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特許7513041情報処理システム、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240702BHJP
   G06F 16/9038 20190101ALI20240702BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20240702BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
G05B23/02 301X
G06F16/9038
G06F16/906
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022011027
(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公開番号】P2023109486
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】西谷 一平
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-128712(JP,A)
【文献】特許第6865901(JP,B1)
【文献】特開2011-70635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 16/906
G06F 16/9038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得する取得部と、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出する抽出部と、
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類する分類部と、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する提示部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記取得部は、複数の移動体の移動に関するシミュレーションデータまたは実験データを取得し、
前記抽出部は、前記複数の移動体の各々の移動の自由度に由来する前記複数の不具合データを抽出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
各不具合データから、複数の時点の各々における前記複数の移動体の各々の位置座標を抽出し、抽出された位置座標を並べることで前記特徴データを算出する算出部、
をさらに備える請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記提示部は、前記分類部による分類結果をさらに提示し、グループごとに前記代表データとの差異が大きい不具合データを強調表示する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記取得部は、システム要求に違反したデータを探索することを目的としたサーチベーステストを行うことにより、前記複数のシミュレーションデータを取得し、
前記抽出部は、前記システム要求に違反した前記複数の不具合データを抽出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
コンピュータが、
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得し、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出し、
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類し、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得し、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出し
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類し、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する、
情報処理方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理方法、およびプログラムに関し、特にシミュレーション結果または実験結果をユーザに提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シミュレーション結果を表示する情報処理システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6082759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シミュレーションまたは実験の結果を示す結果データに、システム要求を満たさない不具合事例の結果データ(不具合データ)が含まれている場合がある。このような場合、ユーザが不具合データに関する検討を行い易いように、シミュレーション結果を提示する情報処理システムが望まれている。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、ユーザが不具合データを検討し易いように、シミュレーション結果または実験結果を提示する情報処理システム、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における情報処理システムは、
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得する取得部と、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出する抽出部と
