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態では、
図2にも示されるように、車体12に貫通部68及び貫通部70が設けられており、樹脂ルーフパネル64は、貫通部68にクリップ66が、貫通部70にクリップ72が、それぞれ係止されることで12車体に取り付けられている。さらに、クリップ66及びクリップ72は、それぞれ嵌合される貫通部に対して取り外し可能とされており、本実施形態では、樹脂ルーフパネル64が車体12に対して着脱可能とされている。このため、本実施形態では、アンテナユニット26及びアンテナユニット28のメンテナンス作業の作業効率を向上させることができる。
【0066】
加えて、本実施形態では、
図1に示されるように、ルーフ部20が、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール22と、ルーフサイドレール22間に配置された金属製のルーフパネル本体部24Aとを備えている。そして、下壁部24Cは、ルーフパネル本体部24Aと一体に設けられている。このため、本実施形態では、ルーフパネル本体部24Aと、下壁部24Cとをプレス加工等によって一体の部品として形成することができる。したがって、本実施形態では、車体12の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、
図4及び
図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両骨格構造について説明する。本実施形態では、ルーフパネル24の車両前後方向中央部に形成された凹部74内にアンテナユニット26及びアンテナユニット28が配置されている点に第1の特徴がある。また、凹部74が、ルーフリインフォースメントとしての「センタヘッダリインフォースメント76」で補強されている点に第2の特徴がある。
【0068】
詳しくは、凹部74は、車両幅方向に延在すると共に、ルーフ部20の意匠面20Aに対して車両下方側に凹んでおり、その車両下方側の部分を構成する支持面部としての「底壁部74A」上にアンテナユニット26及びアンテナユニット28が配置されている。
【0069】
一方、センタヘッダリインフォースメント76は、車両幅方向に延在すると共に、その車両前方側の部分を構成する前壁部76Aと、その車両後方側の部分を構成する後壁部76Bと、その車両下方側の部分を構成する下壁部76Cとを備えており、鋼板がプレス加工されることで形成されている。このセンタヘッダリインフォースメント76は、車両幅方向から見た形状が車両上方に向かうにしたがって拡幅されたU字状とされている。
【0070】
また、センタヘッダリインフォースメント76は、凹部74の車両下方側に配置されている。そして、前壁部76Aが凹部74の車両前方側の部分を構成する前壁部74Bと、後壁部76Bが凹部74の車両後方側の部分を構成する後壁部74Cと、それぞれスポット溶接等による図示しない接合部で接合されることで、センタヘッダリインフォースメント76は、凹部74と共に車両幅方向に延在しかつ車両幅方向から見た形状が閉断面形状とされた「閉断面構造部78」を構成している。
【0071】
一方、凹部74の車両上方側には、車両上下方向から見て長手方向を車両幅方向とされた矩形の板状とされた樹脂ルーフパネル80が配置されており、樹脂ルーフパネル80によってアンテナユニット26及びアンテナユニット28が車両上方側から覆われている。なお、樹脂ルーフパネル80の上面は、塗料で塗装されており、ルーフ部20の意匠面20Aの一部を構成している。また、樹脂ルーフパネル80は、クリップ66を介してルーフパネル24に取り付けられている。
【0072】
このような構成によれば、車両10の仕様等によって、ルーフパネル24の車両後方側の部分にアンテナユニット26及びアンテナユニット28を配置することができない場合であっても、基本的に上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
また、ルーフパネル24の車両後方側の部分にアンテナユニット26及びアンテナユニット28を配置することができる場合には、車体12に通信機器を配置可能なスペースをより多く確保し、より多くの通信機器を搭載することができる。
【0074】
<第3実施形態>
以下、
図6を用いて、本発明の第3実施形態に係る車両骨格構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態は、基本的に上述した第1実施形態と同様の構成とされているものの、アンテナユニットの構成並びにルーフパネルの構成が第1実施形態と異なっている。
【0076】
詳しくは、本実施形態において、通信機器としての「アンテナユニット90」の外殻を構成する樹脂製の「ケース92」は、ケース44及びケース52に比し、車両幅方向及び車両上下方向に拡大されており、アンテナ46及びアンテナ54を格納している。