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類する分類部と、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する提示部と、
を備える。
【0007】
本実施の形態における情報処理方法は、
コンピュータが、
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得し、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出し、
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類し、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する。
【0008】
本実施の形態におけるプログラムは、
コンピュータに、
複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得し、
前記複数のシミュレーションデータまたは前記複数の実験データから、複数の不具合データを抽出し、
前記複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、前記複数の不具合データを複数のグループに分類し、
各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する、
情報処理方法を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、ユーザが不具合データを検討し易いように、シミュレーション結果または実験結果を提示する情報処理システム、情報処理方法、およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1にかかる情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態1にかかる情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
図3】ロボットのすれ違いシミュレーションの概要を示す概略図である。
図4】ロボットの出発地および目的地を示す概略図である。
図5】サーチベーステストの概要を示す概略図である。
図6】特徴データの抽出方法の概要を示す概略図である。
図7】代表データの表示画面を例示する概略図である。
図8】クラスタリング結果の表示画面を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
実施形態1
以下、図面を参照して実施形態1にかかる情報処理装置について説明する。図1は、実施形態1にかかる情報処理装置100の構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、情報処理システムの一例である。情報処理装置100はエッジ端末であってもよい。処理がエッジ端末内で完結したシステムも、情報処理システムには含まれ得る。最後に説明するように、情報処理システムはサーバを含んでもよい。
【0013】
情報処理装置100は、取得部110、不具合データ抽出部120、算出部130、分類部140、代表データ抽出部150、および提示部160を備えている。また、情報処理装置100は、図示しないプロセッサやメモリを備えている。プロセッサがプログラムを実行することで、情報処理装置100は、取得部110、不具合データ抽出部120、算出部130、分類部140、代表データ抽出部150、および提示部160として機能する。
【0014】
取得部110は、複数のシミュレーション条件のそれぞれに対応する複数のシミュレーションデータ、または複数の実験条件のそれぞれに対応する複数の実験データを取得する。以下では、取得部110が複数のシミュレーションデータを取得する場合を中心に説明するが、取得部110はシミュレーションデータではなく実世界の実験データを取得してもよい。複数のシミュレーションデータには不具合データが含まれており、後述する不具合データ抽出部120によって不具合データが抽出される。
【0015】
取得部110は、システム要求に違反したデータ(不具合データ)を探索することを目的としたサーチベーステストを行うことにより、複数のシミュレーションデータを取得してもよい。これにより、ユーザは、不具合データの分析を効率的に行うことができる。取得部110は、サーチベーステストの結果として、各シミュレーションデータがシステム要求を満たしているか否かに関する情報を受け取ってもよい。サーチベーステストは、最適化によってシステム要求違反を効率的に探索できる。
【0016】
なお、取得部110は、サーチベーステスト以外のテストを行ってもよい。取得部110は、例えば、シミュレーション条件を等間隔に設定したテスト(例えば、グリッドテスト)や、ユーザが任意にシミュレーション条件を設定したテストを行ってもよい。
【0017】
具体的には、取得部110は、複数の移動体(例えば、ロボット1、ロボット2、ロボット3)の移動に関するシミュレーションデータを取得する。このような場合、シミュレーション条件として、各移動体の出発地や出発時刻が設定されてもよい。後述する不具合データ抽出部120は、例えば、所定の移動体が目標時刻(例えば、シミュレーション開始から120秒経過した時刻)までに目的地に到達したシミュレーションデータを成功データとし、それ以外のデータを不具合データとすることができる。
【0018】
以下では、取得部110が、複数の移動体の移動に関するシミュレーションデータを取得する場合を中心に説明する。ただし、取得部110が取得するデータは、移動体の移動に関するデータには限定されない。取得部110が取得するデータは、制御システムの動作がシステム要求を満たしているか否かを、様々な条件下で検証するためのデータであればよい。シミュレーションの対象となる制御は、例えば、エンジン制御、自動運転車両の合流制御、スマートグリッド制御であってもよい。
【0019】
エンジン制御の場合、取得部110は、アクセルおよびブレーキの入力を条件として、車速の目標値と実測値の間の乖離量の検証を行うためのデータ(例えば、アクセルやブレーキの入力軌跡)を取得する。自動運転車両の合流制御の場合、取得部110は、自動運転車両の様々な初期位置における衝突の検証を行うためのデータ(例えば、自動運転車両の移動軌跡)を取得する。スマートグリッド制御の場合、取得部110は、様々な需給条件下における各施設での電力過不足の検証を行うためのデータ(例えば、電力使用量や発電量)を取得する。
【0020】
不具合データ抽出部120は、上述の通り、複数のシミュレーションデータまたは複数の実験データから、複数の不具合データを抽出する。不具合データ抽出部120は、以下では、単に抽出部と称される場合がある。複数の移動体の移動に関するシミュレーションデータには、複数の移動体の各々の移動の自由度に由来して、複数の不具合データが含まれる場合がある。具体的には、移動体が他の移動体とすれ違う際に、衝突したり、停止したり、必要以上に迂回してしまう場合がある。
【0021】
不具合データ抽出部120は、具体的には、システム要求に違反したシミュレーションデータを不具合データとする。システム要求は、ユーザによって任意に決定されてもよい。システム要求は、例えば、所定の時間内に所定の移動体が目的地に到達することであってもよい。システム要求に違反しているか否かに関する情報は、サーチベーステストの結果に含まれていてもよい。不具合データは、閾値に基づいて判定されてもよく、STL(Signal Temporal Logic)の形式で表現される条件を満たすか否かに応じて判定されてもよい。
【0022】
なお、不具合データ抽出部120は、システム全体の要求ではなく、サブシステムの要求に基づいて不具合データを抽出してもよい。例えば、複数の移動体を時間内に目的地に到達させるというシステム要求には、各自律移動体における位置推定の誤差が閾値以下であるというサブシステム要求が含まれる場合がある。このような場合、不具合データ抽出部120は、各自律移動体における位置推定の誤差が閾値以下であるシミュレーションデータを成功データとし、成功データ以外のシミュレーションデータを不具合データとすることができる。
【0023】
算出部130は、複数の不具合データの各々から特徴データを算出する。特徴データは、特徴パラメータとも呼ばれる。特徴データは、後述する分類部140がクラスタリングを行う際に、不具合データ間の類似を判定するために用いられる。算出部130は、例えば、複数の時点(例えば、シミュレーション開始後0秒、12秒、24秒、36秒、48秒、60秒、72秒、84秒、96秒、108秒、120秒)の各々における複数の移動体の位置座標(例えば、ロボット1のx座標、ロボット1のy座標、ロボット2のx座標、ロボット2のy座標、ロボット3のx座標、ロボット3のy座標)を抽出し、抽出された位置座標を並べる(連結する)ことで特徴データを算出してもよい。
【0024】
なお、算出部130は、多変量データではなく単変量データ(例えば、ロボット1の速度データ)を特徴データとしてもよい。また、算出部130は、時系列データ以外のデータ(例えば、各ロボットの最終位置のx座標およびy座標)を特徴データとしてもよい。
【0025】
特徴データの算出方法は、上述した、複数の時点のデータ値を抽出して連結する方法には限られない。算出部130は、スパースコーディング、ウェーブレット変換、シェイプレット変換、特異スペクトル分解、非負値行列因子分解などの手法を用いて特徴データを算出してもよい。
【0026】
分類部140は、複数の不具合データの各々から算出された特徴データに基づいて、複数の不具合データを複数のグループに分類する。分類部140は、クラスタリングにより、類似する不具合データをグループ化する。クラスタリングは、例えば、Ward法を実施することにより行われる。クラスタ数は、ユーザによって設定されてもよく、クラスタ間距離やクラスタ内データの類似度の指標に基づいて自動で決定されてもよい。
【0027】
分類部140によるクラスタリング手法は、Ward法には限定されない。Ward法で用いられる距離指標とは別の距離指標を用いた階層型クラスタリングが行われてもよい。また、k-meansやDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)等の非階層型クラスタリングが行われてもよい。
【0028】
代表データ抽出部150は、各グループから代表データを抽出する。代表データは、コアデータとも称され、各グループのコアとなるデータを示す。具体的には、代表データ抽出部150は、各グループ内の全てのデータを代表データの候補に設定し、各候補とグループ内の他のデータの各々との差分(誤差)を取る処理を行い、差分の平均値(周囲誤差とも称される)を算出する。周囲誤差は、誤差平均とも称される。そして、代表データ抽出部150は、周囲誤差が最も小さい候補を、代表データに決定する。
【0029】
また、代表データ抽出部150は、各グループ内のデータの中央値や重心に基づいて代表データを抽出してもよい。また、代表データ抽出部150は、各グループ内のデータの不具合の度合いの大きさに基づいて、代表データを抽出してもよい。例えば、代表データ抽出部150は、不具合の度合いが最も大きいデータを、代表データとしてもよい。
【0030】
提示部160は、各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する。これにより、ユーザは、不具合データ全体を容易に把握することができる。提示部160は、分類部140による分類結果(クラスタリングデータ)をさらに提示してもよい。これより、ユーザは、分類が適切に行われているかを判断でき、不具合データに対して正確に対処できる。このとき、提示部160は、代表データとの差分が大きいデータ(例えば、周囲誤差が閾値以上のデータ)をグループごとに強調表示してもよい。代表データとの差分が大きいデータは、ユーザによって確認が必要なデータであると考えられ、データの見落としを防止できる。また、提示部160は、代表データ、分類結果に加えて、不具合データの一覧をさらに提示してもよい。ユーザは、必要に応じて不具合データの元データを確認できる。