【0077】
また、本実施形態では、ケース92の「上面92A」によってルーフ部20の意匠面20Aの一部が構成されている。なお、ケース92の外周と車体12との隙間には、シール部材94が嵌め込まれている。
【0078】
一方、本実施形態において、ルーフパネル96は、ルーフパネル24と異なり、ルーフパネル本体部としての「メインパネル98」と、支持面部としての「リアパネル100」とに分割されている。
【0079】
詳しくは、メインパネル98は、鋼板がプレス加工されることで形成されると共に、基本的にルーフパネル本体部24Aと同様の構成とされている。
【0080】
一方、リアパネル100は、鋼板がプレス加工されることで形成されると共に、下壁部100A、前側縦壁部100B、前側延出壁部100C、後側縦壁部100D及び後側延出壁部100Eを含んで構成されている。
【0081】
下壁部100Aは、下壁部24Cと同様の構成とされると共に、アンテナユニット90を車両下方側から支持している。なお、本実施形態では、ケース92に脚部が設けられておらず、ケース92は、その底面に設けられた複数のクリップ66を介して下壁部100Aに取り付けられている。
【0082】
また、下壁部100Aの車両前方側の周縁部には、前側縦壁部24Bと同様の構成とされた前側縦壁部100Bが設けられている。そして、前側縦壁部100Bの車両上方側の周縁部からは、前側延出壁部100Cが延出されており、前側延出壁部100Cの車両前方側の周縁部は、メインパネル98の車両後方側の周縁部に車両下方側から当接された状態でスポット溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0083】
一方、後側縦壁部100Dは、後側縦壁部24Dと同様の構成とされており、後側延出壁部100Eは、延出壁部24Eと同様の構成とされている。
【0084】
このように構成された本実施形態では、基本的に上述した第1実施形態と同様の構成とされているため、第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。
【0085】
また、本実施形態では、アンテナユニット90の外殻が樹脂製のケース92で構成されており、ケース92に電波を透過させアンテナユニット90による電波の送受信を行うことが可能となっている。また、ケース92の上面92Aがルーフ部20の意匠面20Aの一部を構成しており、アンテナユニット90を覆い隠すような部材を別途配置することなくルーフ部20の意匠性を確保することができる。
【0086】
このため、本実施形態では、アンテナユニット90のメンテナンス作業の作業効率を向上させることができる。
【0087】
さらに、本実施形態では、ルーフ部20が、車両前後方向に延在すると共に車両幅方向に間隔をあけて配置された一対のルーフサイドレール22と、ルーフサイドレール22間に配置された金属製のメインパネル98とを備えている。そして、リアパネル100は、金属製とされており、リアパネル100の車両前方側の周縁部は、メインパネル98の車両後方側の周縁部に接合されている。このため、本実施形態では、メインパネル98と、リアパネル100とをプレス加工等によって別々の部品として形成することができる。
【0088】
したがって、本実施形態では、車体12の製造工程において歩留まりの向上を図ることができる。
【0089】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、リアヘッダリインフォースメント34及びセンタヘッダリインフォースメント76が、鋼板で構成されていたが、車両10の仕様等に応じて、これらを炭素繊維強化樹脂で構成してもよい。
【0090】
(2) また、上述した実施形態では、ルーフリインフォースメントとルーフパネルとで閉断面構造部を構成していたが、ルーフリインフォースメントの構成は、これに限らない。例えば、車両10の仕様等に応じて、ルーフリインフォースメントを車両幅方向に延在する角筒状とし、ルーフリインフォースメントのみで閉断面構造部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 車両
12 車体
20 ルーフ部
20A 意匠面
22 ルーフサイドレール
24A ルーフパネル本体部
24C 下壁部(支持面部)
26 アンテナユニット(通信機器)
28 アンテナユニット(通信機器)
34 リアヘッダリインフォースメント(ルーフリインフォースメント)
36 第1閉断面構造部(閉断面構造部)
64 樹脂ルーフパネル
66 クリップ(係止部)
68 貫通部(被係止部)
70 貫通部(被係止部)
72 クリップ(係止部)
74A 底壁部(支持面部)
76 センタヘッダリインフォースメント(ルーフリインフォースメント)
78 閉断面構造部
90 アンテナユニット(通信機器)
92 ケース
92A 上面
98 メインパネル(ルーフパネル本体部)
100 リアパネル(支持面部)