【0031】
提示部160は、結果を提示するとき、不具合データの元データ、クラスタリング結果、および代表データの全てを表示する必要はない。提示部160は、ユーザが必要とするデータのみを提示してもよい。また、提示される代表データは、時間変化する信号データに限られない。代表データは、抽出された代表データのIDに紐づく情報であればよく、例えば動画や、信号データ以外の図表であってもよい。
【0032】
提示部160は、図示しないディスプレイ等の表示装置に表示画面を表示させてもよい。ユーザは、表示画面を確認し、不具合原因の特定や、システムの修正などを行うことができる。
【0033】
次に、図2を参照して、実施形態1にかかる情報処理方法について説明する。具体的に、3台のロボットのすれ違いをシミュレーションし、サーチベーステスト検証を行う場合について説明する。図3は、シミュレーションの概要を示す概略図である。ロボット1、ロボット2、およびロボット3が、T字型の通路(曲がり角)Aにおいて互いにすれ違いを行う。符号T1はロボット1の移動軌跡を示し、符号T2はロボット2の移動軌跡を示し、符号T3はロボット3の移動軌跡を示している。
【0034】
図4を参照して、ロボット1、2、および3の出発地および目的地について説明する。ロボット1、2、および3の位置は、ロボット1、2、および3の出発地を示している。符号T1は、ロボット1の移動軌跡を模式的に示しており、矢印の先端がロボット1の目的地を示している。符号T2は、ロボット2の移動軌跡を模式的に示しており、矢印の先端がロボット2の目的地を示している。符号T3は、ロボット3の移動軌跡を模式的に示しており、矢印の先端がロボット3の目的地を示している。
【0035】
シミュレーション時間は、120秒間であり、時刻はt=0~120[s]で表される。ロボット1の出発時刻は、t=16[s]に固定される。ロボット2の出発時刻は、t=16[s]とt=26[s]の間の時刻から選択される。ロボット3の出発時刻は、t=7[s]とt=37[s]の間の時刻から選択される。
【0036】
システム要求は、ロボット1又はロボット2が120秒以内に目的地に到着することと、ロボット3が120秒以内に目的地に到着することの両方が満たされることである。発明者は、システム要求を違反するシナリオを探索するサーチベーステストを実施し、500回のシミュレーションを行った。
【0037】
ロボット2の出発時刻およびロボット3の出発時刻が、シミュレーション条件に対応する。横軸をロボット2の出発時刻、縦軸をロボット3の出発時刻とすると、500個のシミュレーション条件の各々に対応する点をプロットできる。サーチベーステストでは、一般に、隣り合う点の間の距離は一定にならない。一方、グリッドテストでは、一般に、隣り合う点の間の距離は一定になる。サーチベーステストは、グリッドテストよりも効率的に不具合データを探索できる。
【0038】
図5は、サーチベーステストの概要を示す概略図である。図5に示すシステムは、SBT(Search Based Testing)部111と、ターゲットモデル112とを備える。なお、情報処理装置100の取得部110が、SBT部111およびターゲットモデル112を備えていてもよい。
【0039】
SBT部111は、ターゲットモデル112を用いて、サーチベーステストを実施する。ターゲットモデル112は、モデル/シミュレータ1121と、モデル/シミュレータを制御する制御ソフト1122とを備えている。
【0040】
SBT部111では、上述したシステム要求が設定され、SBT部111にテストシナリオを入力する。テストシナリオには、シミュレーション条件が含まれている。ターゲットモデル112は、テストシナリオを受け取って、シミュレーション結果を示す出力信号を返す。出力信号には、ロボット1の位置座標の時間変化を示す信号、ロボット2の位置座標の時間変化を示す信号、およびロボット3の位置座標の時間変化を示す信号が含まれていてもよい。
【0041】
図2に戻り、実施形態1にかかる情報処理方法について説明する。まず、情報処理装置100の取得部110は、シミュレーションによるサーチベーステスト検証の結果を取得する(ステップS101)。次に、情報処理装置100の不具合データ抽出部120は、500個のシミュレーションデータから複数の不具合データ(例えば、所定のロボットが目的地に到着していないデータ)を抽出する(ステップS102)。上述した500個のシミュレーションデータには、134個の不具合データが含まれていたものとする。134個の不具合データから、不具合事象の全てを把握するには多大な工数がかかるという問題がある。一方、134個の不具合データには類似したデータも数多く含まれている。したがって、類似データを除去して不具合事象を把握することが望ましい。
【0042】
次に、情報処理装置100の算出部130は、134個の不具合データの各々から特徴データを算出する(ステップS103)。具体的には、算出部130は、各ロボットの移動軌跡から、離散的な複数の時点の各々における位置情報(離散値とも称される)を抽出し、並べる(連結する)ことで特徴データを算出する。
【0043】
図6は、特徴データの一例を説明するための図である。図6の左側は、シミュレーションデータの一例を示しており、符号T1はロボット1の移動軌跡を示し、符号T2はロボット2の移動軌跡を示し、符号T3はロボット3の移動軌跡を示している。なお、図6の横方向はx方向を示しており、右側ほどx座標が大きい。図6の縦方向はy方向を示しており、上側ほどy座標が大きい。
【0044】
図6の右側には、ロボット1の移動軌跡T1、ロボット2の移動軌跡T2、ロボット3の移動軌跡T3を拡大して示している。各白丸は、各時点(t=0,t=12,t=24,・・・,t=120)における各ロボットの位置を示している。なお、見やすくするために、白丸を省略している場合がある。各ロボットが停止している場合、白丸同士は重なっていてもよい。
【0045】
算出部130は、各時点におけるロボット1の(x、y)座標、ロボット2の(x,y)座標、およびロボット3の(x、y)座標を抽出して連結することで特徴データを算出する。特徴データは、出力信号における時系列性および多変量相関性を保持している。12秒おきに各ロボットの(x、y)座標を抽出する場合、11個の時点で3台のロボットの(x、y)座標を抽出するため、特徴データの次元は、3×2×11=66次元となる。
【0046】
図2に戻り説明を続ける。次に、情報処理装置100の分類部140は、134個の不具合データの各々の特徴データに基づいて、134個の不具合データをクラスタリングする(ステップS104)。分類部140は、具体的には、クラスタ数を16個に指定して、Ward法でクラスタリングを行う。クラスタ数は、ユーザが確認しやすい数に設定されている。
【0047】
次に、情報処理装置100の代表データ抽出部150は、16個のグループの各々から代表データを抽出する(ステップS105)。代表データは、例えば、グループ内の他のデータの各々との差分の平均値(周囲誤差)が最も小さいデータであってもよい。
【0048】
次に、情報処理装置100の提示部160は、134個の元データ、クラスタリングデータ、および各グループから抽出した代表データをユーザに視覚化して提示する(ステップS106)。図7は、代表データを表示する画面の一例を示している。図7は、16個の代表データが示されている。各代表データは、シミュレーションデータを識別するID11と、各ロボットの移動軌跡を示すグラフ12とが含まれている。ID11には、グラフ12以外に、動画やその他のデータがさらに紐づけられていてもよい。
【0049】
グラフ12には、T字型の通路の形状、ロボット1の移動軌跡、ロボット2の移動軌跡、およびロボット3の移動軌跡が含まれている。グラフ12の横軸はx方向を示し、グラフ12の縦軸はy方向を示している。
【0050】
図8は、分類部140による分類結果(クラスタリングデータ)を示している。134個の不具合データが、16個のグループに分類されている。各グループは、枠で囲まれている。各グループの先頭のデータは、代表データを示している。代表データは、赤枠などを用いて強調表示されてもよい。また、各グループ内の不具合データは、上述した周囲誤差が小さい順に並べられてもよい。
【0051】
既に述べた通り、代表データとの差分が大きいデータ(例えば、周囲誤差が閾値以上のデータ)を強調表示してもよい。例えば、代表データとの差分が大きいデータは、青枠などを用いて強調表示されてもよい。代表データの抽出に伴ってデータの見落としが発生する場合があるが、ユーザは、提示された画面において周囲誤差の大きいデータを確認できる
【0052】
ユーザは、提示部160により提示された情報を確認できる。ユーザは、提示された情報に基づいて、対応すべき不具合事象にかかるデータを特定する。ユーザは、各ロボットの軌跡だけで不具合原因を特定できない場合、ID11に紐づけられた動画や、フラグ(例えば、ロボットの衝突の有無を示す)を確認してもよい。
【0053】
最後に、実施形態1にかかる情報処理装置が奏する効果について説明する。制御システムが開発者の要求通りに作成されているかを検証することを目的としてシミュレーションや実験によるテストが行われることがある。テスト結果に不具合データが含まれる場合、開発者は、システムの挙動を確認し、修正の必要性の判断、不具合の原因の特定、システムの修正を実施する必要がある。
【0054】
複数の不具合データが存在する場合、個々の不具合データに関連する事象を順番に修正すると、ある不具合事象に対するアプローチが、別の不具合事象に対するアプローチに反する可能性がある。したがって、効果的な修正を行うためには、複数の不具合事象を開発者が同時に確認して、それらを同時に解決するアプローチを考えることが好ましい。しかし、不具合データが大量に存在する場合、解析に対して多大な工数が必要となる。一方、確認する不具合データを削減するために、不具合データをランダムに抽出すると、不具合事象の見逃しが発生するリスクがある。
【0055】
実施形態1にかかる情報処理装置は、大量の不具合データに対して、クラスタリングおよび代表データ(コアデータ)の抽出を行うことで、不具合事象の見逃しを低減させつつ、開発者が確認する不具合データの数を大幅に削減できる。これにより、効率的かつ効果的に不具合事象を把握し、システム修正に要する期間を短縮できる。
【0056】
実施形態1にかかる情報処理装置によると、ユーザは不具合データのみを確認できる。表示結果に正常データが含まれている場合、不具合データの見逃しが生じる可能性があるが、実施形態1によると、この可能性を低減できる。また、クラスタリングに用いられる特徴データを設定しておけば、対象となる制御システムに関する専門知識を持たないユーザも、不具合原因の特定などを行うことができる。
【0057】
情報処理システムは、機能要素の全てが情報処理装置100に集約された構成でなくてもよい。例えば、代表データ抽出部150の機能は、情報処理装置100とネットワークを介して接続されたサーバが備える演算部が担ってもよい。この場合、サーバは、代表データを情報処理装置100へ送信する。情報処理装置100の提示部160は、送られてきた代表データを利用して、実施形態1と同様の提示を実現する。このようにサーバと情報処理装置100を含むように情報処理システムを構成してもよい。上述したプロセッサやメモリは、サーバにあってもよく、情報処理装置100とサーバの両方にあってもよい。
【0058】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 情報処理装置
110 取得部
120 不具合データ抽出部
130 算出部
140 分類部
150 代表データ抽出部
160 提示部
111 SBT部
112 ターゲットモデル
1121 モデル/シミュレータ
1122 制御ソフト
1、2、3 ロボット
11 ID
12 グラフ
A 通路
T1、T2、T3 移動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8